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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120625
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】薄型アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20240829BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20240829BHJP
   H01Q 1/48 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q9/42
H01Q1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027541
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】倉本 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】小熊 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信秀
(72)【発明者】
【氏名】丸山 信明
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045AA02
5J045AB05
5J045AB06
5J045DA10
5J045HA06
5J046AA07
5J046AA19
5J046AB06
5J046TA03
(57)【要約】
【課題】広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナを提供すること。
【解決手段】本開示に係る薄型アンテナ11は、第1方向X1、および第1方向X1と垂直な第2方向X2と平行な第1面111s1を有し、導体で構成されたグランド板111と、第1面111s1上に設けられた平板112aと、平板112aとグランド板111とを接続する複数の側板112bと、を有し、導体で構成された放射素子112と、平板112aとグランド板111との間に設けられ、第1方向X1および第2方向X2と垂直な第3方向X3に延びる第1部分と、延びた先で第1方向X1と逆方向に延びる第2部分と、を有し、第2方向X2から見て逆L字型の形状であり、導体で構成された給電金具113と、給電金具113とグランド板111との間に給電する給電部114と、を備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、および前記第1方向と垂直な第2方向と平行な第1面を有し、導体で構成されたグランド板と、
前記第1面上に設けられ前記第1面と平行な面を有する平板と、前記平板と前記グランド板とを接続する複数の側板と、を有し、導体で構成された放射素子と、
前記平板と前記グランド板との間に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に延びる第1部分と、延びた先で前記第1方向と逆方向に延びる第2部分と、を有し、前記第2方向から見て逆L字型の形状であり、導体で構成された給電金具と、
前記給電金具の前記グランド板に近い端と前記グランド板との間に給電する給電部と、
を備える薄型アンテナ。
【請求項2】
前記側板は、前記給電金具の前記グランド板に近い端を対称の中心とした点対称の位置に配置される、
請求項1に記載の薄型アンテナ。
【請求項3】
前記給電部は、
前記給電金具の前記グランド板に近い端と高周波信号とを接続し、
前記グランド板とグランド線とを接続する、
請求項1に記載の薄型アンテナ。
【請求項4】
前記グランド板の前記第3方向とは逆方向の第2面に同軸コネクタをさらに備え、
前記給電金具の前記グランド板に近い端と前記同軸コネクタの芯線とが接続され、
前記グランド板と前記同軸コネクタのグランドとが接続される、
請求項1に記載の薄型アンテナ。
【請求項5】
前記平板の形状は、前記第1方向から見て、円形または多角形である、
請求項1に記載の薄型アンテナ。
【請求項6】
前記平板の前記第1方向の長さは、最低使用周波数の0.37波長以上、0.41波長未満であり、
請求項1に記載の薄型アンテナ。
【請求項7】
前記平板と前記グランド板との間の距離は、前記最低使用周波数の0.06波長以上、0.08波長未満である、
請求項6に記載の薄型アンテナ。
【請求項8】
前記給電金具の前記第1部分の前記第3方向の長さは、前記最低使用周波数の0.05波長以上、0.07波長未満であり、
前記給電金具の前記第2部分の前記第1方向の長さは、前記最低使用周波数の0.02波長以上、0.04波長未満であり、
前記給電金具の前記第1部分および前記第2部分の前記第2方向の長さは、前記最低使用周波数の0.02波長以上、0.04波長未満である、
請求項7に記載の薄型アンテナ。
【請求項9】
第1方向、および前記第1方向と垂直な第2方向と平行な第1面を有し、前記第1面の一部に前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向とは逆の方向に凹んだ凹み部分を有し、導体で構成されたグランド板と、
前記凹み部分に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と平行な面を有する平板と、前記平板と前記凹み部分とを接続する複数の側板と、を有し、導体で構成された放射素子と、
前記平板と前記凹み部分との間に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に延びる第1部分と、延びた先で前記第1方向と逆方向に延びる第2部分と、を有し、前記第2方向から見て逆L字型の形状であり、導体で構成された給電金具と、
前記給電金具の前記凹み部分に近い端と前記凹み部分との間に給電する給電部と、
を備える薄型アンテナ。
【請求項10】
前記放射素子の前記第3方向に前記凹み部分を塞ぐように設けられたレドームをさらに備える、
請求項9に記載の薄型アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄型アンテナに関し、特に、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
外形が平面状で比較的薄型なアンテナは、モバイル通信の基地局用アンテナ、または航空機用アンテナとして活用されている。基地局用アンテナは、建物の天井に埋め込むアンテナとして活用される。また、航空機用アンテナは、航空機の機体に埋め込む形のアンテナとすることにより、空気抵抗を最小とすることができる。外形が平面状で比較的薄型なアンテナは、例えば、非特許文献1-3に記載されたアンテナがある。当該アンテナは、薄型かつ広帯域ではあるが、構造が複雑であり高価となる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、導電性の第1フィーディングポートと、導電性の第2フィーディングポートと、前記第1フィーディングポートに連結される導電性の給電電極と、前記第2フィーディングポートに連結される導電性のループ形電極と、前記給電電極と電気的に連結される導電性の放射電極と、前記放射電極に連結される導電性の接地電極並びに前記接地電極及びループ形電極に連結される導電性の接地電極ポートと、を含むチップアンテナが記載されている。そして、該チップアンテナによれば、小型に作製でき且つダイプレクサ(diplexer)が不要となることが記載されている。特許文献1には、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナについては開示されていない。
【0004】
特許文献2には、比誘電率が6以上の誘電材からなるアンテナ基体と、一端が接地され、他端が開放されるストライプ状の放射電極と、放射電極の一端を接地する接地電極と、放射電極からギャップを隔てた側面に設けた給電電極とを有する表面実装型アンテナであって、前記基体の底面における接地電極の面積率は30%以下の必要最小限であって、門型の給電電極は一端を給電部、他端を接地部、その間に放射電極とギャップを介し形成した並行部を具備し、その長さ、ギャップ長あるいは門型をコ字状、ミアンダ状、クランク状等になして給電電極自身が持つキャパシタンス分に加えインダクタンス分を適宜選ぶことによってインピーダンス整合を容易にしたことが記載されている。特許文献2には、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-318650号公報
【特許文献2】特開2003-069331号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】論文名:“超広帯域PSPアンテナ”、発表学会名:電子情報通信学会2006年総合大会、論文掲載:電子情報通信学会2006年総合大会論文集B-1-100
【非特許文献2】論文名:“低姿勢広帯域アンテナ”、発表学会名:電子情報通信学会2006年ソサエティ大会、論文掲載:電子情報通信学会2006年ソサエティ大会論文集BS-1-11
【非特許文献3】論文名:“低姿勢広帯域アンテナ第3報”、発表学会名:電子情報通信学会2007年ソサエティ大会、論文掲載:電子情報通信学会2007年ソサエティ大会論文集B-1-93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、特許文献1-2、および非特許文献1-3に記載の技術によって、薄型かつ広帯域なアンテナを実現することは可能であるが、構造が複雑であり安価に実現することが難しいという課題がある。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題のいずれかを解決する薄型アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る薄型アンテナは、
第1方向、および前記第1方向と垂直な第2方向と平行な第1面を有し、導体で構成されたグランド板と、
前記第1面上に設けられ前記第1面と平行な面を有する平板と、前記平板と前記グランド板とを接続する複数の側板と、を有し、導体で構成された放射素子と、
前記平板と前記グランド板との間に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に延びる第1部分と、延びた先で前記第1方向と逆方向に延びる第2部分と、を有し、前記第2方向から見て逆L字型の形状であり、導体で構成された給電金具と、
前記給電金具の前記グランド板に近い端と前記グランド板との間に給電する給電部と、
を備える。
【0010】
本開示に係る薄型アンテナは、
第1方向、および前記第1方向と垂直な第2方向と平行な第1面を有し、前記第1面の一部に前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向とは逆の方向に凹んだ凹み部分を有し、導体で構成されたグランド板と、
前記凹み部分に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と平行な面を有する平板と、前記平板と前記凹み部分とを接続する複数の側板と、を有し、導体で構成された放射素子と、
前記平板と前記凹み部分との間に設けられ、前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に延びる第1部分と、延びた先で前記第1方向と逆方向に延びる第2部分と、を有し、前記第2方向から見て逆L字型の形状であり、導体で構成された給電金具と、
前記給電金具の前記凹み部分に近い端と前記凹み部分との間に給電する給電部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図1B】実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図2】実施の形態1に係る薄型アンテナの電流の流れを例示する模式図である。
図3A】実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図3B】実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図4】実施の形態1に係る給電金具および同軸コネクタを例示する斜視図である。
図5】実施の形態1に係る側板およびその周辺の構造を例示する斜視図である。
図6】実施の形態1に係る側板およびその周辺の構造を例示する斜視図である。
図7】実施の形態1に係る放射素子を例示する斜視図である。
図8】実施の形態1に係る給電金具を例示する斜視図である。
図9A】実施の形態2に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図9B】実施の形態2に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図10A】実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図10B】実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図11A】実施の形態3に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図11B】実施の形態3に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図12】実施の形態に係る薄型アンテナの整合特性を例示するグラフである。
図13】単体アンテナと埋込アンテナの垂直面(仰角面、XZ面)での放射パタ-ン特性を例示するグラフである。
図14A】単体アンテナの周波数1.09GHzにおける3次元放射パタ-ン特性を例示する図である。
図14B】埋込アンテナの周波数1.09GHzにおける3次元放射パタ-ン特性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0014】
[実施の形態1]
<構成>
図1Aは、実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図1Bは、実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図1Bは、図1Aに示すA1-A2線による断面図である。
【0015】
図1A図1Bおよびこれ以降に出てくる図面では、必要に応じて、X方向を第1方向X1とし、X方向(第1方向X1)に垂直な方向をY方向(第2方向X2)とする。また、X方向(第1方向X1)に垂直で、且つ、Y方向(第2方向X2)に垂直な方向をZ方向(第3方向X3)とする。
【0016】
図1Aおよび図1Bに示すように、実施の形態1に係る薄型アンテナ11は、グランド板111と、放射素子112と、給電金具113と、給電部114と、を備える。
【0017】
グランド板111は、第1方向X1、および第1方向X1と垂直な第2方向X2と平行な第1面111s1を有し、導体で構成される。
【0018】
放射素子112は、第1面111s1上に設けられる。放射素子112は、第1面111s1と平行な面を有する平板112aと、平板112aとグランド板111とを接続する複数の側板112bと、を有し、導体で構成される。放射素子112は、側板112bによってグランド板111に保持される。
【0019】
給電金具113は、平板112aとグランド板111との間に設けられる。給電金具113は、第1方向X1および第2方向X2と垂直な第3方向X3に延びる第1部分と、延びた先で第1方向X1と逆方向に延びる第2部分と、を有する。給電金具113は、第2方向X2から見て逆L字型の形状であり、導体で構成される。
【0020】
側板112bは、給電金具113のグランド板111に近い端を対称の中心とした点対称の位置に配置されてもよい。なお、側板を支持部と称することもある。
【0021】
給電部114は、給電金具113のグランド板111に近い端とグランド板111との間に給電する。具体的には、給電部114は、給電金具113のグランド板111に近い端と高周波信号とを接続し、グランド板111とグランド線とを接続する。
【0022】
<動作>
薄型アンテナ11の動作を説明する。
図2は、実施の形態1に係る薄型アンテナの電流の流れを例示する模式図である。
【0023】
図1Aおよび図1Bにおいて、給電金具113は、第2方向X2から見た形状が逆L字型の形状であり、第2部分の上面(第3方向X3の面)は概ね放射素子112と平行である。給電は、給電金具113のグランド板111に近い端と、グランド板111の中央部(第3方向X3から見て中央部)と、の間で行われる。給電金具113に励振された高周波信号は、給電金具113の第2部分(放射素子112と平行になっている部分)において放射素子112と電磁結合することにより、放射素子112を励振させ、主に上方(第3方向X3)に電波を放射することでアンテナとして動作する。
【0024】
図2に示すように、給電金具113の場所S1が高周波信号、すなわち、無線周波数(RF:Radio Frequency)信号の信号源に接続されると、電流iが流れる。電流iが流れると、給電金具113の第2部分と放射素子112とが電磁結合し、場所S2に到達する。場所S2の電流は、電流i1と電流i2とに分岐して流れる。
【0025】
電流i1は、場所S2→場所S3→場所S4のように流れる。場所S1→場所S2→場所S3→場所S4の電流ル-トの長さは概ね1/2波長の長さになり、共振して電波の放射が起こる。一方、電流i2は、場所S2→場所S5→場所S4のように流れる。場所S1→場所S2→場所S5→場所S4の電流ル-トの長さも概ね1/2波長の長さになり、共振して電波の放射が起こる。
【0026】
電流の流れに関する上記の説明は、A1-A2線による断面における動作について説明したが、図1に示すB1-B2線による断面においても同様の原理により電波の放射が起こる。そして、図1では、側板112bがある4つの場所で放射が起こる。これらの放射が合成され、方位方向に均等な放射となり、無指向性の指向性が形成される。なお、方位方向を水平方向と称することもある。ここでの水平方向は、XY面の方向である。
【0027】
<詳細構成>
図3Aは、実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図3Bは、実施の形態1に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図3Bは、図3Aに示すA1-A2線による断面図である。
【0028】
図3Aおよび図3Bに示すように、薄型アンテナ11は、グランド板111と、放射素子112と、給電金具113と、給電部114と、同軸コネクタ115と、を備える。グランド板111と放射素子112と給電金具113と給電部114については、既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0029】
同軸コネクタ115は、グランド板111の第3方向X3とは逆方向の第2面111s2に設けられる。給電部114による給電は、同軸コネクタ115を用いて行われる。給電金具113のグランド板111に近い端と同軸コネクタ115の芯線(同軸中心導体)とが接続され、グランド板111と同軸コネクタ115のグランド(同軸外部導体)とが接続されることで給電する。
【0030】
平板112aの第1方向X1の長さ(直径)は、最低使用周波数の0.37波長以上、0.41波長未満である。すなわち、グランド板111の上に配置される平板112aが円形であり、その直径が最低使用周波数の約0.39波長、具体的には、0.37波長以上、0.41波長未満である。また、平板112aを支えるための側板112bが4か所で点対称に配置される。
【0031】
平板112aとグランド板111との間の距離hは、最低使用周波数の約0.07波長、具体的には、最低使用周波数の0.06波長以上、0.08波長未満である。
【0032】
なお、使用する最低の周波数を「最低使用周波数」と称する。また、最低使用周波数の波長のM倍を、最低使用周波数のM波長と表現することもある。ただし、Mは正の値である。また、平板の第1方向の長さを、平板の直径と称することもある。また、平板とグランド板との間の距離を、側板の高さと称することもある。
【0033】
図4は、実施の形態1に係る給電金具および同軸コネクタを例示する斜視図である。
図4は、図3Aに示す給電金具113および同軸コネクタ115の拡大図である。
【0034】
給電金具113の第1部分の端(下部)が同軸コネクタ115の芯線(同軸中心導体)にハンダ付けされる。なお、ハンダ付け以外では、例えば、圧着等で接続してもよく、電気的に接続されることが必要である。
【0035】
給電金具113の第1部分の第3方向X3の長さHfは、最低使用周波数の0.06波長、具体的には、0.05波長以上、0.07波長未満である。給電金具113の第2部分の第1方向X1の長さLpは、最低使用周波数の0.03波長、具体的には、0.02波長以上、0.04波長未満である。給電金具113の第1部分および第2部分の第2方向X2の長さLwは、最低使用周波数の0.03波長、具体的には、0.02波長以上、0.04波長未満である。
【0036】
図5は、実施の形態1に係る側板およびその周辺の構造を例示する斜視図である。
図5は、板金の金具を側板として用いた場合を示す。
図6は、実施の形態1に係る側板およびその周辺の構造を例示する斜視図である。
図6は、金属などのスペ-サを側板として用いた場合を示す。
【0037】
図5に示すように、側板112bとして、板金を折り曲げたり、切削等で構成したものを用いる。このようにして加工した側板112bを、ビスを用いてグランド板111の上に固定し、平板112aを別のビスで固定する。なお、側板112bの固定は、ビスを用いない方法、例えば、スポット溶接等でもよい。
【0038】
図6に示すように、側板112bとして、金属のスペ-サを用いる。側板112bは、円柱や角柱形状の金属スペーサでもよい。
【0039】
図7は、実施の形態1に係る放射素子を例示する斜視図である。
図7(a)は、第3方向X3から見て円形の放射素子112を示す。
図7(b)は、第3方向X3から見て正方形または長方形の放射素子112を示す。
図7(c)は、第3方向X3から見て正方形または長方形の放射素子112を示す。
【0040】
図7(a)に示すように、放射素子112は、側板112bとの接続部分において、外側に延びる突起部112cを有する。突起部112cを有することにより、アンテナのインピ-ダンスの整合状態が良くない場合、インピーダンスの調整が可能になる。なお、突起部112cの形状は、矩形、多角形、半楕円形等、または多様化形状でもよい。また、放射素子112の形状、すなわち、平板112aの形状は、第1方向X1から見て、円形または多角形であってもよく、または、楕円形や任意の形状でもよい。側板112bの数は、2つ以上であり、例えば4つであるが、数量の制限はない。
【0041】
図7(b)に示すように、放射素子112の形状は、第3方向X3から見て正方形または長方形である。放射素子112の形状は、その他の多角形でもよい。
【0042】
図7(c)に示すように、放射素子112は、側板112bとの接続部分において、外側に延びる突起部112cを有する。上記説明の通り、突起部112cを有することにより、インピ-ダンスの整合の調整が可能になる。
【0043】
図8は、実施の形態1に係る給電金具を例示する斜視図である。
【0044】
図8(a)~(c)は、給電金具の第1部分(下側部分)の形状がそれぞれ異なる。第1部分の形状を異ならせることによりインピ-ダンスの整合の調整ができる。
【0045】
図8(d)は、図8(a)~(c)が第2方向から見て逆L字型の形状であるのに対し、第1方向(X方向)に貼り出した形状である。張り出し部分の長さや形状により、インピ-ダンスの整合の調整ができる。図8(e)および図8(f)は、図8(d)の給電金具の第2部分(上側部分)を多角形や楕円などの任意の形状にしたものである。
【0046】
図8(g)~(j)は、給電金具の第1部分(下側部分)を、導体棒や金属スペ-サ(図6の側板112b参照)で置き換えたものである。また、図8(k)~(p)は、給電金具そのものを金属棒または針金のようなものに置き換えたものである。
【0047】
<効果>
実施の形態1に係る薄型アンテナ11は、側板112bがある4つの場所で放射が起こる(図1参照)。そして、これらの放射が合成され、方位方向に均等な放射となり、無指向性の指向性が形成される。また、薄型アンテナ11は、グランド板111と、グランド板111上に設けられた放射素子112と、放射素子112とグランド板111との間に設けられたL字型の給電金具113という薄型で簡易な構造を実現している。
【0048】
その結果、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナを提供することができる。
【0049】
[実施の形態2]
図9Aは、実施の形態2に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図9Bは、実施の形態2に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図9Bは、図9Aに示すA1-A2線による断面図である。
【0050】
図9A及び図9Bに示すように、実施の形態2に係る薄型アンテナ21は、実施の形態1に係る薄型アンテナ11と比べて、グランド板211の形状が異なる。すなわち、グランド板211は、第3方向X3とは逆の方向に凹んだ凹み部分211rを有する。そして、放射素子112および給電金具113が凹み部分211rに埋め込まれる。なお、凹み部分211rの形状は、第3方向から見て方形である。
【0051】
薄型アンテナ21の詳細は以下となる。
実施の形態2に係る薄型アンテナ21は、グランド板211と、放射素子112と、給電金具113と、給電部114と、を備える。
【0052】
グランド板211は、第1方向X1、および第1方向X1と垂直な第2方向X2と平行な第1面211s1を有し、第1面211s1の一部に第1方向X1および第2方向X2と垂直な第3方向X3とは逆の方向に凹んだ凹み部分211rを有し、導体で構成される。
【0053】
放射素子112は、凹み部分211rに設けられる。放射素子112は、第1方向X1および第2方向X2と平行な面を有する平板112aと、平板112aと凹み部分211rとを接続する複数の側板112bと、を有し、導体で構成される。
【0054】
給電金具113は、平板112aと凹み部分211rとの間に設けられる。給電金具113は、第1方向X1および第2方向X2と垂直な第3方向X3に延びる第1部分と、延びた先で第1方向X1と逆方向に延びる第2部分と、を有する。給電金具113は、第2方向X2から見て逆L字型の形状であり、導体で構成される。
【0055】
給電部114は、給電金具113の凹み部分211rに近い端と、凹み部分211rと、の間に給電する。なお、グランド板211の第3方向X3から見た形状は、任意の形状でもよい。また、凹み部分211rの第3方向X3から見た形状も、任意の形状でもよい。
【0056】
簡単に言うと、薄型アンテナ21は、任意の形状の導体より成る大きなグランド板211に、円形、楕円形、多角形などの任意の形状の穴(凹み部分211r)を設け、その穴に、実施の形態1に係る放射素子112と給電金具113とを埋め込んだものである。
【0057】
<効果>
実施の形態2に係る薄型アンテナ21は、例えば、金属等の壁面に埋め込んでも整合特性や放射特性が良好である。よって、薄型アンテナ21を、航空機の機体の壁面や、屋内/屋外の壁面や、地下街の天井等に設置することができる。
【0058】
図10Aは、実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図10Bは、実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図10Bは、図10Aに示すA1-A2線による断面図である。
【0059】
図10Aおよび図10Bに示すように、実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナ21aは、実施の形態2に係る薄型アンテナ21と比べて、グランド板211の凹み部分211rの形状が、第3方向から見て円形または楕円形である点が異なる。薄型アンテナ21aにおいても、薄型アンテナ21と同様な電気的特性が得られる。
【0060】
[実施の形態3]
図11Aは、実施の形態3に係る薄型アンテナを例示する斜視図である。
図11Bは、実施の形態3に係る薄型アンテナを例示する断面図である。
図11Bは、図11Aに示すA1-A2線による断面図である。
【0061】
図11A及び図11Bに示すように、実施の形態3に係る薄型アンテナ31は、実施の形態2の変形例に係る薄型アンテナ21aと比べて、放射素子112の第3方向X3に凹み部分211rを塞ぐようにレドーム316が設けられている点が異なる。レドーム316は、雨雪や飛来物からアンテナを保護するためのものでる。薄型アンテナ31においても、薄型アンテナ21と同様な電気的特性が得られる。
【0062】
<効果:シミュレーション結果>
図12は、実施の形態に係る薄型アンテナの整合特性を例示するグラフである。
図12の横軸は周波数を示す。縦軸は|S11|パラメータ(入力リターンロス)を示す。
図12に示すグラフG1は、実施の形態1に係る薄型アンテナ11の整合特性を示す。すなわち、グラフG1は、単体アンテナの|S11|を示す。ここで、薄型アンテナ11を単体アンテナと称する。
図12に示すグラフG2は、実施の形態2に係る薄型アンテナ21の整合特性を示す。すなわち、グラフG2は、埋込アンテナの|S11|を示す。ここで、薄型アンテナ21を埋込アンテナと称する。
【0063】
(単体アンテナ)
最低使用周波数を0.96GHz(ギガヘルツ)とした場合における単体アンテナの各寸法等は、以下の値とした。
放射素子の寸法(図3Aおよび図3B参照)
放射素子の平板の直径:0.39波長。
側板の高さh:0.07波長。
給電金具の寸法(図4参照)
水平方向(X方向)の長さLp:0.03波長。
水平方向(Y方向)の幅Lw:0.03波長。
垂直方向(Z方向)の高さHf:0.06波長。
グランド板の寸法(図3A参照)
正方形の1辺の長さ:0.64波長。
【0064】
図12のグラフG1に示すように、単体アンテナのS11は、0.92GHz~1.66GHzの間で、-9.5dB以下となっている。この値は、VSWR≦2.0に相当するので、良好な整合特性と言える。よって、単体アンテナは、広帯域で良好な整合特性を有すると言える。
【0065】
(埋込アンテナ)
最低使用周波数を0.96GHz(ギガヘルツ)とした場合における埋込アンテナの各寸法等は、以下の値とした。
放射素子の寸法(図9Aおよび図9B参照)
側板の高さh:0.10波長。
グランド板の寸法(図9A参照)
正方形の1辺の長さ:3.2波長。
なお、その他の寸法は、単体アンテナのものと同じ値とした。
【0066】
図12のグラフG2に示すように、埋込アンテナのS11は、0.92GHz~1.22GHzの間で、-9.5dB以下となっている。この値は、VSWR≦2.0に相当するので、良好な整合特性と言える。よって、埋込アンテナは、広帯域で良好な整合特性を有すると言える。
【0067】
図13は、単体アンテナと埋込アンテナの垂直面(仰角面、XZ面)での放射パタ-ン特性を例示するグラフである。
図13の横軸はXZ面の仰角の角度を示す。縦軸はアンテナ利得を示す。
仰角について、0度は天頂方向(Z方向)を示し、90度は水平方向(XY面内の方向)を示す。
【0068】
図13に示すグラフG1は、単体アンテナの周波数0.96GHzにおける利得を示す。
図13に示すグラフG2は、埋込アンテナの周波数0.96GHzにおける利得を示す。
図13に示すグラフG3は、単体アンテナの周波数1.09GHzにおける利得を示す。
図13に示すグラフG4は、埋込アンテナの周波数1.09GHzにおける利得を示す。
図13に示すグラフG5は、単体アンテナの周波数1.22GHzにおける利得を示す。
図13に示すグラフG6は、埋込アンテナの周波数1.22GHzにおける利得を示す。
【0069】
図13に示すように、グラフG1~グラフG6のいずれにおいても、仰角が45度の方向にメインビ-ムを有する良好な指向特性が得られることが理解できる。
【0070】
図14Aは、単体アンテナの周波数1.09GHzにおける3次元放射パタ-ン特性を例示する図である。
図14Bは、埋込アンテナの周波数1.09GHzにおける3次元放射パタ-ン特性を例示する図である。
【0071】
図14Aおよび図14Bに示すように、3次元放射パタ-ン特性は、垂直面放射パタ-ン(図13参照)を回転させたような放射パタ-ンとなっている。同じ仰角の水平方向は、どの方向にも概ね同じ利得を有するので、水平面内無指向性の特性となっていることが理解できる。
【0072】
<効果>
実施の形態に係る薄型アンテナは、以下の効果がある。
外形が薄型なアンテナである。
広帯域なアンテナである。
方位方向(水平面方向)の指向性は無指向性のアンテナである。
非常に簡易な構造で安価に実現できるアンテナである。
金属壁面等に埋め込んでも性能が劣化せず、使用可能なアンテナである。
実施の形態によれば、広帯域で無指向な特性を有し、薄型で簡易な構造により、安価に実現することが可能な薄型アンテナを提供することができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
11、21、31…薄型アンテナ
111、211…グランド板
211r…凹み部分
111s1…第1面
111s2…第2面
112…放射素子
112a…平板
112b…側板
112c…突起部
113…給電金具
114…給電部
115…同軸コネクタ
316…レドーム
Lp…給電金具の第2部分の第1方向の長さ
Lw…給電金具の第1部分および第2部分の第2方向の長さ
Hf…給電金具の第1部分の第3方向の長さ
G1、G2、G3、G4、G5、G6…グラフ
X1…第1方向
X2…第2方向
X3…第3方向
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B