(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120545
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ステアリングハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240829BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R16/027 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027404
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】広田 逸彦
(72)【発明者】
【氏名】船津 基也
(72)【発明者】
【氏名】長縄 明敏
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA12
3D030DA24
3D030DA35
3D030DA52
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DA70
3D030DA78
3D030DA79
3D030DB13
(57)【要約】
【課題】操作部の操作初期の移動に要する操作荷重を調節可能なステアリングハンドルを提供すること。
【解決手段】操舵時に把持する把持部12と、操作部20と、操作部を把持部に対して移動可能な移動機構45と、を備える構成のステアリングハンドル。操作部が、移動機構により、把持部側に接近させる接近操作を可能として、荷重調節機構67により、把持部に対する接近移動時に係る操作荷重を調節可能に構成される。移動機構が、把持部側に配設される固定側部47と、固定側部から把持部の把持面12aに対して略直交する方向に略沿って延びる軸部52と、操作部側に配置されて軸部を摺動可能とされる摺動部55と、を備える。荷重調節機構が、摺動部を非操作位置側に付勢可能とされる複数の付勢部材を備える。付勢部材が、少なくとも1つずつのゴム状弾性体70,71とばね状弾性体68とを含む。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時に把持する把持部と、該把持部を把持した状態で操作可能な操作部と、該操作部を前記把持部に対して移動可能な移動機構と、を備える構成のステアリングハンドルであって、
前記操作部が、前記移動機構により、前記把持部側に接近させる接近操作を可能として、該接近操作によりアクセル操作若しくはブレーキ操作を入力させる構成とされるとともに、荷重調節機構により、前記把持部に対する接近移動時に係る操作荷重を調節可能に構成されて、
前記移動機構が、前記把持部側に配設される固定側部と、該固定側部から前記把持部の把持面に対して略直交する方向に略沿って延びる軸部と、前記操作部側に配置されて前記軸部を摺動可能とされる摺動部と、を備える構成とされ、
前記荷重調節機構が、前記摺動部を非操作位置側に付勢可能とされる複数の付勢部材を備える構成とされ、
該付勢部材が、少なくとも1つずつのゴム状弾性体とばね状弾性体とを含む構成とされていることを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項2】
前記付勢部材が、反発力を異ならせて構成される2つのゴム状弾性体と、1つのばね状弾性体と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングハンドル。
【請求項3】
前記ばね状弾性体が、コイルばねから構成され、
前記各ゴム状弾性体が、外形形状を略棒状として、前記コイルばねの内周側において直列的に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングハンドル。
【請求項4】
前記荷重調節機構が、前記固定側部と前記摺動部との間の領域であって、かつ、前記軸部と離隔した位置に、配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステアリングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵時に把持する把持部と、把持部を把持した状態で操作可能な操作部と、操作部を把持部に対して移動可能な移動機構と、を備える構成のステアリングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作部の操作によってアクセル操作若しくはブレーキ操作を入力可能とするステアリングハンドルとしては、略円環状の把持部の内周側の領域に、操作部を配置させ、この操作部を、把持部に対して押し下げるように操作する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この従来のステアリングハンドルでは、操作部は、ハンドルの軸方向に沿ってスライド移動させることにより操作可能とされており、圧縮コイルばねの付勢力によって、非操作位置側に付勢されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のステアリングハンドルでは、圧縮コイルばねを圧縮しつつ、操作部をスライド移動させる(把持部に対して押し下げる)ことにより、アクセル操作する構成である。そのため、アクセル操作時(操作部の押下操作時)に、運転者が操作部を押圧すれば、この押圧力が圧縮コイルばねを圧縮させることにより、操作部が移動することとなっていた。すなわち、従来のステアリングハンドルでは、操作部に作用する押圧力を受けて圧縮コイルばねがダイレクトに圧縮されることにより、操作部が移動してしまうことから、例えば、把持部操舵時(車両の旋回時等)に同時に操作部を押圧する場合において、不用意に強く操作部を押圧した際に、操作部の移動による急加速等を避けられず、このような操作部の操作初期の移動に要する操作荷重を調節可能とする点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、操作部の操作初期の移動に要する操作荷重を調節可能なステアリングハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングハンドルは、操舵時に把持する把持部と、把持部を把持した状態で操作可能な操作部と、操作部を把持部に対して移動可能な移動機構と、を備える構成のステアリングハンドルであって、
操作部が、移動機構により、把持部側に接近させる接近操作を可能として、接近操作によりアクセル操作若しくはブレーキ操作を入力させる構成とされるとともに、荷重調節機構により、把持部に対する接近移動時に係る操作荷重を調節可能に構成されて、
移動機構が、把持部側に配設される固定側部と、固定側部から把持部の把持面に対して略直交する方向に略沿って延びる軸部と、操作部側に配置されて軸部を摺動可能とされる摺動部と、を備える構成とされ、
荷重調節機構が、摺動部を非操作位置側に付勢可能とされる複数の付勢部材を備える構成とされ、
付勢部材が、少なくとも1つずつのゴム状弾性体とばね状弾性体とを含む構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明のステアリングハンドルでは、操作部の把持部に対する接近移動時に係る操作荷重が、荷重調節機構によって調節可能とされる構成であり、荷重調節機構は、少なくとも1つずつのゴム状弾性体とばね状弾性体とを含む複数の付勢部材から構成されて、操作部側に配置される摺動部を、非操作位置側に付勢している構成である。すなわち、本発明のステアリングハンドルでは、圧縮時の特性(反発特性)の異なるゴム状弾性体とばね状弾性体とを、操作部側の摺動部を非操作位置側に付勢する付勢部材として併用している構成である。そのため、把持部を把持している運転者が、操作部を把持部側に接近させるように押圧した際に、ゴム状弾性体とばね状弾性体とが、ともに、圧縮を開始されることとなるが、圧縮開始当初には、ゴム状弾性体が、ダンパーのように作用することとなって、ばね状弾性体の初期の圧縮に起因する操作部の瞬時の移動を抑制されることとなる。すなわち、本発明のステアリングハンドルでは、運転者が操作部を押圧しても、その押圧力(操作荷重)が、瞬時かつダイレクトに、操作部の移動に作用しないように調節することができ、所定の力若しくは所定の時間をかけて操作部を押圧した際に、操作部が把持部に対して接近移動して、アクセル操作若しくはブレーキ操作が入力されることとなる。そのため、操作部の操作初期における急激な加速や減速の発生を、抑制することができる。
【0008】
したがって、本発明のステアリングハンドルでは、操作部の操作初期の移動に要する操作荷重を微調整することができる。
【0009】
また、本発明のステアリングハンドルにおいて、付勢部材を、反発力を異ならせて構成される2つのゴム状弾性体と、1つのばね状弾性体と、から構成すれば、操作部の操作に必要な操作荷重を、一層細かく調節することができ、例えば、低加速時に必要な操作荷重と高加速時に必要な操作荷重とに、差を設けることも可能となって、一層円滑なアクセル操作若しくはブレーキ操作を実現することが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成のステアリングハンドルにおいて、ばね状弾性体を、コイルばねから構成し、
各ゴム状弾性体を、外形形状を略棒状として、コイルばねの内周側において直列的に配設させる構成とすることが、好ましい。
【0011】
ステアリングハンドルをこのような構成とすれば、例えば、ばね状弾性体とゴム状弾性体とを並列的に配設させる場合と比較して、荷重調節機構をコンパクトにすることができる。
【0012】
さらに、上記構成のステアリングハンドルにおいて、荷重調節機構を、固定側部と摺動部との間の領域であって、かつ、軸部と離隔した位置に、配設させる構成とすることが、好ましい。このような構成のステアリングハンドルでは、荷重調節機構が、軸部の周囲に配設されない構成であることから、荷重調節機構の配置の自由度を増大させることができる。そのため、荷重調節機構を構成するばね状弾性体やゴム状弾性体の付勢力も一層容易に調整可能となって、操作部の操作時に必要な押圧力(摺動部にかかる操作荷重)を容易に変更(調整)できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態であるステアリングハンドルの概略平面図である。
【
図2】実施形態のステアリングハンドルの概略右側面図である。
【
図3】実施形態のステアリングハンドルにおいて、移動機構を介して芯金に操作部を取り付けた状態の概略平面図である。
【
図4】実施形態のステアリングハンドルにおいて、移動機構を介して芯金に操作部を取り付けた状態の概略右側面図である。
【
図5】実施形態のステアリングハンドルにおいて、移動機構を介して芯金に操作部を取り付けた状態の部分拡大右側面図である。
【
図6】実施形態のステアリングハンドルにおいて、移動機構を介して芯金に操作部を取り付けた状態の部分拡大平面図である。
【
図7】実施形態のステアリングハンドルにおいて、芯金とセンサユニットとを示す概略部分拡大斜視図である。
【
図8】実施形態のステアリングハンドルにおいて、芯金と移動機構と操作部とを示す部分拡大斜視図である。
【
図12】実施形態のステアリングハンドルにおいて、移動機構と摺動部と荷重調節機構との部位の概略縦断面図である。
【
図13】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作部の操作時の状態を示す概略縦断面図である。
【
図14】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作部の操作時にかかる操作荷重と移動量との相関関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のステアリングハンドル1は、
図1,2に示すように、操舵時に把持する把持部としてのリング部12を有するハンドル本体3と、リング部12を把持した状態で操作可能な操作部20と、操作部20をリング部12に対して移動可能な移動機構45と、操作部20のリング部12に対する移動時に係る操作荷重を調節可能な荷重調節機構67と、を備える構成とされている。実施形態では、把持部として、略円環状のリング部12を備える構成のステアリングハンドル1を例に採り、説明する。なお、本明細書では、前後,上下,左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載させた状態のステアリングハンドル1の直進操舵状態を基準として、リング部12の回転操舵中心軸Cに略沿う方向を上下方向とし、回転操舵中心軸Cと直交して車両の前後方向に略沿う方向を前後方向とし、回転操舵中心軸Cと直交して車両の左右方向に略沿う方向を左右方向としている。
【0015】
ハンドル本体3は、把持部としての略円環状のリング部12と、リング部12の中央となる回転操舵中心軸C側に配置されるボス部7と、リング部12とボス部7とを連結する複数本(実施形態の場合、3本)のスポーク部(左側スポーク部15L,右側スポーク部15R,後側スポーク部15B)と、を備えている。把持部としてのリング部12は、
図2に示すように、把持面としてのリング面(車両搭載時の上面12a)を、回転操舵中心軸Cに対して略直交させるようにして、構成されている。
【0016】
また、実施形態のハンドル本体3は、ボス部7とリング部12と左側スポーク部15L,右側スポーク部15Rとを相互に連結するように配置される芯金5を、有している。芯金5は、
図3に示すように、リング部12を構成する略円環状のリング部芯金5aと、中央のボス部7を構成するボス部芯金5bと、ボス部7から左右に延びる左側スポーク部15L,右側スポーク部15Rを構成するスポーク部芯金5d,5dと、を備えている。ボス部芯金5bには、図示しないステアリングシャフトとの連結部位となるボス5cが、中央に配設されている。芯金5は、ボス5cを鋼製とし、他の部位を、アルミニウム等の軽合金材料からなるダイキャスト製としている。
【0017】
ボス部7は、芯金5におけるボス部芯金5bと、ボス部芯金5bの上方を覆うパッド8(
図1の二点鎖線参照)と、ボス部芯金5bの下方から側方にかけてを覆うロアカバー9(
図1,2の二点鎖線参照)と、を備えている。ロアカバー9は、詳細な図示は省略するが、左側スポーク部15L,右側スポーク部15R,後側スポーク部15Bの下方も覆うように、構成されている。ボス部7において、ボス部芯金5bとパッド8との間には、図示しないエアバッグ装置が、収納されている。
【0018】
把持部としてのリング部12は、略円環状とされるもので、円環状のリング部芯金5aの周囲に、クッション性を有した軟質合成樹脂製(具体的には、発泡ポリウレタン等の軟質発泡樹脂製)の被覆層13を、配設させて構成されている。被覆層13は、リング部芯金5aの周囲のみならず、スポーク部芯金5d,5dにおけるリング部12近傍の領域も覆うように、構成されている(
図1参照)。
【0019】
操作部20は、実施形態の場合、車両搭載時において、把持部としてのリング部12の下方(車両前方側)に配置されるもので、外形形状を、リング部12の外形形状と略同一とした略円環状とされている。具体的には、操作部20は、
図9に示すように、略円環状の操作本体部21と、操作本体部21から内方に突出するように形成されて移動機構45を構成する後述する摺動部55を取り付けるための取付片部22と、後側スポーク部15Bの領域内に配置されるセンサユニット75に形成される計測ピン部77を係止させる係止部材24を取り付けるための取付部23と、を備えている。操作本体部21は、断面略長方形状として、操作時に運転者の指を接触させる下面21a側を、略半円弧状に湾曲させて構成されている(
図12参照)。
【0020】
取付片部22は、実施形態の場合、左側スポーク部15L,右側スポーク部15Rのそれぞれ前後両側となる4箇所に、配設されるもので、それぞれ、操作本体部21の内周面21b側から回転操舵中心軸C側(内方)に向かって突出するように、形成されている(
図1,3,9参照)。詳細には、取付片部22は、操作部20を上下方向側から見た平面視の状態で、回転操舵中心軸Cを中心として、略点対称となるように、形成されている。各取付片部22は、略板状として(
図9参照)、摺動部55の後述する取付部60を上面側に載置させるようにして、この取付部60を、ビス等の固定手段(図符号省略)を用いて、取り付ける構成とされている(
図8参照)。
【0021】
取付部23は、操作本体部21の後縁付近(具体的には、詳細には、操作本体部21の後端よりも右方となる位置)から前方に延びるように形成されて、後側スポーク部15Bの領域内において、後側スポーク部15Bの右縁側となる位置に、配置されている(
図1,3,6,7,9参照)。この取付部23の前端23a側には、係止部材24が、取付部23に略沿って前後に延びるように形成されている。この係止部材24には、後述するごとく、後側スポーク部15B内に配置されるセンサユニット75に形成される計測ピン部77のピン本体79を挿通可能に、左右方向に貫通される貫通孔25が、形成されている(
図5~7参照)。貫通孔25は、
図5,7に示すように、前後方向(取付部23の長手方向)に沿った長穴状とされている。
【0022】
円環状の操作本体部21は、具体的には、ステアリングハンドル1を上方側から見た状態において、リング部芯金5a(すなわち、リング部12)と略同心円状に配置される構成であり、外径寸法を、リング部芯金5aの外径寸法より僅かに小さく設定されている(
図3参照)。また、操作本体部21は、幅寸法を、リング部12自体の幅寸法よりも小さく設定されており、車両搭載状態において、
図1に示すように、リング部12によって上方を略全面にわたって覆われるような構成とされている。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、車両搭載状態において上方から見た状態においては、操作部20は、取付片部22のみを露出させる(運転者から視認可能な)ように、構成されている。
【0023】
この操作部20は、移動機構45を介してハンドル本体3に取り付けられる構成であり、具体的には、非操作状態において、操作本体部21とリング部12との間に隙間H1を設けられるようにして、ハンドル本体3に取り付けられている(
図2,5参照)。また、操作部20は、移動機構45によって、リング部12側に接近させる接近操作を可能として、この接近操作によりアクセル操作若しくはブレーキ操作を入力させる構成とされている。具体的には、操作部20は、実施形態の場合、移動機構45によって、リング部12のリング面(把持面、すなわち、上面12a)に対して略直交する方向(実施形態の場合、回転操舵中心軸Cに沿った方向)に略沿わせるようにして、リング部12側に接近させるような引上操作を可能とされている。さらに詳細には、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の引上時に、アクセル操作を入力させる構成である。実施形態のステアリングハンドル1では、非操作状態における操作本体部21とリング部12との間の隙間H1は、30mm程度に設定され、引上操作状態における操作本体部21とリング部12との間の隙間H2は、20mm程度に設定されている(
図2,5参照)。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の移動ストロークは、10mm程度に、設定されている。
【0024】
具体的には、操作部20は、ハンドル本体3から延びるように配設される2つの取付ブラケット30(30L,30R)を用いて、ハンドル本体3側に取り付けられている。取付ブラケット30(30L,30R)は、左右対称形として、それぞれ、芯金5における略左右対称となる位置に連結されるもので、具体的には、前後の中央(後述する横杆部31の中央)を、芯金5におけるスポーク部芯金5dの左右の略中央となる位置に連結されて、スポーク部芯金5dから前後に延びるような構成とされている。詳細には、各取付ブラケット30は、
図10に示すように、前後方向に略沿って延びるように形成される横杆部31と、横杆部31の前後両端側からそれぞれ上方(リング部12側)に向かって延びる2つの縦杆部34,34と、移動機構45における後述する軸部52を取り付けるための2つの軸取付部36,36と、を備えている。実施形態の場合、各取付ブラケット30は、スポーク部芯金5dに対して下面側から重ねられるようにして、横杆部31の中央付近の部位を、スポーク部芯金5dに取り付けられている。
【0025】
横杆部31は、実施形態の場合、前後方向に略沿った帯板状として、車両搭載時において、操作本体部21よりも下方となる位置に配置されるもので(
図5参照)、
図10に示すように、前後の中央付近とその後方との2箇所に、リング部12側となる上方に突出するような突状部32を、有している。そして、横杆部31は、この突状部32の先端面32a(上面)を、スポーク部芯金5dの下面に対して当接させつつ(
図5参照)、この当接している部位で、スポーク部芯金5dに、ビス等の固定手段(図符号省略)を利用して固定されている。縦杆部34は、横杆部31と幅寸法を略同一として、横杆部31の前端31a,後端31b側から、それぞれ上方に延びるように、形成されている。軸部52を取り付けるための軸取付部36は、各縦杆部34の上端34a付近から相互に離隔するように前方あるいは後方に突出するように、配設されている。縦杆部34から軸取付部36にかけてには、後述するごとく、荷重調節機構67を収納させるための収納凹部38が、形成されている(
図8,12参照)。各軸取付部36は、
図12に示すように、軸部52を、前面の中央付近から下方に突出させるようにして、取り付けている。この2つの軸取付部36,36は、
図1,3に示すように、回転操舵中心軸Cを通る線を基準として、前後で略対称となる位置に、配設されている。すなわち、各取付ブラケット30(30L,30R)に形成されている計4つの軸取付部36は、回転操舵中心軸Cを中心として略点対称となる位置に、配設されている。
【0026】
実施形態では、各取付ブラケット30において、縦杆部34と軸取付部36とが、移動機構45を構成している。すなわち、移動機構45は、回転操舵中心軸Cを中心として略点対称となる4箇所に、配設されている。また、各軸取付部36は、車両搭載状態においては、上面36aを、リング部芯金5aの下面5aaの位置と略一致した位置に配設させるような構成とされている(
図12参照)。すなわち、操作部20の非操作状態において、軸取付部36の上面36aは、リング部12の下面12bよりも上方に位置するような構成とされている。
【0027】
移動機構45は、
図5,8,12に示すように、リング部12側に配設される固定側部47と、固定側部47から延びるように配置される軸部52と、操作部20側に配置される摺動部55と、を備えている。また、移動機構45において、固定側部47と摺動部55との間には、荷重調節機構67が、配設されている。固定側部47は、回転操舵中心軸C(上下方向)に略沿って延びるような柱状とされるもので、下面47aを、リング部12の下面12bよりも下方側に突出した位置に配置させるように、構成されている(
図5,12参照)。この固定側部47の下面47aは、移動する摺動部55における後述する摺動部本体56の上面56a(当接面57)を当接させて停止可能なストッパ面48を構成している(
図13参照)。実施形態の場合、固定側部47は、リング部12からの突出量(リング部12の下面12b)と固定側部47の下面47aとの離隔距離L1(
図5参照)を、20mm程度に、設定されている。
【0028】
固定側部47から延びる軸部52は、実施形態の場合、固定側部47を貫通するようにして配設されるもので(
図12参照)、固定側部47の下面47aから下方に突出しつつ、リング部12のリング面(上面12a)に対して略直交する方向(回転操舵中心軸Cに沿った方向)に略沿って延びるように、配設されている。この軸部52は、摺動部55における後述する摺動部本体56を貫通するようにして配設されるもので、摺動部本体56を貫通した先端(下端52a)側に、非操作状態の摺動部55(摺動部本体56)の下面56b側を支持可能な支持部53を、配設させている(
図5,12参照)。支持部53は、外形形状を、摺動部本体56より若干小径の略円板状とされている。
【0029】
摺動部55は、操作部20に形成されている各取付片部22に、それぞれ取り付けられて、操作部20側に配置されるもので、
図11~13に示すように、軸部52を摺動可能な摺動部本体56と、取付片部22に取付可能とされる取付部60と、収納凹部38内に収納される荷重調節機構67の下面側を支持可能とされる支持片部62と、を備えている。摺動部本体56は、軸部52を挿通可能な略筒状として、軸部52に対して摺動可能に構成されるもので、実施形態では、具体的には、リニアブッシュから構成されている。摺動部本体56は、操作部20の非操作状態においては、下面56b側を、軸部52の下端52a側に配設される支持部53によって支持されている(
図12参照)。この摺動部本体56は、軸部52に対して摺動しつつ上方移動することとなるが、この摺動時に、上面56aを、固定側部47の下面47a(ストッパ面48)に当接させることにより、さらなる上方移動を規制されることとなる。すなわち、摺動部本体56は、上面56aを、ストッパ面48と当接する当接面57とされている。また、実施形態の場合、摺動部本体56の上面56aには、緩衝部材50が、配設されており、実際には、摺動部本体56の上面56a(当接面57)は、固定側部47の下面47a(ストッパ面48)と、直接接触せず、緩衝部材50を介して当接されることとなる(
図13参照)。緩衝部材50は、当接面57を、外縁側を除いて広く覆い可能な略円板状とされるもので、ゴム状弾性体や軟質の合成樹脂から、形成されている。
【0030】
取付部60は、各摺動部本体56から前後左右の外方側(例えば、前右側に配置される摺動部本体56の前右側)となる位置に、配設されるもので、略平板状とされて、取付片部22の上面側に載置されるようにして、ビス等の固定手段(図符号省略)を用いて取付片部22に取り付けられる構成である(
図8参照)。支持片部62は、摺動部本体56の上端付近から前後の中央側(取付ブラケット30における縦杆部34側)に向かって突出するように形成されるもので、具体的には、上面62aを、摺動部本体56の上面56aに略連ならせるような板状とされている(
図8,11参照)。この支持片部62は、後述するごとく、荷重調節機構67を収納するための収納部位65を、構成している。具体的には、支持片部62は、縦杆部34から軸取付部36(固定側部47)にかけて形成される収納凹部38の下端側の領域に配置されるとともに、摺動部55の軸部52に対する摺動時に、収納凹部38に対してスライド移動可能とされるもので、外形形状を、端縁側を略半円弧状に湾曲させた略板状とされている。
【0031】
荷重調節機構67は、摺動部55を非操作位置側(下方)に付勢可能とされる複数の付勢部材を備えるもので、実施形態の場合、付勢部材として、ばね状弾性体としての1つの圧縮コイルばね68と、ゴム状弾性体としての反発力を異ならせて構成される2つの合成樹脂発泡体70,71と、を備える構成とされている。具体的には、実施形態の荷重調節機構67は、圧縮コイルばね68の内周側に、略棒状の合成樹脂発泡体70,71を直列的に配置させるようにして、軸部52の側方に形成される収納部位65内に収納されている。実施形態の場合、合成樹脂発泡体としては、反発力が大きく、すなわち、高硬度である高硬度発泡体70と、反発力が小さく、すなわち、低硬度である低硬度発泡体71と、を使用している。具体的には、実施形態の場合、操作部20側(下側)に、低硬度発泡体71が、配設される構成とされている。また、低硬度発泡体71と高硬度発泡体70とは、外径寸法を略同一として、長さ寸法を異ならせるとともに、相互に対向する面相互(低硬度発泡体71の上面71a,高硬度発泡体70の下面70b相互)を、接着剤等を用いて接着されるようにして、配置されている。具体的には、低硬度発泡体71と高硬度発泡体70の長さ寸法の比率は、1:5程度に、設定されている。さらに具体的には、実施形態の場合、低硬度発泡体71としては、反発弾性率:2~10MPa、硬度(ショア硬度):50~70、引張強さ:40~60MPaのウレタン製若しくはEPDM製のものを使用し、高硬度発泡体70としては、反発弾性率:10~30MPa、硬度(ショア硬度):80~100、引張強さ:20~50MPaのウレタン製若しくはEPDM製のものを使用している。また、圧縮コイルばね68としては、ばね定数:0.2~2N/mm、ばね単体でのプレロード:1~5N、ばね単体でのストローク後ロード:5~9Nに設定されるものを、使用している。
【0032】
荷重調節機構67を内部に収納させる収納部位65は、取付ブラケット30に形成される収納凹部38と、摺動部55(摺動部本体56)側から延びる支持片部62と、から構成されている。収納凹部38は、取付ブラケット30の縦杆部34から軸取付部36(固定側部47)において、縦杆部34側となる元部側の領域にかけてを凹ませるように形成されるもので、詳細には、各縦杆部34を軸部52側の面(前後方向の中央側の面)から略半円弧状に凹ませるとともに、この凹み状態を連ならせるようにして、軸取付部36(固定側部47)の元部側の領域を下面側から略円柱状に凹ませるようにして、形成されている(
図10,12参照)。この収納凹部38は、固定側部47において軸部52の周囲に形成されるストッパ面48に隣接されている。また、収納凹部38の凹みの先端面(上面38a)は、実施形態の場合、リング部12の下面12bと略同等となる位置に、形成されている(
図12参照)。摺動部55(摺動部本体56)側から延びる支持片部62は、収納凹部38をスライド移動可能とされるもので、詳細には、上述したごとく、収納凹部38の下端側の領域に配置されている。
【0033】
そして、荷重調節機構67は、
図12に示すように、この収納凹部38の凹みの先端面(上面38a)と支持片部62の上面62aとによって上下両端側を支持されるようにして、収納部位65の内部に収納される構成である。具体的には、圧縮コイルばね68は、僅かに圧縮された状態で、上端68a側と下端68b側とを、それぞれ、収納凹部38及び支持片部62の上面38a,62aに支持されることとなる。低硬度発泡体71と高硬度発泡体70とは、実施形態の場合、上述したごとく、相互に接触する端面側(低硬度発泡体71における上面71aと高硬度発泡体70における下面70bと)を、接着剤を用いて相互に接着される構成であり、高硬度発泡体70の上面70aを、収納凹部38の上面38aに接触させ、低硬度発泡体71の下面71bを、支持片部62の上面62aに接触させるようにして、僅かに圧縮された状態で、圧縮コイルばね68の内周側に配置されることとなる。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、荷重調節機構67は、固定側部47の下面47a(ストッパ面48)とは接触せず、ストッパ面48と離隔した位置、すなわち、軸部52と離隔した位置に、配設されている。また、実施形態のステアリングハンドル1では、荷重調節機構67は、操作部20の非操作状態において、操作部20よりも上方側となる操作部20(操作本体部21)とリング部12との間の領域に、配設されている(
図12参照)。
【0034】
実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の引上操作時に、操作部20のリング部12側に接近するような移動(上方移動)に伴って、摺動部55が、荷重調節機構67を構成する圧縮コイルばね68,低硬度発泡体70,高硬度発泡体71を圧縮しつつ、軸部52に対して摺動されることとなる(
図13参照)。このような操作部20の引上操作状態は、操作本体部21から手を離せば、圧縮コイルばね68,低硬度発泡体71,高硬度発泡体70の復元により、解除されることとなって、操作本体部21は、非操作状態の位置に復元されることとなる。実施形態のステアリングハンドル1では、
図1,2に示すように、後側スポーク部15Bの領域内(アッパカバー16とロアカバー9とによって覆われる領域内)に、図示しない制御回路に電気的に接続されるセンサユニット75が、配設されている。センサユニット75は、
図5~7に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして配置されるセンサ本体76と、センサ本体76の右端側においてセンサ本体76に対して回動可能に取り付けられる計測ピン部77と、を有している。センサ本体76は、回転角センサから構成されている。計測ピン部77は、センサ本体76の右側面側においてセンサ本体76に対して回動可能に軸支される取付片部78と、取付片部78の先端から左右方向に略沿うようにして右方に突出するピン本体79と、を備えている。ピン本体79は、先端79a側を、非操作状態の操作部20において、操作本体部21から延びる係止部材24に形成される貫通孔25に、挿通されている。操作部20の引上操作時には、操作本体部21の移動に伴って、貫通孔25に挿通されているピン本体79も、貫通孔25への貫通状態を維持されつつ移動して、計測ピン部77が回転することとなり、このような計測ピン部77の回転によって、操作部20の操作状態(操作本体部21の移動量)を検出することができる。
【0035】
そして、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の把持部としてのリング部12に対する接近移動時(引上操作時)に係る操作荷重が、荷重調節機構67によって調節可能とされる構成であり、荷重調節機構67は、少なくとも1つずつのゴム状弾性体としての合成樹脂製発泡体(高硬度発泡体70,低硬度発泡体71)とばね状弾性体としての圧縮コイルばね68とを含む複数の付勢部材から構成されて、操作部20側に配置される摺動部55を、非操作位置側に付勢している構成である。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、圧縮時の特性(反発特性)の異なるゴム状弾性体(高硬度発泡体70,低硬度発泡体71)とばね状弾性体(圧縮コイルばね68)とを、操作部20側の摺動部55を非操作位置側に付勢する付勢部材として併用している構成である。そのため、リング部12を把持している運転者が、操作部20をリング部12側に接近させるように押圧した際に、高硬度発泡体70,低硬度発泡体71(詳細には、主として低硬度発泡体71)と圧縮コイルばね68とが、ともに、圧縮を開始されることとなるが、圧縮開始当初には、低硬度発泡体71が、ダンパーのように作用することとなって、圧縮コイルばね68の初期の圧縮に起因する操作部20(操作本体部21)の瞬時の移動を抑制されることとなる。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、運転者が操作部20(操作本体部21)を押圧しても、その押圧力(操作荷重)が、瞬時かつダイレクトに、操作部20(操作本体部21)の移動に作用しないように、調節することができ、所定の力若しくは所定の時間をかけて操作部20を押圧することにより、操作部20がリング部12に対して接近移動して、アクセル操作若しくはブレーキ操作が入力されることとなる。そのため、操作部20の操作初期における急激な加速や減速の発生を、抑制することができる。実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の引上操作時に、アクセル操作を入力させる構成であることから、例えば、車両旋回時に、操作部20を把持しつつリング部12を回転操作する際等において、急激な加速の発生を抑制することができる。
【0036】
したがって、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の操作初期の移動に要する操作荷重を微調整することができる。
【0037】
また、実施形態のステアリングハンドル1では、付勢部材が、反発力を異ならせて構成される2つのゴム状弾性体である高硬度発泡体70及び低高度発泡体71と、1つのばね状弾性体としての圧縮コイルばね68と、から構成されている。そのため、操作部20の操作に必要な操作荷重を、一層細かく調節することができる。具体的には、実施形態のステアリングハンドル1では、ゴム状弾性体として、高硬度発泡体70と低高度発泡体71とを使用することにより、操作部20の操作時における操作荷重と、操作部20の実際の移動量と、に、
図14のグラフ図に示すような相関関係が生ずることとなる。このグラフ図によれば、操作部20の引上操作開始時に、所定の操作荷重未満では、操作部20は移動せず、操作荷重が所定値に到達すれば、操作部20が移動を開始することとなる。そして、操作部20の移動量と操作荷重とは、正比例関係にはなく、移動の前半と後半とで曲率を異ならせるように湾曲した曲線を描くこととなる。このようなグラフの曲線形状は、圧縮コイルばね68と、2つの高硬度発泡体70,低硬度発泡体71と、の併用により、起因するものと推測される。ばね状弾性体としての圧縮コイルばね68と、ゴム状弾性体としての高硬度発泡体70,低硬度発泡体71と、は、略同時に圧縮を開始されることとなるが、このとき、高硬度発泡体70と低硬度発泡体71とにおいては、低硬度発泡体71が、先に圧縮し、低硬度発泡体71の圧縮後に、高硬度発泡体70が圧縮すると推測される。すなわち、操作部20の移動において、移動開始位置から移動ストロークの略中央まで(前半)にかけては、低硬度発泡体71が主に圧縮し、移動ストロークの略中央から移動終了位置(後半)にかけては、高硬度発泡体70が主に圧縮すると推測される。また、操作部20の移動完了状態から手を離せば、操作部20は、圧縮コイルばね68,高硬度発泡体70,低硬度発泡体71の復元により、略同一の曲線を描くようにして、非操作状態の位置に復元されることとなる。高硬度発泡体70は、低硬度発泡体71と比較して、圧縮時に必要な押圧力が大きいことから、高硬度発泡体70の圧縮時と推測される移動ストロークの後半区域では、グラフ図の傾きが、低硬度発泡体71の圧縮時と推測される移動ストロークの前半区域よりも、大きくなる。そのため、実施形態のステアリングハンドル1では、例えば、低速走行時には、主に低硬度発泡体71を圧縮させるように軽い操作荷重で操作でき、高速走行時には、主に高硬度発泡体70を圧縮させるようにやや重い操作荷重で操作できるように、車両の速度に応じて操作時の感触を微調整することができ、また、両者の移行もスムーズにすることができる。その結果、一層円滑なアクセル操作を実現することが可能なる。なお、このような点を考慮しなければ、ゴム状弾性体とばね状弾性体とをそれぞれ1つのみ配設する構成としてもよく、また、2つのばね状弾性体と1つのゴム状弾性体とを配設する構成としてもよい。さらには、ゴム状弾性体とばね状弾性体とを、それぞれ、2個以上配設させるような構成としてもよい。なお、実施形態では、ゴム状弾性体として、合成樹脂発泡体を使用しているが、ゴム状弾性体としては、このような発泡体に限定されるものではなく、例えば、天然ゴムや合成ゴム等からなるゴム素材から形成されるものを使用することもできる。
【0038】
さらに、実施形態のステアリングハンドル1の荷重調節機構67では、低硬度発泡体71と高硬度発泡体70とを、圧縮コイルばね68の内周側において直列的に配設させている。そのため、ばね状弾性体とゴム状弾性体とを並列的に配設させる場合と比較して、荷重調節機構67をコンパクトにすることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、ばね状弾性体とゴム状弾性体とを並列的に配設させる構成としてもよい。
【0039】
さらにまた、実施形態のステアリングハンドル1では、このような構成の荷重調節機構67を、移動機構45に設けられる収納部位65内に収納させる構成であり、換言すれば、固定側部47と摺動部55との間の領域であって、かつ、軸部52と離隔した位置に配設させている。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、荷重調節機構67は、軸部52の周囲に配設されない構成であることから、荷重調節機構67の配置の自由度を増大させることができる。そのため、荷重調節機構67を構成する圧縮コイルばね68や高硬度発泡体70,低硬度発泡体71の付勢力も一層容易に調整可能となって、操作部20の操作時に必要な引上力(摺動部20にかかる操作荷重)を容易に変更(調整)できる。なお、このような点を考慮しなければ、詳細な図示を省略するが、荷重調節機構として、例えば、圧縮コイルばねと略筒状とされたゴム状弾性体とを、軸部を挿通させるようにして、軸部の周囲に配設させるような構成としてもよい。
【0040】
実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20(操作本体部21)が、、外形形状を、リング部12の外形形状と略同一とした略円環状とされていることから、車両走行時に、リング部12の把持位置に拘わらず、瞬時に、操作部20を操作することができる。また、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20は、リング部12の下方(車両前方側)に配置される構成であり、操作時に、移動機構45によって、リング部12側に接近させるように引き上げる構成とされている。すなわち、操作部20は、非操作状態においては、リング部12との間に、ある程度隙間(具体的には、30mm程度)を設けられた状態で配設されることから、非操作状態において、単独でリング部12を把持する際に、リング部12の周囲を運転者の掌と指とによって全周にわたってくるむように握り込むこともできて、非操作時におけるハンドル操作性も良好である。さらに、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20は、リング部12の外形形状と略同一とした略円環状とされて、リング部12の下方に配置されていることから、リング部12の内周側の領域からなる空間を狭めることもなく、操作部を設けない場合のステアリングハンドルと、略同等のメータ視認性を確保することができる。特に、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20における操作本体部21が、車両搭載状態において、リング部12によって上方(運転者側)を略全面にわたって覆われる構成であり、換言すれば、操作本体部21が、リング部12から露出しない構成であることから、車両走行時のメータ視認性を一層良好に保持することができる。
【0041】
また、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20は、操作時に、移動機構45によってリング部12側に接近させるように引き上げられる構成であり、具体的には、操作部20は、摺動部55(摺動部本体56)を、リング部12側に配設される固定側部47から延びる軸部52に摺動させるようにして、全体をリング部12側に接近させるように、スライド移動される構成である。そして、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20のリング部12に対する引上移動時に係る操作荷重を調節可能とされるとともに、摺動部55を非操作位置側に付勢可能とされる荷重調節機構67が、操作部20の非操作状態において、操作部20よりも上方側となる操作部20とリング部12との間の領域に、配設される構成である。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、操作部20の操作時における摺動部55における荷重調節機構67(圧縮コイルばね68,高硬度発泡体70,低硬度発泡体71)を圧縮するような押圧力の作用部位が、操作部20自体に対して、上下方向側(リング部12のリング面12aに対して略直交する方向側、実施形態の場合、回転操舵中心軸Cに沿った方向側)で離隔せず、操作部20自体と上下方向側で近接した位置に形成されることから、ガタツキ等の発生を抑制して、操作部20を安定してスムーズに操作することができて、操作性が良好である。特に、実施形態のステアリングハンドル1では、移動機構45(すなわち、荷重調節機構67)が、回転操舵中心軸Cを中心として略対称となる複数箇所(実施形態の場合、回転操舵中心軸Cを中心として略点対称となる4箇所)に、配設される構成であることから、操作部20全体を、傾きを抑制してバランスよくスムーズに操作させることができる。なお、移動機構45の配置数は、回転操舵中心軸Cを中心として略点対称となる4箇所に限定されるものではなく、例えば、回転操舵中心軸Cより前側の2箇所、あるいは、回転操舵中心軸Cより後側の2箇所に、配置させる構成としてもよい。
【0042】
さらに、実施形態のステアリングハンドル1では、固定側部47において、移動する摺動部55(摺動部本体56)を当接させて停止可能なストッパ面48(下面47a)が、リング部12の下面12bよりも下方側に突出した位置に、配設される構成である。そのため、引上操作状態の操作部20とリング部12との間に隙間を設けることができることから、例えば、リング部12を把持している両手の一方のみで操作部20を操作した場合にも、リング部12を把持している他方の手の指に操作部20が接触することを抑制できる。実施形態のステアリングハンドル1では、具体的には、引上操作後の操作部20(操作本体部21)とリング部12との間の隙間H2は、20mm程度に設定されている。そのため、片手での操作部20の引上操作時に、移動する操作部20(操作本体部21)が、操作部20から手を離してリング部12のみを把持している他方の手の指と接触することを、的確に規制することができる。また、実施形態のステアリングハンドル1では、摺動部55(摺動本体部56)として、リニアブッシュが使用されていることから、軸部52を円滑に摺動させることができる。そのため、片手のみで操作部20を引き上げる際等において、仮に、摺動部本体56が、多少、軸部52に対して傾斜するような態様となっても、摺動部本体56を、円滑に、軸部52に対して摺動させることができて、操作本体部21全体を、リング部12に対して平行移動させるように、スムーズにリング部12側に接近させることができる。
【0043】
さらにまた、実施形態のステアリングハンドル1では、摺動部55(摺動部本体56)側に、当接面57を覆うように、緩衝部材50が、配設されていることから、摺動部55(摺動部本体56)の上面56a(当接面57)が、ストッパ面48と直接接触せず、操作部20の操作時に、音が発生することを抑制できる。なお、緩衝部材50は、勿論、摺動部本体56側ではなく、固定側部47側に設ける構成としてもよい。
【0044】
なお、実施形態では、把持部として、円環状のリング部12を備える構成のステアリングハンドルを例に採り説明したが、本発明は、四角環状の把持部を備えるタイプのステアリングハンドルにも、勿論、適用可能である。また、実施形態のステアリングハンドルでは、操作部は、操作時に、アクセル操作を入力する構成とされているが、勿論、操作部の操作時に、ブレーキ操作を入力するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ステアリングハンドル、3…ハンドル本体、12…リング部(把持部)、12a…上面(リング面、把持面)、20…操作部、21…操作本体部、45…移動機構、47…固定側部、52…軸部、55…摺動部、67…荷重調節機構、68…圧縮コイルばね(ばね状弾性体)、70…高硬度発泡体(合成樹脂発泡体、ゴム状弾性体)、71…低硬度発泡体(合成樹脂発泡体、ゴム状弾性体)、C…回転操舵中心軸。