(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120590
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】テラヘルツ帯周波数掃引発振装置、テラヘルツ分光装置、発振方法および分光計測方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/12 20230101AFI20240829BHJP
H10N 60/85 20230101ALI20240829BHJP
H03B 7/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H10N60/12 Z ZAA
H10N60/85 C
H03B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027478
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】南 英俊
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆成
(72)【発明者】
【氏名】尾内 敏彦
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AA06
4M113AA16
4M113AA25
4M113AC44
4M113CA35
(57)【要約】
【課題】テラヘルツ帯で周波数を掃引することが可能なテラヘルツ帯周波数掃引発振装置、テラヘルツ分光装置、発振方法および分光計測方法を提供する。
【解決手段】ACジョセフソン効果によりテラヘルツ波を発振する発振素子21と、発振素子21をパルス駆動する電源22と、発振素子21を制御する制御装置23と、を備え、電源22によるパルス形状と、発振素子21の発振周波数および温度との関係を参照して、電源22を制御する、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置20。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACジョセフソン効果によりテラヘルツ波を発振する発振素子と、
前記発振素子をパルス駆動する電源と、
前記発振素子を制御する制御装置と、を備え、
前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係を参照して、前記電源を制御する、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項2】
前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係は、あらかじめ取得したデータである、請求項1に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項3】
前記発振素子は、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ単結晶から構成される、請求項1に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項4】
前記パルス形状は、立ち上がりにおいて、テラヘルツ波の発振が可能な温度まで前記発振素子の温度を上昇させ、立ち下がりにおいて、前記発振素子の温度が変化しながら、前記発振周波数が時間的に変化することが可能である、請求項1に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項5】
前記発振素子をパルス駆動する間に前記発振周波数が変化する際の周波数は、前記発振素子の基本共振周波数またはそれより低い周波数と、前記基本共振周波数よりも高い周波数とを含む、請求項1に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項6】
前記電源に対して並列に接続され、互いに基本共振周波数が異なる、複数の前記発振素子と、
前記電源と前記発振素子との間で接続を切り替える切替スイッチと、を備え、
前記発振素子のそれぞれに対して、前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係を参照して、前記電源を制御する、請求項1に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置と、テラヘルツ波の検出器とを備えるテラヘルツ分光装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置を用いて、前記発振素子をパルス駆動することにより、所定の発振周波数を出力する、発振方法。
【請求項9】
請求項7に記載のテラヘルツ分光装置を用いて、前記発振素子をパルス駆動することにより、前記発振素子の発振周波数を時間的に変化させる工程と、
前記検出器により前記発振素子の出力を検出する工程と、を含む、分光計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置、テラヘルツ分光装置、発振方法および分光計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)オーダーの周波数を有する電磁波(以下、THz波という)の周波数は、0.1THzから10THzまでと言われ、分子間の振動や結晶格子の振動などの周波数とほぼ等しい。そのため、物質の同定をはじめとする、非破壊検査、セキュリティ、医療診断、気象観測、環境モニター、天文学、高速大容量通信等の幅広い分野におけるTHz波の活用が期待されている。
【0003】
テラヘルツ帯の単色光源として、共鳴トンネルダイオード(RTD)や量子カスケードレーザー(QCL)などが知られている。また、テラヘルツ帯の分光技術として、テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)技術や、水銀灯を光源とするフーリエ変換赤外分光(FT-IR)技術などが知られている。
【0004】
近年、THz波を発振する素子として、高温超伝導体を備えた発振素子が注目されている。例えば、特許文献1には、高温超伝導体が有する固有ジョセフソン接合を利用したTHz波発振素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したRTDやQCLでは周波数を掃引する技術は知られていない。また、通常のTHz-TDS技術における周波数分解能は数ギガヘルツである。また、THz-TDS技術において極短パルスを対象物に照射しても、光学特性解析には空間特性補正や高速フーリエ変換(FFT)などの特別な技術を要する。FT-IR技術では、スペクトル取得に時間を要する。
【0007】
特許文献1に記載のBi2212を用いたTHz波発振素子は、電圧により周波数を掃引できるが、素子の温度を適切に制御する必要があり、外部ヒーターを用いるなど装置の大型化や周波数掃引の変化速度には限界があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、テラヘルツ帯で周波数を掃引することが可能なテラヘルツ帯周波数掃引発振装置、テラヘルツ分光装置、発振方法および分光計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、ACジョセフソン効果によりテラヘルツ波を発振する発振素子と、前記発振素子をパルス駆動する電源と、前記発振素子を制御する制御装置と、を備え、前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係を参照して、前記電源を制御する、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置である。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係は、あらかじめ取得したデータである。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記発振素子は、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ単結晶から構成される。
【0011】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記パルス形状は、立ち上がりにおいて、テラヘルツ波の発振が可能な温度まで前記発振素子の温度を上昇させ、立ち下がりにおいて、前記発振素子の温度が変化しながら、前記発振周波数が時間的に変化することが可能である。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記発振素子をパルス駆動する間に前記発振周波数が変化する際の周波数は、前記発振素子の基本共振周波数またはそれより低い周波数と、前記基本共振周波数よりも高い周波数とを含む。
【0012】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記電源に対して並列に接続され、互いに基本共振周波数が異なる、複数の前記発振素子と、前記電源と前記発振素子との間で接続を切り替える切替スイッチと、を備え、前記発振素子のそれぞれに対して、前記電源によるパルス形状と、前記発振素子の発振周波数および温度との関係を参照して、前記電源を制御する。
【0013】
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置と、テラヘルツ波の検出器とを備えるテラヘルツ分光装置である。
【0014】
第8の態様は、第1~6のいずれか1の態様のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置を用いて、前記発振素子をパルス駆動することにより、所定の発振周波数を出力する、発振方法である。
【0015】
第9の態様は、第7の態様のテラヘルツ分光装置を用いて、前記発振素子をパルス駆動することにより、前記発振素子の発振周波数を時間的に変化させる工程と、前記検出器により前記発振素子の出力を検出する工程と、を含む、分光計測方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テラヘルツ帯で周波数を掃引することが可能なテラヘルツ帯周波数掃引発振装置、テラヘルツ分光装置、発振方法および分光計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置を例示する構成図である。
【
図2】発振素子の周波数スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図3】テラヘルツ帯周波数掃引発振装置の一例を示す構成図である。
【
図4】発振素子の実施例を示す図面代用写真である。
【
図5】オシロスコープ画面の一例を示す図面代用写真である。
【
図6】
図5の1.020THzにおける周波数測定結果を示す図面代用写真である。
【
図7】
図5の0.510THzにおける周波数測定結果を示す図面代用写真である。
【
図8】
図5の画面の部分的に拡大した図面代用写真である。
【
図9】発振素子をパルス駆動して得られる出力を説明するグラフである。
【
図10】
図9の点Aにおけるスペクトルを示すグラフである。
【
図11】
図9の点Bにおけるスペクトルを示すグラフである。
【
図12】
図9の点Cにおけるスペクトルを示すグラフである。
【
図13】第2実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0019】
図1に、第1実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置を例示する。
図1に示すテラヘルツ帯周波数掃引発振装置10は、発振素子11と、発振素子11をパルス駆動する電源12と、を備える。発振素子11は、交流(AC)ジョセフソン効果によりテラヘルツ波を発振する。
【0020】
発振素子11は、超伝導層と絶縁層との積層構造を複数有し、ジョセフソン接合を積層した構造を有する超伝導体を備えてもよい。超伝導体を構成する物質は、例えば、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(以下、Bi2212という)単結晶が挙げられる。Bi2212では、CuO2層が超伝導層、Bi2O2層が絶縁層として機能し、ジョセフソン効果によって、絶縁層を介して超伝導層間に超伝導電流が流れる。
【0021】
発振素子11がメサ構造の場合は、結晶基板11a上にメサ11bが形成される。結晶基板11aおよびメサ11bが一体の単結晶であってもよい。結晶基板11a上に形成されるメサ11bの形状は特に限定されず、正方形、長方形、三角形、五角形等の多角形、円形などが挙げられる。
【0022】
発振素子11はメサ構造でなくてもよいし、メサ構造の場合も寸法等を適宜設定することが可能である。メサ構造は、超伝導体結晶が台地形状または柱状形状を形成している部分である。超伝導体結晶は、結晶基板11aおよびメサ11bが別々の単結晶でもよい。結晶基板11a上に形成されるメサ11bの個数は特に限定されず、1個でも2個以上でもよい。
【0023】
発振素子11がメサ構造の場合は、電源12から配線13を介して、少なくともメサ11bに電圧が印加される。特に図示しないが、メサ11bと配線13との間に、導電層(図示せず)などが配置されてもよい。配線13を介してメサ11bを駆動する電源12が接続される。発振素子11の周囲は、超伝導体の動作に必要な低温に維持される。
【0024】
配線13や導電層等の通電用の部材(図示せず)は、金、銀、銅などの金属から形成することができる。排熱手段15(詳しくは後述)の下面に金属薄膜回路をプリントし、メサ11bの上面に押し付けてもよい。結晶基板11a上で配線13をメサ11bに接続するには、CaF2等の適宜の材料で結晶基板11a上に隆起部(図示せず)を形成し、メサ11b上から隆起部上まで形成した導電層(図示せず)に配線13を接続してもよい。
【0025】
メサ11bの側面は、ヘリウム等の気体または真空で囲まれていてもよい。メサ11bに接する媒質としては、誘電損失の低い物質が好ましく、具体的には、真空のほか、ヘリウム、水素、ネオン等の沸点が低いガス、窒素等の沸点以下に冷やされた液体、ベンゾシクロブテン(BCB)等の樹脂、ダイヤモンドグリスなどの放熱剤などが挙げられる。
【0026】
メサ11bの上面は、真空に接してもよく、メサ11bの側面と同じ媒質に接してもよく、高純度シリコン、サファイア、高純度アルミナセラミックス等の絶縁性固体などに接してもよい。詳しくは後述するが、メサ11bの上面が排熱手段15に接してもよい。
【0027】
結晶基板11aは、支持基板14の上に固定した状態で、ドライまたはウェットのエッチングで加工することにより、結晶基板11a上にメサ11bを形成することができる。メサ構造の側面は、垂直面でも傾斜面でもよく、加工条件を適宜選択することで調整が可能である。
【0028】
支持基板14の材質は特に限定されないが、サファイア、ダイヤモンド、アルミナ、銅などが挙げられる。
【0029】
メサ11bに電圧を印加すると、メサ11bからテラヘルツ波が出力される。テラヘルツ波の発振周波数は、メサ11bの幅Wに依存する共振周波数で決まる。メサ11bが70μm幅の場合は、基本共振周波数は0.500THz(500GHz)である。この場合、メサ構造の具体例として、長さ400μm、高さ2μmが挙げられる。
【0030】
共振は、メサ11bの幅のような共振器寸法wが、ジョセフソンプラズマ波の半波長(λ/2)の整数倍(m倍)に等しくなったとき(w=mλ/2)に起こる。例えば、真空中の光速度をc、媒質の屈折率をnとするとき、周波数fは、f=mc/2nwで表される。mが1の場合は、基本共振周波数(基本モード)が得られる。mが2以上の場合には高次モードの周波数が得られる。媒質がBi2212単結晶の場合は、nの値が約4.2となる。
【0031】
超伝導体におけるジョセフソン接合の積層面と垂直な方向に電圧が印加されると、交流ジョセフソン効果が生じる。交流ジョセフソン効果は、極めて薄い絶縁層を介した二つの超伝導体の間に一定の電圧を印加すると、交流電流が流れる現象のことを言う。交流電流の振動数は、ジョセフソン接合一層当りに印加した電圧に比例するため、電磁波として、非共振のテラヘルツ波が発生する。
【0032】
非共振のテラヘルツ波が、メサ構造などの素子構造の固有共振周波数と共振すると、積層されたジョセフソン接合間で振動電流が位相を揃えてコヒーレントに流れ、共振が生じる。その結果、共振のテラヘルツ波が外部に放射される。共振のテラヘルツ波は、非共振のテラヘルツ波よりも強い強度ピークを有する。
【0033】
図2は、発振素子11の周波数スペクトルの一例を示すグラフである。線幅はバイアス条件により変化し、一般的には、数十MHz~数百MHzと報告されている。
図2はFT-IRによる測定で、測定分解能は8GHz程度である。
【0034】
特許文献1の
図3および
図4に示されているように、発振素子から発振される周波数は、環境温度およびバイアス電圧に依存することが知られている。
【0035】
上述したように、テラヘルツ波発振の基本原理は交流ジョセフソン効果であるため、周波数と電圧は比例する。特許文献1の
図4では、印加電圧が約6V以上では、環境温度が25K以下、発振周波数は約1.0THz以上になっている。電圧が低い場合は発振周波数が低下する傾向が示されている。
【0036】
ジョセフソン接合に印加できる電圧は、温度で決まる下限がある。周波数を下げるには結晶の温度を上げる必要がある。発振周波数と発振強度との関係については、上述したように、メサ幅で決まる基本共振周波数で強く発振する。2次の共振周波数で再び強度が上がる。それら以外の周波数でも弱く発振する。
【0037】
図3に、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置20の一例を示す。発振素子21には、パルス駆動する電源22が接続されている。電源22はパルスの発生源である。発振素子21および電源22の少なくとも一方は、制御装置23により制御されている。テラヘルツ帯周波数掃引発振装置20の発振方法は、電源22で発振素子21をパルス駆動することにより、所定の発振周波数を出力する。
【0038】
発振素子21は、上述したメサ構造の発振素子11でもよい。具体的には、
図4の実施例に示す、メサ24個のアレイが用いられている。メサ構造の発振素子11は、アレイにしてもよいし、アレイでない単独の発振素子11でもよい。
【0039】
図示例では、発振素子21の電圧降下を測定するため、差動アンプ25を介して、オシロスコープ31のチャンネル3(CH3)に接続されている。発振素子21と電源22との間には、1Ωの抵抗器24が設置されている。発振素子21を流れる電流を検出するため、差動アンプ25を介して、オシロスコープ31のチャンネル2(CH2)に接続されている。
【0040】
図示例のテラヘルツ分光装置30は、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置20と、テラヘルツ波の検出器33とを備える。検出器33としては、InSbホットエレクトロンボロメーター(HEB)やショットキーバリアダイオードが挙げられる。検出器33は分光器34に接続されている。
【0041】
テラヘルツ分光装置30を用いた分光計測方法は、発振素子21をパルス駆動することにより、発振素子21の発振周波数を時間的に変化させる工程と、検出器33により発振素子21の出力を検出する工程と、を含む。
【0042】
検出器33の出力は、オシロスコープ31のチャンネル4(CH4)に接続されている。オシロスコープ31のチャンネル1(CH1)は、電源22に接続されて、発振素子21に1Ωを加えた箇所での電圧降下を測定することができる。オシロスコープ31としては、デジタルオシロスコープを用いた。
【0043】
図5にオシロスコープ画面の一例を示す。横軸は時間(10μs/div.)であり、縦軸は、線Bが、発振素子21での電圧降下(2V/div.)、線Pが発振素子21を流れる電流(400mA/div.)、線GがHEBの出力電圧(20mV/div.)、線Yが発振素子+1Ωでの電圧降下(2V/div.)である。
【0044】
図示例のパルス形状は、略台形状である。台形の左辺は、時間の経過とともに電圧が上昇する立ち上がり形状である。台形の右辺は、時間の経過とともに電圧が低下する立ち下がり形状である。台形の上辺に該当する電圧は、線Yでは略一定であるが、線Bでは、若干、時間の経過とともに低下する傾向を示している。
【0045】
驚くべきことに、パルス1つが発振素子21に印加される間に、発振周波数が時間的に変化する現象が確認された。
図6は、
図5の1.020THz(1020GHz)における周波数測定結果を示す。
図7は、
図5の0.510THz(510GHz)における周波数測定結果を示す。
【0046】
発振周波数の測定方法は特に限定されないが、図示例では、HEBを用いた検出器33とマイケルソン干渉計とからなる光学系により、分光器34が構成されている。マイケルソン干渉計は、ビームスプリッタ(図示せず)の周囲に、光源となる発振素子21、固定ミラー(図示せず)、移動ミラー(図示せず)、検出器33を配置して構成されている。
【0047】
発振素子21から放出された電磁波は、ビームスプリッタで2つに分けられ、一方の電磁波は、ビームスプリッタを通過して移動ミラーに向かってからビームスプリッタに戻る。他方の電磁波は、ビームスプリッタで反射されて固定ミラーに向かってからビームスプリッタに戻る。両者を合わせた電磁波が検出器33に向かう。
【0048】
移動ミラーを移動させることにより、干渉によって強度が振動する電磁波が検出器33で検出される。オシロスコープ31のカーソル計測機能によって、検出器33の出力がパソコン(PC)等のコンピュータ32に取り込まれる。取り込んだ干渉パターンをコンピュータ32でフーリエ変換することにより、周波数スペクトルを取得することができる。
【0049】
テラヘルツ帯周波数掃引発振装置20は、電源22によるパルス形状と、発振素子21の発振周波数および温度との関係を参照して、電源22を制御する。これにより、発振素子21から放出されたテラヘルツ波を、テラヘルツ帯で周波数掃引することができる。
【0050】
図8に、
図5に示すオシロスコープ31の画面を部分的に拡大した。これらの放射強度と周波数との関係は、直流バイアス(特許文献1の
図3~4参照)の場合に近い。線Gは、検出器33の出力のマイナス1倍の値であり、マイナス方向に振れている。
【0051】
パルスの電圧、時間幅、形状を適当なものにすることで、Bi2212結晶の温度変化を調整することができる。温度と電圧の時間変化を同期させることで、周波数を掃引(スイープ)することができる。周波数掃引に要する時間は、数十マイクロ秒であり、図示例では約24μs間で約1.100THzから約0.430THzまで掃引されている。
【0052】
繰り返し周波数を数kHzにできる。図示例では繰り返し周波数が1kHzである。その程度の高速で強度スペクトルを取得することができる。吸収スペクトル等を得るには、参照試料と対象試料で強度スペクトルを取得し比較することができる。平均化(アベレージング)によるS/N比の向上を図ることができる。
【0053】
電源22によるパルス形状と、発振素子21の発振周波数および温度との関係は、あらかじめ取得したデータであってもよい。パルス形状の制御に必要なデータ、プログラム等は、制御装置23に格納されてもよく、外部から通信等で入力されてもよい。通信は、無線でも有線でもよい。
【0054】
電源22から発振素子21に印加されるパルス形状は、立ち上がりにおいて、テラヘルツ波の発振が可能な温度まで発振素子21の温度を上昇させ、立ち下がりにおいて、発振素子21の温度が変化しながら、発振周波数が時間的に変化することが可能である。
【0055】
例えば、パルス駆動の間に、発振素子21の温度が連続的に上昇しながら発振周波数が時間的に変化する可能性や、発振素子21の温度が連続的に下降しながら発振周波数が時間的に変化する可能性が考えられる。発振素子21の温度が上昇した後で、下降に転ずる可能性も考えられる。
【0056】
パルス幅が短いことから、外部との間で熱移動により発振素子の温度変化が起こる程度が低い可能性もある。パルス電圧が小さいことから、外部への排熱に比べて、発振素子の内部で電気抵抗により生じる熱量が小さい可能性もある。
【0057】
パルス電圧が小さすぎると、パルスの立ち上がりにおいて、テラヘルツ波の発振が可能な温度まで発振素子の温度が上昇しない可能性がある。パルス電圧が大きすぎると、発振素子の温度上昇が急激になり、超伝導転移温度を超えてテラヘルツ波が発振されなくなる可能性がある。
【0058】
適度なパルスを選択すると、1回のパルス駆動に際し、発振素子が置かれている環境温度から超伝導転移温度までの比較的広い温度範囲で、発振素子に温度変化が起こる可能性もある。例えばBi2212を発振素子に用いた場合は、超伝導転移温度の90K程度以下である。
【0059】
温度上昇に寄与する因子としては、パルスのエネルギーの一部が電気抵抗によって熱に変換されていることが考えられる。温度下降に寄与する因子としては、発振素子21から外部への放熱、排熱が考えられる。後述するように、発振素子21に対して、排熱手段15(
図1参照)を設けてもよい。
【0060】
上述したように、交流(AC)ジョセフソン効果によって電磁波を発振する発振素子においては、発振周波数が印加電圧に比例する。このため、印加電圧を時間的に連続して低下させると、発振周波数を時間的に連続して低下させることができる。パルスの立ち下がりにおいては、印加電圧が徐々に低下するため、発振周波数を徐々に低下させることができる。
【0061】
発振素子をパルス駆動する間に発振周波数が変化する際の周波数は、前記発振素子の基本共振周波数またはそれより低い周波数と、前記基本共振周波数よりも高い周波数とを含むことも可能である。例えば、aおよびbを異なる正の整数として、基本共振周波数の約a倍の周波数から、基本共振周波数の約b倍の周波数まで、発振周波数が変化する可能性がある。なお、発振素子の基本共振周波数の0.01倍以上、0.05倍以上、0.1倍以上、0.2倍以上、0.3倍以上、あるいは0.5倍以上の範囲で、発振周波数を変化させてもよい。
【0062】
上述した実施例においては、基本共振周波数の約2倍の周波数から発振が開始され、基本共振周波数より低い周波数まで、発振周波数が変化している。驚くべきことに、基本共振周波数およびその整数倍の周波数の付近に限らず、広い周波数範囲にわたって安定的に電磁波を発振することができた。
【0063】
次に、第1実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置20について、より詳細に説明する。図示例のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置10は、支持基板14上に結晶基板11aが配置され、結晶基板11a上には、6個のメサ11bが形成されている。
【0064】
結晶基板11a上に形成されるメサ11bの個数は特に限定されず、1個でも2個以上でもよい。基本共振周波数が等しい複数の超伝導体結晶(メサ11b等)に同時にパルス電圧を印加することにより、発振強度を高めることができる。
【0065】
図1の上下方向に並ぶメサ11bは、配線13を介して接続される電源12に対して、並列接続となる。また、
図1の左右方向に並ぶメサ11bは、配線13を介して接続される電源12に対して、結晶基板11aを介した直列接続となる。各メサ11bには、結晶基板11aと配線13との間で高さ方向にバイアスが印加される。特に図示しないが、配線13間に奇数個(1個でもよい)のメサ11bを接続する場合は、配線13を結晶基板11aに接続することでメサ11b下面への接続としてもよい。メサ11b下面への接続には、結晶基板11a上に配線13が接続される導電層(図示せず)を配置してもよい。
【0066】
排熱手段15は、単結晶のメサ11bを少なくとも結晶基板11aまたは支持基板14と反対側の面から排熱する。
図1では、構成を理解しやすくするために、排熱手段15をメサ11bから離して図示しているが、メサ11bの結晶基板11aまたは支持基板14とは反対側の面に、排熱手段15を接合することが好ましい。
【0067】
排熱手段15は、熱伝導性の高い物質からなる板であってもよい。熱伝導性が高い物質としては、例えばサファイア、アルミナセラミックス等を挙げることができる。上述したように、結晶基板11aはメサ11bと同一の超伝導体となる。結晶基板11aを省略して、メサ11bと同様な形状の超伝導体を支持基板14上に配置することも可能である。
【0068】
支持基板14にはサファイア、ダイヤモンドまたは銅、あるいはそれらと同等以上に排熱効果の高い材料を用いることが好ましい。これらの物質は、発振素子11の駆動温度(例えばスターリングクーラーなど小型冷凍機の到達温度である40K付近の温度)において、高い熱伝導性を示すため、支持基板14からの効率的な排熱を実現することができる。
【0069】
次に、
図9のグラフを参照して、発振素子をパルス駆動して得られる出力について、説明する。これらのグラフの横軸はいずれも時間(Time)である。1段目のVbはパルス電源の出力電圧である。2段目の電圧(Voltage)は、発振素子に印加される電圧である。3段目の周波数(Frequency)は、黒い丸で示す測定点において測定した発振スペクトルの周波数である。4段目の強度(Intensity)は、発振の強さの相対値である。
【0070】
パルス電源の出力電圧における繰り返し周波数は1kHzである。発振素子に印加される電圧は、パルス電源の出力電圧から1Ωの電流モニター用抵抗での電圧降下を引いた電圧となる。パルス電圧を印加した後、結晶の温度が上昇し抵抗が減少するため、電流が増える。2段目の電圧が1段目のパルス電源の出力電圧と異なる形状になるのは、電流の増加によって1Ωの電流モニター用抵抗での電圧降下が増えるためである。
【0071】
図9の3段目の周波数では、上述したように、マイケルソン干渉計分光器で測定したスペクトルのピーク位置の周波数をプロットした。交流ジョセフソン効果によって、発振周波数は発振素子に印加される電圧に比例するため、一度校正しておけば電圧から周波数を知ることができる。校正する必要があるのはメサの高さが関わるためである。周波数の測定には時間を要するが、電圧は瞬時に分かる。
【0072】
図9の4段目の強度では、スペクトル線のピーク高さをプロットしている。例えば
図9の点A、点B、点Cにおけるスペクトルは、それぞれ
図10、
図11、
図12に示すとおりになる。
【0073】
上述した具体例では幅70μmのメサを使用し、その基本共振周波数が0.5THzであるため、0.5THz付近で強く発振し、2次の共振周波数1THz付近で強度が上がる。0.5THz付近の発振は±30GHz幅で十分な強度が得られる。このため、対象物質(例えば病原マーカー物質)の吸収スペクトル(指紋スペクトル)が分かっていて、より広い周波数での掃引が必要ない場合、メサの共振周波数を「指紋」に合わせておけば、高速、高感度に対象物質を検出することが可能である。
【0074】
特許文献1(特願2018-32280号)に記載される方法では、発振周波数を変化させる際、結晶の温度(環境温度)を変える必要がある。これに対して、第1実施形態によれば、従来は環境温度を変えなければ実現できなかった周波数範囲での掃引を電圧のみで実現することができる。さらに、高速掃引と高い繰り返し周波数によって、ミリ秒程度の時間分解能でテラヘルツ帯域での指紋スペクトルを追跡することができる。
【0075】
例えば、モニターしたい指紋スペクトルが決まっている場合、発振素子の基本共振周波数を指紋スペクトルに合わせることができる。パルス幅が短い方が繰り返し周波数を高く取ることができ、サブミリ秒で時間変化を追うことができる。パルス電源として任意波形の発生器を使用することができ、台形パルス、三角パルスに限らず、適宜のパルス波形を用いることができる。
【0076】
第1実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置およびテラヘルツ分光装置によれば、発振素子をパルス駆動することで、結晶の温度と結晶に印加される電圧の時間変化を同期させることができる。これにより、発振素子における結晶の温度を調整する必要なく、パルス電圧のみで放射テラヘルツ波の周波数を広い帯域で高速掃引する技術を提供することができる。
【0077】
また、共振周波数が異なる発振素子のアレイをパルス駆動する場合には、高強度なテラヘルツ波放射を広い周波数域で周波数掃引する技術を提供することができる。さらに、高速周波数掃引とパルス駆動による高速繰り返しによって、テラヘルツ帯の分光測定を高速に実施することができる。
【0078】
第1実施形態の技術では、発振素子をパルス駆動すると、発振素子の温度の上昇を抑制することができる。さらに、パルス形状、パルス幅などを適切に制御することで電圧を変えて周波数を変化させつつ、同時に発振素子の温度を制御することができる。高温超伝導体Bi2212を発振素子に用いると、発振線幅が数十~数百メガヘルツであり、通常のTHz-TDS装置に比べて、一桁高い周波数分解能で評価が可能である。
【0079】
また、単色光を周波数掃引する第1実施形態の技術では、単純な光学系と通常の信号処理を用いても処理が可能であり、スペクトルの取得が容易である。テラヘルツ帯におけるスペクトル強度が、水銀灯に比べて2~3桁高い。その上、数KHzの繰り返し周波数によって、高速に高感度な検出が可能である。必要に応じてアベレージングを行うこともできる。数十マイクロ秒で周波数掃引が可能であるため、短時間でスペクトルを取得することができる。
【0080】
パルス駆動においては、非定常状態で電圧が印加される。このため、発振素子の環境温度が従来技術より高い場合において、結晶温度の上昇に先駆けて電圧を印加できるため、高い周波数を発振させることが期待できる。
【0081】
図13に、第2実施形態のテラヘルツ帯周波数掃引発振装置40を例示する。テラヘルツ帯周波数掃引発振装置40は、基板41aに複数配置された発振素子41bを有する発振素子アレイ41を有する。電源42には、上述した電源12,22と同様の装置を用いることができる。第2実施形態において、第1実施形態と同様にすることが可能な事項については、重複する説明を省略する場合がある。
【0082】
基板41aは、上述した結晶基板11aまたは支持基板14でもよい。発振素子41bは、上述したメサ11bでもよく、メサ構造でなくてもよい。基板41aと各発振素子41bとが単結晶で一体化されてもよい。
【0083】
各発振素子41bは、配線43a,43bおよび切替スイッチ44を介して接続される電源42に対して、同時に一つの発振素子41bが選択されるように接続されている。切替スイッチ44は、一方の配線43aにおいて、発振素子41bと電源42との間に配置されている。特に図示しないが、一方の配線43aと他方の配線43bとの間で、基本共振周波数が等しい複数の発振素子41bを直列接続してもよい。
【0084】
発振素子41bの基本共振周波数fci(i=1,2,3,…)は相異なる。図示例では、添え字iが1~6である6個の発振素子41bを備える発振素子アレイ41が例示されている。特に図示しないが、切替スイッチ44を介して切り替え可能な発振素子41bの個数は、2以上の整数であれば任意である。これにより、基本共振周波数fci付近の強い発振のみを利用し掃引周波数範囲を拡げることができる。必要に応じて、基本共振周波数fciの2以上の整数倍(高次モード)の発振を利用してもよい。
【0085】
例えば各発振素子41bには、基本共振周波数fciを中心とした±40GHz程度の、発振強度が強い周波数範囲を分担させる。発振強度が強い周波数範囲としては、各発振素子41bの基本共振周波数fci付近が出力として選択され、分光計測等に利用される。具体的な周波数範囲は、±40GHz程度に限定されず、各発振素子41bの基本共振周波数fciの間における強度低下の許容範囲に応じ、適宜に設定が可能である。
【0086】
強度低下の許容範囲は、例えば基本共振周波数fciとその2倍の周波数との間における強度の最小値よりも強い強度が得られる基準を採用してもよい。あるいは、添え字i,jが異なる2つの発振素子41bの基本共振周波数fci,fcjの間における強度の最小値よりも強い強度が得られる基準を採用してもよい。
【0087】
基本共振周波数付近で、発振強度が強い周波数範囲は、例えば、基本共振周波数fciにおける強度の0.01倍以上の強度が得られる範囲としてもよく、さらには、0.1倍以上の強度が得られる範囲としてもよい。
【0088】
切替スイッチ44を用いて発振素子41bを切り替え、同時に、電源42から各発振素子41bに最適なパルス電圧を印加することができる。切替スイッチ44による発振素子41bの切り替えは自動化が可能である。自動化では、例えば上述した制御装置23(
図3参照)を用いてもよい。パルス電圧は、発振素子41bごとに異なってもよい。
【0089】
特許文献1に記載の直流バイアス動作では、環境温度(結晶の温度)を変更する必要があったが、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、パルス電圧によって非定常的(過渡的)に発振素子41bの結晶温度を変化させることができる。環境温度を変更する必要がないため、高速化が可能である。
【0090】
特に図示しないが、第2実施形態においても、分光装置を併設し、テラヘルツ帯周波数掃引発振装置40を立ち上げたとき、印加電圧と発振周波数の関係を校正することが好ましく、またこの校正を自動化することも可能である。これにより、以後、印加電圧を周波数の指標とすることができる。これは、発振周波数の測定には時間がかかるが、印加電圧は即座に分かるためである。
【0091】
各パルス電圧の時間幅は例えば10μs~100μsであり、繰り返し周波数は数kHz~数十kHzに設定することができる。仮に各発振素子41bによるスペクトルを100回積算測定するとしても、0.3THz~0.9THzを原理的には数秒で掃引することができる。
【0092】
発振素子アレイ41の各発振素子41bから発振されたスペクトルは、パソコン(PC)等のコンピュータを用いて処理または利用することができる。
【0093】
各発振素子41bの基本共振周波数が異なる発振素子アレイ41を用いる際、図示例は同一の電源42および切替スイッチ44を用いる場合を示している。特に図示しないが、切替スイッチを使用しないで、発振素子ごとに異なる電源を用いる場合は、各発振素子に最適な条件でパルス電圧を印加することができ、発振のタイミングの微調整や高速の掃引も可能である。
【0094】
第2実施形態では、互いに基本共振周波数fciが異なる、複数の発振素子41bを用い、切替スイッチ44を介して、電源42と発振素子41bとの間で接続が切り替えられる。
【0095】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、2以上の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明または実施形態の技術によれば、テラヘルツ帯における物質固有の吸収スペクトル(指紋スペクトル)を高速、高感度に検出することができる。このため、例えば、病原マーカー物質の有無の判定などの医療診断、各種製造現場での成分含有量または不純物の有無の判定など、様々な分野における応用が考えられる。
【符号の説明】
【0097】
10,20,40…テラヘルツ帯周波数掃引発振装置、11,21,41b…発振素子、11a…結晶基板、11b…メサ、12,22,42…電源、13,43a,43b…配線、14…支持基板、15…排熱手段、23…制御装置、24…抵抗器、25…差動アンプ、30…テラヘルツ分光装置、31…オシロスコープ、32…コンピュータ、33…検出器、34…分光器、41…発振素子アレイ、41a…基板、44…切替スイッチ。