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特開2024-120602繊維用添加剤、及びこれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120602
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】繊維用添加剤、及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20240829BHJP
   D06M 15/233 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240829BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20240829BHJP
   D06P 1/44 20060101ALI20240829BHJP
   D06P 3/24 20060101ALI20240829BHJP
   D06M 101/38 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/233
C08L33/02
C08L75/04
C08F220/06
D06P1/44 C
D06P3/24 A
D06M101:38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027501
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁雄
【テーマコード(参考)】
4H157
4J002
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157BA03
4H157CA03
4H157CB08
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA16
4H157DA34
4H157GA07
4J002BC102
4J002BG012
4J002CK021
4J002GK02
4J002HA05
4J100AB07Q
4J100AJ02P
4J100AK03P
4J100AK07P
4J100AK13P
4J100BA56Q
4J100BC49Q
4J100DA39
4J100JA11
4L033AB04
4L033AC15
4L033CA13
4L033CA18
(57)【要約】
【課題】
繊維にカチオン染料可染性を付与することができ、かつ、N,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性に優れた繊維用添加剤を提供すること、及び繊維にカチオン染料可染性を付与することができ、かつ、N,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性に優れた繊維用添加剤と、ウレタン樹脂とを含有する組成物を提供すること。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位とビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位とを有する共重合体を含む繊維用添加剤であって、前記共重合体における前記(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及び前記ビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計が、15質量%以下であり、前記共重合体が、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して前記N,N-ジメチルアセトアミド及び前記共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解する、繊維用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位とビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位とを有する共重合体を含む繊維用添加剤であって、
前記共重合体における前記(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及び前記ビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計が、15質量%以下であり、
前記共重合体が、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して前記N,N-ジメチルアセトアミド及び前記共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解する、繊維用添加剤。
【請求項2】
前記共重合体における前記ビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位の含有量が、0.1質量%~30質量%である、請求項1に記載の繊維用添加剤。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸の塩又は前記ビニル芳香族スルホン酸の塩がリチウム塩である、請求項1又は2に記載の繊維用添加剤。
【請求項4】
ウレタン繊維にカチオン染料可染性を付与するための、請求項1又は2に記載の繊維用添加剤。
【請求項5】
ウレタン繊維に消臭性を付与するための、請求項1又は2に記載の繊維用添加剤。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位及びビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位を有する共重合体とウレタン樹脂とを含有する組成物であって、
前記共重合体における前記(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及び前記ビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計が、15質量%以下であり、
前記共重合体が、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して前記N,N-ジメチルアセトアミド及び前記共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用添加剤、及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン染料は発色性や染色堅牢度に優れており、蛍光色などの鮮やかな色に繊維を染着することができる。このカチオン染料は、アクリル繊維等に対する染色性に優れる一方、再生セルロース繊維やウレタン繊維、ポリエステル繊維等の繊維を染色することは困難である。このため、繊維のカチオン染色性を向上させる方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、再生セルロース繊維にカチオン染料可染性を付与するために、再生セルロース繊維の紡糸の際に、紡糸液に酸性基を有する化合物を添加する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-17660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の方法は、紡糸液として酸性基を有する化合物を含む水溶液を使用したものである。本発明者が検討したところ、特許文献1に記載の方法を、再生セルロース繊維以外の紡糸液として有機溶媒溶液を用いる方法に適用することが困難であることが明らかとなった。例えば、ウレタン繊維の紡糸溶媒として広く用いられているN,N-ジメチルアセトアミドには、特許文献1に記載の酸性基を有する化合物は十分に溶解しないため、特許文献1に記載の方法を適用することは困難であった。
【0006】
上記事情に鑑み本発明は、繊維にカチオン染料可染性を付与することができ、かつ、N,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性に優れた繊維用添加剤、並びにかかる繊維用添加剤及びウレタン樹脂を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の[1]~[5]に記載の繊維用添加剤、[6]に記載の組成物を提供する。
[1] (メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位とビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位とを有する共重合体を含む繊維用添加剤であって、
上記共重合体における上記(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及び上記ビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計が、15質量%以下であり、
上記共重合体が、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して上記N,N-ジメチルアセトアミド及び上記共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解する、繊維用添加剤。
[2] 上記共重合体における上記ビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位の含有量が、0.1質量%~30質量%である、[1]に記載の繊維用添加剤。
[3] 上記(メタ)アクリル酸の塩又は上記ビニル芳香族スルホン酸の塩がリチウム塩である、[1]又は[2]に記載の繊維用添加剤。
[4] ウレタン繊維にカチオン染料可染性を付与するための、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維用添加剤。
[5] ウレタン繊維に消臭性を付与するための、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維用添加剤。
[6] (メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位及びビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位を有する共重合体とウレタン樹脂とを含有する組成物であって、
上記共重合体における上記(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及び上記ビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計が、15質量%以下であり、
上記共重合体が、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して上記N,N-ジメチルアセトアミド及び上記共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解する、組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維にカチオン染料可染性や消臭性等の機能を付与することができ、かつ、N,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性に優れた繊維用添加剤、並びにかかる繊維用添加剤及びウレタン樹脂を含有する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とはメタクリルとアクリルとの両方を包含する用語として用いる。また、数値範囲をX~Yと示すときは、X以上Y以下を意味する。例えば、「5~100nm」は5nm以上100nm以下を意味する。本明細書において例示する材料又は成分は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
[繊維用添加剤]
本実施形態に係る繊維用添加剤は、後述する共重合体を含む。
【0011】
本実施形態に係る繊維用添加剤は、上記共重合体のみからなるものであってもよく、溶媒、その他の成分を含むものであってもよい。
【0012】
溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。これらの中で、紡糸液の溶媒として用いることができる観点から、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、トルエン、キシレン、又はテトラヒドロフランであることが好ましく、N,N-ジメチルアセトアミドであることがより好ましい。
【0013】
上記繊維用添加剤が溶媒を含む場合、繊維用添加剤における溶媒の含有量は、溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、固形分全量100質量部に対して、例えば、50~5000質量部であってもよく、80~1000質量部であってもよい。
【0014】
その他の成分としては、一般的に繊維に添加され得る成分、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)等の重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤等が挙げられる。上記繊維用添加剤がその他の成分を含む場合、その含有量は、固形分全量を基準として、例えば、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0015】
本実施形態に係る繊維用添加剤が適用される繊維は特に制限されないが、カチオン染料可染性に劣る繊維、例えば再生セルロース繊維、ウレタン繊維又はポリエステル繊維が好ましく、ウレタン繊維がより好ましい。紡糸液の溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用いて製造されるウレタン繊維が更に好ましい。
【0016】
(共重合体)
本実施形態に係る共重合体は、(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位とビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位とを有する。
【0017】
本実施形態に係る共重合体における(メタ)アクリル酸の塩由来の構成単位及びビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位の含有量の合計は15質量%以下であり、12質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることが更に好ましい。これらの構成単位の含有量の下限は特に限定されず、0質量%、すなわち塩由来の構成単位を含まない共重合体であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る共重合体は、40℃において、N,N-ジメチルアセトアミドに対して、N,N-ジメチルアセトアミド及び共重合体の質量の合計を基準として1.5質量%以上溶解し、3質量%以上溶解することが好ましく、5質量%以上溶解することがより好ましい。
【0019】
本実施形態に係る共重合体のN,N-ジメチルアセトアミドに対する溶解性は、例えば、共重合体に、N,N-ジメチルアセトアミドを規定の比率となるように添加し、40℃の恒温槽で72時間静置後に目視により溶解したか観察することで評価することができる。
【0020】
本実施形態に係る共重合体を含む本実施形態の繊維用添加剤によれば、繊維に共重合体由来の機能、特にカチオン染料可染性及び消臭性を繊維に付与することができる。
【0021】
本実施形態に係る共重合体において、(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位及びビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位は、その両方の構成単位が塩由来の構成単位を含んでいてもよく、いずれか一方の構成単位のみが塩由来の構成単位を含んでいてもよく、両方の構成単位が塩由来の構成単位を含まなくともよい。本実施形態に係る共重合体は、使用する設備に対する腐食性や作業者に対する安全性の観点から、(メタ)アクリル酸由来の構成単位及びビニル芳香族スルホン酸の塩由来の構成単位を含むことが好ましい。
【0022】
上記塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;鉄、アルミニウム等の遷移金属塩;アンモニウム塩;有機アミン塩等が挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、メチルアミン、n-ブチルアミン等のアルキルアミンの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のアルカノールアミンの塩;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミンの塩等が挙げられる。これらの中で、共重合体のN,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性を向上させる観点から、アルカリ金属塩又は有機アミン塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル酸又はその塩は、(メタ)アクリル酸又はそのリチウム塩であることが好ましく、(メタ)アクリル酸であることがより好ましく、アクリル酸であることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態に係る共重合体における、(メタ)アクリル酸又はその塩由来の構成単位の含有量は、70~99.9質量%が好ましく、75~99質量%がより好ましく、80~97質量%が更に好ましい。
【0025】
ビニル芳香族スルホン酸としては、例えば、スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、ビニルキシレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0026】
ビニル芳香族スルホン酸又はその塩としては、スチレンスルホン酸又はそのリチウム塩であることが好ましく、スチレンスルホン酸のリチウム塩であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態に係る共重合体における、ビニル芳香族スルホン酸又はその塩由来の構成単位の含有量は、0.1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、3~20質量%が更に好ましい。
【0028】
本実施形態に係る共重合体は、上述の構成単位以外のその他の単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。その具体例としては、例えば、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、3-メチルクロトン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、α-ヒドロキシメチルアクリル酸、4-メチル-3-ヘキセン酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩(一塩であっても二塩であってもよい)及びこれらの無水物;2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸等の(ポリ)アルキレングリコール含有不飽和スルホン酸、3-(メタ)アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩又はこれらの4級化物等の不飽和アミン;(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等由来の構成単位が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る共重合体における、その他の単量体由来の構成単位の含有量は、例えば、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0030】
本実施形態に係る共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5000~500000であることが好ましく、10000~100000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000以上であると、本実施形態に係る繊維用添加剤を適用した繊維を洗濯する時に繊維用添加剤が繊維内部に留まりやすくなり、洗濯耐久性が向上する傾向にある。また、重量平均分子量が500000以下であると、共重合体を溶液にした時の粘性が低く、ハンドリングに優れる傾向がある。
【0031】
(共重合体の製造方法)
本実施形態に係る共重合体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、水溶媒中で、(メタ)アクリル酸又はその塩、ビニル芳香族スルホン酸又はその塩を重合させる重合工程を備え、これらの単量体、重合開始剤、連鎖移動剤をそれぞれ連続的に系中に投入することを特徴とする方法で製造することができる。
【0032】
水溶媒は、水単独であってもよく非水溶媒(特に水溶性有機溶媒)を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。水溶媒中の水溶性有機溶媒の割合は、例えば、5質量%以下とすることができる。
【0033】
重合開始剤としては、例えば、有機物系重合開始剤、無機物系重合開始剤が挙げられる。有機物系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。無機物系重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が挙げられる。
【0034】
重合開始剤としては、共重合体のN,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性を向上させる観点から、有機物系重合開始剤が好ましく、アゾ系化合物がより好ましく、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が更に好ましい。
【0035】
重合開始剤の添加量は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、全単量体に対して、例えば0.01~15質量%であってもよく、0.1~10質量%であってもよい。
【0036】
連鎖移動剤としては、例えば、有機物系連鎖移動剤、無機物系連鎖移動剤が挙げられる。有機物系連鎖移動剤としては、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール等のチオール系連鎖移動;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の第2級又は第3級アルコール等が挙げられる。無機物系連鎖移動剤としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸等の次亜リン酸若しくはこれらの塩又はこれらの水和物;亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸又はこれらの塩;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸又はこれらの塩;亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸又はこれらの塩;亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸又はこれらの塩;ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸又はこれらの塩等が挙げられる。
【0037】
連鎖移動剤としては、共重合体のN,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性を向上させる観点から、有機物系連鎖移動剤、次亜リン酸、亜リン酸であることが好ましく、有機物系連鎖移動剤であることがより好ましく、チオール系連鎖移動であることが更に好ましく、メルカプトプロピオン酸であることが特に好ましい。
【0038】
連鎖移動剤の添加量は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、全単量体に対して、例えば0.01~10質量%であってもよく、0.1~5質量%であってもよい。
【0039】
重合工程においては、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤をそれぞれ連続的に系中に滴下することが好ましい。滴下速度は、一定であってもよく、段階的に変えてもよい。単量体、重合開始剤、連鎖移動剤をそれぞれ連続的に系中に投入する方法としては、例えば、系中の水溶媒を沸点まで上昇させた後、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤をそれぞれ別の経路から連続的に滴下することが好ましい。なお、単量体は全ての単量体を混合したものを系中に滴下するのがよい。
【0040】
単量体を水溶媒中に分散させるときは、パドル翼等で撹拌して分散させてもよく、高速せん断タービン型分散機、高圧ジェットホモジナイザー、超音波式乳化分散機、媒体撹拌分散機、強制間隙通過型分散機等の乳化分散装置を用いて分散させてもよい。
【0041】
重合反応後に、共重合体を成熟する成熟工程を含むことが好ましい。成熟工程により、重合反応が完結し、残存する単量体を低減することが出来る。成熟工程では、特に制限されないが、系を沸点に保持することが好ましい。
【0042】
重合工程又は成熟工程後に共重合体を含む水溶液を乾燥させることで、共重合体を回収してもよい。乾燥により回収された共重合体を乳鉢等ですり潰して重合体の粉体を取得してもよい。
【0043】
得られた共重合体に、酸性水溶液を作用させてもよい。例えば、共重合体中に塩由来の構成単位を含む場合には、酸性水溶液、例えば塩酸を作用させることで、塩由来の構成単位を酸型に変換することができる。
【0044】
共重合体の製造方法は、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
【0045】
N,N-ジメチルアセトアミドに対する所定の溶解性を有する本実施形態に係る共重合体は、製造方法を適宜調整することにより得られる。
【0046】
[共重合体とウレタン樹脂とを含有する組成物]
本実施形態に係る共重合体とウレタン樹脂とを含有する組成物(以下、「本実施形態に係る組成物」とも称する)は、上記の共重合体及びウレタン樹脂を含む。
【0047】
本実施形態に係る組成物は、例えば、カチオン染料可染性及び消臭性等に優れたウレタン繊維の製造に用いることができる。
【0048】
本実施形態に係る組成物における、共重合体の含有量は、固形分全量を基準として、1~30質量%であると好ましく、1.5~25質量%であるとより好ましく、2~20質量%であると更に好ましい。
【0049】
本実施形態に係る組成物における、ウレタン樹脂の含有量は、固形分全量を基準として、70~99質量%であると好ましく、75~98.5質量%であるとより好ましく、80~98質量%であると更に好ましい。
【0050】
本実施形態に係る組成物は使用用途に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒としては、上述した繊維用添加剤における溶媒を用いることができる。本実施形態に係る組成物における溶媒の含有量は、溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、固形分全量100質量部に対して、0.001~5質量部であってもよく、0.01~1質量部であってもよい。
【0051】
(ウレタン樹脂)
本実施形態に係るウレタン樹脂は、ポリオール類由来の構成単位及びポリイソシアネート類由来の構成単位を有していれば特に制限されない。
【0052】
ポリオール類としては、2以上の水酸基を有する化合物であればよく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)アジペートジオール、1,6-ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールは、分子中にカーボネート結合を有し、且つ水酸基を2個以上有するポリオールであり、例えば、ポリオール類と有機カーボネート化合物又はホスゲンとを反応させることにより得ることができる。ポリオール類としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,10-デカンジオール及びイソソルビドが挙げられる。ポリカーボネートポリオールは、上記のポリオール類に由来する構成単位を一種又は二種以上を有することができる。有機カーボネート化合物又はホスゲンとしては、例えば、ジフェニルカーボネートが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、プロピレングリコールプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加体、グリセリンプロピレンオキサイド付加体、エチレンジアミンプロピレンオキサイド付加体、エチレンジアミンプロピレンオキサイド付加体、ソルビトール系プロピレンオキサイド付加体、シュークローズ系プロピレンオキサイド付加体、プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル等が挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネート類としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートであってよい。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0054】
(ウレタン樹脂の製造方法)
ウレタン樹脂は、ポリオール類及びポリイソシアネート類を重合する工程を含んでいれば特に制限されず、溶融重合法や溶液重合法等の公知の方法で製造することができる。
【0055】
重合工程においては、鎖伸長剤、末端封鎖剤、触媒等を適宜用いてもよい。鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,2プロパンジアミン等の低分子ジアミン類;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール等の低分子ジオール類が挙げられる。末端封鎖剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。触媒としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン等の有機アミン化合物類;オクタン酸スズ等の有機金属化合物類が挙げられる。
【0056】
[繊維へ機能を付与する方法]
繊維用添加剤を使用して繊維へ機能を付与する方法は特に制限されないが、例えば、乾式紡糸又は湿式紡糸における繊維原料を含む紡糸液に繊維用添加剤を添加する方法や、溶融紡糸における熱溶融前の繊維原料のチップに繊維用添加剤を添加する方法、繊維の後加工により繊維の表面及び/又は内部に繊維用添加剤を拡散及び吸着させる方法等が挙げられる。
【0057】
繊維用添加剤は、ウレタン繊維に機能を付与することに好適に用いることができる。繊維用添加剤を使用してウレタン繊維へ機能を付与する方法は特に制限されないが、例えば、乾式紡糸におけるウレタン樹脂を含む紡糸液に繊維用添加剤を添加し、混練することで繊維用添加剤をウレタン樹脂中に分散させた後、紡糸液を紡糸ノズルから押し出し、熱風等により溶媒を蒸発させ繊維状にすることができる。上記紡糸液における、上記共重合体の含有量は、例えば20質量%以下とすることができる。また、上記紡糸液の溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、トルエン、キシレン、又はテトラヒドロフランを使用することができる。
【0058】
本実施形態に係る組成物も、機能が付与されたウレタン繊維の製造に好適に用いることができる。上記組成物を使用して機能が付与されたウレタン繊維を製造する方法は特に制限されないが、例えば、乾式紡糸において紡糸液に上記組成物を添加し、混練り後、紡糸液を紡糸ノズルから押し出し、熱風等により溶媒を蒸発させ繊維状にすることができる。上記紡糸液における、上記共重合体及びウレタン樹脂の合計の含有量は、例えば20~65質量%とすることができる。また、上記紡糸液の溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、トルエン、キシレン、又はテトラヒドロフランを使用することができる。
【0059】
上記乾式紡糸の方法は、紡糸液が繊維用添加剤、又は本実施形態に係る組成物を含むこと以外は、特に制限されず、ウレタン繊維の所望の特性等に応じて適宜設定することができる。
【実施例0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0061】
<ゲル浸透クロマトグラフィー測定>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて求めた。測定に用いた装置及び測定条件は、以下のとおりである。
装置:Waters Alliance(2695)
検出器:RI
カラム:Shodex製 OHpak SB-806M HQ(3本直列)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min.
試料液注入量:50μL(試料濃度は0.5重量%)
検量線:American Polymer Standards Corporation社製 ポリアクリル酸標準(Mp=900、1250、2925、4100、16000、62900、392600、1310000、2250000)を使用し、Mpと溶出時間を基礎に3次式で作成。
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(67.46g/154.86g)の混合物を純水にて8648gに希釈した水溶液にアセトニトリルを752g添加した溶液。
【0062】
<製造例1>
純度87.2%のスチレンスルホン酸リチウム(以下、「LiSS」とも称する):19.5g(すなわち、純分:17.0g)、80重量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する):282.0g、及び脱イオン水:19.5gを混合し、モノマーフィード液(1)を調製した。
【0063】
還流冷却器、及び攪拌機を備えた容量1LのSUS製反応容器に、脱イオン水:134.3gを仕込み、攪拌下で沸点まで昇温した。次いで攪拌下、沸点の重合反応系中に、上記モノマーフィード液(1)を180分間連続的に一定の供給速度で、10質量%2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液(以下、「10%V-50」とも称する):70.4gを195分間連続的に一定の供給速度で、15質量%メルカプトプロピオン酸水溶液(以下、「15%MPA」とも称する):3.5gを18分間と更に続いて20.9gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。モノマーフィード液(1)の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点に保持(熟成)し、重合を完結させることで重量平均分子量(Mw)が16000の共重合体水溶液(A―1)を得た。
【0064】
共重合体水溶液(A-1):1gを1gの脱イオン水で希釈して、140℃60分間乾燥させることで得られた固体を乳鉢ですり潰すことで共重合体の粉末(A-2)を得た。
【0065】
<製造例2>
純度87.2%のLiSS:21.4g(すなわち、純分:18.7g)、80%AA:310.0g、及び脱イオン水:23.8gを混合し、モノマーフィード液(2)を調製した。
【0066】
還流冷却器、及び攪拌機を備えた容量1LのSUS製反応容器に、脱イオン水:148.3gを仕込み、攪拌下で沸点まで昇温した。次いで攪拌下、沸点の重合反応系中に、上記モノマーフィード液(2)を180分間連続的に一定の供給速度で、10%V-50:77.4gを195分間連続的に一定の供給速度で、10%MPA:2.9gを18分間と更に続いて16.2gを152分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。モノマーフィード液(2)の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点に保持(熟成)し、重合を完結させることで重量平均分子量(Mw)が26000の共重合体水溶液(B―1)を得た。
【0067】
共重合体水溶液(B-1):1gを1gの脱イオン水で希釈して、140℃60分間乾燥させることで得られた固体を乳鉢ですり潰すことで共重合体の粉末(B-2)を得た。
【0068】
<製造例3>
純度87.9%のスチレンスルホン酸ナトリウム(以下、「SSNa」とも称する):112.3g(すなわち、純分:98.7g)、80%AA:493.6g、及び脱イオン水:103.7gを混合し、モノマーフィード液(3)を調製した。
【0069】
還流冷却器、及び攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水:188.7gを仕込み、攪拌下で沸点まで昇温した。次いで攪拌下、沸点の重合反応系中に、上記モノマーフィード液(3)を180分間連続的に一定の供給速度で、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する):76.2gを195分間連続的に一定の供給速度で、25質量%次亜リン酸ナトリウム・1水和物水溶液(以下、「25%SHP」とも称する):3.6gを18分間と更に続いて21.8gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。モノマーフィード液(3)の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点に保持(熟成)し、重合を完結させることで重量平均分子量(Mw)が47000の共重合体水溶液(C―1)を得た。
【0070】
共重合体水溶液(C-1):1gを1gの脱イオン水で希釈して、140℃60分間乾燥させることで得られた固体を乳鉢ですり潰すことで共重合体の粉末(C-2)を得た。
【0071】
<製造例4>
製造例3で得られた共重合体水溶液(C-1):10gに1mol/L塩酸水溶液:6.1g、及び脱イオン水:3.9gを添加し、よく混合することで共重合体水溶液(D-1)を得た。共重合体水溶液(D-1):2gを140℃60分間乾燥させることで得られた固体を乳鉢ですり潰すことで共重合体粉末(C-2)に含まれるナトリウム塩を酸に置換した共重合体の粉末(D-2)を得た。
【0072】
<製造例5>
純度87.2%のLiSS:19.5g(すなわち、純分:17.0g)、80%AA:282.4g、及び脱イオン水:23.6gを混合し、モノマーフィード液(5)を調製した。
【0073】
還流冷却器、及び攪拌機を備えた容量1LのSUS製反応容器に、脱イオン水:132.2gを仕込み、攪拌下で沸点まで昇温した。次いで攪拌下、沸点の重合反応系中に、上記モノマーフィード液(5)を180分間連続的に一定の供給速度で、10%V-50:70.5gを195分間連続的に一定の供給速度で、15%SHP:3.3gを18分間と更に続いて18.5gを152分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。モノマーフィード液(5)の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点に保持(熟成)し、重合を完結させることで重量平均分子量(Mw)が21000の共重合体水溶液(E―1)を得た。
【0074】
共重合体水溶液(E-1):1gを1gの脱イオン水で希釈して、140℃60分間乾燥させることで得られた固体を乳鉢ですり潰すことで共重合体の粉末(E-2)を得た。
【0075】
<製造例6>
日成化成株式会社製カチオン染料(Nichilon Black KSL(300%)):0.27gと緩衝溶液(酢酸:0.050質量%、酢酸ナトリウム・3水和物:0.041質量%からなる水溶液):450gを混合することで、染料溶液(F)を得た。
【0076】
<実施例1~3、比較例1~2:N,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性>
製造例1~5で得られた共重合体の粉末(A-2~E-2):0.075gを容量20mLの容器に投入した後、N,N-ジメチルアセトアミドを添加し、内容物の合計が5.0gとなるように調整(すなわち、共重合体の含有量が1.5質量%となるよう調整)した。その後、40℃の恒温槽の中に72時間静置して得られたサンプルを目視観察することで溶解性を確認した。結果を表1に示す。
【0077】
また、共重合体の粉末(A-2、B-2、D-2)については、粉末の量を0.25gに調整(すなわち、共重合体の含有量が5質量%となるよう調整)する以外は上記と同様の方法で溶解性を確認した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1から明らかなように、A-2、B-2、及びD-2のN,N-ジメチルアセトアミドへの溶解性は特に優れていた。N,N-ジメチルアセトアミドに溶解する共重合体群は、ウレタン繊維紡糸時の紡糸液への添加剤として使用することができる。
【0080】
<実施例4 カチオン染料に対する染色性確認>
製造例1で得られた共重合体水溶液(A―1):3.0gに25質量%アンモニア水溶液:0.59g(すなわち、共重合体水溶液(A-1)に含まれるカルボキシル基の50mol%が中和される量)、及び脱イオン水:12.0gを添加し、均一になるよう混合した。得られた水溶液に固形分が10質量%となるようにあらかじめ希釈したエポクロスWS-700(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有重合体、以下、「10%WS-700」とも称する):1.9gを添加し、よく攪拌することで共重合体水溶液(A-3)を得た。
【0081】
10cm四方に切断した色染社製ポリウレタン/ポリエステル交編(15/85)の生地を共重合体水溶液(A-3)に浸漬、生地に対して共重合体が10質量%残存するように脱水処理を行った後、120℃30分間加熱処理を行うことで試験布(A-4)を得た。得られた試験布(A-4)を製造例6で作成した染料溶液(F)に常温で30分間浸漬後、十分に水洗浄することで余分な染料を洗い落としたところ、試験布(A-4)がきれいに染色されていることを確認した。
【0082】
<実施例5 カチオン染料に対する染色性確認>
製造例4で得られた共重合体水溶液(D―1):6.0gに25質量%アンモニア水溶液:0.61g、及び脱イオン水:10.6gを添加し、均一になるよう混合した。得られた水溶液に固形分が10%WS-700:1.8gを添加し、よく攪拌することで共重合体水溶液(D-3)を得た。
【0083】
10cm四方に切断した色染社製ポリウレタン/ポリエステル交編(15/85)の生地を共重合体水溶液(D-3)に浸漬、生地に対して共重合体が10質量%残存するように脱水処理を行った後、120℃30分間加熱処理を行うことで試験布(D-4)を得た。得られた試験布(D-4)を製造例6で作成した染料溶液(F)に常温で30分間浸漬後、十分に水洗浄することで余分な染料を洗い落としたところ、試験布(D-4)がきれいに染色されていることを確認した。
【0084】
<比較例3 カチオン染料に対する染色性確認>
共重合体水溶液(A-3)の代わりに脱イオン水に色染社製ポリウレタン/ポリエステル交編(15/85)の生地を浸漬させたこと以外は実施例4と同様の処理をすることで得られた試験布(X)を製造例6で作成した染料溶液(F)に常温で30分間浸漬後、十分に水洗浄することで余分な染料を洗い落としたところ、ほとんど染色されていないことを確認した。
【0085】
<実施例6 消臭性能確認>
コック付きサンプリングバッグ(GLサイエンス社製スマートバッグPA、容量3L)に実施例4で得られた試験布(A-4)を入れ、ヒートシールして密閉した。次に、サンプリングバッグ内部を減圧/窒素注入を繰り返し、サンプルバッグ内を2Lの窒素を量り入れた。ここに、アンモニアが100ppmとなるように注入し、2時間後に検知管を用いてサンプリングバッグ内のアンモニア濃度を測定したところ、アンモニアの減少率は70%を超えていた。
【0086】
<実施例7 消臭性能確認>
実施例5で得られた試験布(D-4)を用いた以外は実施例6と同様の操作によりアンモニア減少率を確認したところ、70%を超えていた。
【0087】
<比較例4 消臭性能確認>
比較例3で得られた試験布(X)を用いた以外は実施例6と同様の操作によりアンモニア減少率を確認したところ、70%未満であった。