(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120577
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61F13/532 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027456
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 皓大
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB17
3B200DA28
3B200DB05
3B200DB15
(57)【要約】
【課題】尿を吸収した使用後に、折り畳み易く、嵩張りを抑えることができ、廃棄性に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示に係る吸収性物品10の吸収体13は、SAPを吸収体13の他の領域13bよりも多く含むSAP高密度領域13aを有し、SAP高密度領域13aは、吸収性物品10の幅方向に延び、吸収性物品10の長手方向の一側に1箇所以上2箇所以下、他側に1箇所以上3箇所以下設けられ、一側のSAP高密度領域13aaと他側のSAP高密度領域13abとは、中央部14で折り畳んだ際に互いに対向しない位置に配置され、SAP高密度領域13aのSAPの坪量は、100g/m
2以上1000g/m
2以下であり、SAP高密度領域13aの長手方向に沿う寸法の総和は、吸収体13の全長に対して5%以上40%以下であり、SAP高密度領域13aの幅方向に沿う寸法は、吸収体13の全長に対して20%以上100%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置されて高吸収性高分子を含む吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記高吸収性高分子を前記吸収体の他の領域よりも多く含むSAP高密度領域を有し、
前記吸収体の前記SAP高密度領域は、前記吸収性物品の幅方向に延び、前記吸収性物品の長手方向の中央部を境として一側に1箇所以上2箇所以下、他側に1箇所以上3箇所以下設けられ、
前記吸収体の前記一側の前記SAP高密度領域と前記他側の前記SAP高密度領域とは、前記吸収性物品を前記中央部で折り畳んだ際に互いに対向しない位置に配置され、
前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記高吸収性高分子の坪量は、100g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記吸収性物品の長手方向に沿う寸法の総和は、前記吸収体の長手方向の全長に対して5%以上40%以下であり、
前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記吸収性物品の幅方向に沿う寸法は、前記吸収体の幅方向の全長に対して20%以上100%以下である
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、清潔に廃棄するための吸収性物品が開示されている。この吸収性物品は、表面シート、裏面シート及び吸収コアを有する本体部と、非肌面側に突出したフック部材を有する後処理用部材とを有する。フック部材は、吸収性物品の肌面側を内側にして折られた状態で表面シートに止着可能に構成されている。
【0003】
特許文献2には、二つ折りにして包装する場合に吸収体の変形を抑えるための吸収性物品が開示されている。この吸収性物品の吸収体は、長手方向に沿って延びる直線状の複数の凸型立体形状部を有し、凸型立体形状部は、長手方向に折り畳んだ際に、折り線前後の凸型立体形状部同士が重ならないように、折り線を軸として非対称な幅方向の位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-103650号公報
【特許文献2】特開2017-131280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、尿を吸収した使用後の吸収性物品は、その中央部が膨潤し、折り畳み難く、廃棄時に嵩張るという課題があった。
【0006】
特許文献1に記載の吸収性物品では、廃棄時に吸収性物品を丸めた状態に保持することができるが、尿の吸収により膨潤した吸水性物品を折り畳み易くするものではなく、廃棄時に嵩張ってしまう可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の吸収性物品では、使用前の二つ折りにして包装する場合の吸収体の変形を抑えることができるが、尿の吸収により膨潤した使用後の吸水性物品を折り畳み易くするものではなく、廃棄時に嵩張ってしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本開示は、尿を吸収した使用後に、折り畳み易く、嵩張りを抑えることができ、廃棄性に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置されて高吸収性高分子を含む吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収体は、前記高吸収性高分子を前記吸収体の他の領域よりも多く含むSAP高密度領域を有し、前記吸収体の前記SAP高密度領域は、前記吸収性物品の幅方向に延び、前記吸収性物品の長手方向の中央部を境として一側に1箇所以上2箇所以下、他側に1箇所以上3箇所以下設けられ、前記吸収体の前記一側の前記SAP高密度領域と前記他側の前記SAP高密度領域とは、前記吸収性物品を前記中央部で折り畳んだ際に互いに対向しない位置に配置され、前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記高吸収性高分子の坪量は、100g/m2以上1000g/m2以下であり、前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記吸収性物品の長手方向に沿う寸法の総和は、前記吸収体の長手方向の全長に対して5%以上40%以下であり、前記吸収体の前記SAP高密度領域の前記吸収性物品の幅方向に沿う寸法は、前記吸収体の幅方向の全長に対して20%以上100%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、尿を吸収した使用後に、折り畳み易く、嵩張りを抑えることができ、廃棄性に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。
【
図3】折り畳んだ状態を示す吸収性物品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る吸収性物品について説明する。
【0013】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態を意味する。また、「前側」とは、吸収性物品を着用したときに着用者の腹側となる方向を意味し、「後側」とは、着用者の背側となる方向を意味する。また、左右方向は、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向を意味する。また、吸収性物品の各構成部材の長手方向とは、吸収性物品の長尺の方向(着用時に着用者の前後に沿う方向)をいい、図中の矢印Xに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の幅方向とは、長手方向と直交(交叉)する短尺の方向(着用時に着用者の左右に沿う方向)をいい、図中の矢印Yに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Zに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうち吸収性物品を着用したときの着用者の身体に向かう方向をいい、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向をいう。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品としては、例えば、吸水ナプキン、軽失禁パッド、尿取りパッド等の軽失禁製品、生理用ナプキン等の生理用品、パンティーライナー等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。
図2は、
図1のII-II矢視断面図である。
図3は、折り畳んだ状態を示す吸収性物品の側面図である。なお、各図の一点鎖線CLは、吸収性物品の長手方向の中心線CLを示す。
図2は、吸収性物品の概略的な断面図である。また、各図は、吸収性物品の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、吸収性物品の用途等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0015】
[吸収性物品]
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る吸収性物品10は、例えば下着に取り付けられて体液を吸収するためのパッド型の吸収性物品である。吸収性物品10の形状は、特に限定されるものではないが、略矩形型や小判型であることが好ましい。
【0016】
吸収性物品10は、装着時に肌側に位置する液透過性のトップシート11と、装着時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に配置される吸収体13とを備える。なお、吸収性物品10は、トップシート11及びバックシート12以外の他のシート(例えば、立体ギャザーや、吸収体13を包むキャリアシート等)を備えていてもよい。
【0017】
吸収性物品10の長手方向の長さ(最大長。以下同じ。)L1は、下限値100mm以上であることが好ましく、上限値800mm以下であることが好ましい。また、吸収性物品10の幅方向の長さW1は、下限値50mm以上であることが好ましく、上限値500mm以下であることが好ましい。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁製品、生理用ナプキン等の生理用品、パンティーライナー等に適したパッド型の吸収性物品10を得ることができる。
【0018】
(トップシート)
トップシート11は、吸収体13に向けて体液を速やかに通過させて吸収体13の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート11は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。基材の一例としては、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。
【0019】
トップシート11には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート11には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0020】
(バックシート)
バックシート12は、吸収体13が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート12には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート12にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0021】
バックシート12の非肌側面に、吸収性物品10を下着等の衣類や紙おむつ等に止着するための止着手段を設けてもよい。止着手段を構成する粘着剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体等のホットメルト系粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。上記の粘着剤を、バックシート12の非肌側面に塗布することで、粘着層を形成することができる。この場合、使用前の吸収性物品10の粘着層に、剥離可能なシート(剥離紙等)を貼り付けて、粘着層を保護してもよい。
【0022】
(吸収体)
吸収体13は、高吸収性高分子(Super Absorbent Polymer。以下、「SAP」という場合がある。)を含み、好ましくは、基材と、基材に保持されたSAPと、を含む。吸収体13の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0023】
SAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。
【0024】
吸収体13は、基材とSAPとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にSAP粒子を混合して形成したもの、基材間にSAP粒子を固着したSAPシート等が挙げられる。また、SAPを繊維状に成形し、基材に混合して用いてもよい。また、SAP粒子の脱落防止や、吸収体13の形状安定化の観点から、吸収体13をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。吸収体13がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一でも異なってもよい。
【0025】
吸収体13の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状、長方形の4角が丸まった角丸四角形状、長円状、一方向に長い楕円形状等が挙げられる。吸収体13は、2層以上を重ねて用いてもよい。
【0026】
吸収体13の長手方向の長さL2は、下限値90mm以上であることが好ましく、上限値750mm以下であることが好ましい。また、吸収体13の幅方向の長さW2は、下限値40mm以上であることが好ましく、上限値450mm以下であることが好ましい。吸収体13の寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁製品、生理用ナプキン等の生理用品、パンティーライナー等に適したパッド型の吸収性物品10を得ることができる。
【0027】
(SAP高密度領域)
吸収体13は、SAPを吸収体13の他の領域13bよりも多く含むSAP高密度領域13aを有する。SAP高密度領域13aは、吸収体13の単位体積あたりのSAPの量が他の領域13bよりも大きい領域である。これにより、例えば、吸収体13の厚みは他の領域13bと略同じであっても、体液の吸収量が他の領域13bよりも多い領域(SAP高密度領域13a)を設けることができる。他の領域13bは、SAP高密度領域13aよりもSAPの量が少ない領域であって、吸収体13のうちSAP高密度領域13aを除く領域である。SAP高密度領域13aは、吸収体13の他の領域13bよりもSAPを多く含むので、体液を吸収して膨潤した際に、他の領域13bよりも肌側へ膨らむ。なお、吸収体13の厚みは一定の厚みに限定されるものではなく、例えば、吸収性物品10の肌側面にエンボス加工等を施したり、スリットを設けたりすることによって凹凸を設けてもよい。
【0028】
SAP高密度領域13aのSAPの坪量は、下限値100g/m2以上であり、上限値1000g/m2以下である。SAP高密度領域13aのSAPの坪量を上記範囲に設定することによって、体液の吸収量を確保できるとともに、膨潤した際の嵩張りを抑えることができる。
【0029】
図1及び
図3に示すように、吸収体13のSAP高密度領域13aは、吸収性物品10の長手方向の中央部14(中心線CLを含む領域)を境として長手方向の両側に設けられる。中央部14よりも長手方向の一側(矢印Xが指し示す方向)に設けられるSAP高密度領域13a(以下、「一側のSAP高密度領域13aa」という。)と、中央部14よりも他側に設けられるSAP高密度領域13a(以下、「他側のSAP高密度領域13ab」という。)とは、吸収性物品10を中央部14でトップシート11側を内側にして二つ折りに折り畳んだ際に、互いに対向しない位置に配置される。吸収性物品10の中央部14には、SAP高密度領域13aは配置されない。なお、以下の説明では、吸収性物品10の長手方向の中央部14でトップシート11側を内側にして二つ折りに折り畳むことを、単に「折り畳む」という。また、「一側」とは、中央部14よりも長手方向の一側を意味し、「他側」とは、中央部14よりも長手方向の他側を意味する。
【0030】
SAP高密度領域13aは、吸収性物品10の幅方向に延びる。具体的には、SAP高密度領域13aは、吸収性物品10の長手方向よりも幅方向に長尺に直線状に延びる(W3>L3)。SAP高密度領域13aを幅方向に延ばすことによって、体液の吸収量が多い領域を幅方向に長く確保することができるので、吸収性物品10の前方及び後方からの体液の漏れを抑えることができる。また、SAP高密度領域13aを幅方向に延ばすことによって、SAP高密度領域13aの長手方向の長さL3を抑えることができるので、SAP高密度領域13aが過大になることを防止することができ、折り畳んだ際の嵩張りを抑えることができる。なお、吸収体13に設けられる各SAP高密度領域13aの形状は、全て同じ形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。
【0031】
一側(例えば前側)のSAP高密度領域13aaを設ける数は、下限値1箇所以上であり、上限値2箇所以下である。また、他側(例えば後側)のSAP高密度領域13abを設ける数は、下限値1箇所以上であり、上限値3箇所以下である。一側のSAP高密度領域13aa及び他側のSAP高密度領域13abを設ける数を、上記範囲に設定することによって、吸収性物品10の前後で異なるように体液の吸収量を確保できるとともに、膨潤した際の嵩張りを抑えることができる。
【0032】
本実施形態では、
図1及び
図3に示すように、一側のSAP高密度領域13aaを1箇所、他側のSAP高密度領域13abを1箇所設けている。具体的には、一側のSAP高密度領域13aaを、吸収性物品10の中央部14の近傍に1つ配置し、他側のSAP高密度領域13abを、吸収性物品10の中央部14から離間した位置(吸収性物品10の他側の端部側)に1つ配置した。
【0033】
各SAP高密度領域13a(一側のSAP高密度領域13aa及び他側のSAP高密度領域13ab)の長手方向に沿う寸法L3の総和(
図1ではL3+L3)は、吸収体13の長手方向の全長L2に対して下限値5%以上であり、上限値40%以下である。また、各SAP高密度領域13a(一側のSAP高密度領域13aa及び他側のSAP高密度領域13ab)のそれぞれの幅方向に沿う寸法W3は、吸収体13の幅方向の全長W2に対して下限値20%以上であり、上限値100%以下である。SAP高密度領域13aの寸法を上記範囲に設定することによって、体液の吸収量を確保し、膨潤した際の嵩張りを抑えつつ、吸収性物品10の前方及び後方からの体液の漏れを抑えることができる。
【0034】
(立体ギャザー)
吸収性物品10の肌側面に、着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するための左右の立体ギャザー(図示省略)を設けてもよい。この場合、立体ギャザーは、トップシート11の肌側面の幅方向の両端部において、吸収性物品10の長手方向に沿って延びるように設けられる。立体ギャザーは、撥水性及び/又は防水性のギャザーシートと、弾性伸縮部材とを含む。
【0035】
ギャザーシートは、撥水性及び/又は防水性(液不透過性)を有するシートであり、例えば不織布から構成される。不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。ギャザーシートは、例えば、幅方向の一端(固定端)がトップシート11の肌側面の幅方向の両端付近に固定され、幅方向の他端が起立性を有する自由端である。なお、ギャザーシートの固定位置は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、ギャザーシートの幅方向の一端(固定端)を、バックシート12の肌側面の幅方向の両端付近に固定し、ギャザーシートの幅方向の中間部を、トップシート11の肌側面の幅方向の両端付近に固定してもよい。
【0036】
弾性伸縮部材は、ギャザーシートの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、ギャザーシートの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。弾性伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0037】
(使用方法)
次に、使用後の吸収性物品10を折り畳む場合について説明する。
【0038】
図3に示すように、使用後の吸収性物品10は、体液を吸収しているので、吸収体13が全体的に膨潤している。吸収体13には、他の領域13bよりもSAPを多く含むSAP高密度領域13aが設けられているので、SAP高密度領域13aが他の領域13bよりも肌側へ大きく膨潤している。これにより、トップシート11のうち、SAP高密度領域13aに位置する箇所が肌側へ大きく突出する凸部Aを形成し、他の領域13bに位置する箇所が凸部Aよりも低くなり凹部Bを形成する。なお、凹部Bは、体液を吸収する前の状態に対して凹んでいるわけではなく、凸部Aよりも突出量が低いことを意味する。使用後の吸収性物品10を廃棄する場合、吸収性物品10を折り畳む。吸収性物品10を折り畳むと、吸収体13の一側のSAP高密度領域13aaは、他側の他の領域13bに対向し、他側のSAP高密度領域13abは、一側の他の領域13bに対向する。すなわち、トップシート11側の凸部Aは、凹部Bに対向する。
【0039】
上記のように構成された吸収性物品10では、吸収体13に、他の領域13bよりもSAPを多く含むSAP高密度領域13aを設けているので、SAP高密度領域13aで体液の吸収量を多く確保することができ、他の領域13b(中央部14を含む)の膨潤を抑えることができる。このため、吸収性物品10の中央部14の膨潤を抑えることができるので、使用後の吸収性物品10を折り畳み易くなる。
【0040】
また、SAP高密度領域13aが他の領域13bよりも肌側へ大きく膨潤するので、体液の吸収後に吸収性物品10の肌側面に凹凸構造が生じる。一側のSAP高密度領域13aaと他側のSAP高密度領域13abとは、吸収性物品10を折り畳んだ際に互いに対向しない位置に配置されるので、一側のSAP高密度領域13aaは、他側の他の領域13bに対向し、他側のSAP高密度領域13abは、一側の他の領域13bに対向する。このため、SAP膨潤後の吸収性物品10の上記凹凸構造(凸部A及び凹部B)が、互いの凹凸を打ち消すように、互い違いに重なるので、折り畳んで廃棄する際の吸収性物品10の嵩高さが減少する。
【0041】
また、一側のSAP高密度領域13aaは、1箇所以上2箇所以下設けられ、他側のSAP高密度領域13abは、1箇所以上3箇所以下設けられる。このため、吸収性物品10の前後で異なるように体液の吸収量を確保できるとともに、膨潤した際の嵩張りを抑えることができる。
【0042】
また、SAP高密度領域13aのSAPの坪量は、100g/m2以上1000g/m2以下であるので、体液の吸収量を確保できるとともに、膨潤した際の嵩張りを抑えることができる。
【0043】
また、各SAP高密度領域13a(一側のSAP高密度領域13aa及び他側のSAP高密度領域13ab)の長手方向に沿う寸法L3の総和は、吸収体13の長手方向の全長L2に対して5%以上40%以下である。また、各SAP高密度領域13aのそれぞれの幅方向に沿う寸法W3は、吸収体13の幅方向の全長W2に対して20%以上100%以下である。このため、体液の吸収量を確保し、膨潤した際の嵩張りを抑えつつ、吸収性物品10の前方及び後方からの体液の漏れを抑えることができる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、尿を吸収した使用後に、折り畳み易く、嵩張りを抑えることができ、廃棄性に優れた吸収性物品を提供することができる。
【0045】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【実施例0046】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
実施例1~4及び比較例1~6の尿取りパッド(吸収性物品)を作成し、後述する4つの項目(排尿領域の液戻り量、二つ折りにした際の嵩高さ、折り畳み易さ、液漏れし難さ)の評価を行った。
【0048】
実施例1~4及び比較例1~6の吸収性物品は、以下のように作成した。先ず、パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ20gとSAP6gをともに積繊した吸収体マットを準備し、長手方向の長さ(以下、単に「長さ」という。)400mm×幅120mmに成形した。そして、成形した吸収体のうちの所定の領域(表1の「形状、位置」の行に示す着色された領域。)に、所定の量のSAPを追加することによって、SAP高密度領域を設けた(比較例1を除く)。SAP高密度領域は、吸収性物品を折り畳んだ際に互いに対向しない位置に配置されている。この吸収体を用いて、長さ450mm×幅160mmの尿取りパッドを作成した。なお、トップシートは、エアスルー不織布(坪量22g/m2)を用いた。バックシートは、通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m2)を用いた。そして、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体の肌側面とを接合するとともに、トップシートとバックシートと吸収体とを一体化した。
【0049】
(実施例1)
実施例1の吸収性物品は、SAP高密度領域を、一側に1箇所、他側に1箇所設けた。各SAP高密度領域の寸法を、長さ40mm×幅100mmとした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、1.60g(坪量200g/m2)とした。
【0050】
(実施例2)
実施例2の吸収性物品は、SAP高密度領域の位置及び寸法を、実施例1と同様の位置及び寸法にした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、4.00g(坪量500g/m2)とした。
【0051】
(実施例3)
実施例3の吸収性物品は、SAP高密度領域の位置及び寸法を、実施例1と同様の位置及び寸法にした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、6.40g(坪量800g/m2)とした。
【0052】
(実施例4)
実施例4の吸収性物品は、SAP高密度領域を、実施例1と同様に、一側に1箇所、他側に2箇所設けた。各SAP高密度領域の寸法を、長さ27mm×幅100mmとした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、4.05g(坪量:500g/m2)とした。
【0053】
(比較例1)
比較例1の吸収性物品は、SAP高密度領域を設けていない。
【0054】
(比較例2)
比較例2の吸収性物品は、SAP高密度領域を、一側に1箇所、他側に1箇所設けた。各SAP高密度領域の寸法を、長さ40mm×幅12mmとした。すなわち、SAP高密度領域の形状を、長手方向に長い形状とした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、0.48g(坪量:500g/m2)とした。
【0055】
(比較例3)
比較例3の吸収性物品は、SAP高密度領域の位置及び寸法を、実施例1と同様の位置及び寸法にした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、0.40g(坪量50g/m2)とした。
【0056】
(比較例4)
比較例4の吸収性物品は、SAP高密度領域の位置及び寸法を、実施例1と同様の位置及び寸法にした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、9.60g(坪量1200g/m2)とした。
【0057】
(比較例5)
比較例5の吸収性物品は、SAP高密度領域を、一側に1箇所、他側に1箇所設けた。各SAP高密度領域の寸法を、長さ100mm×幅100mmとした。すなわち、SAP高密度領域の形状を、正方形状とした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、1.60g(坪量200g/m2)とした。
【0058】
(比較例6)
比較例6の吸収性物品は、SAP高密度領域を、一側に3箇所、他側に3箇所設けた。各SAP高密度領域の寸法を、長さ8mm×幅100mmとした。SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの量を、2.40g(坪量:500g/m2)とした。
【0059】
(排尿領域の液戻り量)
吸収性物品の中央に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後に、予め重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製NO.2、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に687gの錘を載せた(圧力:35gf/cm2)。錘を載せてから1分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙との重量差(g)を検出した。このような試験を10個のサンプルについて行い、その検出結果の平均値を液戻り量とした。液戻り量が少ないほど吸収性能に優れる。
【0060】
(二つ折りにした際の嵩高さ)
吸収性物品の中央に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後に、吸収性物品の長手方向の中央部を境に吸収性物品を長軸方向に2つ折りにし、最も厚みが生じた箇所の高さを測定した。
【0061】
(折り畳み易さ)
吸収性物品の中央に生理食塩水500mLを注入し、10分経過後した後、20名のパネラーに吸収性物品の長手方向の中央部を境に吸収性物品を長軸方向に2つ折りにしてもらい、「折り畳み易い」または「折り畳み難い」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「折り畳み易い」が16人以上20人以下のとき
○:「折り畳み易い」が11人以上15人以下のとき
△:「折り畳み易い」が6人以上10人以下のとき
×:「折り畳み易い」がいないか、1人以上5人以下の時
【0062】
(横漏れし難さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時の液漏れについて、「液漏れがある」または「液漏れがない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「液漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「液漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「液漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「液漏れがない」がいないか、1人以上5人以下の時
【0063】
得られた結果を表1に示す。
【0064】
なお、「吸収性物品」の「SAP(追加前)」は、SAP高密度領域を作成するために追加したSAPを除いたSAPの重量を示す。また、「SAP高密度領域」の「SAP量」は、SAP高密度領域を作成するために追加するSAPの重量を示す。例えば、実施例1では、6gのSAPを有する吸収体の所定の位置に1.60gのSAPを追加してSAP高密度領域を作成しており、吸収性物品全体としては、7.60gのSAPが含まれる。
【0065】
【0066】
以上より、本開示の吸収性物品によれば、尿を吸収した使用後に、折り畳み易く、嵩張りを抑えることができ、廃棄性に優れていることが確認された。