IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-120550超電導回転電機の回転子および超電導回転電機
<>
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図1
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図2
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図3
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図4
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図5
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図6
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図7
  • 特開-超電導回転電機の回転子および超電導回転電機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120550
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】超電導回転電機の回転子および超電導回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/04 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H02K55/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027409
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】仲間 啓太
(72)【発明者】
【氏名】淵本 遼
(72)【発明者】
【氏名】栗山 透
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(72)【発明者】
【氏名】上野 航生
(57)【要約】
【課題】 超電導回転電機のコイル最高温度を低くすることができ、安定した運転を行えるようにすること。
【解決手段】 実施形態による超電導回転電機の回転子は、超電導コイルと、前記超電導コイルに通電する電流リードと、ロータコアに設けられ、前記超電導コイル及び前記電流リードと熱的に接続される伝熱部と、前記ロータコアの内部に冷媒ガスを供給する供給配管と、前記供給配管の外径側に設けられ、前記ロータコア側で前記伝熱部を介して前記超電導コイルを冷却した冷媒ガスを排出する戻り配管と、を具備し、前記電流リードは、前記超電導コイルを冷却した後の冷媒ガスにより冷却されるように構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルと、
前記超電導コイルに通電する電流リードと、
ロータコアに設けられ、前記超電導コイル及び前記電流リードと熱的に接続される伝熱部と、
前記ロータコアの内部に冷媒ガスを供給する供給配管と、
前記供給配管の外径側に設けられ、前記ロータコア側で前記伝熱部を介して前記超電導コイルを冷却した冷媒ガスを排出する戻り配管と、
を具備し、
前記電流リードは、前記超電導コイルを冷却した後の冷媒ガスにより冷却されるように構成されている、
超電導回転電機の回転子。
【請求項2】
前記伝熱部は、円筒形状を成し、その円周側の面に前記超電導コイルが配置されている、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項3】
前記伝熱部と熱的に接続され、前記電流リードを冷却するための電流リード冷却ステージをさらに具備する、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項4】
前記電流リード冷却ステージは、前記伝熱部の回転子軸方向端部の面に熱的に接続されている、
請求項3に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項5】
前記ロータコアは、
前記供給配管から供給される冷媒ガスと前記戻り配管へ送出する冷媒ガスとの間の断熱を行う断熱部を備えている、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項6】
前記断熱部は、真空の断熱層を含む、
請求項5に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項7】
前記供給配管を流れる冷媒ガスと前記戻り配管を流れる冷媒ガスとの間の断熱を行う断熱部を備えている、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項8】
前記断熱部は、真空の断熱層を含む、
請求項7に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超電導回転電機の回転子を用いて構成される、超電導回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導回転電機の回転子および超電導回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策としてカーボンニュートラルが求められている。その中で、電動航空機等に向けた超電導回転電機の開発が進められている。超電導回転電機を用いるシステムでは、超電導コイルを極低温に冷却する。冷却方式は大きく2つに分けられる。
【0003】
一つは超電導コイル毎に小型冷凍機を設置し、冷凍機と超電導コイルを直結する方法である。もう一つは、中央に大型冷凍機を配置し、冷凍機で冷却した冷媒を循環させる方法である。一般に冷凍機は大型になるほど効率が向上するため、効率の面では後者の方が優れている。冷媒を循環させて超電導回転電機を冷却する方法としては、液体ヘリウムを用いる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-089314号公報
【特許文献2】特開平03-040750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動航空機等に向けた超電導回転電機を用いるシステムでは、小型軽量化等の観点から、冷却が容易な高温超電導コイルを20K程度に冷却するものが検討されている。20K程度の冷却では、冷媒としてヘリウムガスや液体水素等を用いることになる。以下ではヘリウムガスを用いる方法について述べる。
【0006】
液体冷媒を用いたシステムでは、液が存在する間は冷媒温度が一定であるため、熱負荷を上回る冷媒を循環させればよいが、ガスを冷媒として循環させる場合は、冷媒ガスが受け取った熱によって温度上昇するため、冷媒ガスの温度が高くなり過ぎないように工夫する必要がある。一方で、超電導コイルは一部でも常電導転移すると全体が常電導転移するため、超電導コイルのコイル最高温度を臨界温度以下に保つ必要があるが、冷媒ガスがコイルに到達するまでに熱侵入があると、冷媒ガスの温度が大きく上昇し、コイル最高温度が高くなってしまう。そのような場合、安定した運転を行うことが困難となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、コイル最高温度を低くすることができ、安定した運転を行うことができる超電導回転電機の回転子および超電導回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による超電導回転電機の回転子は、超電導コイルと、前記超電導コイルに通電する電流リードと、ロータコアに設けられ、前記超電導コイル及び前記電流リードと熱的に接続される伝熱部と、前記ロータコアの内部に冷媒ガスを供給する供給配管と、前記供給配管の外径側に設けられ、前記ロータコア側で前記伝熱部を介して前記超電導コイルを冷却した冷媒ガスを排出する戻り配管と、を具備し、前記電流リードは、前記超電導コイルを冷却した後の冷媒ガスにより冷却されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超電導回転電機のコイル最高温度を低くすることができ、安定した運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る超電導回転電機を含むシステム全体の構成の例を示す概念図である。
図2図2は、図1中に示される超電導回転電機1の構成の例を示す概念図である。
図3図3は、図2中に示される回転部11の構成の例を示す断面図である。
図4図4は、図3中に示されるロータ11aのA-A断面における断面形状の例を示す断面図である。
図5図5は、図3中に示される超電導コイル31とブラシ12cとの電気的接続関係の例を示す概念図である。
図6図6は、図2中に示される配管連通部Q近傍の構造の例を示す断面図である。
図7図7は、図6中に示される構造のB-B断面における断面形状の例を示す断面図である。
図8図8は、図6中に示される構造のC-C断面における断面形状の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0012】
(システム構成)
図1は、実施形態に係る超電導回転電機を含むシステム全体の構成の例を示す概念図である。
【0013】
図1に示されるシステムは、超電導回転電機1と、冷却源2および低温ブロア3を含むガス循環冷却系4とを備える。
【0014】
超電導回転電機1は、高温超電導コイルを備え、機外から内部に供給されるヘリウムガス等の冷媒ガスを用いて当該超電導コイルを冷却する機構を有する。
【0015】
ガス循環冷却系4は、超電導回転電機1を冷却対象としてヘリウムガス等の冷媒ガスを循環させる。冷媒ガスは、冷却源2により極低温に冷却され、低温ブロア3により超電導回転電機1へ送り出される。超電導回転電機1からは、超電導コイルを冷却して温度の上昇した冷媒ガスが排出される。温度の上昇した冷媒ガスは、低温ブロア3を通じて冷却源2へ送り出され、冷却源2により再び冷却される。
【0016】
(超電導回転電機1の構成)
図2は、図1中に示される超電導回転電機1の構成の例を示す概念図である。
【0017】
図2に示されるように、超電導回転電機1は、ロータ11aおよび回転軸(駆動軸)11bを含む回転部11と、冷媒供給部12a、ステータコイル12b、ブラシ12c、およびシール部12dを含む固定部12とを備える。回転部11と固定部12との間には、双方の配管同士が連通する配管連通部Qがある。配管連通部Qの詳細については、後で説明する。
【0018】
ロータ11aは、回転軸(駆動軸)11bを中心に回転する。冷媒供給部12aは、冷却源2から送られてくる冷媒ガスを、回転するロータ11aの内部へ供給したり、ロータ11a側から返される使用済みの冷媒ガスを、低温ブロア3を通じて冷却源2へ戻したりする。ステータコイル12bは、ロータ11aの外径側に配置される。ブラシ12cは、回転するロータ11a側のスリップリングと接触することで通電する。シール部12dは、回転部11側の配管と固定部12側の配管との間で行き来する冷媒ガスの漏洩を防ぐ。
【0019】
(回転部11の構成)
図3は、図2中に示される回転部11の構成の例を示す断面図である。図4は、図3中に示されるロータ11aのA-A断面における断面形状の例を示す断面図である。ここでは主要部の構造を理解しやすいものとするため、図示される各部の寸法の一部を実際のものよりも大きく又は小さくしている。そのため、図示される各部の寸法の大小関係は、実際のものとは異なる。
【0020】
図3および図4に示されるように、回転部11は、磁界を発生する高温超電導コイル31(以降、「超電導コイル31」と称する)や、冷媒ガスを循環させるガス循環冷却機構32として、供給配管32a、戻り配管32b、伝熱部32cを備えるほか、供給流路壁32a’、戻り流路壁32b’を備え、さらに電流リード33、伝熱板34、ロータコア35、電流リード冷却ステージ36、スリップリング37、真空容器41、断熱部42等といった各種の要素を備える。これらの要素は、基本的に真空容器41中に配置されるが、回転軸11bの一部やスリップリング37等のように真空容器41の外側に配置されるものもある。
【0021】
超電導コイル31には、図示しないリード線を通じて超電導コイル31に通電する電流リード33が電気的に接続される。この電流リード33は、スリップリング37に電気的に接続される。スリップリング37は、固定部12側のブラシ12cと接触することで通電する。
【0022】
超電導コイル31と電流リード33とは、ガス循環冷却機構32を通じて流れる冷媒ガスによって冷却されるようになっている。
【0023】
ガス循環冷却機構32は、主な要素として供給配管32a、戻り配管32b、および伝熱部32cを含み、更には伝熱部32cの内径側に配置される供給流路壁32a’、戻り流路壁32b’、および断熱部42をも含む。
【0024】
供給配管32aおよび戻り配管32bは、ロータコア35の長手方向の片側(回転軸11bが設けられる側と反対の側)に、同心円状に配置される。供給配管32aおよび戻り配管32bは、それぞれの長手方向が回転軸11bの軸方向に平行に配置され、供給配管32aの外径側において戻り配管32bが供給配管32aを囲うように配置される。
【0025】
供給配管32aは、固定部12側から送られてくる冷媒ガスをロータコア35の内部に供給する。戻り配管32bは、ロータコア35側で伝熱部32cを介して超電導コイル31を冷却した冷媒ガスを固定部12側へ排出する。
【0026】
超電導コイル31は、伝熱部32c上に配置されるとともに、伝熱板34に熱的に接続される。この伝熱板34は、伝熱部32c上に配置されている。伝熱部32cは、ロータコア35に設けられる。伝熱部32cは、ロータコア35の一部を成すものとして構成されてもよい。
【0027】
電流リード33は、電流リード冷却ステージ36に熱的に接続される。この電流リード冷却ステージ36は、電流リード33を冷却するために伝熱部32cの回転子軸方向端部(ただし、回転子軸方向の両端部のうち、戻り配管32bに近い側の端部)の面に熱的に接続される。
【0028】
すなわち、伝熱部32cは、直接、超電導コイル31と熱的に接続されるとともに、伝熱板34を介して超電導コイル31と熱的に接続され、さらに電流リード冷却ステージ36を介して電流リード33とも熱的に接続されている。この場合、電流リード冷却ステージ36および電流リード33は、超電導コイル31よりも、冷媒ガスが流れる流路の下流側に位置しており、超電導コイル31を冷却した後の冷媒ガスにより、電流リード冷却ステージ36を介して電流リード33が冷却されるように構成されている。
【0029】
ロータコア35は、その内部に、供給流路壁32a’、戻り流路壁32b’、および断熱部42を備える。
【0030】
供給流路壁32a’は、供給配管32aから供給される冷媒ガスが流れる流路を形成している。戻り流路壁32b’は、伝熱部32cと共に、戻り配管32bへ送る冷媒ガスが流れる流路を形成している。断熱部42は、供給流路壁32a’と戻り流路壁32b’との間に設けられ、真空の断熱層を形成している。断熱部42は、供給配管32aから供給される冷媒ガスと戻り配管32bへ送る冷媒ガスとの間の断熱を行う。
【0031】
図2に示される冷媒供給部12a側からロータ11a側に供給される冷媒ガスは、供給配管32aを通ってロータコア35内の供給流路壁32a’に囲まれた供給流路に入り、回転軸11b側へ向かう。このとき、供給流路壁32a’の外径側には断熱部42があるため、外径側からの熱侵入は抑制される。この後、冷媒ガスは、回転軸11b側の端部近傍でロータコア35の周方向へ向きを変えて進み、さらに向きを変えて伝熱部32cと戻り流路壁32b’とに囲まれた戻り流路に入り、伝熱部32cを冷却しながら戻り配管32bの方へ進む。
【0032】
冷媒ガスは、超電導コイル31を伝熱部32c介して冷却又は伝熱部32c及び伝熱板34を介して冷却し、その後に、電流リード33を伝熱部32c及び電流リード冷却ステージ36を介して冷却する。熱負荷の大きい部分を占める電流リード33は、超電導コイル31を冷却した後の冷媒ガスにより冷却されるため、超電導コイル31の冷却には影響しない。
【0033】
なお、伝熱板34は、図4の例では六角柱に似た形状を成しているが、この形状は一例であって、これに限定されるものではない。伝熱板34は、例えば円筒形状を成していてもよい。円筒形状の場合、その円周側の面に超電導コイル31を配置することにより、伝熱板34の内面を通る冷媒ガスと超電導コイル31との距離をトータルで短くすることができ、両者間の熱伝導による温度差を低減させることができる。また、円筒形状の伝熱板34の回転子軸方向端部の面に電流リード冷却ステージ36を接続する場合、接続面の伝熱面積を大きくすることができ、伝熱効率を高めることができる。
【0034】
(超電導コイル31とブラシ12cとの電気的接続関係)
図5は、図3中に示される超電導コイル31とブラシ12cとの電気的接続関係の例を示す概念図である。ここでは主要部の構造を理解しやすいものとするため、図示される各部の寸法の一部を実際のものよりも大きく又は小さくしている。そのため、図示される各部の寸法の大小関係は、実際のものとは異なる。
【0035】
図5に示されるように、超電導コイル31とブラシ12cとの電気的接続には、リード線38、電流リード33、およびスリップリング37が介在する。
【0036】
超電導コイル31の口出し部は、正(+)に対応するものと負(-)に対応するものとがあり、それぞれ、リード線38を通じて電流リード33に電気的に接続されるとともに、電流リード33がスリップリング37に電気的に接続され、さらにスリップリング37が固定部12側のブラシ12cと接触することで通電するようになっている。
【0037】
スリップリング37は、例えば真空容器41の一部である真空容器壁51の上に配置される。また、電流リード33の一部は、スリップリング37と電気的に接続するために真空容器壁51に予め設けられた貫通孔を通される。ただし、真空容器壁51とスリップリング37との間の絶縁性、および真空容器壁51と電流リード33との間の絶縁性を確保するため、それらの間には絶縁物52が設けられる。
【0038】
(配管連通部Q近傍の構造)
図6は、図2中に示される配管連通部Q近傍の構造の例を示す断面図である。図7は、図6中に示される構造のB-B断面における断面形状の例を示す断面図である。図8は、図6中に示される構造のC-C断面における断面形状の例を示す断面図である。ここでは主要部の構造を理解しやすいものとするため、図示される各部の寸法の一部を実際のものよりも大きく又は小さくしている。そのため、図示される各部の寸法の大小関係は、実際のものとは異なる。
【0039】
また、図6乃至図8では、回転部11側の配管と固定部12側の配管とを識別しやすくするため、回転部11側の配管を濃い灰色で表し、固定部12側の配管を薄い灰色で表している。
【0040】
回転部11側には、前述した通り、同心円状に配置される供給配管32aおよび戻り配管32bが設けられる。固定部12側にも、同様に、同心円状に配置される供給配管61aおよび戻り配管61bが設けられる。供給配管61aおよび戻り配管61bは、それぞれの長手方向が回転軸11bの軸方向に平行に配置され、供給配管61aの外径側において戻り配管61bが供給配管61aを囲うように配置される。
【0041】
回転部11側の供給配管61aは、回転部11側の供給配管32aと連通している。具体的には、供給配管61aの一部(軸方向に延在する部分)が供給配管32aの一部の内径側に挿入した状態にあり、供給配管61aの一部と供給配管32aの一部との間に生じる間隙を封止するためのシール部12dが設けられている。
【0042】
また、回転部11側の戻り配管32bは、回転部11側の戻り配管61bと連通している。具体的には、戻り配管32bの一部が戻り配管61bの一部の内径側に挿入した状態にあり、戻り配管32bの一部と戻り配管61bの一部との間に生じる間隙を封止するためのシール部12dが設けられている。
【0043】
供給配管32aと戻り配管32bとの間には、真空の断熱層を成す断熱部62が設けられている。この断熱部62は、供給配管32aを流れる冷媒ガスと戻り配管32bを流れる冷媒ガスとの間の断熱を行う。また、戻り配管32bの外径側にも、真空の断熱層を成す断熱部62が設けられている。この断熱部62は、戻り配管32bを流れる冷媒ガスと電流リード33が存在する空間との断熱を行う。
【0044】
同様に、供給配管61aと戻り配管61bとの間には、真空の断熱層を成す断熱部63が設けられている。この断熱部63は、供給配管61aを流れる冷媒ガスと戻り配管61bを流れる冷媒ガスとの間の断熱を行う。また、戻り配管61bの外径側にも、真空の断熱層を成す断熱部63が設けられている。この断熱部63は、戻り配管61bを流れる冷媒ガスと外気との断熱を行う。
【0045】
前述の冷却源2から送られてくる冷媒ガスは、供給配管61aに入る。このとき、供給配管61aの外径側には断熱部63があるため、外径側からの熱侵入は抑制される。この後、冷媒ガスは供給配管32aに入る。このとき、供給配管32aの外径側には断熱部62があるため、外径側からの熱侵入は抑制される。
【0046】
また、前述の伝熱部32cを冷却し終えた冷媒ガスは、戻り配管32bに入る。このとき、戻り配管32bの外径側には断熱部62があるため、外径側からの熱侵入は抑制される。この後、冷媒ガスは戻り配管61bに入る。このとき、戻り配管61bの外径側には断熱部63があるため、外径側からの熱侵入は抑制される。この後、冷媒ガスは前述の低温ブロア3を通じて冷却源2へ戻ることになる。
【0047】
このように実施形態の超電導回転電機1によれば、供給配管32a,61aへの熱侵入は、その周りを覆う戻り配管32b,61bおよび断熱部62,63でブロックされるため、供給配管32a,61aを通る冷媒ガスを低い温度に保ったままロータコア35内へ送ることができる。また、ロータコア35内には、供給流路壁32a’、戻り流路壁32b’、および断熱部42があり、これらによって供給流路壁32a’に囲まれた供給流路への熱侵入がブロックされるため、ロータコア35内に供給された冷媒ガスを低い温度に保ったまま伝熱部32cと戻り流路壁32b’との間の戻り流路へ送ることができる。
【0048】
さらに、実施形態の超電導回転電機1によれば、伝熱部32cと戻り流路壁32b’との間の戻り流路を通る冷媒ガスは、超電導コイル31を伝熱部32cを介して冷却、又は伝熱部32c及び伝熱板34を介して冷却し、その後に、電流リード33を伝熱部32c及び電流リード冷却ステージ36を介して冷却するように構成されているため、熱負荷の大きい部分を占める電流リード33が超電導コイル31の冷却に影響しないようにすることができ、超電導回転電機のコイル最高温度を低くすることができる。
【0049】
なお、冷媒ガスの温度上昇は、ガス流量に反比例し、ガス流量が大きいほど小さくなる。冷媒ガスの温度上昇を抑えるためには、圧力損失を小さくして、ガス流量を増やすことが有効である。そのためには、細くすることが難しい配管部分(すなわち回転部11側の配管と固定部12側の配管とが連通する部分)を除き、冷媒ガスが流れる配管を太く(径を大きく)すればよい。このようにすると、圧力損失を低減し、ガス流量を増やすことができるので、冷媒ガスの温度上昇をより抑えることができ、コイル最高温度をより低くすることができ、超電導コイル31をより安定に運転することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、ガス循環冷却系4が単ループを成す場合を例に説明したが、ガス循環冷却系4は複数のループを成すものであってもよい。また、冷却源2には、極低温冷凍機を用いてもよいが、代わりに液体水素等の寒剤を用いてもよい。また、上記実施形態では、ガスの循環手段として、低温ブロアを用いる場合を例示したが、代わりに室温の圧縮機と熱交換器から構成される循環系を用いてもよい。
【0051】
以上詳述したように、実施形態によれば、超電導回転電機のコイル最高温度を低くすることができ、安定した運転を行うことができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…超電導回転電機、2…冷却源、3…低温ブロア、4…ガス循環冷却系、11…回転部、11a…ロータ、11b…回転軸(駆動軸)、12…固定部、12a…冷媒供給部、12b…ステータコイル、12c…ブラシ、12d…シール部、31…超電導コイル、32…ガス循環冷却機構、32a…供給配管、32a’…供給流路壁、32b…戻り配管、32b’…戻り流路壁、32c…伝熱部、33…電流リード、34…伝熱板、35…ロータコア、36…電流リード冷却ステージ、37…スリップリング、38…リード線、41…真空容器、42…断熱部、51…真空容器壁、52…絶縁物、61a…供給配管、61b…戻り配管、62,63…断熱部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8