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特開2024-120582一酸化炭素を含むガスを製造する方法、及び反応装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120582
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】一酸化炭素を含むガスを製造する方法、及び反応装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20240829BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20240829BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20240829BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01B32/40
C01B3/38
B01J23/755 M
B01J23/745 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027464
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】福原 長寿
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綾
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EB18
4G140EB42
4G146JA01
4G146JB02
4G146JC02
4G146JC22
4G146JC23
4G146JC24
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA17
4G169BB02B
4G169BC31B
4G169BC66B
4G169BC68B
4G169CB81
4G169DA06
4G169EB14Y
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】一酸化炭素を生成する気相反応によって一酸化炭素を含むガスを製造する場合、より効率的に気相反応が進行することが望まれる。
【解決手段】一酸化炭素を生成する気相反応により、一酸化炭素を含む中間ガスを、気相反応の出発物質を含む原料ガスから形成することと、中間ガス中の一酸化炭素から固体炭素を生成させる固体炭素化反応を含む反応により、中間ガスから固体炭素を捕集することと、固体炭素が捕集された後の中間ガスを含むガス中で、気相反応により一酸化炭素を更に形成することとを含む、一酸化炭素を含むガスを製造する方法。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素を生成する気相反応により、一酸化炭素を含む中間ガスを、前記気相反応の出発物質を含む原料ガスから形成することと、
前記中間ガスから固体炭素を析出させる固体炭素化反応を含む反応により、前記中間ガスから固体炭素を捕集することと、
前記固体炭素が捕集された後の前記中間ガスを含むガス中で、前記気相反応により一酸化炭素を更に形成することと、
を含む、
一酸化炭素を含むガスを製造する方法。
【請求項2】
第一反応管、及び、前記第一反応管内に設けられた前記気相反応を促進する第一触媒を備える第一反応部において、前記原料ガスから前記中間ガスが形成され、
第二反応管、及び、前記第二反応管内に設けられた前記固体炭素化反応を促進する第二触媒を備える第二反応部において、前記中間ガスから前記固体炭素が捕集され、
第三反応管、及び、前記第三反応管内に設けられた前記気相反応を促進する第三触媒を備え、前記第一反応部とは別に設けられた第三反応部において、前記固体炭素が捕集された後の前記中間ガスを含むガス中で一酸化炭素が更に形成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料ガスが前記出発物質として炭化水素及び二酸化炭素を含み、前記気相反応が前記炭化水素のドライ改質反応を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原料ガスが前記出発物質として二酸化炭素及び水素を含み、前記気相反応が逆水性ガスシフト反応を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
第一反応管、及び、前記第一反応管内に設けられた、一酸化炭素を生成する気相反応を促進する第一触媒を備える第一反応部と、
第二反応管、及び、前記第二反応管内に設けられた、炭素源を含むガスから固体炭素を析出させる固体炭素化反応を促進する第二触媒を備える第二反応部と、
第三反応管、及び、前記第三反応管内に設けられた、前記気相反応を促進する第三触媒を備える第三反応部と、
を具備し、
前記第一反応部、前記第二反応部及び前記第三反応部が、前記第一反応部、前記第二反応部及び前記第三反応部の順に気体が流通するように設けられている、
反応装置。
【請求項6】
前記第一触媒及び前記第三触媒が、炭化水素のドライ改質反応を促進する触媒である、請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記第一触媒及び前記第三触媒が、逆水性ガスシフト反応を促進する触媒である、請求項5に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化炭素を含むガスを製造する方法、及び反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量削減等のために、炭化水素及び二酸化炭素を含む原料ガスから一酸化炭素を生成する反応と、それに続くガスからの固体炭素捕集とを組み合わせることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/235443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一酸化炭素を生成する気相反応によって一酸化炭素を含むガスを製造する場合、より効率的に気相反応が進行することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は少なくとも以下を含む。
[1]
一酸化炭素を生成する気相反応により、一酸化炭素を含む中間ガスを、前記気相反応の出発物質を含む原料ガスから形成することと、
前記中間ガスから固体炭素を析出させる固体炭素化反応を含む反応により、前記中間ガスから固体炭素を捕集することと、
前記固体炭素が捕集された後の前記中間ガスを含むガス中で、前記気相反応により一酸化炭素を更に形成することと、
を含む、
一酸化炭素を含むガスを製造する方法。
[2]
第一反応管、及び、前記第一反応管内に設けられた前記気相反応を促進する第一触媒を備える第一反応部において、前記原料ガスから前記中間ガスが形成され、
第二反応管、及び、前記第二反応管内に設けられた前記固体炭素化反応を促進する第二触媒を備える第二反応部において、前記中間ガスから前記固体炭素が捕集され、
第三反応管、及び、前記第三反応管内に設けられた前記気相反応を促進する第三触媒を備え、前記第一反応部とは別に設けられた第三反応部において、前記固体炭素が捕集された後の前記中間ガスを含むガス中で一酸化炭素が更に形成される、
[1]に記載の方法。
[3]
【0006】
前記原料ガスが前記出発物質として炭化水素及び二酸化炭素を含み、前記気相反応が前記炭化水素のドライ改質反応を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記原料ガスが前記出発物質として二酸化炭素及び水素を含み、前記気相反応が逆水性ガスシフト反応を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]
第一反応管、及び、前記第一反応管内に設けられた、一酸化炭素を生成する気相反応を促進する第一触媒を備える第一反応部と、
第二反応管、及び、前記第二反応管内に設けられた、炭素源を含むガスから固体炭素を析出させる固体炭素化反応を促進する第二触媒を備える第二反応部と、
第三反応管、及び、前記第三反応管内に設けられた、前記気相反応を促進する第三触媒を備える第三反応部と、
を具備し、
前記第一反応部、前記第二反応部及び前記第三反応部が、前記第一反応部、前記第二反応部及び前記第三反応部の順に気体が流通するように設けられている、
反応装置。
[6]
前記第一触媒及び前記第三触媒が、炭化水素のドライ改質反応を促進する触媒である、[5]に記載の反応装置。
[7]
前記第一触媒及び前記第三触媒が、逆水性ガスシフト反応を促進する触媒である、請求[5]に記載の反応装置。
【発明の効果】
【0007】
一酸化炭素を生成する気相反応によって一酸化炭素を含むガスを製造する場合において、より効率的に気相反応が進行させることができる。一酸化炭素を生成する気相反応による出発物質の転化率が、気相反応の化学平衡に近い、又はこれを超える水準に到達し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】反応装置の例を示す模式図である。
図2】CH及びCOの転化率、及び生成ガスにおけるH/CO(モル比)と温度との関係を示すグラフである。
図3】CH及びCOの転化率、及び生成ガスにおけるH/CO(モル比)と温度との関係を示すグラフである。
図4】COの転化率と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は以下の例に限定されない。
【0010】
図1は、一酸化炭素を含むガスを製造することのできる反応装置の例を示す模式図である。図1に示される反応装置100は、第一反応部10と、第二反応部20と、第三反応部30と、これらに連結された配管40とから主として構成される。第一反応部10、第二反応部20、第三反応部30及び配管40は、第一反応部10、第二反応部20及び第三反応部30の順に気体が流通するように設けられている。配管40上にバルブ51、52及び53が配置されている。
【0011】
第一反応部10は、反応管11と、反応管11内に設けられた第一触媒15と、反応管11の周囲に設けられたヒーター12とを備える。第一触媒15は、一酸化炭素を生成する気相反応を促進する触媒であることができる。
【0012】
第二反応部20は、反応管21と、反応管21内に設けられた第二触媒25と、反応管21の周囲に設けられたヒーター22とを備える。第二触媒25は、炭素源を含むガスから固体炭素を析出させる固体炭素化反応を促進する触媒であることができる。
【0013】
第三反応部30は、反応管31と、反応管31内に設けられた第三触媒35と、反応管31の周囲に設けられたヒーター32とを備える。第三触媒35は、一酸化炭素を生成する気相反応を促進する触媒であることができる。第一触媒15と第三触媒35とは、互いに同じでも異なってもよい。
【0014】
第一反応部10及び第三反応部30において一酸化炭素を生成する気相反応は、メタン等の炭化水素のドライ改質反応、又は逆水性ガスシフト反応を含んでもよい。
【0015】
第一反応部10及び第三反応部30における気相反応がドライ改質反応を含む場合、ドライ改質反応の出発物質として炭化水素及び二酸化炭素を含む原料ガスG0が、第一反応部10の第一反応管11に供給される。炭化水素がメタンである場合、第一反応管11内で下記のドライ改質反応を含む気相反応が進行して、一酸化炭素及び水素を含む中間ガスG1が原料ガスG0から形成される。中間ガスG1は、通常、残存する炭化水素も含む。
ドライ改質反応の例:
CH+CO→2CO+2H
【0016】
第一反応部10における気相反応が炭化水素のドライ改質反応を含む場合、原料ガスG0における炭化水素の量に対する二酸化炭素の量のモル比(CO/炭化水素)が、例えば0.1~10であってもよい。原料ガスG0が炭化水素及び二酸化炭素以外のガス(例えば窒素)を更に含んでもよい。
【0017】
第一反応部10における気相反応が炭化水素のドライ改質反応を含む場合、気相反応のために第一触媒15が加熱される温度は、例えば450~1000℃であってもよい。加熱温度は、反応の間、一定でも変化してもよい。第一触媒15は、例えばヒーター12によって加熱することができる。
【0018】
第一反応部10(第一反応管11)から排出された中間ガスG1は、炭素源として少なくとも一酸化炭素を含み、配管40を通過して第二反応部20の第二反応管21に流入する。第二反応管21内で、下記例のような固体炭素化反応を含む反応により、固体炭素が中間ガスG1から析出する。
固体炭素化反応の例:
2CO→C+CO
CH→C+2H
CO+H→C+H
【0019】
固体炭素化反応のために第二触媒25を加熱する温度は、例えば400℃以上で800℃以下、700℃以下、650℃以下、550℃以下、500℃以下又は490℃以下であってもよく、430℃以上で800℃以下、700℃以下、650℃以下、550℃以下、500℃以下又は490℃以下であってもよく、450℃以上で800℃以下、700℃以下、650℃以下、550℃以下、500℃以下又は490℃以下であってもよい。加熱温度は、反応の間、一定でも変化してもよい。第二触媒25は、例えばヒーター22によって加熱することができる。
【0020】
第二反応部20において固体炭素が捕集された後の中間ガスG2が、配管40を通過して第三反応部30の第三反応管31に流入する。第三反応部30において、ドライ改質反応を含む反応により、一酸化炭素及び水素が更に生成する。第三反応部30から排出される生成ガスG3は一酸化炭素及び水素を含み、これは例えば合成ガスとしてアルコール、炭化水素系燃料、化学原料物等の製造のために利用することができる。
【0021】
第三反応管31に供給される中間ガスG2における各ガス成分の比率は、第二反応部20における固体炭素化反応によって一酸化炭素が消費されることにより、固体炭素が捕集される前の中間ガスG1と比較して、ドライ改質反応における出発物質側によりシフトしている。そのため、中間ガスG2中の炭化水素及び二酸化炭素が、第三反応部30においてドライ改質反応によって更に転化され得る。その結果、反応装置100全体での転化率が、ドライ改質反応の化学平衡に近い、又はこれを超える水準に到達し得る。ドライ改質反応による転化率が高いと、より低い反応温度で一酸化炭素を含むガスを効率的に形成することも可能である。
【0022】
第三反応部30における気相反応が炭化水素のドライ改質反応を含む場合、気相反応のために第三触媒35が加熱される温度は、例えば450~1000℃であってもよい。加熱温度は、反応の間、一定でも変化してもよい。第三触媒35は、例えばヒーター32によって加熱することができる。
【0023】
図1の反応装置の例では、一酸化炭素を生成するための反応場として、第一反応部10とは別に第三反応部30が設けられている。このように2つの反応部を組み合わせることにより、それぞれの反応部に供給されるガスの組成に適した反応温度を選択することができる。ただし、第三反応部30を用いることに代えて、第二反応部20から排出される中間ガスG1を第一反応部10に戻してもよい。言い換えると、中間ガスG1を形成するための原料ガスG0が、第二反応部20から排出された中間ガスG1を含んでもよい。反応のために供給される熱エネルギーの効率の観点等からは、第一反応部10及び第三反応部30の組み合わせのほうが有利であると考えられる。
【0024】
第一反応部10及び第三反応部30における気相反応が逆水性ガスシフト反応を含む場合、逆水性ガスシフト反応の出発物質として二酸化炭素及び水素を含む原料ガスG0が、第一反応部10の第一反応管11に供給される。第一反応管11内で逆水性ガスシフト反応を含む気相反応が進行して、一酸化炭素及び水を含む中間ガスG1が原料ガスG0から形成される。中間ガスG1は、通常、残存する二酸化炭素も含む。
逆水性ガスシフト反応の例:
CO+H→CO+H
【0025】
第一反応部10における気相反応が逆水性ガスシフト反応を含む場合、原料ガスG0における水素の量に対する二酸化炭素の量のモル比(CO/H)が、例えば0.1~10であってもよい。原料ガスG0が一酸化炭素及び水素以外のガス(例えば窒素)を更に含んでもよい。
【0026】
第一反応部10における気相反応が逆水性ガスシフト反応を含む場合、気相反応のために第一触媒15が加熱される温度は、例えば300~1000℃であってもよい。加熱温度は、反応の間、一定でも変化してもよい。第三触媒35の加熱温度も同様の範囲内であってもよい。
【0027】
ドライ改質反応を含む上述の方法と同様に、第二反応部20において中間ガスG1から固体炭素が捕集される。第二反応部20から排出される中間ガスG2中で、第三反応部30における逆水性ガスシフト反応により、一酸化炭素及び水が更に生成する。第三反応部30から排出される生成ガスG3は、一酸化炭素及び水を含む。ここでも、第二反応部20において、逆水性ガスシフト反応の生成物である一酸化炭素が消費されることが、反応装置100全体での逆水性ガスシフト反応の効率的な進行に寄与すると考えられる。
【0028】
第一触媒15、第二触媒25及び第三触媒35は、必要とされる気相反応を促進する任意の触媒であることができる。以下、それぞれの触媒の例が説明される。
【0029】
第一触媒15及び第三触媒35は、基材と、基材上に設けられた、触媒活性成分を含む触媒活性層とを有する構造体であってもよい。基材は、捻じれた板によって形成されたスパイラル状、または規則性の整ったハニカム状若しくは網目状等の三次元構造を有していてもよい。また、粒状の触媒を用いてもよい。
【0030】
第一触媒15及び第三触媒35が炭化水素のドライ改質反応を促進するドライ改質用触媒である場合、触媒活性層は、例えば、アルミナを含む多孔質担体と、多孔質担体に担持された改質触媒活性成分とを含んでいてもよい。改質触媒活性成分は、例えばニッケル、コバルト、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、セリウム又はこれらの酸化物であってもよい。
【0031】
第一触媒15及び第三触媒35が逆水性ガスシフト反応用触媒である場合、触媒活性層に含まれる触媒活性成分は、例えば、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、ジルコニウム、モリブテン、カルシウム、又はそれらの酸化物であってもよく、白金、又は金であってもよい。触媒活性成分が、これら元素の1種を含む成分であってもよい。
【0032】
固体炭素化反応を促進する第二触媒25は、基材と、基材上に設けられた、触媒活性成分を含む触媒活性層とを有する構造体であってもよい。例えば、基材が管状体で、その内壁面上に触媒活性層が設けられていてもよい。触媒活性成分は、例えば、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化マンガン、金属鉄、金属コバルト、金属マグネシウム、金属モリブデン、金属ニッケル及び金属マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属含有成分であってもよい。触媒活性層は、例えば、触媒活性成分の粒子とアルコール等(エタノールやプロパノール)の溶媒とを含む懸濁液に基材を浸漬し、基材に付着した懸濁液を乾燥することにより、形成することができる。
【0033】
[実施例]
本発明は以下の実施例に限定されない。
【0034】
検討1:ドライ改質反応+固体炭素化反応
ドライ改質用触媒
複数の深い溝が形成されるように屈曲した断面形状を有する管状のアルミニウム製基材(最大幅:20mm、長さ:60mm)を準備した。この基材を、塩酸水溶液及び水酸化ナトリウムへの浸漬により表面処理した。表面処理後の基材の外周面に、アルミニウムのゾル-ゲル液を均一に塗布した。ゾル-ゲル液は、アルミニウムトリイソプロポキシド、硝酸、ホルムアルデヒド及び水を含んでいた。ゾル-ゲル液が塗布された基材を500~950℃で焼成して、基材上に多孔質のアルミナ層を形成した。基材を塩化スズ、塩酸及び水を含むスズ浴と、塩化パラジウム、塩酸及び水を含むパラジウム浴とに交互に浸漬するめっき処理により、アルミナ層上にパラジウム核を形成した。パラジウム核が形成された基材を室温のヒドラジン水溶液に10~20分浸漬した。その後、基材をニッケルの無電解めっき浴(50~60℃)に3~60分浸漬して、アルミナ層上にニッケル成分を析出させた。ニッケルの無電解めっき浴は、塩化ニッケル、エチレンジアミン、水酸化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム及び水を含んでいた。以上の操作により、基材と、基材の表面上に形成された、アルミナ及びニッケルを含む触媒活性層とを有するドライ改質用触媒を得た。
【0035】
固体炭素捕集用触媒
酸化鉄(Fe)をグラインドすることで細かく粉砕し、溶媒に懸濁させた。得られた懸濁液に、中空のステンレス鋼管(フェライト系ステンレス鋼製、直径:20mm、長さ:25mm)を浸漬した。懸濁液からステンレス鋼管を取り出し、ステンレス鋼管に付着した懸濁液を60~100℃の加熱により乾燥させて、ステンレス鋼管の内壁面上に、Feを含む多孔質のコーティング層(厚さ10~2000μm)を形成した。同様のコーティング層が形成されたステンレス鋼管を、固体炭素捕集用触媒として複数作製した。
【0036】
反応試験
作製したドライ改質用触媒、及び固体炭素捕集用触媒を用いて、図1と同様の構成を有する反応装置により、ドライ改質反応及び固体炭素捕集を含む反応試験を行った。ドライ改質用触媒を、第一触媒15又は第三触媒35として第一反応管11及び第三反応管31の内部に配置した。4本の固体炭素捕集用触媒を、第二触媒25として第二反応管21の内部に直列に配置した。原料ガスG0を供給する配管に、COボンベ、CHボンベ、Nボンベ及びHボンベを接続した。触媒の水素還元処理のため、バルブ51と53を開け、バルブ52を閉じ、水素ガスを流しながら、各触媒の温度を400~800℃で1~5時間保持した。続いて、第一触媒15、第二触媒25及び第三触媒35を所定の温度に加熱しながら、二酸化炭素、メタン及び窒素を含む原料ガスG0を第一反応部10に供給した。メタンと二酸化炭素の供給量を500ml/minに設定し、CO/CHのモル比を0.5~2.0に設定した。原料ガスG0が供給される間、第一触媒15、第二触媒25及び第三触媒35の温度を、550℃で40分、600℃で40分、650℃で40分、700℃で40分、及び550℃で40分の順に設定した。第三反応管31から排出された生成ガスG3の組成をTCDガスクロマトグラフ(GC-8A、株式会社島津製作所)によって分析した。試験終了後、第二反応管21から取り出された固体炭素捕集用触媒の内部には、析出した固体炭素が大量に付着していた。図2は、CH及びCOの転化率(Conversion)、及び生成ガスG3におけるH/CO(モル比)と温度との関係を示すグラフである。図中、Equilibriumは、固体炭素捕集を行わない場合のドライ改質反応の化学平衡から計算される転化率を示す。各温度において、メタンの転化率が、通常の化学平衡による転化率を超える高い値を示すことが確認された。
【0037】
図3は、ドライ改質触媒が配置された第一反応部10のみにより、固体炭素捕集を伴わずに上記と同様の温度条件で触媒反応試験を行ったときの、CH及びCOの転化率(Conversion)、及び生成ガスにおけるH/CO(モル比)と温度との関係を示すグラフである。いずれの温度においても、メタン及び二酸化炭素の転化率が、化学平衡による転化率を下回った。
【0038】
検討2:逆水性ガスシフト反応+固体炭素化反応
逆水性ガスシフト反応用触媒
捻じれた板によって形成されたスパイラル状のアルミニウム製基材(長さ:50mm)を準備した。この基材を、塩酸水溶液への浸漬により表面処理した。表面処理後の基材を、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム及び水を含む亜鉛置換浴(20~25℃)で浸漬して、基材表面上のアルミニウムを亜鉛に置換した。次いで基材を無電解鉄めっき浴(20~30℃)に15~30分浸漬して、基材表面上に鉄めっき層を形成した。無電解鉄めっき浴は、硫酸鉄、酒石酸ナトリウムカリウム、ホスフィン酸ナトリウム及び水を含んでいた。続いて基材を無電解銅めっき浴(20~30℃)に20~40分浸漬して、鉄めっき層上に銅めっき層を形成した。無電解銅めっき浴は、硝酸銅、炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、水酸化ナトリウム、ホルムアルデヒ及び水を含んでいた。以上の操作により、基材と、基材の表面上に形成された、銅を含む触媒活性層とを有する逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。
【0039】
反応試験
作製したスパイラル状のアルミニウム性基材を有する逆水性ガスシフト反応用触媒、及び検討1と同様の固体炭素捕集用触媒を用いて、図1と同様の構成を有する反応装置により、逆水性ガスシフト反応及び固体炭素捕集を含む反応試験を行った。逆水性ガスシフト反応用触媒を、第一触媒15又は第三触媒35として第一反応管11及び第三反応管31の内部に4本ずつ直列に配置した。4本の炭素捕集用触媒を、第二触媒25として第二反応管21の内部に直列に配置した。原料ガスG0を供給する配管に、COボンベ、Nボンベ及びHボンベを接続した。触媒の水素還元処理のため、バルブ51と53を開け、バルブ52を閉じ、水素ガスを流しながら、各触媒の温度を400~600℃で0.5~5時間保持した。続いて、第一触媒15、第二触媒25及び第三触媒35を所定の温度に加熱しながら、二酸化炭素、水素及び窒素を含む原料ガスG0を第一反応部10に供給した。原料ガスG0の供給量は500mL/minに設定した。原料ガスG0において、CO/H/Nのモル比を1/1/0.5に設定した。原料ガスG0が供給される間、第一触媒15、第二触媒25及び第三触媒35の温度を、400℃で90分、450℃で90分、500℃で90分、5500℃で90分、及び600℃で90の順に設定した。第三反応管31から排出された生成ガスG3の組成をTCDガスクロマトグラフ(GC-8A、株式会社島津製作所)によって分析した試験終了後、第二反応管21から取り出された固体炭素捕集用触媒の内部には析出した固体の炭素が大量に付着していた。図4は、COの転化率(Conversion)と温度との関係を示すグラフである。図中、Equilibriumは、固体炭素捕集を行わない場合の逆水性ガスシフト反応の化学平衡から計算される転化率を示す。図4は、固体炭素捕集を伴い、第一反応部及び第三反応部において逆水性ガスシフト反応が行われたときの転化率(Example)に加えて、固体炭素捕集を伴わず第一反応部のみにおいて逆水性ガスシフト反応が行われたときの転化率(Comparative Example)も示す。第一反応部及び第三反応部における逆水性ガスシフト反応と、それらの間における固体炭素捕集との組合せにより、COの転化率が大きく向上することが確認された。生成ガスにおけるCO選択率は実質的に100%であった。
【符号の説明】
【0040】
10…第一反応部、11…第一反応管、12…ヒーター、15…第一触媒、20…第二反応部、21…第二反応管、22…ヒーター、40…配管、100…反応装置、G0…原料ガス、G1,G2…中間ガス、G3…生成ガス。
図1
図2
図3
図4