(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120574
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】施策評価支援方法及び施策評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240829BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20240829BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027450
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】市川 静子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利雄
(72)【発明者】
【氏名】山岡 久俊
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L010AA04
5L049AA01
5L049AA04
5L049BB03
(57)【要約】
【課題】ユーザに過度な負担を掛けずにユーザの施策評価を支援する。
【解決手段】サーバは、複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果(
図4(a))を、複数の評価項目を座標軸とする評価値空間上にプロットし(
図4(b))、ユーザの価値観情報に基づいて、複数の評価項目それぞれの重みを設定して評価値空間を座標変換し(
図4(c))、座標変換後の評価値空間における複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策のペアを複数抽出し(
図4(d))、抽出した各ペアに含まれる施策間の良し悪しをユーザが相対評価した結果に基づいて、評価値空間におけるgoodness分布図(
図4(e))を作成し、ユーザ端末に送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、
ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、
前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、
抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする施策評価支援方法。
【請求項2】
事前テスト用の施策の組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果を取得し、当該相対評価の結果に基づいて、前記ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合を推定する、
処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする請求項1に記載の施策評価支援方法。
【請求項3】
前記第1の評価値空間上にプロットされた複数の施策の中から1つの評価項目の評価が他の評価項目の評価に比べて高い施策を特定し、特定した施策の組み合わせを前記事前テスト用の施策の組み合わせとする、ことを特徴とする請求項2に記載の施策評価支援方法。
【請求項4】
前記ユーザが入力した、前記ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合を取得する、処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする請求項1に記載の施策評価支援方法。
【請求項5】
前記施策の組み合わせは、2つの施策のペアであることを特徴とする請求項1に記載の施策評価支援方法。
【請求項6】
前記抽出する処理は、前記第2の評価値空間において距離が大きい施策の組み合わせを優先して抽出する、ことを特徴とする請求項1に記載の施策評価支援方法。
【請求項7】
複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、
ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、
前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、
抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする施策評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施策評価支援方法及び施策評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な社会課題を解決するためには、単一観点ではなく広い観点でバランスの取れた解決策(施策)を考える必要がある。このためには、各利害関係者(ステークホルダ)は、施策それぞれについて、複数の評価項目(評価指標)により評価する必要がある。この場合、利害関係者ごとに価値観が異なり、各利害関係者が重視する評価項目が異なるため、各利害関係者が良いと考える施策が一致しないことが多い。このため、各利害関係者は、各自が良いと評価した施策を持ち寄り、話し合い等により最良の施策を決定する必要がある。
【0003】
この場合、各利害関係者がどの評価項目を重視しているかが明確になっていることが好ましい。このため、複数の評価項目を座標軸とする空間内において、各利害関係者が良いと評価する範囲や、悪いと評価する範囲を示す分布(goodness分布)を作成し、提示できれば利便性が高いと考えられる。
【0004】
従来、写真を補正する作業において、明るさ・コントラスト・彩度・カラーバランスといった複数のデザインパラメタを調整する際に、複数のデザインパラメタのパラメタ空間の探索を支援する手法が知られている(例えば、非特許文献1等参照)。この非特許文献1においては、2つのパラメタセットによるデザインの一対比較の結果を大量に集め、このデータに基づいてgoodness分布を推定するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小山裕己,坂本大介,五十嵐健夫,“ヒューマンコンピュテーションによるパラメタ空間解析を用いた視覚デザイン探索”,コンピュータソフトウェア,日本ソフトウェア科学会,2016年,Vol.33(1),p.63-77
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1においては、2つのデザインをユーザに提示し、相対的な点数を付してもらう一対比較を行うこととしているが、goodness分布を精度よく推定するためには、一対比較を大量に実施する必要がある。
【0008】
一方、施策を評価するための空間においてgoodness分布を推定する際にも、上記非特許文献1のように2つの施策をユーザに提示し、ユーザに一対比較を行わせることが考えられる。しかしながら、施策の場合、1回の一対比較に要する労力が大きいため、ユーザに多数回の一対比較を強いることは現実的でない。
【0009】
1つの側面では、本発明は、ユーザに過度な負担を掛けずにユーザの施策評価を支援することが可能な施策評価支援方法及び施策評価支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの態様では、施策評価支援方法は、複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、処理をコンピュータが実行する施策評価支援方法である。
【発明の効果】
【0011】
ユーザに過度な負担を掛けずにユーザの施策評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る施策評価支援システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は、サーバのハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2(b)は、ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(e)は、サーバの処理の概要を示す図である。
【
図6】
図5のステップS12の処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、施策シミュレーション部の処理を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、入力受付部が受け付ける価値観情報の一例を示す図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(e)は、座標変換部及び質問生成部の処理を説明するための図である。
【
図12】
図12(a)、
図12(b)は、相対評価アンケート回答データの一例を示す図である。
【
図13】
図13(a)、
図13(b)は、
図5のステップS18においてユーザ端末に送信する画面の一例を示す図である。
【
図14】
図14(a)、
図14(b)は、
図5のステップS22においてユーザ端末に送信する画面の一例を示す図である。
【
図15】変形例に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1の実施形態》
以下、施策評価支援システムの一実施形態について、
図1~
図14に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る施策評価支援システム100の構成が概略的に示されている。施策評価支援システム100は、自治体や事業者が導入しようとしている施策を検討する際に利用するシステムである。施策評価支援システム100は、
図1に示すように、施策評価支援装置としてのサーバ10と、複数のユーザ端末70と、を備える。サーバ10と、ユーザ端末70の間は、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワーク80に接続されている。
【0015】
サーバ10は、ユーザ端末70において行われる施策評価を支援する情報処理装置である。より具体的には、サーバ10は、施策評価において有用な情報(後述するgoodness分布図)を作成し、作成した情報をユーザ端末70に対して出力する処理を実行する。
【0016】
図2(a)には、サーバ10のハードウェア構成が示されている。
図2(a)に示すように、サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)94、ストレージ(例えば、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)など)96、ネットワークインタフェース97、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。これらサーバ10の構成各部は、バス98に接続されている。サーバ10では、ROM92或いはストレージ96に格納されているプログラム(施策評価支援プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラムをCPU90が実行することにより、
図3に示す各部の機能が実現されている。なお、
図3の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0017】
ユーザ端末70は、施策の利害関係者(ステークホルダ)が利用する端末(PCやスマートフォンなど)である。利害関係者は、例えば自治体や事業者であり、以下においては、ユーザ端末70を利用する人をユーザと呼ぶものとする。ユーザ端末70は、サーバ10から送信されてくる情報を表示し、ユーザが入力した情報や操作情報をサーバ10に送信する。
【0018】
図2(b)には、ユーザ端末70のハードウェア構成が示されている。
図2(b)に示すように、ユーザ端末70は、CPU190、ROM192、RAM194、ストレージ196、ネットワークインタフェース197、表示部193、入力部195、及び可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。表示部193は液晶ディスプレイ等を含み、入力部195はキーボードやマウス、タッチパネル等を含む。これらユーザ端末70の構成各部は、バス198に接続されている。
【0019】
(サーバ10の機能について)
図3には、サーバ10の機能ブロック図が示されている。
【0020】
サーバ10においては、CPU90(
図2(a))がプログラムを実行することにより、施策シミュレーション部20、入力受付部22、座標変換部23、質問生成部24、回答受付部25、及び分布図作成部26、としての機能が実現されている。以下、各部の詳細について説明する。なお、
図4(a)~
図4(e)には、サーバ10の処理の概要が示されている。
【0021】
施策シミュレーション部20は、ユーザ端末70において入力された施策に関する情報を取得し、複数の施策のシミュレーションを実行する。例えば、
図4(a)に示すように、施策シミュレーション部20は、複数の施策A、B、…について、複数の評価項目(収益や利便性、環境など)に関するシミュレーションを行う。そして、施策シミュレーション部20は、
図4(b)に示すように、複数の評価項目を座標系とする評価値空間(第1の評価値空間)に施策をプロットする。
【0022】
入力受付部22は、ユーザが重視する評価項目の情報(価値観情報)の入力を受け付ける。例えば、ユーザが「環境」を最も重視する場合、その旨の価値観情報がユーザ端末70に入力されるので、入力受付部22は、その価値観情報を取得する。なお、価値観情報は、ユーザがどの評価項目をどの程度重視しているかの割合(重視度)で表され、例えば、収益=0.1、利便性=0.1、環境=0.8というような値で表現される。
【0023】
座標変換部23は、取得した価値観情報に基づいて、評価値空間の座標変換を実行する。ユーザが環境を最も重視するという価値観情報(例えば、重視度が、収益=0.1、利便性=0.1、環境=0.8)を入力した場合、重視した評価項目について差が大きくなるように座標変換(重み付け)をする。これにより、
図4(b)の評価値空間は、
図4(c)に示すような評価値空間(第2の評価値空間)となる。
【0024】
質問生成部24は、座標変換された評価値空間において距離が離れた施策の組み合わせ(ペアとする)を複数抽出し、抽出した施策のペアを用いて、質問を生成し、相対評価アンケートを実施する。例えば、
図4(c)から抽出された複数のペアのうちの1つが、施策Aと施策Dのペアであった場合には、質問生成部24は、
図4(d)に示すような質問が記載された画面を生成し、相対評価アンケートを実行する。なお、質問生成部24は、
図4(d)の画面をユーザ端末70に送信する。ユーザは、この画面において、施策A,Dのどちらが良いかを相対評価し、評価結果(1~5のいずれか)を入力する。なお、質問生成部24は、実際には、
図4(c)の評価値空間において抽出された全てのペアについての質問を
図4(d)の画面に記載するものとする。なお、質問生成部24が抽出した複数のペアそれぞれは、座標変換された評価値空間において距離が離れた施策のペア(ユーザが重視する評価項目の値の差異が大きい施策のペア)である。したがって、ユーザは、いずれの質問においても、比較的簡単に、どちらの施策が良いかを判断することができるようになっている。
【0025】
回答受付部25は、
図4(d)の画面においてユーザが入力(回答)した情報を取得し、分布図作成部26に送信する。
【0026】
分布図作成部26は、回答受付部25が受け付けた回答に基づいて、上記非特許文献1と同様の手法により、評価値空間(
図4(b))においてユーザが良いと考える範囲や悪いと考える範囲を示す分布図(goodness分布図)を生成する(
図4(e)参照)。そして、分布図作成部26は、
図4(e)のような画面を生成し、ユーザ端末70に送信する。ユーザは、
図4(e)の画面を参照することで、ユーザにとって、評価値空間のどの位置にある施策が良い施策であるかがわかり、施策A~Dの中では施策Dが最良であるということがわかる。
【0027】
(サーバ10の処理について)
次に、サーバ10の処理について、
図5、
図6のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明では、事業者が提供するシェアドeスクータを自治体が導入する際に、各日の最初(例えば朝8時)にどの位置に何台配置すべきかの施策を自治体と事業者で検討する場合について説明する。また、以下においては、説明の便宜上、施策の評価値空間が2つの評価項目(環境評価値、収益評価値)の座標軸を有する二次元の空間であるものとする。なお、環境評価値は、CO
2排出量が少ないほど大きな値を示し、収益評価値は、収益が多いほど大きな値を示すものとする。
【0028】
図5の処理が開始されると、まずステップS10において、施策シミュレーション部20が、複数の施策をシミュレーションし、評価値空間にプロットする。具体的には、施策シミュレーション部20は、
図7(a)に示すように、複数の施策A,B…を生成する。複数の施策A,B…は、それぞれシェアドeスクータの配置位置や配置台数が異なっている。また、施策シミュレーション部20は、生成した各施策を採用することで、人の移動を自動車からシェアドeスクータにどの程度変えることができるかをシミュレーションし、施策シミュレーション情報(各施策の環境評価値及び収益評価値)を得る。
図7(b)には、施策シミュレーション情報の一例が示されている。そして、施策シミュレーション部20は、
図7(c)に示すように、2つの評価項目(収益評価値と環境評価値)を座標軸とする2次元の評価値空間に各施策をプロットする。
【0029】
次いで、
図5のステップS12において、サーバ10は、相対評価用のペア決め処理のサブルーチンを実行する。このステップS12においては、サーバ10は、
図6のフローチャートに沿った処理を実行する。
【0030】
図6の処理が開始されると、まず、ステップS30において、入力受付部22が、ユーザの価値観情報を受け付ける。例えば、ユーザが自治体の職員である場合、環境評価値の重視度が収益評価値よりも高い価値観情報(
図8(a)参照)を受け付ける。一方、ユーザが事業者である場合、収益評価値の重視度が環境評価値よりも高い価値観情報(
図8(b)参照)を受け付ける。
【0031】
次いで、ステップS32において、座標変換部23は、入力受付部22が受け付けた価値観情報に基づいて評価値空間の座標変換を実行する。例えば、ユーザが自治体の職員である場合には、
図8(a)に示す重視度で
図9(a)に示す評価値空間の各座標軸(評価項目)を重み付けすることで、
図9(b)に示すような評価値空間を得る。また、例えば、ユーザが事業者である場合には、
図8(b)に示す重視度で
図9(a)に示す評価値空間の各座標軸(評価項目)を重み付けすることで、
図9(c)に示すような評価値空間を得る。
【0032】
次いで、ステップS34において、質問生成部24は、座標変換後の評価値空間において、全通りの施策のペアのユークリッド距離(2点間の直線距離)を算出する。例えば、ユーザが自治体の職員である場合には、
図9(d)に示すような座標変換後のペア情報が得られる。また、ユーザが事業者である場合には、
図9(e)に示すような座標変換後のペア情報が得られる。
【0033】
次いで、ステップS36において、質問生成部24は、各ペアのユークリッド距離に基づいて、相対評価アンケート用のペアを抽出する。
図10(a)には、ユーザが自治体の職員である場合におけるペアの抽出方法の一例が示されている。また、
図10(b)には、ユーザが事業者である場合におけるペアの抽出方法の一例が示されている。本実施形態においては、各施策が満遍なく抽出され、距離が比較的長いペアが抽出されるようにしている。例えば、
図10(a)においては、環境評価値が最も小さい施策Aと,環境評価値が4番目に小さい施策Dのペア、環境評価値が2番目に小さい施策Fと,環境評価値が5番目に小さい施策Cのペア、環境評価値が3番目に小さい施策Eと,環境評価値が6番目に小さい施策Bのペアが抽出される。また、例えば、
図10(b)においては、収益評価値が最も小さい施策Eと,収益評価値が4番目に小さい施策Cのペア、収益評価値が2番目に小さい施策Bと,収益評価値が5番目に小さい施策Fのペア、収益評価値が3番目に小さい施策Aと,収益評価値が6番目に小さい施策Dのペアが抽出される。
【0034】
ステップS36まで行われた後は、
図6の処理を終了し、
図5のステップS14に移行する。
【0035】
ステップS14に移行すると、質問生成部24は、相対評価アンケートを実施する。具体的には、ユーザが自治体の職員である場合には、質問生成部24は、
図11(a)に示すような相対評価アンケートの画面を生成し、ユーザ端末70に送信する。また、ユーザが事業者である場合には、質問生成部24は、
図11(b)に示すような相対評価アンケートの画面を生成し、ユーザ端末70に送信する。なお、
図11(a)、
図11(b)の画面には、施策名のみが記載されているが、実際には、施策の詳細や施策の各評価項目の点数などが記載されているものとする。ユーザは、
図11(a)、
図11(b)の画面において、どちらの施策が良いかを5段階評価で回答する。5段階評価の1~5は、1:左側の施策が良い、2:どちらかというと左側の施策が良い、3:同一、4:どちらかというと右側の施策が良い、5:右側の施策が良い、である。この場合、回答受付部25は、ユーザの回答結果(
図12(a)、
図12(b)参照)を取得し、分布図作成部26に送信する。
【0036】
次いで、ステップS16において、分布図作成部26は、ユーザの回答結果(
図12(a)、
図12(b))に基づいて、評価値空間内の各点における良し悪しを示す値(goodness値)を計算する。この場合、分布図作成部26は、上述した非特許文献1に記載の技術を用いて、良し悪しを示す値を計算する。
【0037】
次いで、ステップS18において、分布図作成部26は、ステップS16の計算結果に基づいてgoodness分布図を生成し、ユーザに提示する。例えば、ユーザ端末70には、
図13(a)に示すような画面が表示される。なお、
図13(a)の分布図は、便宜上グレースケールで表現されているが、色のグラデーションにより表現してもよい。ユーザは、表示されている分布図で良ければ、「はい」ボタンを押し、良くなければ「いいえ」ボタンを押す。なお、ユーザの相対評価アンケートに対する回答内容によっては、
図13(b)のようなgoodness分布図が生成されることもある。
【0038】
次いで、ステップS20において、分布図作成部26は、提示した分布図で良いか否かを判断する。すなわち、分布図作成部26は、
図13(a)や
図13(b)の画面において「はい」ボタンが押されたか否かを判断する。このステップS20の判断が否定された場合には、ステップS12に戻る。そして、相対評価用のペア決め処理(S12)以降の処理が、抽出されるペアの数を増減させたり、抽出されるペア(施策の組み合わせ)を異ならせたうえで、再度実行されるようになっている。
【0039】
一方、ステップS20の判断が肯定された場合には、ステップS22に移行し、分布図作成部26は、施策がプロットされた分布図をユーザに提示する。具体的には、分布図作成部26は、ユーザが自治体の職員であれば、
図14(a)に示すような画面を生成し、ユーザ端末70に送信する。一方、ユーザが事業者であれば、分布図作成部26は、
図14(b)に示すような画面を生成し、ユーザ端末70に送信する。
図14(a)の画面においては、ユーザ(自治体)にとっての最良施策が施策Bであり、
図14(b)の画面においては、ユーザ(事業者)にとっての最良施策が施策Dであることがわかる。また、各ユーザは、
図14(a)、
図14(b)の画面を持ち寄って会議を行うことで、それぞれの立場における最良施策を知ることができるとともに、お互いに妥協できる施策(例えば施策C)を知ることもできるため、合意形成が容易となる。なお、
図14(a)、
図14(b)の画面においては、各施策名をクリックすることで、各施策の内容を確認することが可能となっている。
【0040】
上記のようにステップS22の処理が行われた後は、
図5の全処理が終了する。
【0041】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、施策シミュレーション部20は、複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を評価値空間(第1の評価値空間)上にプロットする。また、座標変換部23は、ユーザが複数の評価項目それぞれを重視する度合(重視度)に基づいて、複数の評価項目それぞれの重みを設定し、評価値空間の座標軸それぞれに重みを反映して座標変換を行う(第2の評価値空間を生成する)。また、質問生成部24は、座標変換後の評価値空間における複数の施策それぞれの類似度合(ユークリッド距離)に基づいて、距離がなるべく遠い施策のペアを複数抽出し、相対評価アンケートを実行する。そして、分布図作成部26は、回答受付部25が受け付けた相対評価アンケートの回答結果に基づいて、評価値空間におけるgoodness分布図を作成し、ユーザ端末70に送信する。これにより、本実施形態では、ユーザが重視している評価項目の値があまり類似していない施策のペアを用いて相対評価アンケートを行うことができるため、ユーザはペアに含まれる施策同士の良し悪しの回答を簡易に行うことができる。したがって、相対評価アンケートの質問数が少なくても、相対評価アンケートの信頼性を向上することができ、精度のよいgoodness分布図をユーザに提供することができる。この場合、ユーザは精度のよいgoodness分布図を用いることで、他のユーザ(利害関係者)との施策に関する話し合いにおいて、合意形成を適切に実行することができる。すなわち、ユーザの施策評価を支援することができる。例えば、非特許文献1の一対比較の処理は、多数回(例えば100回以上)行う必要があったが、本実施形態のように施策のペアを抽出し、相対評価アンケートを実行することで、質問の数を大幅に減らす(例えば10~20程度かそれ以下にする)ことができる。本実施形態では、相対評価アンケートが個々の価値観に関するアンケートであるため、同一のユーザが回答する必要があるが、上記のように質問の数を大幅に減らすことで、ユーザの負担を軽減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、入力受付部22が、ユーザが入力したユーザの価値観情報(複数の評価項目それぞれの重視度)を取得し、座標変換部23は、取得した価値観情報に基づいて評価値空間の座標変換を行う。これにより、ユーザが入力した価値観情報を用いて、簡易に評価値空間の座標変換を行うことができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、
図5のステップS20において、提示した分布図で良いか否かをユーザが判断する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ステップS12~S20の処理を、評価値空間にプロットする施策の種類や数を変更しつつ、繰り返し実行し、goodness分布図の変化がなくなったことをサーバが認識した段階で、ステップS20の判断が肯定されるようにしてもよい。
【0044】
(変形例)
なお、上記実施形態では、
図6のステップS30において、ユーザが価値観情報を入力する場合について説明したが、これに限られるものではない。各ユーザは自己の価値観情報が分からないこともある。この場合、サーバ10の座標変換部23は、
図6のステップS30に代えて、
図15のステップS30’の処理を実行するようにしてもよい。
【0045】
図15の処理においては、まず、ステップS40において、座標変換部23が、1つ評価項目の値が他の評価項目に比べて極端に大きい施策を特定する。例えば、
図16(a)のように、3つの評価項目(環境、収益、利便性)の座標軸を有する3次元の評価値空間があるとする。この場合、座標変換部23は、評価項目「環境」が収益及び利便性に比べて大きい施策F、評価項目「収益」が環境及び利便性に比べて大きい施策A、評価項目「利便性」が収益及び環境に比べて大きい施策Eを特定する。
【0046】
次いで、ステップS42において、座標変換部23は、特定した施策から得られるペアを、事前相対評価アンケート用(事前テスト用)のペアとする。
図16(a)の例では、座標変換部23は、施策Aと施策Eのペア、施策Eと施策Fのペア、施策Fと施策Aのペアを事前相対評価アンケート用のペアとする。
【0047】
次いで、ステップS44において、座標変換部23は、ステップS42で特定した事前相対評価アンケート用のペアを用いて、事前相対評価アンケートを実施する。この事前相対評価アンケートの方法は、
図5のステップS14(
図11(a)、
図11(b)参照)と同様である。
【0048】
次いで、ステップS46において、座標変換部23は、事前相対評価アンケートの結果に基づいて、ユーザの価値観情報を推定する。具体的には、座標変換部23は、
図16(b)に示すように、事前相対評価アンケートの結果から良し悪しの分布図(goodness分布図)を作成し、そのうち、goodness値が高い部分(
図16(b)の太線円で囲む部分)を特定する。そして、座標変換部23は、goodness値が高い部分の重心位置に基づいて、ユーザの価値観情報を推定する。例えば、
図16(b)の場合、環境の重視度=0.8、収益の重視度=0.1、利便性の重視度=0.1などとなる。
【0049】
このようにすることで、ユーザが自己の価値観情報を知らなくても、
図6、
図7の処理を実行することが可能となっている。
【0050】
なお、上記実施形態では、評価値空間が、2又は3の評価項目を座標軸とする評価値空間である場合について説明したが、これに限らず、評価値空間は、4以上の評価項目を座標軸とする評価値空間であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、質問生成部24が、相対評価アンケートにおいて、2つの施策(ペア)の良し悪しをユーザに相対評価させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、質問生成部24は、3つ以上の施策をユーザに相対評価させてもよい。この場合にも、質問生成部24は、座標変換後の評価値空間において施策相互間の距離がなるべく遠い3つ以上の施策を用いて相対評価アンケートを生成すればよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、
図5、
図6、
図15の処理をサーバ10が実行する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ユーザ端末70が
図5、
図6、
図15の処理を実行することとしてもよい。
【0053】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0054】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0055】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0056】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0057】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、
ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、
前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、
抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする施策評価支援方法。
(付記2) 事前テスト用の施策の組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果を取得し、当該相対評価の結果に基づいて、前記ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合を推定する、
処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする付記1に記載の施策評価支援方法。
(付記3) 前記第1の評価値空間上にプロットされた複数の施策の中から1つの評価項目の評価が他の評価項目の評価に比べて高い施策を特定し、特定した施策の組み合わせを前記事前テスト用の施策の組み合わせとする、ことを特徴とする付記2に記載の施策評価支援方法。
(付記4) 前記ユーザが入力した、前記ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合を取得する、処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする付記1に記載の施策評価支援方法。
(付記5) 前記施策の組み合わせは、2つの施策のペアであることを特徴とする付記1~4のいずれかに記載の施策評価支援方法。
(付記6) 前記抽出する処理は、前記第2の評価値空間において距離が大きい施策の組み合わせを優先して抽出する、ことを特徴とする付記1~5のいずれかに記載の施策評価支援方法。
(付記7) 複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、
ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、
前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、
抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする施策評価支援プログラム。
(付記8) 複数の施策それぞれを複数の評価項目により評価した結果を、前記複数の評価項目を座標軸とする第1の評価値空間上にプロットし、
ユーザが前記複数の評価項目それぞれを重視する度合に基づいて、前記複数の評価項目それぞれの重みを設定し、前記第1の評価値空間の前記座標軸それぞれに前記重みを反映して第2の評価値空間を生成し、
前記第2の評価値空間における前記複数の施策それぞれの類似度合に基づいて、施策の組み合わせを複数抽出し、
抽出した各組み合わせに含まれる施策間の良し悪しを前記ユーザが相対評価した結果に基づいて、前記第1の評価値空間において前記ユーザが高く評価する範囲と低く評価する範囲を示す分布図を作成し、出力する、
処理を実行する処理部、を備える施策評価支援装置。
【符号の説明】
【0058】
10 サーバ(施策評価支援装置)
20 施策シミュレーション部
22 入力受付部
23 座標変換部
24 質問生成部
25 回答受付部
26 分布図作成部
70 ユーザ端末
90 CPU(処理部)