(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120546
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】心臓内幹細胞を含む細胞集団
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20240829BHJP
【FI】
C12N5/077
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027405
(22)【出願日】2023-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516200404
【氏名又は名称】株式会社メトセラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳雅
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC14
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】
本発明は、改良された心臓内幹細胞を含む細胞集団を提供することを課題とする。
【解決手段】
心臓内幹細胞に特定の因子を発現させることによって、HGF産生能が高められることを見出し、また、このような心臓内幹細胞は、優れた免疫調節能及び/又は抗炎症能を有することを見出したことにより、そのような心臓内幹細胞を含む細胞集団を提供することができた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト小児由来の心臓内幹細胞を含む細胞集団であって、
前記細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、
前記細胞集団が、αMHC遺伝子を発現しない、前記細胞集団。
【請求項2】
前記細胞集団が、HGF産生能が高められた細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が800pg/mL以上であることにより示される、請求項2に記載の細胞集団。
【請求項4】
前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が1,000pg/mL以上であることにより示される、請求項2に記載の細胞集団。
【請求項5】
前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合がそれぞれ60%以上、5%以下、30%以下及び80%以上である、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項6】
前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合がそれぞれ60%以上、5%以下、10%以下及び80%以上である、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の細胞集団を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓内幹細胞を含む細胞集団に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療の分野において、様々な臓器疾患における新たな治療法を確立するために、各種臓器の成熟細胞に分化する臓器由来の幹細胞の研究が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1において、心疾患に対する再生治療を実現するために、心臓組織に由来する幹細胞の研究が進められており、心臓由来の多能性幹細胞を移植することにより心臓疾患の治療に使用し得ることが開示されている。なお、特許文献1において開示される多能性幹細胞は、ヒト心臓組織由来細胞を浮遊培養した後、スフェアーを形成した細胞を選択分離することにより得られた細胞である。当該細胞は細胞表面抗原の陽性率が、c-kit:0.2%、CD34:0.8%、CD90:65.3%、CD105:87.5%であることなどが開示されており、また当該細胞は、心筋細胞への分化誘導開始21日後においてNkx-2.5、GATA4、ANP、α-ca-actin、TnT、MLC2v、MLC2a、α-MHC(α-myosin heavy chain)、β-MHC(β-myosin heavy chain)の遺伝子が発現することも開示されている。
【0004】
しかしながら、当該技術分野において、より治療効果の高い幹細胞を得るという観点や、患者への細胞移植時に生じる副次的反応をできるだけ低いものとするという観点から、さらなる開発が鋭意進められており、より優れた幹細胞を提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、改良された心臓内幹細胞を含む細胞集団を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を進め、ヒト小児由来の心臓内幹細胞に特定の因子を発現させることによって、HGF産生能が高められることを見出し、また、このような心臓内幹細胞は、優れた免疫調節能及び/又は抗炎症能を有することを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ヒト小児由来の心臓内幹細胞を含む細胞集団であって、
前記細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、
前記細胞集団が、αMHC遺伝子を発現しない、前記細胞集団。
[2]前記細胞集団が、HGF産生能が高められた細胞を含む、[1]に記載の細胞集団。
[3]前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が800pg/mL以上であることにより示される、
[2]に記載の細胞集団。
[4]前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が1,000pg/mL以上であることにより示される、[2]に記載の細胞集団。
[5]前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合がそれぞれ60%以上、5%以下、30%以下及び80%以上である、[1]~[4]の何れかに記載の細胞集団。
[6]前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合がそれぞれ60%以上、5%以下、10%以下及び80%以上である、[1]~[4]の何れかに記載の細胞集団。
[7][1]~[6]の何れかに記載の細胞集団を含む、組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、改良された心臓内幹細胞を含む細胞集団を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】各ロットの心臓内幹細胞におけるIFN-gammaの相対産生量を示すグラフである。
【
図2】マウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養開始5日後における心筋細胞関連マーカー(cTnT)の発現を示す写真である。パネルA~CはそれぞれロットFBS-pCSC#1の心臓内幹細胞におけるLamin、cTnT、DAPIによる染色像を示し、パネルDはパネルA~Cの染色像をMergeしたときの染色像を示す。パネルE~GはそれぞれロットFBS-pCSC#2の心臓内幹細胞におけるLamin、cTnT、DAPIによる染色像を示し、パネルHはパネルE~Gの染色像をMergeしたときの染色像を示す。パネルA及びEに記載されるバーは100μmを示す。パネルD及びHにおける四角い枠で囲んだ部分の拡大図をそれぞれのパネルの右側に示した。
【
図3】マウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養開始5日後における心筋細胞関連マーカー(Actinin)の発現を示す写真である。パネルA~CはそれぞれロットFBS-pCSC#1の心臓内幹細胞におけるLamin、Actinin、DAPIによる染色像を示し、パネルDはパネルA~Cの染色像をMergeしたときの染色像を示す。パネルE~GはそれぞれロットHS-pCSC#2の心臓内幹細胞におけるLamin、Actinin、DAPIによる染色像を示し、パネルHはパネルE~Gの染色像をMergeしたときの染色像を示す。パネルA及びEに記載されるバーは100μmを示す。パネルD及びHにおける四角い枠で囲んだ部分の拡大図をそれぞれのパネルの右側に示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的実施形態を用いて詳細に説明するが、本発明は示された具体的実施形態にのみ限定されるものではない。
【0012】
本発明の一実施形態は、ヒト小児由来の心臓内幹細胞を含む細胞集団であって、
前記細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、
前記細胞集団が、αMHC遺伝子を発現しない、前記細胞集団である。
【0013】
本実施形態の細胞集団は、細胞表面抗原としてCD105を発現する細胞を含んでもよく、さらにCD90、SIRPA、CD29から成る群から選択される1又は複数の細胞表面抗原を発現する細胞を含んでもよい。また、当該細胞集団は、これらの細胞表面抗原以外にも任意の細胞表面抗原を発現する細胞を含んでもよい。
【0014】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として70%以上であり、80%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってよく、98%以上であってよく、また、70%超であってよく、80%超であってよく、90%超であってよく、95%超であってよく、98%超であってよい。
【0015】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD90を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として30%以上であってよく、40%以上であってよく、50%以上であってよく、60%以上であってよく、70%以上であってよく、80%以上であってよく、84%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってよく、98%以上であってよく、また、30%超であってよく、40%超であってよく、50%超であってよく、60%超であってよく、70%超であってよく、80%超であってよく、84%超であってよく、90%超であってよく、95%超であってよく、98%超であってよい。
【0016】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるSIRPAを発現している細胞の割合は、細胞数を基準として60%以上であってよく、70%以上であってよく、79%以上であってよく、80%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってよく、98%以上であってよく、また、60%超であってよく、70%超であってよく、79%超であってよく、80%超であってよく、90%超であってよく、95%超であってよく、98%超であってよい。
【0017】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD29を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として70%以上であってよく、80%以上であってよく、90%以上であってよく、95%以上であってよく、98%以上であってよく、また、70%超であってよく、80%超であってよく、90%超であってよく、95%超であってよく、98%超であってよい。
【0018】
本実施形態の細胞集団は、細胞表面抗原としてCD45、CD34、CD31、c-kitから成る群から選択される1又は複数の細胞表面抗原を発現しない細胞又は低発現である細胞を含んでもよい。また、当該細胞集団は、これらの細胞表面抗原以外にも任意の細胞表面抗原を発現しない細胞又は低発現である細胞を含んでもよい。なお、「発現しない」又は「低発現である」とは、例えば、細胞集団中における全細胞中における細胞数を基準とした細胞の割合において、所定の割合以下又は所定の割合未満であることを指す。この所定の割合は、細胞表面抗原ごとに異なる数値であってよく、例えば下記の通り表すことができる。
【0019】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD45を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として10%以下であってよく、5%以下であってよく、4%以下であってよく、3%以下であってよく、2%以下であってよく、1%以下であってよく、また、10%未満であってよく、5%未満であってよく、4%未満であってよく、3%未満であってよく、2%未満であってよく、1%未満であってよい。
【0020】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD34を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として30%以下であってよく、20%以下であってよく、15%以下であってよく、10%以下であってよく、5%以下であってよく、1%以下であってよく、また、30%未満であってよく、20%未満であってよく、15%未満であってよく、10%未満であってよく、5%未満であってよく、1%未満であってよい。
【0021】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるCD31を発現している細胞の割合は、細胞数を基準として90%以下であってよく、80%以下であってよく、70%以下であってよく、60%以下であってよく、50%以下であってよく、40%以下であってよく、30%以下であってよく、20%以下であってよく、10%以下であってよく、5%以下であってよく、1%以下であってよく、また、90%未満であってよく、80%未満であってよく、70%未満であってよく、60%未満であってよく、50%未満であってよく、40%未満であってよく、30%未満であってよく、20%未満であってよく、10%未満であってよく、5%未満であってよく、1%未満であってよい。
【0022】
本実施形態の細胞集団において、当該細胞集団中における全細胞中に占めるc-kitを発現している細胞の割合は、細胞数を基準として30%以下であってよく、20%以下であってよく、15%以下であってよく、10%以下であってよく、5%以下であってよく、1%以下であってよく、また、30%未満であってよく、20%未満であってよく、15%未満であってよく、10%未満であってよく、5%未満であってよく、1%未満であってよい。
【0023】
本実施形態の細胞集団は、当該細胞集団が、細胞表面に発現する抗原と、細胞表面に発現しない抗原又は低発現である抗原との、任意の組み合わせにより特徴付けられた細胞を含んでもよい。例えば、細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上である限り、それ以外の細胞表面は特に限定されず、前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合が、それぞれ60%以上、5%以下、10%以下及び80%以上であってもよく、それぞれ70%以上、5%以下、10%以下及び80%以上であってもよい。また、例えば、細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が90%以上、かつCD45、c-kitを発現している細胞の割合がそれぞれ10%未満、10%未満であってもよい。なお、SIRPAとは多能性幹細胞由来心筋前駆細胞及び心筋細胞特異的表面抗原である。
【0024】
細胞表面抗原の発現割合は、当業者に既知の方法により測定することができ、例えばフローサイトメトリ法により測定することができる。フローサイトメトリに使用する抗体はそれぞれの細胞表面抗原を検出することができる限り特に限定されない。当業者に既知の方法により製造してもよく、市販の抗体を用いてもよい。
【0025】
本実施形態の細胞集団は、αMHC(以下、MYH6ともいう)遺伝子を発現しない。
【0026】
各遺伝子発現の判定方法は特に限定されないが、例えば、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における各遺伝子発現量(beta-actinで標準化)を基準値1.0とした時の各遺伝子の相対発現量によって後述のように判定することができる。なお、ヒト成人心臓由来線維芽細胞は、心房由来であってもよく、心室由来であってもよい。
【0027】
当該細胞集団において、αMHC遺伝子を発現しないとは、全く発現しないことであってよく、実質的に発現しないことであってよい。実質的に発現しないとは、例えば、任意の測定方法によって発現量を測定したときに検出感度以下のことである。または、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準として、発現量が1.5倍未満、1.4倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満、1.1倍未満、1.0倍未満、0.9倍未満、0.8倍未満、0.7倍未満、0.6倍未満、0.5倍未満、0.4倍未満、0.3倍未満、0.2倍未満、0.1倍未満のことであってもよい。
【0028】
当該細胞集団において、Gata4遺伝子は、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団におけ
る遺伝子発現量を基準として、0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、または1.9倍以上高く発現してもよく、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、または1.9倍以上高く発現することが好ましい。
【0029】
当該細胞集団において、Mef2C遺伝子は、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準として、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、または3.5倍以上高く発現してもよい。
【0030】
当該細胞集団において、Tbx5遺伝子及びMYL2遺伝子から成る群から選択される1又は複数の遺伝子を発現していてもよい。例えば、当該細胞集団において、Tbx5遺伝子は、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準として、0.3倍以上、0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、または3.5倍以上高く発現してもよく、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、または3.5倍以上高く発現することが好ましい。また、例えば、当該細胞集団において、MYL2遺伝子は、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準として、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、または2.5倍以上高く発現してもよい。
【0031】
さらに、Nkx2.5、ELN及びTNNT2から成る群から選択される1又は複数の遺伝子を発現しなくてもよい。遺伝子を発現しないとは、全く発現しないことであってよく、実質的に発現しないことであってよい。実質的に発現しないとは、例えば、任意の測定方法によって発現量を測定したときに検出感度以下のことである。または、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準として、発現量が1.5倍未満、1.4倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満、1.1倍未満、1.0倍未満、0.9倍未満、0.8倍未満、0.7倍未満、0.6倍未満、0.5倍未満、0.4倍未満、0.3倍未満、0.2倍未満、0.1倍未満のことであってもよい。
【0032】
本実施形態の細胞集団は、上記発現する遺伝子と、上記発現しない遺伝子との、任意の組み合わせにより特徴付けられた細胞を含んでもよい。
【0033】
遺伝子発現割合は、当業者に既知の方法により測定することができ、例えばリアルタイムPCR法により測定することができる。リアルタイムPCR法に使用するプライマーや各種PCR試薬は、それぞれの遺伝子発現を測定することができる限り特に限定されない。当業者に既知の方法により製造してもよく、市販のプライマーや各種PCR試薬を用いてもよい。
【0034】
本実施形態の細胞集団は、発現する細胞表面抗原の種類と発現する遺伝子の種類との任意の組み合わせにより特徴づけられた細胞を含んでもよい。
【0035】
さらに、当該細胞集団は、任意の細胞内部抗原を発現する細胞を含んでもよい。細胞内
部抗原は、当業者に既知の方法により測定することができ、例えばフローサイトメトリ法により測定することができる。フローサイトメトリに使用する抗体はそれぞれの細胞表面抗原を検出することができる限り特に限定されない。当業者に既知の方法により製造してもよく、市販の抗体を用いてもよい。
【0036】
本実施形態の細胞集団は、HGF産生能が高められた細胞を含んでもよい。
【0037】
細胞培養時において、ヒト血清に代えてFBSを用いることにより、HGF産生能が高められたものであってもよい。
【0038】
HGF産生能が高められたことは、特に限定されないが、例えば前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量に基づき評価してもよく、そのときのHGF産生量が800pg/mL以上、1,000pg/mL以上、1,200pg/mL以上、2,000pg/mL以上、3,000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、又は10,000pg/mL以上であることによりHGF産生量が高められたと評価してもよく、1,000pg/mL以上、1,200pg/mL以上、2,000pg/mL以上、3,000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、又は10,000pg/mL以上であることによりHGF産生量が高められたと評価することが好ましい。
【0039】
HGF産生量の測定は、当業者に既知の方法により測定することができ、例えばELISA法により測定することができる。
【0040】
本実施形態の細胞集団は、免疫調節能及び/又は抗炎症能が高められた細胞を含んでもよい。
【0041】
細胞培養時において、ヒト血清に代えてFBSを用いることにより、免疫調節能及び/又は抗炎症能が高められたものであってもよい。
【0042】
免疫調節能及び/又は抗炎症能が高められたことは、特に限定されないが、例えばPBMCによるIFNγ産生を抑制する能力が高められたことであってよく、前記細胞集団とPBMCを、最終濃度5μg/mlのPHAの存在下で3日間共培養したときの、PBMC250,000細胞あたりのIFNγ産生量に基づき評価してもよい。例えば、前記細胞集団とPBMCを前記条件で培養したときの、PBMC250,000細胞あたりのIFNγ産生量が、対照心臓内幹細胞集団とPBMCを、同じ条件で3日間共培養したときの、PBMC250,000細胞あたりのIFNγ産生量と比較して、少ないことにより示されるものであってもよい。ここで、例えば、対照心臓内幹細胞集団がヒト小児由来心臓内幹細胞集団であって、当該対照心臓内幹細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、αMHC遺伝子を発現せず、ヒト成人心臓由来線維芽細胞集団における遺伝子発現量を基準としてGata4遺伝子の発現が1.0倍未満である細胞を用いてもよい。また、免疫調節能及び/又は抗炎症能が高められたことは、PBMCまたはT細胞の増殖を抑制する能力が高められたことであってよく、TNFαの産生を抑制する能力が高められたことであってよい。
【0043】
IFNγ産生量の測定は、当業者に既知の方法により測定することができ、例えばELISA法により測定することができる。
【0044】
本実施形態に係る細胞集団の製造方法は、少なくとも細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、かつ前記細胞集団がαMHC遺伝子を発現しないという特徴を有する限り特に限定されないが、例えば、以下の心臓
内幹細胞の単離工程、及び各培養工程(初代培養工程、拡大培養工程)を含むものであってよい。
【0045】
(心臓内幹細胞の単離)
心臓内幹細胞を単離することができる限り特に限定されないが、例えば、以下の方法により心臓内幹細胞を単離することができる。
ヒト由来の心臓組織を任意の大きさになるまでミンスし、細胞分散処理を行う。細胞分散処理は、例えばコラゲナーゼ等の組織分散試薬により行ってもよい。組織分散試薬には、DNase I溶液を含んでもよい。細胞分散処理後の細胞を含んだ液を遠沈管に回収し、例えば37℃でインキュベートしてもよい。
【0046】
心臓内幹細胞を単離する工程及び以下の各培養工程に用いられる培地は、心臓内幹細胞の培養に使用可能である限り特に限定されず、例えば、DMEM/F12等を使用することができる。
血清培地とする場合は、ウシ胎仔血清を添加することが好ましい。一方で、対照の心臓内幹細胞を培養するための血清培地としては、ヒト成人プール血清を添加するが好ましい。それぞれの培地における血清濃度は特に限定されないが、例えば1~20%としてもよく、5~15%としてもよい。
培地にはさらに任意の成分を添加してもよく、例えばbFGFやEGF等の成長因子、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、サイトカイン等を添加してもよい。
【0047】
各試薬の種類、濃度及び反応時間;遠心分離における回転速度、温度及び時間;並びに各処理におけるインキュベートの温度、時間等は、必要に応じて適宜調整することができる。
【0048】
単離工程において、任意で各処理の間に洗浄処理等を行ってもよい。
【0049】
(初代培養)
以下の培養工程は、単離された心臓内幹細胞を初代培養又は継代培養することができる限り、特に限定されない。なお、単離工程における血清培地でのインキュベート後、培養容器内から細胞を含有する上清液を回収して、単離された心臓内幹細胞とする。
単離された心臓内幹細胞を、CO2インキュベータ(例えば、37℃、5%CO2)で培養する。適時、培地を血清培地と交換しながら1日以上培養してもよい。培養期間は、培養した細胞が所望の細胞数となるまで、及び/又は培養した細胞が所望の機能が備わるまで等の目的に応じて培養時間や培養日数を適宜設定できる。
【0050】
(拡大培養)
初代培養の後、培養上清を除去する。トリプシン/EDTA溶液処理等の任意の細胞剥離処理を行う。血清培地を用いて細胞を回収し、新しい培養容器に播種後、CO2インキュベータ(例えば、37℃、5%CO2)で拡大培養を開始する。1~7日毎に血清培地を交換してもよい。培養期間は、培養した細胞が所望の細胞数となるまで、及び/又は培養した細胞が所望の機能が備わるまで等の目的に応じて培養時間や培養日数を適宜設定できる。
【0051】
単離工程において、任意で各処理の間に洗浄処理等を行ってもよい。
【0052】
さらに、得られた心臓内幹細胞は任意で凍結保存してもよい。この場合、使用時において任意の方法により解凍することができる。解凍培養やその後の継代培養は上記培養方法を援用することができる。
【0053】
ここで、特許文献1に記載される心臓内幹細胞は、ヒト心臓組織由来細胞を浮遊培養した後、スフェアーを形成した細胞を選択分離することにより得られた細胞である。その結果、特許文献1に記載される心臓内幹細胞を含む細胞集団は、本実施形態に係る細胞集団とは異なる特徴を有するものである。実際、特許文献1に開示される多能性幹細胞は、細胞表面抗原の陽性率が、c-kit:0.2%、CD34:0.8%、CD90:65.3%、CD105:87.5%であることなどが開示されている。また、特許文献1に記載される細胞は、細胞の分化誘導開始21日後の細胞の特徴として、Nkx-2.5、GATA4、ANP、α-ca-actin、TnT、MLC2v、MLC2a、α-MHC(α-myosin heavy chain)、β-MHC(β-myosin h
eavy chain)の遺伝子が発現することが開示されている。
一方で、本実施形態に係る細胞集団の製造方法は、浮遊状のスフェアーを形成させることなく、接着培養を行っている。また本実施形態に係る細胞集団の製造方法は、浮遊細胞を選択して分離することは行っていない。その結果、本実施形態の細胞集団における全細胞中に占めるCD105を発現している細胞の割合が70%以上であり、MYH6(αMHC)遺伝子を発現しないという特徴を有するものである。
【0054】
本実施形態の細胞集団は、心筋細胞への分化能を有する細胞、すなわち心筋前駆細胞を含んでもよい。
【0055】
心筋細胞への分化能を有することは、当該細胞集団に対して心筋細胞への分化誘導することにより評価できる。具体的には、分化誘導後の細胞が心筋細胞に特有の細胞表面抗原、例えばcTnT、Actinin等を発現することにより確認してもよい。また、分化誘導後の細胞が、心筋細胞の形態学的特性を有すること、例えばサルコメアを形成すること等により確認してもよい。また、分化誘導後の細胞が、心筋細胞の機能特性を有すること、例えば拍動することにより確認してもよい。
細胞表面抗原、形態学的特性、機能特性はいずれも、当業者に既知の方法により行うことができる。例えば分化誘導後の細胞と、心筋細胞特有の細胞表面抗原を認識する一次抗体とを反応させ、さらに蛍光標識された二次抗体を反応させた後、蛍光顕微鏡観察を行う方法を用いることができる。
分化誘導後の細胞が、細胞表面抗原、形態学的特性、機能特性のうちの少なくとも1つにおいて、心筋細胞としての特徴を有することにより、心筋細胞への分化が行われたと評価してもよいが、これらの全ての特徴を有するときに心筋細胞への分化が行われたと評価することが好ましい。
【0056】
ヒト心臓内幹細胞の心筋細胞への分化誘導方法は特に限定されないが、ヒト心臓内幹細胞を5-Azacytidine処理し、その後哺乳動物由来の心筋細胞と共培養させることにより行うことができる。
【0057】
5-Azacytidine処理に使用する培地は心臓内幹細胞又は心筋細胞を培養するのに適した培地であれば特に限定されず、例えば、上述の(心臓内幹細胞の単離)の項に記載した培地を基礎として用いることができる。この培地に5-Azacytidine等の心筋細胞への分化を開始させる因子を添加してもよい。5-Azacytidineの濃度は特に限定されず、例えば、1~20μMとしてもよく、5~15μMとしてもよい。
この5-Azacytidineを含有させた培地を用いて、CO2インキュベータ(例えば37℃、5%CO2)で約24時間培養することにより、5-Azacytidine処理することができる。
【0058】
哺乳動物由来の心筋細胞と共培養することは、特に限定されないが、マウス心筋細胞やヒト心筋細胞と共培養することが挙げられる。
予め培養しておいた哺乳動物の心筋細胞に、5-Azacytidine処理したヒト心臓内幹細胞を含む細胞懸濁液を添加して、CO2インキュベータ(例えば37℃、5%CO2)で培養することにより、心臓内幹細胞を心筋細胞に分化させることができる。
【0059】
ヒト心臓内幹細胞と哺乳動物の心筋細胞とを共培養させる培地は、心臓内幹細胞の心筋細胞への分化を阻害しない限り特に限定されず、例えば、上述の(心臓内幹細胞の単離)の項に記載した培地やDMEM-GlutaMAX等を使用することができ、またこれらの培地を任意の割合で混合して使用してもよい。
培地は、ウシ胎仔血清を添加することが好ましく、培地における血清濃度は、例えば1~20%としてもよく、5~15%としてもよい。
培地にはさらに任意の成分を添加してもよく、例えばbFGFやEGF等の成長因子、ペニシリン及びストレプトマイシン溶液等の抗生物質、サイトカイン等、フェノールレッド等の色素を添加してもよい。
【0060】
各試薬の種類、濃度及び反応時間;インキュベートの温度、時間等は、必要に応じて適宜調整することができる。
【0061】
培養期間は、培養した細胞が心筋細胞に分化する限り適宜設定できる。例えば、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上であってよく、また14日以下、10日以下であってよい。
【0062】
本発明の他の実施形態は、上述の細胞集団を含む組成物である。この組成物は医薬組成物として使用してもよい。
【0063】
組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述の心臓内幹細胞をトリプシン/EDTA溶液処理等の任意の細胞剥離処理を行った後、所望の細胞数で、市販の細胞保存液に懸濁することにより製造することができる。その後、必要に応じて、2~8℃で冷蔵保存してもよい。また、必要に応じて、凍結処理を行ってもよい。
【0064】
本実施形態の組成物に含まれる心臓内幹細胞の所望の細胞数とは、例えば1.0×102cells/mL以上、1.0×103cells/mL以上、1.0×104cells/mL以上、1.0×105cells/mL以上、5.0×106cells/mL以上、1.0×107cells/mL以上、1.0×108cells/mL以上としてもよく、また、1.0×1012cells/mL以下、1.0×1011cells/mL以下、1.0×1010cells/mL以下、1.0×109cells/mL以下としてもよい。また、これらの上限及び下限を組み合わせて一定の範囲とすることもでき、例えば、1.0×102cells/mL以上かつ1.0×1011cells/mL以下としてもよく、1.0×104cells/mL以上かつ1.0×1010cells/mL以下としてもよく、1.0×106cells/mL以上かつ1.0×108cells/mL以下としてもよい。細胞数は、疾患の種類や程度、及び患者の年齢、身長、体重等に応じて適宜調整してもよい。
【0065】
上述の細胞数の心臓内幹細胞を含む組成物の投与量は、例えば、0.1mL以上、0.5mL以上、1mL以上、2mL以上、3mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上としてもよく、また、20mL以下、15mL以下としてもよい。また、これらの上限及び下限を組み合わせて一定の範囲とすることもでき、例えば、例えば、0.1mL以上かつ20mL以下、0.5mL以上かつ15mL以下としてもよい。投与量は、疾患の種類や程度、及び患者の年齢、身長、体重等に応じて適宜調整してもよい。
【0066】
本実施形態の組成物を生体に投与又は移植する方法は、特に限定されないが、例えば注
射により投与できる。組成物を心臓組織及び/又はその周辺領域に直接投与又は移植することで、後述の心臓疾患の治療が可能となる。組成物は、静脈、動脈、リンパ管、リンパ節、骨髄へ投与してもよい。静脈、動脈、リンパ管への投与は、脈管内への注射によるものでもよく、カテーテルにより注入されるものでもよく、その他の既知の手法を用いてもよい。
注射の方法は特段限定されず、有針注射、無針注射等既知の注射手法を適用することができ、注入に用いるカテーテルの方法も既知の方法を適用することができ、特段限定されない。
【0067】
本実施形態の組成物は、上述の心臓内幹細胞を細胞シートを形成するように培養されたものであってもよい。細胞シートは、単層であってもよく、複数層であってもよい。細胞シートを形成させるように培養することは当業者に既知の方法により行うことができる。この場合の本実施形態の組成物の生体への投与又は移植は、例えば、細胞シートを形成するように培養された組成物を心臓表面に貼り付けることにより行うことができ、これにより後述の心臓疾患の治療が可能となる。
【0068】
培地に添加される血清は、ウシ胎仔血清又はヒト成人プール血清であってよく、培地における血清濃度は特に限定されないが、例えば1~20%としてもよく、5~15%としてもよい。
【0069】
培地にはさらに生理学的に許容される他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、生理食塩水、緩衝液、細胞保存液、凍結保存液等があげられる。
また、医薬効果を有する他の成分を追加で含んでもよい。
【0070】
本実施形態の組成物を患者に投与又は移植することにより、当該組成物中に含まれる心臓内幹細胞による治療効果が発揮できる。特に限定されないが、治療効果としては、例えば、投与した心臓内幹細胞が心臓組織において心筋細胞に分化することによって、心臓組織を再生する効果などが挙げられる。さらに、当該組成物はHGF産生能が高いものであり得るため、従来の心臓内幹細胞よりも心臓保護効果、抗アポトーシス効果、血管新生効果、心筋細胞の増殖促進等が高められていると考えられる。また、当該組成物は免疫調節・抗炎症作用が高いものであり得るため、従来の心臓内幹細胞よりも患者における投与時の副反応が少なくなると考えられ、また術後の心臓組織内における炎症の低減等が考えられる。
すなわち、当該組成物中に含まれる心臓内幹細胞が心筋細胞への分化能を有し得るものであり、心機能回復に効果を有するHGFを高産生するものであるから、そのような組成物を患者に投与することにより、副反応を低く抑えつつ、心臓組織の再生が必要な心臓疾患を治療できることが示唆され、また、心機能が低下している心臓における心機能を改善できることが示唆される。
【0071】
治療対象となる心臓疾患としては、例えば、虚血性心疾患、拡張型心筋症若しくは肥大型心筋症、又は単心室症を含む先天性心疾患等が挙げられる。
【0072】
組成物に含まれる細胞は、自己由来の細胞であってよく、例えば心臓疾患を患っている患者の心臓組織に由来する細胞であってよい。また、自己以外の細胞であってよく、例えば心臓細胞を提供するドナー由来の心臓組織に由来する細胞であってよい。投与時における副反応を抑制する観点から、自己由来の細胞であることが好ましい。
【0073】
本発明の別の実施形態としては、上記細胞集団を含む組成物を、心臓組織及び/又はその周辺領域に投与又は移植することにより、心臓疾患を治療する方法であり得る。
【0074】
本発明の別の実施形態としては、上記細胞集団を含む組成物の、心臓疾患治療のために心臓組織及び/又はその周辺領域に投与又は移植するための注射剤としての使用であり得る。
【実施例0075】
以下実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0076】
[実施例1 心臓内幹細胞の培養方法]
<無血清培地及び血清培地の調製>
ヒトbFGF(Fibroblast Growth Factor (basic),Human,recombinant)及びヒトEGF(Epidermal Growth Factor,Human,recombinant)をそれぞれ注射用水に溶解してbFGF溶液及びEGF溶液を調製した。bFGF溶液及びEGF溶液を各々終濃度が40ng/mL及び20ng/mLとなるようにDMEM/F12(DMEM/F-12,HEPES)に添加して無血清培地とした。
無血清培地に終濃度10%となるように血清を添加し、血清培地(PS-)を調製した。ペニシリン・ストレプトマイシン溶液を各々50units/mL・50μg/mLになるように血清培地(PS-)に添加し、血清培地(PS+)とした。
【0077】
<ヒト小児由来心臓組織からの心臓内幹細胞単離>
(工程1:ヒト小児由来心臓内幹細胞の単離)
ヒト小児から採取された心臓組織をDPBS(-)に浸け洗浄した後、当該組織をDPBS(-)で湿らせながらミンスした。DNase Iを注射用水で溶解し、DNase
I溶液を調製した。コラゲナーゼを注射用水で溶解し、DPBS(+)を用いて、コラゲナーゼ溶液を調製した。DNase I溶液をコラゲナーゼ溶液に添加し、組織分散試薬とした。組織分散試薬をミンスした組織に滴下した。細胞を含んだ組織分散試薬を遠沈管に回収し、37℃でインキュベートした。この細胞液をセルストレーナーでろ過して、遠沈管にろ液を回収した。回収した細胞液を遠心分離し、上清を除去し、37℃に加温した血清培地(PS+)1mLを加えて、ピペッティングにより細胞ペレットを懸濁した。この細胞懸濁液をフラスコに播種し、CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)でインキュベートした。
【0078】
(工程2:初代培養)
工程1でインキュベートしたフラスコから細胞を含有する上清液を回収して、単離心臓内幹細胞とし、CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で培養した。適時、培地を血清培地(PS-)と交換しながら3~14日培養した。
【0079】
(工程3:拡大培養)
初代培養を完了したフラスコの培養上清を除去し、DPBS(-)で培養面を洗浄した。1×トリプシン/EDTA溶液を加えて全体に馴染ませ、CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)でインキュベートした。血清培地(PS-)を用いて細胞を回収し、CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で拡大培養を開始した。適時、血清培地(PS-)を交換した。
【0080】
(工程4:凍結保存)
拡大培養が完了したフラスコの培養上清を除去し、
DPBS(-)で培養面を洗浄した後、1×トリプシン/EDTAを添加しインキュベートした。細胞の剥離を確認した後、無血清培地を加えて細胞懸濁液を50mL遠沈管に回収して遠心分離した。遠心後上清を除去し、血清培地(PS-)を添加してペレットを懸
濁した。細胞懸濁液の細胞数を測定し、血清培地(PS-)で適当に希釈した細胞懸濁液に等量の凍結保護液(CP-1)を加えて、凍結保存した。
【0081】
<本開示に係るヒト小児由来心臓内幹細胞(ロット:FBS-pCSC#1、FBS-pCSC#2)の作製方法>
上記工程1~4の方法に基づき、ヒト心臓組織からヒト心臓内幹細胞を培養及び凍結保存した(Passage No.2)。なお、血清としては、ウシ胎仔血清(BIOSERA、FB-1380又はHyClone、SH30084.03)を用いた。
凍結保存された細胞を、ウシ胎仔血清を用いて解凍培養し、継代培養により調製したヒト心臓内幹細胞を当該試験の被験細胞として使用した。
【0082】
<対照のヒト小児由来心臓内幹細胞(ロット:HS-pCSC#1)の作製方法>
上記工程1~4の方法に基づき、ヒト小児由来心臓組織からヒト小児由来心臓内幹細胞を製造及び凍結保存した(Passage No.2)。なお、血清としては、成人プール血清(Sigma、T6914)を用いた。
凍結保存された細胞を、ウシ胎仔血清を用いた解凍培養し、継代培養により調製したヒト心臓内幹細胞を当該試験の被験細胞として使用した。
【0083】
<ヒト成人由来心臓内幹細胞(ロット:aCSC#1)の作製方法>
ヒト成人から採取された心臓組織を用いて、上記<ヒト小児由来心臓組織からの心臓内幹細胞単離>の項に記載する工程1~4と同様の方法にて心臓内幹細胞を単離し保存し、継代培養により調製したヒト心臓内幹細胞を当該試験の被験細胞として使用した。なお、血清としては、ウシ胎仔血清を用いた。
【0084】
[実施例2 細胞表面抗原及び細胞内部抗原の発現解析]
細胞数測定結果に基づき、細胞懸濁液を1×10
6個/mLとなるように調製した被験細胞を用いて、当業者に既知の方法によって、フローサイトメトリにより細胞表面抗原及び細胞内部抗原の発現を測定した。その結果を表2及び3に示す。
使用した抗体を、表1に示す。
【表1】
その結果、ヒト小児由来心臓内幹細胞は、CD105の陽性細胞率は安定的に高く、CD45及びc-kitの陽性細胞率は安定的に低い傾向が示された。特にc-kitの陽性細胞率は、対照細胞(ロット:HS-pCSC#1)と比較して、低い値をとることが示された。また、FBS-pCSC#1及びFBS-pCSC#2の何れにおいても、SIRPA及びCD29の陽性細胞率は高いことが示された。
【表2】
一方で、ヒト成人由来心臓内幹細胞は、CD90の陽性細胞率が低く、CD31の陽性細胞率が高い傾向が確認され、ヒト小児由来心臓内幹細胞とは異なる細胞である可能性が示唆された。
【表3】
【0085】
[実施例3 遺伝子発現の解析]
調製した被験細胞を用いて、当業者に既知の方法によって、リアルタイムPCRにより遺伝子発現を解析した。その結果を表5に示す。
【表4】
ヒト成人心臓由来線維芽細胞(LONZA,NHCF-A,CC-2903)からなる細胞集団における各遺伝子発現量(beta-actinで標準化)を基準値1.0とした時の、各群における遺伝子の相対発現量を測定した。その結果、心筋分化転写因子として知られている遺伝子群(Nkx2.5、Gata4、Tbx5、Mef2C)のうち、Gata4及びTbx5おける相対発現量が、FBS-pCSC#1とFBS-pCSC#2においてそれぞれ1.0を超えていることを示した(表5)。また、心筋細胞マーカーとして知られているMYH6(αMHC)は検出感度以下であった(表中、N/Aで示す)。また、線維芽細胞マーカーとして知られているElastin(表中、ELNとして示す)はそれぞれ0.10倍(FBS-pCSC#1)及び0.18(FBS-pCSC#2)であった。
【表5】
【0086】
[実施例4 HGF産生量の測定]
<ヒト心臓内幹細胞の培養上清の調製>
被験細胞(ヒト心臓内幹細胞)を24-wellプレートに播種(培地量0.5mL/well)し、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)で3日間培養後、上清を回収した。
・播種細胞密度:0.63×104個/cm2、1.00×104個/cm2、1.25×104個/cm2、2.00×104個/cm2、2.50×104個/cm2、3.35×104個/cm2
【0087】
<HGF産生量の測定>
調製した培養上清を測定対象として、ELISAキット(HGF,Human,ELISA Kit,Quantikine,R&D Systems,DHG00B)を用いて培養上清中のHGF量を測定した。ELISAはキット製造元の手順に従って実施し、プレートリーダー(Bio-Rad Labratories,iMARK)で吸光度を測定後、Microplate Manager 6(BioRad)を用いて解析を行った。
【0088】
測定した定量結果を表6に示す。
その結果、いずれの播種細胞密度においても、FBSを用いて培養した心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1、FBS-pCSC#2)は、成人プール血清を用いて培養した心臓内幹細胞(HS-pCSC#1)と比べてHGF産生量が高い傾向が確認された。また、成人由来心臓内幹細胞(aCSC#1)のHGF産生量は定量下限未満であった。
【表6】
【0089】
[実施例5 ヒトPBMCとの共培養及びIFN-γ産生量の測定]
<ヒト心臓内幹細胞の播種・前培養>
被験細胞(ヒト心臓内幹細胞)を24-wellプレートに播種し(培地量1mL/well)、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)で一晩培養した。
・播種細胞密度:0.63×104個/cm2、1.25×104個/cm2、2.50×104個/cm2、3.75×104個/cm2
【0090】
<ヒト心臓内幹細胞とヒトPBMCの共培養>
PBMC(iQ Biosciences,IQB-PBMC102)を温浴37℃で解凍し、セルカウンターを用いて生細胞数を計測した。生細胞計測数の結果に基づき、PBMC培地(P/Sなし)を用いて、5×105個/900μLになるよう調製した。
調製したPBMCを「ヒト心臓内幹細胞の播種・前培養」で準備したヒト心臓内幹細胞を播種し前培養したwellに、900μL/well加えた。
PHA刺激ありのwellには、PHA(Sigma-Aldrich,L1668)を最終濃度5μg/mlとなるようPBMC培地(P/Sなし)で調製し(50μg/ml)、各wellに100μL/wellで添加した。PHA刺激なしのwellには、
PBMC培地(P/Sなし)を各wellに100μL/wellで添加した。
CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)で3日間培養後、上清を回収した。
【0091】
<IFN-gamma産生量の測定>
調製した培養上清を測定対象として、ELISAキット(abcam、ab46025)を用いて培養上清中のIFN-gamma量を測定した。ELISAはキット製造元の手順に従って実施し、プレートリーダーで吸光度を測定後、Microplate Manager 6(BioRad)を用いて解析を行った。
【0092】
<ヒト心臓内幹細胞とヒトPBMCの共培養によるIFN-gamma産生量の比較>
測定したIFN-gammaの定量結果を表7-1~表7-3に、相対産生量を
図1に示す。
PHA刺激ありの場合、ヒト心臓内幹細胞単独ではIFN-gammaを産生しなかった(表7-2)。また、PHA刺激ありの場合、PBMCはIFN-gammaを産生した(表7-1)。PHAによりT細胞が活性化されIFN-gammaが産生されたことが示唆された。すなわち、当該試験系で免疫調節・抗炎症作用を評価可能であることが示された。
PHA刺激なしの場合、PBMCとヒト心臓内幹細胞の共培養において、IFN-gammaの産生はほとんどみられなかった(表7-3)。すなわち、ヒト心臓内幹細胞は免疫原性が低い可能性が示唆された。
また、PHA刺激ありの場合、PBMCとヒト心臓内幹細胞の共培養において、ヒト心臓内幹細胞の播種細胞数依存的にIFN-gammaの産生量は減少した(表7-1)。すなわち、ヒト心臓内幹細胞が免疫調節作用及び/又は抗炎症作用を有することが示唆された。また、心臓内幹細胞播種細胞数がPBMC播種細胞数の1/20以上の場合、3症例の心臓内幹細胞のいずれにおいても90%以上のIFN-gamma産生が抑制された。すなわち、ヒト心臓内幹細胞の免疫調節及び/又は抗炎症作用は比較的強いことが示唆された。
さらに、FBSを用いて培養した心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1、FBS-pCSC#2)は、成人プール血清を用いて培養した心臓内幹細胞(HS-pCSC#1)と比べてIFN-gamma相対産生量が低いことが示された。すなわち、FBSを用いて培養した心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1、FBS-pCSC#2)は、IFN-gamma産生抑制能が高いことが示された。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0093】
[実施例6 心筋細胞への分化特性評価]
ヒト心臓内幹細胞の特性解析として、ヒト心臓内幹細胞の心筋細胞への分化特性を評価した。具体的には、ヒト心臓内幹細胞をマウス心筋細胞と共培養し、心筋細胞関連マーカーの発現、形態学的特性及び機能特性を確認した。
【0094】
<マウス心筋細胞の調製・播種・培養>
妊娠14日のマウス(BALB/cCrSlc)マウスを安楽死させ、胎生14日齢マウス胎仔より心臓を摘出した。小型剪刀を用いて摘出した心臓の一部を切開し、内部を洗浄後、0.05%トリプシン/EDTA溶液中で37℃、10分間振盪した。0.05%トリプシン/EDTA溶液の濁りを確認後、細胞懸濁液を回収し、さらに同様の手順を繰り返して細胞懸濁液を回収した。回収した細胞懸濁液を遠心分離して上清を除去し、細胞ペレットをマウス心筋細胞培地で懸濁した。
細胞懸濁液を100μmセルストレーナーでろ過し、ガラスペトリディッシュ(Duran,217554804)に播種した。CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で60分間インキュベートした後、非接着細胞を含む培地を50mL遠沈管に回収し、線維芽細胞を除去した。
調製したマウス心筋細胞を、Gelatinコーティング済のチャンバーカバー(8well)の各wellに、1.0×105個/cm2の細胞密度で播種した(培地量:0.3mL/well)。ヒト心臓内幹細胞の単独培養に使用するwellには同量の培地のみを添加した。CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で約24時間培養した。
【0095】
<ヒト心臓内幹細胞の心筋細胞への分化誘導>
1.5-Azacytidine(以下、5-AzaCともいう)処理
解凍培養したヒト心臓内幹細胞の培地(10%FBS培地)を全量吸引除去し、10μM 5-AzaC含有10%FBS培地に置換した(10mL/75cm2フラスコ)。CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で約24時間培養した。
2.分化誘導用ヒト心臓内幹細胞の調製
75cm2フラスコ内の細胞を回収し、細胞懸濁液の一部をサンプリングしてセルカウンターを用いて生細胞数を計測した。細胞懸濁液全量を遠心分離し、上清を吸引除去し、心筋分化誘導培地を適量添加し、分化誘導用ヒト心臓内幹細胞の細胞懸濁液を調製した。なお、心筋分化誘導培地(phenol red含有)は、10%FBS培地とマウス心筋細胞培地(phenol red含有)を1:1の割合で混合して調製した。
3.マウス心筋細胞との共培養
・24時間培養したマウス心筋細胞の各wellに、チャンバーカバー内の液量と同量(0.3mL/well)の分化誘導用ヒト心臓内幹細胞懸濁液(5×104個/cm2)を添加した(培地総量:0.6mL/well)。
・ヒト心臓内幹細胞の単独培養は、マウス心筋細胞を播種していないwellに、5×104個/cm2の細胞密度で分化誘導用ヒト心臓内幹細胞懸濁液を添加した。
・CO2インキュベータ(37℃、5%CO2)で共培養及び単独培養を開始した。
・共培養3日後及び5日後の細胞を位相差顕微鏡下又は蛍光顕微鏡下で機能としての拍動について観察した後、心筋細胞関連マーカーの発現解析及び形態学的特性解析に供した。
【0096】
<免疫染色による心筋細胞関連マーカーの確認>
各細胞を培養したチャンバーカバーから培地を除去し、4%PFA溶液にて室温で15分間インキュベートして細胞を固定した。次に、0.1%Triton-X溶液にて、細胞膜透過処理を行った。表8に示す抗体にて、室温で1時間一次抗体反応を行い、表9に示す抗体にて、室温で30分間(遮光)二次抗体反応を行った。なお、ブロッキング液は、1%BSAを添加したPBS-T溶液を用いた。
【表8】
【表9】
また、各染色はDAPI溶液にて行った。
免疫染色した各wellに、適量の蛍光退色防止剤含有封入液を添加して、蛍光顕微鏡(株式会社キーエンス,BZ-X710)を用いて、抗体染色結果を観察した(対物レンズ20倍で撮像)。
【0097】
<ヒト心臓内幹細胞の分化特性評価結果の概要>
ヒト心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1及びFBS-pCSC#2)の分化特性評価結果の概要を表10に示す。なお、表10中、心筋細胞関連マーカーの発現において、「+」は観察した視野内にLamin陽性かつcTnT陽性細胞又はLamin陽性かつActinin陽性細胞が確認できたことを示し、「-」は観察した視野内にLamin陽性かつcTnT陽性細胞又はLamin陽性かつActinin陽性細胞がいずれも確認できなかったことを示す。また、形態学的特性に関して、「+」はサルコメアの形成が確認できたことを示し、「-」はサルコメアの形成が確認できなかったことを示す。また、機能特性に関して、「+」は拍動細胞が確認できたことを示し、「-」は拍動細胞が確認できなかったことを示す。
【表10】
【0098】
<心筋細胞関連マーカーの発現>
被験細胞であるヒト心臓内幹細胞をマウス心筋細胞と共培養し、共培養開始から3日後及び5日後に免疫染色を実施し、ヒト細胞特異的抗原であるLamin、心筋細胞関連マーカーであるCardiac Troponin T(以下、cTnT)及びα-Actinin(以下、Actinin)の発現を確認した。
そのときの免疫染色像を
図2及び
図3に示す。
図2は、マウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養開始5日後における心筋細胞関連マーカー(cTnT)の発現を示し、
図3はマウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養開始5日後における心筋細胞関連マーカー(Actinin)の発現を示す。
また、ヒト心臓内幹細胞に対しても、免疫染色を実施した。その結果、単独培養したヒト心臓内幹細胞においてLaminの発現は確認されたが、心筋細胞関連マーカーの発現は確認されなかった。
【0099】
<形態学的特性>
図2及び
図3に示した通り、マウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養において、ヒト心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1及びFBS-pCSC#2)はいずれも培養開始
3日後及び5日後において、サルコメア(横紋構造)の形成が観察できた。一方で、単独培養したヒト心臓内幹細胞では、サルコメアの形成も観察されなかった。
【0100】
<機能特性>
マウス心筋細胞とヒト心臓内幹細胞の共培養において、ヒト心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1及びFBS-pCSC#2)はいずれも培養開始3日後及び5日後において、拍動が確認できた。
【0101】
以上より、ヒト心臓内幹細胞(FBS-pCSC#1及びFBS-pCSC#2)はいずれも、心筋細胞への分化特性として、マウス心筋細胞との共培養により、心筋細胞関連マーカーであるcTnT及びActininを発現することが示された。また、形態学的特性としてはサルコメアを形成することが示され、機能特性としては拍動することが示された。
前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が800pg/mL以上であることにより示される、請求項2に記載の細胞集団。
前記HGF産生能が高められたことが、前記細胞集団を3日間培養したときの10,000細胞あたりのHGF産生量が1,000pg/mL以上であることにより示される、請求項2に記載の細胞集団。
前記細胞集団における全細胞中に占めるSIRPA、CD45、c-kit及びCD29を発現している細胞の割合がそれぞれ60%以上、5%以下、10%以下及び80%以上である、請求項1に記載の細胞集団。