(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120549
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240829BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20240829BHJP
F16K 31/18 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F02M37/00 301E
B60K15/035 A
F02M37/00 311K
F16K31/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027408
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近 拓馬
【テーマコード(参考)】
3D038
3H068
【Fターム(参考)】
3D038CA22
3D038CB01
3D038CC04
3H068AA01
3H068BB66
3H068BB83
3H068DD12
3H068FF06
3H068FF09
3H068GG07
(57)【要約】
【課題】燃料が揺動したとき、燃料タンク外への燃料漏れを効果的に抑制することができる燃料タンク用弁装置を提供する。
【解決手段】この燃料タンク用弁装置10は、仕切壁30、開口33を有するハウジング15と、フロート弁70とを有し、ハウジング15の底部には、ハウジング15の軸方向に開口する軸方向開口部43を有する環状壁44と、軸方向開口部43の内側且つ、環状壁44の上方に配置された遮蔽壁45とが設けられ、環状壁44と遮蔽壁45とによって、ハウジング15の径方向に開口する径方向開口部46が形成され、遮蔽壁45には、軸方向開口部43から流入した燃料を径方向開口部46へと誘導する第1誘導面45cが、軸心から遮蔽壁45の外縁45eに亘って形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成されたハウジングと、
前記弁室に昇降可能に収容され、前記開口を開閉するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、前記フロート弁を支持する底部を有しており、
前記底部は、
前記ハウジングの軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内及び前記弁室を互いに連通させる軸方向開口部を設けた環状壁と、
前記環状壁の上方で、前記軸方向開口部と対向する様に配置された遮蔽壁とを有しており、
前記環状壁と前記遮蔽壁とによって、前記ハウジングの径方向に開口し且つ前記弁室に連通する径方向開口部が形成されており 、
前記遮蔽壁には、前記軸方向開口部から流入した燃料を前記径方向開口部へと誘導可能とする第1誘導面が、軸心から前記遮蔽壁の外縁に亘って形成されていることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記軸心を通る径方向断面において、径方向に見て、前記径方向開口部は、露出する様に構成されている請求項1記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記環状壁は、前記環状壁の外周端から径方向外側へ向けて次第に高くなる様に延びる第2誘導面を有しており、
前記第2誘導面は、前記径方向開口部から流入した燃料を前記フロート弁の下面に向けて誘導可能とする請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記底部は、前記第2誘導面によって周囲を囲われて形成され、且つ、前記径方向開口部に連通する空間を有している請求項3記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項5】
前記第1誘導面は、下方に突出する突部を有しており、該突部の側面は、径方向外側へ向けて次第に高くなる斜面を成すように設けられている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項6】
前記底部は、前記環状壁及び前記遮蔽壁を連結する複数のリブを有し、
前記複数のリブの、径方向内側の端面は、テーパ状を成す請求項4記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項7】
前記フロート弁の下面と前記底部との間に配置され、前記フロート弁を前記開口部に向けて付勢する付勢ばねを有しており、
前記フロート弁には、軸方向下端が開口したばね収容空間が形成されており、
前記ハウジングの底面を軸方向に見たとき、前記遮蔽壁の径方向外側の端部と、前記環状壁の径方向内側の端部との間に、隙間が形成されており、該隙間は、前記ばね収容空間に対応する位置に配置されている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、燃料タンク用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の燃料タンクには、燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク内への過給油を防止する弁装置(満タン規制バルブ)や、自動車が走行中に大きく揺れたり、傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れることを防止する弁装置(カットバルブ)が取付けられている。
【0003】
これらの弁装置は、一般的には、燃料タンクの上部に装着され、開口を有する仕切壁及び弁室を有するハウジングと、弁室内に昇降可能に配置され、前記開口を開閉するフロート弁とを有する構造となっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、開口部が設けられた仕切壁を介して、下方空間と上方空間に分かれており、下方空間の外壁に、下方空間を外部と連通させる連通孔が形成されているハウジングと、ハウジングの下方空間に上下摺動可能に配置され、連通孔を通して流入する液体によって浮上し、開口部に接離するように構成されたフロート弁を備えた、燃料遮断弁が記載されている。
【0005】
また、フロート弁の下面とハウジングの底面との間には、フロート弁を開口部に向けて付勢する上方付勢バネが配置されている。更に、ハウジングは、ハウジング本体の下方に装着される下キャップを有している。
【0006】
上記の下キャップの底部には、円形開口が形成されており、該円形開口の上方には、複数のリブを介して、上方付勢バネの下端部を支持する、上方付勢バネ受け台が、所定高さ離間して配置されている。また、上方付勢バネ受け台の下面内周からは、筒状壁が垂設されている。そして、下キャップ底部の円形開口の内周縁部と、上方付勢バネ受け台の外周縁部と、筒状壁との間に、燃料タンク内と下方空間とを連通させる、連通孔が形成されている(特許文献1の
図1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両の走行時等において、燃料タンク内の燃料が揺動することがある。上記特許文献1の燃料タンク用弁装置の場合、燃料は、主として、下キャップの円形開口を通って、上方付勢バネ受け台の下面中央に衝突した後、径方向外方に広がりながら流れて、連通孔から下方空間内に流入しようとするが、その際には、筒状壁によって、燃料の流通が阻害されやすく、燃料を下方空間内に取り込みにくい。
【0009】
その結果、フロート弁が上昇しにくくなるので、燃料タンク内に生じる燃料蒸気や、燃料液面から生じる波、しぶき等が、フロート弁が上昇する前に、開口部を通じて上方空間へと流入してしまって、燃料タンク外へ漏れる可能性があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、燃料が揺動したとき、燃料タンク外への燃料漏れを効果的に抑制することができる、燃料タンク用弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料タンク用弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成されたハウジングと、前記弁室に昇降可能に収容され、前記開口を開閉するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、前記フロート弁を支持する底部を有しており、前記底部は、前記ハウジングの軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内及び前記弁室を互いに連通させる軸方向開口部を設けた環状壁と、前記環状壁の上方で、前記軸方向開口部と対向する様に配置された遮蔽壁とを有しており、前記環状壁と前記遮蔽壁とによって、前記ハウジングの径方向に開口し且つ前記弁室に連通する径方向開口部が形成されており、前記遮蔽壁には、前記軸方向開口部から流入した燃料を前記径方向開口部へと誘導可能とする第1誘導面が、軸心から前記遮蔽壁の外縁に亘って形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮蔽壁には、軸方向開口部から流入した燃料を径方向開口部へと誘導可能とする第1誘導面が、軸心から遮蔽壁の外縁に亘って形成されているので、燃料タンク内で揺動等した燃料は、軸方向開口部を通過して、第1誘導面の中央部に衝突した後、その中央部から径方向外方に向けて下面に沿って流れて、径方向開口部へと誘導され、当該径方向開口部から弁室内に流入する。
【0013】
すなわち、第1誘導面の全域を利用して、弁室内に燃料を迅速に流入させることができる。そして、弁室内に流入した燃料がフロート弁に衝突することで、燃料を利用してフロート弁を上昇させやすくすることができるので、開口を閉塞しやすくすることができ、燃料タンク外への燃料漏れを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3】同燃料タンク用弁装置の、
図2のA-A矢視線における要部拡大断面図である。
【
図4】同燃料タンク用弁装置を構成する下部キャップの平面図である。
【
図5】同下部キャップの、
図1とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
【
図6】同燃料タンク用弁装置において、フロート弁が下降して開口が開いた状態の、
図2のA-A矢視線における断面図である。
【
図7】
図6の状態から、フロート弁が上昇して開口を閉じた状態の断面図である。
【
図8】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(燃料タンク用弁装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について説明する。
【0016】
図1や
図6に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、単に「弁装置10」ともいう)は、仕切壁30を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが設けられ、仕切壁30に弁室Vと通気室Rとを連通する開口33が形成されると共に、通気室R側の周面に接続管55が接続された、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容されて、開口33を閉塞するフロート弁70と、該フロート弁70を付勢する付勢ばね17とを有している。
【0017】
また、ハウジング15は、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40と、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー50とを有している。下部キャップ40に、本発明における「フロート弁を支持する底部」が設けられている。
【0018】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。また、本発明における「軸方向」とは、弁室内を上下方向に昇降動作するフロート弁の昇降動作に沿った方向や、フロート弁の軸心に沿った方向(弁軸方向とも言える)を意味する(以下の説明でも同様)。
【0019】
まず、ハウジング本体20について、
図1、
図6、
図7等を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、ハウジング本体20は、略円筒状をなしたハウジング本体周壁21を有しており、その上方に、仕切壁30が配置されている。また、ハウジング本体周壁21の上方からは、略円環状をなしたフランジ部23が張り出している。フランジ部23には、複数の挿通孔23aが形成されている。
【0021】
更に、ハウジング本体周壁21の外周の、フランジ部23寄りの箇所であって、前記挿通孔23aに整合した位置には、複数のカバー側係合突部25が突設されている。また、ハウジング本体周壁21の外周であって、軸方向下端部寄りの位置には、複数のキャップ側係合突部26が突設されている。
【0022】
更に、前記フランジ部23の内周には、嵌合溝27が形成されており、この嵌合溝27の内側に、円板状をなした前記仕切壁30が配置されている。この仕切壁30の中央に、円形状の開口33が形成されている。また、開口33の内部には、略十字状をなした十字リブ33aが形成されている。この十字リブ33aによって、開口33の表側内周縁からの、シール弁体75(
図6~7参照)の飛び出しが防止されるようになっている。
【0023】
更に、
図6及び
図7に示すように、開口33の裏側(下側)周縁からは、略円形突起状をなした弁座33bが突設されている。この弁座33bにフロート弁70が接離することで、開口33が開閉される。また、ハウジング本体周壁21の内周には、薄肉板状をなしたガイドリブ29が、複数形成されている。
【0024】
次に、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40について説明する。
【0025】
図1,2,6,7に示すように、下部キャップ40は、略円筒状をなした下部キャップ周壁41を有する、有底キャップ状をなしている。下部キャップ周壁41の、軸方向上端部寄りの位置には、複数の係合孔41aが形成されている。
【0026】
そして、
図2に示すように、係合孔41aを、ハウジング本体20の対応するキャップ側係合突部26に係止させることで、ハウジング本体20の下方に下部キャップ40が装着される。その結果、仕切壁30を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成されるようになっている(
図6参照)。
【0027】
また、下部キャップ周壁41の、軸方向中間部の所定箇所には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる、軸方向下方に開口した満タン規制開口41bが形成されている(
図6~8参照)。この満タン規制開口41bは、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で連続給油を停止して、満タン規制を図るものである。
【0028】
更に、下部キャップ周壁41の内周には、薄肉板状をなしたガイドリブ42が、複数形成されている。
【0029】
図3、
図5、及び
図6に示すように、下部キャップ40は、フロート弁70を支持する底部(フロート弁支持部とも言える)を有しており、該底部は、ハウジング15の軸方向に開口し、且つ、燃料タンク内及び弁室Vを互いに連通させる軸方向開口部43を設けた環状壁44と、軸方向開口部43の内側に設けられ、環状壁44の上方で、軸方向開口部43と対向する様に配置された遮蔽壁45とを有している。
【0030】
また、環状壁44と遮蔽壁45とによって、ハウジング15の径方向に開口し且つ弁室Vに連通する径方向開口部46が形成されている。
【0031】
そして、遮蔽壁45の下面(厚さ方向の下面)には、軸方向開口部43から流入した燃料を径方向開口部46へと誘導可能とする第1誘導面45cが、軸心から遮蔽壁45の外縁45e(径方向の外周縁部)に亘って形成されており、この第1誘導面45cによって、燃料を第1誘導面45cの中央部から径方向外方に向けて、且つ、第1誘導面45cに沿って流通させ、径方向開口部46へと誘導する構成となっている。この実施形態における第1誘導面45cは、ハウジング15の軸方向(ハウジング15の軸心Cに沿った方向)に対して直交するように延びる、平坦な水平面状をなしている。
【0032】
また、下部キャップ40の底部は、ハウジング15の軸方向に延びる周壁41c(下部キャップ周壁41の軸方向下端部に位置する壁部を意味する)と、環状壁44の外周端から上方に向けて拡開しながら、且つ径方向外側へ向けて次第に高くなる様に延びて、周壁41c及び環状壁44を連結する誘導壁48とを有している。この誘導壁48の内面が、第2誘導面48aをなしており、当該第2誘導面48aは、径方向開口部46から流入した燃料をフロート弁70の下面71b(
図3参照)に誘導可能とする。
【0033】
更に、下部キャップ40の底部は、環状壁44と、環状壁44及び遮蔽壁45を連結する複数のリブ47と、誘導壁48とによって形成され、且つ、第2誘導面48aに周囲を囲われて、径方向開口部46に連通し、フロート弁70の下面71bに燃料を誘導可能な空間49を有している。
【0034】
各部分について具体的に説明すると、前記環状壁44は、その径方向中央部に、略円形孔状をなした軸方向開口部43を形成した、略円環状を呈している。また、軸方向開口部43は、ハウジング15の軸方向(上下方向)に開口した形状となっており、この実施形態では、下部キャップ40の底部において、軸方向の下方に向けて開口した形状となっている。なお、軸方向開口部43は、燃料タンク内と弁室Vを互いに連通させて、燃料タンク内の燃料を弁室Vに取り込む部分となっている。
【0035】
また、遮蔽壁45は、外周が円形とされた略円形板状をなしており、その径方向の外周縁部が、複数のリブ47によって支持されて、軸方向開口部43の上方に、所定長さ離間して配置されるようになっている。なお、遮蔽壁45は、環状壁44よりも、所定高さ浮いた位置に配置されている、とも言える。
【0036】
そして、燃料は、
図3や
図5の矢印F1に示すように、遮蔽壁45の第1誘導面45cの径方向中央部に衝突した後、
図3や
図5の矢印F2に示すように、遮蔽壁45の径方向外方に向けて、且つ、第1誘導面45cに沿って流通して、径方向開口部46へと誘導されるようになっている。
【0037】
なお、遮蔽壁45の上面(厚さ方向の上面であり、弁室Vに向く面)の径方向中央部からは、付勢ばね17の下端部を支持する、略十字突起状をなしたばね支持部45aが突設されている。下部キャップ40は、ばね支持部45aが支持する付勢ばね17を介して、フロート弁70を支持している。
【0038】
また、遮蔽壁45は、その外径寸法が、環状壁44の径方向内側の端部の内径寸法(軸方向開口部43の内径寸法とも言える)よりも小さく形成されている。更に、遮蔽壁45の径方向中心と、軸方向開口部43の径方向中心とは、ハウジング15の軸心C(ここではハウジング15を構成する下部キャップ40の軸心や径方向中心を意味する)に一致(整合)するように設けられている。
【0039】
そのため、
図4に示すように、ハウジング15の底部、すなわち、ハウジング15を構成する下部キャップ40の底部を軸方向から見たときに、遮蔽壁45の径方向外側の端部(外周)と、環状壁44の径方向内側の端部(軸方向開口部43の内周)との間に、所定隙間の環状溝形状とされた、隙間43aが形成されている。なお、この隙間43aは、フロート弁70のばね収容空間72に対応する位置に配置されている(これについては後述する)。
【0040】
図5に示すように、各リブ47は、下部キャップ40の径方向中心から放射状をなすように延びる薄肉板状をなすと共に、周方向に均等な間隔を空けて配置されたものであって、その基端部(径方向外方の端部)が軸方向開口部43の内周に連結されており、上方部分が遮蔽壁45の第1誘導面45cに連結されている。
【0041】
また、各リブ47の、遮蔽壁45側の径方向内側の端面は、テーパ状を成すテーパ面47aが形成されている。このテーパ面47aは、遮蔽壁45の径方向内側から径方向外側に向けて、次第に高さが低くなる傾斜面状をなしている。
【0042】
更に、この実施形態における径方向開口部46は、周方向に隣接する複数のリブ47によって区画されて、複数形成されており、各径方向開口部46が、弁室Vに連通している。
【0043】
また、
図5に示すように、底部は、下部キャップ周壁41の軸方向下端部に位置する周壁41cの内周から、径方向内方に向けて突出する、棚状壁41dを有しており、該棚状壁41dに、誘導壁48の上端部が連結されている。
【0044】
図4に示すように、上記棚状壁41dは、下部キャップ周壁41の内周に沿って径方向内方に環状壁をなすように突出する第1突出部分41eと、該第1突出部分41eの径方向所定箇所から、周方向に均等な間隔を空けて径方向内方に更に突出する第2突出部分41fとを有している。なお、誘導壁48及び第2誘導面48aは、棚状壁41dの第1突出部分41e及び第2突出部分41fの内周に沿って形成されている。
【0045】
また、
図4に示すように、棚状壁41dの、第2突出部分41fを有する箇所には、底部を貫通するスリット状や貫通孔状をなした連通口41gが形成されており、該連通口41gを介して撓み変形可能な弾性片41hが設けられている。この弾性片41hは、フロート弁70の底部を支持し、ハウジング底部にフロート弁70が載置される際の打音を抑制する。
【0046】
更に、誘導壁48及びその内面の第2誘導面48aは、環状壁44の外周端44aから、斜め上方に向けて拡開しながら延びており、その延出方向先端部が、棚状壁41dの径方向内周に連結されている(
図3参照)。この第2誘導面48aは、軸方向開口部43及び径方向開口部46を通って流入した燃料を、フロート弁70の下面に向けて誘導するように、その内面が周壁41cに向けて広がるテーパ状をなしている。
【0047】
より具体的には、この実施形態における誘導壁48の内面である第2誘導面48aは、
図3に示すように、環状壁44の外周端44aの上面外縁から径方向外方に且つ周壁41c側に向けて、斜め外方に次第に高くなるようにテーパ状に傾斜する第1ガイド面48bと、該第1ガイド面48bの上端からハウジング15の軸方向に沿って垂直に延びる第2ガイド面48cとを有している。
【0048】
なお、
図3に示すように、環状壁44及び誘導壁48の断面形状は、略L字状をなしている。また、環状壁44、誘導壁48、棚状壁41d、周壁41cの断面形状は、略クランク状(略階段状)をなしている。
【0049】
そして、遮蔽壁45の第1誘導面45cにより誘導されて、軸方向開口部43及び径方向開口部46を通って流入した燃料は、
図3の矢印F3に示すように、第2誘導面48aの第1ガイド面48bに衝突して、その流通方向がフロート弁70の下面71b側に向くように変更されて、且つ、誘導壁48の第2ガイド面48cに沿ってガイドされて、フロート弁70の下面71bに向けて誘導されるようになっている。
【0050】
すなわち、第2誘導面48aによって、燃料の流通方向が、ハウジング15の軸心Cに直交する方向(水平方向)から、ハウジング15の軸心Cに沿った上向きへと変換される。
【0051】
ここで、
図3及び
図6に示すように、ハウジング15の軸心Cを通る径方向断面において、径方向開口部46は、径方向に見て露出するように配置されている。なお、
図2に示すように、ハウジング15の軸心Cを通る軸方向断面であるA-A断面を見たときに、径方向開口部46は露出している、とも言える。更に、径方向開口部46が視認可能であるとも言え、特に、支持部45aの下方等において、径方向開口部46が視認可能となっている。
【0052】
また、
図4に示すように、空間49は、棚状壁41dの第1突出部分41e及び第2突出部分41fや、それらの突出部分41e,41fの内周に沿って設けられた第2誘導面48a、更に複数のリブ47の間に画成されて、所定深さで設けられた凹状空間となっており(
図3参照)、径方向内方に向く側方が径方向開口部46に連通すると共に、上方が開口して弁室Vに連通している。
【0053】
この空間49は、径方向開口部46を通過して空間内に流入した燃料を、第2誘導面48aまで誘導すると共に、フロート弁70の下面71bに誘導する。
【0054】
また、
図4に示すように、各空間49は、ハウジング15の軸方向から見て、径方向内側に配置された、幅狭で周方向長さの長い略円弧状をなした第1空間と、径方向外側部分に配置された、第1空間よりも幅広で且つ第1空間よりも周方向長さの短い略扇形状をなした第2空間とが、組み合わされた形状をなしている。周長の長い第1空間によって、空間49内に燃料を取り込みやすくし、また、略扇形状をなした第2空間によって、空間奥側(径方向外側)に配置されるフロート弁70の下面71bへ燃料を誘導しやすくする。
【0055】
更に
図4に示すように、この実施形態では、下部キャップ周壁41のほぼ全周を漏れなくカバー可能なように、下部キャップ周壁41の周方向のほぼ全域に亘って、複数(ここでは4個)の空間49が配置されている。
【0056】
次に、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー50について、
図1,2,6,7等を参照して説明する。
【0057】
図1に示すように、上部カバー50は、上方が閉塞した略ハット状をなしており、そのカバー周壁51の所定箇所から接続管55が外径方向に向けて延出している。接続管55は、燃料タンクの外部に配置される図示しないキャニスタに連結されるチューブが接続される。
【0058】
なお、接続管55は、カバー周壁51に設けた燃料蒸気排出口から延出している。また、カバー周壁51の下方からは、枠状の係止片53が延設されており、各係止片53には、係合孔54が形成されている。前記係止片53を、ハウジング本体20の対応する挿通孔23aに挿入し、同係止片53の係合孔54を、対応するカバー側係合突部25に係止させることで、ハウジング本体20の上方に上部カバー50が装着される。
【0059】
そして、
図6に示すように、嵌合溝27にカバー周壁51の下端部を嵌合させることにより、上部カバー50のカバー周壁51の内周と、ハウジング本体20の仕切壁30の外周の周面との隙間がシールされる。
【0060】
次に、弁室V内に昇降可能に収容されるフロート弁70について、
図1、
図6、
図7等を参照して説明する。
【0061】
図1や
図6に示すように、フロート弁70は、燃料浸漬時に浮力を発生させるフロート本体71と、該フロート本体71の上方に装着され、フロート本体71に伴って昇降し、仕切壁30の開口33に接離するシール部材73とを有している。
【0062】
また、シール部材73の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体75が装着されている。シール弁体75の中央には、上方及び下方が開口した通気孔75aが貫通して形成されている。このシール弁体75が開口33の弁座33bに接離して、開口33を開閉することで、フロート弁70が満タン規制弁として機能する。
【0063】
更に、フロート本体71とシール部材73との間には、中間弁体77が傾動可能に支持されている。この中間弁体77は、常時はシール弁体75の下端部に当接して、通気孔75aを閉塞している(
図6,7参照)。燃料液面が下降してフロート本体71がシール部材73に先行して下降したときに、フロート本体71に伴って中間弁体77も下降して、通気孔75aを開くようになっている。
【0064】
また、フロート本体71は所定径の円筒状をなしており、その上部中央には、シール部材73及び中間弁体77が組付けられる、組付け部71aが突設されている。
【0065】
また、
図3及び
図6に示すように、フロート本体71の下面中心部からは、上方に向けて、略円形空間をなすように延び、且つ、その軸方向下端が開口したばね収容空間72が形成されている。更に、フロート本体71の軸方向下端部の内周面及び外周面は、共に円形状をなしており、軸方向下端部の下面71bは、略円環状を呈している。なお、フロート本体71の下面71bが、本発明における「フロート弁の下面」をなしている。
【0066】
ところで、上述したように、ハウジング15の底部を軸方向から見たときに、下部キャップ40の遮蔽壁45の径方向外側の端部と、環状壁44の径方向内側の端部との間には、隙間43a(
図3,4参照)が形成されている。
【0067】
そして、
図3に示すように、上記の隙間43aは、ばね収容空間72に対応する位置に配置されており(ここでは、隙間43aは、ばね収容空間72の径方向内側に配置されている)、隙間43aからは、フロート本体71の下面71bが露出しないように(視認不可能なように)配置されている。
【0068】
また、付勢ばね17は、その上端部をばね収容空間72に挿入され、その下端部を前記下部キャップ40のばね支持部45aに当接支持されて設置される。
【0069】
すなわち、フロート弁70は、弁室V内において、下部キャップ40との間で、付勢ばね17を介在させた状態で昇降可能に収容配置され、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢ばね17の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降するようになっている。
【0070】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、仕切壁、下部キャップ、上部カバー、フロート弁、ハウジングの底部、環状壁、軸方向開口部、遮蔽壁、第1誘導面、誘導壁、径方向開口部、リブ、空間等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0071】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、下部キャップ40と、上部カバー50とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも仕切壁を有する構造であればよい。
【0072】
更に、この実施形態におけるハウジング本体20のハウジング本体周壁21や、上部カバー50のカバー周壁51、下部キャップ40の下部キャップ周壁41等は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0073】
また、この実施形態におけるフロート弁70は、フロート本体71や、シール部材73、中間弁体77等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、開口33を開閉可能であればよい。
【0074】
更に、この実施形態では、軸方向開口部43は、ハウジング15の径方向の中心部に設けられているが、偏心していてもよく、燃料タンク内及び弁室Vを互いに連通させていればよい。また、軸方向開口部43は、この実施形態では略円形をなしているが、例えば、楕円形や矩形等であってもよい。
【0075】
また、この実施形態では、第2誘導面48aは、環状壁44の外周端44aから上方に向けて拡開する斜面(第1ガイド面48b)と、垂直に延びる面(第2ガイド面48c)とによって構成されているが、第2誘導面48aとしては、例えば、斜面のみで構成されていてもよく、湾曲した斜面でもよく、環状壁44の外周端から上方に向けて拡開しながら延びて下部キャップ周壁41及び環状壁44を連結可能であればよい。
【0076】
更に、この実施形態では、リブ47は、放射状に配置されているが、これに限定されるものではなく、環状壁44と遮蔽壁45とを連結可能であればよい。
【0077】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0078】
図6に示すように、図示しない燃料タンク内の燃料が少なく、フロート弁70に燃料が浸漬していない状態では、フロート弁70に燃料による浮力が作用せず、フロート弁70は自重で下降して、開口33が開くため、開口33を通じて弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。
【0079】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、主として、燃料タンク内の空気が、下部キャップ40の満タン規制開口41bや、軸方向開口部43、径方向開口部46等から、弁室V内に流入して上方へと流れていき、開口33から通気室R内に流入して、燃料タンク外のキャニスタへと排出される。このように、燃料タンク内の空気が、燃料タンク外へ排出されることで、燃料タンク内に燃料を給油可能となっている。
【0080】
上記の
図6に示す状態から、燃料タンク内に燃料が給油されると、燃料が下部キャップ40の軸方向開口部43や径方向開口部46から弁室V内に流入し、フロート弁70に燃料が浸漬していく。そして、付勢ばね17の付勢力及びフロート弁70自体の浮力によって、フロート弁70が上昇して、
図7に示すように、シール弁体75が弁座33bに当接して、開口33が閉塞される。
【0081】
その結果、開口33を通じての、弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断される。それによって、燃料タンク内の空気の逃げ道が失われて、燃料タンク内の圧力が上昇し、燃料タンクの燃料給油管内を燃料が上昇して、給油ガンの検知センサが燃料を検知することで、給油が停止されて、いわゆる満タン規制がなされることになる。
【0082】
更に、弁装置10は、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、フロート弁70が開口33を閉塞して燃料の外部漏出を防ぐ、いわゆる燃料流出防止弁としても機能する。
【0083】
例えば、車両が、カーブを曲がったり、凹凸のある道や坂道等を走行したり、或いは、事故によって転倒したり反転したりして、燃料タンク内の燃料が揺動することがある。このような場合に、本発明の弁装置10は、下記の構成を採用したので、燃料タンク外への燃料漏れを効果的に抑制できるようになっている。
【0084】
すなわち、この弁装置10においては、ハウジング15の底部に相当する下部キャップ40の底部に、
図5や
図6に示すように、軸方向に開口する軸方向開口部43を設けた環状壁44と、軸方向開口部43の内側且つ環状壁44の上方に遮蔽壁45とを有しており、環状壁44と遮蔽壁45とによって径方向開口部46が形成され、遮蔽壁45には、軸方向開口部43から流入した燃料を径方向開口部46へと誘導可能とする第1誘導面45cが、ハウジング15の軸心Cから遮蔽壁45の外縁45eに亘って形成されている。
【0085】
そのため、燃料タンク内で揺動等した燃料は、軸方向開口部43を通過して、第1誘導面45cの中央部に衝突した後、当該中央部から径方向外方に向けて、第1誘導面45cに沿って流れて、径方向開口部46へと誘導され、当該径方向開口部46から弁室V内に流入する。
【0086】
したがって、遮蔽壁45の第1誘導面45cの全域を利用して、弁室V内に燃料を迅速に流入させることができる。そして、弁室V内に流入した燃料がフロート弁70に衝突することで、当該燃料によってフロート弁70が押し上げられると共に、付勢ばね17の付勢力等が作用することで、フロート弁70が上昇して、そのシール弁体75が弁座33bに当接して、開口33が閉塞される。
【0087】
このように、この弁装置10においては、弁室V内に迅速に流入された(取り込まれた)燃料を利用して、フロート弁70を上昇させやすくすることができるので、開口33を閉塞しやすくすることができ、フロート弁70が上昇して開口33を閉じる前に、燃料タンク内に生じる燃料蒸気や、燃料液面から生じる波、しぶき等が開口33を通じて通気室Rへと流入することを防止して、燃料タンク外への燃料漏れを効果的に抑制することができる。
【0088】
また、この実施形態においては、ハウジング15の軸心Cを通る軸方向断面において、径方向開口部46は露出する様に構成されている(
図6参照)。
【0089】
上記態様によれば、ハウジング15の軸心Cを通る軸方向断面において、径方向に見て、径方向開口部46が露出する様に構成されているので、軸方向開口部43に流入した燃料の流れを弱めることなく(減衰させることなく)、径方向開口部46へ燃料を誘導することができる。その結果、キャニスタ側への燃料漏れをより効果的に抑制することができる。また、径方向開口部46が露出して視認可能であるので、射出成形時における型抜きが可能となり、径方向開口部46を形成しやすくなる。
【0090】
更に、この実施形態においては、環状壁44は、環状壁44の外周端44aから上方に向けて拡開しながら延びて径方向外側へ向けて次第に高くなる様に延びる第2誘導面48aを有しており、第2誘導面48aは、径方向開口部46から流入した燃料をフロート弁70の下面71bに向けて誘導可能とするように構成されている(
図6参照)。
【0091】
上記態様によれば、第2誘導面48aは、フロート弁70の下面71bに向けて燃料を誘導可能とするので、遮蔽壁45により誘導されて、径方向開口部46から弁室V内に流入した燃料を、フロート弁70の下面71bに誘導しやすくすることができる。その結果、フロート弁70をより上昇させやすくすることができ、燃料漏れをより効果的に抑制することができる。
【0092】
また、この実施形態においては、下部キャップ40は、第2誘導面48aによって周囲を囲われて形成され、且つ径方向開口部46に連通する空間49を有している(
図4,5参照)。
【0093】
上記態様によれば、第2誘導面48aによって周囲を囲われて形成され且つ径方向開口部46に連通する空間49を有しているので、第1誘導面45cに衝突し径方向外方に向けて第1誘導面45cに沿って流れる燃料が、空間49に流入することによって、当該空間49を介して、フロート弁70の下面71bに誘導されやすくすることができる。
【0094】
更に、この実施形態においては、環状壁44と、環状壁44及び遮蔽壁45を連結する複数のリブ47を有し、複数のリブ47は、環状壁44と遮蔽壁45とを連結する位置に放射状に配置されており、且つ、空間49は、複数のリブ47によって画成されて、下部キャップ40の底部であって下部キャップ周壁41の周方向のほぼ全域に亘って複数配置されている。
【0095】
上記態様によれば、放射状に配置されたリブ47に画成される空間49が、下部キャップ40の底部であって下部キャップ周壁41の周方向のほぼ全域に亘って複数配置されているので、径方向開口部を通じてあらゆる方向から流入する燃料の流れを、フロート弁70の下面71bに向けて集約することができる。その結果、あらゆる方向からフロート弁70の下面71bへ燃料を誘導することができ、燃料漏れをより抑制することができる。
【0096】
また、この実施形態においては、環状壁44と、環状壁44及び遮蔽壁45を連結する複数のリブ47を有し、複数のリブ47の、遮蔽壁45の径方向内側の端面は、テーパ状を成す(
図5参照)。
【0097】
上記態様によれば、環状壁44及び遮蔽壁45を連結する複数のリブ47の、径方向内側の端面(径方向内端面)に、テーパ状を成すテーパ面47aが形成されているので、軸方向開口部43の内部空間を広く確保することができる。その結果、軸方向開口部43から、より多くの燃料を取り込むことができる。
【0098】
更に、この実施形態においては、弁装置10は、フロート弁70の下面71bと下部キャップ40の底部との間に配置され、フロート弁70を開口33に向けて付勢する付勢ばね17を有しており、フロート弁70には、軸方向下端が開口したばね収容空間72が形成されており、ハウジング15の底部を軸方向に見たとき、遮蔽壁45の径方向外側の端部と、環状壁44の径方向内側の端部との間に、隙間43aが形成されており(
図4参照)、隙間43aは、ばね収容空間72に対応する位置に配置されている(
図6参照)。
【0099】
上記態様によれば、遮蔽壁45の径方向外側の端部(径方向外側端部)と、環状壁44の径方向内側の端部(径方向内側端部)との間に形成される隙間43aは、ばね収容空間72に対応する位置に配置されているので、ハウジング15の底部を軸方向に見たとき、フロート弁70の下面71bが露出しない構造となる。
【0100】
その結果、燃料タンク内の燃料から生じた燃料蒸気が吹き上がっても、フロート弁70の下面71bに直接当たることが防止されるので、フロート弁70が燃料蒸気によって吹き上がることを抑制することができる。
【0101】
(燃料タンク用弁装置の他の実施形態)
図8には、本発明による燃料タンク用弁装置の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0102】
図8には、他の実施形態に係る燃料タンク用弁装置の、要部拡大断面図が示されている。この
図8に示すように、下部キャップ40は、その底部に、軸方向に開口する軸方向開口部43が設けられた、環状壁44を有しており、軸方向開口部43の内側であって、環状壁44の上方で、軸方向開口部43と対向する位置には、遮蔽壁45が設けられ、遮蔽壁45と環状壁44とによって、下部キャップ40の径方向に開口し且つ弁室Vに連通する径方向開口部46が形成されている。
【0103】
そして、この実施形態の場合、遮蔽壁45の第1誘導面45cは、下方に突出する突部45dを有しており、該突部45dの側面45bは、径方向外側へ向けて次第に高くなる斜面を成すように設けられている。
【0104】
より具体的に説明すると、遮蔽壁45の第1誘導面45cは、ハウジング15の軸心Cを含む径方向中央部から、軸方向下方に向けて、所定厚さで突出する突部45dを有している。
【0105】
また、この突部45dは、その軸方向下面に位置する平坦面状をなした底面45fと、該底面45fの外周縁から遮蔽壁45の第1誘導面45cに向けて、径方向外側に向けて次第に高くなるように、斜め外方に延びるテーパ面状を呈しており、斜面をなす側面45bとを有する、略円錐台形状をなしている。
【0106】
すなわち、この実施形態における第1誘導面45cは、突部45dの底面45fと、該底面45fの外周縁から連続して延びる側面45bと、該側面45bの上方周縁から遮蔽壁45の外縁45eに亘り連続して広がる上面45gとからなる。
【0107】
そして、車両の走行等によって燃料タンク内で燃料等した燃料は、軸方向開口部43を通過して、まず、
図8の矢印F1に示すように、第1誘導面45cの底面45fの中央部に衝突する。次いで、燃料は、
図8の矢印F2に示すように、底面45fの外周縁側へと流れた後、側面45bにガイドされて斜め上方へと流れ、更に上面45gに沿って流れて、径方向開口部46へと誘導され、径方向開口部46から弁室V内に流入する。
【0108】
その後、燃料は、
図8の矢印F3に示すように、第1ガイド面48bに衝突して、その流通方向がフロート弁70の下面71b側に向くように変更され、且つ、第2ガイド面48cに沿ってガイドされて、フロート弁70の下面71bに向けて誘導される。
【0109】
そして、この実施形態においては、遮蔽壁45の第1誘導面45cは、下方に突出する突部45dを有しており、該突部45dの側面45bは、径方向外側へ向けて次第に高くなる斜面を成すように設けられているので、上述したように、第1誘導面45cの中央部(底面45f)に衝突した燃料が、斜面を成す側面45bによって径方向外方へ誘導されやすくなり、径方向開口部46により迅速に誘導することができる。
【0110】
なお、この実施形態では、側面45bは、径方向の中心部を頂点として、径方向外側へ向けて直線的に高くなるように設けられているが、側面45bとしては、例えば、アーチ形状などの湾曲した斜面であってもよく、径方向の中心部から径方向外側へ向けて次第に高くなるように設けられていればよい。また、突部は、下端中心が尖った円錐状等をなしていてもよい。
【0111】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10 燃料タンク用弁装置(弁装置)
15 ハウジング
17 付勢ばね
20 ハウジング本体
30 仕切壁
33 開口
40 下部キャップ
43 軸方向開口部
43a 隙間
44 環状壁
45 遮蔽壁
45b 斜面
45c 第1誘導面
46 径方向開口部
47 リブ
47a テーパ面
48 誘導壁
48a 第2誘導面
49 空間
50 上部カバー
70 フロート弁
72 ばね収容空間
R 通気室
V 弁室