(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120514
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】認証装置及び認証情報設定方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20240829BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240829BHJP
G06F 21/31 20130101ALI20240829BHJP
【FI】
G06F21/32
G06F3/01 510
G06F21/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027353
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小磯 久
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA51
5E555BA31
5E555BA32
5E555BB31
5E555BB32
5E555CA42
5E555CB65
5E555EA05
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザごとに固有の情報を認証情報として設定可能な認証装置及び認証情報設定方法を提供する。
【解決手段】認証装置は、表示部と、表示部に指標を表示する表示制御部と、表示部に表示される指標を注視するユーザの左右の視線を検出する視線検出部と、視線検出部の検出結果に基づいて、指標についてのユーザの左右の視線の交点及びユーザの左右の視線の輻輳角を算出する算出部と、算出部の算出結果に基づいて、表示部における指標の表示位置に対する交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、指標の表示位置とユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対するユーザの左右の視線の輻輳角のズレとを、ユーザを示す認証情報として設定する認証情報設定部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部に指標を表示する表示制御部と、
前記表示部に表示される前記指標を注視するユーザの左右の視線を検出する視線検出部と、
前記視線検出部の検出結果に基づいて、前記指標についての前記ユーザの左右の視線の交点及び前記ユーザの左右の視線の輻輳角を算出する算出部と、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記表示部における前記指標の表示位置に対する前記交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、前記指標の表示位置と前記ユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対する前記ユーザの左右の視線の輻輳角のズレとを、前記ユーザを示す認証情報として設定する認証情報設定部と
を備える認証装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記表示部にパスワード画像を表示し、
前記視線検出部は、前記表示部に表示される前記パスワード画像の複数の位置を注視する前記ユーザの左右の視線を検出し、
前記算出部は、前記視線検出部の検出結果に基づいて、前記パスワード画像において前記ユーザが注視した注視位置及び注視順序、前記ユーザが前記パスワード画像を注視した際の前記パスワード画像から前記ユーザの左右の眼球までの距離、並びに前記ユーザが前記パスワード画像を注視した際の前記ユーザの左右の視線の輻輳角の少なくとも1つを算出し、
前記パスワード画像と前記算出部の算出結果とを前記ユーザについてのパスワード情報として設定するパスワード情報設定部を更に備える
請求項1に記載の認証装置。
【請求項3】
前記ユーザの前記認証情報の登録動作において前記認証情報設定部により設定された前記認証情報を記憶認証情報として記憶し、前記登録動作において前記パスワード情報設定部により設定された前記パスワード情報を記憶パスワード情報として記憶し、前記記憶認証情報と前記記憶パスワード情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記ユーザを認証する認証動作において、前記認証情報を照合する認証照合部と、
前記認証動作において、前記パスワード情報を照合するパスワード照合部と、
を更に備え、
前記表示制御部は、前記認証動作において、前記記憶認証情報に含まれる前記表示位置と同一の位置に前記指標を表示し、
前記認証照合部は、前記認証動作において前記表示部に前記指標が表示される場合に、前記指標について前記認証情報設定部により設定される前記認証情報である新規認証情報と、前記記憶認証情報とが対応するかを照合する認証照合部を更に備え、
前記表示制御部は、前記認証照合部の照合結果において前記新規認証情報と前記記憶認証情報とが対応する場合に、前記記憶認証情報に対応付けて記憶される前記記憶パスワード情報に含まれる前記パスワード画像を前記表示部に表示し、
前記パスワード照合部は、前記認証動作において前記表示部に表示された前記パスワード画像について前記パスワード情報設定部により新たに設定される前記パスワード情報である新規パスワード情報と、前記記憶パスワード情報とが対応するかを照合し、照合結果において対応する場合にパスワードを解除するパスワード照合部を更に備える
請求項2に記載の認証装置。
【請求項4】
前記ユーザの瞬きを検出する瞬き検出部を更に備え、
前記表示制御部は、前記瞬き検出部により前記ユーザの瞬きが検出された場合に前記ユーザが目を開けるタイミングに合わせて前記指標の表示位置を変更し、
前記視線検出部は、表示位置が変更された前記指標に視線を移動しようとする前記ユーザの当該視線を検出し、
前記認証情報設定部は、前記視線検出部の検出結果に基づいて、前記ユーザが目を開けてから前記視線の移動を開始するまでの時間、前記視線の移動を開始してから前記指標に前記視線が到達するまでの時間、及び前記視線の移動の軌跡のうち少なくとも1つを前記認証情報として設定する
請求項1に記載の認証装置。
【請求項5】
表示部に指標を表示することと、
前記表示部に表示される前記指標を注視するユーザの左右の視線を検出することと、
視線の検出結果に基づいて、前記指標についての前記ユーザの左右の視線の交点及び前記ユーザの左右の視線の輻輳角を算出することと、
算出結果に基づいて、前記表示部における前記指標の表示位置に対する前記交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、前記指標の表示位置と前記ユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対する前記ユーザの左右の視線の輻輳角のズレとを、前記ユーザを示す認証情報として設定することと
を含む認証情報設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証装置及び認証情報設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預け払い機、クレジットカード決済機等の認証端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報端末により認証動作を行う場合、例えばパスワードを用いた認証が行われる。この場合、認証動作ごとに異なるパスワードを別個に設定することが考えられるが、どの場合にどのパスワードを使用するかを記憶しておく必要があり、負担が大きい。また、同一のパスワードを使いまわしたり、パスワードをメモして書き残しておいたりすることは、セキュリティ上好ましくない。
【0003】
一方、特許文献1には、視線検出装置において、視線を検出する際にユーザごとの個人差を吸収するために、キャリブレーションを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の記載によれば、視線の検出に際してユーザごとに個人差が存在すると考えることができる。また、当該個人差は、ユーザごとに固有の特性であり、個人を識別するための認証情報として使用可能であると考えることができる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ユーザごとに固有の情報を認証情報として設定可能な認証装置及び認証情報設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る認証装置は、表示部と、前記表示部に指標を表示する表示制御部と、前記表示部に表示される前記指標を注視するユーザの左右の視線を検出する視線検出部と、前記視線検出部の検出結果に基づいて、前記指標についての前記ユーザの左右の視線の交点及び前記ユーザの左右の視線の輻輳角を算出する算出部と、前記算出部の算出結果に基づいて、前記表示部における前記指標の表示位置に対する前記交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、前記指標の表示位置と前記ユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対する前記輻輳角のズレとを、前記ユーザを示す認証情報として設定する認証情報設定部とを備える。
【0008】
本発明に係る認証情報設定方法は、表示部に指標を表示することと、前記表示部に表示される前記指標を注視するユーザの左右の視線を検出することと、視線の検出結果に基づいて、前記指標についての前記ユーザの左右の視線の交点及び前記ユーザの左右の視線の輻輳角を算出することと、算出結果に基づいて、前記表示部における前記指標の表示位置に対する前記交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、前記指標の表示位置と前記ユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対する前記輻輳角のズレとを、前記ユーザを示す認証情報として設定することとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザごとに固有の情報を認証情報として設定可能な認証装置及び認証情報設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る認証装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る認証装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、認証装置による認証情報登録動作の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、認証装置による認証情報登録動作の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、認証装置による認証情報登録動作の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、認証装置によるパスワード情報登録動作の一例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、認証装置によるパスワード情報登録動作の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、認証装置によるユーザ認証動作の一例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、認証装置によるパスワード解除動作の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、認証装置による認証情報登録動作の他の例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、認証装置による認証情報登録動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、認証装置によるパスワード情報登録動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、認証装置によるユーザ認証動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、認証装置によるパスワード解除動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、認証装置による認証動作の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る認証装置及び認証情報設定方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る認証装置100の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る認証装置100の一例を示す機能ブロック図である。
図1及び
図2に示すように、認証装置100は、表示部10と、画像取得部20と、制御部30とを備える。本実施形態に係る認証装置100としては、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの携帯端末、クレジットカードなどのカード認証端末、現金自動預け払い機などの認証端末等が挙げられる。
図1では、携帯端末の一例として、タブレットを示しているが、これに限定されない。
【0013】
表示部10は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display:OLED)のようなフラットパネルディスプレイを含む。本実施形態において、表示部10は、画像等の情報を表示する。表示部10は、XY平面と実質的に平行である。X軸方向は表示部10の左右方向であり、Y軸方向は表示部10の上下方向であり、Z軸方向は表示部10と直交する奥行方向である。表示部10は、ヘッドマウント型ディスプレイ装置であってもよい。ヘッドマウント型ディスプレイの場合、ヘッドマウントモジュール内に画像取得部20のような構成が配置される。
【0014】
画像取得部20は、ユーザの左右の眼球EB(
図4等参照)の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に送信する。画像取得部20は、ユーザの左右の眼球EBを撮像することで画像データを生成する。画像取得部20は、ユーザの視線を検出する方法に応じた各種カメラを有する。
【0015】
制御部30は、認証装置100の動作を制御する。本実施形態において、認証装置100は、登録動作及び認証動作を行う。登録動作は、ユーザの認証情報を登録する認証情報登録動作と、パスワード情報を登録するパスワード情報登録動作とを含む。認証動作は、ユーザの認証を行うユーザ認証動作と、パスワードの解除を行うパスワード解除動作とを含む。制御部30は、処理部31と、記憶部32とを有する。
【0016】
処理部31は、各種の情報処理を行う。処理部31は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。処理部31は、表示制御部33と、視線検出部34と、算出部35と、認証情報設定部36と、パスワード情報設定部37と、認証照合部38と、パスワード照合部39と、瞬き検出部40とを有する。
【0017】
表示制御部33は、表示部10の表示動作を制御する。表示制御部33は、被験者に注視させるための指標を表示部10に表示する。表示制御部33は、例えば表示部10の中央部、角部等の各部に指標を表示することができる。また、表示制御部33は、後述する瞬き検出部40によりユーザの瞬きが検出された場合にユーザが目を開けるタイミングに合わせて指標の表示位置を変更することができる。
【0018】
また、表示制御部33は、表示部10にパスワード画像を表示する。表示制御部33は、パスワード解除動作において、後述する認証照合部38の照合結果において新規認証情報と記憶認証情報とが対応する場合に、表示部10に記憶認証情報に対応付けて記憶されるパスワード画像を表示部10に表示する。
【0019】
視線検出部34は、取得した画像データからユーザの左右の眼球についての視線を検出する。視線検出部34は、例えばユーザの瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する構成であってもよいし、ユーザの目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する構成であってもよい。また、視線検出部34は、この他の既存の技術を用いてもよい。本実施形態において、視線検出部34は、表示部10に表示される指標を注視するユーザの左右の眼球についての視線を検出する。また、視線検出部34は、表示部10に表示されるパスワード画像の複数の位置を注視するユーザの左右の視線を検出する。また、視線検出部34は、表示位置が変更された指標に視線を移動しようとするユーザの当該視線を検出する。
【0020】
算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、指標についてのユーザの左右の視線の交点及びユーザの左右の視線の輻輳角を算出する。また、算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像においてユーザが注視した注視位置及び注視順序と、ユーザがパスワード画像を注視した際のパスワード画像からユーザの左右の眼球までの距離と、ユーザがパスワード画像を注視した際の輻輳角とを算出する。
【0021】
認証情報設定部36は、算出部35の算出結果に基づいて、表示部10における指標の表示位置に対するユーザの左右の視線の交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、指標の表示位置とユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対するユーザの左右の視線の輻輳角のズレとを、ユーザを示す認証情報として設定する。また、認証情報設定部36は、ユーザが瞬きをした場合、ユーザが目を開けてから視線の移動を開始するまでの時間、視線の移動を開始してから指標に視線が到達するまでの時間、及び視線の移動の軌跡のうち少なくとも1つを算出し、算出結果を認証情報として設定する。
【0022】
パスワード情報設定部37は、算出部35の算出結果に基づいて、パスワード画像と、算出部35の算出結果である注視位置及び注視順序と、距離と、ユーザの左右の視線の輻輳角とをユーザについてのパスワード情報として設定する。
【0023】
認証照合部38は、表示制御部33により表示部10に新たな指標である指標が表示される場合に、当該指標について認証情報設定部36により新たに設定される認証情報である新規認証情報と、記憶部に記憶される認証情報である記憶認証情報とが対応するかを照合する。
【0024】
パスワード照合部39は、パスワード画像についてパスワード情報設定部37により新たに設定されるパスワード情報である新規パスワード情報と、記憶部に記憶されるパスワード情報である記憶パスワード情報とが対応するかを照合し、照合結果において対応する場合にパスワードを解除する。
【0025】
瞬き検出部40は、画像取得部20により取得された画像データに対して画像処理等を行うことにより、ユーザの瞬きを検出する。
【0026】
記憶部32は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部32は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。
【0027】
記憶部32は、制御部30の各部における処理を行うための各種データやプログラムを記憶する。記憶部32は、例えば表示部10に表示させる指標及びパスワード画像についてのデータを記憶する。記憶部32は、画像取得部20によって取得された画像データを記憶する。記憶部32は、認証情報設定部36で設定された認証情報を、記憶認証情報として記憶する。記憶部32は、パスワード情報設定部37で設定されたパスワード情報を、記憶パスワード情報として記憶する。
【0028】
記憶部32は、例えば、表示部10に指標を表示する処理と、表示部10に表示される指標を注視するユーザの左右の視線を検出する処理と、視線の検出結果に基づいて、指標についてのユーザの左右の視線の交点及びユーザの左右の視線の輻輳角を算出する処理と、算出結果に基づいて、表示部10における指標の表示位置に対するユーザの左右の視線の交点の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、指標の表示位置とユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角に対するユーザの左右の視線の輻輳角のズレとを、ユーザを示す認証情報として設定する処理とをコンピュータに実行させる認証情報設定プログラムを記憶する。
【0029】
制御部30では、処理部31においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば記憶部32に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御部30は、各種の情報処理を実行する情報処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、制御部30とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御部30と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0030】
次に、上記のように構成された認証装置100の動作について説明する。まず、認証装置100による登録動作(認証情報登録動作及びパスワード情報登録動作)について説明する。
図3から
図6は、認証装置100による認証情報登録動作の一例を模式的に示す図である。表示制御部33は、
図3に示すように、認証情報の登録動作において、表示部10に指標M1を表示する。表示制御部33は、例えば予め設定された表示位置T1に指標M1を表示することができる。表示制御部33は、例えば表示位置T1が指標M1の中心位置となるように指標M1を表示する。
図3では、円形の指標M1が示されているが、この構成に限定されず、多角形、楕円形等、他の形状であってもよい。表示制御部33は、ユーザに指標M1を注視させるように指示する指示情報を表示部10に表示してもよい。
【0031】
画像取得部20は、表示部10に指標M1が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得する。画像取得部20は、取得した画像データを制御部30に入力する。視線検出部34は、
図4に示すように、入力された画像データに基づいて、ユーザの左の眼球の視線GL1及び右の眼球の視線GR1を検出する。算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、ユーザの左右の視線の交点P1の位置、及びユーザの左右の視線GL1、GR1の輻輳角θ1を算出する。なお、算出部35は、交点P1の位置をXYZ座標系における座標として算出することができる。
【0032】
認証情報設定部36は、
図5に示すように、算出部35の算出結果に基づいて、交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を算出する。交点ズレ情報は、表示部10における指標M1の表示位置T1に対する交点P1の左右方向のズレ△X1、上下方向のズレ△Y1及び奥行方向のズレ△Z1を示す。輻輳角ズレ情報は、指標M1の表示位置T1とユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角αに対する輻輳角θ1のズレ△θ1を示す。輻輳角ズレ情報は、例えば基準角αと輻輳角θ1との差分又は当該差分の絶対値とすることができる。認証情報設定部36は、算出した交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を、ユーザを示す認証情報として設定する。認証情報設定部36は、設定した認証情報を記憶認証情報として記憶部32に記憶する。
【0033】
なお、上記の認証情報の登録動作は、表示位置T1を変更して指標M1を表示部10に表示し、表示位置T1ごとに行うようにしてもよい。例えば矩形状の表示部10の4つの角部に順に指標M1を表示し(
図4の破線部分参照)、1つの角部ごとに認証情報の登録動作を行うようにしてもよい。
【0034】
図6から
図7は、認証装置100によるパスワード情報登録動作の一例を模式的に示す図である。表示制御部33は、
図6に示すように、表示部10にパスワード画像M2を表示する。
図6では、パスワード画像M2として猫の画像が表示される場合を例に挙げているが、他の画像であってもよい。表示制御部33は、例えばユーザが予め選択した画像をパスワード画像M2として表示することができる。
【0035】
画像取得部20は、表示部10にパスワード画像M2が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得する。画像取得部20は、取得した画像データを制御部30に入力する。視線検出部34は、
図7に示すように、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL2、GR2を検出する。
【0036】
算出部35は、
図7に示すように、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P2及び注視順序S2と、ユーザがパスワード画像を注視した際のパスワード画像からユーザの左右の眼球までの距離D2と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のユーザの左右の視線GL2、GR2の輻輳角θ2とを算出する。
図7に示す例では、ユーザの注視位置P2が、猫の耳の部分(注視位置P2a)からしっぽの部分(注視位置P2b)を経由して左後足(注視位置P2c)に到達する場合を示している。このユーザの注視位置P2の軌跡R2において、注視順序S2は、注視位置P2a、注視位置P2b、注視位置P2cの順となる。
【0037】
パスワード情報設定部37は、算出部35の算出結果に基づいて、パスワード画像M2と、算出部35の算出結果である注視位置P2及び注視順序S2と、距離D2と、輻輳角θ2とをユーザについてのパスワード情報として設定する。パスワード情報設定部37は、設定したパスワード情報を、記憶パスワード情報として、当該ユーザについての記憶認証情報に対応付けて記憶部32に記憶する。
【0038】
次に、認証装置100を用いた認証動作(ユーザ認証動作及びパスワード解除動作)について説明する。
図8は、認証装置100によるユーザ認証動作の一例を模式的に示す図である。認証動作において、表示制御部33は、
図8に示すように、表示部10において、記憶認証情報に含まれる表示位置と同一の位置(表示位置T1)に指標M1を表示する。画像取得部20は、表示部10に指標M1が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に入力する。視線検出部34は、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL3、GR3を検出する。算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、ユーザの左右の視線GL3、GR3の交点P3の位置、及びユーザの左右の視線GL3、GR3の輻輳角θ3を算出する。認証情報設定部36は、算出部35の算出結果に基づいて、交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を算出する。交点ズレ情報は、指標M1の表示位置T1に対する交点P3の左右方向のズレ△X3、上下方向のズレ△Y3及び奥行方向のズレ△Z3を示す。輻輳角ズレ情報は、指標M1の表示位置T1とユーザの左右の眼球の位置とに基づく基準角(α:
図5参照)に対する輻輳角θ3のズレ△θ3を示す。認証情報設定部36は、算出した交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を新規認証情報として設定する。
【0039】
認証照合部38は、認証情報設定部36により新たに設定された新規認証情報と、記憶部32に記憶される記憶認証情報とが対応するかを照合する。認証照合部38は、例えば新規認証情報の交点ズレ情報(△X3、△Y3、△Z3)及び輻輳角ズレ情報(△θ3)と、記憶認証情報の交点ズレ情報(△X1、△Y1、△Z1)及び輻輳角ズレ情報(△θ1)との差分を算出し、当該差分が閾値未満である場合に、両者が対応する旨の照合結果を出力する。また、認証照合部38は、当該差分が閾値以上である場合に、両者が対応しない旨の照合結果を出力する。認証照合部38による照合処理については、上記に限定されず、他の処理により照合を行ってもよい。
【0040】
図9は、認証装置100によるパスワード解除動作の一例を模式的に示す図である。認証照合部38により新規認証情報と記憶認証情報とが対応する旨の照合結果が出力された場合、表示制御部33は、
図9に示すように、表示部10に記憶認証情報に対応付けて記憶されるパスワード画像M2をパスワード画像として表示部10に表示する。
【0041】
画像取得部20は、表示部10にパスワード画像M2が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得する。画像取得部20は、取得した画像データを制御部30に入力する。視線検出部34は、
図9に示すように、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL4、GR4を検出する。
【0042】
算出部35は、
図9に示すように、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P4及び注視順序S4と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のパスワード画像M2からユーザの左右の眼球までの距離D4と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のユーザの左右の視線GL4、GR4の輻輳角θ4とを算出する。
【0043】
パスワード情報設定部37は、算出部35の算出結果に基づいて、パスワード画像M2と、算出部35の算出結果である注視位置P4及び注視順序S4と、距離D4と、輻輳角θ4とを、ユーザについての新たなパスワード情報である新規パスワード情報として設定する。
【0044】
図9に示す例では、ユーザの注視位置P4が、猫の耳の部分(注視位置P4a)からしっぽの部分(注視位置P4b)を経由して左後足(注視位置P4c)に到達する場合を示している。このユーザの注視位置P4の軌跡R4において、注視順序S4は、注視位置P4a、注視位置P4b、注視位置P4cの順となる。
【0045】
パスワード照合部39は、パスワード画像M2について設定される新規パスワード情報と、記憶部32に記憶される記憶パスワード情報とが対応するかを照合する。パスワード照合部39は、例えば新規パスワード情報の注視位置P4、注視順序S4、距離D4、輻輳角θ4と、記憶パスワード情報の注視位置P2、注視順序S2、距離D2、輻輳角θ2との差分を算出し、当該差分が閾値未満である場合に、両者が対応すると判定し、パスワードを解除する。また、パスワード照合部39は、当該差分が閾値以上である場合に、両者が対応しないと判定し、パスワードを解除しないようにする。なお、注視位置P4と注視位置P2との差分の閾値については、例えば表示部10における座標の差として予め設定することができる。また、距離D4と距離D2との差分の閾値、輻輳角θ4と輻輳角θ2との差分の閾値については、それぞれ距離及び輻輳角の値として、予め設定することができる。また、注視順序S4と注視順序S2との差分については、例えば注視順序の不一致の数を差分として設定することができる。例えば、注視順序S4と注視順序S2とで順序が完全に一致している場合には差分を0とし、不一致が1つある場合には差分を1とし、不一致が2つある場合には差分を2とし、以下、同様に不一致がn個ある場合には差分をnとすることができる。この場合において、例えば新規パスワード情報と記憶パスワード情報とが対応すると判定するための条件を、注視順序が完全に一致することとする場合には、差分の閾値を1と設定することができる。また、例えば新規パスワード情報と記憶パスワード情報とが対応すると判定するための条件を、注視順序の不一致が1つ以下とする場合には、差分の閾値を2と設定することができる。また、例えば新規パスワード情報と記憶パスワード情報とが対応すると判定するための条件を、注視順序の不一致が2つ以下とする場合には、差分の閾値を3と設定することができる。同様に、また、例えば新規パスワード情報と記憶パスワード情報とが対応すると判定するための条件を、注視順序の不一致がm個以下とする場合には、差分の閾値をm+1と設定することができる。差分及び閾値については、上記に限定されない。
【0046】
図7及び
図9に示す例では、新規パスワード情報の注視位置P4、注視順序S4、距離D4、輻輳角θ4と、記憶パスワード情報の注視位置P2、注視順序S2、距離D2、輻輳角θ2との差分が閾値未満である。したがって、パスワード照合部39は、両者が対応すると判定し、パスワードを解除する。
【0047】
図10は、認証装置100による認証情報登録動作の他の例を模式的に示す図である。表示制御部33は、指標M1を4つの角部の1つに表示させる。この状態で瞬き検出部40がユーザの瞬きを検出した場合、表示制御部33は、指標M1の表示位置を4つの角部のうち現在の表示位置とは異なる3つの表示位置のいずれかにランダムで変更する(
図10の状態ST1)。このように、表示制御部33は、ユーザの瞬きをトリガーとして指標M1の表示位置を変更する。
【0048】
表示制御部33は、ユーザが瞬きをして目を開くタイミングに合わせて指標M1の表示位置を変更する。指標M1の表示位置が変更された場合、ユーザは、新たな指標M1に向けて視線を移動させる(
図10の状態ST2)。このようなユーザの瞬き及び視線の移動について、算出部35は、例えばユーザが目を開けてから視線の移動を開始するまでの時間、視線の移動を開始してから指標M1に視線が到達するまでの時間、及び視線の移動の軌跡R1、のうち少なくとも1つを瞬き関連情報として算出することができる。この場合、認証情報設定部36は、算出結果である瞬き関連情報を、上記した交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報に加えて、又は上記した各ズレ情報に代えて、認証情報として設定することができる。なお、認証情報設定部36は、認証情報登録動作において瞬き関連情報を認証情報として設定した場合、ユーザ認証動作においても同様の手順で瞬き関連情報を設定する。
【0049】
図11は、認証装置100による認証情報登録動作の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、表示制御部33は、表示部10に指標M1を表示する(ステップS101)。画像取得部20は、表示部10に指標M1が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に入力する(ステップS102)。視線検出部34は、入力された画像データに基づいて、ユーザの左の眼球の視線GL1及び右の眼球の視線GR1を検出する(ステップS103)。算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、ユーザの左右の視線の交点P1の位置、及びユーザの左右の視線GL1、GR1の輻輳角θ1を算出する(ステップS104)。
【0050】
認証情報設定部36は、算出部35の算出結果に基づいて、ズレ情報すなわち交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を算出する(ステップS105)。認証情報設定部36は、算出した交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を、ユーザを示す認証情報として設定する(ステップS106)。認証情報設定部36は、設定した認証情報を記憶認証情報として記憶部32に記憶する(ステップS107)。
【0051】
図12は、認証装置100によるパスワード情報登録動作の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、表示制御部33は、表示部10にパスワード画像M2を表示する(ステップS201)。画像取得部20は、表示部10にパスワード画像M2が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に入力する(ステップS202)。視線検出部34は、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL2、GR2を検出する(ステップS203)。
【0052】
算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P2及び注視順序S2と、ユーザがパスワード画像を注視した際のパスワード画像からユーザの左右の眼球までの距離D2と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際の輻輳角θ2と、の各値を算出する(ステップS204)。
【0053】
パスワード情報設定部37は、算出部35の算出結果に基づいて、パスワード画像M2と、算出部35の算出結果である注視位置P2及び注視順序S2と、距離D2と、輻輳角θ2とをユーザについてのパスワード情報として設定する(ステップS205)。パスワード情報設定部37は、設定したパスワード情報を、記憶パスワード情報として、当該ユーザについての記憶認証情報に対応付けて記憶部32に記憶する(ステップS206)。
【0054】
図13は、認証装置100によるユーザ認証動作の一例を示すフローチャートである。
図13に示すように、表示制御部33は、表示部10において、記憶認証情報に含まれる表示位置T1に指標M1を表示する(ステップS301)。画像取得部20は、表示部10に指標M1が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に入力する(ステップS302)。視線検出部34は、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL3、GR3を検出する(ステップS303)。算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、ユーザの左右の視線GL3、GR3の交点P3の位置、及びユーザの左右の視線GL3、GR3の輻輳角θ3を算出する(ステップS304)。認証情報設定部36は、算出部35の算出結果に基づいて、ズレ情報(交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報)を算出する(ステップS305)。認証情報設定部36は、算出した交点ズレ情報及び輻輳角ズレ情報を新規認証情報として設定する(ステップS306)。
【0055】
認証照合部38は、認証情報設定部36により新たに設定された新規認証情報と、記憶部32に記憶される記憶認証情報とが対応するかを照合する(ステップS307)。認証照合部38により両者が対応しない旨の照合結果が出力された場合(ステップS307のNo)。処理を終了する。なお、ステップS307のNoの場合、認証照合部38により両者が対応しない旨の照合結果が所定回数出力されたか否かを判定し、所定回数に到達するまでステップS301に戻って処理を繰り返し行い、所定回数に到達した場合に処理を終了してもよい。また、認証照合部38により新規認証情報と記憶認証情報とが対応する旨の照合結果が出力された場合(ステップS307のYes)、以下で説明するパスワード解除動作に移る。
【0056】
図14は、認証装置100によるパスワード解除動作の一例を示すフローチャートである。
図14に示すように、パスワード解除動作において、表示制御部33は、表示部10に記憶認証情報に対応付けて記憶されるパスワード画像M2をパスワード画像M2として表示部10に表示する(ステップS401)。画像取得部20は、表示部10にパスワード画像M2が表示された状態で、ユーザの左右の眼球の画像データを取得し、取得した画像データを制御部30に入力する(ステップS402)。視線検出部34は、入力された画像データに基づいて、ユーザの左右の眼球の視線GL4、GR4を検出する(ステップS403)。
【0057】
算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P4及び注視順序S4と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のパスワード画像M2からユーザの左右の眼球までの距離D4と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際の輻輳角θ4とを算出する(ステップS404)。
【0058】
パスワード情報設定部37は、算出部35の算出結果に基づいて、パスワード画像M2と、算出部35の算出結果である注視位置P4及び注視順序S4と、距離D4と、輻輳角θ4とを、ユーザについての新たなパスワード情報である新規パスワード情報として設定する(ステップS405)。
【0059】
パスワード照合部39は、パスワード画像M2について設定される新規パスワード情報と、記憶部32に記憶される記憶パスワード情報とが対応するかを照合する(ステップS406)。パスワード照合部39により両者が対応しない旨の照合結果が出力された場合(ステップS406のNo)、処理を終了する。なお、ステップS406のNoの場合、パスワード照合部39により両者が対応しない旨の照合結果が所定回数出力されたか否かを判定し、所定回数に到達するまでステップS401に戻って処理を繰り返し行い、所定回数に到達した場合に処理を終了してもよい。また、パスワード照合部39により新規パスワード情報と記憶パスワード情報とが対応する旨の照合結果が出力された場合(ステップS406のYes)、パスワード照合部39は、パスワードを解除する(ステップS407)。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る認証装置100は、表示部10と、表示部10に指標M1を表示する表示制御部33と、表示部10に表示される指標M1を注視するユーザの左右の視線を検出する視線検出部34と、視線検出部34の検出結果に基づいて、指標M1についてのユーザの左右の視線の交点P1及びユーザの左右の視線の輻輳角θ1を算出する算出部35と、算出部35の算出結果に基づいて、表示部10における指標M1の表示位置T1に対する交点P1の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、指標M1の表示位置T1とユーザの左右の眼球EL、ERの位置とに基づく基準角に対する輻輳角θ1のズレとを、ユーザを示す認証情報として設定する認証情報設定部36とを備える。
【0061】
本実施形態に係る認証情報設定方法は、表示部10に指標M1を表示することと、表示部10に表示される指標M1を注視するユーザの左右の視線を検出することと、視線検出部34の検出結果に基づいて、指標M1についてのユーザの左右の視線の交点P1及びユーザの左右の視線の輻輳角θ1を算出することと、算出部35の算出結果に基づいて、表示部10における指標M1の表示位置T1に対する交点P1の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレと、指標M1の表示位置T1とユーザの左右の眼球EL、ERの位置とに基づく基準角に対する輻輳角θ1のズレとを、ユーザを示す認証情報として設定することとを含む。
【0062】
これらの構成において、表示部10における指標M1の表示位置T1に対する交点P1の左右方向、上下方向及び奥行方向のズレ、及び、指標M1の表示位置T1とユーザの左右の眼球EL、ERの位置とに基づく基準角に対する輻輳角θ1のズレは、視線を検出する際のユーザ固有の特性である。したがって、交点P1のズレ及び輻輳角θ1のズレを認証情報として設定することにより、ユーザごとに固有の情報を認証情報として設定することができる。
【0063】
本実施形態に係る認証装置100において、表示制御部33は、表示部10にパスワード画像M2を表示し、視線検出部34は、表示部10に表示されるパスワード画像M2の複数の位置を注視するユーザの左右の視線を検出し、算出部35は、視線検出部34の検出結果に基づいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P2及び注視順序S2、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のパスワード画像M2からユーザの左右の眼球EL、ERまでの距離D2、並びにユーザがパスワード画像M2を注視した際の輻輳角θ2の少なくとも1つを算出し、算出部35の算出結果をユーザについてのパスワード情報として設定するパスワード情報設定部37を更に備える。
【0064】
この構成おいて、パスワード画像M2においてユーザが注視した注視位置P2及び注視順序S2と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際のパスワード画像M2からユーザの左右の眼球EL、ERまでの距離D2と、ユーザがパスワード画像M2を注視した際の輻輳角θ2とは、それぞれ視線を検出する際のユーザ固有の特性である。したがって、パスワード画像M2と、算出部35の算出結果である注視位置P2及び注視順序S2、距離D2、並びに輻輳角θ2の少なくとも1つとをパスワード情報として設定することにより、ユーザごとに固有の情報をパスワード情報として設定することができる。
【0065】
本実施形態に係る認証装置100において、ユーザの認証情報の登録動作において認証情報設定部36により設定された認証情報を記憶認証情報として記憶し、登録動作においてパスワード情報設定部37により設定されたパスワード情報を記憶パスワード情報として記憶し、記憶認証情報と記憶パスワード情報とを対応付けて記憶する記憶部32と、ユーザを認証する認証動作において、認証情報を照合する認証照合部38と、認証動作において、パスワード情報を照合するパスワード照合部39とを更に備え、表示制御部33は、認証動作において、記憶認証情報に含まれる表示位置と同一の位置に指標M1を表示し、認証照合部38は、認証動作において表示部10に指標M3が表示される場合に、指標M3について認証情報設定部36により設定される認証情報である新規認証情報と、記憶認証情報とが対応するかを照合し、表示制御部33は、認証照合部38の照合結果において新規認証情報と記憶認証情報とが対応する場合に、記憶認証情報に対応付けて記憶される記憶パスワード情報に含まれるパスワード画像M2を表示部10に表示し、パスワード照合部39は、認証動作において表示部10に表示されたパスワード画像M2についてパスワード情報設定部37により新たに設定されるパスワード情報である新規パスワード情報と、記憶パスワード情報とが対応するかを照合し、照合結果において対応する場合にパスワードを解除する。
【0066】
この構成によれば、登録動作において設定され記憶された記憶認証情報及び記憶パスワード情報と、認証動作において設定される新規認証情報及び新規パスワード情報とが対応するか否かに基づいて、ユーザの認証及びパスワードの解除を行うため、高い秘匿性を維持しつつ、効率的にユーザの認証及びパスワードの解除を行うことができる。
【0067】
本実施形態に係る認証装置100において、ユーザの瞬きを検出する瞬き検出部40を更に備え、表示制御部33は、瞬き検出部40によりユーザの瞬きが検出された場合にユーザが目を開けるタイミングに合わせて指標M1の表示位置を変更し、視線検出部34は、表示位置が変更された指標M1に視線を移動しようとするユーザの当該視線を検出し、認証情報設定部36は、視線検出部34の検出結果に基づいて、ユーザが目を開けてから視線の移動を開始するまでの時間、視線の移動を開始してから指標M1に視線が到達するまでの時間、及び視線の移動の軌跡R1のうち少なくとも1つを認証情報として設定する。
【0068】
この構成において、瞬きをしたユーザが目を開けてから視線の移動を開始するまでの時間、視線の移動を開始してから指標M1に視線が到達するまでの時間、及び視線の移動の軌跡R1は、視線を検出する際のユーザ固有の特性である。したがって、これらの少なくとも1つを設定することにより、ユーザごとに固有の情報を認証情報として設定することができる。
【0069】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、認証装置100によるパスワード情報登録動作及びパスワード解除動作において、表示制御部33は、ユーザが予め選択した画像をパスワード画像M2として表示する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。表示制御部33は、例えば記憶部32に記憶される画像の中からユーザごとに選択してパスワード画像M2として表示してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、認証装置100によるパスワード情報登録動作及びパスワード解除動作において、パスワード情報設定部37は、ユーザが注視した注視位置P2及び注視順序S2に基づいてパスワード情報を設定する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。例えば、パスワード情報設定部37が注視位置P2及び注視順序S2を指定し、指定内容に沿ってユーザが注視するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、パスワード情報登録動作及びパスワード解除動作において、パスワード情報を設定する際に、パスワード情報設定部37が、注視位置P2及び注視順序S2、距離D2及び輻輳角θ2を用いてパスワード情報を設定する場合を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。パスワード情報設定部37は、注視位置P2及び注視順序S2、距離D2、並びに輻輳角θ2のうち少なくとも1つを用いた構成であれば、他の組み合わせであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、算出部35が、画像取得部20が取得した画像データに基づいて、ユーザの眼球EL、ERと表示部10との距離D2、D4を算出する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。例えば、ユーザの眼球EL、ERと表示部10との距離を測定する距離測定部を別途設けてもよい。この場合、パスワード情報設定部37は、距離測定部の測定結果を用いてパスワード情報を設定することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、表示部10がXY平面に画像を表示させる場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。例えば、表示部10として、3Dモニター等を用いてもよい。この場合、表示制御部33は、表示部10に表示する画像(指標、パスワード画像)の奥行を変化することにより、ユーザの左右の視線の交点、輻輳角を変更してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、パスワード情報登録動作及びパスワード解除動作において、ユーザの左右の視線を検出する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。パスワード情報登録動作及びパスワード解除動作においては、ユーザの左右の一方の視線を検出し、検出結果に基づいてパスワード情報を設定してもよい。また、1つのパスワード画像に対して、左右両目の視線、左目の視線、右目の視線を組み合わせて検出し、検出結果に基づいてパスワード情報を設定してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、登録動作では指標を表示部10に表示し、認証動作ではパスワード画像を表示部10に表示する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。例えば、登録動作と認証動作とで共通の指標又は画像を表示部10に表示してもよい。
図15は、認証装置100による認証動作の他の例を模式的に示す図である。
図15に示すように、表示制御部33は、認証情報登録動作(ST3)と、パスワード情報登録動作(ST4)とで同一の配列となるように複数の指標M5が表示部10に表示することができる。この場合、表示部10に表示された複数の指標M5のうち一部を用いて認証情報登録動作及びパスワード登録動作を行うことができる。なお、
図15では複数の指標M5が表示される場合を例に挙げているが、これに限定されず、例えば同一の画像等が表示されてもよい。また、
図15では、登録動作を行う場合を例として示しているが、認証動作(ユーザ認証動作及びパスワード解除動作)を行う場合であっても同様の説明が可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、指標及びパスワード画像を表示部10に表示する場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。例えば、指標又は画像を印刷した印刷物等を用いてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ズレ情報(交点ズレ情報、輻輳角ズレ情報)を算出する際、表示部10のどの位置を注視しているかを検出し、理想的な視線からのズレを求める場合を例に挙げているが、この場合に限定されない。例えば、ユーザの眼球EL、ERと画像取得部20のカメラとの距離を計測する距離測定部を更に設けて、ユーザが注視している注視点の位置を世界座標上の位置として三次元座標で算出してもよい。この場合、距離測定部の測定結果の三次元座標と、理想的な視線位置である三次元座標(表示部10の表示位置を表す三次元座標)とのズレを算出し、算出結果をズレ情報としてもよい。この場合において、世界座標の原点は、例えば画像取得部20のカメラの主点としてもよいし、ユーザの眼球EL、ERの中心点としてもよいし、他の任意の点としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
α…基準角、θ1,θ2,θ3,θ4…輻輳角、D2,D4…距離、M1,M5…指標、M2…パスワード画像、EB,EL,ER…眼球、P1,P3…交点、P2,P2a,P2b,P2c,P4,P4a,P4b,P4c…注視位置、R1,R2,R4…軌跡、T1…表示位置、S2,S4…注視順序、GL1,GL2,GL3,GL4,GR1,GR2,GR3,GR4…視線、10…表示部、20…画像取得部、30…制御部、31…処理部、32…記憶部、33…表示制御部、34…視線検出部、35…算出部、36…認証情報設定部、37…パスワード情報設定部、38…認証照合部、39…パスワード照合部、40…瞬き検出部、100…認証装置