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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120479
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】印刷装置、および、印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027301
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC32
2C056EC35
2C056EC79
2C056FA03
2C056FA04
2C056FB01
2C056FB04
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA11
2C056HA38
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】画像の輪郭が乱れることを抑制すること。
【解決手段】液体を吐出するヘッドと、ワークとヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構と、を有する印刷装置であって、移動機構によってヘッドを第1主走査方向に移動させつつワーク上の第1領域に液体を付与する第1印刷動作と、移動機構によってヘッドを第2主走査方向に移動させつつワーク上の第2領域に液体を付与する第2印刷動作と、を実行し、第2主走査方向と直交する方向を第2幅方向としたとき、第2領域の第2幅方向における端部と、第1領域の第1主走査方向または第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第1重複領域が設けられ、第1領域のうち第2領域と重複しない領域と、第1重複領域と、第2領域のうち第1領域と重複しない領域と、が第1主走査方向において、この順に並ぶ。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
ワークと前記ヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構と、
を有する印刷装置であって、
前記移動機構によって前記ヘッドを第1主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドからインクを吐出し、前記ワーク上の第1領域に液体を付与する第1印刷動作と、
前記移動機構によって前記ヘッドを前記第1主走査方向とは異なる第2主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第2領域に液体を付与する第2印刷動作と、
を実行し、
前記第2主走査方向と直交する方向を第2幅方向としたとき、
前記第2領域の前記第2幅方向における端部と、前記第1領域の前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第1重複領域が設けられ、
前記第1領域のうち前記第2領域と重複しない領域と、前記第1重複領域と、前記第2領域のうち前記第1領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2幅方向における前記第2領域の長さは、前記第1主走査方向と直交する方向における前記第1領域の長さよりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記移動機構によって前記ヘッドを前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第3領域に液体を付与する第3印刷動作を実行し、
前記第3領域は、前記第1領域に対して、前記第1主走査方向と直交する第1幅方向に位置し、
前記第2領域の前記第2幅方向の端部と、前記第3領域の前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第2重複領域が設けられ、
前記第3領域のうち前記第2領域と重複しない領域と、前記第2重複領域と、前記第2領域のうち前記第3領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第3領域の前記第1幅方向の反対方向における端部と、前記第1領域の前記第1幅方向における端部とが互いに重複する第3重複領域と、
前記第1領域と前記第2領域と前記第3領域とがいずれも重複する第4重複領域が設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第4重複領域の前記第1主走査方向における長さは、前記第4重複領域の前記第2主走査方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1重複領域と、前記第2重複領域と、前記第4重複領域と、において前記第2印刷動作による前記第2主走査方向の記録比率は一定である、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1重複領域の前記第1主走査方向における長さは、前記第2重複領域の前記第1主走査方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記移動機構によって前記ヘッドを前記第2主走査方向または前記第2主走査方向の反対方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第4領域に液体を付与する第4印刷動作を実行し、
前記第4領域の前記第2幅方向の反対方向における端部と、前記第1領域の前記第1主走査方向の端部および前記第1主走査方向の反対方向の端部のうち前記第1重複領域が設けられていない端部と、が互いに重複する第5重複領域が設けられ、
前記第1領域のうち前記第4領域と重複しない領域と、前記第5重複領域と、前記第4領域のうち前記第1領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第1重複領域は、前記第1主走査方向と、前記第2主走査方向と、の両方に対して傾斜した方向に延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第1主走査方向と直交する方向を第1幅方向としたとき、
前記第1領域は、前記第1主走査方向と平行であって前記第1領域から前記第2領域に向かう方向につれて、前記第1幅方向の長さが減少し、かつ、
前記第2領域は、前記第2主走査方向と平行であって前記第2領域から前記第1領域に向かう方向につれて、前記第2幅方向の長さが減少する、
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記移動機構は、腕部と、前記腕部に設けられた複数の回動関節と、前記腕部の一端であり前記ヘッドを支持する先端部と、前記腕部の他端に接続する基部と、を含むロボットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間において、前記移動機構が、前記ヘッドと前記ワークとの間の姿勢を相対的に変化させる回転動作を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
液体を吐出するヘッドと、
ワークと前記ヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構と、
を有する印刷装置の印刷方法であって、
前記移動機構によって前記ヘッドを第1主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第1領域に液体を付与する第1印刷動作と、
前記移動機構によって前記ヘッドを前記第1主走査方向とは異なる第2主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第2領域に液体を付与する第2印刷動作と、
を実行し、
前記第2主走査方向と直交する方向を第2幅方向としたとき、
前記第2領域の前記第2幅方向における端部と、前記第1領域の前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第1重複領域が設けられ、
前記第1領域のうち前記第2領域と重複しない領域と、前記第1重複領域と、前記第2領域のうち前記第1領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、および、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出するヘッドから、ワークの表面に液体を吐出することにより印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、ワークとヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構を有する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-187074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の印刷装置では、移動機構によるヘッドの理想的な経路とヘッドの実際の経路とのずれ、移動機構の動作とヘッドの動作との制御の同期のずれ、および、液体の尾引きに起因した霧状の微細な液滴等、様々な要因によって、画像の輪郭が乱れる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の印刷装置は、液体を吐出するヘッドと、ワークと前記ヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構と、を有する印刷装置であって、前記移動機構によって前記ヘッドを第1主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドからインクを吐出し、前記ワーク上の第1領域に液体を付与する第1印刷動作と、前記移動機構によって前記ヘッドを前記第1主走査方向とは異なる第2主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第2領域に液体を付与する第2印刷動作と、を実行し、前記第2主走査方向と直交する方向を第2幅方向としたとき、前記第2領域の前記第2幅方向における端部と、前記第1領域の前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第1重複領域が設けられ、前記第1領域のうち前記第2領域と重複しない領域と、前記第1重複領域と、前記第2領域のうち前記第1領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、ことを特徴とする。
【0006】
また、本開示の印刷方法は、液体を吐出するヘッドと、ワークと前記ヘッドとの間の位置および姿勢を相対的に変化させる移動機構と、を有する印刷装置の印刷方法であって、前記移動機構によって前記ヘッドを第1主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第1領域に液体を付与する第1印刷動作と、前記移動機構によって前記ヘッドを前記第1主走査方向とは異なる第2主走査方向に移動させつつ、前記ヘッドから液体を吐出し、前記ワーク上の第2領域に液体を付与する第2印刷動作と、を実行し、前記第2主走査方向と直交する方向を第2幅方向としたとき、前記第2領域の前記第2幅方向における端部と、前記第1領域の前記第1主走査方向または前記第1主走査方向の反対方向の端部と、が互いに重複する第1重複領域が設けられ、前記第1領域のうち前記第2領域と重複しない領域と、前記第1重複領域と、前記第2領域のうち前記第1領域と重複しない領域と、が前記第1主走査方向において、この順に並ぶ、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る印刷装置1の概略を示す斜視図。
図2】第1実施形態に係る印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図。
図3】ヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図。
図4】第1実施形態に係るバンド領域BRを説明するための図。
図5図4内の領域RGを拡大した状態を示す図。
図6】頂点P1から頂点P2までの記録比率の変化を説明するための図。
図7】頂点P1から頂点P3までの記録比率の変化を説明するための図。
図8】第1実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートを示す図。
図9】第1変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
図10】第2変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図。
図11】第3変形例に係る印刷領域WaCの区分けの例を説明する図。
図12】第4変形例に係る印刷領域WaDの区分けの例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限らない。
【0010】
以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて説明を行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0011】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のロボット2が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。当該ワールド座標系には、ロボット2の後述の基部210の位置を基準とするベース座標系がキャリブレーションにより対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてロボット2の動作を制御する場合が例示される。
【0012】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0013】
1-1.印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る印刷装置1の概略を示す斜視図である。印刷装置1は、立体的なワークWの表面の一部または全部の領域である印刷領域Waにインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0014】
ワークWは、画像が形成される範囲となる印刷領域Waを含む表面を有する。図1に示す例では、ワークWが半球体であり、ワークWの表面が凸状の半球面である。印刷時のワークWは、必要に応じて、例えば、所定の設置台、後述のロボット2以外のロボットのハンド、またはコンベアー等の構造体により支持される。なお、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、図1に示す例に限定されず、任意である。ただし、印刷領域Waが曲面である場合、後述の本開示による効果が顕著となる。ワークWは、何らかの製品となる物であり、印刷領域Waに印刷を行うことは、この製品を製造する一連の工程の一つである。
【0015】
図1に示すように、印刷装置1は、ロボット2とヘッドユニット3とコントローラー5と配管部10とを有する。以下、まず、これらを順に簡単に説明する。
【0016】
ロボット2は、ワールド座標系でのヘッドユニット3の位置および姿勢を変化させる移動機構である。図1に示す例では、ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。
【0017】
図1に示すように、ロボット2は、基部210と腕部220とを有する。
【0018】
基部210は、腕部220を支持する台である。図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面または基台等の設置面にネジ止め等により固定される。
【0019】
腕部220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、腕部220は、リンクとも称されるアーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0020】
関節230_1~230_6のそれぞれは、基部210およびアーム221~226のうち互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対してそれぞれ図1に一点鎖線で示した軸まわりに回動可能に連結する機構である。なお、以下では、関節230_1~230_6のそれぞれを「関節230」という場合がある。なお、関節230_1~230_6は、「複数の回動関節」の一例である。
【0021】
図1では図示しないが、関節230_1~230_6のそれぞれには、対応する当該互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節230_1~230_6の当該駆動機構の集合体は、後述の図2に示すアーム駆動機構2aに相当する。
【0022】
以上のロボット2のアーム221~226のうち最も先端に位置するアーム226には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット3がネジ止め等により固定された状態で装着される。言い換えれば、アーム226は、腕部220の一端でありヘッド3aを支持する先端部であると言える。基部210は、腕部220の他端に接続する。
【0023】
ヘッドユニット3は、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。ワークWの表面は、例えば、インクに対して非吸収性の材料で構成される。当該材料は、例えば、プラスチック、並びに、金属類およびガラス等の無機化合物である。
【0024】
本実施形態では、ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に図3に基づいて説明する。
【0025】
当該インクとしては、特に限定されないが、本実施形態では、紫外線硬化性インクが用いられる。なお、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0026】
ヘッドユニット3には、配管部10と図示しない配線部とのそれぞれが接続される。配管部10は、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する配管または配管群である。当該配線部は、ヘッド3aを駆動する電気信号を供給する配線または配線群である。なお、当該配線部の引き回しは、配管部10の引き回しと同じであっても異なってもよい。
【0027】
1-2.印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。図2に示すように、印刷装置1は、前述の図1に示す構成要素のほか、コントローラー5に通信可能に接続される制御モジュール6と、コントローラー5および制御モジュール6に通信可能に接続されるコンピューター7と、を有する。コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7は、例えば、「制御部」として総称される場合がある。
【0028】
なお、図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。
【0029】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作をロボット2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。また、コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0030】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。
【0031】
記憶回路5aには、印刷経路情報Daが記録される。印刷経路情報Daは、ロボット2の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時にヘッド3aの移動すべき経路におけるヘッド3aの位置および姿勢を示す情報である。印刷経路情報Daは、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な位置の変化を示す情報と、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な姿勢の変化を示す情報と、を含む。
【0032】
処理回路5bは、印刷経路情報Daに基づいてロボット2のアーム駆動機構2aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。
【0033】
ここで、アーム駆動機構2aは、前述の関節230_1~230_6の駆動機構の集合体であり、関節230ごとに、ロボット2の関節を駆動するためのモーターと、ロボット2の関節の回転角度を検出するエンコーダー241_1~241_6と、を有する。
【0034】
処理回路5bは、印刷経路情報Daをロボット2の各関節230の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、各関節230の実際の回転角度および回転速度等の動作量が印刷経路情報Daに基づく前述の演算結果となるように、制御信号Sk_1~Sk_6を出力する。以下では、出力信号D1_1から出力信号D1_6までのそれぞれを総称して出力信号D1という場合がある。
【0035】
また、処理回路5bは、アーム駆動機構2aの有するエンコーダー241_1~241_6のうちの少なくとも1つからの出力信号D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力信号D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0036】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データImgとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。印刷データImgは、印刷経路情報Daの示す複数の経路のそれぞれの経路においてワークW上に印刷すべき画像を示す情報である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0037】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0038】
電源回路6bは、オフセット電位VBSを生成し、ヘッドユニット3に供給する。また、電源回路6bは、電源電位VHVを生成し、駆動信号生成回路6dに供給する。
【0039】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。
【0040】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号であり、例えば、当該圧電素子311に対応するノズルNからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルNから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルNからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0041】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。
【0042】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0043】
コンピューター7は、印刷経路情報Daを生成する機能と、コントローラー5に印刷経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。なお、コンピューター7は印刷装置1のユーザーインターフェースとしても機能し、印刷装置1のユーザーは、コントローラー5および制御モジュール6を介して、ロボット2およびヘッドユニット3に後述する第1印刷動作、第2印刷動作、および、第3印刷動作を含む複数の印刷動作を実行させる。コンピューター7は、さらに、エネルギー出射部3cの駆動を制御する機能を有する。
【0044】
以上のように、印刷経路情報Daに基づいてロボット2の駆動が制御されるとともに、印刷データImgおよび信号D3に基づいてヘッド3aの駆動が制御されることにより、複数の印刷動作が行われる。複数の印刷動作の各印刷動作では、ロボット2が印刷経路情報Daに基づいてヘッド3aの位置および姿勢を変化させつつ、ヘッド3aが印刷データImgおよび信号D3に基づく適宜のタイミングでヘッド3aからワークWに向けてインクを吐出させる。これにより、ワークW上に印刷データImgに基づく画像が形成される。
【0045】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、ヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0046】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット3に設定されるツール座標系の座標軸に相当し、前述のロボット2の動作により前述のワールド座標系またはロボット座標系との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、ツール座標系とベース座標系またはロボット座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。
【0047】
ヘッドユニット3は、前述のように、ヘッド3aと圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。これらは、図3中の二点鎖線で示される支持体3fに支持される。なお、圧力調整弁3bの設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0048】
支持体3fは、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、図3では、支持体3fが扁平な箱状をなすが、支持体3fの形状は、特に限定されず、任意である。
【0049】
以上の支持体3fは、前述のアーム226に装着される。従って、ヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3fにより一括してアーム226に支持される。このため、アーム226に対するヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cのそれぞれの相対的な位置が固定される。図3に示す例では、ヘッド3aに対してc1方向の位置には、圧力調整弁3bが配置される。ヘッド3aに対してa2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。
【0050】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とに区分される。第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のそれぞれは、b軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0051】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、圧電素子311と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子311は、当該圧電素子311に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルNからインクを吐出方向DEに吐出させ、ワークWの表面にインク滴を着弾させる。なお、ノズルNからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0052】
以上のヘッド3aには、配管部10を介して不図示のインクタンクからインクが供給される。ここで、配管部10は、圧力調整弁3bを介してヘッド3aに接続される。
圧力調整弁3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと不図示のインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。
【0053】
エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。本実施形態では、紫外線硬化性インクを用いているため、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(Light Emitting Diode)で構成される。
【0054】
なお、図3に示すように、ヘッドユニット3はヘッド3aを有するため、ロボット2は、ワークWとヘッド3aとの間の相対的な位置および姿勢を変化させるとも言える。ワークWとヘッド3aとの間の相対的な位置および姿勢を変化させるとは、ワークWを固定させたままヘッド3aの位置および姿勢を変化させることと、ヘッド3aを固定させたままワークWの位置および姿勢を変化させることとを含む。さらに、ワークWの位置および姿勢を変化可能とし、ヘッド3aの位置および姿勢を変化可能としてもよい。本実施形態では、ロボット2は、ワークWを固定させたままヘッド3aの位置および姿勢を変化させる。ロボット2は、「移動機構」の一例である。
【0055】
1-4.本実施形態に係る印刷動作
印刷領域Waの幅が、ヘッド3aの幅以上である場合、印刷領域Waを複数のバンド領域BRに区分けし、それぞれのバンド領域BRに部分画像を形成することにより、印刷領域Waに画像を形成できる。
【0056】
以降の説明では、説明の簡略化のため、印刷領域WaがXY平面に平行な平面であるとして説明する。本実施形態において、複数のバンド領域BRは、X軸に長尺な矩形形状である。但し、印刷領域Waが曲面である場合等には、複数のバンド領域BRは、矩形形状ではない形状でもよい。矩形形状ではない形状は、例えば、略楕円形状、菱形形状、および、台形形状等である。
【0057】
それぞれのバンド領域BRに部分画像を形成する場合、印刷領域Waに形成される画像の輪郭が乱れる場合があった。特に、バンド領域BRの長手方向である主走査方向の端の輪郭が乱れることがあることが、発明者らの実験等により得られた。主走査方向の端の輪郭が乱れる理由として、以下の3つが考えられる。
【0058】
第1の理由は、インクの尾引きに起因した霧状の微細な液滴、いわゆるインクミストである。インクミストが、特に、バンド領域BRの主走査方向の終端において、ワーク上のインクを付与すべきでない領域に付着し、結果的に輪郭が不明瞭になる。第2の理由は、インクの増粘である。特に、主走査方向の始端において、インクが増粘していると、実際の吐出速度が理想的な吐出速度よりも低下して、着弾位置がずれてしまい、結果的に輪郭が不明瞭になる。第3の理由は、複数のバンド領域BRに部分画像を形成する場合における、ロボット2によるヘッド3aの理想的な経路とヘッド3aの実際の経路とのずれ、および、ロボット2の動作とヘッド3aの動作との制御の同期のずれである。
【0059】
以上、第1の理由から第3の理由によって、バンド領域BRの主走査方向の始端および終端の輪郭が乱れることがある。そして、バンド領域BRの主走査方向の始端および終端である端部が、印刷領域Waに位置する場合、印刷領域Waに形成される画像の質の低下が生じる。特に、輪郭部分は、本来画像が形成されない部分とのコントラストが大きくなるため、印刷領域Waに形成された画像の観察者に認識されやすい。
【0060】
そこで、本実施形態では、複数のバンド領域BRのそれぞれの始端および終端の一方または両方が、印刷領域Waの輪郭部よりも内側に位置するように設定する。具体的には、2つのバンド領域BRのうち、一方のバンド領域BRの主走査方向と他方のバンド領域BRの主走査方向とを異ならせ、一方のバンド領域BRの端部と、他方の主走査方向に直交する幅方向における端部とが互いに重複する重複領域DRを設ける。重複領域DRを設けることにより、一方のバンド領域BRの主走査方向の端部の輪郭が乱れたとしても、乱れた輪郭を印刷領域Waの内側に収めることにより、観察者に認識されにくくできる。従って、第1実施形態によれば、見かけ上の画像の質の低下を抑制できる。
【0061】
図4は、第1実施形態に係るバンド領域BRを説明するための図である。第1実施形態では、印刷領域Waは、第1バンド領域BR_1、第2バンド領域BR_2、および、第3バンド領域BR_3、を有する。ここで、第1バンド領域BR_1は、印刷領域Waのうち、第1印刷動作によってインク滴が付与される領域であり、第2バンド領域BR_2は、印刷領域Waのうち、第2印刷動作によってインク滴が付与される領域であり、第3バンド領域BR_3は、印刷領域Waのうち、第1印刷動作によってインク滴が付与される領域である。以下の記載では、第1バンド領域BR_1、第2バンド領域BR_2、および、第3バンド領域BR_3のそれぞれを区別せずに、バンド領域BRと総称することがある。第1実施形態では、印刷領域Waには、3つのバンド領域BRが含まれるが、バンド領域BRの個数は3つに限らない。例えば、印刷領域Waに含まれるバンド領域BRの個数は、2でもよいし4以上でもよい。
【0062】
なお、第1バンド領域BR_1が「第1領域」の一例である。第2バンド領域BR_2が「第2領域」の一例である。第3バンド領域BR_3が「第3領域」の一例である。
【0063】
第1バンド領域BR_1は、印刷領域WaのうちX2方向の端部およびY1方向の端部に位置する。第2バンド領域BR_2は、印刷領域WaのうちX1方向の端部に位置する。第3バンド領域BR_3は、印刷領域WaのうちX2方向の端部およびY2方向の端部に位置する。
【0064】
図4に示すように、各バンド領域BRは、他の1つのバンド領域BRと重複する領域である重複領域DRと、他の2つのバンド領域BRと重複する領域である重複領域TRとを有する。言い換えれば、重複領域DRは、2つのバンド領域BRが互いに重複する領域である。重複領域TRは、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2と第3バンド領域BR_3との3つがいずれも重複する領域である。また、バンド領域BRのうち、他のバンド領域BRと重複しない領域を、非重複領域SRと記載することがある。
【0065】
具体的には、第1バンド領域BR_1は、非重複領域SR_1と、重複領域DR_12と、重複領域DR_13と、重複領域TRとを有する。以下の記載において、重複領域DR_xyは、第xバンド領域BR_xと、第yバンド領域BR_yとが、互いに重複する領域であることを意味する。xは、1から4までの任意の整数である。yは、xと異なり、且つ、1から4までの任意の整数である。例えば、重複領域DR_12は、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2とが、互いに重複する領域である。
【0066】
第2バンド領域BR_2は、非重複領域SR_2と、重複領域DR_12と、重複領域DR_32と、重複領域TRとを有する。第3バンド領域BR_3は、非重複領域SR_3と、重複領域DR_13と、重複領域DR_32と、重複領域TRとを有する。
【0067】
なお、図4では、便宜上の表示として、バンド領域BRの輪郭が印刷領域Waの輪郭に重ならないようにするため、バンド領域BRを多少小さく表示してある。また、図4では、重複領域DRおよび重複領域TRの範囲を理解しやすくするため、重複領域DRおよび重複領域TRに網掛けを付与してある。さらに、重複領域DRと重複領域TRとでは重複するバンド領域BRの数が異なるため、重複領域DRと重複領域TRとで異なる種類の網掛けを付与してある。
【0068】
なお、重複領域DR_12が、「第1重複領域」の一例である。重複領域DR_32が、「第2重複領域」の一例である。重複領域DR_13が、「第3重複領域」の一例である。重複領域TRが、「第4重複領域」の一例である。
【0069】
図4に示すように、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、はX軸に沿う方向に隣接する。同様に、第3バンド領域BR_3と、第2バンド領域BR_2と、はX軸に沿う方向に隣接する。第1バンド領域BR_1と、第3バンド領域BR_3と、はY軸に沿う方向に隣接する。具体的には、第3バンド領域BR_3は、第1バンド領域BR_1に対してY2方向に位置する。
【0070】
図4に示すように、ヘッド3aが第1主走査方向VC_1に沿った経路RT_1に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出する第1印刷動作により、第1バンド領域BR_1に部分画像が形成される。ヘッド3aがいずれかの経路に沿って移動するとは、より詳細には、ヘッド3aの近傍に設定されたツールセンターポイントが当該経路に沿って移動するようにロボット2が動作することを指す。ツールセンターポイントはヘッド3aを代表する仮想的な基準点であり、例えばノズル面FNに設けられたノズル列NLの中心または重心から数mm程度だけ吐出方向DEに沿って移動させた位置に設定される。同様に、ヘッド3aが第2主走査方向VC_2に沿った経路RT_2に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出する第2印刷動作により、第2バンド領域BR_2に部分画像が形成される。ヘッド3aが第1主走査方向VC_1に沿った経路RT_3に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出する第2印刷動作により、第3バンド領域BR_3に部分画像が形成される。なお、本実施形態では、それぞれの印刷動作の実行中において、ロボット2は、ノズル列方向DNがそれぞれの主走査方向と直交するようにヘッド3aの姿勢を維持する。例えば、第1印刷動作の実行中において、ノズル列方向DNはY軸と平行である一方で、第2印刷動作の実行中においては、ノズル列方向DNはX軸と平行である。
【0071】
図4から理解されるように、第1主走査方向VC_1は、X1方向である。第2主走査方向VC_2は、Y2方向である。従って、第1主走査方向VC_1と、第2主走査方向VC_2とは、異なる方向である。第1実施形態では、第1主走査方向VC_1と、第2主走査方向VC_2とは、直交するが、交差してもよい。また、以下の記載では、第1主走査方向VC_1に直交し、かつ、第1バンド領域BR_1から第3バンド領域BR_3に向かう方向を、第1幅方向VW_1と記載することがある。第1実施形態では、第1幅方向VW_1は、Y2方向である。同様に、第2主走査方向VC_2に直交し、第2バンド領域BR_2から第1バンド領域BR_1に向かう方向を、第2幅方向VW_2と記載することがある。第1実施形態では、第2幅方向VW_2は、X2方向である。
【0072】
経路RT_1は、開始位置PS_1から終了位置PE_1までの経路である。経路RT_2は、開始位置PS_2から終了位置PE_2までの経路である。経路RT_3は、開始位置PS_3から終了位置PE_3までの経路である。経路RT_1および経路RT_3は、X2方向からX1方向に至る経路である。経路RT_2は、Y1方向からY2方向に至る経路である。
【0073】
上述したように、第1バンド領域BR_1の主走査方向と、第3バンド領域BR_3の主走査方向とは、共に第1主走査方向VC_1であるが、これに限らない。例えば、第3バンド領域BR_3の主走査方向は、X2方向、即ち、第1主走査方向VC_1の反対方向でもよい。
【0074】
以下の記載では、経路RT_1、経路RT_2、経路RT_3のそれぞれを区別せずに、経路RTと総称することがある。開始位置PS_1、開始位置PS_2、開始位置PS_3のそれぞれを区別せずに、開始位置PSと総称することがある。終了位置PE_1、終了位置PE_2、終了位置PE_3のそれぞれを区別せずに、終了位置PEと総称することがある。
【0075】
重複領域DR_12は、第2バンド領域BR_2の第2幅方向VW_2における端部と、第1バンド領域BR_1の第1主走査方向VC_1の端部と、が互いに重複する領域である。そして、第1バンド領域BR_1のうち第2バンド領域BR_2と重複しない領域である非重複領域SR_1と、重複領域DR_12と、第2バンド領域BR_2のうち第1バンド領域BR_1と重複しない領域である非重複領域SR_2と、が第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2の一方または両方において、この順に並ぶ。第1実施形態では、第1主走査方向VC_1がX1方向であり、第2幅方向VW_2がX2方向であるから、第1主走査方向VC_1と第2幅方向VW_2とは平行である。従って、非重複領域SR_1と、重複領域DR_12と、非重複領域SR_2とが、第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2において、この順に並ぶ。第1実施形態において、第2バンド領域BR_2の第2幅方向VW_2における端部とは、第2バンド領域BR_2のX2方向の端からX1方向に幅D1X離れた位置までの範囲である。幅D1Xは、印刷装置1の開発者、または、印刷装置1のユーザー等によって設定される所定の長さである。例えば、印刷装置1のユーザーは、1つのバンド領域BRの輪郭が乱れる範囲が含まれるように、幅D1Xを設定する。同様に、第1バンド領域BR_1の第1主走査方向VC_1の端部とは、第1バンド領域BR_1のX1方向の端からX2方向に幅D1X離れた位置までの範囲である。
【0076】
重複領域DR_32は、第2バンド領域BR_2の第2幅方向VW_2における端部と、第3バンド領域BR_3の第1主走査方向VC_1の端部と、が互いに重複する領域である。そして、第3バンド領域BR_3のうち第2バンド領域BR_2と重複しない領域である非重複領域SR_3と、重複領域DR_32と、第2バンド領域BR_2のうち第3バンド領域BR_3と重複しない領域である非重複領域SR_2と、が第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2の一方または両方、第1実施形態では第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2において、この順に並ぶ。第3バンド領域BR_3の第1主走査方向VC_1の端部とは、第3バンド領域BR_3のX1方向の端からX2方向に幅D1X離れた位置までの範囲である。
【0077】
重複領域DR_13は、第3バンド領域BR_3の第1幅方向VW_1の反対方向における端部と、第1バンド領域BR_1の第1幅方向VW_1における端部とが互いに重複する領域である。第3バンド領域BR_3の第1幅方向VW_1の反対方向の端部とは、第3バンド領域BR_3のY1方向の端からY2方向に幅D2Y離れた位置までの範囲である。幅D2Yは、幅D1Xと同様に、印刷装置1の開発者、または、印刷装置1のユーザー等によって設定される所定の長さである。幅D2Yは、幅D1Xと同一の長さでもよいし、異なる長さでもよい。第1バンド領域BR_1の第1幅方向VW_1の端部とは、第1バンド領域BR_1のY2方向の端からY1方向に幅D2Y離れた位置までの範囲である。
【0078】
重複領域TRは、第1バンド領域BR_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BR_3とのいずれも重複する領域である。図4では、重複領域TRの重心WGを示してある。重心とは、対象の形状において断面1次モーメントの総和がゼロになる地点である。例えば、対象の形状が円形である場合、重心は、円の中心であり、対象の形状が平行四辺形である場合、重心は、平行四辺形が有する2つの対角線の交点である。
【0079】
重複領域TRの第1主走査方向VC_1における長さは、幅D1Xである。重複領域TRの第2主走査方向VC_2における長さは、幅D2Yである。幅D1Xは、幅D2Yよりも長くてもよいし短くてもよいし、同一でもよい。但し、幅D1Xは幅D2Yよりも長いことが好ましい。図4では、図示を簡略化するため、幅D1Xと幅D2Yとが略同一の長さで表示してある。
【0080】
第2幅方向VW_2における第2バンド領域BR_2の長さDX2は、第1幅方向VW_1における第1バンド領域BR_1の長さDY1よりも短いことが好ましい。さらに、長さDX2は、長さDY1の半分よりも短いことがより好ましい。
【0081】
図5は、図4内の領域RGを拡大した状態を示す図である。領域RGは、頂点P1と、頂点P2と、頂点P3と、頂点P4とを有する矩形領域である。図4から理解されるように、頂点P1は、第1バンド領域BR_1に含まれる。頂点P2および頂点P4は、第2バンド領域BR_2に含まれる。頂点P3は、第3バンド領域BR_3に含まれる。
【0082】
図5に示すように、領域RGは、非重複領域SR_1と、非重複領域SR_2と、非重複領域SR_3と、重複領域DR_12と、重複領域DR_13と、重複領域DR_32と、重複領域TRとを有する。図5では、頂点P1と頂点P2との間の辺に、点EG12と、点EG21とを示してある。点EG12は、非重複領域SR_1と重複領域DR_12との境界のうち、Y1方向の端に位置する。点EG21は、非重複領域SR_2と重複領域DR_12との境界のうち、Y1方向の端に位置する。同様に、図5では、頂点P1と頂点P3との間の辺に、点EG13と、点EG31とを示してある。点EG13は、非重複領域SR_1と重複領域DR_13との境界のうち、X2方向の端に位置する。点EG31は、非重複領域SR_3と重複領域DR_13との境界のうち、X2方向の端に位置する。
【0083】
図5の例では、領域RGの各非重複領域、各重複領域DR、および、重複領域TR内の1つの矩形が1つの画素を意味しており、1つの画素に含まれる数字は、当該画素にインク滴を付与する印刷動作を示している。例えば、図5において「1」が付与された画素は、第1印刷動作によって、インク滴が付与される画素である。つまり、「1」が付与された画素が配置される領域は、第1バンド領域BR_1である。また、2つの数字が混在する領域は、2つのバンド領域が重なった重複領域DRであり、3つの数字が混在する領域は、3つのバンド領域が重なった重複領域TRである。なお、図5では、理解を容易にするため、1つの画素に付与した網掛けは、画素に含まれる数字に応じて異なっている。なお、各領域における画素の数はあくまで一例であり、ロボット2の動作精度やヘッド3aから吐出されるインク滴の着弾位置精度等に応じて適宜に変更が可能である。
【0084】
図5では、説明の簡略化のため、印刷領域Waに対応する全画素にインク滴を付与する印刷画像である、いわゆる「ベタ画像」を形成する例を示している。後述する印刷動作において複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに形成される部分画像を形成するため、コンピューター7は、複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに応じた部分画像を示す印刷データImgを印刷動作に先立って生成する。また、コンピューター7は、2つの重複領域DRにおいては、一方の印刷動作による記録比率と、他方の印刷動作による記録比率との合計が100%となるように印刷データImgを生成する。
【0085】
例えば、図5において、「1」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_1と、「2」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_2と、「3」が付与された画素のみによって示される非重複領域SR_3と、は、いずれも1つの印刷動作記録比率が100%となるように記録画素が配置される。例えば、非重複領域SR_1は、第1印刷動作のみによって、インク滴が付与されるため、非重複領域SR_1における第1印刷動作の記録比率は100%である。なお、記録とは、印刷動作によってワーク上にインク滴を付与することを指しており、記録画素とは、印刷領域Waのうちインク滴が付与される位置に対応する画素である。また、ある領域における、ある印刷動作による記録比率とは、当該領域に対応する全ての画素に対する、当該印刷動作によってインク滴が付与される記録画素の割合である。
【0086】
また、「1」が付与された画素および「2」が付与された画素によって示される重複領域DR_12と、「1」が付与された画素および「3」が付与された画素によって示される重複領域DR_13と、「3」が付与された画素および「2」が付与された画素によって示される重複領域DR_32とは、2つの領域の記録画素が互いに排他的かつ補間的に配置されている。換言すれば、2つの印刷動作による記録比率が両者の合計で100%となるように、インク滴が配置される画素である記録画素が適切に分散して配置される。こうした配置は、あらかじめコンピューター7に記憶されたマスクパターンを印刷画像に対して適用することで実現される。同様に、「1」が付与された画素、「2」が付与された画素、および、「3」が付与された画素によって示される重複領域TRは、3つの領域の記録画素が互いに排他的かつ補間的に配置されている。このため、3つの印刷動作による記録比率が両者の合計で100%となる。
【0087】
図5の例では、コンピューター7が、重複領域DRおよび重複領域TRの内部において互いに重複する2つのバンド領域BRにそれぞれインク滴を付与する2つ以上の印刷動作の記録比率を変化させるように、印刷データImgを生成した例を示してある。記録比率の変化について、図6および図7を用いて説明する。
【0088】
図6に示すグラフg1は、X軸に沿う方向における第1印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH1xと、X軸に沿う方向における第2印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH2xと、を有する。図7に示すグラフg2は、Y軸に沿う方向における第1印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH1yと、Y軸に沿う方向における第3印刷動作による記録比率の変化の特性を示す変化特性CH3yと、を有する。
【0089】
変化特性CH1xが示すように、頂点P1から点EG12までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は100%である。点EG12から点EG21までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は、点EG21から点EG12に近づくことにつれて単調に増加し、逆にEG12から点EG21に近づくことにつれて単調に低下する。点EG21から頂点P2までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は0%である。
【0090】
変化特性CH2xが示すように、頂点P2から点EG21までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は100%である。点EG21から点EG12までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は、EG12から点EG21に近づくことにつれて単調に増加し、逆にEG21から点EG12に近づくことにつれて単調に低下する。点EG12から頂点P1までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は0%である。
【0091】
図5および図6から理解されるように、頂点P1から頂点P2までの全ての位置において、第1印刷動作による重複領域DR_12の記録比率と、第2印刷動作による重複領域DR_12の記録比率との合計が、100%である。例えば、点EG12と点EG21との中点CXにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第2印刷動作による記録比率とは、互いに50%である。
【0092】
また、変化特性CH1yが示すように頂点P1から点EG13までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は100%である。点EG13から点EG31までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は、点EG31から点EG13に近づくことにつれて単調に増加し、逆に点EG13から点EG31に近づくことにつれて単調に低下する。点EG31から頂点P3までに代表される区間の周辺画素において、第1印刷動作による記録比率は0%である。
【0093】
変化特性CH3yが示すように、頂点P3から点EG31までに代表される区間の周辺画素において、第3印刷動作による記録比率は100%である。点EG31から点EG13までに代表される区間の周辺画素において、第3印刷動作による記録比率は、点EG13から点EG31に近づくことにつれて単調に増加し、逆に点EG31から点EG13に近づくことにつれて単調に低下する。点EG13から頂点P1までに代表される区間の周辺画素において、第3印刷動作による記録比率は0%である。
【0094】
図5および図7から理解されるように、頂点P1から頂点P3までの全ての位置において、第1印刷動作による重複領域DR_13の記録比率と、第3印刷動作による重複領域DR_13の記録比率との合計が、100%である。例えば、点EG13と点EG31との中点CYにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第3印刷動作による記録比率とは、互いに50%である。
【0095】
上述の説明では、頂点P1から頂点P2まで、すなわちX軸に沿う方向の印刷動作による記録比率と、頂点P1から頂点P3まで、すなわちY軸に沿う方向の印刷動作による記録比率とが、単調に変化することを説明したが、記録比率が単調に変化する方向は、X軸に沿う方向およびY軸に沿う方向に限らない。例えば、図5に示すV1方向の印刷動作による記録比率も、単調に変化する。V1方向は、Z2方向に見て、Y2方向を45度時計方向に回転させた方向である。
【0096】
V1方向の記録比率の変化について、頂点P2、点CV1、点WG、点CV2、および頂点P3を用いて説明する。点CV1は、重複領域DR_12のX2方向の端に位置し、且つ、Y1方向の端に位置する。点CV2は、重複領域DR_32のX1方向の端に位置し、且つ、Y2方向の端に位置する。点WGは、重複領域TRの重心であり、点CV1と点CV2との中点でもある。頂点P2、点CV1、点WG、点CV2、および頂点P3は、V1方向に一直線上に配置される。頂点P2から点CV1までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は100%である。図5に示す点CV1から点CV2までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は、点CV2に近づくにつれて単調に低下する。点CV2から頂点P3までに代表される区間の周辺画素において、第2印刷動作による記録比率は0%である。例えば、点WGにおいて、例えば、第2印刷動作による記録比率が50%であり、第1印刷動作による記録比率と、第3印刷動作による記録比率とが、25%である。
【0097】
図5に示すように、重複領域DR_12では、X1方向に向かって第1印刷動作による記録比率が増加し、X2方向に向かって第2印刷動作による記録比率が増加する。同様に、重複領域DR_32では、X1方向に向かって第3印刷動作による記録比率が増加し、X2方向に向かって第2印刷動作による記録比率が増加する。また、重複領域TRでは、X1方向に向かって第1印刷動作および第3印刷動作の合計による記録比率が増加し、逆に、X2方向に向かって第2印刷動作の単体による記録比率が増加する。但し、重複領域DR_12と、重複領域DR_32と、重複領域TRと、において第2印刷動作による第2主走査方向VC_2の記録比率は一定である。具体的には、重複領域DR_12、重複領域DR_32、および、重複領域TRにおいて、X軸の位置が同一であれば、第2印刷動作による記録比率が一定である。例えば、仮想直線VL1上における第2印刷動作による記録比率は、50%である。仮想直線VL1は、点CV2を通り、Y軸に平行な直線である。また、仮想直線VL2上における第2印刷動作による記録比率は、25%である。つまり、重複領域DR_12と、重複領域DR_32と、重複領域TRと、において、X2方向に向かっての第2印刷動作による記録比率の増加度合いが等しい。仮想直線VL2は、点CV3をとおり、Y軸に平行な直線である。点CV3は、点WGと点CV2との中点である。なお、記録比率が一定とは、領域間での記録比率について10%程度の誤差が許容される概念である。
【0098】
また、2つのバンド領域BRが重複する重複領域DR内における2つの印刷動作による記録比率の和は100%であるから、重複領域DR_12において第1印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率も一定であり、かつ、重複領域DR_32において、第3印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率も一定である。同様に、3つのバンド領域BRが重複する重複領域TR内における2つの印刷動作による記録比率の和は100%であるから、重複領域TRにおいて、第1印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率と第3印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率との和は、一定である。例えば、重複領域TRにおいて第1印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率と、第3印刷動作による第1主走査方向VC_1の記録比率との和とが一定でもよい。
【0099】
以上のように、重複領域DRおよび重複領域TR内の印刷動作による記録比率を段階的に変化させることにより、重複領域DRの画像と非重複領域SRの画像との差、および、重複領域TRの画像と重複領域DRの画像との差が目立つことを抑制できる。また、図5においては、画素の配置は理解を容易にするために正方形の集合で平面上に示したが、立体的に配置されてもよく、直方体の集合や、球体の集合、3次元的な座標情報の集合等であってもよい。
【0100】
なお、本実施形態では、コンピューター7が、重複領域DRおよび重複領域TRの内部において印刷動作による記録比率を変化させるように、印刷データImgを生成したが、これに限らない。例えば、コンピューター7は、重複領域DRおよび重複領域TRの内部において印刷動作による記録比率が一定となるように、印刷データImgを生成してもよい。例えば、重複領域TRにおいて、第1印刷動作による記録比率と、第2印刷動作による記録比率と、第3印刷動作による記録比率と、を33%に設定してもよい。
【0101】
1-5.印刷装置1の動作および印刷方法
図8は、第1実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、前述の印刷装置1を用いて行われる。図8に示す一連の動作は、コンピューター7がコントローラー5および制御モジュール6を介して、ロボット2およびヘッドユニット3を制御することで実行される。
【0102】
図8に示すように、印刷装置1は、複数の印刷動作として、第1バンド領域BR_1にインクを吐出する第1印刷動作、第3バンド領域BR_3にインクを吐出する第3印刷動作、第2バンド領域BR_2にインクを吐出する第2印刷動作の順に実行する。
【0103】
ステップS110において、印刷装置1は、印刷前動作を実行する。ステップS110の印刷前動作は、印刷動作の前にロボット2がワークWに対してヘッド3aの相対的な位置を変化させる動作である。印刷前動作では、ヘッド3aがインクを吐出しない。印刷前動作は、例えば、ロボット2がヘッド3aをノズル面FNの被覆用の不図示のキャップが設けられた位置から、複数の印刷動作のうち始めに実行する第1印刷動作に対応する第1バンド領域BR_1の開始位置PS_1へと移動させる動作等である。
【0104】
ステップS110の終了後、印刷装置1は、ステップS120において、複数の印刷動作の1つである第1印刷動作を実行する。印刷動作は、ロボット2がワークWに対してヘッド3aの相対的な位置をX軸に沿って変化させつつ、ヘッド3aがインクを吐出する動作である。
【0105】
また、印刷動作において複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに形成される部分画像を形成するため、コンピューター7は、複数のバンド領域BRのそれぞれのバンド領域BRに応じた部分画像を示す印刷データImgを印刷動作に先立って生成する。コンピューター7による印刷データImgの生成は前述のとおりである。
【0106】
ステップS120の終了後、印刷装置1は、ステップS130において、ヘッド移動動作を実行する。ヘッド移動動作は、ロボット2によって、次の印刷動作に対応するバンド領域BRの開始位置PSにヘッド3aを移動させる動作である。ヘッド移動動作では、ワークWに対するヘッド3aの姿勢を変化させる動作は含まれない。ステップS130のヘッド移動動作では、終了位置PE_1から、次の印刷動作である第1印刷動作に対応する第3バンド領域BR_3の開始位置PS_3にヘッド3aを移動させる。
【0107】
ステップS130の終了後、印刷装置1は、ステップS140において、複数の印刷動作の1つである第3印刷動作を実行する。ステップS140の終了後、印刷装置1は、ステップS150において、ヘッド移動動作を実行する。ステップS150のヘッド移動動作では、終了位置PE_1から、次の印刷動作である第2印刷動作に対応する第2バンド領域BR_2の開始位置PS_2にヘッド3aを移動させる。
【0108】
ステップS150の終了後、印刷装置1は、ステップS160において、回転動作を実行する。回転動作は、ロボット2がワークWに対するヘッド3aの姿勢を変化させる動作である。図4の例では、回転動作の前では、ヘッド3aのノズル列方向DNは、第1主走査方向であるX1方向に直交するY軸に沿う方向であり、回転動作の後では、ヘッド3aのノズル列方向DNは、第2主走査方向であるY2方向に直交するX軸に沿う方向である。また、図8では、印刷装置1は、ヘッド移動動作の後に回転動作を実行する態様を示しているが、これに限らない。例えば、印刷装置1は、回転動作を実行した後にヘッド移動動作を実行してもよいし、回転動作と移動動作とを同時に実行してもよい。なお、回転動作はロボット2以外によって実行されてもよい。例えば、Z軸まわりに回転可能な機構を有した載置台等によりワークを支持する場合、当該載置台の回転によって回転動作が実行される。
【0109】
ステップS160の終了後、印刷装置1は、ステップS170において、複数の印刷動作の1つである第2印刷動作を実行する。ステップS170の終了後、印刷装置1は、ステップS180において、印刷後動作を実行する。印刷後動作は、例えば、ロボット2がヘッド3aを第2バンド領域BR_2の終了位置PE_2から他の位置に移動させる動作等の動作を含む。他の位置は、例えば、前述のキャップが設けられた位置である。印刷後動作では、ロボット2の有する6個の関節230のすべてを動作させることが可能であり、印刷動作よりも多い数の関節230の動作によりヘッド3aの移動が行われる。ステップS180の終了後、印刷装置1は、図8に示す一連の動作を終了する。
【0110】
図8から理解されるように、印刷装置1は、第1印刷動作と第2印刷動作との間において回転動作を実行する。
【0111】
また、図8から理解されるように、印刷装置1は、主走査方向が同一または反対方向の複数の印刷動作の間に、主走査方向が異なり、かつ、反対方向でもない印刷動作を実行しない。回転動作を実行すると、位置ずれが発生しやすいためである。従って、主走査方向が同一または反対方向の複数の印刷動作の間に、主走査方向が異なり、かつ、反対方向でもない印刷動作を実行しないことにより、回転動作の回数を減らすことができる。
【0112】
1-6.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る印刷装置1は、インクを吐出するヘッド3aと、ワークWとヘッド3aとの間の位置および姿勢を相対的に変化させるロボット2と、を有する印刷装置であって、ロボット2によってヘッド3aを第1主走査方向VC_1に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第1バンド領域BR_1にインクを付与する第1印刷動作と、ロボット2によってヘッド3aを第1主走査方向VC_1とは異なる第2主走査方向VC_2に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第2バンド領域BR_2にインクを付与する第2印刷動作と、を実行し、第2主走査方向VC_2と直交し、かつ、第2バンド領域BR_2から第1バンド領域BR_1に向かう方向を第2幅方向VW_2としたとき、第2バンド領域BR_2の第2幅方向VW_2における端部と、第1バンド領域BR_1の第1主走査方向VC_1または第1主走査方向VC_1の反対方向の端部と、が互いに重複する重複領域DR_12が設けられ、第1バンド領域BR_1のうち第2バンド領域BR_2と重複しない領域と、重複領域DR_12と、第2バンド領域BR_2のうち第1バンド領域BR_1と重複しない領域と、が第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2の一方または両方において、この順に並ぶ。
第1実施形態によれば、重複領域DR_12によって第1バンド領域BR_1の始端または終端の輪郭が乱れたとしても、観察者に認識されにくくできる。従って、第1実施形態によれば、見かけ上の画像の質の低下を抑制できる。
【0113】
また、第2幅方向VW_2における第2バンド領域BR_2の長さDX2は、第1主走査方向VC_1と直交する方向における第1バンド領域BR_1の長さDY1よりも短い。
上述したように、バンド領域BRの始端および終端では、輪郭が乱れることがある。そして、図4から理解されるように、第2バンド領域BR_2の始端および終端は、印刷領域Waの縁でもある。従って、第2バンド領域BR_2の長さDX2は、短いほど好ましい。従って、第1実施形態によれば、長さDX2が長さDY1よりも長い態様と比較して、輪郭が乱れる範囲を狭くできるため、画像の質を向上できる。
【0114】
また、ロボット2によってヘッド3aを第1主走査方向VC_1に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第3バンド領域BR_3にインクを付与する第3印刷動作を実行し、第3バンド領域BR_3は、第1バンド領域BR_1に対して、第1主走査方向VC_1と直交し、且つ、第1バンド領域BR_1から第3バンド領域BR_3に向かう方向である第1幅方向VW_1に位置し、第2バンド領域BR_2の第2幅方向VW_2または第2幅方向VW_2の反対方向における端部と、第3バンド領域BR_3の第1主走査方向VC_1または第1主走査方向VC_1の反対方向の端部と、が互いに重複する重複領域DR_32が設けられ、第3バンド領域BR_3のうち第2バンド領域BR_2と重複しない領域と、重複領域DR_32と、第2バンド領域BR_2のうち第3バンド領域BR_3と重複しない領域と、が第1主走査方向VC_1および第2幅方向VW_2の一方または両方において、この順に並ぶ。
第1実施形態によれば、第1幅方向VW_1に広範囲に印刷できる。さらに、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との位置ずれを第2バンド領域BR_2によって目立たなくできる。
また、第3印刷動作は、ロボット2によって第1主走査方向VC_1の反対方向、即ち、X2方向にヘッド3aを移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第3バンド領域BR_3にインクを付与させてもよい。この態様では、バンド領域BRが主走査方向にずれる場合、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3で主走査方向が互いに反対であるため、第1バンド領域BR_1のずれる方向と、第3バンド領域BR_3のずれる方向とが反対方向になる。従って、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との主走査方向のずれが目立ってしまう。第1実施形態によれば、第1バンド領域BR_1のずれる方向と、第3バンド領域BR_3のずれる方向とが異なったとしても、重複領域DR_12と重複領域DR_32とによって、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との主走査方向のずれを目立たなくできる。
【0115】
また、第3バンド領域BR_3の第1幅方向VW_1の反対方向における端部と、第1バンド領域BR_1の第1幅方向VW_1における端部とが互いに重複する重複領域DR_13と、第1バンド領域BR_1と第2バンド領域BR_2と第3バンド領域BR_3とがいずれも重複する重複領域TRが設けられる。
第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3とが接するように配置される態様では、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との一方および両方がずれた場合に、白スジまたは黒スジが発生し、印刷領域Waに形成される画像の質が低下する。白スジは、インクが付着していない微小な隙間である。黒スジは、隣り合うバンド領域BRが重なることによって、インクが重複して付着することによって生じる濃色のスジである。具体的には、第1バンド領域BR_1に対して第3バンド領域BR_3が離れるようにずれた場合、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との間にインクが付着していない領域、すなわち白スジが発生する。また、第1バンド領域BR_1に対して第3バンド領域BR_3が近付くようにずれた場合、第1バンド領域BR_1の一部と第3バンド領域BR_3の一部とが重複し、黒スジが発生する。
そこで、重複領域DR_13を設けることにより、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3との一方および両方がずれたとしても、白スジおよび黒スジの発生を抑制できるので、画像の質が低減されることを抑制できる。図4を用いて説明すると、例えば、第1バンド領域BR_1に対して第3バンド領域BR_3が離れるようにずれた場合、重複領域DR_13が狭くなるのみに留まり、インクが付着しない隙間が発生すること、すなわち、白スジを抑制できる。一方、第1バンド領域BR_1に対して第3バンド領域BR_3が近付くようにずれた場合、第1バンド領域BR_1の非重複領域SR_1と、第3バンド領域BR_3の重複領域DR_13との重なる領域が発生する。重複領域DR_13における第3印刷動作による記録比率は、100%未満であるため、非重複領域SR_3と第1バンド領域BR_1の重複領域DR_13とのインクの重複度合いは、非重複領域SR_3と非重複領域SR_1とのインクの重複度合いよりも低い。従って、第1実施形態によれば、黒スジを抑制できる。以上により、第1実施形態によれば、第1幅方向VW_1に広い範囲に印刷する場合であっても、白スジおよび黒スジの発生を抑制して画質の低下を抑制できる。
【0116】
重複領域TRの第1主走査方向VC_1における長さである幅D1Xは、重複領域TRの第2主走査方向VC_2における長さである幅D2Yよりも長いことが好ましい。
第1印刷動作と第2印刷動作との間ではヘッド3aの姿勢変化が大きいため、位置ずれが生じやすい。すなわち、図4の例では、X軸に沿う方向におけるズレの量は、Y軸に沿う方向におけるズレの量が大きくなる可能性がある。そこで、第1実施形態によれば、幅D1Xが幅D2Yよりも短い態様と比較して、白スジおよび黒スジの発生を抑制できる。
【0117】
重複領域DR_12と、重複領域DR_32と、重複領域TRと、において第2印刷動作による第2主走査方向VC_2の記録比率は一定である。
第1実施形態によれば、第2バンド領域BR_2への第2印刷動作による第2主走査方向の記録比率が一定であるため、第2主走査方向の記録比率が変化する態様と比較して、印刷データImgの生成が容易になる。さらに、第2バンド領域BR_2の位置が第2主走査方向VC_2または第2主走査方向VC_2の反対方向にずれた場合でも、第2主走査方向VC_2の記録比率が変化する態様と比較して、画質の劣化を抑制できる。
【0118】
ロボット2は、腕部220と、腕部220に設けられた関節230と、腕部220の一端でありヘッド3aを支持する先端部と、腕部220の他端に接続する基部210と、を含む。
第1実施形態によれば、印刷装置1は、ロボット2を有することにより、ヘッド3aの移動動作およびヘッド3aの回転動作を実行できる。
【0119】
また、第1印刷動作と第2印刷動作との間において、ロボット2が、ヘッド3aとワークWとの間の姿勢を相対的に変化させる回転動作を実行する。
第1実施形態によれば、回転動作を実行することにより、主走査方向が互いに異なるバンド領域BRに部分画像を形成できる。
【0120】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0121】
2-1.第1変形例
印刷領域Waの区分けの態様は、図4の例に限らない。以下、印刷領域Waの区分けの他の態様について説明する。
【0122】
図9は、第1変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。図9において、印刷領域Waは、第1実施形態と比較して、第1バンド領域BR_1の替わりである第1バンド領域BRA_1、第2バンド領域BR_2の替わりである第2バンド領域BRA_2、および、第3バンド領域BR_3を有する。第1バンド領域BRA_1は、重複領域DR_12の替わりに重複領域DRA_12を有する点で、第1バンド領域BR_1と相違する。第2バンド領域BRA_2は、非重複領域SR_2の替わりに非重複領域SRA_2を有し、重複領域DR_12の替わりに重複領域DRA_12を有する点で、第2バンド領域BR_2と相違する。
【0123】
ヘッド3aが第1主走査方向VC_1に沿った経路RTA_1に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第1バンド領域BRA_1に部分画像が形成される。経路RTA_1は、開始位置PS_1から終了位置PEA_1までの経路である。終了位置PEA_1は、印刷領域WaのX1方向の端に位置する。
【0124】
第1バンド領域BRA_1は、第1バンド領域BR_1と比較すると、印刷領域WaのX1方向に延伸している。第1バンド領域BRA_1は、印刷領域WaのY1方向の端部およびX1方向の端部に位置する。重複領域DRA_12は、印刷領域WaのY1方向かつX1方向の頂点P12を含む。
【0125】
重複領域DRA_12は、X2方向かつY2方向の端部に切り欠きを有する矩形である。図9に示すように、重複領域DRA_12の第1主走査方向VC_1における長さは、第2幅方向VW_2における第2バンド領域BRA_2の長さDX2に一致する。図9に示すように、長さDX2は、重複領域DR_32の第1主走査方向VC_1における長さである長さD1Xよりも長い。
印刷領域Waの頂点は、印刷領域Waの辺と比較して、観察者に視認されやすい傾向にある。そこで、印刷領域Waの端部に位置する第1バンド領域BR_1に含まれる重複領域DR_12の第1主走査方向VC_1の長さDX2を、重複領域DR_32の第1主走査方向VC_1における長さである長さD1Xより長くすることにより、観察者に視認されやすい頂点P12付近の画質の低下を抑制できる。
【0126】
2-2.第2変形例
図10は、第2変形例に係る印刷領域Waの区分けの例を説明する図である。図10において、印刷領域Waは、第1変形例と比較して、第1バンド領域BRA_1の替わりである第1バンド領域BRB_1、第2バンド領域BRA_2の替わりである第2バンド領域BRB_2、および、第3バンド領域BR_3を有する。第1バンド領域BRB_1は、非重複領域SR_1の替わりに非重複領域SRB_1を有し、重複領域DRA_12の替わりに重複領域DRB_12を有する点で、第1バンド領域BRA_1と相違する。第2バンド領域BRB_2は、非重複領域SRA_2の替わりに非重複領域SRB_2を有し、重複領域DRA_12の替わりに重複領域DRB_12を有する点で、第2バンド領域BRA_2と相違する。
【0127】
第1バンド領域BRB_1は、Y1方向の辺およびY2方向の辺が互いに平行な略台形形状である。図10に示すように、第1バンド領域BRB_1のY1方向の辺は、第1バンド領域BRB_1のY2方向の辺よりも長い。第1バンド領域BR_1は、第1主走査方向VC_1と平行であって第1バンド領域BR_1から第2バンド領域BR_2に向かう方向、すなわちX1方向につれて、第1幅方向VW_1の長さが減少する。非重複領域SRB_1は、第1バンド領域BRB_1と同様に、Y1方向の辺およびY2方向の辺が互いに平行な略台形形状である。非重複領域SRB_1は、X1方向につれて、第1幅方向VW_1の長さが減少する。
【0128】
第2バンド領域BRB_2は、X1方向の辺およびX2方向の辺が互いに平行な略台形形状である。図10に示すように、第2バンド領域BRB_2のX1方向の辺は、第1バンド領域BRB_1のX2方向の辺よりも長い。第2バンド領域BRB_2は、第2主走査方向VC_2と平行であって第2バンド領域BR_2から第1バンド領域BR_1に向かう方向、すなわちY1方向につれて、第2幅方向VW_2の長さが減少する。非重複領域SRB_2は、第2バンド領域BRB_2と同様に、X1方向の辺およびX2方向の辺が互いに平行な略台形形状である。非重複領域SRB_2は、Y1方向につれて、第2幅方向VW_2の長さが減少する。
【0129】
重複領域DRB_12は、第1主走査方向VC_1と、第2主走査方向VC_2と、の両方に対して傾斜したU1方向に延在する。U1方向は、Z2方向に見て、Y1方向を0度より大きく90度未満の角度で時計方向に回転させた方向である。重複領域DRB_12のU1方向の端部は、頂点P12を含む。重複領域DRB_12のU1方向の反対方向の端部は、重複領域TRに接続する。
【0130】
以上説明したように、第2変形例では、重複領域DRB_12は、第1主走査方向VC_1と、第2主走査方向VC_2と、の両方に対して傾斜したU1方向に延在する。また、第1バンド領域BRB_1は、第1主走査方向VC_1と平行であって第1バンド領域BR_1から第2バンド領域BR_2に向かう方向につれて、第1幅方向VW_1の長さが減少し、かつ、第2バンド領域BR_2は、第2主走査方向VC_2と平行であって第2バンド領域BR_2から第1バンド領域BR_1に向かう方向につれて、第2幅方向VW_2の長さが減少する。
上述したように、重複領域DRを設けることにより、白スジおよび黒スジを抑制できるが、重複領域DRは、非重複領域SRよりも画質が低下する。従って、必要以上に重複領域DRを広くすると、画質が低下する。第2変形例では、U1方向に延在する重複領域DRB_12を設けることにより、観察者に視認されやすい頂点P12付近の画質の低下を抑制でき、必要以上に重複領域DRBを広くない程度に設定することで、第1変形例と比較して、画質を向上できる。
【0131】
2-3.第3変形例
図11は、第3変形例に係る印刷領域WaCの区分けの例を説明する図である。印刷領域WaCは、第1バンド領域BR_1の替わりに第1バンド領域BRC_1を含み、第3バンド領域BR_3の替わりに第3バンド領域BRC_3を含み、第4バンド領域BR_4を有する。ここで、第4バンド領域BR_4は、印刷領域Waのうち、第4印刷動作によってインク滴が付与される領域である。第1バンド領域BRC_1は、重複領域DR_13の替わりに重複領域DRC_13を有し、非重複領域SR_1の替わりに非重複領域SRC_1を有し、重複領域TRの替わりに重複領域TR_1を有し、重複領域DR_14と重複領域TR_2とを有する点で、第1バンド領域BR_1と相違する。第3バンド領域BRC_3は、重複領域DR_13の替わりに重複領域DRC_13を有し、非重複領域SR_3の替わりに非重複領域SRC_3を有し、重複領域TRの替わりに重複領域TR_1を有し、重複領域DR_34と重複領域TR_2とを有する点で、第3バンド領域BR_3と相違する。
【0132】
重複領域TR_1は、第1バンド領域BRC_1と、第2バンド領域BR_2と、第3バンド領域BRC_3とのいずれも重複する領域である。重複領域TR_2は、第1バンド領域BRC_1と、第3バンド領域BRC_3と、第4バンド領域BR_4とのいずれも重複する領域である。
【0133】
第4バンド領域BR_4は、重複領域DR_14と、重複領域TR_2と、非重複領域SR_4と、重複領域DR_34とを有する。
【0134】
なお、第4バンド領域BR_4が、「第4領域」の一例である。重複領域DR_14は、「第5重複領域」の一例である。
【0135】
第1バンド領域BRC_1は、印刷領域WaCのうちX軸に沿う方向に関して中央に位置し、かつ、Y1方向の端部に位置する。第2バンド領域BR_2は、印刷領域WaCのうちX1方向の端部に位置する。第3バンド領域BRC_3は、印刷領域WaCのうちX軸に沿う方向に関して中央に位置し、かつ、Y2方向の端部に位置する。第4バンド領域BR_4は、印刷領域WaCのうちX1方向の端部に位置する。
【0136】
図11に示すように、ヘッド3aが第2主走査方向VC_2に沿った経路RT_4に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第4バンド領域BR_4に部分画像が形成される。
【0137】
経路RT_4は、開始位置PS_4から終了位置PE_4までの経路である。経路RT_4は、Y1方向からY2方向に至る経路である。
【0138】
図11から理解されるように、第2バンド領域BR_2の主走査方向と、第4バンド領域BR_4の主走査方向とは、共に第2主走査方向VC_2であるが、これに限らない。例えば、第4バンド領域BR_4の主走査方向は、Y1方向、即ち、第2主走査方向VC_2の反対方向でもよい。
【0139】
重複領域DR_14は、第4バンド領域BR_4の第2幅方向VW_2の反対方向、すなわちX1方向における端部と、第1バンド領域BRC_1の第1主走査方向VC_1の端部および第1主走査方向VC_1の反対方向の端部のうち重複領域DR_12が設けられていない端部、すなわち、X2方向における端部と、が互いに重複する。そして、第1バンド領域BRC_1のうち第4バンド領域BR_4と重複しない領域である非重複領域SRC_1と、重複領域DR_14と、第4バンド領域BR_4のうち第1バンド領域BRC_1と重複しない領域である非重複領域SR_4と、が第1主走査方向VC_1において、この順に並ぶ。
【0140】
第4バンド領域BR_4のX1方向における端部とは、第4バンド領域BR_4のX1方向の端からX2方向に幅D2X離れた位置までの範囲である。幅D2Xは、印刷装置1の開発者、または、印刷装置1のユーザー等によって設定される所定の長さである。同様に、第1バンド領域BRC_1のX2方向における端部とは、第1バンド領域BRC_1のX2方向の端からX1方向に幅D2X離れた位置までの範囲である。
【0141】
同様に、重複領域DR_34は、第4バンド領域BR_4のX1方向における端部と、第1バンド領域BRC_1のX2方向における端部と、が互いに重複する。そして、非重複領域SRC_1と、重複領域DR_34と、非重複領域SR_4と、が第1主走査方向VC_1において、この順に並ぶ。
【0142】
印刷装置1は、ロボット2によってヘッド3aを第2主走査方向VC_2または第2主走査方向VC_2の反対方向に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第4バンド領域BR_4にインクを付与する第4印刷動作を実行する。印刷装置1は、例えば、ステップS160の後であって、ステップS180の前に、第4印刷動作を実行する。
【0143】
以上説明したように、第3変形例では、ロボット2によってヘッド3aを第2主走査方向VC_2または第2主走査方向VC_2の反対方向に移動させつつ、ヘッド3aからインクを吐出し、ワークW上の第4バンド領域BR_4にインクを付与する第4印刷動作を実行し、第4バンド領域BR_4の第2幅方向VW_2の反対方向における端部と、第1バンド領域BR_1の第1主走査方向VC_1の端部および第1主走査方向VC_1の反対方向の端部のうち重複領域DR_12が設けられていない端部と、が互いに重複する重複領域DR_14が設けられ、第1バンド領域BR_1のうち第4バンド領域BR_4と重複しない領域と、重複領域DR_14と、第4バンド領域BR_4のうち第1バンド領域BR_1と重複しない領域と、が第1主走査方向VC_1において、この順に並ぶ。
第3変形例によれば、重複領域DR_12および重複領域DR_14によって第1バンド領域BR_1の始端および終端の輪郭が乱れたとしても、観察者に認識されにくくできる。従って、第3変形例によれば、第1実施形態と比較して、見かけ上の画像の質の低下を抑制できる。
【0144】
2-4.第4変形例
上述の各態様では、第1主走査方向VC_1および第2主走査方向VC_2は、X軸に沿う方向またはY軸に沿う方向であったが、これに限らない。例えば、第1主走査方向VC_1および第2主走査方向VC_2の一方または両方は、X軸に沿う方向またはY軸に沿う方向に交差する方向でもよい。
【0145】
図12は、第4変形例に係る印刷領域WaDの区分けの例を説明する図である。印刷領域WaDは、Y1方向の辺およびY2方向の辺が互いに平行であり、X1方向の角が切り取られた略台形形状である。印刷領域WaDは、第1バンド領域BRD_1、第2バンド領域BRD_2、および、第3バンド領域BRD_3を有する。
【0146】
第1バンド領域BRD_1は、非重複領域SRD_1と、重複領域DRD_12と、重複領域TRDと、重複領域DRD_13とを有する。第2バンド領域BRD_2は、非重複領域SRD_2と、重複領域DRD_12と、重複領域TRDと、重複領域DRD_32とを有する。第3バンド領域BRD_3は、非重複領域SRD_3と、重複領域DRD_13と、重複領域TRDと、重複領域DRD_32とを有する。
【0147】
重複領域TRDは、第1バンド領域BRD_1と、第2バンド領域BRD_2と、第3バンド領域BRD_3とのいずれも重複する領域である。
【0148】
第1バンド領域BRD_1は、印刷領域WaDのうちX2方向の端部およびY1方向の端部に位置する。第2バンド領域BRD_2は、印刷領域WaDのうちX1方向の端部に位置する。第3バンド領域BRD_3は、印刷領域WaDのうちX2方向の端部およびY2方向の端部に位置する。
【0149】
図12に示すように、ヘッド3aが第1主走査方向VC_1に沿った経路RTD_1に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第1バンド領域BRD_1に部分画像が形成される。また、ヘッド3aが第2主走査方向VCD_2に沿った経路RTD_2に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第2バンド領域BRD_2に部分画像が形成される。ヘッド3aが第1主走査方向VC_1に沿った経路RTD_3に沿って移動しつつ、ヘッド3aからインクを吐出することにより、第3バンド領域BRD_3に部分画像が形成される。
【0150】
第2主走査方向VCD_2は、W1方向である。W1方向は、Z2方向に見て、X1方向を45度時計方向に回転させた方向である。従って、第2主走査方向VCD_2は、第1主走査方向VC_1に交差するが、直交しない。
【0151】
2-5.第5変形例
上述の各態様における印刷動作では、1つのバンド領域BRに対して、ヘッド3aの位置を開始位置PSから終了位置PEまで1回移動させるが、これに限らない。例えば、1つのバンド領域BRに対して、ヘッド3aの位置を経路RTに沿って複数回移動させ、複数回の移動のそれぞれでヘッド3aがインクを吐出してもよい。複数回の移動のそれぞれでは、コンピューター7は、複数回の移動のそれぞれに対応する部分画像を示す印刷データImgを生成する。例えば、1つのバンド領域BRに対して、n回の移動を実行する場合、コンピューター7は、1回の移動では記録比率が1/nとなるように印刷データImgを生成する。
【0152】
2-6.第6変形例
第5変形例において、奇数回目の移動は、開始位置PSから終了位置PEまでヘッド3aを移動させ、偶数回目の移動では、終了位置PEから開始位置PSまでヘッド3aを移動させてもよい。第6変形例では、例えば、n回の各開始位置が主走査方向にずれる場合、奇数回目のヘッド3aの移動によって形成される部分画像と、偶数回目のヘッド3aの移動によって形成される部分画像とのずれる方向が反対方向となってしまい、ずれが目立ってしまう。しかしながら、第6変形例によれば、重複領域DR_12によって、奇数回目のヘッド3aの移動によって形成される部分画像と、偶数回目のヘッド3aの移動によって形成される部分画像のずれを目立たなくできる。
【0153】
2-7.第7変形例
第1実施形態では、第1バンド領域BR_1と第3バンド領域BR_3とは、Y軸に沿う方向に関して隣接しているが、Y軸に沿う方向に関して互いに間隔を空けて配置されてもよい。
【0154】
2-8.第8変形例
前述の各態様では、ロボット2として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。ロボット2は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。そして、ロボット2以外の機構が、ワークWを回転させることにより、ワークWとヘッド3aとの相対的な姿勢を変化させてもよい。また、ロボット2の腕部220は、回動機構で構成される関節に加えて、伸縮機構または直動機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と、印刷前動作、移動動作、および、印刷後動作等の非印刷動作でのロボット2の動作の自由度とのバランスの観点から、ロボット2は、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。
【0155】
2-9.第9変形例
前述の各態様では、ヘッド3aがロボット2に支持されて移動する構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ヘッド3aを基台等に固定し、ワークWがロボット2に支持されて移動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0156】
1…印刷装置、2…ロボット、2a…アーム駆動機構、3…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3b…圧力調整弁、3c…エネルギー出射部、3e…スイッチ回路、3f…支持体、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、10…配管部、210…基部、220…腕部、221,222,223,224,225,226…アーム、230,230_1,230_2,230_3,230_4,230_5,230_6…関節、241_1,241_6…エンコーダー、311…圧電素子、BR_1,BRA_1,BRB_1,BRC_1,BRD_1…第1バンド領域、BR_2,BRA_2,BRB_2,BRD_2…第2バンド領域、BR_3,BRC_3,BRD_3…第3バンド領域、BR_4…第4バンド領域、CH1x,CH1y,CH2x,CH3y…変化特性、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、CX,CY…中点、Com…駆動信号、D1,D1_1,D1_6…出力信号、D3…信号、DE…吐出方向、DN…ノズル列方向、DR,DRA_12,DRB,DRB_12,DRC_13,DRD_12,DRD_13,DRD_32,DR_12,DR_13,DR_14,DR_32,DR_34…重複領域、Da…印刷経路情報、FN…ノズル面、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、N…ノズル、NL…ノズル列、NL1…第1ノズル列、NL2…第2ノズル列、P1,P12,P2,P3,P4…頂点、PD…駆動パルス、PE,PEA_1,PE_1,PE_2,PE_3,PE_4…終了位置、PS,PS_1,PS_2,PS_3,PS_4…開始位置、PTS…タイミング信号、RG…領域、RT,RTA_1,RTD_1,RTD_2,RTD_3,RT_1,RT_2,RT_3,RT_4…経路、SI…制御信号、SR,SRA_2,SRB_1,SRB_2,SRC_1,SRC_3,SRD_1,SRD_2,SRD_3,SR_1,SR_2,SR_3,SR_4…非重複領域、Sk_1,Sk_6…制御信号、TR,TRD,TR_1,TR_2…重複領域、VBS…オフセット電位、VC_1…第1主走査方向、VC_2,VCD_2…第2主走査方向、VHV…電源電位、VL1,VL2…仮想直線、VW_1…第1幅方向、VW_2…第2幅方向、W…ワーク、WG…重心、Wa,WaC,WaD…印刷領域、dCom…波形指定信号、g1,g2…グラフ。
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