(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120570
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20240829BHJP
H01M 8/0204 20160101ALI20240829BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240829BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240829BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0204
C23C26/00 C
C23C16/40
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027443
(22)【出願日】2023-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.電気通信回線を通じての公開(ウェブ:予稿) 公開日 令和4年11月23日 https://sites.google.com/view/nanoepi/event 2.学会発表のポスター 公開日 令和4年11月25日 第14回ナノ構造・エピキタシャル成長講演会(宇部市文化会館) 3.学会発表のプログラム 公開日 令和4年11月24日 第14回ナノ構造・エピキタシャル成長講演会(宇部市文化会館) 4.学会発表の予稿原稿 公開日 令和4年11月25日 第14回ナノ構造・エピキタシャル成長講演会(宇部市文化会館ポスターセッションFr-P06)
(71)【出願人】
【識別番号】391015638
【氏名又は名称】アイテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 太政
(72)【発明者】
【氏名】菊池 瑛嗣
(72)【発明者】
【氏名】大塚 知紀
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【テーマコード(参考)】
4K030
4K044
5H126
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA11
4K030BA16
4K030BA42
4K030JA06
4K030JA10
4K030JA11
4K044AA01
4K044AB02
4K044BA12
4K044BB01
4K044BC14
4K044CA14
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD14
5H126GG02
5H126GG12
5H126HH04
5H126JJ00
5H126JJ05
5H126JJ06
(57)【要約】
【課題】優れた導電性及び耐食性を提供することを目的とする。
【解決手段】Inを含む導電性酸化膜を表面の一部又は全部に有するセパレータであって、前記導電性酸化膜中のInの含有量が、前記導電性酸化膜中のすべての金属に対し、90重量%未満であり、前記セパレータの接触面積抵抗率が、10mΩcm
2以下であるセパレータを、ミストCVD法による製膜を用いて作製し、作製したセパレータを、燃料電池に適用し、さらには燃料電池を含む各種電子装置および各種電子装置が搭載された製品等の製造に適用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Inを含む導電性酸化膜を表面の一部又は全部に有するセパレータであって、前記導電性酸化膜の金属元素中のInの含有量が90重量%未満であり、前記導電性酸化膜の接触面積抵抗率が、10mΩcm2以下であることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記導電性酸化膜が結晶膜である請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記結晶膜が(222)結晶面及び(400)結晶面を有する請求項2記載のセパレータ。
【請求項4】
X線回折チャートにおいて、前記(222)結晶面の回折ピーク強度が前記(400)結晶面の回折ピーク強度より大きい請求項3記載のセパレータ。
【請求項5】
前記導電性酸化膜の膜厚が10nm以上である請求項1記載のセパレータ。
【請求項6】
前記導電性酸化膜が、スズを含む請求項1記載のセパレータ。
【請求項7】
前記導電性酸化膜の金属元素中、前記スズを10重量%以上含む請求項1記載のセパレータ。
【請求項8】
前記導電性酸化膜がハロゲンでドーピングされている請求項1記載のセパレータ。
【請求項9】
前記ハロゲンが、フッ素である請求項8記載のセパレータ。
【請求項10】
原料溶液を霧化してセパレータ用導電性酸化膜をミストCVD法で製膜する方法であって、前記原料溶液を、In、Sn及びFを含む水溶液とし、前記導電性酸化膜の金属元素中のInの含有量を90重量%未満とすることを特徴とする方法。
【請求項11】
セパレータを含む燃料電池であって、前記セパレータが請求項1記載のセパレータである燃料電池。
【請求項12】
燃料電池を含む製品であって、前記燃料電池が請求項11記載の燃料電池である製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などに用いられるセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池用セパレータは、電気伝導性を有し、燃料電池の各単セルを電気的に接続して各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、液体や気体の流路が形成されており、燃料ガスや酸化性ガスを電池面内に供給したり、カソード側で生成した水を、反応後の空気等とともに燃料電池から排出する役割を有する。また、セパレータには、燃料ガス及び空気の混合防止のための気密性、発電環境下における耐食性といった特性も求められる。
【0003】
近年においては、優れた導電性を有するITO膜をセパレータに適用することが検討されている。特許文献1には、固体電解質膜の電極面とセパレータとの積層構造に集電部を設けた燃料電池において、セパレータの集電部の電極面との接触部に酸化インジウムの被膜を形成した、燃料電池が記載されている。特許文献2には、インジウムの使用量を抑えるために、基材上に、アンチモンドープ酸化スズと、スズドープ酸化インジウムとを含有する複合膜を有し、前記スズドープ酸化インジウム中のスズの割合が、0.2~10原子%であり、前記複合膜における、スズとインジウムの元素比(Sn/In)が1.4以下であり、前記複合膜中のアンチモンドープ酸化スズが30~60体積%である、燃料電池セパレータが記載されている。しかしながら、Inの含有量を90%未満にすると、導電性が悪くなり、また、特許文献2のようにATO膜との複合膜にすると耐食性が悪くなり、根本的な課題は解決できておらず、Inの含有量が90%未満でも優れた導電性及び耐食性を有するセパレータ用の導電性酸化膜が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-26868号公報
【特許文献2】特許第7006481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた導電性及び耐食性を有するセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、Inを含む導電性酸化膜を表面の一部又は全部に有するセパレータであって、前記導電性酸化膜中のInの含有量が、前記導電性酸化膜中のすべての金属に対し、90重量%未満であり、前記セパレータの接触面積抵抗率が、10mΩcm2以下であるセパレータが、優れた導電性及び耐食性等を備えていることを知見し、このようなセパレータが、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] Inを含む導電性酸化膜を表面の一部又は全部に有するセパレータであって、前記導電性酸化膜の金属元素中のInの含有量が90重量%未満であり、前記導電性酸化膜の接触面積抵抗率が、10mΩcm2以下であることを特徴とするセパレータ。
[2] 前記導電性酸化膜が結晶膜である前記[1]記載のセパレータ。
[3] 前記結晶膜が(222)結晶面及び(400)結晶面を有する前記[2]記載のセパレータ。
[4] X線回折チャートにおいて、前記(222)結晶面の回折ピーク強度が前記(400)結晶面の回折ピーク強度より大きい前記[3]記載のセパレータ。
[5] 前記導電性酸化膜の膜厚が10nm以上である前記[1]記載のセパレータ。
[6] 前記導電性酸化膜が、スズを含む前記[1]記載のセパレータ。
[7] 前記導電性酸化膜の金属元素中、前記スズを10重量%以上含む前記[1]記載のセパレータ。
[8] 前記導電性酸化膜がハロゲンでドーピングされている前記[1]記載のセパレータ。
[9] 前記ハロゲンが、フッ素である前記[8]記載のセパレータ。
[10] 原料溶液を霧化してセパレータ用導電性酸化膜をミストCVD法で製膜する方法であって、前記原料溶液を、In、Sn及びFを含む水溶液とし、前記導電性酸化膜の金属元素中のInの含有量を90重量%未満とすることを特徴とする方法。
[11] セパレータを含む燃料電池であって、前記セパレータが前記[1]記載のセパレータである燃料電池。
[12] 燃料電池を含む製品であって、前記燃料電池が前記[11]記載の燃料電池である製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセパレータは、優れた導電性及び耐食性を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明において好適に用いられる成膜装置(ミストCVD)の概略構成図である。
【
図3】試験例におけるXRD解析結果を示す図である。なお、図中、Mist-ITO-上流(比較例)及びmist-ITO-中流(比較例)並びにmist-ITO-下流(実施例)のXRD解析結果をそれぞれ示す。
【
図4】試験例におけるSEM像、組成比及び接触抵抗を示す図である。なお、左から上流域(比較例)、中流域(比較例)及び下流域(実施例)をそれぞれ示す。
【
図5】試験例におけるIn組成比によるアノード分極試験の耐食性評価試験の結果を示す図である。
【
図6】試験例における定電位分極試験における耐食性試験前後の接触抵抗評価試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセパレータは、Inを含む導電性酸化膜を表面の一部又は全部に有するセパレータであって、前記導電性酸化膜の金属元素中のInの含有量が90重量%未満であり、前記導電性酸化膜の接触面積抵抗率が、10mΩcm2以下であれば特に限定されない。本発明においては、前記導電性酸化膜が結晶膜であるのが耐食性により優れたものとなるので好ましい。また、本発明においては、前記結晶膜が(222)結晶面及び(400)結晶面を有するのが好ましく、X線回折チャートにおいて、前記(222)結晶面の回折ピーク強度が前記(400)結晶面の回折ピーク強度より大きいのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、耐食性がより優れたものとなり、Inの組成が低くてもより優れた導電性を有するようになる。また、本発明においては、前記導電性酸化膜の膜厚が10nm以上であるのがセパレータ用基板との密着性や耐食性がより優れたものとなるので好ましい。
【0011】
本発明においては、前記導電性酸化膜が、スズを含むのが好ましく、前記導電性酸化膜の金属元素中、前記スズを10重量%以上含むのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、Inとのドーピングをより良好なものとすることができる。また、前記導電性酸化膜がハロゲンでドーピングされているのが好ましく、前記ハロゲンが、フッ素であるのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、In量を低減させてのドーピング及び耐食性をより良好なものとすることができる。
【0012】
前記セパレータは、好ましくは、原料溶液を霧化してミストCVD法で製膜することにより容易に得ることが可能である。より具体的には、前記原料溶液として、In、Sn及びFを含む水溶液を用いて、Inを90重量%未満含むセパレータ用導電性酸化膜をミストCVD法にて製膜することにより容易に得ることができる。
【0013】
前記ミストCVD法は、原料溶液を霧化または液滴化して生成されるミストまたは液滴を熱反応させて基体上に製膜する方法であり、本発明においては、公知のミストCVD法を用いることができる。原料溶液を霧化または液滴化する手段は、本発明の目的を阻害しないかぎり特に限定されず、公知の手段であってもよい。本発明においては、前記熱反応を前記原料溶液の蒸発温度以上の温度下で行うのが好ましい。以下、本発明において好ましいミストCVD法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
(原料溶液)
原料溶液は、In、Sn及びFを含有する原料を含むのが好ましい。前記原料溶液として、前記In、Sn及びFを錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。
【0015】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0016】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、2種以上であるのが好ましく、本発明においては、Inを含む原料溶液にSn及びFの錯体又は塩が混合されているのが好ましい。
【0017】
(基板)
本発明に用いられる基板は、セパレータ用基板であるのが好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されないが、好ましくは、10~2000μmであり、より好ましくは50~800μmである。
【0018】
本発明では、ミストCVD法を用いて、前記基板上に前記導電性酸化膜を製膜する。より具体的には、前記原料溶液を霧化し(霧化工程)、生成されるミストをキャリアガスによって前記基板に供給し(ミスト供給工程)、熱反応によって、前記基板上に製膜する(製膜工程)。
【0019】
前記霧化工程は、原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化してミストを発生させる。前記原料の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液全体に対して、0.01~70重量%であるのが好ましく、0.1~50重量%であるのがより好ましい。
【0020】
本工程では、前記原料溶液を霧化してミストを発生させる。前記霧化手段は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段であるのが好ましい。
【0021】
前記キャリアガス供給工程では、キャリアガスを前記ミストに供給する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。
【0022】
ミスト供給工程では、前記キャリアガスによって前記ミストを基板へ供給する。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。
【0023】
製膜工程では、前記ミストを熱反応させて、前記基板表面の一部または全部に成膜する。前記熱反応は、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、600℃以下の温度で行うのが好ましく、500℃以下の温度で行うのがより好ましく、450℃以下で行うのが最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0024】
上記のようにして得られたセパレータは公知の手段を用いて燃料電池に用いることが可能である。前記セパレータが用いられた燃料電池は、セパレータの優れた導電性及び耐食性により、長寿命及び高耐久性等を有する。
【実施例0025】
(実施例1)
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置を説明する。
図1のミストCVD装置は、供給部10と、ファインチャネル構造を有する反応部11とからなり、供給部10には、超音波振動子1、容器2、キャリアガス供給手段から供給されるキャリアガス3の流量を調節する流量調節弁3a、および希釈ガス供給手段から供給される希釈ガス4の流量を調節する流量調節弁4aが備え付けられている。また、反応部11には、オゾン供給手段から供給されるオゾン5の流量を調節する流量調節弁5a、供給部10から供給されるミストを混合するミスト混合部6、ヒーター7および基板8が備え付けられている。
【0026】
原料溶液9aを、超音波振動子1を用いて霧化してミスト9bとし、ミスト9bをキャリアガス3によって、反応部11へ送り出す。ミスト9bには、反応部11に至るまでの途中に、希釈ガスが供給され、さらに、ミスト混合部6に至るまでに、オゾン5が供給される。ミスト混合部6では、ミスト9bが混合され、混合されたミスト9bは、高さ1mmの反応空間に送り出される。反応空間には基板8が備え付けられており、ヒーター7により、ミスト9bが熱反応し、さらにライデンフロスト効果が発現して、基板8上に成膜できるように構成されている。
【0027】
上記CVD装置を用いて、セパレータ用基板上に、フッ素がドーピングされたITO膜を製膜した。製膜条件を
図2に示す。
【0028】
(試験例1)
実施例1と同様にして、フッ素がドーピングされたITO膜を製膜した。なお、基板を上流域、中流域及び下流域に分け、ミストを制御することにより、Inの組成比を変えて製膜し、それぞれX線回折装置を用いて、XRD解析結果を得た。結果を
図3に示す。また、SEMなどを用いて、それぞれの表面を観察し、組成比及び接触抵抗を測定した。結果を
図4に示す。
なお、
図4には、左から上流域(比較例)の結果[
図4(a)及び
図4(d)]、中流域(比較例)の結果[
図4(b)及び
図4(e)]及び下流域(実施例)の結果[
図4(c)及び
図4(f)]をそれぞれ示す。
実施例1と同様の本発明品である下流域のフッ素がドーピングされたITO膜は、膜厚が200nmであり、上流域及び中流域のInが90%以上含まれているITO膜と比べても接触抵抗値が同等程度低く、優れた導電性を有することがわかった。
なお、接触抵抗測定は、製膜した基材と金めっき銅板の間にカーボンペーパー(東レ製TGP-H-120)
を挟み、140N/cm
2の荷重をかけたときの4端子法を用い抵抗を測定し、基材とカーボンペーパーとの間に生じる接触抵抗値として算出した。
【0029】
(試験例2)
試験例1と同様にして、Inの組成を変えてフッ素がドーピングされたITO膜を製膜し、それぞれの耐食性について、アノード分極測定(25℃)を実施し、評価した。結果を
図5に示す。
図5から明らかなように、Inの含有量が低くても優れた耐食性を有していることがわかった。
【0030】
(試験例3)
試験例1と同様にして、フッ素がドーピングされたITO膜を製膜し、耐食性について、定電位分極試験を実施し、評価した。なお、比較用にミストCVDでFTO膜を製膜し、また、SP法でSUS上にTiNを製膜した。結果を
図6に示す。
図6から明らかなように、ミストCVD法により製膜されたフッ素がドーピングされたITO膜は、耐食性試験の前後で抵抗値の上昇がほとんどみられず、セパレータ表面に求められている耐食導電性により優れていることがわかった。
なお、耐食性試験は、80℃のpH3に調整したH
2SO
4+0.1ppmF
-水溶液中に、製膜した基材を浸漬し、この状態で、0.6V vs Ag/AgCl の電位を一定に保持させた。試験時間は72時間として、耐食性試験前後の接触抵抗測定を実施した。