IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-多段培養容器 図1
  • 特開-多段培養容器 図2
  • 特開-多段培養容器 図3
  • 特開-多段培養容器 図4
  • 特開-多段培養容器 図5
  • 特開-多段培養容器 図6
  • 特開-多段培養容器 図7
  • 特開-多段培養容器 図8
  • 特開-多段培養容器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120547
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】多段培養容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/14 20060101AFI20240829BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12M 3/04 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12M1/14
C12M1/00 C
C12M3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027406
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】足立 真彩
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA02
4B029AA08
4B029CC02
4B029CC08
4B029DG01
4B029DG06
4B029DG08
4B029EA16
4B029GB02
4B029GB03
4B029GB04
4B029GB05
(57)【要約】
【課題】細胞懸濁液を各貯留空間に均等に分配でき、分配後の細胞懸濁液の移動も抑制できる多段培養容器を提供する。
【解決手段】容器本体10内に複数の培養部30が一方向に沿って配置された多段培養容器1であって、培養部30は、それぞれ液体を貯留する貯留空間35を形成し、容器本体10は、貯留空間35に面し、互いに隣接する貯留空間35を連通させる連通部33を有し、連通部33の開放状態と閉塞状態とを切り替える閉塞機構部40を備える多段培養容器1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に複数の培養部が一方向に沿って配置された多段培養容器であって、
前記培養部は、それぞれ液体を貯留する貯留空間を形成し、
前記容器本体は、前記貯留空間に面し、互いに隣接する前記貯留空間を連通させる連通部を有し、
前記連通部の開放状態と閉塞状態とを切り替える閉塞機構部を備える多段培養容器。
【請求項2】
前記容器本体は、着脱可能なキャップを取り付けて閉塞できる開口部を備え、
前記閉塞機構部は、前記キャップの前記開口部に対する着脱に伴って移動する可動部と、前記キャップを前記開口部に取り付けたことによる前記可動部の移動に伴って、前記連通部を開放状態から閉塞状態に切り替える閉塞部と、を有する請求項1に記載の多段培養容器。
【請求項3】
前記閉塞機構部の前記閉塞部は、前記キャップを前記開口部から取り外したことによる前記可動部の移動に伴って、前記連通部を閉塞状態から開放状態に切り替える請求項2に記載の多段培養容器。
【請求項4】
前記培養部は、面状の底壁と、該底壁から一方に向かって立ち上がる側壁と、によって前記貯留空間を形成し、
前記連通部は、前記底壁に形成される請求項2または3に記載の多段培養容器。
【請求項5】
前記開口部は、前記底壁の面方向と直交する面方向に沿って延びる前記容器本体の容器側壁に形成される請求項4に記載の多段培養容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養するための培養部を複数備えた多段培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を含む細胞懸濁液を貯留する複数の培養部を積層配置した多段培養容器が知られている。多段培養容器は、細胞懸濁液の入口となる開口部を一つの面に備え、内部には培養部が一定の間隔を有して離隔配置されている。それぞれその培養部は、細胞懸濁液を貯留できるように、他の培養部と対向する底壁と、底面の端部から他の培養部側に向かって突出する側壁とを有している。培養部は、底壁と側壁および容器側壁とに囲まれた貯留空間を形成する。
【0003】
各貯留空間は、多段培養容器内において連通している。多段培養容器を縦向きにした状態で開口部から注入された細胞懸濁液は、各貯留空間にまたがって多段培養容器の下部に貯留される。この後、多段培養容器を横向きにすることで、細胞懸濁液が各培養部の貯留空間に分配される。このような多段培養容器として、例えば特許文献1に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-186488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞を適正に培養するためには、各培養部に均等に細胞懸濁液が分配されることが必要である。多段培養容器では、前述のように、細胞懸濁液を容器内に注入した後、多段培養容器を縦向きから横向きに倒し、細胞懸濁液を各貯留空間に分配するが、多段培養容器を傾ける角度や縦向きから横向きに倒す速度などによっては、細胞懸濁液を各貯留空間に均等に分配できないことがある。また、多段培養容器を運搬する際、容器が傾くことにより細胞懸濁液が他の貯留空間に移動して均一性が失われる可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、細胞懸濁液を各貯留空間に均等に分配でき、分配後の細胞懸濁液の移動も抑制できる多段培養容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する(1)多段培養容器は、容器本体内に複数の培養部が一方向に沿って配置された多段培養容器であって、前記培養部は、それぞれ液体を貯留する貯留空間を形成し、前記容器本体は、前記貯留空間に面し、互いに隣接する前記貯留空間を連通させる連通部を有し、前記連通部の開放状態と閉塞状態とを切り替える閉塞機構部を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した多段培養容器は、液体の注入時には連通部を開放状態とし、液体を注入したら連通部を閉塞状態とすることで、各貯留空間に均等に液体を分配することができる。このため、各培養部に細胞を均等に播種し、細胞の培養を均質に進めることができる。また、多段培養容器は、運搬時において各貯留空間間を連通させる連通部33を閉塞状態とできるため、液体が他の貯留空間に移動して均一性が失われることを抑制できる。
【0009】
(2)上記(1)の多段培養容器において、前記容器本体は、着脱可能なキャップを取り付けて閉塞できる開口部を備え、前記閉塞機構部は、前記キャップの前記開口部に対する着脱に伴って移動する可動部と、前記キャップを前記開口部に取り付けたことによる前記可動部の移動に伴って、前記連通部を開放状態から閉塞状態に切り替える閉塞部と、を有してもよい。これにより、液体を注入した後、キャップを容器本体に取り付けることで、特別な操作を行うことなく連通部を閉塞できるので、細胞を播種する作業を簡単にすることができる。
【0010】
(3)上記(2)の多段培養容器において、前記閉塞機構部の前記閉塞部は、前記キャップを前記開口部から取り外したことによる前記可動部の移動に伴って、前記連通部を閉塞状態から開放状態に切り替えるようにしてもよい。これにより、液体を取り出す際に、キャップを容器本体から取り外すことで、特別な操作を行うことなく連通部を開放できるので、培養した細胞を取り出す作業を簡単にすることができる。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの多段培養容器において、前記培養部は、面状の底壁と、該底壁から一方に向かって立ち上がる側壁と、によって前記貯留空間を形成し、前記連通部は、前記底壁に形成されてもよい。これにより、底壁の連通部を塞ぐことで連通部を閉塞できるため、閉塞機構部の構造を簡易化できる。
【0012】
(5)上記(4)の多段培養容器において、前記開口部は、前記底壁の面方向と直交する面方向に沿って延びる前記容器本体の容器側壁に形成されてもよい。これにより、キャップの容器本体への着脱に伴う移動を連通部の開閉動作に容易に変換することができ、閉塞機構部の構造を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における多段培養容器の斜視図である。
図2】キャップを取り外した状態の多段培養容器の断面図である。
図3】キャップを取付けた状態の多段培養容器の断面図である。
図4】多段培養容器に細胞懸濁液を収納するステップを表す図であって、(a)はキャップを取り外した縦向きの多段培養容器に細胞懸濁液を注入した状態を、(b)は(a)の状態から多段培養容器にキャップを取付けた状態を、(c)は(b)の状態から多段培養容器を横向きにした状態を、それぞれ表した図である。
図5】第1変形例に係る多段培養容器の断面図である。
図6図5と直交する平面で切断した多段培養容器の断面図である。
図7図6の状態からキャップを取付けた状態の多段培養容器の断面図である。
図8】第2変形例に係る多段培養容器の断面図である。
図9】多段培養容器の部分拡大断面図であって、(a)はキャップを取り外した状態を、(b)はキャップを取付けた状態を、それぞれ表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
本実施形態の多段培養容器1は、生体から採取された組織から得られた細胞を含む細胞懸濁液を貯留し、細胞を増殖させるために用いられる。図1に示すように、多段培養容器1は、着脱可能なキャップ12を取り付けられる容器本体10を備えている。容器本体10の内部には、複数の培養部30が一方向に沿って配置されている。培養部30は、それぞれ細胞懸濁液を貯留する貯留空間35を形成する。本実施形態において培養部30は、6つが設けられる。ただし、培養部30の数は2つ以上であれば任意の数とすることができる。
【0016】
容器本体10は、培養部30が面する方向と同じ方向を向いている第1容器側壁20および第2容器側壁21と、第1容器側壁20および第2容器側壁21と直交する面方向に延び、キャップ12を取り付ける第3容器側壁22と、第3容器側壁22と対向する第4容器側壁23と、第1容器側壁20および第2容器側壁21と第3容器側壁22および第4容器側壁23と直交する面方向に延びる第5容器側壁24および第6容器側壁25と、を有している。図1において多段培養容器1は、第1容器側壁20と第2容器側壁21が天地方向を向き、第2容器側壁21が下となるように置かれている。多段培養容器1が図1のように置かれている状態を、多段培養容器1を横向きにした状態と称する。また、多段培養容器1が、第3容器側壁22と第4容器側壁23が天地方向を向き、第4容器側壁23が下となるように置かれている状態を、多段培養容器1を縦向きにした状態と称する。
【0017】
図2に示すように、容器本体10は、第3容器側壁22に突出部26を有し、突出部26の先端面が容器本体10の内部と連通する開口部27となっている。キャップ12は、突出部26に被せることができるように、一方側が開口した形状を有している。キャップ12は、容器本体10に取り付けられるのに伴い、容器本体10側の端面12aが容器本体10に向かうように移動する。
【0018】
容器本体10の内部に設けられる培養部30は、第1容器側壁20および第2容器側壁21と平行な面状に形成された底壁31と、底壁31の端部から第1容器側壁20側に向かって立ち上がる側壁32と、を有している。培養部30には、底壁31と側壁32によって囲まれた貯留空間35が形成される。細胞の培養時において細胞懸濁液は、貯留空間35に貯留される。
【0019】
底壁31の第4容器側壁23側の端部付近には、互いに隣接する貯留空間35を連通させる貫通孔である連通部33が形成されている。連通部33は、多段培養容器1を縦向きとした状態において、底面となる第4容器側壁23付近に形成されているため、多段培養容器1を縦向きとした状態で細胞懸濁液を容器本体10内に注入した際に、連通部33によって細胞懸濁液を各培養部30にまたがって流通させ、容器本体10の全体に渡って一定の液位で貯留することができる。
【0020】
多段培養容器1は、キャップ12の着脱に伴って連通部33の閉塞状態と開放状態とを切り替える閉塞機構部40を備えている。閉塞機構部40は、キャップ12の開口部27に対する着脱に伴って移動する可動部41と、キャップ12を開口部27に取り付けたことによる可動部41の移動に伴って、連通部33を開放状態から閉塞状態とする閉塞部42と、を有している。
【0021】
可動部41は、容器本体10の外部に露出し突出部26に沿って配置される受圧部43と、受圧部43から容器本体10の内部側に延びる移動部45と、を有している。受圧部43と容器本体10の第3容器側壁22との間には、弾性部材44が設けられ、受圧部43が第3容器側壁22側に移動した際に、受圧部43を元の位置に戻る方向に付勢する。容器本体10には、移動部45が当該容器本体10を貫通する部分にシール部材16が設けられる。
【0022】
移動部45は、容器本体10の内部において、底壁31が第2容器側壁21によって形成されている最下段の培養部30以外の培養部30に対応した数、すなわち5つの分岐部46に分岐している。分岐部46は、それぞれ底壁31の下側に沿って第4容器側壁23側に向かって延び、先端部には閉塞部42が設けられている。閉塞部42は、連通部33を塞ぐことのできる閉塞面部42aを有している。開口部27が開放された状態において、閉塞部42は連通部33を閉塞しないように、連通部33より第3容器側壁22側に配置されている。
【0023】
図3に示すように、キャップ12を開口部27に取り付けると、キャップ12の端面12aによって受圧部43は容器本体10の第3容器側壁22に近接するように移動する。これにより、移動部45および分岐部46は、容器本体10の内部において第4容器側壁23の側に向かって移動する。このため、分岐部46の先端部に設けられている閉塞部42も第4容器側壁23の側に移動し、閉塞面部42aが底壁31の連通部33を閉塞する。すなわち、閉塞機構部40は、連通部33を開放状態から閉塞状態に切り替える。閉塞部42によって連通部33が閉塞されることで、隣接する貯留空間35の間で細胞懸濁液が流通することができなくなる。
【0024】
キャップ12を容器本体10に取り付けた状態から、キャップ12を取り外すと、弾性部材44の付勢力によって受圧部43は容器本体10の第3容器側壁22から離れる方向に移動し、移動部45および分岐部46も第4容器側壁23から第3容器側壁22に向かう方向に移動する。これによって、閉塞部42も第3容器側壁22の側に向かって移動し、連通部33を開放する。すなわち、閉塞機構部40は、連通部33を閉塞状態から開放状態に切り替える。連通部33が開放されることで、隣接する貯留空間35の間で細胞懸濁液が流通することができる。
【0025】
細胞懸濁液100を多段培養容器1に注入して各培養部30に均等に分配する方法について説明する。図4(a)に示すように、まず、キャップ12を取り外した多段培養容器1を縦向きとして、開口部27が上方を向くように配置する。次に、開口部27から細胞懸濁液100を容器本体10内に注入する。注入された細胞懸濁液100は、開放された状態の連通部33により、隣接する貯留空間35の間を流通し、容器本体10の全体に渡って一定の液位となる。
【0026】
次に、図4(b)に示すように、容器本体10にキャップ12を取り付ける。これにより、閉塞機構部40が動作し、閉塞部42によって連通部33が閉塞される。次に、図4(c)に示すように、多段培養容器1を縦向きから横向きとなるように倒す。閉塞部42によって各貯留空間35間は遮断されており、それぞれの貯留空間35には同量の細胞懸濁液100が存在していることから、各培養部30に均等に細胞懸濁液100が分配される。培養部30に細胞懸濁液100が均等に分配されることで、各培養部30における細胞の培養を均質に進めることができる。細胞懸濁液100が培養部30に均等に分配されていないと、一部の培養部30で部分的なコンフルエントが発生し、細胞の増殖が停止して培養効率が低下する可能性があるが、本実施形態の多段培養容器1は、培養部30に細胞懸濁液100が均等に分配されることから、これを抑制できる。また、培養部30に細胞懸濁液100が均等に分配されることにより、細胞観察像からの培養予測をより正確にすることができる。ここで、培養予測とは、例えばコンフルエントの度合い、細胞数、倍加時間、純度などの予測のことである。
【0027】
また、多段培養容器1は、細胞懸濁液100を注入した後、キャップ12を取り付けて倒すだけで確実に細胞懸濁液100を培養部30に均等に分配できるため、熟練を必要とすることなく、個人差なく細胞を各培養部30に均一に播種することができる。さらに、多段培養容器1は、運搬時においても、各貯留空間35間を連通させる連通部33が閉塞された状態であることから、細胞懸濁液100が他の貯留空間35に移動して均一性が失われることを抑制できる。
【0028】
次に、第1変形例に係る多段培養容器50について説明する。先に説明した多段培養容器1と異なるのは、閉塞機構部60の構成であるため、それ以外の構成については説明を省略する。図5図6に示すように、閉塞機構部60は、キャップ12の開口部27に対する着脱に伴って移動する可動部61と、キャップ12を開口部27に取り付けたことによる可動部61の移動に伴って、連通部33を開放状態から閉塞状態とする閉塞部62と、を有している。
【0029】
可動部61は、容器本体10の外部に露出し突出部26に沿って配置される2つの受圧部63と、受圧部63から容器本体10の内部側に延びる移動部65と、を有している。移動部65は、容器本体10の内部において合流している。受圧部63と容器本体10の第3容器側壁22との間には、弾性部材64が設けられ、受圧部63が第3容器側壁22側に移動した際に、受圧部63を元の位置に戻る方向に付勢する。
【0030】
移動部65の先端部には、第1容器側壁20と第2容器側壁21とが向かい合う方向に沿って延びる棒状部65aが設けられている。この棒状部65aには、各培養部30に対応して移動部65に対し回動可能に支持された複数の連動回動部66が接続されている。それぞれの連動回動部66の他端側は、それぞれの底壁31に回転可能に支持された回転体67に回動可能に支持されている。回転体67は、駆動紐部68を介して連通部33の下部に設けられた閉塞部62と連係している。閉塞部62は、キャップ12を容器本体10に取り付けていない状態において、開放状態である。閉塞部62は、回転に伴い開閉可能な閉塞羽根部62aを有している。閉塞羽根部62aは、例えば虹彩絞り機構などにより、回転に伴い開閉することができる。
【0031】
図7に示すように、キャップ12を容器本体10に取り付けると、キャップ12の端面12aによって受圧部63は容器本体10の第3容器側壁22に近接するように移動する。これにより、移動部65は、容器本体10の内部において第4容器側壁23の側に向かって移動する。この動作により、連動回動部66を介して回転体67が回転する。回転体67が回転すると、駆動紐部68によって閉塞部62の外周部も回転し、これによって閉塞羽根部62aが閉じ、連通部33を開放状態から閉塞状態に切り替えることができる。
【0032】
キャップ12を容器本体10から取り外したら、弾性部材64の付勢力によって、受圧部63は第3容器側壁22から離れる方向に移動する。これに伴い、移動部65が連動回動部66を介してキャップ12を取り付けた際とは逆方向に回転体67を回転させ、駆動紐部68によって閉塞部62の外周部を回転させる。これによって、閉塞羽根部62aが開いて、連通部33を閉塞状態から開放状態に切り替えることができる。
【0033】
次に、第2変形例に係る多段培養容器70について説明する。先に説明した多段培養容器1と異なるのは、閉塞機構部80の構成であるため、それ以外の構成については説明を省略する。図8に示すように、閉塞機構部80は、キャップ12の開口部27に対する着脱に伴って移動する可動部81と、キャップ12を開口部27に取り付けたことによる可動部81の移動に伴って、連通部33を開放状態から閉塞状態とする閉塞部82と、を有している。
【0034】
可動部81は、容器本体10の外部に露出し突出部26に沿って配置される受圧部83と、受圧部83から容器本体10の内部側に延びる移動部85と、を有している。受圧部83と容器本体10の第3容器側壁22との間には、弾性部材84が設けられ、受圧部83が第3容器側壁22側に移動した際に、受圧部83を元の位置に戻る方向に付勢する。
【0035】
移動部85は、容器本体10内で容器本体10の第4容器側壁23の側に向かって延びている。図9(a)に示すように、容器本体10には、当該容器本体10に対して回転可能な第1歯車部86と第2歯車部87が設けられている。第1歯車部86と第2歯車部87は、駆動紐部88によって連係している。移動部85は、先端部に第1歯車部86と噛み合う凹凸部85aを有している。
【0036】
各連通部33の近傍には、それぞれ閉塞面部82aを有する閉塞部82が配置されている。閉塞部82は、キャップ12が容器本体10に取り付けられていない状態において、連通部33から離隔して位置している。このため、この状態において連通部33は開放状態である。閉塞部82は、棒状の連結体89によって連結されている。連結体89は、第2歯車部87と噛み合う凹凸部89aを有している。
【0037】
図9(b)に示すように、キャップ12を容器本体10に取り付けると、キャップ12の端面12aによって受圧部83は容器本体10の第3容器側壁22に近接するように移動する。これにより、移動部85は、容器本体10の内部において第4容器側壁23の側に向かって移動する。移動部85の移動により、凹凸部85aと噛み合う第1歯車部86が回転し、駆動紐部88を介して第2歯車部87も回転する。第2歯車部87が回転すると、凹凸部89aが噛み合う連結体89が下方に移動し、連結体89に設けられている閉塞部82の閉塞面部82aが連通部33を閉塞する。
【0038】
キャップ12を容器本体10から取り外したら、弾性部材84の付勢力によって、受圧部83は第3容器側壁22から離れる方向に移動する。これに伴い、移動部85が第3容器側壁22の側に向かって移動し、第1歯車部86と第2歯車部87がキャップ12を取り付けた際とは逆方向に回転し、連結体89を上方に移動させる。これによって、閉塞部82が連通部33から離れ、連通部33を閉塞状態から開放状態に切り替えることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る(1)多段培養容器1は、容器本体10内に複数の培養部30が一方向に沿って配置された多段培養容器1であって、培養部30は、それぞれ液体を貯留する貯留空間35を形成し、容器本体10は、貯留空間35に面し、互いに隣接する貯留空間35を連通させる連通部33を有し、連通部33の開放状態と閉塞状態とを切り替える閉塞機構部40を備える。このように構成した多段培養容器1は、液体の注入時には連通部33を開放状態とし、液体を注入したら連通部33を閉塞状態とすることで、各貯留空間35に均等に液体を分配することができる。このため、各培養部30に細胞を均等に播種し、細胞の培養を均質に進めることができる。また、多段培養容器1は、運搬時において各貯留空間35間を連通させる連通部3333を閉塞状態とできるため、液体が他の貯留空間35に移動して均一性が失われることを抑制できる。
【0040】
(2)上記(1)の多段培養容器1において、容器本体10は、着脱可能なキャップ12を取り付けて閉塞できる開口部27を備え、閉塞機構部40は、キャップ12の開口部27に対する着脱に伴って移動する可動部41と、キャップ12を開口部27に取り付けたことによる可動部41の移動に伴って、連通部33を開放状態から閉塞状態に切り替える閉塞部42と、を有してもよい。これにより、液体を注入した後、キャップ12を容器本体10に取り付けることで、特別な操作を行うことなく連通部33を閉塞できるので、細胞を播種する作業を簡単にすることができる。
【0041】
(3)上記(1)または(2)の多段培養容器1において、閉塞機構部40の閉塞部42は、キャップ12を開口部27から取り外したことによる可動部41の移動に伴って、連通部33を閉塞状態から開放状態に切り替えるようにしてもよい。これにより、液体を取り出す際に、キャップ12を容器本体10から取り外すことで、特別な操作を行うことなく連通部33を開放できるので、培養した細胞を取り出す作業を簡単にすることができる。
【0042】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの多段培養容器1において、培養部30は、面状の底壁31と、該底壁31から一方に向かって立ち上がる側壁と、によって貯留空間35を形成し、連通部33は、底壁31に形成されてもよい。これにより、底壁31の連通部33を塞ぐことで連通部33を閉塞できるため、閉塞機構部40の構造を簡易化できる。
【0043】
(5)上記(4)の多段培養容器1において、開口部27は、底壁31の面方向と直交する面方向に沿って延びる容器本体10の容器側壁22に形成されてもよい。これにより、キャップ12の容器本体10への着脱に伴う移動を連通部33の開閉動作に容易に変換することができ、閉塞機構部40の構造を簡易化できる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態では、キャップ12を容器本体10に着脱するのに伴い、閉塞機構部40が動作して連通部33の開放状態と閉塞状態とが切り替わるが、容器本体10に切替操作部を設け、切替操作部の操作に伴って閉塞機構部40が動作するようにしてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態では、連通部33は底壁31に設けられているが、連通部33は貯留空間35に面していればよく、底壁31以外の位置に設けられてもよい。例えば、連通部33は、底壁31から立ち上がる凸部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 多段培養容器
10 容器本体
12 キャップ
12a 端面
16 シール部材
20 第1容器側壁
21 第2容器側壁
22 第3容器側壁
23 第4容器側壁
24 第5容器側壁
25 第6容器側壁
26 突出部
27 開口部
30 培養部
31 底壁
32 側壁
33 連通部
35 貯留空間
40 閉塞機構部
41 可動部
42 閉塞部
42a 閉塞面部
43 受圧部
44 弾性部材
45 移動部
46 分岐部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9