(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120539
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】液圧回転機械
(51)【国際特許分類】
F04B 1/2071 20200101AFI20240829BHJP
F04B 1/22 20060101ALI20240829BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F04B1/2071
F04B1/22
F03C1/253
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027394
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】駒田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢司
(72)【発明者】
【氏名】奥中 勇太
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070CC21
3H070CC29
3H070DD02
3H070DD13
3H070DD62
3H070DD93
3H070DD94
3H084AA08
3H084AA16
3H084AA51
3H084BB07
3H084CC02
3H084CC14
3H084CC32
3H084CC70
(57)【要約】
【課題】シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供する。
【解決手段】液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能にケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、軸部材が相対回転不能に挿通されてケーシング内に収容されているシリンダブロックと、シリンダブロックの各々に挿入され、シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するようにケーシングに固定され、流入路に繋がる流入側ポートと流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、シリンダブロックに外装されてシリンダブロックとケーシングとの間に配置される軸受部材とを、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、
所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、
軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されて前記ケーシング内に収容されているシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、
前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、
前記シリンダブロックに外装されて前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に配置される軸受部材とを、を備える、液圧回転機械。
【請求項2】
前記軸受部材は、前記シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項3】
前記軸受部材は、前記ケーシング及び前記シリンダブロックの一方に対して隙間を空けて配置されている、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
前記軸受部材は、玉軸受である、請求項1に記載の液圧回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーシングに軸支される軸部材にシリンダブロックが相対回転不能に結合される液圧回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回転機械の一例として、例えば特許文献1の液圧ポンプが知られている。液圧ポンプでは、ケーシングに軸支される軸部材がシリンダブロックに相対回転不能に結合されている。他方、軸部材は、シリンダブロックと一体的に回転することによって撓む。軸部材の撓みに対してシリンダブロックが追従しないようにするために、シリンダブロックは軸部材にスプライン結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液圧ポンプでは、ピストンに作用する圧力及び遠心力等によってシリンダブロックに転倒モーメントが作用することによって軸部材が撓む。そして、軸部材が撓んだ状態で回転することによってシリンダブロックが振れ回る。ピストンに作用する圧力及び遠心力が大きくなると、シリンダブロックの振れ回りが大きくなる。そうすると、シリンダブロックが弁板から乖離する。これにより、作動液の漏れが大きくなるので、吐出効率が低下する。
【0005】
そこで本開示は、シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されて前記ケーシング内に収容されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、前記シリンダブロックに外装されて前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に配置される軸受部材とを、を備えるものである。
【0007】
本開示に従えば、軸受部材は、シリンダブロックに外装され、シリンダブロックとケーシングとの間に配置される。それ故、シリンダブロックの径方向の動きを規制することができる。これにより、シリンダブロックがケーシングに対して振れ回ることを抑制することができるので、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の液圧回転機械によれば、シリンダブロックが振れ回ってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る液圧回転機械を示す断面図である。
【
図2】
図1の領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態の液圧回転機械1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧回転機械1は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0011】
[第1実施形態]
<液圧回転機械>
図1に示す液圧回転機械1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、種々の機械に備わっている。液圧回転機械1は、例えば斜板形液圧回転機械であって、液圧ポンプ及び液圧モータの少なくとも一方として機能する。本実施形態において、液圧回転機械1は、可変容量形の斜板形液圧ポンプである。但し、液圧回転機械1は、固定容量形の斜板形液圧ポンプであってよい。液圧回転機械1は、図示しない駆動源(例えば電動機、エンジン、又はその両方であって、本実施形態では電動機)により駆動されることによって作動液(油及び水等の液体)を吐出する。液圧回転機械1は、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、軸受部材17と、を備えている。
【0012】
<ケーシング>
ケーシング10には、軸部材11、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、弁板16、及び軸受部材17が収容されている。より詳細に説明すると、ケーシング10には、収容空間21が形成されている。軸部材11、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、弁板16、及び軸受部材17は、収容空間21に収容されている。また、収容空間21は、開口21aを有している。開口21aは、ケーシング10の軸線方向一方側の端面(即ち、軸線方向一端面)に形成されている。なお、軸線方向は、所定の軸線L1が延在する方向である。
【0013】
ケーシング10には、吸入路22と、吐出路23とが形成されている。流入路の一例である吸入路22には、作動液が導かれる。他方、流出路の一例である吐出路23には、作動液が吐出される。吸入路22及び吐出路23は、例えばケーシング10において収容空間21の軸線方向他方側に形成されている。そして、吸入路22及び吐出路23は、収容空間21の軸線方向他方側の端面(即ち、軸線方向他端面)において開口している。
【0014】
<軸部材>
軸部材11は、回転軸線の一例である軸線L1まわりに回転可能にケーシング10に軸支されている。軸部材11は、例えば鋼鉄等の金属から成る。軸部材11は、軸線L1に沿って延在している。軸部材11は、ケーシング10を貫通しており、その軸線方向一方側の部分が開口21aからケーシング10外に突き出ている。軸部材11の軸線方向一方側の部分には、駆動源(図示せず)が連結されている。軸部材11は、駆動源によって軸線L1まわりに回転駆動される。
【0015】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12には、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。シリンダブロック12は、例えば鋳鉄又は鋼鉄等の金属から成る。また、シリンダブロック12は、大略円筒状に形成されている。即ち、シリンダブロック12は、その軸線L1に沿って形成される挿通孔12aを有している。挿通孔12aには、軸部材11が挿通されている。シリンダブロック12と軸部材11とは、互いにスプライン結合されている。これにより、シリンダブロック12は、軸線L1まわりに軸部材11と一体的に回転する。
【0016】
また、シリンダブロック12には、複数のシリンダボア12cが形成されている。複数のシリンダボア12cは、シリンダブロック12の軸線方向一端面に形成されている。複数のシリンダボア12cは、軸部材11の周り(即ち、軸線L1の周り)に周方向に互いに間隔をあけて配置されている。なお、シリンダブロック12には、9つのシリンダボア12cが形成されている。但し、前述するシリンダボア12cの数は一例に過ぎず、8つ以下であってもよく、また10個以上であってもよい。
【0017】
更に、シリンダブロック12には、軸線方向他端に複数のシリンダポート12dが形成されている。複数のシリンダポート12dは、シリンダボア12cに夫々繋がっている。より詳細に説明すると、各シリンダポート12dは、シリンダボア12cの各々に対応させて形成されており、対応するシリンダボア12cに繋がっている。即ち、シリンダブロック12には、シリンダボア12cと同数のシリンダポート12dが形成されている。シリンダポート12dは、シリンダブロック12の軸線方向他端面にて開口している。そして、シリンダブロック12は、軸線方向他端面を収容空間21の軸線方向他端面に対向させるようにして収容空間21に収容されている。
【0018】
<ピストン>
複数のピストン13は、シリンダブロック12のシリンダボア12cの各々に挿入されている。即ち、液圧回転機械1には、シリンダボア12cと同数のピストン(本実施形態において、9つのピストン)13が備わっている。そして、ピストン13の各々は、各シリンダボア12cにおいて往復運動する。また、ピストン13の先端部分には、摺動回転可能にシュー18が取り付けられている。
【0019】
<斜板>
斜板14は、シリンダブロック12の軸線方向一方側に間隔をあけて配置されている。斜板14は、シュープレート19を有している。なお、斜板14は、必ずしもシュープレート有している必要はない。シュープレート19は、シリンダブロック12の方に傾倒している。斜板14は、シュープレート19を介して複数のシュー18を軸線方向一方側から支持している。また、複数のシュー18は、押え板20によってシュープレート19に押えられており、シュープレート19上を軸線L1まわりに摺動回転する。それ故、シリンダブロック12が回転すると、ピストン13がシリンダボア12cを往復運動する。また、斜板14は、軸線L1に直交する軸線L2まわりに傾倒することができる。即ち、斜板14は、傾転角を変えることができる。それ故、ピストン13のストローク量を変えることができる。これにより、各シリンダボア12cから吐出される作動液の量、即ち吐出量を変えることができる。
【0020】
<レギュレータ>
レギュレータ15は、斜板14を軸線L2まわりに回動させることによって斜板14の傾転角を変える。より詳細に説明すると、レギュレータ15は、図示しないサーボピストンが連結部材15aを介して斜板14と連結されている。そして、レギュレータ15は、入力される信号(例えば、パイロット圧)に応じてサーボピストンを動かす。これにより、斜板14の傾転角が調整される。
【0021】
<弁板>
弁板16は、シリンダブロック12の軸線方向他端が摺動するようにケーシング10に固定されている。より詳細に説明すると、弁板16は、収容空間21の軸線方向他端面とシリンダブロック12との間に介在している。具体的に説明すると、弁板16は、収容空間21の軸線方向他端面に固定されている。弁板16には、シリンダブロック12の軸線方向他端面が押し付けられている。そして、シリンダブロック12は、弁板16上を摺動するように軸線L1まわりに回転する。
【0022】
また、弁板16には、吸入ポート16a及び吐出ポート16bが夫々形成されている。流入側ポートの一例である吸入ポート16aは、吸入路22に繋がっている。流出側ポートの一例である吐出ポート16bは、吐出路23に繋がっている。そして、吸入ポート16a及び吐出ポート16bの各々には、シリンダポート12dを介して各シリンダボア12cが接続されている。各シリンダボア12cは、シリンダブロック12が回転することによって吸入ポート16a及び吐出ポート16bに交互接続される。吸入ポート16aは、接続されるシリンダポート12dを介して各シリンダボア12cに吸入路22の作動液を導く。また、吐出ポート16bは、接続されるシリンダポート12dを介してシリンダボア12cから吐出路23に作動液を吐出させる。
【0023】
<軸受部材>
軸受部材17は、ケーシング10とシリンダブロック12との間に配置される。軸受部材17は、例えば玉軸受であって円環状に形成されている。軸受部材17は、収容空間21に配置されている。例えば、軸受部材17は、ケーシング10において収容空間21を形成する内周面10aに嵌め込まれている。より詳細に説明すると、内周面10aの軸線方向他端側の部分が断面円形状に形成されている。そして、軸受部材17は、内周面10aにおいて軸線方向他端側(即ち、弁板16側)に嵌め込まれている。
【0024】
また、軸受部材17は、シリンダブロック12に外装されている。本実施形態では、軸受部材17は、シリンダブロック12の軸方向他端側部分に外装されている。これにより、軸受部材17は、ケーシング10の内周面10aの軸線方向他端側の部分とシリンダブロック12の軸方向他端側部分との間に配置される。
【0025】
また、軸受部材17とシリンダブロック12との間には、本実施形態において隙間hが空いている(
図2参照)。即ち、シリンダブロック12は、軸受部材17に遊嵌されている。より詳細に説明すると、軸受部材17の内径は、シリンダブロック12の外径より大きく形成されている。これにより、軸受部材17とシリンダブロック12との間に隙間hが空いている。本実施形態において、隙間hは、10μm≦h≦500μmとなっている。このような隙間hを形成することによって、軸受部材17に対してシリンダブロック12が動くことが許容される。即ち、ケーシング10に対してシリンダブロック12が動くことが許容される。このように隙間hを空けて配置される軸受部材17は、回転時に転倒しようとするシリンダブロック12を線L1まわり回動可能に支持する。なお、隙間hは、必ずしも形成される必要はない。
【0026】
<液圧回転機械の動作>
液圧回転機械1は、以下のように動作する。即ち、駆動源(図示せず)が軸部材11を駆動することによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。そうすると、シリンダポート12dの接続先が吸入ポート16a及び吐出ポート16bの間で切り替わる。また、シリンダブロック12が回転することによって、複数のピストン13が軸線L1まわりに回転すると共にシリンダボア12cを往復運動する。これにより、吸入ポート16aを介してシリンダボア12cに作動液が吸引され、その後シリンダボア12cから吐出ポート16bに作動液が吐出される。このようにして、液圧回転機械1は、作動液を吐出する。なお、液圧回転機械1では、レギュレータ15によって斜板14の傾転角が調整される。そうすると、ピストン13のストローク量が調整される。これにより、液圧回転機械1の吐出量を調整することができる。
【0027】
また、液圧回転機械1では、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転することによって、各ピストン13が遠心力によって径方向外方に引っ張られる。また、液圧回転機械1では、各ピストン13の軸線方向位置がずれているので、シリンダブロック12に対して転倒モーメントが生じる。それ故、シリンダブロック12がケーシング10に対して振れ回ろうとする。これに関して、シリンダブロック12とケーシング10との間には、軸受部材17が配置されている。軸受部材17は、シリンダブロック12に転倒モーメントが生じた際、シリンダブロック12を支持することによってケーシング10に対するシリンダブロック12の径方向の動きが規制する。それ故、転倒モーメントによってシリンダブロック12がケーシング10に対して振れ回ることが抑制される。これにより、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができる。そうすると、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れることが抑制されるので、液圧回転機械1の吐出効率が低下することを抑制することができる。また、軸受部材17は、シリンダブロック12を支持すると共に、内輪をシリンダブロック12と一緒に回転させる。それ故、シリンダブロック12は、軸受部材17に支持された状態であっても円滑に回転することができる。
【0028】
また、軸受部材17は、本実施形態においてシリンダブロック12の軸線方向他端側、即ち弁板16側に配置されている。それ故、シリンダブロック12の弁板16側における振れ回りを特に抑制することができる。それ故、振れ回りによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを更に抑制することができる。従って、液圧回転機械1の吐出効率が低下することを更に抑制することができる。
【0029】
また、軸受部材17は、シリンダブロック12に対して隙間hを空けて配置されている。それ故、シリンダブロック12は、ケーシング10に対してシリンダブロック12がある程度自由に転倒することができる。それ故、軸部材11が回転することによって撓む際、軸部材11の撓みを許容することができる。これにより、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0030】
本実施形態の液圧回転機械1において、軸受部材17は、シリンダブロック12に外装され、シリンダブロック12とケーシング10との間に配置されている。それ故、シリンダブロック12がケーシング10に対して振れ回ろうとする際、軸受部材17がシリンダブロック12を支持することによってシリンダブロック12の径方向の動きを規制する。これにより、シリンダブロック12がケーシング10に対して振れ回ることを抑制することができるので、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができる。
【0031】
例えば、作動液の圧力が高かったり、軸部材11の回転速度が大きくなるにつれて、シリンダブロック12に作用する転倒モーメントが大きくなる。それ故、シリンダブロック12が弁板16から乖離しやすくなる。そうすると、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れて吐出効率を低下する。しかし、液圧回転機械1では、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを抑制することができるので、弁板16とシリンダブロック12との間から作動液が漏れることが抑制される。それ故、液圧回転機械1の吐出効率の低下を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態の液圧回転機械1において、シリンダブロック12に外装される部材が軸受部材17である。それ故、軸受部材17は、シリンダブロック12を支持すると共に、内輪をシリンダブロック12と一緒に回転させる。これにより、シリンダブロック12は、軸受部材17に支持された状態であっても円滑に回転することができる。
【0033】
また、本実施形態の液圧回転機械1において、軸受部材17は、シリンダブロック12の軸線方向他端側に配置されている。それ故、軸受部材17は、より弁板16に近い位置でシリンダブロック12の振れ回りを規制することができる。従って、シリンダブロック12が振れ回ることによってシリンダブロック12が弁板16から乖離することを更に抑制することができる。
【0034】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、軸受部材17は、シリンダブロック12に対して隙間hを空けて配置されている。軸部材11に対してシリンダブロック12がある程度の自由度をもって径方向に動くができる。これにより、軸部材11の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0035】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、軸受部材17は、玉軸受である。それ故、軸受部材17は、ケーシング10に対するシリンダブロック12の転倒をある程度の自由度をもって許容することができる。これにより、軸部材11の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材11が撓むことによってシリンダブロック12が弁板16に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0036】
<その他の実施形態について>
本実施形態の液圧回転機械1は、斜板形の液圧ポンプを一例として挙げて説明されているが、前述の通り斜板形の液圧モータであってもよい。また、軸受部材17は、必ずしもケーシング10に設けられている必要はなく、シリンダブロック12に設けられていてもよい。即ち、軸受部材17は、必ずしもシリンダブロック12との間に隙間hを空けて配置されている必要はなく、ケーシング10との間に隙間を空けて配置されてもよい。更に、軸受部材17は、必ずしも玉軸受である必要はなく、ころ軸受であってもよい。その他、軸受部材17は、滑り軸受、及び流体軸受等であってもよい。
【0037】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、軸線方向一端に複数のシリンダボアが形成され、前記軸部材が相対回転不能に挿通されて前記ケーシング内に収容されているシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、前記シリンダブロックに外装されて前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に配置される軸受部材とを、を備えるものである。
【0038】
上記局面に従えば、軸受部材は、シリンダブロックに外装され、シリンダブロックとケーシングとの間に配置される。それ故、シリンダブロックの径方向の動きを規制することができる。これにより、シリンダブロックがケーシングに対して振れ回ることを抑制することができるので、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【0039】
また、上記局面では、シリンダブロックに外装される部材が軸受部材である。それ故、軸受部材では、その内輪がシリンダブロックを支持しながら回転する。これにより、シリンダブロックは、軸受部材に支持された状態であっても円滑に回転することができる。
【0040】
第2の局面における液圧回転機械では、第1の局面の液圧回転機械において、前記軸受部材は、前記シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている。
【0041】
上記局面に従えば、軸受部材は、シリンダブロックの軸線方向他端側に配置されている。それ故、軸受部材は、より弁板に近い位置でシリンダブロックの振れ回りを規制することができる。従って、シリンダブロックが振れ回ることによってシリンダブロックが弁板から乖離することを更に抑制することができる。
【0042】
第3の局面における液圧回転機械では、第1又は2の局面の液圧回転機械において、前記軸受部材は、前記ケーシング及び前記シリンダブロックの一方に対して隙間を空けて配置されている。
【0043】
上記局面に従えば、軸受部材は、ケーシング及びシリンダブロックの一方に対して隙間を空けて配置されている。軸部材に対してシリンダブロックがある程度の自由度をもって径方向に動くができる。これにより、軸部材の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材が撓むことによってシリンダブロックが弁板に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【0044】
第4の局面における液圧回転機械では、第1乃至3の何れかの局面の液圧回転機械において、前記軸受部材は、玉軸受である。
【0045】
上記局面に従えば、軸受部材は、玉軸受である。それ故、軸受部材は、ケーシングに対するシリンダブロックの転倒をある程度の自由度をもって許容することができる。軸部材の撓みをある程度許容することができる。それ故、軸部材が撓むことによってシリンダブロックが弁板に強く押し当てられて摺動摩擦が増加することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 液圧回転機械
10 ケーシング
11 軸部材
12 シリンダブロック
12c シリンダボア
13 ピストン
16 弁板
16a 吸入ポート(流入側ポート)
16b 吐出ポート(流出側ポート)
17 軸受部材
22 吸入路(流入路)
23 吐出路(流出路)
h 隙間