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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120528
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】空気調和機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20240829BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20240829BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20240829BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F1/0007 401E
G01J5/48 A
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027373
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増子 宏大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 雅司
(72)【発明者】
【氏名】布目 好教
(72)【発明者】
【氏名】沖野 誠心
(72)【発明者】
【氏名】宇野 順道
(72)【発明者】
【氏名】大野 臣悟
【テーマコード(参考)】
2G066
3L051
3L260
【Fターム(参考)】
2G066AC09
2G066AC13
2G066AC20
2G066BA08
2G066CA02
2G066CA04
3L051BJ10
3L260BA02
3L260BA38
3L260CA02
3L260CA22
3L260EA27
3L260FA01
3L260FB01
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床温度又は壁温度の温調要素を考慮した空調制御を実現することのできる空気調和機及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】空気調和機は、室内機の筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に設置された温度センサ31と、温度センサ31によって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、取得した空調環境補正値を用いて空調制御を行うコントローラ20とを具備する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機の筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に設置された温度センサと、
前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、取得した前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う制御部と
を具備する空気調和機。
【請求項2】
前記温度センサは、制御基板が配置されるコントロールボックスに配置されている請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
赤外線センサを備え、
前記温度センサは、前記赤外線センサの温度を検出する温度センサである請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記温度センサは、前記赤外線センサが内蔵する自己温度検出のための温度センサである請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
赤外線センサを備え、
前記温度センサは、前記赤外線センサが設置された環境温度を検出する温度センサである請求項1に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記空調環境補正値を用いて設定温度を補正し、補正後の設定温度を用いて空調制御を行う請求項1に記載の空気調和機。
【請求項7】
筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に温度センサを設け、
コンピュータが、前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、取得した前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う空気調和機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、一般に室温がリモコンなどで設定された設定温度となるように運転制御される。このような空調運転において、室内をより快適な空調環境とするために、様々な温調要素を加味した空調制御が行われている。例えば、特許文献1には、室温湿度、外気温度、床壁温度に基づいて設定温度を補正し、補正した設定温度と室温との差に基づいて圧縮機、室内ファン、あるいは膨張弁を制御する空気調和機が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、室温と他の環境情報(床温度、壁温度など)に基づいて使用者の温度感覚を推論し、この感覚がある範囲に入るように空調制御を行う冷暖房装置が開示されている。
【0004】
また、近年、赤外線センサを搭載し、赤外線センサによって人、床壁等の温度を検出し、検出した温度に基づいて空調制御を行う空気調和機が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-152165号公報
【特許文献2】特開平6-82075号公報
【特許文献3】特開2001-304655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
赤外線センサを用いて床壁温度を取得しようとした場合、外的要因によって正確な温度が取得できない場合がある。例えば、赤外線センサの正面には、一般的に、センサを保護するためのカバーを配置する。しかしながら、カバーの汚損や吹出風によるカバーの温度変化等の外的要因によって、正確な床壁温度を取得できない場合がある。また、床材が想定と異なる場合には、赤外線の放射率が設定放射率と異なることとなり、正確な温度が取得できない場合がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度を考慮した空調制御を実現することのできる空気調和機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の参考例としての一態様は、室内機の筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に設置された温度センサと、前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、取得した前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う制御部とを具備する空気調和機である。
【0009】
本開示の参考例としての一態様は、筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に温度センサを設け、コンピュータが、前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、取得した前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う空気調和機の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の空気調和機及びその制御方法によれば、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度の温調要素を考慮した空調制御を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和機が備える室内機を示した概略正面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る室内機のサーモパイル赤外線センサ周りの概略縦断面図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】本開示の一実施形態に係るコントローラが備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
図5】冷房運転時において、サーミスタによって取得されたセンサ温度と、空調空間の床壁温度とを比較して示した図である。
図6】本開示の一実施形態に係るセンサ温度の変化量と空調環境補正値との関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る空気調和機及びその制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、壁掛型の空気調和機を例示して説明するが、これに限られない。例えば、床置き型、天吊り型、天埋め型、ウォールスルー型等、他のあらゆる型式の空気調和機にも同様に適用することができる。
【0013】
本実施形態にかかる空気調和機は、室内機1と室外機(図示略)を備えている。図1は、本実施形態に係る空気調和機が備える室内機1の概略正面図、図2は室内機1のサーモパイル赤外線センサ(以下「サーモパイル」という。)10周りの概略縦断面図、図3図2のA部拡大図である。
【0014】
図1に示すように、室内機1は、室内空間に露出した外表面を有する筐体2を備えている。筐体2は前面パネル3を備えている。筐体2の下方には左右に延在する吹出口4が設けられている。吹出口4には、風向を左右方向に変更する左右に分割されて駆動される各複数枚のルーバ(図示略)と、風向を上下方向に変更するとともに、吹出口4を閉鎖可能な左右に分割されて駆動される上下各2枚のフラップ(図示略)が設けられている。
【0015】
筐体2の内部には、コントロールボックス12が設置されている。コントロールボックス12には、コントローラ(制御部)20(図4参照)を構成する制御基板14及びその他の電気部品(例えば、電源開閉器等)が収容され、外部から電源が供給される。
【0016】
吹出口4の上方でかつ幅方向における中央には、凹部5が形成されている。凹部5は、筐体2の外表面から退避するように形成されている。より具体的には、凹部5は、凹部5の左右に位置する前面6よりも室内機1の内部側に凹んだ形状とされている。
凹部5の底部には、透明なセンサカバー8が設けられている。図2及び図3に示すように、センサカバー8は、開口9を覆うように取り付けられている。センサカバー8は、赤外線のみを透過する構成とされている。
【0017】
コントロールボックス12内であって、センサカバー8の内側には、サーモパイル10が設置されている。図2及び図3に示すように、サーモパイル10は、筐体2の正面から見て回転軸O1回りに左右に回転するようになっている。サーモパイル10は、例えば、回転軸O1を中心に回転可能とされ、上下には移動しない構成とされている。
図1図3に示すように、サーモパイル10は、筐体外部の空気に触れない位置に設置されている。
【0018】
サーモパイル10は、例えば、二次元に配置された赤外線センサによって空調空間の赤外線画像を取得し、センサに内蔵されるマイコンによって空調空間の温度分布を出力するものである。サーモパイル10は、自己温度検出のための温度センサ31(図4参照)を内蔵している。温度センサ31の一例としてサーミスタが挙げられる。
また、図1に示すように、筐体2の左側面には、空気吸込口16が設けられている。空気吸込口16の周辺には、空気吸込温度を検出するための室内温度センサ34(図4参照)が設けられている。室内温度センサ34によって検出された空気吸込温度は、コントローラ20において室内温度として用いられる。
【0019】
次に、本実施形態に係る空気調和機の制御方法について説明する。空気調和機は、コントローラ20によって制御される。図4は、本実施形態に係るコントローラ20が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
【0020】
コントローラ20は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、コントローラ20は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えている。
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
【0021】
後述する各部の機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0022】
図4に示すように、コントローラ20は、例えば、データ取得部21、補正値取得部22、設定値補正部23、指令演算部24、及び送信部25を備えている。
データ取得部21は、センサ類30から空気調和機の制御に必要となる各種データを取得する。例えば、センサ類30は、サーモパイル10、温度センサ31、湿度センサ32、外気温センサ33、及び室内温度センサ34を備えている。
【0023】
データ取得部21は、サーモパイル10によって検出された空調空間の温度状況に関する温度分布データ、温度センサ31によって検出されたセンサ温度データ、湿度センサ32によって検出された湿度データ、外気温センサ33によって検出された外気温データ、室内温度センサ34によって検出された室内温度データ(吸込み温度)を取得する。なお、湿度センサ32、外気温センサ33の設置場所については適宜決定することが可能である。これらの検出データは、例えば、所定の時間間隔で繰り返し検出され、データ取得部21に送信される。例えば、データ取得部21は、数分から十数分の間隔で温度センサ31からセンサ温度データを取得する。
センサ温度データは、無線によってデータ取得部21に送信されてもよいし、有線による通信によって送信されてもよい。
【0024】
データ取得部21によって取得された各種データは、補正値取得部22に出力される。補正値取得部22は、各種センサの検出値から補正値を決定するための情報(例えば、演算式、マップ情報、テーブル情報)を有しており、これらの情報と各種検出値とから補正値を取得する。
【0025】
例えば、補正値取得部22は、図5に示すように、温度センサ31によって所定の測定間隔で取得されたセンサ温度Tselfに基づいて変化量dTselfを算出する。図5は、冷房運転時において、温度センサ31によって取得されたセンサ温度と、空調空間における床壁温度とを比較して示した図である。床壁温度は、例えば、熱電対などの温度センサによって取得された温度である。図5から、温度センサ31によって取得された温度の挙動と、床壁温度の挙動とは強い相関関係を有していることがわかる。図5に示される特性から、冷房運転による冷風の対流により壁床が冷やされて温度が低下する速度と、同じく冷房運転によって冷やされた空気により筐体2に設けられたセンサカバー8が冷やされることにより、筐体内部の空気も冷やされ、サーモパイル10自身の温度が低下する速度とが、ほぼ同じであると推測される。
【0026】
したがって、床壁温度の温度変化を用いることに代えて、床壁温度に強い相関関係を有するセンサ温度の温度変化を使用すれば、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度を推定することができ、更に、床壁温度の温調要素を考慮した空調制御を実現することが可能となる。
【0027】
補正値取得部22は、例えば、センサ温度の変化量dTselfと空調環境補正値とが関連付けられた情報(例えば、テーブル、マップ、又は演算式等)を有している。図6に、センサ温度の変化量dTselfと空調環境補正値TS3との関係の一例を示す。図6に示すように、変化量dTselfが+b以上のときに空調環境補正値は+nに設定される。また、変化量dTselfが-b以下のときに空調環境補正値は+nに設定される。また、空調環境補正値には、頻繁な補正値の切り替えを抑制するために、ヒステリシスが設けられている。本実施形態において、センサ温度の変化量dTselfと空調環境補正値とが関連付けられた情報は、冷房運転及び暖房運転で同じものを用いる。なお、これに限られず、暖房運転と冷房運転とで補正値をそれぞれ調整することとしてもよい。
【0028】
補正値取得部22は、他の温調要素、すなわち、温度分布データ、湿度データ、外気温データについても同様に予め設定された演算式等を用いて湿度補正値、外気温補正値を取得する。
【0029】
補正値取得部22によって取得された各種補正値は、設定値補正部23に出力される。
設定値補正部23は、補正値取得部22によって取得された各種補正値を用いて設定値を補正し、空調制御を行う上での目標値を決定する。例えば、設定値補正部23は、以下の(1)式を用いて目標値を設定する。
【0030】
TS=SP+TS1+TS2+TS3 (1)
【0031】
上記(1)式において、TSは補正後の設定値、換言すると、空調制御を行う上での目標値である。SPは設定値であり、リモコンなどにおいてユーザによって設定された設定温度である。TS1は、外気温度補正値、TS2は湿度補正値、TS3は空調環境補正値である。なお、本実施形態では、上記(1)式を用いて目標値TSを算出する場合を例示して説明するが、この例に限られない。例えば、他のパラメータに基づく補正値を考慮してもよいし、上記補正値のうちの空調環境補正値TS3のみを採用し、空調環境補正値TS3と設定値SPとを用いて目標値TSを算出することとしてもよい。
【0032】
設定値補正部23によって設定された目標値TSは、指令演算部24に出力される。
指令演算部24は、目標値TSと室内温度センサ34によって検出された室内温度との偏差を算出し、この偏差に基づいて所定の演算処理を行うことにより、差分をゼロに近づけるための制御指令、例えば、圧縮機回転数指令、ファン回転数指令、膨張弁開度指令を設定する。ここで、各種制御指令の算出手法については公知の手法を適宜採用すればよい。
【0033】
指令演算部24によって設定された各種制御指令は、送信部25を介して圧縮機、室内ファン、膨張弁に与えられ、この制御指令に基づいて各部が制御される。これにより、床壁温度、室内湿度、外気温度などの温調要素を加味した空調制御を実現することが可能となる。
【0034】
次に、本実施形態に係る空気調和機の制御方法について説明する。
まず、所定の測定間隔で、センサ類30から温度分布データ、センサ温度データ、湿度データ、外気温データ、室内温度データを取得し、これらの各種データに基づいて各温調要素の補正値、すなわち、外気温度補正値TS1、湿度補正値TS2、空調環境補正値TS3が取得される。
【0035】
続いて、外気温度補正値TS1、湿度補正値TS2、空調環境補正値TS3が設定値SPに加算されることにより、目標値TSが算出される。続いて、目標値TSと室内温度センサ34によって検出された室内温度との偏差を算出し、この偏差に基づいて所定の演算処理を行うことにより、差分をゼロに近づけるための制御指令、すなわち、圧縮機周波数指令、ファン回転数指令、膨張弁開度指令が設定される。そして、これらの各種制御指令が圧縮機、室内ファン、膨張弁に与えられることにより、空調制御が実施される。
【0036】
以上説明してきたように、本実施形態に係る空気調和機及び空気調和機の制御方法によれば、室内機1の筐体2の内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に設置された温度センサ31と、温度センサ31によって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値TS3を取得し、取得した空調環境補正値TS3を用いて空調制御を行うコントローラ20とを備えている。
【0037】
ここで、図5に示すように、温度センサ31によって検出される温度変化の挙動は、床壁温度の温度変化の挙動と強い相関関係を有している。したがって、床壁温度の温度変化に代えて温度センサ31の温度変化を用いて空調環境補正値TS3を設定し、この空調環境補正値を用いて空調制御を行うことで、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度を考慮した目標値を設定することができる。これにより、輻射効果を考慮した空調制御を実現でき、快適な空調環境を提供することが可能となる。
【0038】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、上記実施形態で説明した処理の流れも一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0039】
上記実施形態では、サーモパイル10が内蔵するサーミスタを温度センサ31として用いる場合を例示して説明したがこれに限られない。温度センサ31は、例えば、サーモパイル10自身の温度またはサーモパイル10が設置された空間の環境温度を検出可能なセンサであればよく、センサ種類やセンサの設置位置は特に限定されない。
【0040】
また、上記実施形態では、外気温度、室内湿度、床壁温度を温調要素として用いて設定値を補正する場合を例示して説明したが、設定値を補正するために用いる温調要素は、適宜決定することが可能である。例えば、外気温度、室内湿度、及び床壁温度を温調要素のうちのいずれか一つを用いてもよいし、また、温調要素として空調運転に応じた補正値を含めることとしてもよい。例えば、スリープ運転補正値、ドライ運転補正値などが挙げられる。
【0041】
また、本開示に係る空気調和機は、自動運転モードが設定されている場合に、空調環境補正値を用いた空調制御を行うこととしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、圧縮機周波数、ファン回転数、膨張弁開度を制御する場合について説明したが、これに限られない。例えば、サーモパイル10によって検出された温度分布に基づいて人の位置を特定し、特定した人に直接風が当たらないように風向を調整することとしてもよい。また、例えば、温度センサ31によって検出された温度変化に基づいて輻射熱の傾向を予測し、予測した輻射熱の傾向に応じて風向制御を行うこととしてもよい。
【0043】
〈付記〉
以上説明した実施形態に記載の空気調和機及びその制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0044】
本開示の第1態様に係る空気調和機は、室内機(1)の筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に設置された温度センサ(31)と、前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う制御部(20)とを備えている。
【0045】
温度センサ31によって検出される温度変化の挙動は、床壁温度の温度変化の挙動と強い相関関係を有している。したがって、床壁温度の温度変化に代えて温度センサの温度変化を用いて空調環境補正値を設定し、この空調環境補正値を用いて空調制御を行うことで、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度を考慮した目標値を設定することができる。これにより、輻射効果を考慮した空調制御を実現でき、快適な空調環境を提供することが可能となる。
【0046】
本開示の第2態様に係る空気調和機は、上記第1態様において、前記温度センサは、制御基板が配置されるコントロールボックス(12)に配置されている。
【0047】
上記態様によれば、温度センサがコントロールボックス内に設置されているので、外部空間に触れない位置に容易に温度センサを設置することが可能となる。
【0048】
本開示の第3態様に係る空気調和機は、上記第1態様又は第2態様において、赤外線センサ(10)を備え、前記温度センサは、前記赤外線センサの温度を検出する温度センサである。
【0049】
赤外線センサは、室内機の筐体内部であって筐体外部の空気に触れない位置に設けられている。また、図5に示すように、赤外線センサの温度変化は、床壁温度の温度変化と強い相関関係を有している。したがって、床壁温度の温度変化に代えて赤外線センサの温度変化を用いて空調環境補正値を取得することにより、輻射効果を考慮した空調制御を実現できる。
【0050】
本開示の第4態様に係る空気調和機は、上記第3態様において、前記温度センサは、前記赤外線センサが内蔵する自己温度検出のための温度センサである。
【0051】
上記態様によれば、温度センサとして、赤外線センサが内蔵する自己温度検出のための温度センサ(例えば、サーミスタ)を使用するので、新たに温度センサを設ける必要がなく、コストの低減及び省スペース化を図ることが可能となる。
【0052】
本開示の第5態様に係る空気調和機は、上記第1態様又は第2態様において、赤外線センサを備え、前記温度センサは、前記赤外線センサが設置された環境温度を検出する温度センサである。
【0053】
上記態様によれば、赤外線センサは、室内機の筐体内部であって筐体外部の空気に触れない位置に設けられている。また、赤外線センサは、筐体内部においてセンサカバーを外せば正面から見える位置に設置されている。すなわち、赤外線センサは、筐体内部の密閉されたエリアの奥の方に設置されているわけではない。このような位置に設置された赤外線センサの環境温度は、空調空間において冷やされる床壁温度の温度変化と同じ挙動を示すこととなる(例えば、図5参照)。したがって、床壁温度の温度変化に代えて赤外線センサが設置された環境温度の変化を用いて空調環境補正値を取得することにより、輻射効果を考慮した空調制御を実現することが可能となる。
なお、赤外線センサをコントロールボックスに設置する場合には、温度センサは、制御基板の熱の影響を受けない場所に設置することが好ましい。
【0054】
本開示の第6態様に係る空気調和機は、上記第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記空調環境補正値を用いて設定温度を補正し、補正後の設定温度を用いて空調制御を行う。
【0055】
上記態様によれば、床壁温度の温度変化に代えて温度センサの温度変化を用いて空調環境補正値を設定し、この空調環境補正値を用いて設定温度を補正し、補正した設定温度を用いて空調制御を行う。これにより、カバーの汚損、吹出し風の影響又は床材の影響を受けることなく、床壁温度を考慮した設定温度(補正後の設定値、目標値)を設定することができる。
【0056】
本開示の第7態様に係る空気調和機の制御方法は、筐体内部であって、筐体外部の空気に触れない位置に温度センサ(31)を設け、コンピュータが、前記温度センサによって検出される温度変化に基づいて空調環境に関する空調環境補正値を取得し、前記空調環境補正値を用いて空調制御を行う。
【符号の説明】
【0057】
1 :室内機
2 :筐体
3 :前面パネル
4 :吹出口
8 :センサカバー
10 :サーモパイル赤外線センサ(赤外線センサ)
12 :コントロールボックス
14 :制御基板
16 :空気吸込口
20 :コントローラ(制御部)
21 :データ取得部
22 :補正値取得部
23 :設定値補正部
24 :指令演算部
25 :送信部
30 :センサ類
31 :温度センサ
32 :湿度センサ
33 :外気温センサ
34 :室内温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6