(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120474
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】印刷装置、および、印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 109
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027293
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA08
2C056EC07
2C056EC32
2C056EC69
2C056EC77
2C056EC79
2C056FA03
2C056FA04
2C056FB07
2C056FB08
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA11
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】ある程度広い範囲に印刷する場合であっても画質の低下を抑制すること。
【解決手段】液体を吐出するヘッドと、ヘッドを支持する先端部と基部とを有し、基部に対してヘッドの位置を相対的に変化させるロボットと、基部に対してワークを相対的に移動させる移動機構と、を有する印刷装置であって、ロボットによってヘッドを主走査方向に移動させつつヘッドから液体を吐出することにより、ワーク上の印刷領域に液体を吐出する複数の印刷動作を実行し、複数の印刷動作は、印刷領域内の第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、印刷領域内の第2領域に液体を吐出する第2印刷動作とを含み、第1印刷動作と第2印刷動作との間に移動機構によって主走査方向に基部に対してワークを相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、第1領域と第2領域とは主走査方向に隣接し、印刷領域には、第1領域と第2領域とが互いに重複する第1重複領域が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持する先端部と、基部と、を有し、前記基部に対して前記ヘッドの位置を相対的に変化させるロボットと、
前記基部に対してワークを相対的に移動させる移動機構と、
を有する印刷装置であって、
前記ロボットによって前記ヘッドを主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出することにより、前記ワーク上の印刷領域に液体を吐出する複数の印刷動作を実行し、
前記複数の印刷動作は、
前記印刷領域内の第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、
前記印刷領域内の第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、
を含み、
前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間に、前記移動機構によって前記主走査方向に前記基部に対して前記ワークを相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、
前記第1領域と、前記第2領域と、は前記主走査方向に隣接し、
前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第2領域と、が互いに重複する第1重複領域が設けられる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記複数の印刷動作は、前記印刷領域内の第3領域に液体を吐出する第3印刷動作を含み、
前記第2領域と、前記第3領域と、は前記主走査方向と交わる副走査方向に隣接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2印刷動作と前記第3印刷動作との間において、前記移動機構は、前記ワークに対する前記基部の相対的な位置を維持する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2領域と、前記第3領域と、が互いに重複する第2重複領域が設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、がいずれも重複する第3重複領域が設けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1重複領域の前記主走査方向における長さは、前記第2重複領域の前記副走査方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1重複領域の前記主走査方向における長さは、前記第2重複領域の前記副走査方向における長さよりも短い、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第2印刷動作および前記第3印刷動作の前または後に、前記主走査移動動作と前記第1印刷動作を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記複数の印刷動作は、前記印刷領域内の第4領域に液体を吐出する第4印刷動作を含み、
前記第3領域と、前記第4領域と、は前記主走査方向に隣接し、
前記印刷領域には、前記第3領域と、前記第4領域と、が互いに重複する第4重複領域が設けられ、
前記第1領域と、前記第4領域と、は前記副走査方向に隣接し、
前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第4領域と、が互いに重複する第5重複領域が設けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、がいずれも重複する第3重複領域が設けられ、
前記第3重複領域は、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域と、がいずれも重複する、
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域とのうちの3つがいずれも重複し、且つ、1つが重複しない第6重複領域が、前記第3重複領域に隣接して設けられる、
ことを特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記第3重複領域と、前記第6重複領域とは、前記主走査方向に隣接して設けられる、
ことを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記第6重複領域は、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、がいずれも重複し、且つ、前記第4領域が重複しない領域である、
ことを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記印刷領域には、
前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域と、がいずれも重複する領域が設けられておらず、
前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域とのうちの3つがいずれも重複し、かつ、他の1つが重複しない第8重複領域と、
前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域とのうちの3つがいずれも重複し、かつ、他の1つが重複しない第9重複領域と、
が設けられており、
前記第8重複領域において重複する領域の組み合わせと、前記第9重複領域において重複する領域の組み合わせと、は互いに異なる、
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記第8重複領域と前記第9重複領域との間には、第10重複領域が設けられ、
前記第10重複領域は、
前記第1領域と前記第3領域とが重複し、且つ、前記第2領域と前記第4領域とが重複しない、または、
前記第2領域と前記第4領域とが重複し、且つ、前記第1領域と前記第3領域とが重複しない、
ことを特徴とする請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記第8重複領域の少なくとも一部における前記副走査方向における位置と、前記第9重複領域の少なくとも一部における前記副走査方向における位置とは、同じである、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記第8重複領域は、前記第2領域と、前記第3領域と、前記第4領域と、がいずれも重複し、かつ、前記第1領域が重複しない領域であり、
前記第9重複領域は、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第4領域と、がいずれも重複し、かつ、前記第3領域が重複しない領域である、
ことを特徴とする請求項16に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記主走査移動動作は、前記第1印刷動作と前記第4印刷動作との前であって前記第2印刷動作と前記第3印刷動作との後に実行されるか、前記第1印刷動作と前記第4印刷動作との後であって前記第2印刷動作と前記第3印刷動作との前に実行される、
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項19】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持する先端部と、基部と、を有し、前記基部に対して前記ヘッドの位置を相対的に変化させるロボットと、
前記基部に対してワークを相対的に移動させる移動機構と、
を有する印刷装置の印刷方法であって、
前記印刷装置は、前記ロボットによって前記ヘッドを主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出することにより、前記ワーク上の印刷領域に液体を吐出する複数の印刷動作を実行し、
前記複数の印刷動作は、
前記印刷領域内の第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、
前記印刷領域内の第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、
を含み、
前記印刷装置は、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間に、前記移動機構によって前記主走査方向に前記基部に対して前記ワークを相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、
前記第1領域と、前記第2領域と、は前記主走査方向に隣接し、
前記ワーク上には、前記第1領域と、前記第2領域と、が互いに重複する第1重複領域が設けられる、
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、および、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出するヘッドから、ワークの表面に液体を吐出することにより印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、ヘッドの位置を変化させるロボットを有する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の印刷装置では、ロボットによってヘッドが移動可能な範囲より広い等、ある程度広い範囲に印刷する場合に、画質が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の印刷装置は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持する先端部と、基部と、を有し、前記基部に対して前記ヘッドの位置を相対的に変化させるロボットと、前記基部に対してワークを相対的に移動させる移動機構と、を有する印刷装置であって、前記ロボットによって前記ヘッドを主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出することにより、前記ワーク上の印刷領域に液体を吐出する複数の印刷動作を実行し、前記複数の印刷動作は、前記印刷領域内の第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、前記印刷領域内の第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、を含み、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間に、前記移動機構によって前記主走査方向に前記基部に対して前記ワークを相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、前記第1領域と、前記第2領域と、は前記主走査方向に隣接し、前記印刷領域には、前記第1領域と、前記第2領域と、が互いに重複する第1重複領域が設けられる。
【0006】
また、本開示の印刷方法は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持する先端部と、基部と、を有し、前記基部に対して前記ヘッドの位置を相対的に変化させるロボットと、前記基部に対してワークを相対的に移動させる移動機構と、を有する印刷装置の印刷方法であって、前記印刷装置は、前記ロボットによって前記ヘッドを主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出することにより、前記ワーク上の印刷領域に液体を吐出する複数の印刷動作を実行し、前記複数の印刷動作は、前記印刷領域内の第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、前記印刷領域内の第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、を含み、前記印刷装置は、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間に、前記移動機構によって前記主走査方向に前記基部に対して前記ワークを相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、前記第1領域と、前記第2領域と、は前記主走査方向に隣接し、前記ワーク上には、前記第1領域と、前記第2領域と、が互いに重複する第1重複領域が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る印刷装置1の概略を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係るバンド領域BRを説明するための図。
【
図6】頂点P1から頂点P2までの記録比率の変化を説明するための図。
【
図7】頂点P1から頂点P4までの記録比率の変化を説明するための図。
【
図8】第1実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートを示す図。
【
図9】第1変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図10】第2変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図11】第3変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図12】第4変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図14】第5変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図15】第6変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
【
図16】第7変形例に係る印刷領域WaGの区分けの例を説明する図。
【
図17】第8変形例に係る印刷装置1Hの概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限らない。
【0009】
以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて説明を行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のロボット2が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。当該ワールド座標系には、ロボット2の後述の基部210の位置を基準とするベース座標系がキャリブレーションにより対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてロボット2の動作を制御する場合が例示される。
【0011】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0012】
1-1.印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る印刷装置1の概略を示す斜視図である。印刷装置1は、ワークWの表面の一部または全部の領域である印刷領域Waにインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0013】
ワークWは、画像が形成される範囲となる印刷領域Waを含む表面を有する。
図1に示すワークWは、立体形状を有するが、平面形状でもよい。従って、印刷領域Waは、
図1に示す例では曲面であるが、平面でもよい。ワークWは、何らかの製品となる物であり、印刷領域Waに印刷を行うことは、この製品を製造する一連の工程の一つである。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、ロボット2とヘッドユニット3とコントローラー5とワーク移動機構8と配管部10とを有する。以下、まず、これらを順に簡単に説明する。
【0015】
ロボット2は、ワールド座標系でのヘッドユニット3の位置および姿勢を変化させる移動機構である。
図1に示す例では、ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。
【0016】
図1に示すように、ロボット2は、基部210と腕部220とを有する。
【0017】
基部210は、腕部220を支持する台である。
図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面または基台等の設置面SFにネジ止め等により固定される。
【0018】
腕部220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、腕部220は、リンクとも称されるアーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。ここで、アーム226は先端部の一例である。
【0019】
関節230_1~230_6のそれぞれは、基部210およびアーム221~226のうち互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対してそれぞれ
図1に一点鎖線で示した軸まわりに回動可能に連結する機構である。なお、以下では、関節230_1~230_6のそれぞれを「関節230」という場合がある。
【0020】
図1では図示しないが、関節230_1~230_6のそれぞれには、対応する当該互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節230_1~230_6の当該駆動機構の集合体は、後述の
図2に示すアーム駆動機構2aに相当する。
【0021】
以上のロボット2のアーム221~226のうち最も先端に位置するアーム226には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット3がネジ止め等により固定された状態で装着される。
【0022】
ヘッドユニット3は、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。ワークWの表面は、例えば、インクに対して非吸収性の材料で構成される。当該材料は、例えば、プラスチック、並びに、金属類およびガラス等の無機化合物である。
【0023】
本実施形態では、ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に
図3に基づいて説明する。
【0024】
当該インクとしては、特に限定されないが、本実施形態では、紫外線硬化性インクが用いられる。なお、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0025】
ヘッドユニット3には、配管部10と図示しない配線部とのそれぞれが接続される。配管部10は、インクタンク12からのインクをヘッドユニット3に供給する配管または配管群である。当該配線部は、ヘッド3aを駆動する電気信号を供給する配線または配線群である。なお、当該配線部の引き回しは、配管部10の引き回しと同じであっても異なってもよい。
【0026】
ワーク移動機構8は、ワークWを支持しつつ、X軸に沿って移動させる機構である。ワーク移動機構8は、1対のレール部材81と、キャリッジ82とを有する。1対のレール部材81は、キャリッジ82がX軸に沿って移動するための扁平状の部材である。キャリッジ82は、ワークWを支持するための扁平状の部材である。ワークWは、キャリッジ82のZ1方向を向く面に載置される。さらに、キャリッジ82は、レール部材81に対して摺動可能に噛み合う。
図1の例では、ワーク移動機構8は、設置面SFに固定される。
【0027】
ワーク移動機構8は、ワークWを移動させることにより、ワークWに対して基部210を相対的に移動させると言える。ワーク移動機構8は、「移動機構」の一例である。印刷装置1は、ワーク移動機構8の替わりに、AGV(Automatic Guided Vehicle)などによって基部210を移動させることにより、ワークWに対して基部210を相対的に移動させる移動機構を有してもよい。このようにAGVを用いた構成はワークWが比較的大型であり、移動させることが難しい場合に有用である。また、本実施形態では、ワーク移動機構8が、レール部材81と、キャリッジ82によって構成されるが、これらの替わりに、ワークWを支持し移動するロボットを、ヘッドユニット3を支持するロボット2とは別に有してもよい。
【0028】
1-2.印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。
図2に示すように、印刷装置1は、前述の
図1に示す構成要素のほか、コントローラー5に通信可能に接続される制御モジュール6と、コントローラー5および制御モジュール6に通信可能に接続されるコンピューター7と、を有する。コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7は、例えば、「制御部」として総称される場合がある。
【0029】
なお、
図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。
【0030】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御する機能と、ワーク移動機構8の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作をロボット2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。
【0031】
また、コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0032】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。
【0033】
記憶回路5aには、印刷経路情報Daが記録される。印刷経路情報Daは、ロボット2の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時にヘッド3aの移動すべき経路におけるヘッド3aの位置および姿勢を示す情報である。印刷経路情報Daは、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な位置の変化を示す情報と、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な姿勢の変化を示す情報と、を含む。
【0034】
処理回路5bは、印刷経路情報Daに基づいてロボット2のアーム駆動機構2aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。
【0035】
ここで、アーム駆動機構2aは、前述の関節230_1~230_6の駆動機構の集合体であり、関節230ごとに、ロボット2の関節を駆動するためのモーターと、ロボット2の関節の回転角度を検出するエンコーダー241_1~241_6と、を有する。
【0036】
処理回路5bは、印刷経路情報Daをロボット2の各関節230の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、各関節230の実際の回転角度および回転速度等の動作量が印刷経路情報Daに基づく前述の演算結果となるように、制御信号Sk_1~Sk_6を出力する。以下では、出力信号D1_1から出力信号D1_6までのそれぞれを総称して出力信号D1という場合がある。
【0037】
また、処理回路5bは、アーム駆動機構2aの有するエンコーダー241_1~241_6のうちの少なくとも1つからの出力信号D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力信号D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0038】
また、処理回路5bは、ワーク移動機構8からの出力信号DXに基づいて、制御信号SXを出力する。ワーク移動機構8は、制御信号SXに基づいて、X軸に沿って移動する。
【0039】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データImgとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。印刷データImgは、印刷経路情報Daの示す複数の経路のそれぞれの経路においてワークW上に印刷すべき画像を示す情報である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0040】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0041】
電源回路6bは、オフセット電位VBSを生成し、ヘッドユニット3に供給する。また、電源回路6bは、電源電位VHVを生成し、駆動信号生成回路6dに供給する。
【0042】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。
【0043】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号であり、当該圧電素子311に対応するノズルNからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルNから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルNからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0044】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。
【0045】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0046】
コンピューター7は、印刷経路情報Daを生成する機能と、コントローラー5に印刷経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。なお、コンピューター7は印刷装置1のユーザーインターフェース制御部としても機能し、印刷装置1のユーザーは、コントローラー5および制御モジュール6を介して、ロボット2およびヘッドユニット3に後述する第1印刷動作、第2印刷動作、第3印刷動作、および、第4印刷動作を含む複数の印刷動作を実行させる。コンピューター7は、さらに、エネルギー出射部3cの駆動を制御する機能を有する。
【0047】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、ヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0048】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット3に設定されるツール座標系の座標軸に相当し、前述のロボット2の動作により前述のワールド座標系またはロボット座標系との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、ツール座標系とベース座標系またはロボット座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。
【0049】
ヘッドユニット3は、前述のように、ヘッド3aと圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。これらは、
図3中の二点鎖線で示される支持体3fに支持される。なお、圧力調整弁3bの設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0050】
支持体3fは、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、
図3では、支持体3fが扁平な箱状をなすが、支持体3fの形状は、特に限定されず、任意である。
【0051】
以上の支持体3fは、前述のアーム226に装着される。従って、ヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3fにより一括してアーム226に支持される。このため、アーム226に対するヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cのそれぞれの相対的な位置が固定される。
図3に示す例では、ヘッド3aに対してc1方向の位置には、圧力調整弁3bが配置される。ヘッド3aに対してa2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。
【0052】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とに区分される。第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のそれぞれは、b軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0053】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、圧電素子311と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子311は、当該圧電素子311に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルNからインクを吐出方向DEに吐出させ、ワークWの表面にインク滴を着弾させる。なお、ノズルNからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0054】
以上のヘッド3aには、配管部10を介してインクタンク12からインクが供給される。ここで、配管部10は、圧力調整弁3bを介してヘッド3aに接続される。圧力調整弁3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aとインクタンク12との位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。
【0055】
エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。本実施形態では、紫外線硬化性インクを用いているため、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(Light Emitting Diode)で構成される。
【0056】
図3に示すように、ヘッドユニット3はヘッド3aを有するため、ロボット2は、ヘッドユニット3を支持する先端部であるアーム226と、基部210とを有し、基部210に対してヘッド3aの相対的な位置を変化させるとも言える。基部210に対するヘッド3aの相対的な位置を変化させるとは、基部210を固定したままヘッド3aの位置を変化させることと、ヘッド3aを固定したまま基部210の位置を変化させることとを含む。さらに、ロボット2は、基部210の位置を変化可能としつつ、ヘッド3aの位置を変化可能としてもよい。本実施形態では、ロボット2は、基部210を固定したままヘッド3aの位置を変化させる。なお、本実施形態では、ロボット2は、基部210に対してヘッド3aの相対的な位置を変化させるとともに、基部210に対してヘッド3aの相対的な姿勢も変化させる。
【0057】
1-4.本実施形態に係る印刷動作
本実施形態において、印刷領域Waは、ロボット2によってヘッド3aが移動可能な範囲より広い。
図1では、ヘッド3aが移動可能な範囲ARを示してある。
図1から理解されるように、印刷領域Waに含まれ、かつ、範囲ARに含まれない部分、例えば、印刷領域WaのX2方向の端部には、ロボット2の腕部220の先端部であるアーム226が届かず、印刷できない。そこで、本実施形態では、複数の印刷動作の間にワークWを移動させることにより、印刷装置1は、印刷領域Wa内の全てに対してインクを吐出できる。具体的には、印刷装置1は、印刷領域Waを複数のバンド領域BRに区分けし、それぞれのバンド領域BRに部分画像を形成することにより、印刷領域Waに画像を形成する。なお、ヘッド3aが移動可能な範囲ARは、ロボット2自体の設計的な要因だけでなく、ワークWの形状による要因や、配管部10の過度な変形を抑制する目的等によって、制限される範囲である。
【0058】
以降の説明では、説明の簡略化のため、印刷領域WaがXY平面に平行な平面であるとして説明する。本実施形態において、複数のバンド領域BRは、X軸に長尺な矩形形状である。但し、印刷領域Waが曲面である場合等には、複数のバンド領域BRは、矩形形状ではない形状でもよい。矩形形状ではない形状は、例えば、略楕円形状、菱形形状、および、台形形状等である。
【0059】
複数のバンド領域BRのそれぞれにおいて、印刷装置1は印刷動作を実行する。印刷動作とは、ロボット2によってヘッド3aを主走査方向に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、バンド領域BRにインクを吐出する動作である。主走査方向は、バンド領域BRの長手方向に設定されることが好ましい。本実施形態では、バンド領域BRは、X軸に長尺な矩形形状であるから、主走査方向は、X軸に沿う方向である。このように、本実施形態では、主走査方向は、バンド領域BR内で方向を変えないが、バンド領域BRが矩形形状でない場合、方向が変化してもよい。主走査方向に交わる方向を、副走査方向と記載する。本実施形態において、副走査方向は、Y軸に沿う方向である。なお、本実施形態では、印刷動作の実行中において、ロボット2は、ノズル列方向DNが主走査方向と直交するようにヘッド3aの姿勢を維持する。つまり、印刷動作の実行中において、ノズル列方向DNと副走査方向とは平行である。
【0060】
本実施形態において、印刷装置1は、例えば、第1バンド領域BR_1にインクを吐出する第1印刷動作と、第2バンド領域BR_2にインクを吐出する第2印刷動作との間に、主走査移動動作を実行する。このため、第1印刷動作と第2印刷動作とは連続しない。第1バンド領域BR_1および第2バンド領域BR_2は、印刷領域Waに含まれる。主走査移動動作は、ワーク移動機構8によって主走査方向であるX軸に沿う方向に、基部210に対してワークWを移動させる。
【0061】
第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2との配置の態様としては、主走査方向であるX軸に沿う方向に、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2とが重複せずに互いに接するように配置する態様がある。しかしながら、この態様では、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2との一方および両方がずれた場合に、白スジまたは黒スジが発生し、印刷領域Waに形成される画像の質が低下する。白スジは、インクが付着していない微小な隙間である。黒スジは、隣り合うバンド領域BRが意図せず重なることによって、インクが重複して付着することによって生じる濃色のスジである。具体的には、第2バンド領域BR_2に対して第1バンド領域BR_1が離れるようにずれた場合、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2との間にインクが付着していない領域、すなわち白スジが発生する。また、第2バンド領域BR_2に対して第1バンド領域BR_1が近付くようにずれた場合、第1バンド領域BR_1の一部と第2バンド領域BR_2の一部とが重複し、黒スジが発生する。白スジおよび黒スジは、主走査方向に直交する方向、即ちY軸に沿う方向に沿って延在する。
【0062】
そこで、第1実施形態では、印刷領域Wa内に、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2とが互いに重複する重複領域DRを設ける。重複領域DRを設けることにより、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2との一方および両方がずれたとしても、白スジおよび黒スジの発生を抑制できるので、画像の質が低減されることを抑制できる。白スジおよび黒スジの発生を抑制できる理由については後述する。
【0063】
図4は、第1実施形態に係るバンド領域BRを説明するための図である。印刷装置1は、第1印刷動作および第2印刷動作に加え、例えば、第3バンド領域BR_3にインクを吐出する第3印刷動作と、第4バンド領域BR_4にインクを吐出する第4印刷動作と、を実行する。第1実施形態では、印刷領域Waは、第1バンド領域BR_1、第2バンド領域BR_2、第3バンド領域BR_3、および、第4バンド領域BR_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BR_1、第2バンド領域BR_2、第3バンド領域BR_3、および、第4バンド領域BR_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRと総称することがある。第1実施形態では、印刷領域Waには、4つのバンド領域BRが含まれるが、バンド領域BRの個数は4つに限らない。例えば、印刷領域Waに含まれるバンド領域BRの個数は、2でもよいし3でもよいし、5以上でもよい。
なお、第1バンド領域BR_1が「第1領域」の一例である。第2バンド領域BR_2が「第2領域」の一例である。第3バンド領域BR_3が「第3領域」の一例である。第4バンド領域BR_4が「第4領域」の一例である。
【0064】
なお、
図4では、便宜上の表示として、バンド領域BRの輪郭が印刷領域Waの輪郭に重ならないようにするため、バンド領域BRを多少小さく表示してある。また、
図4では、重複領域DRおよび重複領域QRの範囲を理解しやすくするため、重複領域DRおよび重複領域QRに網掛けを付与してある。さらに、重複領域DRと重複領域QRとでは重複するバンド領域BRの数が異なるため、重複領域DRと重複領域QRとで異なる種類の網掛けを付与してある。
【0065】
第1バンド領域BR_1は、印刷領域WaのうちX1方向の端部およびY1方向の端部に位置する。第2バンド領域BR_2は、印刷領域WaのうちX2方向の端部およびY1方向の端部に位置する。第3バンド領域BR_3は、印刷領域WaのうちX2方向の端部およびY2方向の端部に位置する。第4バンド領域BR_4は、印刷領域WaのうちX1方向の端部およびY2方向の端部に位置する。
【0066】
図4に示すように、各バンド領域BRは、他の1つのバンド領域BRと重複する領域である重複領域DRと、他の3つのバンド領域BRと重複する領域である重複領域QRとを有する。第1実施形態では存在しないが、バンド領域BRは、他の2つのバンド領域BRと重複する領域である重複領域TRを有してもよい。言い換えれば、重複領域DRは、2つのバンド領域BRが互いに重複する領域である。重複領域TRは、3つのバンド領域BRがいずれも重複する領域である。重複領域QRは、4つのバンド領域BRがいずれも重複する領域である。また、バンド領域BRのうち、他のバンド領域BRと重複しない領域を、非重複領域SRと記載することがある。
【0067】
具体的には、第1バンド領域BR_1は、非重複領域SR_1と、重複領域DR_12と、重複領域DR_41と、重複領域QRとを有する。以下の記載において、重複領域DR_xyは、第xバンド領域BR_xと、第yバンド領域BR_yとが、互いに重複する領域である。xは、1から4までの任意の整数である。yは、xと異なり、且つ、1から4までの任意の整数である。例えば、重複領域DR_12は、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2とが、互いに重複する領域である。
【0068】
重複領域QRは、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4との全てが重複する領域である。
図4から理解されるように、重複領域QRは、印刷領域Waの重心WGを含む、印刷領域Waの中央の領域である。重心とは、対象の形状において断面1次モーメントの総和がゼロになる地点である。例えば、対象の形状が円形である場合、重心は、円の中心であり、対象の形状が平行四辺形である場合、重心は、平行四辺形が有する2つの対角線の交点である。
【0069】
第2バンド領域BR_2は、非重複領域SR_2と、重複領域DR_12と、重複領域DR_23と、重複領域QRとを有する。第3バンド領域BR_3は、非重複領域SR_3と、重複領域DR_23と、重複領域DR_34と、重複領域QRとを有する。第4バンド領域BR_4は、非重複領域SR_4と、重複領域DR_41と、重複領域DR_34と、重複領域QRとを有する。
【0070】
なお、重複領域DR_12が、「第1重複領域」の一例である。重複領域DR_23が、「第2重複領域」の一例である。重複領域DR_34が、「第4重複領域」の一例である。重複領域DR_41が、「第5重複領域」の一例である。重複領域QRが、「第3重複領域」の一例である。
【0071】
図4に示すように、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、は主走査方向であるX軸に沿う方向に隣接する。同様に、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4と、は主走査方向であるX軸に沿う方向に隣接する。第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3とは、副走査方向であるY軸に沿う方向に隣接する。第1バンド領域BR_1と、第4バンド領域BR_4とは、Y軸に沿う方向に隣接する。
【0072】
図4に示すように、ヘッド3aが経路RT_1に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第1バンド領域BR_1に対して印刷データImgに基づく部分画像が形成される。ヘッド3aがいずれかの経路に沿って移動するとは、より詳細には、ヘッド3aの近傍に設定されたツールセンターポイントが当該経路に沿って移動するようにロボット2が動作することを指す。ツールセンターポイントはヘッド3aを代表する仮想的な基準点であり、例えばノズル面FNに設けられたノズル列NLの中心または重心から数mm程度だけ吐出方向DEに沿って移動させた位置に設定される。同様に、ヘッド3aが経路RT_2に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第2バンド領域BR_2に対して印刷データImgに基づく部分画像が形成される。ヘッド3aが経路RT_3に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第3バンド領域BR_3に対して印刷データImgに基づく部分画像が形成される。ヘッド3aが経路RT_4に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第4バンド領域BR_4に対して印刷データImgに基づく部分画像が形成される。
【0073】
経路RT_1は、開始位置PS_1から終了位置PE_1までの経路である。経路RT_2は、開始位置PS_2から終了位置PE_2までの経路である。経路RT_3は、開始位置PS_3から終了位置PE_3までの経路である。経路RT_4は、開始位置PS_4から終了位置PE_4までの経路である。経路RT_1の一部および経路RT_2の一部は、互いに重なる。経路RT_3の一部および経路RT_4の一部は、互いに重複する。経路RT_1および経路RT_2は、経路RT_3および経路RT_4と重複しない。
【0074】
以下の記載では、経路RT_1、経路RT_2、経路RT_3、経路RT_4のそれぞれを区別せずに、経路RTと総称することがある。開始位置PS_1、開始位置PS_2、開始位置PS_3、開始位置PS_4のそれぞれを区別せずに、開始位置PSと総称することがある。終了位置PE_1、終了位置PE_2、終了位置PE_3、終了位置PE_4のそれぞれを区別せずに、終了位置PEと総称することがある。
図4に示すように、経路RTは、X軸に平行な線分である。但し、経路RTは、X軸に平行な線分でなくてもよく、例えば、折れ線でもよいし、曲線でもよい。また、
図4では、4つの経路RTのうち経路RT_1および経路RT_3が、X2方向からX1方向に至る経路であり、経路RT_2および経路RT_4が、X1方向からX2方向に至る経路であるが、これに限らない。例えば、4つの経路RTの全てが、X2方向からX1方向に至る経路でもよいし、X1方向からX2方向に至る経路でもよい。
図4の例では、開始位置PS_1は、経路RT_1のX2方向の端に位置し、終了位置PE_1は、経路RT_1のX1方向の端に位置する。開始位置PS_2は、経路RT_2のX1方向の端に位置し、終了位置PE_2は、経路RT_2のX2方向の端に位置する。開始位置PS_3は、経路RT_3のX2方向の端に位置し、終了位置PE_3は、経路RT_3のX1方向の端に位置する。開始位置PS_4は、経路RT_4のX1方向の端に位置し、終了位置PE_4は、経路RT_4のX2方向の端に位置する。
【0075】
重複領域DR_12のX軸に沿う方向の幅D1Xは、重複領域DR_23のY軸に沿うに方向の幅D2Yよりも長くてもよいし、短くてもよいし、同一の長さでもよい。
【0076】
図5は、
図4内の領域RGを拡大した状態を示す図である。領域RGは、頂点P1と、頂点P2と、頂点P3と、頂点P4とを有する矩形領域である。
図4から理解されるように、頂点P1は、第1バンド領域BR_1に含まれる。頂点P2は、第2バンド領域BR_2に含まれる。頂点P3は、第3バンド領域BR_3に含まれる。頂点P4は、第4バンド領域BR_4に含まれる。
【0077】
図5に示すように、領域RGは、非重複領域SR_1と、非重複領域SR_2と、非重複領域SR_3と、非重複領域SR_4と、重複領域DR_12と、重複領域DR_23と、重複領域DR_34と、重複領域DR_41と、重複領域QRとを有する。
図5では、頂点P1と頂点P2との間の辺に、点EG12と、点EG21とを示してある。点EG12は、非重複領域SR_1と重複領域DR_12との境界のうち、Y1方向の端に位置する。点EG21は、非重複領域SR_2と重複領域DR_12との境界のうち、Y1方向の端に位置する。同様に、
図5では、頂点P1と頂点P4との間の辺に、点EG14と、点EG41とを示してある。点EG14は、非重複領域SR_1と重複領域DR_41との境界のうち、X1方向の端に位置する。点EG41は、非重複領域SR_4と重複領域DR_41との境界のうち、X1方向の端に位置する。
【0078】
図5の例では、領域RGの各非重複領域、各重複領域DR、および、重複領域QR内の1つの矩形が1つの画素を意味しており、1つの画素に含まれる数字は、当該画素にインク滴を付与する印刷動作を示している。例えば、
図5において「1」が付与された画素は、第1印刷動作によって、インク滴が付与される画素である。つまり、「1」が付与された画素が配置される領域は、第1バンド領域BR_1である。また、2つ以上の数字が混在する領域は、2つのバンド領域が重なった重複領域DRである。なお、
図5では、理解を容易にするため、1つの画素に付与した網掛けは、画素に含まれる数字に応じて異なっている。なお、各領域における画素の数はあくまで一例であり、ロボット2の動作精度やヘッド3aから吐出されるインク滴の着弾位置精度等に応じて適宜に変更が可能である。
【0079】
図5では、説明の簡略化のため、印刷領域Waに対応する全画素にインク滴を付与する印刷画像である、いわゆる「ベタ画像」を形成する例を示している。後述する印刷動作において複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに形成される部分画像を形成するため、コンピューター7は、複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに応じた部分画像を示す印刷データImgを印刷動作に先立って生成する。また、コンピューター7は、2つ以上のバンド領域BRが重なる領域においては、各バンド領域BRにインク滴を付与する各印刷動作の記録比率の合計が100%となるように印刷データImgを生成する。
【0080】
例えば、
図5において、「1」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_1と、「2」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_2と、「3」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_3と、「4」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_4と、は、いずれも1つの印刷動作による記録比率が100%となるように記録画素が配置される。例えば、非重複領域SR_1は、第1印刷動作のみによって、インク滴が付与されるため、非重複領域SR_1における第1印刷動作の記録比率は100%である。なお、記録とは、印刷動作によってワーク上にインク滴を付与することを指しており、記録画素とは、印刷領域Waのうちインク滴が付与される位置に対応する画素である。また、ある領域における、ある印刷動作による記録比率とは、当該領域に対応する全ての画素に対する、当該印刷動作によってインク滴が付与される記録画素の割合である。
【0081】
また、「1」が付与された画素および「2」が付与された画素によって示される重複領域DR_12と、「2」が付与された画素および「3」が付与された画素によって示される重複領域DR_23と、「3」が付与された画素および「4」が付与された画素によって示される重複領域DR_34と、「4」が付与された画素および「1」が付与された画素によって示される重複領域DR_41とは、2つの領域の記録画素が互いに排他的かつ補間的に配置されている。換言すれば、2つの印刷動作による記録比率が両者の合計で100%となるように、インク滴が配置される画素である記録画素が適切に分散して配置される。こうした配置は、あらかじめコンピューター7に記憶されたマスクパターンを印刷画像に対して適用することで実現される。同様に、「1」が付与された画素、「2」が付与された画素、「3」が付与された画素、および「4」が付与された画素によって示される重複領域QRは、4つの領域の記録画素が互いに排他的かつ補間的に配置されている。このため、4つの印刷動作による記録比率が両者の合計で100%となる。
【0082】
図5の例では、コンピューター7が、重複領域DRの内部において互いに重複する2つのバンド領域BRにそれぞれインク滴を付与する2つの印刷動作の記録比率を変化させるように、印刷データImgを生成した例を示してある。記録比率の変化について、
図6および
図7を用いて説明する。
【0083】
図6に示すグラフg1は、X軸に沿う方向における第1印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH1xと、X軸に沿う方向における第2印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH2xと、を有する。
図7に示すグラフg2は、Y軸に沿う方向における第1印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH1yと、Y軸に沿う方向における第4印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH4yと、を有する。
【0084】
変化特性CH1xが示すように、頂点P1から点EG12までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は100%である。点EG12から点EG21までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は、点EG12に近づくことにつれて単調に増加し、点EG21に近づくことにつれて単調に低下する。点EG21から頂点P2までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は0%である。
【0085】
変化特性CH2xが示すように、頂点P2から点EG21までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は100%である。点EG21から点EG12までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は、点EG21に近づくことにつれて単調に増加し、点EG12に近づくことにつれて単調に低下する。点EG12から頂点P1までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は0%である。
【0086】
図5および
図6から理解されるように、重複領域DR_12における第1印刷動作による記録比率と、重複領域DR_12における第2印刷動作による記録比率との合計が、100%である。例えば、点EG12と点EG21との中点CXにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第2印刷動作による記録比率とは、互いに50%である。
【0087】
また、変化特性CH1yが示すように頂点P1から点EG14までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は100%である。点EG14から点EG41までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は、点EG14に近づくことにつれて単調に増加し、点EG41に近づくことにつれて単調に低下する。点EG41から頂点P2までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は0%である。
【0088】
変化特性CH4yが示すように、頂点P4から点EG41までに代表される区間の周辺画素において、第4印刷動作による記録比率は100%である。点EG41から点EG14までに代表される区間の周辺画素において、第4印刷動作による記録比率は、点EG41に近づくことにつれて単調に増加し、点EG14に近づくことにつれて単調に低下する。点EG14から頂点P1までに代表される区間の周辺画素において、第4印刷動作による記録比率は0%である。
【0089】
図5および
図7から理解されるように、頂点P1から頂点P4までの全ての位置において、重複領域DR_41における第1印刷動作による記録比率と、重複領域DR_41における第4印刷動作による記録比率との合計が、100%である。例えば、点EG14と点EG41との中点CYにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第4印刷動作による記録比率とは、互いに50%である。
【0090】
上述の説明では、頂点P1から頂点P2まで、すなわちX軸に沿う方向の印刷動作による記録比率と、頂点P1から頂点P4まで、すなわちY軸に沿う方向の印刷動作による記録比率とが、単調に変化することを説明したが、記録比率が単調に変化する方向は、X軸に沿う方向およびY軸に沿う方向に限らない。例えば、
図5に示すV1方向の印刷動作による記録比率も、単調に変化する。V1方向は、Z2方向に見て、Y2方向を45度時計方向に回転させた方向である。
【0091】
V1方向の記録比率の変化について、頂点P1、点CV1、点WG、点CV2、および頂点P3を用いて説明する。点CV1は、非重複領域SR_1のX2方向の端に位置し、且つ、Y2方向の端に位置する。点CV2は、非重複領域SR_3のX1方向の端に位置し、且つ、Y1方向の端に位置する。点WGは、印刷領域Waの重心であり、点CV1と点CV2との中点でもある。頂点P1、点CV1、点WG、点CV2、および頂点P3は、V1方向に一直線上に配置される。頂点P1から点CV1までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は100%である。
図5に示す点CV1から点CV2までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は、点CV2に近づくにつれて単調に低下する。点CV2から頂点P3までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は0%である。例えば、点WGにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第2印刷動作による記録比率と、第3印刷動作による記録比率と、第4印刷動作による記録比率とは、25%である。
【0092】
以上のように、重複領域DR内における印刷動作による記録比率を段階的に変化させることにより、重複領域DRの画像と非重複領域SRの画像との差が目立つことを抑制できる。また、
図5においては、画素の配置は理解を容易にするために正方形の集合で平面上に示したが、立体的に配置されてもよく、直方体の集合や、球体の集合、3次元的な座標情報の集合等であってもよい。
【0093】
なお、本実施形態では、コンピューター7が、重複領域DRの内部において印刷動作による記録比率を変化させるように、印刷データImgを生成したが、これに限らない。例えば、コンピューター7は、重複領域DRの内部において印刷動作による記録比率が一定となるように、印刷データImgを生成してもよい。
【0094】
1-5.印刷装置1の動作および印刷方法
図8は、第1実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、前述の印刷装置1を用いて行われる。
図8に示す一連の動作は、コンピューター7がコントローラー5および制御モジュール6を介して、ロボット2およびヘッドユニット3を制御することで実行される。
【0095】
図8に示すように、印刷装置1は、複数の印刷動作として、第4バンド領域BR_4にインクを吐出する第4印刷動作、第1バンド領域BR_1にインクを吐出する第1印刷動作、第2バンド領域BR_2にインクを吐出する第2印刷動作、第3バンド領域BR_3にインクを吐出する第3印刷動作の順に実行する。
【0096】
ステップS110において、印刷装置1は、印刷前動作を実行する。ステップS110の印刷前動作は、印刷動作の前にロボット2がワークWに対してヘッド3aの相対的な位置を変化させる動作である。印刷前動作では、ヘッド3aがインクを吐出しない。印刷前動作は、例えば、ロボット2がヘッド3aをノズル面FNの被覆用の不図示のキャップが設けられた位置から、複数の印刷動作のうち始めに実行する第4印刷動作に対応する第4バンド領域BR_4の開始位置PS_4へと移動させる動作等を含む。
【0097】
ステップS110の終了後、印刷装置1は、ステップS120において、複数の印刷動作の1つである第4印刷動作を実行し、第4バンド領域BR_4にインク滴を付与する。印刷動作は、ロボット2がワークWに対してヘッド3aの相対的な位置をX軸に沿って変化させつつ、ヘッド3aがインクを吐出する動作である。
【0098】
また、印刷動作において複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに形成される部分画像を形成するため、コンピューター7は、複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに応じた部分画像を示す印刷データImgを印刷動作に先立って生成する。コンピューター7による印刷データImgの生成は前述のとおりである。
【0099】
ステップS120の終了後、印刷装置1は、ステップS130において、副走査移動動作を実行する。副走査移動動作は、ロボット2によって、次の印刷動作に対応するバンド領域BRの開始位置PS上にヘッド3aを移動させる動作である。副走査移動動作では、ワーク移動機構8によるワークWの移動は発生していない。本実施形態における副走査移動動作によって移動するヘッド3aの移動量は、終了位置PEから次の印刷動作の開始位置PSまでである。ステップS130の副走査移動動作では、終了位置PE_4から、次の印刷動作である第1印刷動作に対応する第1バンド領域BR_1の開始位置PS_1上にヘッド3aを移動させる。なお、副走査移動動作の実行中には、ヘッド3aがインクを吐出しない。
【0100】
ステップS130の終了後、印刷装置1は、ステップS140において、複数の印刷動作の1つである第1印刷動作を実行し、第1バンド領域BR_1にインク滴を付与する。ステップS140の終了後、印刷装置1は、ステップS150において、主走査移動動作を実行する。本実施形態における主走査移動動作では、ワーク移動機構8によって、ワークWをX1方向に移動させる。ワークWをX1方向に移動させることにより、ヘッド3aの移動可能な範囲が相対的にX2方向に移動する。ワークWの具体的な移動量は、ヘッド3aの移動可能な範囲が、次の印刷動作に対応するバンド領域BRに含まれる程度でよい。本実施形態では、主走査移動動作を実行することにより、ロボット2をX軸に沿ってほとんど動作させることなく、ヘッド3aの位置が、第1印刷動作の終了位置PE_1上から第2印刷動作の開始位置PS_2上に移動する。従って、印刷装置1は、主走査移動動作を実行した後に、副走査移動動作を実行することなく、第2印刷動作を実行できる。但し、Z軸に沿って見たときに経路RT_1と経路RT_2とが、Y軸方向に互いにずれて設定される場合には、第1印刷動作と第2印刷動作との間において、ワーク移動機構8による主走査移動動作に加えて、ロボット2による副走査移動動作が実行される。この場合においても、第1バンド領域BR_1のX2方向の端部と、第2バンド領域BR_2のX1方向の端部とが、重なる重複領域DR_12を設けることができる。
【0101】
ステップS150の終了後、印刷装置1は、ステップS160において、第2印刷動作を実行し、第2バンド領域BR_2にインク滴を付与する。ステップS160の終了後、印刷装置1は、ステップS170において、副走査移動動作を実行する。ステップS180の副走査移動動作では、終了位置PE_2から、次の印刷動作である第3印刷動作に対応する第3バンド領域BR_3の開始位置PS_3上にヘッド3aを移動させる。
【0102】
ステップS170の終了後、印刷装置1は、ステップS180において、第3印刷動作を実行し、第3バンド領域BR_3にインク滴を付与する。ステップS180の終了後、印刷装置1は、ステップS190において、印刷後動作を実行する。印刷後動作は、例えば、ロボット2がヘッド3aを第3バンド領域BR_3の終了位置PE_3から他の位置に移動させる動作等の動作を含む。他の位置は、例えば、前述のキャップが設けられた位置である。ステップS190の終了後、印刷装置1は、
図8に示す一連の動作を終了する。
【0103】
図8から理解されるように、ワーク移動機構8による主走査移動動作は、ステップS150に実行されるのみである。つまり、第4印刷動作の開始から第1印刷動作の終了までの間と、第2印刷動作の開始から第3印刷動作の終了までの間とにおいて、ワークWに対する基部210の相対的な位置を維持する。
【0104】
図8から理解されるように、印刷装置1は、第4印刷動作、第1印刷動作、主走査移動動作、第2印刷動作、第3印刷動作の順に実行する。即ち、主走査移動動作は、第1印刷動作と第4印刷動作との後であって第2印刷動作と第3印刷動作との前に実行される。ただし、複数の印刷動作と主走査移動動作との実行順序は、これに限らない。例えば、印刷装置1は、第3印刷動作、第2印刷動作、主走査移動動作、第1印刷動作、第4印刷動作の順に実行してもよい。この場合、主走査移動動作は、第1印刷動作と第4印刷動作との前であって第2印刷動作と第3印刷動作との後に実行される。
【0105】
1-6.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る印刷装置1は、インクを吐出するヘッド3aと、ヘッド3aを支持する先端部であるアーム226と、基部210と、を有し、基部210に対してヘッド3aの位置を相対的に変化させるロボット2と、ワークWに対して基部210を相対的に移動させるワーク移動機構8と、を有する印刷装置であって、ロボット2によってヘッド3aを主走査方向に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、ワークW上の印刷領域Waにインクを吐出する複数の印刷動作を実行し、複数の印刷動作は、印刷領域Wa内の第1バンド領域BR_1にインクを吐出する第1印刷動作と、印刷領域Wa内の第2バンド領域BR_2にインクを吐出する第2印刷動作と、を含み、第1印刷動作と第2印刷動作との間に、ワーク移動機構8によって主走査方向にワークWに対して基部210を相対的に移動させる主走査移動動作を実行し、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、は主走査方向に隣接し、印刷領域Waには、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、が互いに重複する重複領域DR_12が設けられる。
第1実施形態によれば、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2とが主走査方向に隣接するため、ロボット2によってヘッド3aが移動可能な範囲より広い等、ある程度広い範囲に印刷できる。さらに、第1実施形態によれば、重複領域DRを設けることにより、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2との一方および両方がずれたとしても、白スジおよび黒スジの発生を抑制できるので、画像の質が低減されることを抑制できる。
図4を用いて説明すると、例えば、第2バンド領域BR_2に対して第1バンド領域BR_1が離れるようにずれた場合、重複領域DR_12の幅が狭くなるのみに留まり、インクが付着しない隙間が発生すること、すなわち、白スジを抑制できる。一方、第2バンド領域BR_2に対して第1バンド領域BR_1が近付くようにずれた場合、第2バンド領域BR_2の非重複領域SR_2と、重複領域DR_12との重なる領域が発生する。上述したように、重複領域DR_12における第1印刷動作による記録比率は、100%未満であるため、非重複領域SR_2と重複領域DR_12とのインク滴の重複度合いは、非重複領域SR_2と非重複領域SR_1とのインク滴の重複度合いよりも低い。従って、第1実施形態によれば、黒スジを抑制できる。以上により、第1実施形態によれば、ロボット2によってヘッド3aが移動可能な範囲より広い等、主走査方向にある程度広い範囲に印刷する場合であっても、白スジおよび黒スジの発生を抑制して画質の低下を抑制できる。
【0106】
また、複数の印刷動作は、印刷領域Wa内の第3バンド領域BR_3にインクを吐出する第3印刷動作を含み、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、は主走査方向と交わる副走査方向に隣接する。
第1実施形態によれば、副走査方向において、広い範囲に印刷できる。
【0107】
また、第2印刷動作と第3印刷動作との間において、ワーク移動機構8は、ワークWに対する基部210の相対的な位置を維持する。
第2印刷動作と第3印刷動作とでは、ワーク移動機構8はヘッド3aを移動させていないので、ロボット2のみの動作ですむ。従って、第1実施形態によれば、第2印刷動作と第3印刷動作との間でワーク移動機構8およびロボット2によりヘッド3aを移動させる態様と比較して、製品の製造にかかるタクトタイムが短くなり、生産性が向上できる。また、第1実施形態によれば、第2印刷動作と第3印刷動作との間でワーク移動機構8によりヘッド3aを移動させないため、第2印刷動作と第3印刷動作との間でワーク移動機構8およびロボット2によりヘッド3aを移動させる態様と比較して、ヘッド3aの位置精度の低下を抑制できる。
【0108】
第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、が互いに重複する重複領域DR_23が設けられる。
重複領域DR_23を有することにより、副走査方向においても、白スジおよび黒スジの発生を抑制して画質の低下を抑制できる。
【0109】
また、重複領域DR_12の主走査方向における長さである幅D1Xは、重複領域DR_23の副走査方向における長さである幅D2Yよりも長くてもよい。
各々のバンド領域BRは、主走査方向に長尺な形状である。従って、主走査移動動作と副走査移動動作とを比較すると、主走査移動動作によるヘッド3aの移動量は、副走査移動動作によるヘッド3aの移動量よりも大きい。そして、ヘッド3aの移動量が大きくなるほど、ヘッド3aの位置ずれが発生しやすい。すなわち、主走査方向におけるズレの量は、副走査方向におけるズレの量が大きくなる可能性がある。従って、第1実施形態によれば、幅D1Xが幅D2Yよりも短い態様と比較して、白スジおよび黒スジの発生を抑制できる。
【0110】
また、印刷装置1は、第2印刷動作および第3印刷動作の前または後に、主走査移動動作と第1印刷動作を実行する。
第2バンド領域BR_2と第3バンド領域BR_3とは、副走査方向において隣接するため、第2印刷動作と第3印刷動作との間に第1印刷動作を実行しないことにより、主走査移動動作を実行しなくてよくなる。一方、第2印刷動作と第3印刷動作との間に第1印刷動作を実行する場合、2回の主走査移動動作が発生する。従って、第1実施形態によれば、第2印刷動作と第3印刷動作との間に第1印刷動作を実行する場合と比較して、製品の製造にかかるタクトタイムが短くなり、生産性が向上できる。
【0111】
複数の印刷動作は、印刷領域Wa内の第4バンド領域BR_4にインクを吐出する第4印刷動作を含み、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4と、は主走査方向に隣接し、印刷領域Waには、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4と、が互いに重複する重複領域DR_34が設けられ、第1バンド領域BR_1と、第4バンド領域BR_4と、は副走査方向に隣接し、印刷領域Waには、第1バンド領域BR_1と、第4バンド領域BR_4と、が互いに重複する重複領域DR_41が設けられる。
第1実施形態によれば、重複領域DR_34が設けられることにより、重複領域DR_12と同様に、第3バンド領域BR_3と第4バンド領域BR_4とがずれた場合でも、白スジおよび黒スジの発生を抑制できる。また、第1実施形態によれば、重複領域DR_41が設けられることにより、重複領域DR_12と同様に、第4バンド領域BR_4と第1バンド領域BR_1とがずれた場合でも、白スジおよび黒スジの発生を抑制できる。
【0112】
印刷領域Waには、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、がいずれも重複する重複領域QRが設けられ、重複領域QRは、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4と、がいずれも重複する。
【0113】
また、主走査移動動作は、第1印刷動作と第4印刷動作との前であって第2印刷動作と第3印刷動作との後に実行されるか、第1印刷動作と第4印刷動作との後であって第2印刷動作と第3印刷動作との前に実行される。言い換えれば、印刷装置1は、第1印刷動作と第4印刷動作との間には、主走査移動動作を実行せず、かつ、第2印刷動作と第3印刷動作との間には、主走査移動動作を実行しない。
第1バンド領域BR_1と第4バンド領域BR_4とは、副走査方向において隣接するため、第1印刷動作と第4印刷動作との間に第2印刷動作または第3印刷動作を実行しないことにより、主走査移動動作を実行しなくてよくなる。従って、第1実施形態によれば、第1印刷動作と第4印刷動作との間に第2印刷動作または第3印刷動作を実行する場合と比較して、製品の製造にかかるタクトタイムが短くなり、生産性が向上できる。
【0114】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0115】
2-1.第1変形例
印刷領域Waの区分けの態様は、
図4の例に限らない。以下、印刷領域Waの区分けの他の態様について説明する。
【0116】
図9は、第1変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図9において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRA_1、第2バンド領域BRA_2、第3バンド領域BRA_3、および、第4バンド領域BRA_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRA_1、第2バンド領域BRA_2、第3バンド領域BRA_3、および、第4バンド領域BRA_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRAと総称することがある。また、バンド領域BRAの経路を、経路RTAと総称し、経路RTAの開始位置を開始位置PSAと総称し、経路RTAの終了位置を終了位置PEAと総称することがある。
【0117】
バンド領域BRAは、重複領域QRを有さない点で、バンド領域BRと相違する。つまり、第1変形例においては、3つ以上のバンド領域BRAが重複することがない。具体的には、第1バンド領域BRA_1は、非重複領域SRA_1と、重複領域DRA_12と、重複領域DRA_41とを有する。
第2バンド領域BRA_2は、非重複領域SRA_2と、重複領域DRA_12と、重複領域DRA_23とを有する。第3バンド領域BRA_3は、非重複領域SRA_3と、重複領域DRA_23と、重複領域DRA_34とを有する。第4バンド領域BRA_4は、非重複領域SRA_4と、重複領域DRA_34と、重複領域DRA_41とを有する。重複領域DRA_12は、第1バンド領域BRA_1と第2バンド領域BRA_2とが重なる領域であり、重複領域DRA_23は、第2バンド領域BRA_2と第3バンド領域BRA_3とが重なる領域であり、重複領域DRA_34は、第3バンド領域BRA_3と第4バンド領域BRA_4とが重なる領域であり、重複領域DRA_41は、第4バンド領域BRA_4と第1バンド領域BRA_1とが重なる領域である。
【0118】
図9に示すように、第1バンド領域BRA_1のY軸に沿う方向の長さと、非重複領域SRA_2のY軸に沿う方向の長さとは略同一であり、長さDAYである。また、非重複領域SRA_1のX軸に沿う方向の長さと、第4バンド領域BRA_4のY軸に沿う方向の長さとは略同一であり、長さDAXである。
図9の例では、開始位置PSA_2、重心WG、終了位置PEA_4は、Y軸に平行な直線上に位置する。
【0119】
2-2.第2変形例
図10は、第2変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図10において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRB_1、第2バンド領域BRB_2、第3バンド領域BRB_3、および、第4バンド領域BRB_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRB_1、第2バンド領域BRB_2、第3バンド領域BRB_3、および、第4バンド領域BRB_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRBと総称することがある。また、バンド領域BRBの経路を、経路RTBと総称し、経路RTBの開始位置を開始位置PSBと総称し、経路RTBの終了位置を終了位置PEBと総称することがある。
【0120】
バンド領域BRBは、重複領域QRを有さず、重複領域TRを有する点で、バンド領域BRと相違する。つまり、第2変形例においては、4つ以上のバンド領域BRAが重複することがない。重複領域TRは、4つのバンド領域BRのうち3つのバンド領域BRが重複し、残余の1つのバンド領域BRが重複しない領域である。
【0121】
第1バンド領域BRB_1は、非重複領域SRB_1と、重複領域DRB_12と、重複領域TR_1と、重複領域DRB_41とを有する。
【0122】
重複領域TR_1は、第1バンド領域BRB_1、第2バンド領域BRB_2、および、第4バンド領域BRB_4が重複し、第3バンド領域BRB_3が重複しない。
【0123】
第2バンド領域BRB_2は、非重複領域SRB_2と、重複領域DRB_12と、重複領域TR_1と、重複領域DRB_24と、重複領域DRB_42と、重複領域TR_2と、重複領域DRB_23とを有する。重複領域TR_2は、第2バンド領域BRB_2、第3バンド領域BRB_3、および、第4バンド領域BRB_4が重複し、第1バンド領域BRB_1が重複しない。
【0124】
第3バンド領域BRB_3は、非重複領域SRB_3と、重複領域DRB_23と、重複領域TR_2と、重複領域DRB_34とを有する。第4バンド領域BRB_4は、非重複領域SRB_4と、重複領域DRB_34と、重複領域TR_1と、重複領域DRB_24と、重複領域DRB_42と、重複領域TR_2と、重複領域DRB_41とを有する。
図10から理解されるように、第2変形例では、印刷領域Waに互いに対角に配置される第2バンド領域BRB_2と第4バンド領域BRB_4とが互いに重複する重複領域DRB_24および重複領域DRB_42が設けられる。
【0125】
図10に示すように、第1バンド領域BRB_1のY軸に沿う方向の長さと、非重複領域SRB_2のY軸に沿う方向の長さとは略同一であり、長さDBYである。また、第1バンド領域BRB_1のX軸に沿う方向の長さと、非重複領域SRB_4のY軸に沿う方向の長さとは略同一であり、長さDBXである。
図10の例では、開始位置PSB_1、重心WG、終了位置PEB_3は、Y軸に平行な直線上に位置する。
【0126】
なお、第2変形例において、重複領域TR_2が「第8重複領域」に相当し、重複領域TR_1が「第9重複領域」に相当する。
【0127】
以上、第2変形例において、印刷領域Waには、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4と、がいずれも重複する領域が設けられておらず、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4とのうちの3つがいずれも重複し、かつ、他の1つが重複しない重複領域TR_1と、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3と、第4バンド領域BR_4とのうちの3つがいずれも重複し、かつ、他の1つが重複しない重複領域TR_2と、が設けられており、重複領域TR_1において重複するバンド領域BRの組み合わせと、重複領域TR_2において重複するバンド領域BRの組み合わせと、は互いに異なる。
第1実施形態において印刷領域Waに設けられる重複領域QRは、4つのバンド領域BRのいずれかに位置ずれが発生すると、画質が低下する。一方、第2変形例では、重複領域QRが重複領域TR_1と重複領域TR_2とに分割されている。重複領域TR_1と重複領域TR_2とは、3つのバンド領域BRが重なる領域であるため、4つのバンド領域BRが重なる重複領域QRに比べて、位置ずれが発生する確率が低下する。このため、画質の低下を抑制できる。
【0128】
一方、第1実施形態では、
図4から理解されるように、第1実施形態に係る4つのバンド領域BRは、いずれも略同一の形状である。このため、第2変形例と比較して、各印刷動作で多くのノズルを使用しやすく、バンド領域BRの大きさを全て最大の大きさに設定しやすい。従って、第1実施形態では、バンド領域BRごとに大きさが異なる第2変形例と比較して、バンド領域BRの個数を低減できる場合がある。
【0129】
2-3.第3変形例
図11は、第3変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図11において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRC_1、第2バンド領域BRC_2、第3バンド領域BRC_3、および、第4バンド領域BRC_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRC_1、第2バンド領域BRC_2、第3バンド領域BRC_3、および、第4バンド領域BRC_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRCと総称することがある。また、バンド領域BRCの経路を、経路RTCと総称し、経路RTCの開始位置を開始位置PSCと総称し、経路RTCの終了位置を終了位置PECと総称することがある。
【0130】
第3変形例では、3つのバンド領域BRが重なる重複領域TRがX軸に沿って2つ配置される。具体的には、第1バンド領域BRC_1は、非重複領域SRC_1と、重複領域DRC_12と、重複領域TRC_1と、重複領域DRC_41とを有する。重複領域TRC_1は、第1バンド領域BRC_1、第2バンド領域BRC_2、および、第4バンド領域BRC_4が重複し、第3バンド領域BRC_3が重複しない。
【0131】
第2バンド領域BRC_2は、非重複領域SRC_2と、重複領域DRC_12と、重複領域TRC_1と、重複領域TRC_2と、重複領域DRC_23とを有する。重複領域TRC_2は、第2バンド領域BRC_2、第3バンド領域BRC_3、および、第4バンド領域BRC_4が重複し、第1バンド領域BRC_1が重複しない。
【0132】
第3バンド領域BRC_3は、非重複領域SRC_3と、重複領域DRC_23と、重複領域TRC_2と、重複領域DRC_34とを有する。第4バンド領域BRC_4は、非重複領域SRC_4と、重複領域DRC_34と、重複領域TRC_1と、重複領域TRC_2と、重複領域DRC_41とを有する。
図11の例では、開始位置PSC_1、重心WG、終了位置PEC_3は、Y軸に平行な直線上に位置する。重複領域TRC_1と重複領域TRC_2とは、X軸に沿って互いに隣接している。
【0133】
なお、第3変形例において、重複領域TRC_2が「第8重複領域」に相当し、重複領域TRC_1が「第9重複領域」に相当する。
【0134】
なお、第3変形例では、重複領域TRC_1と重複領域TRC_2とは、X軸に沿って互いに隣接しているが、これに限らない。例えば、3つのバンド領域BRが重複する2つの重複領域TRが、Y軸に沿って互いに隣接してもよい。しかしながら、この場合は、バンド領域BRごとにY軸に沿う方向の幅を変化させたり、各印刷動作における経路RTの位置をY軸に沿う方向において異ならせたりする必要が生じるため、第3変形例のように重複領域TRC_1と重複領域TRC_2とは、X軸に沿って互いに隣接することが好ましい。
【0135】
2-4.第4変形例
図12は、第4変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図12において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRD_1、第2バンド領域BRD_2、第3バンド領域BRD_3、および、第4バンド領域BRD_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRD_1、第2バンド領域BRD_2、第3バンド領域BRD_3、および、第4バンド領域BRD_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRDと総称することがある。また、バンド領域BRDの経路を、経路RTDと総称し、経路RTDの開始位置を開始位置PSDと総称し、経路RTDの終了位置を終了位置PEDと総称することがある。
【0136】
第4変形例は、2つの重複領域TRがX軸に沿って配置される点で、第2変形例と相違し、さらに、この2つの重複領域TRがX軸に沿う方向において離れて配置されている点で、第3変形例と相違する。具体的には、第1バンド領域BRD_1は、非重複領域SRD_1と、重複領域DRD_12と、重複領域TRD_1と、重複領域DRD_41とを有する。重複領域TRD_1は、第1バンド領域BRD_1、第2バンド領域BRD_2、および、第4バンド領域BRD_4が重複し、第3バンド領域BRD_3が重複しない。
【0137】
第2バンド領域BRD_2は、非重複領域SRD_2と、重複領域DRD_12と、重複領域TRD_1と、重複領域DRD_24と、重複領域TRD_2と、重複領域DRD_23とを有する。重複領域TRD_2は、第2バンド領域BRD_2、第3バンド領域BRD_3、および、第4バンド領域BRD_4が重複し、第1バンド領域BRD_1が重複しない。
【0138】
第3バンド領域BRD_3は、非重複領域SRD_3と、重複領域DRD_23と、重複領域TRD_2と、重複領域DRD_34とを有する。第4バンド領域BRD_4は、非重複領域SRD_4と、重複領域DRD_34と、重複領域TRD_1と、重複領域DRD_24と、重複領域TRD_2と、重複領域DRD_41とを有する。
【0139】
図12に示すように、重複領域TRD_2と重複領域TRD_1との間に、重複領域DRD_24が設けられている。また、重複領域TRD_2と重複領域TRD_1とは、副走査方向における位置が同じである。言い換えれば、重複領域TRD_2と重複領域TRD_1とは、主走査方向に沿って並んでいる。
【0140】
なお、第4変形例において、重複領域TRD_2が「第8重複領域」に相当し、重複領域TRD_1が「第9重複領域」に相当する。重複領域DRD_24が「第10重複領域」に相当する。
【0141】
図13は、
図12内の領域RGDを拡大した状態を示す図である。領域RGDは、頂点PD1と、頂点PD2と、頂点PD3と、頂点PD4とを有する矩形領域である。
図13から理解されるように、頂点PD1は、第1バンド領域BRD_1に含まれる。頂点PD2は、第2バンド領域BRD_2に含まれる。頂点PD3は、第3バンド領域BRD_3に含まれる。頂点PD4は、第4バンド領域BRD_4に含まれる。
【0142】
図13の例では、コンピューター7が、重複領域DRDおよび重複領域TRDの内部において記録比率を変化させるように、印刷データImgを生成した例を示してある。
図13では、領域RGDの各非重複領域SRD、各重複領域DR、および、重複領域DRD内の1つの矩形が1つの画素を意味しており、1つの画素に含まれる数字は、当該画素にインク滴を付与する印刷動作を示している。例えば、重複領域DRD12においては、X1方向に向かって第1印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、X2方向に向かって第2印刷動作による記録比率が高くなる。また、重複領域DRD_41においては、Y1方向に向かって第1印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、Y2方向に向かって第4印刷動作による記録比率が高くなる。同様に、重複領域DRD_24においては、Y1方向に向かって第2印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、Y2方向に向かって第4印刷動作による記録比率が高くなる。そして、TRD_1においては、Y1方向に向かって第1印刷動作および第2印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、Y2方向に向かって第4印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、X1方向に向かって第1印刷動作による記録比率が高くなり、かつ、X2方向に向かって第2印刷動作による記録比率が高くなる。他の説明は省略するが、このように領域ごとに徐々に記録比率を変化させることで、各非重複領域SRDおよび各重複領域DRの間における画質の変化が目立つことを抑制できる。
【0143】
以上、第4変形例において、重複領域TRD_2と重複領域TRD_1との間には、重複領域DRD_24が設けられ、重複領域DRD_24は、第2バンド領域BRD_2と第4バンド領域BRD_4とが重複し、且つ、第1バンド領域BRD_1と第3バンド領域BRD_3とが重複しない。
第3変形例のように、3つのバンド領域BRが重複する領域である重複領域TRがX軸に沿う方向において隣接していると、位置ずれによって画質が低下しやすいため、第4変形例では、2つの重複領域TRの間に2つのバンド領域BRが重複する領域である重複領域DRを設けることによって、画質の低下を抑制できる。
なお、第4変形例では、2つの重複領域TRの間に設けられる重複領域DRは、第2バンド領域BRD_2と第4バンド領域BRD_4とが重複し、且つ、第1バンド領域BRD_1と第3バンド領域BRD_3とが重複しないが、第1バンド領域BRD_1と第3バンド領域BRD_3とが重複し、且つ、第2バンド領域BRD_2と第4バンド領域BRD_4とが重複しない領域でもよい。
【0144】
また、重複領域TRD_2の少なくとも一部における副走査方向における位置と、重複領域TRD_1の少なくとも一部における副走査方向における位置とは、同じである。
例えば、3つのバンド領域BRが重複する2つの重複領域TRDが副走査方向に沿って並ぶ場合、バンド領域BRの幅を変化させる必要がある。バンド領域BRの幅が変化するということは、バンド領域BRの幅が縮小した場合にノズル列NLのうち一部のノズルNからインクを吐出しないため、結果的にバンド領域BRの個数が増加する可能性がある。バンド領域BRの個数が増加すると、製品の製造にかかるタクトタイムが長くなり、製品の生産性が低下する虞がある。第4変形例によれば、3つのバンド領域BRDが重複する2つの重複領域TRDにおける副走査方向における位置が同じであることにより、バンド領域BRの個数が増加することを抑制できる。
【0145】
重複領域TRD_2は、第2バンド領域BRD_2と、第3バンド領域BRD_3と、第4バンド領域BRD_4と、がいずれも重複し、かつ、第1バンド領域BR_1が重複しない領域であり、重複領域TRD_1は、第1バンド領域BRD_1と、第2バンド領域BRD_2と、第4バンド領域BRD_4と、がいずれも重複し、かつ、第3バンド領域BRD_3が重複しない領域である。
【0146】
なお、第4変形例では、重複領域TRD_1と重複領域TRD_2とは、X軸に沿って並んでいるが、これに限らない。例えば、3つのバンド領域BRが重複する2つの重複領域TRが、Y軸に沿って並んでいてもよい。しかしながら、この場合は、バンド領域BRごとにY軸に沿う方向の幅を変化させたり、各印刷動作における経路RTの位置をY軸に沿う方向において異ならせたりする必要が生じるため、第4変形例のように重複領域TRD_1と重複領域TRD_2とは、X軸に沿って並ぶことが好ましい。
【0147】
2-5.第5変形例
図14は、第5変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図14において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRE_1、第2バンド領域BRE_2、第3バンド領域BRE_3、および、第4バンド領域BRE_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRE_1、第2バンド領域BRE_2、第3バンド領域BRE_3、および、第4バンド領域BRE_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BREと総称することがある。また、バンド領域BREの経路を、経路RTEと総称し、経路RTEの開始位置を開始位置PSEと総称し、経路RTEの終了位置を終了位置PEEと総称することがある。
【0148】
4つのバンド領域BREは、重複領域QRを有する点で、バンド領域BRDと相違する。具体的には、第1バンド領域BRE_1は、非重複領域SRE_1と、重複領域DRE_12と、重複領域TRE_1と、重複領域QREと、重複領域TRE_2と、重複領域DRE_41とを有する。重複領域TRE_1は、第1バンド領域BRE_1、第3バンド領域BRE_3、および、第4バンド領域BRE_4が重複し、第2バンド領域BRE_2が重複しない。重複領域TRE_2は、第1バンド領域BRE_1、第2バンド領域BRE_2、および、第3バンド領域BRE_3が重複し、第4バンド領域BRE_4が重複しない。
【0149】
第2バンド領域BRE_2は、非重複領域SRE_2と、重複領域DRE_12と、重複領域TRE_2と、重複領域QREと、重複領域DRE_23とを有する。第3バンド領域BRE_3は、非重複領域SRE_3と、重複領域DRE_23と、重複領域TRE_2と、重複領域QREと、重複領域TRE_1と、重複領域DRE_34とを有する。第4バンド領域BRE_4は、非重複領域SRE_4と、重複領域DRE_34と、重複領域QREと、重複領域TRE_1と、重複領域DRE_41とを有する。
【0150】
図14に示すように、重複領域TRE_2は、重複領域QREに隣接して設けられる。重複領域TRE_2と重複領域QREとは、主走査方向に隣接して設けられる。なお、第5変形例において、重複領域TRE_2が「第6重複領域」の一例であり、重複領域QREが「第3重複領域」の一例である。
【0151】
以上、第5変形例によれば、印刷領域Waには、第1バンド領域BRE_1と、第2バンド領域BRE_2と、第3バンド領域BRE_3と、第4バンド領域BRE_4とのうちの3つがいずれも重複し、且つ、1つが重複しない重複領域TRE_2が、重複領域QREに隣接して設けられる。
上述したように、重複領域QRは、4つのバンド領域BRのいずれかに位置ずれが発生すると、画質が低下する。従って、第1実施形態のように、位置ずれによって画質の低下が発生しやすい重複領域QRと、重複領域QRと比較して画質の低下が発生しにくい重複領域DRとが隣接していると、重複領域QRの画質の低下が際立ってしまう場合がある。そこで、第5変形例では、重複領域DREと重複領域QREとの間に、重複領域DREと重複領域QREとの中間的な画質となる重複領域TREが設けられることにより、重複領域QREの画質の低下が際立つことを抑制できる。
【0152】
また、重複領域QREと、重複領域TRE_2とは、主走査方向に隣接して設けられる。
【0153】
重複領域TRE_2は、第1バンド領域BRE_1と、第2バンド領域BRE_2と、第3バンド領域BRE_3と、がいずれも重複し、且つ、第4バンド領域BRE_4が重複しない領域である。
【0154】
なお、第5変形例では、重複領域TRE_1と、重複領域QREと、重複領域TRE_2とは、X軸に沿って並んでいるが、これに限らない。例えば、3つのバンド領域BRが重複する2つの重複領域TRと、4つのバンド領域BRが重複する重複領域QRとが、Y軸に沿って並んでいてもよい。または、重複領域TRE_1と、重複領域QREと、重複領域TRE_2とは、X軸に沿って並び、さらに、重複領域QREと、3つのバンド領域BRが重複する2つの重複領域TRとが、Y軸に沿って並んでいてもよい。
【0155】
2-6.第6変形例
図15は、第6変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。
図15において、印刷領域Waは、第1バンド領域BRF_1、第2バンド領域BRF_2、第3バンド領域BRF_3、および、第4バンド領域BRF_4を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRF_1、第2バンド領域BRF_2、第3バンド領域BRF_3、および、第4バンド領域BRF_4のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRFと総称することがある。また、バンド領域BRFの経路を、経路RTFと総称し、経路RTFの開始位置を開始位置PSFと総称し、経路RTFの終了位置を終了位置PEFと総称することがある。
【0156】
4つのバンド領域BRFは、重複領域QRの副走査方向にも重複領域TRが設けられる点で、バンド領域BREと相違する。具体的には、第1バンド領域BRF_1は、非重複領域SRF_1と、重複領域DRF_12と、重複領域TRF_1と、重複領域QRFと、重複領域DRF_13と、重複領域TRF_2と、重複領域DRF_41とを有する。重複領域TRF_1は、第1バンド領域BRF_1、第3バンド領域BRF_3、および、第4バンド領域BRF_4が重複し、第2バンド領域BRF_2が重複しない。重複領域TRF_2は、第1バンド領域BRF_1、第2バンド領域BRF_2、および、第3バンド領域BRF_3が重複し、第4バンド領域BRF_4が重複しない。重複領域TRF_1は、Y1方向およびX2方向に切り欠きを有する矩形である。重複領域TRF_2は、X1方向およびY2方向に切り欠きを有する矩形である。
【0157】
第2バンド領域BRF_2は、非重複領域SRF_2と、重複領域DRF_12と、重複領域TRF_2と、重複領域QRFと、重複領域DRF_23とを有する。第3バンド領域BRF_3は、非重複領域SRF_3と、重複領域DRF_23と、重複領域TRF_2と、重複領域QRFと、重複領域DRF_13と、重複領域TRF_1と、重複領域DRF_34とを有する。第4バンド領域BRF_4は、非重複領域SRE_4と、重複領域DRE_34と、重複領域QREと、重複領域TRF_1と、重複領域DRF_41とを有する。
【0158】
第6変形例では、Y軸に沿う方向においても、重複領域DRFと重複領域QRFとの間に、重複領域DRFと重複領域QRFとの中間的な画質となる重複領域TRFが設けられることにより、第5変形例と同様に重複領域QRFの画質の低下が際立つことを抑制できる。
【0159】
2-7.第7変形例
図16は、第7変形例に係る印刷領域WaGの区分けの例を説明する図である。印刷領域WaGは、X1方向およびY2方向に切り欠けを有する矩形である。
図16において、印刷領域WaGは、第1バンド領域BRG_1、第2バンド領域BRG_2、および、第3バンド領域BRG_3を有する。以下の記載では、第1バンド領域BRG_1、第2バンド領域BRG_2、および、第3バンド領域BRG_3のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRGと総称することがある。また、バンド領域BRGの経路を、経路RTGと総称し、経路RTGの開始位置を開始位置PSGと総称し、経路RTGの終了位置を終了位置PEGと総称することがある。第7変形例においては、第4バンド領域を有さない点で第1実施形態や他の変形例と異なる。
【0160】
第1バンド領域BRG_1は、非重複領域SRG_1と、重複領域DRG_12と、重複領域TRGとを有する。第2バンド領域BRG_2は、非重複領域SRG_2と、重複領域DRG_12と、重複領域TRGと、重複領域DRG_23とを有する。第3バンド領域BRG_3は、非重複領域SRG_3と、重複領域DRG_23と、重複領域TRGとを有する。
【0161】
なお、第7変形例において、重複領域TRGは、「第3重複領域」の一例である。
【0162】
以上、第7変形例において、印刷領域WaGには、第1バンド領域BRG_1と、第2バンド領域BRG_2と、第3バンド領域BRG_3と、がいずれも重複する重複領域TRGが設けられる。
重複領域TRGが設けられることにより、白スジおよび黒スジの発生を抑制できる。なお、印刷領域の形状によっては、第7変形例における第3バンド領域BRG_3を省略することも可能である。
【0163】
2-8.第8変形例
上述の各態様における印刷装置1は、回転する関節230を有するロボット2を有するが、直線運動を行う関節を有するロボットを有してもよい。
【0164】
図17は、第8変形例に係る印刷装置1Hの概略を示す斜視図である。印刷装置1Hは、ロボット2の替わりにロボット2Hを有し、ワーク移動機構8の替わりにワーク移動機構8Hを有する点で、印刷装置1と相違する。ロボット2Hは、直動機構250と、昇降機構260とを有する。
【0165】
直動機構250は、ワークWに対する4つのヘッドユニット3の相対的な位置をX軸に沿って変化させる。直動機構250は、レール部材251と、キャリッジ252とを有する。レール部材251は、キャリッジ252がX軸に沿って移動するための扁平状の部材である。レール部材251のZ1方向の面には、X軸に沿った2つのレールRAが設けられる。2つのレールRAは、X軸に沿って延在する。レール部材251は、天井に取り付けられた支持材253によって固定される。キャリッジ252は、レールRAに対して摺動可能に噛み合う。なお、図示しないが、直動機構250には、キャリッジ252を移動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該移動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該移動した動作量を検出する水平エンコーダーと、を有する。
【0166】
昇降機構260は、4つのヘッドユニット3をZ軸に沿って移動させる。昇降機構260は、支持板261と、4つの個別昇降機構265とを有する。4つの個別昇降機構265は、個別昇降機構265_1~265_4である。
【0167】
支持板261は、個別昇降機構265を支持し、キャリッジ252に固定されている。キャリッジ252がX軸に沿って移動することにより、キャリッジ252に取り付けられた支持板261もX軸に沿って移動する。1つの個別昇降機構265は、4つのヘッドユニット3のうちいずれか1つをZ軸に沿って移動させる。個別昇降機構265は、支持板261に固定される。4つの個別昇降機構265のZ2方向には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット3がネジ止め等により固定された状態で装着される。
【0168】
ワーク移動機構8Hは、回転軸機構820を有する。
回転軸機構820は、Y軸に沿った回転軸YRを中心に回転可能である。さらに、回転軸機構820は、設置面830を有する。設置面830には、ワークWが設置される。回転軸機構820が回転すると、設置面830の向きが変化する。設置面830の向きが変化すると、設置面830に設置されたワークWの姿勢が変化する。第8変形例における印刷装置1Hは、キャリッジ252と、個別昇降機構265と、を動作させつつ、ヘッドユニット3からワークWに対してインクを吐出することで、印刷動作を実行する。また、複数の印刷動作の間において、回転軸機構820が回転軸YRを中心に回転することで、主走査移動動作に相当する動作を実行する。また、
図17に図示していないが、ワーク移動機構8Hは、レール機構等により回転軸機構820をY軸に沿って移動させ、副走査移動動作に相当する動作を実行可能としてもよい。このような印刷装置1Hにおいても、第1実施形態や各変形例の開示内容を組み合わせることが好適である。
【0169】
第8変形例において、重複領域DR_12の主走査方向における長さである幅D1Xは、重複領域DR_23の副走査方向における長さである幅D2Yよりも短くてもよい。
第8変形例のように、ロボット2Hによってヘッド3aがXZ方向に移動し、ワーク移動機構8HによってワークWを保持する態様においては、ワークWの曲率半径が比較的小さい場合、画質の低下を抑制しようとすると、1つのバンド領域BRの主走査方向の距離が小さくなりやすい。このため、幅D1Xが幅D2Yよりも短くすることにより、画質の低下を抑制できる。
【0170】
2-9.第9変形例
上述の各態様における印刷動作では、1つのバンド領域BRに対して、ヘッド3aの位置を開始位置PSから終了位置PEまで1回移動させるが、これに限らない。例えば、1つのバンド領域BRに対して、ヘッド3aの位置を経路RTに沿って複数回移動させ、複数回の移動のそれぞれでヘッド3aがインクを吐出してもよい。複数回の移動のそれぞれでは、コンピューター7は、複数回の移動のそれぞれに対応する部分画像を示す印刷データImgを生成する。例えば、1つのバンド領域BRに対して、n回の移動を実行する場合、コンピューター7は、1回の移動では記録比率が1/nとなるように印刷データImgを生成する。
【0171】
2-10.第10変形例
上述の各態様では、印刷領域Waは、ロボット2によってヘッド3aが移動可能な範囲ARより広いが、これに限らない。例えば、印刷領域Waは、範囲ARに含まれてもよい。例えば、基部210からヘッド3aが離れる程、ヘッド3aに発生する振動が大きくなる可能性がある。ヘッド3aに発生する振動が大きくなると、ヘッド3aの理想的な経路とに対してヘッド3aの実際の経路との間に差が生じて、印刷画質の低下を招く。そこで、印刷装置1は、印刷領域Waが範囲ARに含まれていても、複数の印刷動作の間にワークWを移動させることにより、印刷画質の低下を抑制できる。
【0172】
2-11.第11変形例
前述の各態様では、ロボット2に対するヘッド3aの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボット2のエンドエフェクターとして装着されるハンド等の把持機構によりヘッド3aを把持することにより、ロボット2に対してヘッド3aを固定してもよい。
【符号の説明】
【0173】
1,1H…印刷装置、2,2H…ロボット、2a…アーム駆動機構、3…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3b…圧力調整弁、3c…エネルギー出射部、3e…スイッチ回路、3f…支持体、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、8,8H…ワーク移動機構、10…配管部、12…インクタンク、81…レール部材、82…キャリッジ、210…基部、220…腕部、221,222,223,224,225,226…アーム、230,230_1,230_2,230_3,230_4,230_5,230_6…関節、241_1,241_6…エンコーダー、250…直動機構、251…レール部材、252…キャリッジ、260…昇降機構、261…支持板、265,265_1…個別昇降機構、311…圧電素子、820…回転軸機構、830…設置面、BR_1,BRA_1,BRB_1,BRC_1,BRD_1,BRE_1,BRF_1,BRG_1…第1バンド領域、BR_2,BRA_2,BRB_2,BRC_2,BRD_2,BRE_2,BRF_2,BRG_2…第2バンド領域、BR_3,BRA_3,BRB_3,BRC_3,BRD_3,BRE_3,BRF_3,BRG_3…第3バンド領域、BR_4,BRA_4,BRB_4,BRC_4,BRD_4,BRE_4,BRF_4…第4バンド領域、CH1x,CH1y,CH2x,CH4y…変化特性、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、CX,CY…中点、Com…駆動信号、D1,D1_1,D1_6…出力信号、D3…信号、DE…吐出方向、DN…ノズル列方向、DR,DRA_12,DRA_23,DRA_34,DRA_41,DRB_12,DRB_23,DRB_24,DRB_34,DRB_41,DRB_42,DRC_12,DRC_23,DRC_34,DRC_41,DRD,DRD_12,DRD_23,DRD_24,DRD_34,DRD_41,DRE,DRE_12,DRE_23,DRE_34,DRE_41,DRF,DRF_12,DRF_13,DRF_23,DRF_34,DRF_41,DRG_12,DRG_23,DR_12,DR_23,DR_34,DR_41,QR,QRE,QRF…重複領域、DX…出力信号、Da…印刷経路情報、FN…ノズル面、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、N…ノズル、NL…ノズル列、NL1…第1ノズル列、NL2…第2ノズル列、P1,P2,P3,P4…頂点、PD…駆動パルス、PD1,PD2,PD3,PD4…頂点、PE,PEA,PEA_4,PEB,PEB_3,PEC,PEC_3,PED,PEE,PEF,PEG,PE_1,PE_2,PE_3,PE_4…終了位置、PS,PSA,PSA_2,PSB,PSB_1,PSC,PSC_1,PSD,PSE,PSF,PSG,PS_1,PS_2,PS_3,PS_4…開始位置、PTS…タイミング信号、RA…レール、RG,RGD…領域、RT,RTA,RTB,RTD,RTE,RTF,RTG,RT_1,RT_2,RT_3,RT_4…経路、SF…設置面、SI…制御信号、SR,SRA_1,SRA_2,SRA_3,SRA_4,SRB_1,SRB_2,SRB_3,SRB_4,SRC_1,SRC_2,SRC_3,SRC_4,SRD_1,SRD_2,SRD_3,SRD_4,SRE_1,SRE_2,SRE_3,SRE_4,SRF_1,SRF_2,SRF_3,SRG_1,SRG_2,SRG_3,SR_1,SR_2,SR_3,SR_4…非重複領域、SX,Sk_1,Sk_6…制御信号、TR,TRC_1,TRC_2,TRD,TRD_1,TRD_2,TRE,TRE_1,TRE_2,TRF,TRF_1,TRF_2,TRG,TR_1,TR_2…重複領域、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、W…ワーク、WG…重心、Wa,WaG…印刷領域、YR…回転軸、dCom…波形指定信号、g1,g2…グラフ。