(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120530
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/10 20060101AFI20240829BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A41B11/10 B
A41B11/00 J
A41B11/00 B
A41B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027378
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507109206
【氏名又は名称】株式会社JKトレーディング
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】城取 和明
(72)【発明者】
【氏名】金 正一
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA03
3B018AB03
3B018AB06
3B018AB07
3B018AB08
3B018AC01
3B018AC03
3B018AC05
3B018AC07
3B018AD02
3B018GA01
(57)【要約】
【課題】素足で履くフットカバーにおいて、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強する。
【解決手段】このフットカバー100は、足底部104以外の側部102を形成する1枚の第1の伸縮性編地120と、第1の伸縮性編地120とは異なる第2の伸縮性編地140であって足底部104を形成する第2の伸縮性編地140とが底縫合線108にて縫合されて立体的な形状に形成されて、第2の伸縮性編地140は、足底形状を備えた足底生地140Aと、足底生地140Aから一体的に足底部104の爪先側に延設されて(爪先側足底部104A側から延設されて)足甲側に折り返して爪先を覆うようにして爪先部102Aを補強する補強生地140Bとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる第2の伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて立体的な形状に形成され、
前記第2の伸縮性編地は、足底形状を備えた足底生地と、前記足底生地から一体的に前記足底部の爪先側に延設されて前記足甲側に折り返して爪先を覆うようにして前記爪先部を補強する補強生地とを含む、フットカバー。
【請求項2】
前記側辺部、前記踵部および前記爪先部を形成する第1の伸縮性編地と、前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて立体的な形状に形成された、請求項1に記載のフットカバー。
【請求項3】
伸縮性編地の接合は、前記補強生地と前記第1の伸縮性生地との接合を除いて、伸縮性編地どうしの生地縁を突き合わせて接着テープにより接合することにより縫い目を備えないで立体的な形状に形成された、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【請求項4】
前記補強生地と前記第1の伸縮性生地とは、前記補強生地が前記第1の伸縮性生地における爪先部に面接着される、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)フットカバーに関し、特に、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強することができるとともに、履きやすく、履き心地がよく、歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ないフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
【0003】
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう(露出しにくくなるよう)履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0004】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
【0005】
このようなフットカバーについて、綿や絹等を含む生地を用いたことによる履き心地が良いフットカバーであって、爪先部から破れることもなく、さらに、製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造できる、フットカバーが本願出願人により出願され登録されて特許第6335072号公報(特許文献1)が発行されている。
【0006】
この特許文献1に開示されたフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、伸縮性編地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、 前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記爪先部が他の部分よりも強くなるように、前記爪先部に補強部が設けられ、前記補強部を形成する補強生地は、前記爪先の足甲側から足指裏側にかけて前記爪先を上下方向に包み込み左右方向に包み込まないように設けられていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1に開示されたフットカバーは、補強生地の上側生地で爪先の上側(爪側、足甲側)を覆い、補強生地の下側生地で爪先の下側(足指裏側)を覆い、爪先の上側(爪側、足甲側)から下側(足指裏側)を爪先を包み込むように、所定の形状(縫着線を避けるような形状であることが好ましい)を備えた1枚の生地である補強生地を爪先部に設けている。そして、補強生地の上側生地の生地端部は縫着線で爪先部とともに縫い付けられ、補強生地のその他の部分は、フットカバーの生地と熱プレス装置で接合されているために、この補強生地を設けるための製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造することができる。このような点で、特許文献1に開示されたフットカバーは好評を得ている。
【0009】
ところで、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備しなければならない。本願出願人はこの点に鑑みて、フットカバーにおいて爪先を補強する補強生地の構成について、鋭意研究するに至ったのである。
【0010】
本発明は、従来技術に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったり
することがなく、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強することのできるフットカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
【0012】
すなわち、本発明に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、前記足底部以外を形成する少なくとも1枚の第1の伸縮性編地と、前記第1の伸縮性編地とは異なる第2の伸縮性編地であって前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて立体的な形状に形成され、前記第2の伸縮性編地は、足底形状を備えた足底生地と、前記足底生地から一体的に前記足底部の爪先側に延設されて前記足甲側に折り返して爪先を覆うようにして前記爪先部を補強する補強生地とを含む。
【0013】
好ましくは、前記側辺部、前記踵部および前記爪先部を形成する第1の伸縮性編地と、前記足底部を形成する第2の伸縮性編地とが接合されて立体的な形状に形成されるように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、伸縮性編地の接合は、前記補強生地と前記第1の伸縮性生地との接合を除いて、伸縮性編地どうしの生地縁を突き合わせて接着テープにより接合することにより縫い目を備えないで立体的な形状に形成されるように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記補強生地と前記第1の伸縮性生地とは、前記補強生地が前記第1の伸縮性生地における爪先部に面接着されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフットカバーによれば、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強することのできるフットカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバー100を斜め上から見た全体斜視図(靴側が見えている)である。
【
図2】
図1に示すフットカバー100を斜め横から爪先部を見た全体斜視図である。
【
図3】
図1においてフットカバー100を裏返した全体斜視図(肌側が見えている)である。
【
図4】
図1に示すフットカバー100の仮想的な着用状態を示す上面図である。
【
図5】
図1に示すフットカバー100の仮想的な着用状態を示す側面図であって(A)(靴側が見えている)通常状態、(B)(肌側が見えている)裏返し状態である。
【
図6】
図1に示すフットカバー100の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその生地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体および接合方法は単なる例示でしかない。
【0019】
なお、このフットカバーを形成する生地は、ベア天(ベア天竺:天竺編み(平編み)に、裸糸(ベア糸)のポリウレタン糸を編み込んだ編地)、トリコット(経編み機の一種であるトリコット機で編んだ経編みの生地)、パンティストッキング用の生地(ポリウレタン糸とナイロン糸とを含む編地)等が好ましく用いられる。特に、これらの中でもベア天は、(1)伸縮性にすぐれている点、(2)形状安定性がよく洗濯後の形状変化が少ない点、(3)風合いが柔らかくフィット感にすぐれている点、(4)シワや折り目がつきにくい
点、(5)多孔性の構造なので通気性がある点、(6)綿を含む場合には肌触りおよび吸湿性がよい点、でフットカバーに好ましい。
【0020】
図1~
図6に示すように、本実施の形態に係るフットカバー100は、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部104、側辺部102B、踵部102Cおよび爪先を覆う爪先部102Aで形成される。足を出し入れするための開口部を足底部104に対して上下反対側に設けている。このフットカバー100は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる場合を含む)ことを特徴とする。また、限定されるものではないが、以下に示すフットカバーは左右共用であって、左右共用であるために左右を履き間違いすることがない点で好ましい。なお、フットカバーが左右共用でない場合には、左足用と右足用とは左右対称の形状を備える。
【0021】
そして、特徴的であるのは、このフットカバー100は、足底部104以外(ここでは側部102)を形成する少なくとも1枚(ここでは1枚)の第1の伸縮性編地120と、第1の伸縮性編地120とは異なる第2の伸縮性編地140であって足底部104を形成する第2の伸縮性編地140とが接合(ここでは第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140とは底縫合線108にて縫合、なお、第1の伸縮性編地120どうしは踵部102Cで生地縁を突き合わせて踵接着テープ106で接合)されて立体的な形状に形成されている。さらに特徴的であるのは、第2の伸縮性編地140は、足底形状を備えた足底生地140Aと、足底生地140Aから一体的に足底部104の爪先側に延設されて(爪先側足底部104A側から延設されて)足甲側に折り返して爪先を覆うようにして爪先部102Aを補強する補強生地140Bとを含む点である。
【0022】
なお、第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140とは底縫合線108にて縫合されているが、これに代えて、踵部102Cと同じように、第1の伸縮性編地120の生地縁と第2の伸縮性編地140の生地縁とを突き合わせて踵接着テープ106と同じく接着テープで接合して、無縫製のフットカバーとすることも好ましい。なお、縫合以外の接合(ここでは接着)には、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含み、代表的には熱融着接着剤が片面に塗布された接着テープ(たとえば踵接着テープ106)が用いられる。
【0023】
好ましくは、このフットカバー100は、側辺部102B、踵部102Cおよび爪先部102Aを形成する第1の伸縮性編地120と、足底部104(より詳しくは爪先側足底部104A、中央足底部104Bおよび踵側足底部104C)を形成する第2の伸縮性編地140(足底生地140A+補強生地140B)とが接合されて立体的な形状に形成されている。
【0024】
ここで、伸縮性編地の接合は、補強生地140Bと第1の伸縮性編地120(における爪先部102Aの部分)との接合を除いて、伸縮性編地どうしの生地縁を突き合わせて接着テープにより接合することにより縫い目を備えないで立体的な形状に形成された(完全)無縫製のフットカバーであることも好ましい。ただし、
図1~
図6に示したフットカバー100においては、第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140とは底縫合線108にて縫合(縫製)されている。しかしながら、上述したように、第1の伸縮性編地120の生地縁と第2の伸縮性編地140の生地縁とを突き合わせて踵接着テープ106で接合して、無縫製のフットカバーとすることも好ましい。
【0025】
なお、補強生地140Bと第1の伸縮性編地120(における爪先部102Aの部分)とは、補強生地140Bが第1の伸縮性編地120における爪先部102Aに、
図5および
図6に示す面接着領域において面接着される。
【0026】
大略的には、上述した特徴を備えた本実施の形態に係るフットカバー100について、
図1~
図6を参照してさらに詳しく説明する。
【0027】
本発明の実施の形態に係るフットカバー100を斜め上から見た全体斜視図(靴側が見えている)を
図1に、このフットカバー100を斜め横から爪先部を見た全体斜視図を
図2に、
図1においてフットカバー100を裏返した全体斜視図(肌側が見えている)を
図3に、それぞれ示す。ここで、
図2(B)は、
図2(A)に示す図から第1の伸縮性編地
120のみを抽出した斜視図であって、
図2(C)は、
図2(A)に示す図から第2の伸縮性編地140のみを抽出した斜視図である。また、このフットカバー100の仮想的な着用状態を示す上面図を
図4に、このフットカバー100の仮想的な着用状態を示す側面図であって
図5(A)に(靴側が見えている)通常状態を、
図5(B)に(肌側が見えている)裏返し状態を、それぞれ示す。さらに、このフットカバー100の展開図(型紙に略同じ)を
図6に示す。また、
図1~
図3と
図4~
図5とでは底縫合線108を異なる線で描いており、より詳しくは、
図4~
図5においては底縫合線108はジグザグ形状の線で描いている。また、このフットカバー100は第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140とを重ね合わせて底縫合線108にて縫合しているが、
図1、
図3および
図6においては、その重なりを考慮して描いていない(これらの図は第1の伸縮性編地120の生地縁と第2の伸縮性編地140の生地縁とを突き合わせて接着テープで接合した無縫製のフットカバーに対応した図として描いている)。このため、底縫合線108に関する説明において、下側縫合線を下側接着線108Aと、上側縫合線を上側接着線108Bと、それぞれ記載する場合がある。
【0028】
ここで、
図1、
図2および
図3は、着用者の足Fにフットカバー100を着用している状態を想定している。また、
図4および
図5は、フットカバー100の仮想的な着用状態を想定している。仮想的な着用状態とは、たとえば
図4において左右対称、
図5において底縫合線108が水平、等々を意味するものである。本発明の実施の形態に係るフットカバー100は、トリコット等の伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。特に、
図5においては、このフットカバー100の特徴を容易に理解できるように、実際に着用している状態よりも足底部104(爪先側足底部104A、中央足底部104Bおよび踵側足底部104C)がよく見えるように描かれている。
【0029】
このフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。このフットカバー100は、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされた薄手の伸縮性生地(トリコット等の生地)で形成されている。ここで、着用時にパンプスから露出することのないとは、フットカバー100がパンプスに隠れて、見えなくなることも、見えにくくなることも含む。
【0030】
フットカバー100は、爪先部102A、足底部104(より詳しくは、爪先側足底部104A、中央足底部104Bおよび踵側足底部104C)、側辺部102Bおよび踵部102Cで形成されている。そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。この開口部の上縁の全周に亘ってフットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)に伸縮性細幅生地114が設けられている。このフットカバー100を履くときに伸縮性細幅生地114を伸張させると開口部が大きく開くために履きやすく、かつ、このフットカバー100を履いた後は伸縮性細幅生地114を収縮して開口部が小さくなるために歩行時にフットカバー100が脱げることがない。なお、この開口部の上縁の全周に亘ってフットカバー100の外側(足Fが接する側とは逆側:靴側)に伸縮性細幅生地114を設けるようにしても構わない。なお、この伸縮性細幅生地114は、開口部の上縁の全周ではなく上縁の一部に設けるようにしても構わないし、連続的ではなく断続的に設けるようにしても構わない。
【0031】
さらに、このフットカバー100の踵部102Cの上縁には、フットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)には、シリコン樹脂等の薄い透明のシートで形成された踵部滑り止め116を設けることも好ましい。従って、踵部102Cには、生地(より詳しくは第1の伸縮性編地120)の上側(内側)に伸縮性細幅生地114が設けられ、さらにその上側(内側)に後述する踵接着テープ106が設けられ、さらにその上側(内側)に踵部滑り止め116が設けられている。さらに、このフットカバー100の踵部102Cには、フットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)には、シリコン樹脂等の薄い透明の小さな円形状(円形状に限定されるものではなく
図4においては踵部102Cが斜めであるために楕円状に見える)のシートで形成された踵滑り止め部118を複数(ここ
では左右対称に5個)設けることも好ましい。これらの踵部滑り止め116および踵滑り止め部118により、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることをさらに防止することができる。なお、この踵部滑り止め116および踵滑り止め部118は、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0032】
そして、このフットカバー100の特徴は、
図6の展開図(型紙に略同じ)に示すように、爪先部102Aと側辺部102Bと踵部102Cとが(すなわちこのフットカバー100の足底部104以外の側部102が)所定の周縁形状を備えた1枚の生地である第1の伸縮性編地120により構成され、足底部104が所定の周縁形状(概略的には足裏形状に略等しい足底生地140Aおよび足底生地140Aの爪先側に延設された補強生地140B)を備えた1枚の生地である第2の伸縮性編地140により構成されている点である。すなわち、足底部104以外の側部102が第1の伸縮性編地120により構成され、足底部104が第2の伸縮性編地140により構成されている。なお、生地は2枚でなく3枚(以上)であっても構わない。
【0033】
そして、第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140とが
図6の矢示X(1)方向および矢示X(2)方向にそれぞれ接近されて、
第1の伸縮性編地120の爪先部102Aの上側接着線108Bと、第2の伸縮性編地140の爪先側足底部104Aの下側接着線108Aとが、重ね合わされて(無縫製の場合には当接されて)、
第1の伸縮性編地120の側辺部102Bの上側接着線108Bと、第2の伸縮性編地140の中央足底部104Bの下側接着線108Aとが、重ね合わされて(無縫製の場合には当接されて)、
第1の伸縮性編地120の踵部102Cの上側接着線108Bと、第2の伸縮性編地140の踵側足底部104Cの下側接着線108Aとが、重ね合わされて(無縫製の場合には当接されて)、
その重なり部分が、1本の底縫合線108で接合されている(無縫製の場合にはその当接部分が、1本の底縫合線108に代えて接着テープで接合されている)。
【0034】
すなわち、補強生地140Bと第1の伸縮性編地120(における爪先部102Aの部分)との接合を除いて、第2の伸縮性編地140の(全)周縁である下側接着線108Aと第2の伸縮性編地140の周縁の一部(ここでの一部とは踵左側接着線106Aおよび踵右側接着線106Bを除くという意味)である上側接着線108Bとを、1本の底縫合線108で接合することにより、このフットカバー100が形成されている。なお、底縫合線108は2本以上に分断されていても構わない。
【0035】
さらに、この第1の伸縮性編地120において、踵左側接着線106Aと踵右側接着線106Bとが
図4の矢示Y方向に接近されて当接されて、1本の踵接着テープ106で接合されている。
【0036】
この場合において、踵接着テープ106および底縫合線108に代えて無縫製フットカバーとするための底接着テープは、その一面(生地(第1の伸縮性編地120および第2の伸縮性編地140)側)に接着剤が塗布されており、加熱することにより踵接着テープ106および底接着テープに塗布された接着剤が溶融して生地を熱接着して接合している。また、踵接着テープ106および底接着テープは、フットカバー100の裏側(足Fが接する側:肌側)から熱接着されて生地を接合している。しかしながら、踵接着テープ106および/または底接着テープは、フットカバー100の表側(足Fが接する側とは逆側:靴側)から熱接着されて生地を接合するようにしても構わない。このようにして、爪先部102Aと側辺部102Bと足底部104と踵部102Cとを備えたフットカバー100が立体的に形成されている。
【0037】
このように、このフットカバー100においては、足底部104以外の側部102が第1の伸縮性編地120により構成され、足底部104が第2の伸縮性編地140により構成されている。さらに、底縫合線108に代えて底接着テープを採用して無縫製のフットカバーとすると、従来のフットカバーのように足底部と踵部とが別々の生地で縫製されている場合に発生する縫い目が踵に引っ掛かって歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカ
バーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題を回避することができ、かつ、縫い目が全く存在しないので履き心地が極めて良いものとなる。
【0038】
さらに、足底部104において、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成された足底部滑り止め(図示せず)を設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めも、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0039】
なお、このフットカバー100において、このフットカバー100を形成する、足底部104以外の側部102を形成する第1の伸縮性編地120および足底部104を形成する第2の伸縮性編地140と、伸縮性細幅生地114とが同じ共生地で形成されていても構わない。すなわち、踵接着テープ106および底縫合線108を形成する縫糸(または底接着テープ)を除いて、このフットカバー100は、全て同じ伸縮性生地(トリコット等)で形成されていても構わない。なお、このフットカバー100において、伸縮性細幅生地114は、生地に、熱プレス装置により加熱することにより伸縮性細幅生地114に塗布された接着剤が溶融して生地と熱接着して接合されている。
【0040】
また、フットカバー100において、このフットカバー100を形成する足底部104以外の側部102を形成する第1の伸縮性編地120と、足底部104を形成する第2の伸縮性編地140とが同じ生地でなく形成されていても構わないし、第1の伸縮性編地120と第2の伸縮性編地140と伸縮性細幅生地114とが同じ生地でなく形成されていても構わない。
【0041】
図1~
図6に示すように、第2の伸縮性編地140は、足底形状を備えた足底生地140Aと、足底生地140Aから一体的に足底部104の爪先側に延設されて(爪先側足底部104A側から延設されて)足甲側に折り返して爪先を覆うようにして爪先部102Aを補強する補強生地140Bとを含む。補強生地140Bと第1の伸縮性編地120(における爪先部102Aの部分)とは、補強生地140Bが第1の伸縮性編地120における爪先部102Aに、
図5および
図6に示す面接着領域において面接着されており、フットカバー100の表側(外側、靴側)には、第1の伸縮性編地120(における爪先部102A)の生地縁109が見えることになる。
【0042】
すなわち、
図1~
図5に示すように、このフットカバー100における爪先部には、裏側(内側、肌側)に第2の伸縮性編地140の補強生地140Bが存在して、表側(外側、靴側)に第1の伸縮性編地120の爪先部102Aが存在して、補強生地140Bと第1の伸縮性編地120の爪先部102Aとが面接着された二重構造を備える。このように補強生地140Bは、足底生地140Aから一体的に延設されて(爪先側足底部104A側から延設されて)足甲側に折り返して爪先を覆うように(
図5および
図6に示す面接着領域において)第1の伸縮性編地120における爪先部102Aと面接着されている。このため、このフットカバー100は、第1の伸縮性編地120における爪先部102Aが足底側から(肌側において)補強生地140Bで補強され、生地の強度が弱い綿や絹を含む生地で形成して履き心地を向上させる際に、少なくとも爪先部を補強したので爪先部が破けることを抑制することができる。
【0043】
さらに、第1の伸縮性編地120における爪先部102Aと第2の伸縮性編地140の補強生地140Bとは面接着されており、かつ、補強生地140Bは第2の伸縮性編地140の足底生地140Aから延設されており、これらの結果、(1)爪先部における肌側(体重が掛かっている足裏肌側)に生地縁も縫合線も(接着テープも)存在しないために(補強生地140Bの生地縁140BEは爪先部において体重が掛からない上側の足甲側に存在するために)足裏肌側における履き心地が好ましく、かつ、(2)爪先部(より限定的には感覚の敏感な爪先先端)に生地縁も縫合線も(接着テープも)が存在しないために(生地縁109が外側に存在するに過ぎず)足指先の履き心地が好ましい。これらの(1)を足裏肌側に生地縁も縫合線も(接着テープも)存在しない「足裏肌側(足指元)領域」として、(2)を肌側に生地縁も縫合線も(接着テープも)存在しない「爪先先端領域」として、それぞれ図示する。
【0044】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー100によると、足底部104以外の側部102を形成する第1の伸縮性編地120と足底部104を形成する第2の伸縮性編地140とがそれぞれ1枚の生地で構成され、かつ、それらが底縫合線108で接合されているとともに、第1の伸縮性編地120において踵接着テープ106で接合されて踵部102Cが形成されている。さらに、第2の伸縮性編地140は、足底形状を備えた足底生地140Aと、足底生地140Aから一体的に足底部104の爪先側に延設されて(爪先側足底部104A側から延設されて)足甲側に折り返して爪先を覆うようにして爪先部102Aを補強する補強生地140Bとを含む。このため、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強することのできるフットカバーを提供することができる。
【0045】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、かつ、補強生地をフットカバーを構成する伸縮性編地とは別に準備することなく爪先を補強することができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0047】
100 フットカバー
102 側部
102A 爪先部
102B 側辺部
102C 踵部
104 足底部
104A 爪先側足底部
104B 中央足底部
104C 踵側足底部
106 踵接着テープ
106A 踵左側接着線
106B 踵右側接着線
108 底縫合線
108A 下側縫合線(下側接着線)
108B 上側縫合線(上側接着線)
114 伸縮性細幅生地
116 踵部滑り止め
118 踵滑り止め部
120 第1の伸縮性編地
140 第2の伸縮性編地
140A 足底生地
140B 補強生地
F 足