(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120535
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】1液型水性再剥離粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240829BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20240829BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240829BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/02
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027386
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊田 直也
(72)【発明者】
【氏名】清水 格
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF021
4J040HB31
4J040HD23
4J040JA09
4J040JA12
4J040JB09
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】高粘着力かつ塗膜外観が良好であり、被着体に貼付後加温状態における長期経時での再剥離性と粘着力上昇抑制の両立が可能であり、さらに高温環境下で使用後の再使用時においても良好な再剥離性を示す粘着シート、および該粘着シート形成に用いられる、1液型水性再剥離粘着剤の提供。
【解決手段】微粒子(A)、微粒子(B)、酸性リン酸エステル化合物(C)および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を含み、微粒子(A)が、ガラス転移温度が-55℃以下のアクリル系共重合体微粒子であり、微粒子(B)が、ガラス転移温度が100℃以上のアクリル系共重合体微粒子またはガラス転移温度が100℃以上のビニル系共重合体微粒子であり、硬化剤および粘着付与剤を含まない1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子(A)、微粒子(B)、酸性リン酸エステル化合物(C)および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を含み、
微粒子(A)が、ガラス転移温度が-55℃以下のアクリル系共重合体微粒子であり、
微粒子(B)が、ガラス転移温度が100℃以上のアクリル系共重合体微粒子またはガラス転移温度が100℃以上のビニル系共重合体微粒子であり、
硬化剤及び粘着付与剤を含まない1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項2】
微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量部に対し、酸性リン酸エステル化合物(C)を0.05~1質量部、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を0.05~5質量部含む請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項3】
酸性リン酸エステル化合物(C)が、イソトリデシルアシッドホスフェートを含む請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項4】
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)が、分子内に共役炭素を有さない不飽和脂肪酸のモノエステル化合物を含む請求項1記載の1液水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項5】
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)が、リシノール酸アセチルメチルを含む請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項6】
微粒子(A)は、モノマー混合物100質量%中に、単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)93.5~99.5質量%、不飽和カルボン酸(a2)0.1~5質量%、および不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(a3)0.1~2質量%を含むモノマー混合物の重合体である請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項7】
微粒子(B)はモノマー混合物100質量%中に、単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマー(b1)90~99.5質量%、および不飽和カルボン酸(b2)0.1~5質量%を含むモノマー混合物の重合体である請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項8】
微粒子(A)の平均粒子径が200~500nmかつ、微粒子(B)の平均粒子径が210~500nmであり、微粒子(A)の平均粒子径と微粒子(B)の平均粒子径との差が200nm以内である請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項9】
微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量%中、微粒子(A)の含有率が84~95質量%である請求項1記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物。
【請求項10】
基材と、請求項1~9いずれか1項記載の1液型水性再剥離粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備えた粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1液型水性再剥離粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シ-トは再剥離用途で広く使用されており、なかでも再剥離性の向上および再剥離時の被着体汚染抑制を目的として、粘着シ-トに使用する水性再剥離型粘着剤組成物の検討が行われている。近年その要求性能は高くなっており、例えば直射日光などにより高温となる屋外においての長期間使用など、より厳しい環境でも常温環境下と同様に使用できることが求められている。このことから使用環境に依存せず、高温・長期間貼付経時後でも物性を維持できる水性粘着剤が必要となっている。また、環境負荷などの観点から一度剥離した粘着シートを再使用することが可能な粘着剤が求められており、特に高温貼り付け後でも再度再剥離性を有することも併せて求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では炭素数4~12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50~99.89重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体0.1~10重量%、カルボニル基含有不飽和単量体0.01~10重量%、およびその他の不飽和単量体0~49.89重量%を含む単量体混合物を、アニオン型反応性乳化剤の存在下に乳化重合させて得られる、ガラス転移温度が-50℃を越え-25℃以下のアクリル系樹脂からなるゲル分率が70重量%未満のエマルジョンヒドラジン系化合物、ならびにリン酸エステル系化合物を含有してなることを特徴とする再剥離型水性粘着剤組成物が、開示されている。
特許文献2では、炭素数2~12のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50~99重量%、アクリル酸およびメタアクリル酸を合計で1~5重量%を含むモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリル系重合体と、炭素数が8~14のアルキル基を有するリン酸エステル系化合物とを含み、前記アクリル系重合体100重量部に対して前記リン酸エステル系化合物を0.3~2重量部含む、再剥離型水性粘着剤に関する技術が、開示されている。
特許文献3ではアクリル系ポリマーとソルビタンモノ脂肪酸エステルとを含む粘着剤組成物であって、上記ソルビタンモノ脂肪酸エステルの含有量は、アクリル系ポリマーに対して0 .05質量%~3質量%である、粘着剤組成物に関する技術が開示されている。
【0004】
また、2種類以上の重合体粒子を含むような水性再剥離型粘着剤組成物も知られており、例えば特許文献4では、分子内にカルボキシル基を有する、ガラス転移温度が-40℃以下のアクリル系共重合体の微粒子100重量部、メチルメタクリレートおよび/又はスチレンを必須単量体として含む単量体に由来するガラス転移温度が+30℃以上の(共)重合体の微粒子1~15重量部、並びに、可塑剤および/又は可塑剤以外のリン含有化合物1~15重量部を含んでなる再剥離型水性粘着剤組成物が、
特許文献5では-30~-75℃の範囲にガラス転移温度を有するポリマー粒子100質量部、および有機フィラー3~40質量部を含有する再剥離性粘着剤水系分散体組成物に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-241419号公報
【特許文献2】特開2017-2156号公報
【特許文献3】特開2019-210440号公報
【特許文献4】特開2004―203997号公報
【特許文献5】特開2006-274092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記従来技術における粘着剤組成物では、被着体へ貼付後に高温状態で長期経時した際に良好な再剥離性を示すものの、常温で長期経時した場合に比べて経時前後での粘着力上昇が著しくなってしまい、使用環境によって物性に差異が生じるという問題がある。
通常、経時後の粘着力上昇を抑制しようとすると経時前の粘着力そのものを下げざるを得ず、使用可能な用途が限定されてしまう。また、微粒子分散体の保存安定性が充分でないことにより、主に高速塗工を指向した低粘度品において塗工性の悪化や経時分離が生じ、粘着物性や塗工外観などの品質保持が難しくなる。さらに、高固形分において粘度上昇が生じやすくなりハンドリングが悪くなるという問題も生じる。
また特許文献4においては、高温経時した粘着シートを一度剥がし再度貼付した際、貼付高温経時下における可塑剤の溶出が多くなり再貼付時に必要な可塑剤量を担保することが難しくなって粘着力が上昇してしまうことから、再貼付時の再剥離性の担保が難しくなる。
【0007】
そこで本発明は、高粘着力かつ塗膜外観が良好であり、被着体に貼付後加温状態における長期経時での再剥離性と粘着力上昇抑制の両立が可能であり、さらに高温環境下で使用後の再使用時においても良好な再剥離性を示す粘着シート、および該粘着シートを形成するために用いられる、保存安定性に優れる1液型水性再剥離粘着剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0009】
本発明は、微粒子(A)、微粒子(B)、酸性リン酸エステル化合物(C)および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を含み、微粒子(A)が、ガラス転移温度が-55℃以下のアクリル系共重合体微粒子であり、微粒子(B)が、ガラス転移温度が100℃以上のアクリル系共重合体微粒子またはガラス転移温度が100℃以上のビニル系共重合体微粒子であり、硬化剤及び粘着付与剤を含まない1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量部に対し、酸性リン酸エステル化合物(C)を0.05~1質量部、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を0.05~5質量部含む前記1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、酸性リン酸エステル化合物(C)が、イソトリデシルアシッドホスフェートを含む前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)が、分子内に共役炭素を有さない不飽和脂肪酸のモノエステル化合物を含む前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)が、リシノール酸アセチルメチルを含む前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、微粒子(A)は、モノマー混合物100質量%中に、単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)93.5~99.5質量%、不飽和カルボン酸(a2)0.1~5質量%、および不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(a3)0.1~2質量%を含むモノマー混合物の重合体である前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、微粒子(B)はモノマー混合物100質量%中に、単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマー(b1)90~99.5質量%、および不飽和カルボン酸(b2)0.1~5質量%を含むモノマー混合物の重合体である前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量%中、微粒子(A)の含有率が84~95質量%である前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、基材と、前記いずれかの1液型水性再剥離粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備えた粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の1液型水性再剥離粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有する粘着シートは、高粘着力かつ塗膜外観が良好であり、さらに被着体に貼付後加温状態における長期経時での再剥離性と粘着力上昇抑制の両立が可能である。また、高温環境下で使用後の再使用時においても良好な再剥離性を示し、保存安定性に優れた1液型水性再剥離粘着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」、および「(メタ)アリル」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」、および「アリルまたはメタリル」を表すものとする。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0020】
また、本明細書において、微粒子(A)を構成するモノマーをモノマー(a)、微粒子(B)を構成するモノマーをモノマー(b)とする。なお、モノマーとは、エチレン性不飽和基を有する単量体である。
また、「単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)」を「モノマー(a1)」、「不飽和カルボン酸(a2)」を「モノマー(a2)」、「不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(a3)」を「モノマー(a3)」、「単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマー(b1)」を「モノマー(b1)」、「不飽和カルボン酸(b2)」を「モノマー(b2)」、「その他モノマー(b3)」を「モノマー(b3)」、「1液型水性再剥離粘着剤組成物」を「粘着剤組成物」と称することがある。
【0021】
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
なお本発明において、ポリマー粒子である微粒子(A)または微粒子(B)のガラス転移温度(Tg)は、ポリマー粒子を含む水分散体を剥離紙に塗工し、120℃で3分乾燥したものを測定試料とする。TAインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)D2500を用い、-120℃から昇温速度10℃/分で測定し決定したものである。
なおモノマーのガラス転移温度は、単独重合体のTgである。
分散粒子の平均粒子径は、動的光散乱型装置「Nanоtra ck Wave(マイクロトラック・ベル(株)社製)」で測定した際の、累積50%粒子径の体積平均径である。
【0022】
≪水性再剥離粘着剤組成物≫
本発明の水性再剥離粘着剤組成物は、ガラス転移温度が-55℃以下であるアクリル系共重合体微粒子である微粒子(A)、ガラス転移温度が100℃以上のアクリル系共重合体微粒子またはガラス転移温度が100℃以上のビニル系共重合体微粒子である微粒子(B)、酸性リン酸エステル化合物(C)、および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を含み、硬化剤および粘着付与剤を含まない1液型水性再剥離粘着剤組成物である。
【0023】
硬化剤とは、水性再剥離性組成物に後添加することで粘着力や再剥離性などを調節するものであり、例えばチタンキレート化合物、アルミキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、酸化亜鉛等の金属架橋剤やアジリジン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、ヒドラジド系などの有機系架橋剤が挙げられる。
硬化剤を含まないことで、硬化剤の混合不良や反応不良などに起因する粘着物性のバラつきの軽減を図ることができる。
【0024】
粘着付与樹脂とは、微粒子合成時または水性再剥離性組成物に後添加することで粘着力を調節するものであり、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂、および脂肪族系石油樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂は、例えば天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジン、および不均化ロジンエステル等が挙げられる。テルペン系樹脂は、例えばα - ピネン樹脂、β - ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、および水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。芳香族系石油樹脂は、例えばスチレンオリゴマー、およびα - メチルスチレン・スチレン共重合体等が挙げられる。
粘着付与樹脂を含まないことで、特にオレフィン系被着体において粘着力が高くなりすぎず、良好な再剥離性を得ることができる。
【0025】
微粒子(A)と微粒子(B)の平均粒子径差は、成膜の均一性の観点から200nm以内であることが好ましく、100nm以内であることがより好ましい。双方の微粒子の粒径差が小さいことで、塗膜になった際の成膜状態に差が出にくく塗膜がより均一になるため粘着物性や塗膜外観がより良好となる。また微粒子(A)の平均粒子径と微粒子(B)の平均粒子径のどちらが大きくてもよいが、成膜性の観点から、微粒子(A)の平均粒子径が大きい方が好ましい。
【0026】
微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量%中、微粒子(A)の含有率が84~95質量%であることが好ましく、86~90質量%であることがより好ましい。
この範囲であれば粘着力と凝集力のバランスが取れ、経時の粘着力変化抑制や再剥離性が良好となる。また成膜性の観点から、塗膜外観も良好となる。
【0027】
<1液型水性再剥離粘着剤組成物の製造>
1液型水性再剥離粘着剤組成物の製造方法としては、
微粒子(A)を含む水分散体、微粒子(B)を含む水分散体、リン酸エステル(C)および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を混合攪拌する方法、
リン酸エステル(C)を添加して製造した微粒子(A)を含む水分散体、微粒子(B)を含む水分散体および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を混合攪拌する方法、
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を添加して製造した微粒子(A)を含む水分散体、微粒子(B)を含む水分散体およびリン酸エステル(C)を混合攪拌する方法、
リン酸エステル(C)および不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を添加して製造した微粒子(A)を含む水分散体と微粒子(B)を含む水分散体を混合攪拌する方法、
などが挙げられる。
【0028】
<微粒子(A)>
微粒子(A)は、ガラス転移温度が-55℃以下のアクリル系共重合体微粒子である。
微粒子(A)の平均粒子径は、200~500nmが好ましく、300~400nmであることがより好ましい。
この範囲であれば微粒子(A)の水性分散液を、例えば60質量%程度などの高固形分にする場合のハンドリングや、保存安定性が良好になり、また乾燥時の成膜性が良好となり、粘着物性や外観が良好となる。
【0029】
微粒子(A)を構成するモノマー(a)は、単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、不飽和カルボン酸(a2)、不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(a3)およびこれらモノマーと共重合可能なその他モノマーに分類される。
【0030】
微粒子(A)は、単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、不飽和カルボン酸(a2)、および不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(a3)を含むモノマー(a)の混合物の重合体であることが好ましく、必要に応じてその他モノマーを用いてもよい。
【0031】
[モノマー(a1)]
モノマー(a1)は、単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
モノマー(a1)としては、n-ブチルアクリレート(Tg:-54℃)、n-ヘキシルアクリレート(Tg:-57℃)、n-オクチルアクリレート(Tg:-65℃)、イソオクチルアクリレート(Tg:-54℃)、イソデシルアクリレート(Tg:-60℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)、n-ノニルアクリレート(Tg:-58℃)、イソノニルアクリレート(Tg:-58℃)、トリデシルアクリレート(Tg:-55℃)、カプロラクトンアクリレート(Tg:-53℃)等が挙げられる。粘着力の観点で、特に2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0032】
モノマー(a1)の含有率は、モノマー(a)混合物100質量%中、93.5~99.5質量%であることが好ましく、95~99質量%がより好ましい。下限以上であれば、粘着組成物中の微粒子(A)として、十分な粘着力を発現し、また、上限量以下であれば、後述する不飽和カルボン酸(a2)および不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマー(b3)を適量共重合できるため、十分な凝集力が得られ、他成分との相乗効果により再剥離性が向上する。
【0033】
[モノマー(a2)]
モノマー(a2)は、不飽和カルボン酸である。
モノマー(a2)としては、炭素数3~5のα,β-不飽和モノ-又はジ-カルボン酸が好ましく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸などを挙げることができる。少量で凝集力を上げることができるため、アクリル酸、メタクリル酸であることがより好ましい。
【0034】
モノマー(a2)の含有率は、モノマー(a)混合物100質量%中、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。含有率が上限値以下であれば、微粒子(A)のガラス転移温度が上昇するのを抑えられるので、粘着力低下に影響を及ぼさないために好ましい。含有率が下限値以上であれば、十分な凝集力が得られ、粘着力の経時変化も抑制できるため、他成分との相乗効果により再剥離性がより向上する。
【0035】
[モノマー(a3)]
モノマー(a3)は、不飽和カルボン酸を除く架橋性モノマーであり、分子内に反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体である。
モノマー(a3)としては、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペート等の多官能ビニルおよび又は(メタ)アクリロイル化合物;
アセトアセトキシエチルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアセトアセトキシ基やアルコキシシリル基を含有する自己架橋性モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、等のエポキシ基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ) アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N- ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のイミド基含有モノマー、
等が挙げられる。
【0036】
前記モノマー(a3)の中でも特に自己架橋性モノマーであることが好ましい。自己架橋性モノマーは、微粒子(A)相互で自己架橋する。これにより粘着剤組成物の凝集力が向上し、再剥離性がさらに向上する。
【0037】
モノマー(a3)の含有率は、モノマー(a)混合物100質量%中、0.1~2質量%であることが好ましく、0.3~1質量%がより好ましい。含有率が下限以上であれば、粘着組成物中の微粒子(A)として、十分な凝集力が得られ、含有率が上限以下であれば、粘着力を低下させることなく凝集力を向上させることができるため、他成分との相互作用により再剥離性がより向上する。
【0038】
「微粒子(A)の製造」
微粒子(A)は、モノマー(a)の混合物を重合することにより得られる。重合の方法は、溶液重合や乳化重合等、通常の重合法が挙げられる。なかでも乳化重合により製造することが好ましく、乳化重合時の内温、滴下速度、反応時間等を適宜調整することにより、ガラス転移温度が-55℃以下のアクリル系共重合体微粒子とすることができる。
なかでも、微粒子の平均粒子径を制御しやすい観点から、乳化剤の存在下で、乳化重合により製造することが好ましい。
【0039】
乳化重合は、例えばモノマーをエマルションに調製してから合成する方法(プレエマルション法)が好ましい。乳化重合は、乳化重合の場にプレエマルションの全量を仕込み反応を行う方法、または乳化重合の場にプレエマルションの一部を仕込み、反応開始後にプレエマルションの残量を分割添加あるいは滴下する方法等公知の方法で反応できる。
【0040】
[乳化剤]
乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が挙げられる。乳化剤は、ラジカル重合性の官能基を有する反応性乳化剤であってもよいし、ラジカル重合性の官能基を有さない非反応性乳化剤であってもよく、両者を併用することもできる。
【0041】
反応性乳化剤の中で、反応性アニオン性乳化剤は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有するアニオン性の乳化剤である。反応性アニオン性乳化剤は、例えばスルホコハク酸エステル系乳化剤、アルキルフェノールエーテル系乳化剤等が挙げられる。
【0042】
反応性ノニオン性乳化剤は、例えばポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルが挙げられる。
【0043】
非反応性アニオン性乳化剤は、例えばポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0044】
非反応性ノニオン性乳化剤は、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類; ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル; ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシ多環フェニルエーテル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0045】
乳化剤は、モノマー(a)混合物100質量部に対して、0.5~3質量部使用することが好ましい。前記範囲で使用することで重合安定性と再剥離性がより向上する。
【0046】
乳化剤は、基材への密着性が良好になるため非反応性アニオン性乳化剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸エステル塩が好ましく、アルキル鎖が炭素数11~14のポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸エステル塩が特に好ましい。
【0047】
[重合開始剤]
乳化重合に使用する重合開始剤は、特に制限されず、水溶性重合開始剤、油溶性重合開始剤から適宜選択して使用できる。
【0048】
水溶性重合開始剤は、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリッニウム(アミン)塩等が挙げられる。
【0049】
油溶性重合開始剤は、例えばアルキルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパ-オキサイド、p-メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0050】
また、重合開始剤として酸化剤と還元剤を併用したレドックス開始剤も好ましい。
酸化剤は、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。 還元剤は、例えば亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0051】
重合開始剤は、モノマー(a)混合物100質量部に対して、0.01~0.5質量部使用することが好ましく、0.05~0.4質量部がより好ましい。0.01~0.5質量部使用することで、モノマーの共重合性が向上し、再剥離性がより向上する。
【0052】
[緩衝剤]
乳化重合の際、必要に応じてpHを調整するため、緩衝剤を使用できる。緩衝剤としては、乳化重合の反応溶液のpH緩衝作用を有するものであれば特に制限されない。緩衝剤は、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
緩衝剤は、モノマー(a)混合物100質量部に対して、5質量部未満使用することが好ましく、3質量部未満がより好ましい。
【0053】
[連鎖移動剤]
乳化重合の際、連鎖移動剤を使用して微粒子(A)であるアクリル系共重合体の分子量を適宜調整できる。連鎖移動剤は、例えばメルカプタン系化合物、チオグリコール系化合物、β-メルカプトプロピオン酸等のチオール系化合物が好ましい。
【0054】
連鎖移動剤は、モノマー(a)混合物100質量部に対して、0.03~0.1質量部使用するのが好ましい。0.03~0.1質量部使用することで密着性と再剥離性のバランスがより向上する。
【0055】
<微粒子(B)>
微粒子(B)は、ガラス転移温度が100℃以上のアクリル系またはビニル系共重合体微粒子である。微粒子(B)の平均粒子径は、210~500nmが好ましく、250~350nmであることがより好ましい。
微粒子(B)の平均粒子径がこの範囲内であれば、粘着剤層中微粒子(B)成分に由来する領域が適度に分散され、成膜性および粘着物性の観点で好ましい。
【0056】
微粒子(B)を構成するモノマー(b)は、単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマー(b1)、不飽和カルボン酸(b2)、およびこれらモノマーと共重合可能なその他モノマー(b3)に分類される。
【0057】
アクリル系またはビニル系共重合体微粒子(B)は、単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマー(b1)、不飽和カルボン酸(b2)を含むモノマー(b)混合物の重合体であることが好ましく、必要に応じてその他モノマー(b3)を用いてもよい。
【0058】
[モノマー(b1)]
モノマー(b1)は、単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるアクリル系モノマーまたは単独重合体のガラス転移温度が100℃以上であるビニル系モノマーである。
モノマー(b1)としては、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:110℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、およびジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)等のアクリル系モノマー、スチレン(Tg:100℃)等のビニル系モノマーが挙げられる。汎用性、共重合性、および再剥離性に優れる観点から、これらの中ではメチルメタクリレート又はスチレンが好ましい。塗膜外観がより良好となることからメチルメタクリレートが好ましい。
【0059】
モノマー(b1)の含有率は、モノマー(b)混合物100質量%中、90~99.5質量%であることが好ましく、93~95質量%がより好ましい。含有率が上限値以下であれば、粘着組成物の粘着力を低下させることなく凝集力が向上し、他成分との相互作用により再剥離性を発現することができるために好ましい。含有率が下限値以上であれば、粘着組成物中の微粒子(B)として、十分な凝集力が得られるために好まししい。
【0060】
[モノマー(b2)]
モノマー(b2)は、不飽和カルボン酸である。
モノマー(b2)は、炭素数3~5のα,β-不飽和モノ-又はジ-カルボン酸が好ましく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸などを挙げることができる。少量で凝集力を上げることができるため、アクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0061】
モノマー(b2)の含有率は、モノマー(b)混合物100質量%中、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。含有率が上限値以下であれば、粘着組成物中の微粒子(B)のガラス転移温度が上昇するのを抑えられ、粘着力低下に影響を及ぼさないために好ましい。含有率が下限値以上であれば、十分な凝集力が得られ、粘着力の経時変化も抑制できるため、他成分との相乗効果により再剥離性が向上するために好ましい。
【0062】
[モノマー(b3)]
モノマー(b3)は、モノマー(b1)および(b2)と共重合可能なその他モノマーである。
モノマー(b3)としては、例えばブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖又は分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステルおよび対応するメタクリル酸エステルなどを挙げることができる。中でも、微粒子(A)との相溶の点から、イソブチルアクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
【0063】
モノマー(b3)を用いる場合、含有率は、モノマー(b)混合物100質量%中、0.1~2質量%であることが好ましい。この範囲であれば、粘着組成物中の微粒子(B)のガラス転移温度を大きく低下させることなく、粘着剤組成物中の他成分との相溶性を調整することができる。
【0064】
「微粒子(B)の製造」
微粒子(B)は、モノマー(b)の混合物を重合することにより得られる。重合の方法は、微粒子(A)の製造方法に記載の通りである。
【0065】
[乳化剤、重合開始剤、緩衝剤、連鎖移動剤]
乳化剤、重合開始剤、緩衝剤、連鎖移動剤は、微粒子(A)の製造方法に記載のものと同様のものを用いることができる。好ましい配合量も同様である。
【0066】
<酸性リン酸エステル化合物(C)>
本発明の粘着剤組成物は、酸性リン酸エステル化合物(C)を含むことで、貼付経時後の再剥離性が良好となる。
【0067】
酸性リン酸エステル化合物(C)としては、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキル(12~15)エーテルリン酸等の酸性リン酸エステルを適宜選択して使用することが可能である。中でも、安定性および長期経時後の再剥離性の観点から、イソトリデシルアシッドホスフェートが好ましい。
【0068】
酸性リン酸エステル化合物(C)は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量部に対し、0.05~1質量部含むことが好ましく、より好ましくは、0.3~0.6質量部である。
酸性リン酸エステル化合物(C)が0.05質量部以上であることで、粘着剤層の接着力が高くなりすぎず被着体への「のり残り」や紙基材使用時における「紙破れ」を抑制することができ、また1質量部以下であれば被着体表面の汚染が起きないために好ましい。
【0069】
<不飽和脂肪酸エステル化合物(D)>
本発明の粘着剤組成物は、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)を含むことで、高温使用後の再貼り付け時においても良好な再剥離性を有することができる。
【0070】
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)としては、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、リシノール酸、キンセンカ酸、プニカ酸、α-エラエオステアリン酸、β-エラエオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、セルボン酸、ミリストレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリック酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセニック酸、セトレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの不飽和脂肪酸およびその誘導体とモノアルコール、ジオール、トリオール又はポリオールなどのアルコールとのエステル化物を適宜選択して使用可能である。なかでも、共役構造存在下での活性メチレン基の反応性の高さによる酸化やポリマーへの組み込みなど意図しない反応を制御しやすいことから、分子内に共役炭素を有さない不飽和脂肪酸のモノエステル化合物が好ましい。
分子内に共役炭素を有さない不飽和脂肪酸のモノエステル化合物としては、リシノール酸アセチルメチル、リシノール酸アセチルブチル、モノオレイン酸ソルビタン、リノール酸メチル、オレイン酸メチル等が挙げられる。リシノール酸アセチルメチルがより好ましい。
【0071】
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)の含有量は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量部に対し、0.05~5質量部含むことが好ましく、より好ましくは、0.2~2質量部である。
不飽和脂肪酸エステル化合物(D)が0.05質量部以上あることで、高温貼り付け時の粘着剤層中の酸性リン酸エステル化合物(C)の被着体への溶出を抑制することができるため、再貼り付け時の再剥離性を担保することができる。また、5質量部以下であることで、被着体表面の汚染が起きず、かつ必要以上の粘着力低減を抑制することができるために好ましい。
【0072】
≪粘着シート≫
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える。
粘着シートの製造方法は、例えば、剥離性シートに水性再剥離型粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、さらに基材を貼り付ける方法。また基材に水性再剥離型粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、粘着剤層に剥離性シートを貼り付ける方法等が挙げられる。
【0073】
塗工方法は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等公知の方法が挙げられる。塗工の際、通常乾燥を行う。
乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法等が使用できる。乾燥温度は通常60~180℃が好ましい。
【0074】
粘着剤層の厚さは、一般的に5~100μmであり、10~50μmが好ましい。
【0075】
基材は、紙、プラスチック、ゴム、発泡体、繊維、不織布、ガラス、金属、木材等が挙げられる。これらの中でも一般的に再剥離用途においてよく使用される点や基材への密着性の点から紙、プラスチックが好ましく、紙がより好ましい。基材は、単一素材または積層体であっても良い。又、前記基材は、裏面(粘着剤層を直接貼り合わせた面の反対面)に剥離処理、または帯電防止処理をすることができる。また前記基材は、公知のアンカー剤で塗工処理してもよい。
【0076】
基材の厚さは、一般的に10~200μmであり、20~80μmが好ましい。
【0077】
剥離性シートは、上質紙等の紙またはプラスチックフィルムに剥離剤をコーティングしてなる公知の剥離紙または剥離フィルムを用いることができ、剥離性シートの厚みは、通常10~200μmである。
【0078】
本発明の粘着シートが適用できる被着体は、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、他のプラスチック、金属(ステンレス等)、ゴム、木材、ダンボール、ガラス、塗料の塗装面等幅広く挙げられる。
【0079】
また本発明の粘着シートは、例えば製品出荷時に用いる物流ラベル、バーコード等を印字したラベル、マスキングテープ、プロテクトフィルム用途などの各種被着体に対し貼着し、各分野・各用途において所定の目的を果たした後に、被着体から剥離し得ることが要求される再剥離用途のほか、永久貼付用途にも使用することができる。
【実施例0080】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例中の「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、微粒子(A)および(B)のガラス転移温度(Tg)の測定は、次の方法により行なった。
【0081】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
微粒子(A)および(B)のガラス転移温度は、ポリマー粒子を含む水分散体を剥離紙に塗工し、120℃で3分乾燥したものを測定試料とした。TAインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)D2500を用い、-150℃から昇温速度10℃/分で測定して決定した。
【0082】
表に記載の材料の略語は以下の通りである。
<単量体>
[モノマー(a1)]
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
[モノマー(a2)、モノマー(b2)]
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
[モノマー(a3)]
AAEM:アセトアセトキシエチルメタクリレート
[モノマー(b1)]
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
[モノマー(b3)]
i-BA:イソブチルアクリレート
【0083】
<酸性リン酸エステル化合物(C)>
ITDAP:イソトリデシルアシッドホスフェート
POEP:ポリオキシエチレンアルキル(12~15)エーテルリン酸
BAP:ブチルアシッドホスフェート
EHAAP:2-エチルヘキシルアシッドホスフェート
IDAP: イソデシルアシッドホスフェート
【0084】
<不飽和脂肪酸エステル化合物(D)>
RAM:リシノール酸アセチルメチル
RAB:リシノール酸アセチルブチル
MOS:モノオレイン酸ソルビタン
TOS:トリオレイン酸ソルビタン
EGE:エレオステアリン酸グリセリンエステル
LM:リノール酸メチル
OM:オレイン酸メチル
【0085】
<その他添加剤>
TOP:トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート
TCP:トリクレジルホスフェート
TBP:トリブチルホスフェート
TPP:トリフェニルホスフェート
MLS:モノラウリン酸ソルビタン
CATB:クエン酸アセチルトリブチル
CATE:クエン酸アセチルトリエチル
PGE:パルミチン酸グリセリンエステル
DOP:ジオクチルフタレート
<乳化剤>
KH-10:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエ-テル硫酸アンモニウム(第一工業製薬社製)
RA-9612:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 (日本乳化剤社製)
<連鎖移動剤>
OTG:チオグリコール酸オクチル(淀化学社製)
【0086】
(水分散体(X1)の製造)
モノマー(a1)として、2-エチルヘキシルアクリレート98.5部、モノマー(a2)として、アクリル酸0.5部、およびメタクリル酸0.5部、モノマー(a3)として、アセトアセトキシエチルメタクリレート0.5部、連鎖移動剤として、チオグリコール酸オクチル0.06部を添加し溶解した。さらに反応性アニオン系乳化剤として「アクアロンKH-10」(ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩/第一工業製薬社製)1.0部、を加え、さらに脱イオン水28.8部を加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。別途、撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を50.5部、上記乳化物のうちの1.0部を仕込み、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を78℃まで加熱した。その後10%過硫酸アンモニウム水溶液を3.0部添加した。10分後、上記滴下ロートから上記乳化物の残分の滴下を開始した。内温を78℃に保持したまま、上記乳化物を180分かけて滴下した後に、さらに撹拌しながら内温を78℃に保持したまま1時間反応を継続した。その後、t-ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液1.0部、アスコルビン酸ナトリウムの10%水溶液1.0部を添加し、さらに1時間反応を継続した。その後冷却し、30℃で25%アンモニア水を添加して中和し、脱イオン水を添加して、微粒子(A)を含むpH5の水分散体(X1)を得た。
水分散体(X1)中の微粒子(A)含有率は56質量%、固形分は57.0%であった。
【0087】
(水分散体(X2~7、X11~18、X’1)の製造)
水分散体(X1)の配合を表1の材料および配合量(質量部)に変更した以外は、水分散体(X1)の製造と同様にして、水分散体(X2~7、X11~18、X’1)を得た。
なお、水分散体(X2~7、X11~18、X’1)中のアクリル系共重合体微粒子の平均粒径は、乳化重合時の内温、滴下速度、反応時間等を適宜調整することにより、それぞれ表に示す平均粒子径に調整した。
【0088】
(水分散体(X8~10)の製造)
水分散体(X1)の配合を表1の材料および配合量(質量部)に変更し、表1記載の酸性リン酸エステル化合物(C)および/又は脂肪酸エステル(D)を添加して乳化物を得た以外は、水分散体(X1)の製造と同様にして、水分散体(X8~10)を得た。
なお、水分散体(X8~10)中のアクリル系共重合体微粒子の平均粒径は、乳化重合時の内温、滴下速度、反応時間等を適宜調整することにより、それぞれ表に示す平均粒子径に調整した。
【0089】
【0090】
(水分散体(Y1)の製造)
モノマー(b1)として、メチルメタクリレート93.0部、モノマー(b2)として、アクリル酸1.5部、モノマー(b3)として、イソブチルアクリレート5.0部を添加し溶解した。さらにアニオン系乳化剤として「ニューコールRA―9612」(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、日本乳化剤社製)1.0部を加え、さらに脱イオン水28.8部を加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。別途、撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を37.5部、上記乳化物のうちの1.0部を仕込み、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を80℃まで加熱した。その後10%過硫酸アンモニウム水溶液を3.0部添加した。10分後、上記滴下ロートから上記乳化物の残分の滴下を開始した。内温を80℃に保持したまま、上記乳化物を180分かけて滴下した後に、さらに撹拌しながら内温を80℃に保持したまま1時間反応を継続した。その後、t-ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液1.0部、アスコルビン酸ナトリウムの10%水溶液1.0部を添加し、さらに1時間反応を継続した。その後冷却し、30℃で25%アンモニア水を添加して中和し、脱イオン水を添加して、微粒子(B)を含むpH7.5の水分散体(Y1)を得た。
水分散体(Y1)中の微粒子(B)含有率は60質量%、固形分は60.5%であった。
【0091】
(水分散体(Y2~13、Y’1)の製造)
水分散体(Y1)の配合を表2の原料および配合量(質量部)に変更した以外は、水分散体(Y1)の製造と同様にして、水性分散体(Y2~13、Y’1)を得た。
なお、水分散体(Y2~13、Y’1)中のアクリル系共重合体微粒子の平均粒子径は、乳化重合時の内温、滴下速度、反応時間等を適宜調整することにより、それぞれ表に示す平均粒子径に調整した。
【0092】
【0093】
〔粘着剤組成物の作製〕
(実施例1)
微粒子(A)の水分散体(X2)157.0質量部(微粒子(A)として89.5質量部、)と、微粒子(B)の水分散体(Y1)17.4質量部(微粒子(B)として10.5質量部)と、酸性リン酸エステル化合物(C)としてイソトリデシルアシッドホスフェート(JP-513、城北化学社製)0.45質量部、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)としてリシノール酸アセチルメチル(リックサイザーC-101、伊藤製油社製)1.5質量部と、消泡剤としてノプタム777-F(サンノプコ社製)を0.05部、防腐剤としてレバナックスBX-150(昌栄化学社製)を0.05部、レベリング剤としてぺレックスOT-P(花王社製)0.1部を加え、さらにアルカリ増粘剤およびアンモニア水によりpH調整および粘度調製を行い、1液型水性再剥離粘着剤組成物を得た。
【0094】
(実施例2~59、比較例1~15)
表3~6に示す組成および配合量(質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして、1液型水性再剥離粘着剤組成物を得た。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
《粘着剤組成物および粘着シートの評価》
本発明の粘着剤組成物および粘着シートを下記の方法で評価した。結果を表7~10に示す。
【0100】
<粘着シート1の製造>
得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが15μmになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで120秒間乾燥した後、市販の上質紙(目付量64g/m2)を貼り合わせて粘着シート1を得た。
【0101】
<粘着シート2の製造>
得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが15μmになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで120秒間乾燥した後、市販の厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを貼り合わせて粘着シート2を得た。
【0102】
(1)保存安定性
得られた粘着剤組成物を40℃オーブンで1か月静置し、1か月後の状態を目視観察し以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:分離などの外観上の明らかな問題や、増粘が見られない。良好。
△:分離などの外観上の明らかな問題や、わずかな増粘がみられる。実用上問題ない。
×:分離などの外観上の明らかな問題や、あきらかな増粘が見られる。実用不可。
【0103】
(2)粘着力
23℃、50%RH環境下にて粘着シート1を長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料の剥離性シートを剥がし、アクリロニトリルブタジエンスチレン板(以下、ABSという)に貼付け、2kgロールを1往復して圧着した。圧着後に試料を23℃雰囲気下および70℃雰囲気下で1か月放置した後、さらに23℃、50%RH雰囲気下で1日放置し、粘着力を測定した。なお粘着力の測定は剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。
【0104】
経時変化率
粘着シート1を用いて、23℃、1か月後の粘着力と70℃、1か月後の粘着力から、粘着力変化率を以下の式(1)から算出し、以下の基準で評価した。
(粘着力変化率%)=
{(70℃、1か月後の粘着力)/(23℃、1か月後の粘着力)}×100・・式(1)
[評価基準]
〇:粘着力変化率が120%以下。粘着力の差がほとんどなく優れている。
△:粘着力変化率が120%超140%以下。やや粘着力に差が見られるが実用上問題ない。
×:粘着力変化率が140%超。粘着力に明確に差が見られ、実用不可。
【0105】
(3)再剥離性(被着体汚染)
前記粘着力試験終了後の被着体に、粘着剤層由来の汚染(付着物)があるかどうかを目視により確認した。
[評価基準]
◎:汚染が無い。優れている。
〇:被着体の縁のみに汚染があった。良好。
△:被着体の縁以外にも汚染があり、その面積が被着体の総面積に対し10%未満。実用上問題ない
×:被着体の縁以外にも汚染があり、その面積が被着体の総面積に対し10%以上。実用不可。
【0106】
(4)塗膜外観(透明性)
粘着シート2の、粘着剤層表面の状態を目視で観察した。
[評価基準]
〇:塗膜に白化が見られない。良好。
△:塗膜の一部に白化が見られる。実用上、問題ない。
×:塗膜全体に白化が見られる。実用不可。
【0107】
(5)再貼付時の再剥離性
粘着シート2を23℃、50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料の剥離性シートを剥がし、アクリロニトリルブタジエンスチレン板(以下、ABSという)に貼付け、2kgロールを1往復して圧着した。圧着後に試料を23℃、40℃、70℃雰囲気下で24時間放置した後、剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で剥離し、別のアクリロニトリルブタジエンスチレン板に貼付した。2kgロールを1往復して圧着したのち、23℃雰囲気下で24時間放置した後、手剥がしにより剥離し、被着体に粘着剤層由来の付着物があるかどうかを目視により確認した。
◎:汚染が無い。優れている。
〇:被着体の縁のみに汚染があった。良好。
△:被着体の縁以外にも汚染があり、その面積が被着体の総面積に対し10%未満。実用上問題ない
×:被着体の縁以外にも汚染があり、その面積が被着体の総面積に対し10%以上。実用不可。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
表3~6中、微粒子(A)含有率[%]は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量%中の、微粒子(A)の含有率であり、酸性リン酸エステル化合物(C)含有量[部]、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)含有量[部]は、微粒子(A)と微粒子(B)の合計100質量部に対する、リン酸エステル化合物(C)、不飽和脂肪酸エステル化合物(D)の含有量である。
【0113】
表7~10の結果から本発明の1液型水性再剥離性粘着剤組成物は、保存安定性に優れており、また該1液型水性再剥離性粘着剤組成物から形成した粘着シートは、塗膜外観が良好であり、貼付加温経時後および高温使用後における再使用時においても高い粘着力かつ良好な再剥離性を示すものであった。一方比較例の1液型水性再剥離性粘着剤組成物においては、各被着体での経時での粘着力変化率、再剥離性、塗膜外観、経時安定性、再貼付時の再剥離性のいずれかが不良であり、すべての特性を満足できなかった。