(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120563
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ワークの洗浄方法および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/127 20060101AFI20240829BHJP
B08B 3/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G11B5/127 D
B08B3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027433
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 英次郎
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201AB42
3B201BB02
3B201BC05
3B201CB01
(57)【要約】
【課題】 洗浄の品質を向上することが可能なワークの洗浄方法を提供する。
【解決手段】 第1振動体を備えるワークを洗浄する洗浄方法は、前記第1振動体をコントローラと電気的に接続し、洗浄液に前記ワークを浸漬する。前記洗浄液に前記ワークを浸漬した後、前記第1振動体を前記コントローラによって振動させ、前記ワークを洗浄する、ことを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動体を備えるワークを洗浄する洗浄方法であって、
前記第1振動体をコントローラと電気的に接続し、
洗浄液に前記ワークを浸漬し、
前記洗浄液に前記ワークを浸漬した後、前記第1振動体を前記コントローラによって振動させ、前記ワークを洗浄する、
ことを含む洗浄方法。
【請求項2】
複数の前記ワークを保持部材によって保持する、ことをさらに含む、
請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液に前記ワークを浸漬した後、洗浄槽に設けられた第2振動体を振動させ、前記ワークを洗浄する、ことをさらに含む、
請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記第1振動体を前記ワークに取り付ける、ことをさらに含み、
前記第1振動体を前記ワークに取り付けた後、前記第1振動体を前記コントローラと電気的に接続する、
請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記ワークは、ディスク装置用サスペンションであり、
前記第1振動体は、前記ディスク装置用サスペンションが備える圧電素子である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、前記ベースプレートと接続されるロードビームと、前記ロードビームに沿って設けられるフレキシャと、をさらに備え、
前記フレキシャは、前記コントローラと電気的に接続される配線端子を含むテール部と、スライダが搭載される先端部と、を有し、
前記先端部は、前記洗浄液に前記ディスク装置用サスペンションが浸漬した状態において、前記テール部よりも下方に位置する、
請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
第1振動体を備えるワークを洗浄する洗浄装置であって、
洗浄液が収容される洗浄槽と、
前記第1振動体と電気的に接続され、前記ワークが前記洗浄液に浸漬された状態において前記ワークを振動させるコントローラと、を備える、
洗浄装置。
【請求項8】
複数の前記ワークを保持する保持部材と、
前記コントローラと前記第1振動体とを電気的に接続する接続部材と、をさらに備える、
請求項7に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽に設けられ、前記ワークが前記洗浄液に浸漬された状態において前記ワークを振動させる第2振動体をさらに備える、
請求項7に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記ワークは、ディスク装置用サスペンションであり、
前記第1振動体は、前記ディスク装置用サスペンションが備える圧電素子である、
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置には、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスク、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームには、ディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンションと称す)が設けられている。
【0003】
サスペンションは、ロードビーム、ロードビームに重ねられたフレキシャなどを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部には、磁気ヘッドを構成するスライダが設けられている。
【0004】
スライダには、データの読取りあるいは書込みのアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらのロードビーム、フレキシャ、スライダなどによって、ヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0005】
サスペンションは、ディスクの高記録密度化に対応するため、小型化や高精度化がなされている。サスペンションのように小さい部材を洗浄する場合には、複数の部材をまとめて洗浄槽に投入し、洗浄するバッチ洗浄が行われる。
【0006】
例えば、特許文献1には、少なくとも1つの洗浄物を保持し、洗浄槽に浸漬される洗浄物保持具が開示される。この洗浄保持具は、前記洗浄物を配置するトレイと、このトレイの洗浄物配置面に立設され前記洗浄物の周囲を囲う囲い部材と、前記洗浄物が前記トレイから離間して離脱することを規制する離脱規制部材と、を備え、前記囲い部材に囲まれた前記洗浄物の周囲に、当該洗浄物に対して洗浄時に用いられる溶剤を流出入させる開口部を形成した、ことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1を踏まえても、ワークの洗浄に関しては、未だに種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、洗浄の品質を向上することが可能なワークの洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る洗浄方法は、第1振動体を備えるワークを洗浄する洗浄方法である。前記洗浄方法は、前記第1振動体をコントローラと電気的に接続し、洗浄液に前記ワークを浸漬し、前記洗浄液に前記ワークを浸漬した後、前記第1振動体を前記コントローラによって振動させ、前記ワークを洗浄する、ことを含む。
【0010】
前記洗浄方法は、複数の前記ワークを保持部材によって保持する、ことをさらに含んでもよい。前記洗浄方法は、前記洗浄液に前記ワークを浸漬した後、洗浄槽に設けられた第2振動体を振動させ、前記ワークを洗浄する、ことをさらに含んでもよい。
【0011】
前記洗浄方法は、前記第1振動体を前記ワークに取り付ける、ことをさらに含んでもよく、前記第1振動体を前記ワークに取り付けた後、前記第1振動体を前記コントローラと電気的に接続してもよい。
【0012】
前記ワークは、ディスク装置用サスペンションでもよく、前記第1振動体は、前記ディスク装置用サスペンションが備える圧電素子でもよい。前記ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、前記ベースプレートと接続されるロードビームと、前記ロードビームに沿って設けられるフレキシャと、をさらに備えてもよい。
【0013】
前記フレキシャは、前記コントローラと電気的に接続される配線端子を含むテール部と、スライダが搭載される先端部と、を有してもよく、前記先端部は、前記洗浄液に前記ディスク装置用サスペンションが浸漬した状態において、前記テール部よりも下方に位置してもよい。
【0014】
一実施形態に係る洗浄装置は、第1振動体を備えるワークを洗浄する洗浄装置である。前記洗浄装置は、洗浄液が収容される洗浄槽と、前記第1振動体と電気的に接続され、前記ワークが前記洗浄液に浸漬された状態において前記ワークを振動させるコントローラと、を備える。
【0015】
前記洗浄装置は、複数の前記ワークを保持する保持部材と、前記コントローラと前記第1振動体とを電気的に接続する接続部材と、をさらに備えてもよい。前記洗浄装置は、前記洗浄槽に設けられ、前記ワークが前記洗浄液に浸漬された状態において前記ワークを振動させる第2振動体をさらに備えてもよい。
【0016】
前記ワークは、ディスク装置用サスペンションでもよく、前記第1振動体は、前記ディスク装置用サスペンションが備える圧電素子でもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗浄の品質を向上することが可能なワークの洗浄方法および洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る洗浄装置の概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、ワークの一例であるディスク装置用サスペンションの概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されたワークの先端部付近を示す概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、保持部材と保持部材に保持された複数のワークとを示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る洗浄装置による洗浄工程の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、ワークの他の例であるディスク装置用サスペンションの概略的な平面図である。
【
図7】
図7は、保持部材の配列方向の他の例を示す概略的な斜視図である。
【
図8】
図8は、保持部材の他の例を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状などを実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合がある。
【0020】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を方向Xと称し、Y軸に沿った方向を方向Yと称し、Z軸に沿った方向を方向Zと称する。また、方向Zを上または上方と称し、方向Zと反対の方向を下または下方と称する場合がある。方向Zは、方向Xと方向Yを含む平面に対して法線方向である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る洗浄装置100の概略的な斜視図である。洗浄装置100は、第1振動体30を備えるワーク1を洗浄するための装置である。ここで、ワーク1とは、洗浄装置100によって洗浄される被洗浄部材の一例である。本実施形態においては、ディスク装置用サスペンションの製造工程に適用することができる洗浄装置を例示する。
【0022】
洗浄装置100は、洗浄槽11と、第2振動体12と、複数の保持部材20と、コントローラ50と、を備える。洗浄槽11には、洗浄液13が収容される。洗浄液13は、例えば、純水、イオン交換水などである。
【0023】
保持部材20は、少なくとも1つのワーク1を保持する。保持部材20は、例えば、複数のワーク1を保持する。複数の保持部材20は、
図1に示す例において、洗浄槽11の内部で方向Xに配列する。言い換えると、ワーク1は、方向Xに隣接する保持部材20によって挟まれる。
【0024】
複数の保持部材20は、方向Yに配列してもよい。複数の保持部材20は、例えば、図示しないフレームなどによって、洗浄槽11の所定の位置に位置決めされる。ワーク1は、第1振動体30を備える。
【0025】
第2振動体12は、ワーク1が洗浄液13に浸漬された状態で振動する。第2振動体12は、例えば、超音波振動子である。第2振動体12は、洗浄槽11に設けられる。第2振動体12は、一例では洗浄槽11の底壁に設けられるが、第2振動体12は洗浄槽11の側壁に設けられてもよいし、他の位置に設けられてもよい。
【0026】
コントローラ50は、ワーク1が備える第1振動体30および第2振動体12を振動させる。コントローラ50は、
図1に示す例において、信号発生器51,52を備える。信号発生器51は第1振動体30と電気的に接続され、信号発生器52は第2振動体12と電気的に接続される。
【0027】
信号発生器51は第1振動体30に制御信号(加振信号)を出力し、信号発生器52は第2振動体12に制御信号(加振信号)を出力する。これにより、第1振動体30は信号発生器51によって振動し、第2振動体12は信号発生器52によって振動する。なお、コントローラ50は、信号発生器51,52を制御するためのコンピュータなどをさらに含んでもよい。
【0028】
ここで、ワーク1の一例であるディスク装置用サスペンションについて説明する。
図2は、ワーク1の一例であるディスク装置用サスペンションの概略的な平面図である。
図3は、
図2に示されたワーク1の先端部付近を示す概略的な平面図である。
【0029】
ワーク1は、薄く細長い形状(板状)を有する。ワーク1は、ベースプレート2と、ロードビーム3と、フレキシャ4と、を備える。ベースプレート2は、例えばステンレス鋼などの金属材料によって形成されている。
【0030】
ベースプレート2は、ボス部21を有する。ベースプレート2は、ボス部21を介して、ハードディスク装置のキャリッジアームに固定される。ボス部21は、ベースプレート2を貫通する貫通孔21aを含む。貫通孔21aは、例えば、円形状を有する。
【0031】
ロードビーム3は、ステンレス鋼などの金属材料によって形成されている。ロードビーム3は、先端(
図2中、右側)に向けて先細る形状を有している。ロードビーム3は、例えば、レーザを用いたスポット溶接によりベースプレート2に接続される。
【0032】
フレキシャ4は、ベースプレート2およびロードビーム3に沿って設けられる。フレキシャ4は、例えばレーザを用いたスポット溶接によりベースプレート2およびロードビーム3に固定されている。フレキシャ4は、
図3に示すように、メタルベース41と、メタルベース41に沿って設けられた配線部42と、を有する。メタルベース41は、例えば、薄いステンレス鋼の板によって形成される。
【0033】
フレキシャ4は、ベースプレート2の後方(
図2中、左側)に向けて延びるテール部43と、ロードビーム3に重なる先端部44と、をさらに有する。先端部44は、ワーク1の先端部に相当する。配線部42は、テール部43から先端部44にわたり形成される。
【0034】
配線部42は、テール部43の端部に配線端子451をさらに有する。配線端子451は、コントローラ50と電気的に接続される。配線端子451が洗浄液13(
図1に示す)に露出する場合、洗浄液13は、導電率が低い液体(例えば、純水)であることが好ましい。
【0035】
フレキシャ4は、先端部44において、タング部441と、一対のアウトリガー442,443と、をさらに有する。タング部441には、スライダ5が搭載される。ワーク1には、例えば、スライダ5は搭載されていない。
【0036】
図3においては、スライダ5が搭載される位置を破線にて示す。配線部42は、端子を介してスライダ5の素子に電気的に接続される。これらの素子によって、ディスクに対するデータの書込みあるいは読取りのアクセスが行なわれる。
【0037】
一対のアウトリガー442,443は、タング部441の両側にそれぞれ配置されている。一対のアウトリガーは、タング部441の両外側に張り出す形状である。タング部441、一対のアウトリガー442,443は、いずれもメタルベース41の一部であり、例えばエッチングによってそれぞれの輪郭が形成される。タング部441、一対のアウトリガー442,443などによってジンバル部45が構成されている。
【0038】
ワーク1は、圧電素子31A,31Bを備える。本実施形態において、圧電素子31A,31Bは、第1振動体30の一例である。圧電素子31A,31Bは、ワーク1の先端部に配置される。具体的には、圧電素子31A,31Bは、
図3に示す例において、スライダ5の両側に配置される。
【0039】
圧電素子31A,31Bは、導電性接着剤を介してフレキシャ4の配線部42と電気的に接続される。これにより、圧電素子31A,31Bは、配線端子451と電気的に接続される。
【0040】
圧電素子31A,31Bは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電体から形成されている。圧電素子31A,31Bに電圧が印加されると圧電体が圧電効果によって伸縮するため、圧電素子31A,31Bが振動する。この振動に基づいて、圧電素子31A,31Bは、タング部441をスウェイ方向S(
図3に示す)に回動させる。
【0041】
図4は、保持部材20と保持部材20に保持された複数のワーク1とを示す図である。
図4においては、
図1に示す複数の保持部材20のうちの1つを示す。
図4においては、洗浄槽11に設けられた保持部材20を方向Xと反対の方向に見ている。
【0042】
複数のワーク1は、保持部材20において、方向Yに所定の間隔で配置される。ワーク1は、
図4に示す例において、方向Zに延びるように保持されている。ワーク1の先端部は、下方を向いている。具体的には、フレキシャ4の先端部44は、洗浄液13にワーク1が浸漬した状態において、フレキシャ4のテール部43よりも下方に位置する。
【0043】
保持部材20は、複数の縦部材61と、複数の横部材62と、を有する。縦部材61および横部材62は、例えば、樹脂材料によって形成されるが、金属材料など他の材料によって形成されてもよい。複数の縦部材61および複数の横部材62は、例えば、一体的に形成されるが、この例に限られない。
【0044】
複数の縦部材61は、方向Zに延びるとともに、方向Yに間隔を置いて並ぶ。複数の横部材62は、方向Yに延びるとともに、方向Zに間隔を置いて並ぶ。これらの間隔は、ワーク1の大きさなどによって適宜変更される。
【0045】
保持部材20は、例えば、複数の縦部材61および複数の横部材62によって、網目状に形成される。言い換えると、保持部材20は、複数の開口63を有する。複数の開口63は、例えば、方向Yおよび方向Zにマトリクス状に配列される。開口63は、例えば、長方形状を有するが、この例に限られない。洗浄液13は、複数の開口63を通ることができる。
【0046】
ワーク1は、例えば、方向Yにおいて、縦部材61と縦部材61との間に位置する。複数の横部材62は、例えば、ベースプレート2、ロードビーム3、フレキシャ4のテール部43、およびテール部43の配線端子451と方向Xに重なるようにそれぞれ位置する。
【0047】
保持部材20は、位置決め部材64をさらに有してもよい。位置決め部材64は、保持部材20の所定の位置にワーク1を位置決めする。
図4においては、位置決め部材64に斜線を付している。位置決め部材64は、例えば、第1部材65と、一対の第2部材66A,66Bと、を有する。
【0048】
第1部材65は、横部材62Aに設けられるとともに、横部材62Aから方向Xに突出している。横部材62Aは、複数の横部材62のなかで方向Xにベースプレート2と重なる横部材62である。第1部材65の断面形状は、例えば、円形状であるが、この例に限られない。第1部材65は、ワーク1のボス部21の貫通孔21aに通される。
【0049】
一対の第2部材66A,66Bは、横部材62Bに設けられるとともに、横部材62Bから方向Xに突出している。横部材62Bは、複数の横部材62のなかで方向Xにロードビーム3と重なる横部材62である。第2部材66A,66Bの断面形状は、例えば、円形状であるが、この例に限られない。
【0050】
ロードビーム3は、方向Yにおいて、第2部材66Aと第2部材66Bとの間に位置する。言い換えると、一対の第2部材66A,66Bは、ロードビーム3の両側に位置する。
第1部材65および一対の第2部材66A,66Bによって、ワーク1が保持部材20に安定して保持される。さらに、方向Zに延びるようにワーク1を保持することで、洗浄工程において、ワーク1が変形しにくい。
【0051】
なお、第1部材65および一対の第2部材66A,66Bの形状はそれぞれ一例であり、他の形状を有してもよい。位置決め部材64は、他の部材をさらに含んでもよい。
【0052】
洗浄装置100は、接続部材70をさらに備える。接続部材70は、コントローラ50と複数のワーク1とを電気的に接続する。言い換えると、複数のワーク1の圧電素子31A,31Bは、接続部材70およびフレキシャ4の配線部42を介して、コントローラ50と電気的に接続される。
【0053】
接続部材70は、例えば、端子台71と、配線72,73と、を有する。端子台71は、例えば、保持部材20に設けられる。一例では、端子台71は、縦部材61のうちの一つに設けられるが、横部材62に設けられてもよい。配線72は、端子台71と複数のワーク1の配線端子451とをそれぞれ電気的に接続する。配線73は、端子台71とコントローラ50(
図1に示す)とを電気的に接続する。
【0054】
図5は、本実施形態に係る洗浄装置100による洗浄工程の一例を示すフローチャートである。洗浄工程は、例えばディスク装置用サスペンションなどの製品を製造するための製造工程の一部である。工程ST101の前において、第1振動体30がワーク1の所定の位置に取り付けられる。具体的には、圧電素子31A,31Bがワーク1の先端部に取り付けられる。
【0055】
まず、工程ST101において、複数のワーク1を保持部材20によって保持する。複数のワーク1は、例えば、位置決め部材64(
図4に示す)によって、保持部材20の所定の位置に位置決めされる。
【0056】
続いて、工程ST102において、ワーク1をコントローラ50と電気的に接続する。具体的には、配線72を複数のワーク1の配線端子451と端子台71とにそれぞれ接続し、配線73を端子台71とコントローラ50とに接続する。これにより、第1振動体30は、コントローラ50と電気的に接続される。
【0057】
続いて、工程ST103において、複数の保持部材20を洗浄液13に浸漬する。これにより、保持部材20に保持された複数のワーク1が洗浄液13に浸漬する。
【0058】
複数の保持部材20は、あらかじめ方向Xに配列されてもよいし、洗浄槽11の内部で方向Xに配列されてもよい。洗浄液13は、あらかじめ洗浄槽11に収容されてもよいし、洗浄槽11の内部に保持部材20を配置した後、洗浄槽11に収容されてもよい。
【0059】
続いて、工程ST104において、第1振動体30がコントローラ50によって振動する。このとき、コントローラ50の信号発生器51は、第1振動体30を振動させるための制御信号を出力する。これにより、第1振動体30が振動し、ワーク1が洗浄される。
【0060】
続いて、工程ST105において、第2振動体12がコントローラ50によって振動する。このとき、コントローラ50の信号発生器52は第2振動体12を振動させるための制御信号を出力する。これにより、第2振動体12が振動し、ワーク1が洗浄される。
【0061】
コントローラ50は、例えば、ワーク1が洗浄液13に浸漬した状態において、第1振動体30および第2振動体12を振動させる。工程ST105では、コントローラ50は、第1振動体30を振動させてもよいし、振動させなくてもよい。工程ST104,ST105においては、複数の保持部材20を洗浄槽11の内部で動かしてもよい。
【0062】
工程ST104,ST105において、第1振動体30および第2振動体12には、所望の振動に応じた制御信号がそれぞれ信号発生器51,52から出力される。第1振動体30および第2振動体12を振動させるための振動周波数、波形、強度などは、ワーク1の汚れなどに応じて適宜選択される。ここで、汚れとは、ワーク1に付着したパーティクル、油分などをいう。
【0063】
第1振動体30の振動周波数は、一例では、数kHzから数百kHzである。第2振動体12の振動周波数は、一例では、30kHz程度から150kHz程度である。第1振動体30は、一例では、第2振動体12とは異なる振動周波数によって振動してもよい。ワーク1を異なる振動周波数に基づく振動によって洗浄することで洗浄装置100の洗浄効果を向上させることができる。第1振動体30は、他の例では、第2振動体12と等しい振動周波数によって振動してもよい。
【0064】
振動周波数の観点において、振動周波数が低いほうが洗浄力が強いため、大きな汚れの洗浄に適しており、振動周波数が高いほうが洗浄力が弱いため、細かな汚れの洗浄に適している。
【0065】
第1振動体30の振動周波数は、例えば、第2振動体12の振動周波数よりも大きくてもよい。これにより、ワーク1全体の大きな汚れを除去するとともに、第1振動体30(圧電素子31A,31B)の周りの細かい汚れを除去することができる。
【0066】
第1振動体30の振動周波数は、例えば、第2振動体12の振動周波数よりも小さくてもよい。これにより、ワーク1全体に与えるダメージを抑制しながら洗浄するとともに、第1振動体30の周りを十分に洗浄することができる。また、振動周波数は、出力に応じても適宜変更され得る。
【0067】
振動波形は、例えば、サイン波、矩形波、鋸波などである。第1振動体30は、例えば、第2振動体12と異なる振動波形によって振動してもよいし、同じ振動波形によって振動してもよい。振動周波数は、例えば、サインスイープ(正弦波掃引)によって変更してもよいし、ランダムに変更してもよい。例えば、振動周波数をサインスイープによって変更することによって、ワーク1の汚れに効果的な振動周波数を網羅しながら、ワーク1を洗浄することが可能である。
【0068】
続いて、工程ST106において、複数の保持部材20を洗浄槽11から取り出し、ワーク1を乾燥させる。工程ST106では、ワーク1を自然乾燥によって乾燥してもよいし、ワーク1に外部から熱を加えることによって乾燥してもよい。これらの乾燥方法であれば、ワーク1の変形などを抑制することができる。その後、ワーク1にスライダ5(
図3に示す)を取り付ける工程などを経て、ディスク装置用サスペンションが完成する。
【0069】
以上のように構成されたワーク1の洗浄方法および洗浄装置100であれば、洗浄の品質を向上することが可能である。具体的には、本実施形態に係る洗浄方法は、洗浄液13にワーク1を浸漬した後、第1振動体30をコントローラ50の信号発生器51によって振動させ、ワーク1を洗浄する。本実施形態に係る洗浄装置100は、洗浄液13が収容される洗浄槽11と、第1振動体30と電気的に接続されるコントローラ50と、を備える。
【0070】
本実施形態においては、第1振動体30を振動させることでワーク1が振動し、ワーク1を洗浄する。これにより、ワーク1を洗浄する際に、洗浄槽11の内部におけるワーク1の位置、保持部材などの影響を抑制し、ワーク1を洗浄することが可能である。その結果、洗浄の品質を向上することが可能である。
【0071】
比較例として、例えば、超音波振動子と、超音波振動子が設けられる洗浄槽と、を備える洗浄装置がある。比較例に係る洗浄装置は、超音波振動子を振動させることによって、洗浄液に浸漬された被洗浄部材を洗浄する。
【0072】
比較例に係る洗浄装置によって複数(例えば、連鎖状)の被洗浄部材を洗浄する場合、洗浄槽の内部の位置、被洗浄部材を保持するための保持部材などの影響によって、被洗浄部材ごとの洗浄度合いに違いが生じやすい。複数の被洗浄部材を確実に洗浄するためには、例えば、超音波振動子による振動の強度を大きくする必要がある。これは、被洗浄部材を変形させたり、破損させたりする原因となり得る。
【0073】
このような比較例に係る洗浄装置に対し、本実施形態に係る洗浄方法および洗浄装置100は、ワーク1が備える第1振動体30が振動することによって、ワーク1を振動させることが可能である。これにより、複数のワーク1を洗浄する場合であっても、洗浄槽の内部におけるワーク1の位置などの影響を受けにくい。その結果、ワーク1ごとの洗浄度合いに違いが生じにくい。その結果、複数のワーク1を洗浄する場合における洗浄の品質を向上することが可能である。
【0074】
ワーク1ごとの洗浄度合いに違いが生じにくいため、必要以上に振動の強度を大きくする必要がない。これにより、ワーク1の変形などを抑制することが可能である。言い換えると、ワーク1の汚れに応じて第1振動体30の振動を調整することが可能である。
【0075】
洗浄するワーク1の数が少ない場合であれば、比較例に係る洗浄装置と比較して、消費電力の少ない効率的な洗浄をすることが可能である。
【0076】
図2および
図3を用いて説明したように、第1振動体30である圧電素子31A,31Bがワーク1の先端部に搭載される場合、圧電素子31A,31Bを振動させることによって、ワーク1の先端部の近傍を集中的に洗浄することが可能である。圧電素子31A,31B自体にパーティクルなどの汚れが付着している場合にも、圧電素子31A,31Bが振動するため、汚れが脱落しやすい。
【0077】
ワーク1に搭載される圧電素子は、この例に限られない。
図6は、ワーク1の他の例であるディスク装置用サスペンションの概略的な平面図である。
【0078】
ワーク1は、圧電素子33A,33Bをさらに備える。圧電素子33A,33Bは、第1振動体30の他の例である。ベースプレート2は、
図6に示す例において、開口23,25を有する。開口23,25は、圧電素子33A,33Bの搭載部を構成する。
【0079】
圧電素子33A,33Bは、開口23,25にそれぞれ設けられる。圧電素子33A,33Bは、フレキシャ4の配線部42と電気的に接続される。
図6に示す例においては、圧電素子33A,33Bを振動させることによって、ベースプレート2の近傍を集中的に洗浄することが可能である。
【0080】
図6に示すワーク1は、圧電素子31A,31Bおよび圧電素子33A,33Bを備えるため、コントローラ50によって、ワーク1の先端部の近傍を集中的に洗浄したり、ベースプレート2の近傍を集中的に洗浄したりすることが可能である。このように、コントローラ50によって、圧電素子31A,31B,33A,33Bを適宜振動させることができるため、集中的に洗浄したい位置を選択することが可能である。
【0081】
本実施形態において、洗浄装置100は、コントローラ50と第1振動体30とを電気的に接続する接続部材70をさらに備える。具体的には、接続部材70は、例えば、端子台71と、配線72,73と、を有する。例えば、端子台71とワーク1の配線端子451とを配線72によって接続することにより、コントローラ50と配線端子451とをそれぞれ接続する必要がないため、洗浄工程における作業性を向上することが可能である。
【0082】
本実施形態において、洗浄装置100は、第2振動体12をさらに備える。これにより、洗浄工程においては、第2振動体12を振動させることが可能である。第2振動体12の振動によって、洗浄装置100の洗浄力を補完することが可能である。その結果、洗浄装置100の洗浄の品質をさらに向上することが可能である。
【0083】
保持部材20は、フレームによって繋がれた、連鎖状の複数のワーク1を保持してもよい。例えば、方向Yにおいて、ワーク1の配線端子451が規則的に並ぶため、複数のワーク1の配線端子451に配線72を接続することが容易となる。言い換えると、洗浄工程における作業性を向上することが可能である。以上説明した他にも、本実施形態からは種々の好適な作用が得られる。
【0084】
本実施形態において、複数の保持部材20が方向Xに配列する例を開示するが、複数の保持部材20の配列方向はこの例に限られない。
図7は、保持部材20の配列方向の他の例を示す概略的な斜視図である。複数の保持部材20は、
図7に示すように方向Zに配列してもよい。言い換えると、複数の保持部材20は、方向Zに積層してもよい。
【0085】
ワーク1を保持する保持部材は、上述の例に限られない。
図8は、保持部材の他の例を示す概略的な斜視図である。
【0086】
保持部材80は、プレート部材81A,81Bと、位置決め部材82と、を備える。保持部材80は、金属材料で形成されてもよいし、樹脂材料で形成されてもよい。プレート部材81A,81Bは、例えば、平板形状を有する。プレート部材81Aは、プレート部材81Bと方向Xに向かい合う。位置決め部材82は、プレート部材81Aとプレート部材81Bとを繋ぐ。位置決め部材82は、例えば、円柱形状を有する。
【0087】
図8に示す例においては、複数のワーク1は、プレート部材81Aとプレート部材81Bとの間に並ぶ。複数のワーク1は、方向Zに延びるように配置される。位置決め部材82は、複数のワーク1のベースプレート2の貫通孔21aに通される。
【0088】
保持部材80は、複数のスペーサ83をさらに有してもよい。スペーサ83は、例えば、ワーク1とワーク1との間に設けられる。複数のスペーサ83は、ワーク1とワーク1とが接触することを抑制することが可能である。このような保持部材80は、洗浄槽11に複数設けられてもよい。
【0089】
なお、本実施形態において、ワーク1の一例としてディスク装置用サスペンションを開示するが、振動体を備える他種のワーク(被洗浄部材)に適用することができる。本実施形態において、洗浄装置100は複数の保持部材20を備える例を開示するが、洗浄装置100が備える保持部材20は、1つでもよい。
【0090】
本実施形態において、工程ST104の後に工程ST105を実施する例を開示するが、工程ST105の後に工程ST104を実施してもよい。本実施形態において、洗浄装置100が第2振動体12を備える例を開示するが、洗浄装置100は第2振動体12を備えなくてもよい。この場合、ワーク1は、第1振動体30の振動によって洗浄される。
【0091】
洗浄装置100は、複数の洗浄槽11を備えてもよい。この場合、複数の洗浄槽11において、
図5を用いて説明した工程ST103から工程ST105がそれぞれ繰り返されてもよい。これにより、洗浄装置100は、複数の洗浄槽11によって、多段階の洗浄を実施することが可能である。
【0092】
洗浄装置100は、振動体をさらに備えてもよい。当該振動体は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。当該振動体は、例えば、洗浄槽11の任意の場所に設けられる。ワーク1は、開示した例よりもさらに多くの振動体を備えてもよい。ワーク1が備える振動体は、いずれもワーク1を洗浄するために用いることができる。
【0093】
以上の実施形態にて開示した発明を実施するにあたっては、ベースプレート、ロードビーム、フレキシャの形状などの具体的な態様をはじめとして、ディスク装置用サスペンションおよび洗浄装置を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更できる。
【符号の説明】
【0094】
100…洗浄装置、1…ワーク、2…ベースプレート、3…ロードビーム、4…フレキシャ、5…スライダ、11…洗浄槽、12…第2振動体、13…洗浄液、20…保持部材、30…第1振動体、31A,31B,33A,33B…圧電素子、43…テール部、44…先端部、50…コントローラ、51,52…信号発生器、70…接続部材、451…配線端子。