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特開2024-120623取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120623
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20240829BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240829BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240829BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B15/00 V
G03B17/56 A
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027539
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
(72)【発明者】
【氏名】深沢 亮
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H105
【Fターム(参考)】
2H044AJ06
2H100BB01
2H100BB06
2H100CC01
2H105AA02
(57)【要約】
【課題】車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって取り付け、ひいては、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付ける。
【解決手段】取付け治具付き車載用カメラ1は、車載用カメラ100と、車載用カメラ100を車体400に取り付けるための取付け治具10と、を備える。取付け治具10には、ばね付きねじ30が貫通可能な第1ねじ穴16が設けられ、車載用カメラ100には、ばね付きねじ30が螺合可能な第2ねじ穴164が設けられる。ばね付きねじ30が、第1ねじ穴16を貫通するとともに第2ねじ穴164に螺合し、熱硬化性樹脂40が、第1ねじ穴16とばね付きねじ30との間の隙間Gにおいて、第1ねじ穴16とばね付きねじ30の双方に接触する様に存在する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用カメラと、
前記車載用カメラを車体に取り付けるための取付け治具と、
を備え、
前記取付け治具には、ねじが貫通可能な第1ねじ穴が設けられ、
前記車載用カメラには、前記ねじが螺合可能な第2ねじ穴が設けられ、
前記ねじが、前記第1ねじ穴を貫通するとともに前記第2ねじ穴に螺合し、
熱硬化性樹脂が、前記第1ねじ穴と前記ねじとの間の領域において、前記第1ねじ穴と前記ねじの双方に接触する様に存在する、
取付け治具付き車載用カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記ねじが、前記第1ねじ穴の周囲における座面に接するばねを有する、ばね付きねじである、
取付け治具付き車載用カメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記熱硬化性樹脂が、前記領域の全体に渡って存在する、
取付け治具付き車載用カメラ。
【請求項4】
請求項1に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記熱硬化性樹脂が、前記第2ねじ穴の周辺領域に接触する、
取付け治具付き車載用カメラ。
【請求項5】
請求項1に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記取付け治具が、前記車載用カメラの光軸を調整する検査用治具に位置決めするための位置決め部を備える、
取付け治具付き車載用カメラ。
【請求項6】
車載用カメラを、ねじを用いて、車体に取り付けるための取付け治具に仮固定する仮固定工程と、
前記車載用カメラの光軸を正規位置に調整する光軸調整工程と、
少なくとも前記ねじ及び前記取付け治具のねじ穴の双方に接触するように設けられた熱硬化性樹脂を硬化することにより、前記車載用カメラを前記取付け治具に最終的に固定する最終固定工程と、
を備える取付け治具付き車載用カメラの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記車載用カメラ及び前記取付け治具を検査用治具に設置し、
前記光軸調整工程において、前記検査用治具に対向したチャートに向けて前記車載用カメラによる撮像を行い、前記ねじを回しながら前記チャート上に撮像される前記車載用カメラの光軸を正規位置に調整する、
取付け治具付き車載用カメラの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記車載用カメラを前記検査用治具に設けられた基準面に当接させた状態で、前記車載用カメラ及び前記取付け治具を前記検査用治具に設置する、
取付け治具付き車載用カメラの製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記ねじが、ばねを有するばね付きねじであり、
前記仮固定工程において、前記ばねが前記ねじ穴の周囲における座面に接する、
取付け治具付き車載用カメラの製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記熱硬化性樹脂を前記取付け治具のねじ穴に配置する、
取付け治具付き車載用カメラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性向上、自動運転機能の導入などの要請に伴い、車両に搭載され、車両の内外を撮影する車載用カメラの開発が活発になっている。車載用カメラは、一般的に、車両の前部、後部、側面等において、車体に対し、ブラケットの様な取付け治具を介して固定される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-077400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用カメラは、その性質上、高い位置決め精度をもって車体に固定されることが求められる。しかしながら、車載用カメラと取付け治具とは、互いにねじの様な締結部材により一体化されており、車載用カメラの位置決め精度は、取付け治具の寸法公差に依存する。よって、現状の方法では位置決め精度の向上に限界がある。
【0005】
本開示は、高い位置決め精度をもって車体に固定するための、取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法を提供する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車載用カメラと、前記車載用カメラを車体に取り付けるための取付け治具と、を備え、前記取付け治具には、ねじが貫通可能な第1ねじ穴が設けられ、前記車載用カメラには、前記ねじが螺合可能な第2ねじ穴が設けられ、前記ねじが、前記第1ねじ穴を貫通するとともに前記第2ねじ穴に螺合し、熱硬化性樹脂が、前記第1ねじ穴と前記ねじとの間の領域において、前記第1ねじ穴と前記ねじの双方に接触する様に存在する、取付け治具付き車載用カメラを提供する。
【0007】
本開示は、車載用カメラを、ねじを用いて、車体に取り付けるための取付け治具に仮固定する仮固定工程と、前記車載用カメラの光軸を正規位置に調整する光軸調整工程と、少なくとも前記ねじ及び前記取付け治具のねじ穴の双方に接触するように設けられた熱硬化性樹脂を硬化することにより、前記車載用カメラを前記取付け治具に最終的に固定する最終固定工程と、を備える、取付け治具付き車載用カメラの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、熱硬化性樹脂が、車載用カメラと取付け治具とを互いに固定するため、車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって取り付けることが可能となり、ひいては、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの斜視図
図2】実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの分解斜視図
図3】実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの正面図
図4図3のA-A線に沿った部分断面図
図5図4のB部分の拡大図
図6】取付け治具付き車載用カメラを製造する手順を示すフローチャート
図7】車載用カメラが設置された検査用治具の斜視図
図8図7のC-C線に沿った部分断面図
図9】実施の形態に係る車載用カメラを検査する状態を示す図
図10】取付け治具付き車載用カメラが車体に取り付けられた状態を車体の内側から見た図
図11】取付け治具付き車載用カメラが車体に取り付けられた状態を車体の外側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を適宜参照しつつ、本開示に係る取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
図1は、実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの斜視図である。図2は、実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの分解斜視図である。図3は、実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラの正面図である。図4は、図3のA-A線に沿った部分断面図である。図5は、図4のB部分の拡大図である。
【0012】
図1図3に示す様に、実施の形態に係る取付け治具付き車載用カメラ1は、車載用カメラ100と、車載用カメラ100を車体に取り付けるための取付け治具10と、を備える。車載用カメラ100は、車両の前部、後部或いは側面等において、車体に対し、取付け治具10を介して固定される。
【0013】
車載用カメラ100は、レンズ110と、レンズ鏡筒130と、筐体160とを含む。レンズ110は、少なくとも一枚、レンズ鏡筒130内に配置される。複数枚のレンズ110が、光軸を一致させた状態でレンズ鏡筒130内に配置されてもよい。レンズ鏡筒130は、例えば樹脂により成形され、レンズ110を保持するとともに、筐体160に取り付けられる。
【0014】
筐体160は、内部空間を有する少なくとも一部が筒形状の部材であり、大径筒状部161と小径筒状部162とを有する。大径筒状部161は、レンズ110の光軸に直交する面で見た場合に、小径筒状部162に比べて大きな断面積を有し、ともに矩形の断面を有する。但し、大径筒状部161及び小径筒状部162のそれぞれの具体的な形状は限定されない。大径筒状部161は、レンズ110に取り込まれた光に基づいて電気信号からなる映像に変換するための撮像素子、車載用カメラ100が行う各種の映像処理を行う集積回路(図示略)が実装された回路基板等を収容する。小径筒状部162は、もっぱら車載用カメラ100の外部(例えば、車両の制御エンジンとしてのECU(Electric Control Unit)との間の電気的接続を確保するコネクタを収容する。
【0015】
取付け治具10は、一対の車体側取付部11と、車載用カメラ取付部12とが一体的に成形されて構成される。車体側取付部11は、車両の車体に取り付けられる部分であり、取付け治具10の両側面から2方向に延びるタブの様な形状を有する。2方向に延びる車体側取付部11のそれぞれには、車体への取り付け時に(図11参照)、取付ねじが貫通する取付用ねじ穴11aが設けられている(図3参照)。
【0016】
車載用カメラ取付部12は、車載用カメラ100が取り付けられる部分であり、車載用カメラの一部、特に筐体160の小径筒状部162が貫通する車載用カメラ貫通孔15が形成されている。
【0017】
取付け治具10は、さらに、2方向に延びる車体側取付部11の間に形成された位置決め部19を有する。位置決め部19は、取付け治具10を、車載用カメラ100の光軸を調整する検査用治具に位置決めする機能を有する。位置決め部19の詳細は後述する。
【0018】
図2に示す様に、取付け治具10は、車体側取付部11には、ばね付きねじ30が螺合可能な第1ねじ穴16が設けられる。本実施の形態においては、4つの第1ねじ穴16が、車載用カメラ貫通孔15の周囲に形成されている。
【0019】
図3のA-A線に沿った図4に示す様に、ばね付きねじ30が、車載用カメラ100の大径筒状部161と、取付け治具10の車載用カメラ取付部12とを締結することにより、車載用カメラ100と取付け治具10とが互いに取り付られる。なお、図4は、図3のA-A線に沿った部分断面図であり、レンズ鏡筒130等は示していない。
【0020】
図4のB部分の拡大図である図5は、車載用カメラ100と取付け治具10との取り付け構造の詳細を示している。車載用カメラ100の大径筒状部161には、ばね付きねじ30が螺合可能な第2ねじ穴164が設けられている。車載用カメラ100と取付け治具10との組み合わせ時に、取付け治具10の第1ねじ穴16と、車載用カメラ100の第2ねじ穴164とは、同軸上に配置される。ばね付きねじ30は、頭部32と、頭部32から延びる軸部34とを備え、軸部34が第1ねじ穴16を貫通し、第2ねじ穴164まで達して、第2ねじ穴164に螺合する。
【0021】
さらに、熱硬化性樹脂40が、第1ねじ穴16と、第1ねじ穴16を貫通したばね付きねじ30の軸部34との間に形成された隙間Gに配置される。熱硬化性樹脂40は、第1ねじ穴16と第2ねじ穴164との間にも配置されている。
【0022】
本実施の形態において、熱硬化性樹脂40は、例えば図2に示す様に予めビス形状に成形された固形部品として提供される。熱硬化性樹脂40は、図5に示す様に、円形状の平板部42と、平板部42から延び、中心が中空の筒状の筒部44とを備えている。よって、筒部44が隙間Gに配置され、平板部42が第1ねじ穴16と第2ねじ穴164との間に配置される。
【0023】
ばね付きねじ30の軸部34が第1ねじ穴16を貫通するとともに、第2ねじ穴164に螺合する。この状態において、軸部34と第1ねじ穴16との間には隙間Gが形成される。そして、熱硬化性樹脂40は、第1ねじ穴16とばね付きねじ30との間の隙間G、正確には、第1ねじ穴16とばね付きねじ30の軸部34との間の隙間Gにおいて、第1ねじ穴16とばね付きねじ30の軸部34の双方に接触する様に存在する。熱硬化性樹脂40は、後述するように、製造工程において熱硬化により硬化し、第1ねじ穴16と軸部34とを接合する接着剤として機能する。
【0024】
これにより、ばね付きねじ30のみならず熱硬化性樹脂40が、車載用カメラ100と取付け治具10とを互いに接着し、強固に固定する。よって、車載用カメラ100と取付け治具10との位置ずれが抑制されるため、車載用カメラ100と取付け治具10とを高い位置決め精度をもって取り付けることが可能となり、ひいては、車載用カメラ100を高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0025】
ばね付きねじ30は、頭部32に隣接したばね38(例えばスプリングワッシャー)を有している。図5の状態において、ばね38は、第1ねじ穴16の周囲における座面18に接する。これにより、ばね38が、車載用カメラ100の車体への取り付け後において、熱膨張、経年変化等の要因により生じ得る位置ずれを吸収するため、車載用カメラ100の高い位置決め精度を維持することができる。但し、ばね38は必須の部材ではなく、ばね付きねじ30の代わりに、ばねのない通常のねじを用いてもよい。
【0026】
また、熱硬化性樹脂40は、図5に示す様に、隙間Gの全体に渡って存在している。これにより、車載用カメラ100と取付け治具10とを互いに強固に固定するとともに、車載用カメラ100を高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0027】
また、熱硬化性樹脂40は、平板部42が第1ねじ穴16と第2ねじ穴164との間に配置され、第2ねじ穴164の周辺領域165にも接触し、車載用カメラ100の大径筒状部161と取付け治具10とを接着する。これにより、車載用カメラ100と取付け治具10とを互いにより強固に固定するとともに、車載用カメラ100を高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0028】
次に、図6から図9を参照して、上述した取付け治具付き車載用カメラ1の製造方法について説明する。図6は、取付け治具付き車載用カメラ1を製造する手順を示すフローチャートである。図7は、車載用カメラ100が設置された検査用治具200の斜視図である。図8は、図7のC-C線に沿った部分断面図である。図9は、実施の形態に係る車載用カメラ100を検査する状態を示す図である。
【0029】
車載用カメラ100と取付け治具10とを高い位置決め精度をもって取り付けるためには、製造時に両者の位置決め精度が一定程度保証されている必要がある。本実施の形態の製造方法は、高い位置決め精度が保証された取付け治具付き車載用カメラ1の製造方法である。
【0030】
本実施の形態の製造方法は、大きくは以下の手順に分けられる。
1)車載用カメラ100を、ばね付きねじ30を用いて、取付け治具10に仮固定する仮固定工程
2)車載用カメラ100の光軸を正規位置に調整する光軸調整工程
3)少なくともばね付きねじ30及び取付け治具10の第1ねじ穴16の双方に接触するように設けられた熱硬化性樹脂40を硬化することにより、車載用カメラ100を取付け治具10に最終的に固定する最終固定工程
【0031】
図6は、上記手順を詳細に説明したフローチャートであり、ステップS1~ステップS3の工程が1)の仮固定工程に相当し、ステップS4~ステップS6の工程が2)の光軸調整工程に相当し、ステップS7~ステップS8の工程が3)最終固定工程に相当する。以下、図6のフローチャートと。図7図9を参照しながら、具体的な手順を説明する。
【0032】
図6において、まず、作業者は、車載用カメラ100を、検査用治具200に設置する(ステップS1)。図7に示す様に、検査用治具200は、平板状の部材で、車載用カメラ位置決め部202、取付け治具位置決め部203、取付け治具固定部204を含む。図8に示す様に、車載用カメラ位置決め部202は、平面視で矩形状である凹部によって形成され、凹部の二つの壁が基準面P1、P2を画定する。基準面は一つでもよい。
【0033】
作業者は、車載用カメラ100の筐体160の大径筒状部161を、基準面P1、P2に当接させた状態で、車載用カメラ100を検査用治具200に設置する。これにより、車載用カメラ100の検査用治具200に対する位置決めを簡易かつ正確に行うことができる。
【0034】
次に、作業者は、熱硬化性樹脂40の平板部42を、筒部44の中心の中空部が車載用カメラ100の大径筒状部161の第2ねじ穴164に合致するように配置するとともに、筒部44が、取付け治具10の第1ねじ穴16に入り込むように、取付け治具10を検査用治具200に設置する(ステップS2)。図7においては、二つの熱硬化性樹脂40が対角に配置された状態を示している。
【0035】
作業者は、取付け治具10の位置決め部19を検査用治具200の取付け治具位置決め部203の外周枠に嵌合するようにして、取付け治具10を検査用治具200に設置することができる。取付け治具位置決め部203は、外周枠で囲まれた形状を有し、外周枠が位置決め部19と嵌合して合致する形状を有しているため、取付け治具10を検査用治具200に対し、簡易に位置決めし、設置することができる。作業者は、更に取付け治具固定部204を用いて取付け治具10を固定する。
【0036】
次に、作業者は、ばね付きねじ30を用いて、車載用カメラ100と取付け治具10とを取り付け、両者を仮固定する(ステップS3)。本例においては、熱硬化性樹脂40が、先に、取付け治具10の第1ねじ穴16に配置されているため、作業者は、ばね付きねじ30の軸部34を、熱硬化性樹脂40の筒部44に入れ、ねじ回しを用いて車載用カメラ100の第2ねじ穴164に螺合する。これにて仮固定工程が終了し、取付け治具付き車載用カメラ1は、図9の様に検査用治具200に設置される。
【0037】
なお、本実施の形態においては、熱硬化性樹脂40は固形部品として提供され、ばね付きねじ30による固定の前に、所定の位置に配置される。しかしながら、熱硬化性樹脂は液体の状態で、塗布されてもよい。例えば、作業者は、車載用カメラ100及び取付け治具10を検査用治具200に設置した後、熱硬化性樹脂を第1ねじ穴16に流し込んで塗布してもよい。また、ばね付きねじ30の軸部34を第1ねじ穴16に挿入した後、熱硬化性樹脂を第1ねじ穴16に流し込んで塗布してもよい。
【0038】
次に、作業者は、図9の様に、取付け治具付き車載用カメラ1を設置した検査用治具200を、チャート300に対向するように配置し、車載用カメラ100を駆動して光軸をチャート300に向けて撮像する(ステップS4)。チャート300は、光軸が調整される車載用カメラ100により撮像されるものである。車載用カメラ100が取付け治具10に正しく位置決めされた状態で取り付けられている場合、光軸は、チャート300の正規位置である座標中心Cに位置しているように撮像される。
【0039】
作業者は、チャート300上での光軸の位置を確認し、光軸検査、すなわち、車載用カメラ100が取付け治具10に正しく位置決めされているか否かの検査を行う(ステップS5)。光軸検査の結果、位置決めが正確でなく、光軸が座標中心Cからずれて撮像される場合(ステップS5で不合格)、作業者は、ねじ回しにより、ばね付きねじ30を回しながら、チャート300上に撮像される車載用カメラ100の光軸を正規位置である座標中心Cに合致するように調整する(ステップS6)。ばね付きねじ30の回転により、車載用カメラ100と取付け治具10との相対的な関係(両者の傾き等)が微調整されるため、光軸を移動させることができる。作業者は、光軸が座標中心Cに合致するまで、ステップS5、ステップS6を繰り返す。
【0040】
これにより、検査用治具200とチャート300を用いつつ、ばね付きねじ30を回して車載用カメラ100の光軸を調整するため、簡易かつ正確に車載用カメラ100の光軸を調整し、結果的に車載用カメラ100と取付け治具10とを高い位置決め精度をもって車体に取り付けることが可能となる。
【0041】
そして、光軸検査の結果、位置決めが正確となり、光軸が座標中心Cに合致して撮像されると(ステップS5で合格)、光軸調整工程が終了する。その後、熱硬化性樹脂40にUV(紫外線)照射を行い、熱硬化性樹脂40を仮硬化し(ステップS7)、取付け治具付き車載用カメラ1を恒温槽に入れ、熱硬化性樹脂40を最終的に熱硬化し、取付け治具付き車載用カメラ1が完成する(ステップS8)。
【0042】
本実施の形態の製造方法によれば、熱硬化性樹脂40が、光軸調整工程で光軸を調整された車載用カメラ100を、最終固定工程において取付け治具10に固定するため、車載用カメラ100と取付け治具10とを高い位置決め精度をもって取り付けることが可能となり、ひいては、車載用カメラ100を高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0043】
熱硬化性樹脂40は、仮固定工程において、取付け治具10の第1ねじ穴16に配置される。よって、熱硬化性樹脂40を容易に配置できるため、車載用カメラ100と取付け治具10とを、容易に高い位置決め精度をもって取り付けることができる。
【0044】
図10は、取付け治具付き車載用カメラ1が車体400に取り付けられた状態を車体の内側から見た図である。図11は、取付け治具付き車載用カメラ1が車体400に取り付けられた状態を車体の外側から見た図である。図10に示す様に、取付け治具付き車載用カメラ1は、取付け治具10の取付用ねじ穴11aを貫通する取付ねじ420によって、車体400に取り付けられる。図11に示す様に、車載カメラ100のレンズ110が、車体400に設けられた露出孔410から外側に向けて露出する。車載カメラ100の取付け治具10及び車体400に対する位置決め精度が高いため、車載カメラ100は光軸ずれの無い適切な映像を撮像することができる。また、車載カメラ100の位置決め精度が高いため、レンズ110が、露出孔410に対しずれることなく露出する結果、美観にも優れている。
【0045】
以上説明したように、本開示には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施の形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0046】
(1)取付け治具付き車載用カメラ(取付け治具付き車載用カメラ1)は、
車載用カメラ(車載用カメラ100)と、
前記車載用カメラを車体(車体400)に取り付けるための取付け治具(取付け治具10)と、
を備え、
前記取付け治具には、ねじ(ばね付きねじ30)が貫通可能な第1ねじ穴(第1ねじ穴16)が設けられ、
前記車載用カメラには、前記ねじが螺合可能な第2ねじ穴(第2ねじ穴164)が設けられ、
前記ねじが、前記第1ねじ穴を貫通するとともに前記第2ねじ穴に螺合し、
熱硬化性樹脂(熱硬化性樹脂40)が、前記第1ねじ穴と前記ねじとの間の隙間(隙間G)において、前記第1ねじ穴と前記ねじの双方に接触する様に存在する。
【0047】
これにより、取付け治具付き車載用カメラにおいて、熱硬化性樹脂が、車載用カメラと取付け治具とを互いに固定するため、車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって取り付けることが可能となり、ひいては、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0048】
(2)取付け治具付き車載用カメラ(取付け治具付き車載用カメラ1)は、(1)に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記ねじが、前記第1ねじ穴の周囲における座面(座面18)に接するばね(ばね38)を有する、ばね付きねじ(ばね付きねじ30)である。
【0049】
これにより、取付け治具付き車載用カメラにおいて、ばね付きねじのばねが、車載用カメラの車体への取り付け後の位置ずれを吸収するため、車載用カメラの高い位置決め精度を維持することができる。
【0050】
(3)取付け治具付き車載用カメラ(取付け治具付き車載用カメラ1)は、(1)に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記熱硬化性樹脂が、前記隙間の全体に渡って存在する。
【0051】
これにより、取付け治具付き車載用カメラにおいて、車載用カメラと取付け治具とを互いに強固に固定するとともに、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0052】
(4)取付け治具付き車載用カメラ(取付け治具付き車載用カメラ1)は、(1)に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記熱硬化性樹脂が、前記第2ねじ穴の周辺領域(周辺領域165)に接触する。
【0053】
これにより、取付け治具付き車載用カメラにおいて、車載用カメラと取付け治具とを互いにより強固に固定するとともに、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0054】
(5)取付け治具付き車載用カメラ(取付け治具付き車載用カメラ1)は、(1)に記載の取付け治具付き車載用カメラであって、
前記取付け治具が、前記車載用カメラの光軸を調整する検査用治具(検査用治具200)に位置決めするための位置決め部(位置決め部19)を備える。
【0055】
これにより、取付け治具付き車載用カメラにおいて、車載用カメラの光軸を調整する際、取付け治具を検査用治具に対し、簡易に位置決めし、設置することができる、
【0056】
(6)取付け治具付き車載用カメラの製造方法は、
車載用カメラ(車載用カメラ100)を、ねじ(ばね付きねじ30)を用いて、車体(車体400)に取り付けるための取付け治具(取付け治具10)に仮固定する仮固定工程と、
前記車載用カメラの光軸を正規位置に調整する光軸調整工程と、
少なくとも前記ねじ及び前記取付け治具のねじ穴(第1ねじ穴16)の双方に接触するように設けられた熱硬化性樹脂(熱硬化性樹脂40)を硬化することにより、前記車載用カメラを前記取付け治具に最終的に固定する最終固定工程と、
を備える。
【0057】
これにより、取付け治具付き車載用カメラの製造方法において、熱硬化性樹脂が、光軸調整工程で光軸を調整された車載用カメラを、最終固定工程において取付け治具に固定するため、車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって取り付けることが可能となり、ひいては、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付けることができる。
【0058】
(7)取付け治具付き車載用カメラの製造方法は、(6)に取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記車載用カメラ及び前記取付け治具を検査用治具(検査用治具200)に設置し、
前記光軸調整工程において、前記検査用治具に対向したチャート(チャート300)に向けて前記車載用カメラによる撮像を行い、前記ねじを回しながら前記チャート上に撮像される前記車載用カメラの光軸を正規位置に調整する。
【0059】
これにより、取付け治具付き車載用カメラの製造方法において、検査用治具とチャートを用いつつ、ねじを回して車載用カメラの光軸を調整するため、簡易かつ正確に車載用カメラの光軸を調整し、結果的に車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって車体に取り付けることが可能となる。
【0060】
(8)取付け治具付き車載用カメラの製造方法は、(7)に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記車載用カメラを前記検査用治具に設けられた基準面(基準面P1、P2)に当接させた状態で、前記車載用カメラ及び前記取付け治具を前記検査用治具に設置する。
【0061】
これにより、取付け治具付き車載用カメラの製造方法において、車載用カメラの検査用治具に対する位置決めを簡易かつ正確に行うことができる。
【0062】
(9)取付け治具付き車載用カメラの製造方法は、(6)に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記ねじが、ばねを有するばね付きねじ(ばね付きねじ30)であり、
前記仮固定工程において、前記ばねが前記ねじ穴の周囲における座面(座面18)に接する。
【0063】
これにより、取付け治具付き車載用カメラの製造方法において、ばね付きねじのばねが、車載用カメラの車体への取り付け後の位置ずれを吸収するため、車載用カメラの高い位置決め精度を維持することができる。
【0064】
(10)取付け治具付き車載用カメラの製造方法は、(6)に記載の取付け治具付き車載用カメラの製造方法であって、
前記仮固定工程において、前記熱硬化性樹脂を前記取付け治具のねじ穴に配置する。
【0065】
これにより、取付け治具付き車載用カメラの製造方法において、熱硬化性樹脂を容易に配置できるため、車載用カメラと取付け治具とを、容易に高い位置決め精度をもって取り付けることができる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示は、車載用カメラと取付け治具とを高い位置決め精度をもって取り付け、ひいては、車載用カメラを高い位置決め精度をもって、車体に取り付ける取付け治具付き車載用カメラ及びその製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 取付け治具付き車載用カメラ
10 取付け治具
11 車体側取付部
12 車載用カメラ取付部
15 車載用カメラ貫通孔
16 第1ねじ穴(ねじ穴)
18 座面
19 位置決め部
30 ばね付きねじ(ねじ)
32 頭部
34 軸部
38 ばね
40 熱硬化性樹脂
42 平板部
44 筒部
100 車載用カメラ
110 レンズ
130 レンズ鏡筒
160 筐体
161 大径筒状部
162 小径筒状部
164 第2ねじ穴
165 周辺領域
200 検査用治具
202 車載用カメラ位置決め部
203 取付け治具位置決め部
204 取付け治具固定部
300 チャート
400 車体
410 露出孔
420 取付ねじ
G 隙間
P1 基準面
P2 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11