(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120469
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240829BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240829BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240829BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240829BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
B05D1/26 Z
B05D7/00 K
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027286
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
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4F042BA19
4F042BA27
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB19
(57)【要約】
【課題】 基板上に形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制する。
【解決手段】 基板処理装置は、外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて基板を保持する保持部と、一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、毛細管現象によりノズルの吐出口から基板の主面に処理液を吐出させるために、保持部に保持された基板の上方でノズルの底部と基板の主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で一方向と交差する交差方向にノズルおよび基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構と、移動機構を制御して、基板の外周形状に基づいて決定される移動速度でノズルおよび基板を相対的に移動させる制御部110と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて前記基板を保持する保持部と、
一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、
毛細管現象により前記ノズルの前記吐出口から前記基板の前記主面に処理液を吐出させるために、前記保持部に保持された前記基板の上方で前記ノズルの前記底部と前記基板の前記主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で前記一方向と交差する交差方向に前記ノズルおよび前記基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御して、前記基板の外周形状に基づいて決定される移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる制御部と、を備えた、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吐出口のうち前記基板の上方に位置する重畳部分の前記一方向における長さの単位時間当たりの変化量に基づいて前記移動速度を決定する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記重畳部分の前記一方向の長さの単位時間当たりの変化量が一定となる速度を前記移動速度として決定する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、次の関係式を用いて前記移動速度を決定し、
【数1】
xは前記基板に対する前記ノズルの位置であり、
tは時刻であり、
rは前記基板の半径であり、
kおよびCは定数である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記制御部は、前記基板の前記第1の端部、前記基板の中心および前記第2の端部の順に前記基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記基板の中心と前記第2の端部との間の上方に位置する間に、前記移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記制御部は、前記基板の前記第1の端部、前記基板の中心および前記第2の端部の順に前記基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置する間に、前記移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
外気圧よりも低い第1の圧力を前記ノズル内の前記処理液に付与する圧力制御部を、さらに備えた請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記圧力制御部は、前記制御部が前記基板の前記第1の端部、前記基板の中心および前記第2の端部の順に前記基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記基板の中心と前記第2の端部との間の上方に位置する間に、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力を前記ノズル内の前記処理液に付与する、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記圧力制御部は、前記制御部が前記基板の前記第1の端部、前記基板の中心および前記第2の端部の順に前記基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置する間に、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力を前記処理液に付与する、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板処理装置で実行される基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて前記基板を保持する保持部と、
一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、を備え、
毛細管現象により前記ノズルの前記吐出口から前記基板の前記主面に処理液を吐出させるために、前記保持部に保持された前記基板の上方で前記ノズルの前記底部と前記基板の前記主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で前記一方向と交差する交差方向に前記ノズルおよび前記基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動ステップと、
前記基板の外周形状に基づいて前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる移動速度を決定するステップと、を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の基板を製造する工程において、レジスト液等の処理液を基板に、毛細管現象を利用したキャピラリ塗布技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塗工タンクと、塗工タンクを上下動させる塗工タンク上下手段と、スリット塗布により基板に塗工液を供給させる塗工ノズルとを備える塗工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、毛細管現象を利用したキャピラリ塗布技術において、基板の外周付近の部分が他の部分に比較して処理液の膜が厚くなるといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、基板上に形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一局面に従う基板処理装置は、外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて基板を保持する保持部と、一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、毛細管現象によりノズルの吐出口から基板の主面に処理液を吐出させるために、保持部に保持された基板の上方でノズルの底部と基板の主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で一方向と交差する交差方向にノズルおよび基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構と、移動機構を制御して、基板の外周形状に基づいて決定される移動速度でノズルおよび基板を相対的に移動させる制御部と、を備える。
【0008】
(2)本発明の他の局面に従う基板処理方法は、基板処理装置で実行される基板処理方法であって、基板処理装置は、外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて基板を保持する保持部と、一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、を備え、毛細管現象によりノズルの吐出口から基板の主面に処理液を吐出させるために、保持部に保持された基板の上方でノズルの底部と基板の主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で一方向と交差する交差方向にノズルおよび基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動ステップと、基板の外周形状に基づいてノズルおよび基板を相対的に移動させる移動速度を決定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板上に形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】キャピラリ塗布処理の前半部分を実行するノズル装置の平面図である。
【
図4】キャピラリ塗布処理の後半部分を実行するノズル装置の第1の平面図である。
【
図5】キャピラリ塗布処理の後半部分を実行するノズル装置の第2の平面図である。
【
図6】キャピラリ塗布時のノズルブロックの経時的な位置の変化の一例を示す第1の図である。
【
図7】キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの経時的な変化の一例を示す第1の図である。
【
図8】キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの単位時間あたりの変化量の経時的な変化の一例を示す第1の図である。
【
図9】キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの単位時間あたりの変化量の経時変化の一例を示す第2の図である。
【
図10】キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの経時的な変化の一例を示す第2の図である。
【
図11】キャピラリ塗布時のノズルブロックの経時的な位置の変化の一例を示す第2の図である。
【
図12】キャピラリ塗布処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、以下に説明する基板処理装置100の処理対象として、平面視で半径rの円形状を有し、外周の一部にノッチを有する基板を例に説明する。なお、基板処理装置100の処理対象の基板Wは略円形状であってもよい。
【0012】
(1)基板処理装置100の構成
図1は、基板処理装置100の模式的な外観斜視図である。本実施の形態に係る基板処理装置100は、基板W上に処理液としてレジスト液等の塗布液を供給する。
【0013】
図1に示すように、基板処理装置100は、制御部110、一対のステージ支持体120、ステージ装置130、一対のノズル支持体140およびノズル装置150を含む。
図1および後述する所定の図には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。以下の説明では、X方向およびY方向に関して、矢印が向かう方向をそれぞれ+X方向および+Y方向と呼び、矢印と逆の方向をそれぞれ-X方向および-Y方向と呼ぶ。
【0014】
一対のステージ支持体120の各々は、直方体形状を有し、X方向に沿って延びるように、図示しない筐体の底面上に設けられている。一対のステージ支持体120は、Y方向において互いに対向するように配置されている。各ステージ支持体120の上面には、X方向に沿って延びるガイドレール121が設けられている。
【0015】
ステージ装置130は、Y方向において一対のステージ支持体120の間に位置し、一対のステージ支持体120により支持されている。ステージ装置130は、プレート部材131、プレート調整部132、複数(本例では、3本)の支持ピン133、ピン昇降駆動部134および吸引駆動部135を含む。
【0016】
プレート部材131は、矩形の平板形状を有する石材により形成され、ステージ装置130の上面部分を構成する。プレート部材131の一部には、処理対象となる基板Wが載置される。基板Wが載置されるプレート部材131の部分(以下、基板載置部分と呼ぶ。)には、当該プレート部材131をZ方向に貫通するように、図示しない複数の吸気孔および複数のピン挿入孔が形成されている。
【0017】
プレート調整部132、複数の支持ピン133、ピン昇降駆動部134、吸引駆動部135およびダミー塗布板駆動部138,139は、プレート部材131の下部に設けられている。プレート調整部132は、プレート部材131の基板載置部分の温度を調整する。
【0018】
複数の支持ピン133は、上下方向に移動可能かつ複数のピン挿入孔にそれぞれ挿入可能にピン昇降駆動部134により支持されている。ピン昇降駆動部134は、制御部110の制御に基づいて、複数の支持ピン133を上下方向に移動させる。それにより、複数の支持ピン133の上端部は、プレート部材131よりも上方のピン上昇位置と、プレート部材131よりも下方のピン下降位置との間を移動する。
【0019】
これにより、基板Wの搬入時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で、図示しない搬送装置により保持された未処理の基板Wが複数の支持ピン133上に渡される。また、基板Wの搬出時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で、複数の支持ピン133上に支持された処理済の基板Wが図示しない搬送装置により受け取られる。さらに、基板処理装置100における基板Wの処理時には、複数の支持ピン133の上端部がピン下降位置にある状態で、プレート部材131の基板載置部分に載置された基板Wに後述するノズル装置150により処理液が供給される。
【0020】
プレート部材131に形成された複数の吸気孔(図示せず)は、吸引駆動部135および図示しないエジェクタ等の吸気系を通して工場の排気設備等に接続されている。吸引駆動部135は、後述する制御部110の制御に基づいて、複数の吸気孔と吸気系とを接続する吸気経路を連通状態と遮断状態との間で切り替える。このような構成により、プレート部材131の基板載置部分に基板Wが載置された状態で、吸引駆動部135は、吸気経路を連通状態とすることにより当該基板Wを基板載置部分に吸着保持させることができる。また、基板載置部分に基板Wが吸着保持された状態で、吸引駆動部135は、吸気経路を遮断状態とすることにより当該基板Wをプレート部材131から解放させることができる。本実施の形態においては、プレート部材131が保持部の例である。
【0021】
ここで、プレート部材131上に基板Wが載置されたときに基板Wの中心部WCを通るY方向の仮想直線axが基板Wの外周部と交差する部分を第1の側部s1および第2の側部s2と呼ぶ。また、基板Wの中心部WCを通るX方向の直線が基板Wの外周部と交差する部分を第1の端部e1および第2の端部e2と呼ぶ。また、第1の側部s1から第1の端部e1までの基板Wの外周部を部分外縁OE1と呼び、第1の側部s1から第2の端部e2までの基板Wの外周部を部分外縁OE2と呼ぶ。さらに、第2の側部s2から第1の端部e1までの基板Wの外周部を部分外縁OE3と呼び、第2の側部s2から第2の端部e2までの基板Wの外周部を部分外縁OE4と呼ぶ。
【0022】
以下、基板Wの上面を基板処理面Wpと呼ぶ。本実施の形態において、基板Wの基板処理面Wpが基板の主面の例である。一対のステージ支持体120の上面には、一対のノズル支持体140がそれぞれガイドレール121に沿ってX方向に移動可能に設けられている。一対のノズル支持体140は、Y方向において対向するように配置されている。
【0023】
ノズル装置150は、Y方向において一対のノズル支持体140の間で一対のノズル支持体140により支持されている。一対のノズル支持体140のうち少なくとも一方には、X方向駆動部141、Z方向駆動部142および液供給部143が内蔵されている。本実施の形態において、ノズル支持体140が移動機構の例である。
【0024】
ノズル装置150は、Y方向に延びるノズルブロック151を含む。ノズルブロック151は、上面、前面、後面、前傾斜面、後傾斜面、底面および両側面を有する。ノズルブロック151の底面は、平坦に形成され、基板処理面Wpに平行に配置される。底面の前端は前傾斜面の下端につながり、前傾斜面の上端は前面につながる。底面の後端は後傾斜面の下端につながり、後傾斜面の上端は後面につながる。前面の上端と後面の上端とは上面につながる。上面、前面、後面、前傾斜面、後傾斜面および底面の両端は、それぞれ両側面につながる。ノズルブロック151の底面には、Y方向に延びるスリット状の吐出口151aが形成されている。スリット状の吐出口151aのY方向における長さは、基板Wの直径以上である。本実施の形態において、ノズル装置150のノズルブロック151がノズルの例である。また、ノズルブロック151は、ノズル支持体140に設けられた液供給部143を介して
図2で後述する処理液供給系160に接続されている。
【0025】
X方向駆動部141は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、制御部110の制御に基づいて、一対のノズル支持体140を一対のステージ支持体120のガイドレール121に沿って+X方向および-X方向に移動させる。Z方向駆動部142は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、制御部110の制御に基づいて、一対のノズル支持体140によって支持されるノズル装置150をZ方向およびその逆方向(上下方向)に移動させる。これにより、基板処理装置100においては、
図1に白抜きの矢印AX,AZで示すように、ステージ装置130のプレート部材131上に載置された基板W上で、ノズル装置150を±X方向および上下(±Z方向)に移動させることが可能である。
【0026】
制御部110は、ピン昇降駆動部134、吸引駆動部135、X方向駆動部141、およびZ方向駆動部142の動作を制御する。制御部110は、CPU、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。CPUが記憶装置に記憶された処理プログラムをRAM上で実行することにより基板処理装置100の各部の動作が制御される。
【0027】
基板処理装置100が基板に処理液を塗布する間、プレート部材131上に基板Wが吸着保持された状態で、ノズル装置150のノズルブロック151が基板Wの上方の空間を+X方向に移動する。このとき、ノズルブロック151の底面が基板処理面Wpに近接している。ノズル装置150のZ方向の位置(高さ)は、ノズル装置150の底面と基板処理面Wpとの間の距離が、ノズルブロック151内の処理液が毛細管現象により吐出口151aから基板処理面Wpに引き出される最大の距離以下にとなるように設定される。このように、毛細管現象を利用してノズル装置150の吐出口151aから処理液を供給しつつ基板W上に処理液を塗布する処理は、キャピラリ塗布処理と呼ばれる。
【0028】
図2は、処理液供給系の基本構成を示す図である。
図2においては、上述したステージ支持体120、ステージ装置130、ノズル支持体140およびノズル装置150の構成の図示を省略している。
【0029】
基板処理装置100は、処理液供給系160をさらに含む。処理液供給系160は、貯留部161、バルブ162、圧力制御部165および配管p1を含む。貯留部161は、ノズル装置150の液供給部143と配管p1により接続される。貯留部161とノズル装置150の液供給部143との間にはバルブ162が配置される。貯留部161には、キャピラリ塗布処理で用いられる処理液が貯留される。バルブ162は、ノズル装置150への処理液の供給および処理液の供給の停止を切り替えるために用いられる。
【0030】
圧力制御部165は、貯留部161内の圧力を変化させる。本実施の形態においては、圧力制御部165は、電空レギュレータである。圧力制御部165は、制御部110により制御される。制御部110は、圧力制御部165を制御して、貯留部161内の圧力を調整する。これにより、ノズル装置150内の処理液の圧力が調整される。
【0031】
基板処理装置100は、圧力制御部165を備えるので、貯留部161に収容された処理液の液面の高さをノズル装置150の吐出口151aの高さに揃える必要がなくなる。このため、貯留部161に収容される処理液の液面の高さを調整するための煩雑な制御をする必要がない。また、ノズルブロック151内の処理液に負圧または陽圧を加えることができるので、吐出口151aから吐出される処理液の量を調整することができる。なお、圧力制御部165については、貯留部161内の圧力が調整可能であれば、電空レギュレータ以外の構成が用いられてもよい。例えば、圧力制御部165としては、貯留部161に収容された処理液の液面の高さとノズル装置150の吐出口151aの高さとを相対的に調整可能な構成であってもよい。
【0032】
キャピラリ塗布処理が実行される間、ノズルブロック151内の処理液に対して吐出口151aの外に向かう方向と反対の方向の力が付与される。具体的には、圧力制御部165は、貯留部161内の圧力を負圧にする。負圧とは、外気圧よりも低い第1の圧力である。第1圧力は、処理液の種類、基板Wの基板処理面Wpの物性およびノズルブロック151の形状により変化する。第1圧力は、好ましくは、0Pa~500Paである。
【0033】
図3~
図5は、ノズル装置150の基板処理面Wpに対する処理液のキャピラリ塗布処理を説明するためのノズル装置150の平面図である。
図3~
図5においては、吐出口151aと基板処理面Wpとが平面視で重なる部分を重畳部分OPと呼ぶ。また、基板Wの基板処理面Wpの外周から径方向に所定の距離の部分を円環部分と呼ぶ。
【0034】
図3~
図5においては、ノズルブロック151が基板Wの第1の端部e1から基板Wの第2の端部e2に向かう+X方向に進行する間のキャピラリ塗布処理が示される。このとき、ノズルブロック151の底面と基板処理面Wpとの間で発生する毛細管現象により吐出口151aから基板Wの基板処理面Wpに処理液が供給される。
【0035】
図3は、キャピラリ塗布処理の前半部分を実行するノズル装置150の平面図である。
図3を参照して、キャピラリ塗布処理の前半部分においては、ノズルブロック151が基板Wの第1の端部e1から基板Wの中心部WCまで進行する。ここで、吐出口151aの基板Wの上方に位置する部分を重畳部分OPという。重畳部分OPは、平面視で吐出口15が基板Wと重なる部分である。重畳部分OPのY方向の長さL1は、ノズルブロック151が基板Wの中心部WCに近いほど長い。このように、キャピラリ塗布処理の前半部分において、ノズルブロック151が基板Wの上方でX方向に進行するにつれて重畳部分OPのY方向の長さL1が増加する。
【0036】
重畳部分OPのY方向の両端は、基板Wの基板処理面Wpの第1の端部e1および部分外縁OE1,OE3により定まる。ノズルブロック151が+X方向に進行するにつれて、ノズルブロック151の重畳部分OPのY方向の長さは増加するので、重畳部分OPのY方向の両端に接する外側の部分は、処理液を供給しない状態から処理液を供給する状態に変化する。そのため、基板Wの円環部分であって第1の端部e1および部分外縁OE1,OE3と接する部分においては、他の部分よりも、多くの処理液が供給される傾向がある。
【0037】
図4は、キャピラリ塗布処理の後半部分を実行するノズル装置150の第1の平面図である。
図4を参照して、キャピラリ塗布処理の後半部分においては、ノズルブロック151が基板Wの中心部WCから基板Wの第2の端部e2まで進行する。この場合、重畳部分OPのY方向の長さL1は、ノズルブロック151が第2の端部e2に近いほど短い。このように、キャピラリ塗布処理の後半部分においてはノズルブロック151が基板Wの上方でX方向に進行するにつれて重畳部分OPのY方向の長さL1が減少する。
【0038】
重畳部分OPのY方向の両端は、基板Wの基板処理面Wpの部分外縁OE2,OE4および第2の端部e2により定まる。ノズルブロック151が+X方向に進行するにつれて、ノズルブロック151の重畳部分OPのY方向の長さが減少するので、重畳部分OPのY方向の両端に接する部分は、処理液を供給する状態から処理液を供給しない状態に変化する。また、ノズルブロック151の底面においては、重畳部分OPのY方向の両端に接する余剰領域ER1,ER2が発生する。余剰領域ER1,ER2は、基板Wに処理液を供給する状態から処理液を供給しない状態に変化する領域である。そのため、基板Wの基板処理面Wpの円環部分であって部分外縁OE2,OE4に接する部分においては、基板処理面Wpの他の部分よりも、多くの処理液が供給される傾向がある。
【0039】
図5は、キャピラリ塗布処理の後半部分を実行するノズル装置150の第2の平面図である。
図5に示すノズル装置150は、
図4に示したノズル装置150よりも重畳部分OPが第2の端部e2側に位置する。
図4と
図5を比較すると、ノズルブロック151が第2の端部e2に近いほど余剰領域ER1,ER2のY方向の長さが長くなる。そのため、基板Wの基板処理面Wpの円環部分であって第2の端部e2に近い部分ほど、基板処理面Wpの他の部分よりも、多くの処理液が供給される傾向がある。
【0040】
このように、キャピラリ塗布処理において、基板Wの外周が、重畳部分OPの両端部を定め、重畳部分OPの両端部において状態が変化する。そして、基板Wの基板処理面Wpの円環部分において、基板処理面Wpの他の部分よりも、多くの処理液が供給される傾向がある。ここで、キャピラリ塗布処理において、ノズルブロック151の移動速度を一定にした場合における重畳部分OPのY方向の長さの変化について説明する。
【0041】
図6は、キャピラリ塗布時のノズルブロックの経時的な位置の変化の一例を示す第1の図である。キャピラリ塗布処理において、ノズルブロック151が第1の端部e1に位置する時点をキャピラリ塗布の開始時点t0とし、ノズルブロック151が第2の端部e2に位置する時点をキャピラリ塗布の終了時点t2とする。開始時点t0と終了時点t2との中間の時点をt1とする。
図6の横軸には、キャピラリ塗布の経過時間tが示され、縦軸には、ノズルブロック151の位置xが示される。
【0042】
図6を参照して、直線l1aは、ノズルブロック151の位置xの経時的な変化を示す。ノズルブロック151が等速で移動するので、ノズルブロック151の位置xは、時間tの経過に比例して増加する。ここで、直線l1aは、次式(1)で表される。
【0043】
【0044】
直線l1aは、キャピラリ塗布の開始時点t0においてノズルブロック151が第1の端部e1に位置し、中間時点t1においてノズルブロック151が中心部WCに位置し、終了時点t2においてノズルブロック151が第2の端部e2に位置することを示す。
【0045】
図7は、キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの経時的な変化の一例を示す第1の図である。
図7の横軸には、キャピラリ塗布の経過時間tが示され、縦軸には、重畳部分OPのY方向の長さL1の大きさyが示される。曲線l2aは、キャピラリ塗布時の重畳部分OPのY方向の長さL1の経時的な変化を示す。曲線l2aにより示されるように、ノズルブロック151が定速で移動する場合に、重畳部分OPのY方向の長さL1が円形状の基板Wの外周部の形状に起因して変化することが判る。曲線l2aは、次式(2)で示される。
【0046】
【0047】
曲線l2aによれば、キャピラリ塗布時においては、重畳部分OPのY方向の長さL1の大きさyは、開始時点t0付近で急激に増加し、急激に増加した後中間時点t1にかけて徐々に増加し、中間時点t1で基板Wの直径2rに到達する。また、重畳部分OPのY方向の長さL1の大きさyは、中間時点t1から終了時点t2付近まで徐々に減少し、終了時点t2付近から終了時点t2にかけて急激に減少することがわかる。
【0048】
図8は、キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの単位時間あたりの変化量の経時的な変化の一例を示す第1の図である。
図8の横軸には、キャピラリ塗布の経過時間tが示され、縦軸には、長さL1の単位時間あたりの変化量が示される。曲線l3aは、重畳部分OPのY方向の長さL1の変化量の経時変化が示される。曲線l3aは、次式(3)で示される。式(3)は、式(2)を時間で微分することにより求めることができる。
【0049】
【0050】
曲線l3aは、時刻t0から所定時間経過するまでの期間RA1においては、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間あたりの変化量が著しく変化している。曲線l3aは、時刻t2より所定時間前から時刻t2までの期間RA2においては、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間あたりの変化量が著しく変化している。
【0051】
上述したように、ノズルブロック151が第1の端部e1から基板Wの中心部WCへ移動する場合、重畳部分OPの両端部において処理液が供給されない状態から処理液が供給される状態に変化する。ノズルブロック151の移動速度が一定である場合、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が常に変化する。すなわち、重畳部分OPの面積の単位時間当たりの変化量が常に変化する。このため、基板処理面Wpの円環部分のうち部分外縁OE1,OE3に相当する部分の処理液の膜の厚みが他の部分に比較して厚くなる。
【0052】
特に、期間RA1における重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が他の期間における変化量よりも大きい。すなわち、重畳部分OPの面積の単位時間当たりの変化量は、期間RA1における変化量が他の期間における変化量よりも大きい。このため、基板処理面Wpの円環部分のうち期間RA1にノズルブロック151と重なる部分の処理液の膜の厚みが他の部分に比較して厚くなる。
【0053】
また、ノズルブロック151が基板Wの中心部WCから第2の端部e2への移動する場合、重畳部分OPの両端部において処理液を供給する状態から処理液を供給しない状態に変化する。ノズルブロック151が定速で移動する場合、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が常に変化する。すなわち、重畳部分OPの面積の単位時間当たりの変化量が常に変化する。このため、基板処理面Wpの円環部分のうち部分外縁OE2,OE4に相当する部分の処理液の膜の厚みが他の部分に比較して厚くなる。
【0054】
特に、期間RA2における重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が他の期間における変化量よりも大きい。すなわち、重畳部分OPの面積の単位時間当たりの変化量は、期間RA2における変化量が他の期間における変化量よりも大きい。このため、基板処理面Wpの円環部分のうち期間RA2にノズルブロック151と重なる部分の処理液の厚みが他の部分に比較して厚くなる。
【0055】
そこで、本実施の形態の基板処理装置100においては、基板Wの部分外縁OE1~OE4の形状に基づいて、ノズルブロック151の移動速度を変化させる。具体的には、本実施の形態の基板処理装置100では、キャピラリ塗布処理を実行している間における、重畳部分OPの長手方向の長さL1の単位時間当たりの変化量を一定にする。
【0056】
(2)基板処理装置100の動作例
図9は、キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの単位時間あたりの変化量の経時変化の一例を示す第2の図である。横軸は時間を示し、縦軸は重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間あたりの変化量を示す。
図9を参照して、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間あたりの変化量は、前半部分(t0≦t<t1)で一定であり、後半部分(t1≦t≦t2)で一定である。重畳部分OPのY方向の長さL1の理想的な変化量l3bは、下式(4)で示される。
【0057】
【0058】
式(4)において、Cは定数である。重畳部分OPのY方向の長さyの単位時間当たりの変化量が一定となる。ノズルブロック151がX方向に移動することにより重畳部分OPがY方向における両端で拡大または縮小する。重畳部分OPが拡大する部分は処理液を吐出しない状態から処理液を吐出する状態に変化し、重畳部分OPが縮小する部分は処理液を吐出する状態から吐出しない状態に変化する。重畳部分OPのY方向の長さの単位時間当たりの変化量が一定なので、重畳部分OPのうちで状態が変化する部分の単位時間当たりの変化量が一定になる。これにより、基板Wの円環部分内に形成される処理液の膜厚のX方向における変動を抑制することができる。
【0059】
図10は、キャピラリ塗布時の重畳部分のY方向の長さの経時的な変化の一例を示す第2の図である。横軸は時間を示し、縦軸は重畳部分OPのY方向の長さを示す。重畳部分OPのY方向の長さL1は、時間に比例する。重畳部分OPのY方向の長さL1は、前半部分で0から2rまで増加し、後半部分で2rから0まで減少する。重畳部分OPのY方向の長さL1は、式(4)および式(4’)を積分することにより求められる。
【0060】
図11は、キャピラリ塗布時のノズルブロックの経時的な位置の変化の一例を示す第2の図である。横軸は時間を示し、縦軸は、ノズルブロック151の位置を示す。ノズルブロック151の位置xは、次式(6)で示される。式(6)は、ノズル位置xに関する微分方程式である次式(5)の一般解である。式(5)は、式(3)に対して式(4)および式(1)を代入し、整理することにより得られる。式(6)において、kは、定数である。
【0061】
【0062】
【0063】
次に、キャピラリ塗布処理における速度制御の具体例を示す。ここでは、キャピラリ塗布処理の処理時間を100秒とする。キャピラリ塗布処理の処理時間は、ノズルブロック151の吐出口151aが第1の端部e1から第2の端部e2まで移動する時間である。ここでは、キャピラリ塗布処理の処理期間を100等分した分割区間が定義される。
【0064】
制御部110は、分割区間に対するキャピラリ塗布を開始する毎に、式(6)で定まる分割区間の開始位置とその分割区間の終了位置とを求め、分割区間それぞれにおけるノズルブロック151の移動速度を決定する。制御部110は、X方向駆動部141を制御して、分割区間ごとにノズルブロック151の移動速度を変更させる。これにより、複数の分割区間それぞれにおける、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量を一定にした状態でキャピラリ塗布処理することができる。
【0065】
上述した具体例においては、キャピラリ塗布処理の処理期間を100等分した分割区間を定義する場合を例に説明したが、分割数はこれに限定されることなく、これより多くてもよいし、少なくてよい。また、キャピラリ塗布処理の処理期間を分割するのに代えて、基板Wの基板処理面WpをX方向に等間隔に複数の分割区間に分割してもよい。また、複数の分割区間は等間隔でなくてもよく、X方向にそれぞれ異なる間隔で形成されてもよい。この場合、X方向に単位距離当たりの重畳部分OPの長手方向の長さL1の変化量が大きい分割区間ほど、X方向における分割区間の間隔を短くしてもよい。
【0066】
図12は、キャピラリ塗布処理の流れの一例を示すフローチャートである。キャピラリ塗布処理は、制御部110が備えるCPUがRAMに格納されたキャピラリ塗布処理プログラムを実行することにより、CPUにより実行される処理である。
【0067】
図12を参照して、制御部110が備えるCPUは、処理対象の基板WをX方向の分割区間の数Nを決定する(ステップS1)。上述した具体例においては、分割区間の数Nは100である。分割区間の数Nは、処理対象の基板Wに応じて予め定められていてもよい。次のステップS2において、制御部110のCPUは、変数nに1を設定する。変数nは、処理対象となる分割区間に付される番号を示す。
【0068】
次のステップS3において、制御部110のCPUは、分割区間Rnにおける移動速度を決定する。具体的には、分割区間Rnの開始時刻および終了時刻それぞれに対するノズル位置xが式(6)から求められる。そして、開始時刻におけるノズル位置xと終了時刻におけるノズル位置xとの差から移動距離が算出され、移動距離と分割区間Rnとから移動速度が算出される。
【0069】
次のステップS4において、制御部110のCPUは、X方向駆動部141を制御して、ステップS3で決定された移動速度でノズルブロック151を移動させる。次のステップS5において、制御部110のCPUは、分割区間Rnが終了したか否かを判定する。分割区間Rnが終了していない場合、ノズルブロック151の移動速度がステップS3で決定された移動速度が継続されるが、分割区間Rnが終了した場合、処理は、ステップS6に進む。
【0070】
次のステップS6において、制御部110のCPUは、変数nに1を加算し、処理をステップS7に進める。次のステップS7において、制御部110のCPUは、変数nが分割区間の数Nより大きいか否かを判定する。変数nが分割区間の数N以下である場合、処理は、ステップS3に戻る。変数nが分割区間の数Nより大きくなるまで、ステップS3~ステップS6の処理が繰り返される。これにより、分割区間R1~RNそれぞれの期間で決定された移動速度でノズルブロック151が移動する。ステップS7において、変数nが分割区間の数Nより大きいと判定された場合、キャピラリ塗布処理は終了する。
【0071】
(3)実施の形態の効果
上記実施の形態の基板処理装置100によれば、基板Wの部分外縁OE1~OE4の形状に基づいて決定される移動速度でノズルブロック151および基板Wが相対的に移動する。それにより、基板Wの基板処理面Wpの外周から径方向に所定の距離の円環部分内における処理液に加わる力の変動を一定にすることができる。このため、円環部分内に形成される処理液の厚みの増加を抑制することができる。その結果、基板W上に形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制することが可能になる。
【0072】
また、ノズルブロック151および基板WがX方向に相対的に移動する間に、重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が一定となる。ノズルブロック151および基板WがX方向に相対的に移動することにより重畳部分OPがY方向における両端で拡大または縮小する。重畳部分OPが拡大する部分は処理液を吐出しない状態から処理液を吐出する状態に変化し、重畳部分OPが縮小する部分は処理液を吐出する状態から吐出しない状態に変化する。重畳部分OPのY方向の長さL1の単位時間当たりの変化量が一定なので、重畳部分OPのうちで状態が変化する部分の単位時間当たりの変化量が一定になる。これにより、基板Wの基板処理面Wpの部分外縁OE1~OE4から径方向に所定の距離の円環部分内に形成される処理液の膜厚のX方向における変動を抑制することができる。
【0073】
また、上記式(6)を用いてノズルブロック151の移動する移動速度が決定されるので、ノズルブロック151の移動する移動速度を容易に決定することができる。このため、ノズルブロック151の制御が容易となる。
【0074】
(4)他の実施の形態
(4-1)上記実施の形態においては、ノズルブロック151の移動速度を基板の外周形状に基づいて変化させることにより、基板Wの部分外縁OE1~OE4の処理液の厚みの増加を抑制する例が記載されるが、本発明はこれに限定されない。ノズルブロック151の中心部WCから第2の端部e2への移動時には、余剰領域ER1,ER2が発生する(
図4および
図5参照)。そこで、上記実施の形態の基板処理装置100の動作例に加えて、制御部110は、
図2の圧力制御部165を制御することにより、ノズルブロック151の中心部WCから第2の端部e2への移動時に、貯留部161内の圧力を第1の圧力よりも低い第2の圧力としてもよい。貯留部161内の圧力を第2の圧力にする場合、ノズルブロック151内の処理液においては、吐出口151aの外部に向かう方向と反対の方向の力がさらに付与される。第2の圧力は、キャピラリ塗布において、基板処理面Wpに供給され得る処理液の量を維持しつつ、余剰領域ER1,ER2に供給される得る処理液の量を減少させることが可能な圧力である。第2の圧力としては、処理液の種類、基板Wの基板処理面Wpの物性およびノズルブロック151の形状により変化する。第2圧力は、好ましくは、0Pa~500Paである。
【0075】
貯留部161内の圧力を第2の圧力とする場合、キャピラリ塗布において、余剰領域ER1,ER2に供給される得る処理液の量を減少させることが可能になる。その結果、基板処理面Wpの部分外縁OE2,OE4における、基板Wに形成される処理液の膜の厚みの増加をさらに抑制することができる。したがって、基板処理面Wpに形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制することが可能になる。同様に、ノズルブロック151の第1の端部e1から中心部WCへの移動時に、貯留部161内の圧力を第2の圧力としてもよい。また、貯留部161内の圧力は、ノズルブロック151の移動速度の変化に応じて変化させてもよい。
【0076】
(4-2)上記実施の形態においては、ノズル支持体140が移動機構の例であることが記載されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板処理装置100は、移動機構として、プレート部材131をX方向に移動させることが可能な構成をさらに備えてもよい。この場合、キャピラリ塗布処理は、静止するノズルブロック151に対してプレート部材131が移動することにより行われてもよく、移動するノズルブロック151に対してプレート部材131が移動することにより行われてもよい。
【0077】
(5)実施の形態の総括
(第1項) 本発明の一態様に係る基板処理装置は、
外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて前記基板を保持する保持部と、
一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、
毛細管現象により前記ノズルの前記吐出口から前記基板の前記主面に処理液を吐出させるために、前記保持部に保持された前記基板の上方で前記ノズルの前記底部と前記基板の前記主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で前記一方向と交差する交差方向に前記ノズルおよび前記基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御して、前記基板の外周形状に基づいて決定される移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる制御部と、を備える。
【0078】
第1項に記載の基板処理装置によれば、基板の上方において、移動機構がノズルの底部と基板との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態でノズルおよび基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させるので、毛細管現象によりノズルの吐出口から基板の主面に処理液が塗布される。基板の外周形状に基づいて決定される移動速度でノズルおよび基板が相対的に移動するので、基板の主面の外周から径方向に所定の距離の円環部分内における処理液に加わる力の変動を一定にすることができる。それにより、円環部分内に形成される処理液の厚みの増加を抑制することができる。その結果、基板上に形成される処理液の膜の厚さのばらつきを抑制することが可能になる。
【0079】
(第2項) 第1項に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記吐出口のうち前記基板の上方に位置する重畳部分の前記一方向における長さの単位時間当たりの変化量に基づいて前記移動速度を決定してもよい。
【0080】
第2項に記載の基板処理装置によれば、ノズルの吐出口のうち基板の上方に位置する重畳部分の一方向の長さの単位時間当たりの変化量に基づいて相対的な移動速度が決定される。このため、ノズルと基板との相対的な移動速度を容易に決定することができる。
【0081】
(第3項) 第2項に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記重畳部分の前記一方向の長さの単位時間当たりの変化量が一定となる速度を前記移動速度として決定してもよい。
【0082】
第3項に記載の基板処理装置によれば、ノズルおよび基板が交差方向に相対的に移動する間に、重畳部分の一方向の長さの単位時間当たりの変化量が一定となる。ノズルおよび基板が交差方向に相対的に移動することにより重畳部分が一方向における両端で拡大または縮小する。重畳部分が拡大する部分は処理液を吐出しない状態から処理液を吐出する状態に変化し、重畳部分が縮小する部分は処理液を吐出する状態から吐出しない状態に変化する。重畳部分の一方向の長さの単位時間当たりの変化量が一定なので、重畳部分のうちで状態が変化する部分の単位時間当たりの変化量が一定になる。これにより、基板の主面の外周から径方向に所定の距離の円環部分内に形成される処理液の膜厚の交差方向における変動を抑制することができる。
【0083】
(第4項) 第1項~第3項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、前記制御部は、次の関係式を用いて前記移動速度を決定してもよい。
【0084】
【0085】
但し、xは基板に対するノズルの位置であり、tは時刻であり、rは前記基板の半径であり、kおよびCは定数である。
【0086】
第4項に記載の基板処理装置によれば、上記関係式を用いて移動速度を決定するので、移動速度を容易に決定することができる。このため、移動機構の制御が容易となる。
【0087】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記制御部は、前記基板の前記第1の端部、基板の中心および前記第2の端部の順に基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記基板の中心と前記第2の端部との間の上方に位置する間に、前記移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させてもよい。
【0088】
第5項に記載の基板処理装置によれば、ノズルが基板の中心と第2の端部との間の上方に位置するときに、基板の外周形状に基づいて決定された移動速度でノズルおよび基板を相対的に移動させる。このため、ノズルの吐出口のうち基板の上方に位置する重畳部分の一方向の長さが減少する期間に基板に形成される処理液の膜の厚みの変動を抑制することができる。
【0089】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記制御部は、前記基板の前記第1の端部、基板の中心および前記第2の端部の順に基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置する間に、前記移動速度で前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させてもよい。
【0090】
第6項に記載の基板処理装置によれば、ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置するときに、移動速度でノズルおよび基板を相対的に移動させる。このため、ノズルの吐出口のうち基板の上方に位置する重畳部分の一方向の長さが増加する期間に基板に形成される処理液の膜の厚みの変動を抑制することができる。
【0091】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
外気圧よりも低い第1の圧力を前記ノズル内の前記処理液に付与する圧力制御部を、さらに備えてもよい。
【0092】
第7項に記載の基板処理装置によれば、ノズル内の処理液に外気圧よりも低い第1の圧力が付与されるので、毛細管現象により吐出口から基板の主面に対して処理液を供給することができる。
【0093】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記圧力制御部は、前記制御部が前記基板の前記第1の端部、基板の中心および前記第2の端部の順に基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記基板の中心と前記第2の端部との間の上方に位置する間に、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力を前記ノズル内の前記処理液に付与してもよい。
【0094】
第8項に記載の基板処理装置によれば、ノズルが基板の中心と第2の端部との間の上方に位置するときに、ノズル内の処理液に対して第1の圧力よりも低い第2の圧力が付与されるので、ノズルが基板の中心から第2の端部に移動する間に基板に供給される処理液の量が抑制される。したがって、基板の主面の外周から径方向に所定の距離の円環部分内に形成される処理液の膜の厚みの増加をより抑制することができる。
【0095】
(第9項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記交差方向における前記基板の一端部を第1の端部とし、
前記交差方向における前記基板の他端部を第2の端部とし、
前記圧力制御部は、前記制御部が前記基板の前記第1の端部、基板の中心および前記第2の端部の順に基板の上方を前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる場合、前記ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置する間に、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力を前記処理液に付与してもよい。
【0096】
第9項に記載の基板処理装置によれば、ノズルが前記第1の端部と前記基板の中心との間の上方に位置するときに、ノズル内の処理液に対して第1の圧力よりも低い第2の圧力が付与されるので、ノズルが基板の第1の端部から基板の中心に移動する間に基板に供給される処理液の量が抑制される。したがって、基板の主面の外周から径方向に所定の距離の円環部分内に形成される処理液の膜の厚みの増加をより抑制することができる。
【0097】
(第10項) 本発明の他の態様に係る基板処理方法は、
基板処理装置で実行される基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、外周の少なくとも一部が円形状の基板の主面を上方に向けて前記基板を保持する保持部と、
一方向に延びる吐出口が形成された底部を有するノズルと、を備え、
毛細管現象により前記ノズルの前記吐出口から前記基板の前記主面に処理液を吐出させるために、前記保持部に保持された前記基板の上方で前記ノズルの前記底部と前記基板の前記主面との間に所定の距離以下の隙間を隔てた状態で前記一方向と交差する交差方向に前記ノズルおよび前記基板の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる移動ステップと、
前記基板の外周形状に基づいて前記ノズルおよび前記基板を相対的に移動させる移動速度を決定するステップと、を含む。
【0098】
(第11項) 第1項~第9項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、前記一方向における前記吐出口の長さは、前記基板の前記一方向における長さより長くてもよい。
【0099】
第11項に記載の基板処理装置においては、一方向における吐出口の長さは、基板の一方向における長さより長いので、一度のノズルの移動で基板の主面の全面に対して処理液を供給することが可能になる。
【符号の説明】
【0100】
100…基板処理装置,110…制御部,120…ステージ支持体,121…ガイドレール,130…ステージ装置,131…プレート部材,132…プレート調整部,133…支持ピン,134…ピン昇降駆動部,135…吸引駆動部,138…ダミー塗布板駆動部,139…ダミー塗布板駆動部,140…ノズル支持体,141…X方向駆動部,142…Z方向駆動部,143…液供給部,150…ノズル装置,151…ノズルブロック,151a…吐出口,160…処理液供給系,161…貯留部,162…バルブ,165…圧力制御部,OP…重畳部分,W…基板,WC…中心部,Wp…基板処理面,ax…仮想直線,e1…第1の端部,e2…第2の端部,s1…第1の側部,s2…第2の側部