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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120560
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】先受け鋼管の連結装置及び連結方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
E21D9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027423
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591245428
【氏名又は名称】虎乃門建設機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523067137
【氏名又は名称】DSIニッシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 英治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】西島 伸哉
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA10
2D054AC20
2D054FA02
2D054FA07
(57)【要約】
【課題】トンネルの地山に打設される先受け鋼管を連結する際、連結部分の強度及び施工性の優れた技術を提供する。
【解決手段】先受け鋼管の連結装置は、トンネル施工用重機の鋼管打設アームに搭載されると共に打設装置の前方に設置された加締め機であって先行鋼管の後端部に後続鋼管を一体に連結する加締め機を備える。加締め機は、後続鋼管の前端部に外嵌された先行鋼管の後端部を外周側から加圧して加締める加締め用ツールを有する。加締め用ツールは、加締め動作時の加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも小さい固定用圧力を択一的に出力可能であり、後続鋼管の前端部に外嵌される前の先行鋼管の後端部に固定用圧力を作用させることによって先行鋼管の後端部を固定し、固定された先行鋼管の後端部に後続鋼管の前端部が挿入された後に加締め用圧力を作用させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの地山に打設される先受け鋼管の連結装置であって、
トンネル施工用重機の鋼管打設アームに搭載されると共に前記鋼管打設アームに搭載された打設装置の前方に設置された加締め機であって、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を一体に連結する加締め機を、備え、
前記加締め機は、
前記後続鋼管の前端部に外嵌された前記先行鋼管の後端部を外周側から加圧し、当該先行鋼管の後端部を塑性変形させることで加締める加締め用ツールを有し、
前記加締め用ツールは、加締め動作時の加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも小さい固定用圧力を択一的に出力可能であり、前記後続鋼管の前端部に外嵌される前の前記先行鋼管の後端部に前記固定用圧力を作用させることによって前記先行鋼管の後端部を固定し、固定された前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部が挿入された後に前記加締め用圧力を作用させる、
先受け鋼管の連結装置。
【請求項2】
前記加締め機は、前記打設装置によって打設される前記鋼管が挿通する囲繞スリーブを有し、
前記囲繞スリーブの内側に形成される中空部に向けて前記加締め用ツールが環状に配置されている、
請求項1に記載の先受け鋼管の連結装置。
【請求項3】
前記連結装置は、前記加締め機に前記後続鋼管を装填するための装填ユニットを更に備え、
前記装填ユニットは、前記加締め用ツールによって固定されている前記先行鋼管の後方から前記後続鋼管を前送りすることで前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部を挿入させる、
請求項1又は2に記載の先受け鋼管の連結装置。
【請求項4】
トンネルの地山に打設される先受け鋼管の連結方法であって、
トンネル施工用重機の削岩機アームに搭載されると共に前記削岩機アームに搭載された前記先受け鋼管の打設装置の前方に設置された加締め機を用いて、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を一体に連結する連結工程を有し、
前記加締め機の加締め用ツールは、加締め動作時の加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも小さい固定用圧力を択一的に出力可能であり、
前記連結工程において、
前記後続鋼管の前端部に外嵌される前の前記先行鋼管の後端部に前記固定用圧力を作用させることによって前記先行鋼管の後端部を固定しておき、その状態で前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部を挿入した後、前記後続鋼管の前端部に外嵌された前記先行鋼管の後端部を外周側から前記加締め用圧力によって加圧することにより当該先行鋼管の後端部を塑性変形させる、
先受け鋼管の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先受け鋼管の連結装置及び連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NATM(New Austrian Tunneling Method)工法によるトンネル施工の際の補助工法
として、AGF(All Ground Fasten)工法が知られている。AGF工法では、トンネル
の前方上部からの岩盤の崩落を防止するために、トンネル切羽の周辺部からトンネル軸方向やや斜め上方の地山へ向けて多数の長尺な先受け鋼管を放射状に打ち込み、当該先受け鋼管内を通じて地山改良剤を注入して地山を改良することが行われる。
【0003】
地山への先受け鋼管の打設(打ち込み)は、一般に、ドリフター等の回転打撃機構を有する打設装置を削岩機アームに搭載したトンネル施工用重機(ドリルジャンボ等)の削岩機アームに搭載される打設装置によって行われる。
【0004】
AGF工法に用いる先受け鋼管は長尺であるため、通常は、1本あたりの長さが3メートル程度の鋼管を、順次、一直線に継ぎ足しながら、地山に打設する。つまり、先受け鋼管の打設は、鋼管の継ぎ足し(連結)と地山への鋼管打ち込みを交互に行いながら行われる。ここで、鋼管同士を連結する継手技術として、例えば、ネジ方式やバヨネット方式の継手方法が知られている(例えば、特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-190270号公報
【特許文献2】特開2016-69908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先受け鋼管に用いる鋼管同士をネジ式継手やバヨネット方式で連結する場合、連結部分が強度不足となることが懸念される。また、先受け鋼管に用いる鋼管同士の連結技術に関して、連結部分の強度向上に加えて施工性の優れた技術が望まれている。
【0007】
本開示に係る技術は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、トンネルの地山に打設される先受け鋼管を連結する際、連結部分の強度及び施工性の優れた技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(態様1)
本開示に係る態様1は、トンネルの地山に打設される先受け鋼管の連結装置であって、トンネル施工用重機の鋼管打設アームに搭載されると共に前記鋼管打設アームに搭載された打設装置の前方に設置された加締め機であって、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を一体に連結する加締め機を、備え、前記加締め機は、前記後続鋼管の前端部に外嵌された前記先行鋼管の後端部を外周側から加圧し、当該先行鋼管の後端部を塑性変形させることで加締める加締め用ツールを有し、前記加締め用ツールは、加締め動作時の加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも小さい固定用圧力を択一的に出力可能であり、前記後続鋼管の前端部に外嵌される前の前記先行鋼管の後端部に前記固定用圧力を作用させることによって前記先行鋼管の後端部を固定し、固定された前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部が挿入された後に前記加締
め用圧力を作用させる。
【0009】
(態様2)
態様1において、前記加締め機は、前記打設装置によって打設される前記鋼管が挿通する囲繞スリーブを有し、前記囲繞スリーブの内側に形成される中空部に向けて前記加締め用ツールが環状に配置されていてもよい。
【0010】
(態様3)
態様1又は2において、前記連結装置は、前記加締め機に前記後続鋼管を装填するための装填ユニットを更に備え、前記装填ユニットは、前記加締め用ツールによって固定されている前記先行鋼管の後方から前記後続鋼管を前送りすることで前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部を挿入させてもよい。
【0011】
(態様4)
態様1又は2において、前記加締め機は、前記先行鋼管の後端部を固定した後、前記固定用圧力を解除せずに前記加締め用圧力を前記先行鋼管の後端部に作用させることによって前記先行鋼管の後端部を前記後続鋼管の前端部に加締めてもよい。
【0012】
(態様5)
本開示に係る態様5は、トンネルの地山に打設される先受け鋼管の連結方法であって、トンネル施工用重機の削岩機アームに搭載されると共に前記削岩機アームに搭載された前記先受け鋼管の打設装置の前方に設置された加締め機を用いて、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を一体に連結する連結工程を有し、前記加締め機の加締め用ツールは、加締め動作時の加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも小さい固定用圧力を択一的に出力可能であり、前記連結工程において、前記後続鋼管の前端部に外嵌される前の前記先行鋼管の後端部に前記固定用圧力を作用させることによって前記先行鋼管の後端部を固定しておき、その状態で前記先行鋼管の後端部に前記後続鋼管の前端部を挿入した後、前記後続鋼管の前端部に外嵌された前記先行鋼管の後端部を外周側から前記加締め用圧力によって加圧することにより当該先行鋼管の後端部を塑性変形させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トンネルの地山に打設される先受け鋼管を連結する際、連結部分の強度及び施工性の優れた技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る先受け鋼管の打設システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、ガイドシェルの概略側面図である。
図3図3は、加締め機を後方から眺めた概略図である。
図4図4は、先受け鋼管の分解図である。
図5図5は、打ち込み用ロッドの分解図である。
図6図6は、装填ユニットの概略斜視図である。
図7図7は、ドリルジャンボの制御装置及び連結装置のコントローラを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本開示に係る先受け鋼管の連結装置及び連結方法について説明する。本開示に係る先受け鋼管の連結装置及び連結方法は、NATM(New Austrian Tunneling Method)工法による
トンネル施工の際の補助工法として適用されるAGF(All Ground Fasten)工法に関す
るものである。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る先受け鋼管(AGF鋼管)の打設システムSの概略構成を示す図である。図1には、トンネル施工用重機であるドリルジャンボ100により先受け鋼管10を地山に打ち込んでいる状態を概略的に示している。ドリルジャンボ100は、機体に対して旋回可能に連結されたブーム2、ブーム2に取り付けられた鋼管打設アームとしてのガイドシェル3、ガイドシェル3に搭載されたドリフター4等を備える。図1においては、ドリルジャンボ100を概略的に示している。
【0017】
ブーム2は、適宜の駆動機構によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作等が自在である。また、ブーム2には、ガイドシェル3を駆動する駆動機構(図示省略)が設けられており、この駆動機構によってガイドシェル3の水平方向への揺動動作、垂直方向への揺動動作、前後方向への進退動が自在となっている。ドリフター4は、回転打撃機構を有する先受け鋼管10の打設装置である。
【0018】
図2は、ガイドシェル3の概略側面図である。ガイドシェル3は、例えば概略シグマ形の横断面を有する長尺なガイド外殻部材である。以下、ガイドシェル3の長尺方向を、ガイドシェル3の前後方向として説明する。
【0019】
図2に示すように、ガイドシェル3の上面側には、ドリフター4が搭載されている。ドリフター4は、図示しない駆動機構の作動によって、ガイドシェル3の長尺方向(前後方向)に沿って進退動することが可能になっている。ドリフター4の駆動方式は、例えば油圧式アクチュエータである。但し、上記駆動方式は特に限定されない。
【0020】
ドリフター4は、ガイドシェル3の長尺方向(前後方向)に沿って進退動する機体41と、当該機体41の前部側に取り付けられたロッド状のシャンクアダプター42を有する。ドリフター4のシャンクアダプター42は、ガイドシェル3の長尺方向における前側に向かって延びるように配置されている。シャンクアダプター42の前端部には、後述する打ち込み用ロッド(延長用ロッド)と接続可能なジョイント部43が設けられている。ジョイント部43には、シャンクアダプター42の外周面に形成されたネジ部(雄ネジ)が形成されている。シャンクアダプター42は、機体41内に配置された主軸と一体に接続されており、機体41が備える回転機構及び打撃機構からの駆動力を打ち込み用ロッドに伝達することができる。なお、ドリフター4は、シャンクアダプター42を軸周りの正逆方向(時計回り、反時計周り)に回転駆動することができる。なお、シャンクアダプター42の中心軸を符号Xで示す。シャンクアダプター42の中心軸Xは、ガイドシェル3の長尺方向に沿った軸線と平行である。
【0021】
また、図2に示すように、ガイドシェル3の前端部には、先受け鋼管10の連結装置5が搭載されている。連結装置5は、加締め機6、加締め機6の駆動源51、これらを設置する架台52等を備えている。図示のように、加締め機6は架台52上に載置されており、ガイドシェル3に搭載されたドリフター4の前方に設置されている。また、加締め機6は、シャンクアダプター42の中心軸Xを通る位置に設置されている。本実施形態において、加締め機6の駆動源51は油圧式であるが、これには限定されない。先受け鋼管10はドリフター4の移動ストロークに比べて長尺であるため、1本あたりの長さが3メートル程度の鋼管を、順次、連結装置5を用いて一直線に継ぎ足しながら、地山に打設する。
【0022】
また、架台52には、先受け鋼管10の打設時にガイドシェル3の姿勢を安定させるための拘束用ピン7が設けられている。拘束用ピン7は、ガイドシェル3の長尺方向(前後
方向)の前方に向かって架台から延びている。拘束用ピン7は、先受け鋼管10を打設する際、その先端部をトンネルの切羽(掘削面)に当接することで、施工時におけるガイドシェル3の姿勢を安定させる。例えば、拘束用ピン7は、図2に示すように先端部が尖っていてもよい。なお、本実施形態において、拘束用ピン7は任意の部材である。また、図2に示す符号53は、後述するドリルロッドの回転を拘束するための可動式のオープンエンドレンチ53である。オープンエンドレンチ53は、駆動源51からの油圧によって上下方向に出没自在に駆動される。図2には、没入位置に切り替えられた状態のオープンエンドレンチ53を実線で示し、突出位置に切り替えられた状態のオープンエンドレンチ53を破線で示す。突出位置は、没入位置に比べて相対的に上方に突出している。
【0023】
図3は、加締め機6を後方(図2に示すA方向)から眺めた概略図である。加締め機6は、先受け鋼管10を構成する鋼管(図4を参照)の端部同士を加締め加工によって一直線に連結する装置である。加締め加工自体は周知であるため詳しい説明を省略するが、金属に一定以上の力を加えて塑性変形をさせることにより、複数の部品同士を一体に接続する金属加工の一種である。詳細については後述するが、加締め機6は、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を加締めによって一体に連結する。
【0024】
先受け鋼管10を構成する鋼管は、ドリフター4によって地山に打設される。本実施形態における加締め機6は、ドリフター4によって打設される鋼管が挿通する筒状の囲繞スリーブ61を有し、囲繞スリーブ61の内側には囲繞スリーブ61と干渉することなく鋼管を挿通させるための中空部62が形成されている。加締め機6における中空部62は略円横断面を有しており、その中心はシャンクアダプター42の中心軸Xを通るように設定されている。
【0025】
加締め機6は、先受け鋼管10を構成する鋼管を外周側から加圧し、当該先行鋼管の後端部を塑性変形させることで加締めるための複数の加締め用ツール63を有している。複数の加締め用ツール63は、囲繞スリーブ61に設けられており、中空部62を臨むように円環状に並んで配置されている。以下では、囲繞スリーブ61における前後方向のうち、加締め用ツール63が配置されている位置を「加締め位置」と呼ぶ。加締め用ツール63は、先受け鋼管10を構成する鋼管を外周側から加圧することによって塑性変形させるための金型片であり、駆動源51からの油圧によって動作する。各加締め用ツール63は、具体的には、中空部62の中心に向かって前進移動(図3におけるB方向への移動)及び中空部62の中心から遠ざかる後退移動(図3におけるC方向への移動)が可能である。加締め機6は、各加締め用ツール63を、「鋼管加締め用位置」、「鋼管固定用位置」、及び「退避位置」に切り替え可能である。各加締め用ツール63が中空部62の中心から遠ざかる方向(図3におけるC方向)に最も後退した退避位置に保持された状態では、中空部62の直径が先受け鋼管10を構成する鋼管の外径に比べて相対的に大きくなる。ドリフター4によって鋼管を地山に打設している工程では、各加締め用ツール63は「退避位置」に保持される。これにより、先受け鋼管10を構成する鋼管を、囲繞スリーブ61に挿通させた状態で当該鋼管を地山に円滑に打ち込むことができる。
【0026】
各加締め用ツール63の駆動機構(例えば、油圧シリンダー)に駆動源51からの作動油圧が供給されると、各加締め用ツール63が「退避位置」から中空部62の中心側(図3におけるB方向側)に向かって前進する。なお、各加締め用ツール63が「退避位置」から「鋼管加締め用位置」に移動する際の各加締め用ツール63の作動量(退避位置を基準としたときの、各加締め用ツール63の前進量)は、「退避位置」から「鋼管固定用位置」に移動する際の同作動量に比べて、相対的に大きく設定される。そのため、各加締め用ツール63を「鋼管加締め用位置」に移動させる際に鋼管に作用する「加締め用圧力」は、各加締め用ツール63を「鋼管固定用位置」に移動させる際に鋼管に作用する「固定
用圧力」に比べて相対的に大きくなる。加締め機6は、加締め用ツール63の作動時に、加締め用圧力と、当該加締め用圧力よりも相対的に小さな固定用圧力を択一的に出力することができる。
【0027】
本実施形態において、「加締め用圧力」は、鋼管を適正な塑性変形させることができる圧力として設定される。一方、「固定用圧力」は、鋼管に塑性変形や傷が生じることがなく、且つ、鋼管の軸方向に規定値以内の外力が作用しても鋼管の位置がずれないような適正な圧力として、「加締め用圧力」に比べて相対的に小さな値として設定される。「加締め用圧力」及び「固定用圧力」の具体的な値は特に限定されず、使用する鋼管の仕様や施工条件に応じて適宜設定することができるが、例えば「加締め用圧力」を200bar程度、「固定用圧力」を80bar程度とすることが例示的に挙げられる。
【0028】
図4は、先受け鋼管10の分解図である。先受け鋼管10は、先端鋼管ユニット11、先端鋼管12、延長用鋼管13、末端鋼管14によって構成されている。なお、先受け鋼管10の全長やその他の条件に応じて延長用鋼管13の本数を適宜変更することができる。
【0029】
先端鋼管ユニット11は、先受け鋼管10の軸方向における先端(前端)を形成する鋼管ユニットであり、末端鋼管14は先受け鋼管10の軸方向における末端(後端)を形成する鋼管である。先端鋼管12は、先端鋼管ユニット11の後端に接続される鋼管であり、延長用鋼管13は、先端鋼管12及び末端鋼管14の間に連結される鋼管である。
【0030】
先端鋼管ユニット11の前端側には、地山を削孔するための削孔用ビットを有する削孔ビットユニット111が設けられており、削孔ビットユニット111の後端に円筒状の鋼管部112が連結されている。削孔ビットユニット111は、鋼管部112の外径よりも若干大きな横断面を有している。削孔ビットユニット111の削孔用ビットは、例えば、複数の超硬チップを含んで構成されていてもよい。先端鋼管ユニット11における削孔ビットユニット111の後面(鋼管部112内の中空部を臨む面)には、後述する先端アダプター21(図5を参照)と係脱自在な係合部(図示せず)が設けられている。
【0031】
先端鋼管12、延長用鋼管13及び末端鋼管14は、先端鋼管12が延長用鋼管13及び末端鋼管14に比べて軸方向長さの違いはあるが、実質的に同一構造である。先端鋼管12、延長用鋼管13及び末端鋼管14の前端側には、他の一般部121,131,141に比べて一回り外径が小さな前端小径部122,132,142が設けられている。削孔ビットユニット111の鋼管部112、先端鋼管12、延長用鋼管13及び末端鋼管14は、外径及び肉厚が同一の鋼管によって形成されている。また、先端鋼管12、延長用鋼管13及び末端鋼管14は、内部が中空で前端部及び後端部を開口端とする円筒鋼管として形成されている。削孔ビットユニット111の鋼管部112は、内部が中空で後端部を開口端とする円筒鋼管として形成されている。
【0032】
図4に示す先受け鋼管10の構成例では、まず、先端鋼管ユニット11における鋼管部112の後端部113に先端鋼管12の前端小径部122を挿入し、加締め機6によって鋼管同士を連結することで形成された第1鋼管組立ユニットが、ドリフター4によって地山に打設される。その後、先端鋼管12の後端部123に延長用鋼管13の前端小径部132を挿入し、加締め機6によって鋼管同士を連結することで形成された第2鋼管組立ユニットが、ドリフター4によって地山に打設される。最後に、延長用鋼管13の後端部133に末端鋼管14の前端小径部142を挿入し、加締め機6によって鋼管同士を連結することで形成された第3鋼管組立ユニットが、ドリフター4によって地山に打設される。
【0033】
上記のように構成される先受け鋼管10は、地山への打設完了後、地山へ注入剤(例え
ば、地山改良剤)を注入するための注入孔(図示せず)が適所に設けられている。例えば、注入孔は、先端鋼管12、延長用鋼管13、及び末端鋼管14の周壁形成された貫通孔として形成されていてもよい。注入孔の数、大きさ、位置等は適宜変更することができる。図4に示す符号15は、地山への先受け鋼管10の打設完了後、末端鋼管14の後端部143に形成された開口を閉塞するように取り付けられるパッカーである。パッカー15には、先受け鋼管10の内部に注入剤を供給するための注入用チューブ16が付設されており、注入用チューブ16を通じて先受け鋼管10内に圧送された注入剤は、先受け鋼管10の注入孔を通じて地山内に注入され、地山の改良がなされる。
【0034】
図5は、先受け鋼管10を地山に打ち込むための打ち込み用ロッドの分解図である。打ち込み用ロッド20は、先端アダプター21、先端ドリルロッド22、延長用ドリルロッド23,24を有する。図5に示す例では、2本の延長用ドリルロッド23,24が図示されているが、その本数は、先受け鋼管10における延長用鋼管13の本数等に応じて増減なし得る。
【0035】
先端ドリルロッド22、延長用ドリルロッド23,24は、軸方向に延びる長尺な鋼製のロッド部材であり、前端側に前端側ジョイント部FJが形成され、後端側に後端側ジョイント部RJが形成されている。先端ドリルロッド22は、延長用ドリルロッド23,24に比べて長い点を除いて実質的に同一構造である。上述した各ドリルロッドの前端側ジョイント部FJには外周面に雄ネジが形成されている。一方、各ドリルロッドの後端側ジョイント部RJには、他のドリルロッドにおける前端側ジョイント部FJ、或いは、上述したシャンクアダプター42におけるジョイント部43を挿入可能な中空状インサート構造を有している。そして、後端側ジョイント部RJの内面には、他のドリルロッドにおける前端側ジョイント部FJ、或いは、上述したシャンクアダプター42におけるジョイント部43に形成された雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成されている。
【0036】
先端アダプター21は、先端ドリルロッド22の前端側に接続されるアダプターである。先端アダプター21の後端側には、他のドリルロッドと同様、内面に雌ネジが形成された後端側ジョイント部RJが形成されている。先端アダプター21は、後端側ジョイント部RJと先端ドリルロッド22の前端側ジョイント部FJとを連結することで先端ロッドユニット25を形成する。
【0037】
さらに、先端アダプター21の前端側には前端側ジョイント部26が設けられている。前端側ジョイント部26は、先端鋼管ユニット11の係合部と係脱自在となっている。具体的には、先端アダプター21の前端側ジョイント部26は、前端側ジョイント部26を軸周りに正逆方向(時計回り、反時計周り)に回転駆動することで、先端鋼管ユニット11の係合部に対する係合とその解除を容易に切り替えることができる構造となっている。例えば、先端アダプター21の前端側ジョイント部26を先端鋼管ユニット11の係合部と当接した状態で、先端アダプター21を軸中心として反時計周りに回転させることによって、先端鋼管ユニット11の係合部に対して先端アダプター21の前端側ジョイント部26を係合させることができる。一方、先端アダプター21を時計周りに回転させることによって、先端鋼管ユニット11の係合部に対する先端アダプター21の係合を容易に解除することができる。
【0038】
また、図5に示す符号27は、オープンエンドレンチ53が作動して没入位置から突出位置に切り替えられた際に、オープンエンドレンチ53と係合するレンチ係合部である。レンチ係合部27は、先端ドリルロッド22及び延長用ドリルロッド23,24に形成されており、オープンエンドレンチ53との係合によって軸回りの回転が拘束(規制)される。先端ドリルロッド22及び延長用ドリルロッド23,24のレンチ係合部27は、オープンエンドレンチ53と係合可能な対向する一対の平面を含んで構成されていてもよい
。また、図5に示すように、先端ドリルロッド22及び延長用ドリルロッド23,24のレンチ係合部27は、先端ドリルロッド22及び延長用ドリルロッド23,24における後端側ジョイント部RJ寄り(近傍)の部分に形成されている。
【0039】
図6は、先受け鋼管10を構成する鋼管を加締め機6に装填するための装填ユニット30の一例を示す概略斜視図である。装填ユニット30は、ガイドシェル3に搭載されている。装填ユニット30は、特に、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を継ぎ足す際、当該後続鋼管を加締め機6に装填することで作業性の向上に資する。ここでいう後続鋼管としては、上述した延長用鋼管13及び末端鋼管14が該当する。
【0040】
装填ユニット30は、ガイドシェル3の前後方向に沿って離れた2箇所に設けられる取付フレーム31(後方の取付フレーム31は図示せず)によってガイドシェル3に取り付けられている。取付フレーム31は、ドリフター4の動作と干渉しない位置に配置されている。
【0041】
装填ユニット30は、支持ロッド32、支持ロッド32に設けられた前方グリッパー33及び後方グリッパー34、油圧シリンダー35等を有している。支持ロッド32は、ガイドシェル3の前後方向と平行(つまり、ドリフター4におけるシャンクアダプター42
の中心軸Xと平行)に支持されている。前方グリッパー33及び後方グリッパー34は、
開閉式の把持機構であるトング36を開閉動作することで先受け鋼管10を構成する各種鋼管の把持やその解除が自在である。
【0042】
ここで、前方グリッパー33は支持ロッド32に対して固定式である一方、後方グリッパー34は支持ロッド32に沿って摺動自在であり、支持ロッド32の延在方向(前後方向)に沿って往復動が可能である。油圧シリンダー35は、固定式の前方グリッパー33と可動式の後方グリッパー34間に架け渡されており、作動油圧によって伸縮することで後方グリッパー34を支持ロッド32の前後方向に沿って前進又は後進させることができる。
【0043】
後続鋼管としての延長用鋼管13や末端鋼管14は、鋼管内に延長用ドリルロッド23,24を挿入した状態で装填ユニット30によって加締め機6に装填される場合がある。この場合、先行鋼管に接続した延長用鋼管13や末端鋼管14の打設する準備作業として、鋼管内に挿入された延長用ドリルロッド23,24の後端側ジョイント部RJをドリフター4のシャンクアダプター42におけるジョイント部43と接続する必要がある。
【0044】
そこで、本実施形態における後方グリッパー34は、後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)に挿入された延長用ドリルロッド23,24の後端側ジョイント部RJを把持可能なドリルロッド把持機構37が設けられている。ドリルロッド把持機構37は、後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)の後端部133,143から外部に突出する後端側ジョイント部RJの把持と、その解除が自在である。ドリルロッド把持機構37の開閉動作は、後方グリッパー34におけるトング36の開閉動作と連動して行われるように構成されていてもよい。また、ドリルロッド把持機構37によって延長用ドリルロッド23,24の後端側ジョイント部RJが把持された状態では、当該延長用ドリルロッド23,24が後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)と同芯位置に保持されるようになっている。
【0045】
また、固定式の前方グリッパー33は、加締め機6の近傍かつ後段に配置される。前方グリッパー33は、トング36を閉じた状態でも後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)を遊嵌した状態に把持するように構成されている。つまり、前方グリッパー33は、
トング36によって後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)を把持した状態であって、前方グリッパー33に対する後続鋼管の前後方向へのスライドが許容されるようになっている。そのため、前方グリッパー33及び後方グリッパー34によって後続鋼管を把持した状態から、後方グリッパー34を支持ロッド32に沿って前進させることによって、後続鋼管を加締め機6に向かって前送りすることができる。
【0046】
更に、装填ユニット30は、支持ロッド32を図6に示すD方向及びE方向に所定範囲で回動させることができ、支持ロッド32の回動に追従して前方グリッパー33及び後方グリッパー34を旋回させることができる。前方グリッパー33及び後方グリッパー34がD方向に旋回(外旋回)すると、ドリフター4の走行経路上から前方グリッパー33及び後方グリッパー34が退避した退避位置に位置付けられる。一方、前方グリッパー33及び後方グリッパー34がE方向に旋回(内旋回)すると、前方グリッパー33及び後方グリッパー34に把持された後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)と、ドリルロッド把持機構37に把持された延長用ドリルロッド23,24が、シャンクアダプター42の中心軸X及び先行鋼管と同軸上に配置された状態(以下、「同軸配置状態」という)となる。この同軸配置状態から、後方グリッパー34を支持ロッド32に沿って前進させることで、後続鋼管(延長用鋼管13や末端鋼管14)と、当該後続鋼管に挿入された延長用ドリルロッド23,24が加締め機6に向かって装填され、先行鋼管の後端部に後続鋼管の前端部を人手に拠らず機械的に挿入させることができる。
【0047】
図7は、ドリルジャンボ100の制御装置8及び連結装置5のコントローラ9を説明する図である。制御装置8は、例えば入力装置、処理装置、出力装置などを備えたコンピュータであり、ドリルジャンボ100の操縦席に設置されていてもよい。図7に示す例では、制御装置40は、ドリルジャンボ100のブーム2、ガイドシェル3、ドリフター4等を制御するコントローラ81、操作盤82、キーボード83、ポインティングデバイス84、ディスプレイ装置85等を有する。連結装置5のコントローラ9は、例えばワイヤレス型のコンピュータ端末装置であり、加締め機6及び装填ユニット30に対する動作指令を受け付ける入力装置として各種スイッチ類を備えている。コントローラ9,81は、各
種プログラムを実行するためのプロセッサや、プロセッサの動作に必要な各種プログラムや各種情報を記憶する記憶装置(記憶部)等を含んで構成することができる。
【0048】
次に、打設システムSによる先受け鋼管10の打設方法について例示的に説明する。
【0049】
まず、先受け鋼管10を打設する準備工程として、先端鋼管ユニット11と先端鋼管12を加締め機6の加締めによって相互連結し、第1鋼管組立ユニットを組み立てる。第1鋼管組立ユニットの組み立ては、ドリルジャンボ100のガイドシェル3を坑内地面近傍に配置した状態で行うことができる。先端鋼管ユニット11と先端鋼管12の連結に当たり、例えば、先端鋼管ユニット11における後端部113が、加締め用ツール63が配置されている加締め位置に合致するように先端鋼管ユニット11を加締め機6の囲繞スリーブ61内(中空部62)に挿入する。ここで、先端鋼管ユニット11の前端側には削孔ビットユニット111が設けられているため、加締め機6の囲繞スリーブ61における前方側から先端鋼管ユニット11を中空部62に挿入してもよい。そして、加締め機6の囲繞スリーブ61における後方側から先端鋼管12の前端小径部122を中空部62に挿入し、当該前端小径部122を先端鋼管ユニット11における後端部113に挿入した状態で加締め機6を動作させる。そして、加締め機6によって先端鋼管ユニット11における後端部113を先端鋼管12の前端小径部122に一体に加締め、第1鋼管組立ユニットを組み立てる。
【0050】
また、準備工程において、先端鋼管12の後端に継ぎ足す後続鋼管としての延長用鋼管13と延長用ドリルロッド23を用意し、延長用ドリルロッド23が挿入された延長用鋼
管13を装填ユニット30の前方グリッパー33及び後方グリッパー34に把持させると共に、ドリルロッド把持機構37によって延長用ドリルロッド23の後端側ジョイント部RJを把持させる。このとき、前方グリッパー33及び後方グリッパー34は退避位置に保持されている。
【0051】
更に、準備工程においては、ドリフター4のシャンクアダプター42に先端ロッドユニット25を予め接続しておく。つまり、シャンクアダプター42のジョイント部43に先端ドリルロッド22の後端側ジョイント部RJがネジ接続され、先端ドリルロッド22の前端側ジョイント部FJに先端アダプター21の後端側ジョイント部RJがネジ接続される。これらのネジ接続は手動で行ってもよい。
【0052】
次いで、ドリルジャンボ100のブーム2及びガイドシェル3を操作し、地山における鋼管打設目標位置に先端鋼管ユニット11の削孔ビットユニット111が正対するように位置合わせを行う。この位置合わせが終わると、ドリフター4を前進させつつシャンクアダプター42を反時計周りに回転させる。ここで、加締め機6における中空部62の中心は、シャンクアダプター42の中心軸Xを通るように設定されているため、ドリフター4を前送りすることで先端アダプター21の前端側ジョイント部26が先端鋼管ユニット11の係合部に係合する。これにより、ドリフター4におけるシャンクアダプター42の回転力が先端鋼管ユニット11に伝達され、先端鋼管ユニット11及び先端鋼管12が一体となった第1鋼管組立ユニットが回転を開始する。これにより、先端鋼管ユニット11の削孔ビットユニット111を先端として、第1鋼管組立ユニットを地山に打設することができる。なお、ドリフター4によって鋼管を地山に打設する際には、各加締め用ツール63が退避位置に保持されると共に、オープンエンドレンチ53が没入位置に保持されている。これにより、ドリフター4によって鋼管を円滑に打設することができる。
【0053】
ここで、第1鋼管組立ユニットの打設は、地山に打ち込まれている先端鋼管12の後端部123が加締め機6の囲繞スリーブ61の長さ方向における加締め位置に合致する時点で完了する。ドリフター4の作動を停止して第1鋼管組立ユニットの打設が完了すると、加締め機6の各加締め用ツール63における出力が、固定用圧力に切り替えられる。すなわち、加締め機6の各加締め用ツール63を退避位置から鋼管固定用位置に切り替え、加締め用ツール63によって先端鋼管12の後端部123の位置がずれないように固定する。これによれば、先端鋼管12(先行鋼管)の後端部123に単独で固定用圧力を作用させることによって、後に挿入される延長用鋼管13の前端小径部132を正確な位置まで導くことができるようになる(延長用鋼管13の挿入動作については後述する。)。
【0054】
この状態から、ドリフター4におけるシャンクアダプター42を鋼管打設時とは反対側の時計周り方向に回転させることで、先端鋼管ユニット11に対する先端アダプター21の係合を解除する。その後、加締め機6のオープンエンドレンチ53を作動させ、没入位置から突出位置に切り替える。その結果、先端ドリルロッド22のレンチ係合部27がオープンエンドレンチ53によって係合されることで、先端ドリルロッド22の回転が規制される。そこで、次に、ドリフター4におけるシャンクアダプター42を時計周り方向に回転させる。これにより、ドリフター4におけるシャンクアダプター42から先端ドリルロッド22の後端側ジョイント部RJを取り外すことができる。ドリフター4におけるシャンクアダプター42を先端ドリルロッド22から取り外した後は、オープンエンドレンチ53が没入位置へと切り替えられる。
【0055】
次に、ドリフター4を一旦後退させた後、先端鋼管12の後端に継ぎ足す後続鋼管としての延長用鋼管13と延長用ドリルロッド23を装填ユニット30によって装填する。具体的には、延長用鋼管13と延長用ドリルロッド23を保持する前方グリッパー33及び後方グリッパー34を退避位置から内旋回させることによって同軸配置状態に移行させる
。なお、前方グリッパー33及び後方グリッパー34を内旋回させる際には、延長用鋼管13と干渉しない位置までドリフター4を後退させておく。そして、上述した同軸配置状態から後方グリッパー34を前進させることで、後続鋼管としての延長用鋼管13と延長用ドリルロッド23を加締め機6に向かって前送りする。そして、加締め機6の各加締め用ツール63によって固定されている先端鋼管12(先行鋼管)における後端部123に対して、延長用鋼管13(後続鋼管)における前端小径部132が所定の位置まで挿入された時点で延長用鋼管13(後続鋼管)の前送りが停止される。例えば、延長用鋼管13における前端小径部132の根元(前端小径部132と一般部131の境界部)まで先端鋼管12の後端部123に挿入された時点で延長用鋼管13の前送りが停止される。
【0056】
この状態から、加締め機6の各加締め用ツール63における出力が固定用圧力から加締め用圧力に切り替えられる。つまり、加締め機6は、先端鋼管12(先行鋼管)の後端部123を固定した後、加締め用圧力を先端鋼管12の後端部123に作用させる。すなわち、加締め機6の各加締め用ツール63を、鋼管固定用位置から鋼管加締め用位置に移動させる。その結果、延長用鋼管13(後続鋼管)の前端小径部132に外嵌された先端鋼管12(先行鋼管)の後端部123を外周側から加締め用圧力によって加圧することととなり、各加締め用ツール63が鋼管加締め用位置に移動することで、先端鋼管12の後端部123が適正な塑性変形を起こすことによって先端鋼管12の後端部123が延長用鋼管13の前端小径部132に加締められる。これにより、先行鋼管としての先端鋼管12に後続鋼管としての延長用鋼管13を一体に連結することができる(連結工程)。これにより、第1鋼管組立ユニットに延長用鋼管13が継ぎ足された第2鋼管組立ユニットが形成される。なお、先端鋼管12の後端部123を加締める際、当該後端部123に加締め用圧力を継続して作用させる加締め継続時間は予め設定しておくことができる。加締め継続時間は、適正な加締めが行われる範囲内で自由に設定することができるが、数秒程度で適正な加締めを十分に行うことができる。
【0057】
第1鋼管組立ユニットに対する延長用鋼管13の継ぎ足しが完了した後、前方グリッパー33及び後方グリッパー34のトング36による延長用鋼管13の把持を解除すると共に、ドリルロッド把持機構37による延長用ドリルロッド23の把持を解除する。そして、前方グリッパー33及び後方グリッパー34を外旋回させることによって再び退避位置へと退避させる。また、第2鋼管組立ユニットの打設を開始する前の準備工程として、第2鋼管組立ユニットの打設が完了した後に延長用鋼管13(先行鋼管)に継ぎ足す末端鋼管14及び延長用ドリルロッド24を用意し、延長用ドリルロッド24が挿入された末端鋼管14を装填ユニット30の前方グリッパー33及び後方グリッパー34に把持させると共に、ドリルロッド把持機構37によって延長用ドリルロッド24の後端側ジョイント部RJを把持させておく。
【0058】
上記の準備工程の終了後、再び、ドリフター4のシャンクアダプター42を反時計周りに回転させながら前進させる。これにより、シャンクアダプター42が延長用ドリルロッド23の後端側ジョイント部RJと接続され、次いで、延長用ドリルロッド23の前端側ジョイント部FJが先端ドリルロッド22の後端側ジョイント部RJに接続され、最終的に先端アダプター21の前端側ジョイント部26が先端鋼管ユニット11の係合部に係合することで、第2鋼管組立ユニットの地山への打設が開始される。
【0059】
第2鋼管組立ユニットの打設は、地山に打ち込まれている延長用鋼管13の後端部133が加締め機6の囲繞スリーブ61における加締め位置に合致する時点で完了し、ドリフター4の作動が停止される。第2鋼管組立ユニットの打設が完了した後の手順は、第1鋼管組立ユニットの打設完了後の場合と基本的に同様である。すなわち、加締め機6の各加締め用ツール63を退避位置から鋼管固定用位置に切り替え、加締め用ツール63によって延長用鋼管13の後端部133の位置がずれないように固定する。この状態から、ドリ
フター4におけるシャンクアダプター42を時計周り方向に回転させて先端鋼管ユニット11に対する先端アダプター21の係合を解除した後、加締め機6のオープンエンドレンチ53を作動させ没入位置から突出位置に切り替える。
【0060】
次に、ドリフター4におけるシャンクアダプター42を時計周り方向に回転させ、ドリフター4におけるシャンクアダプター42から延長用ドリルロッド23の後端側ジョイント部RJを取り外す。そして、オープンエンドレンチ53を再び没入位置へと切り替え、ドリフター4を適正位置まで後退させた後、装填ユニット30に保持されている末端鋼管14及び延長用ドリルロッド24を加締め機6に装填する。すなわち、前方グリッパー33及び後方グリッパー34を退避位置から内旋回させることによって同軸配置状態に移行させた後、後方グリッパー34を前進させることで末端鋼管14及び延長用ドリルロッド24を前送りする。そして、加締め機6の各加締め用ツール63によって固定されている延長用鋼管13(先行鋼管)における後端部133に対して、末端鋼管14(後続鋼管)における前端小径部142が根元まで挿入された時点で末端鋼管14の前送りが停止され、加締め機6の各加締め用ツール63における出力が固定用圧力から加締め用圧力に切り替えられる。
【0061】
これにより、延長用鋼管13の後端部133が末端鋼管14の前端小径部142に加締められる結果、延長用鋼管13に後続鋼管としての末端鋼管14を一体に連結することができる(連結工程)。これにより、第2鋼管組立ユニットに末端鋼管14が継ぎ足された第3鋼管組立ユニットが形成される。その後、前方グリッパー33及び後方グリッパー34のトング36による末端鋼管14の把持を解除すると共に、ドリルロッド把持機構37による延長用ドリルロッド24の把持を解除し、前方グリッパー33及び後方グリッパー34を外旋回させることによって退避位置へと退避させる。以降は、第2鋼管組立ユニットの打設時と同様な手順により、第3鋼管組立ユニットを打設することができる。これにより、地山への先受け鋼管10の打設が完了する。
【0062】
以上のように、本実施形態における先受け鋼管10の連結装置5によれば、先行して地山に打設された先行鋼管の後端部に当該先行鋼管に後続して打設される後続鋼管を一体に連結する加締め機6を備える。このように先行鋼管と後続鋼管を加締めによって連結する手法を採用することで、継手部分が強度不足となることを抑制できる。すなわち、先受け鋼管10を構成する鋼管同士をネジ式継手やバヨネット方式で接続する場合には継手部分が強度面での弱点になり易い。これに対して、本実施形態に係る加締め継手方式によれば、先受け鋼管10を構成する鋼管同士の継手部分に断面欠損が生じないばかりか、連結される鋼管の端部同士が互いに重なり合って連結されるため、鋼管の一般部に比べて継手部分の強度を高めることも可能である。
【0063】
更に、加締め機6の加締め用ツール63は、加締め動作時の加締め用圧力と、鋼管固定時の固定用圧力を択一的に出力可能とし、後続鋼管の前端部に外嵌される前の先行鋼管の後端部に単独で固定用圧力を作用させることによって先行鋼管の後端部を固定し、固定された先行鋼管の後端部に後続鋼管の前端部が挿入された後に加締め用圧力を作用させるように構成している。これによれば、加締め機6によって先行鋼管と後続鋼管を一体に連結する前に、加締め機6に対する先行鋼管の相対位置がずれてしまうことを抑制できる。例えば、先行鋼管の後端部に対する後続鋼管における前端部の挿入に先立って先行鋼管の固定をしない場合、その後の挿入過程での後続鋼管による押し込み等に起因して先行鋼管の位置がずれてしまうことが想定される。この場合、先行鋼管と後続鋼管の適正な連結が困難になる虞がある。そして、このような不具合を解消するためには、ガイドシェル3を前後に移動するなど大掛かりな位置合わせが必要になり、施工性が悪化する虞がある。これに対して、本実施形態においては、加締め機6に対する先行鋼管の相対位置がずれることを抑制できるため、先行鋼管と後続鋼管を適正に連結することが容易となる上、施工性も
向上させることが可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
2・・・ブーム
3・・・ガイドシェル
4・・・ドリフター
5・・・連結装置
6・・・加締め機
10・・・先受け鋼管
30・・・装填ユニット
61・・・囲繞スリーブ
63・・・加締め用ツール
100・・・ドリルジャンボ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7