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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120631
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 11/00 20060101AFI20240829BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61G11/00 A
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027552
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中川 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武司
(72)【発明者】
【氏名】末廣 陽
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡
【テーマコード(参考)】
4C341
4D012
【Fターム(参考)】
4C341KK03
4C341KL05
4C341KL07
4D012BA03
4D012CA10
4D012CA11
4D012CB05
4D012CG02
(57)【要約】
【課題】保育器内の患児が、意図せず揮発性物質に暴露されてしまうことを回避する。
【解決手段】浄化装置(2)は、患児(X)を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室(101)を備えた保育器(1)に対して設置され、収容室(101)内に収容された患児に対する揮発性物質による医療行為にともない気化した揮発性物質を含む空気を浄化する浄化装置(2)であって、空気から揮発性物質を除去する除去部(3)と、少なくとも除去部(3)を保持可能な筐体(4)と、筐体(4)を保育器(1)外に固定するための固定部(5)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器に対して設置され、前記収容室内に収容された患児に対する揮発性物質による医療行為にともない気化した揮発性物質を含む空気を浄化する浄化装置であって、
前記空気から揮発性物質を除去する除去部と、
少なくとも前記除去部を保持可能な筐体と、
前記筐体を前記保育器外に固定するための固定部と、を備える、浄化装置。
【請求項2】
前記空気を吸引する吸引部と、
前記除去部によって揮発性物質が除去された空気を排気する排気部と、を備え、
前記除去部は、前記吸引部によって吸引した空気から揮発性物質を除去するものである、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
ヒーターを備える、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記吸引部が前記吸引部によって吸引した空気を前記除去部に導く第1流路と、
前記排気部が前記揮発性物質が除去された空気を排気するための第2流路とが、異なる流路として設けられている、請求項2に記載の浄化装置。
【請求項5】
特定気体を減圧機構により減圧して吸気する吸気部を備え、
前記吸引部は、前記空気とともに、前記吸気部が吸気した特定気体を吸引する、請求項2に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記揮発性物質は、エタノールである、請求項1に記載の浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保育器は、未熟児および新生児等の患児を保護し、診療するための医療機器である。患児は保育器内において様々な医学的介入を受ける。患児が受ける医学的介入には、採血、人工呼吸器の装着、点滴、などが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医学的介入の一例として、保育器内の患児から採血を行ったり、患児に点滴を行ったりする場合がある。これらの医学的介入では、針を刺す部位の消毒等のためにエタノールなどのアルコールが使用され得る。エタノールなどのアルコールは揮発性を有しているため、医学的介入の度に保育器内の空気に含まれるアルコール濃度が上昇する。その結果、保育器内の患児は、意図せず揮発性物質に暴露されている可能性がある。
【0004】
揮発性物質の中には、患児の健康状態に影響を及ぼすものもある。例えば、妊娠中の飲酒によって胎児へ悪影響をもたらす(胎児エタノール症候群)ことは広く知られており、保育器内で患児が揮発性物質に暴露される状況は改善することが望ましい。
【0005】
本開示は、保育器内の患児が、意図せず揮発性物質に暴露されてしまうことを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る浄化装置は、患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器に対して設置され、前記収容室内に収容された患児に対する揮発性物質による医療行為にともない気化した揮発性物質を含む空気を浄化する浄化装置であって、前記空気から揮発性物質を除去する除去部と、少なくとも前記除去部を保持可能な筐体と、前記筐体を、前記保育器外に固定するための固定部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、患児に対する医療行為の邪魔にならずに、収容室内の揮発性物質を除去して空気を浄化することができる。
【0008】
前記浄化装置は、前記空気を吸引する吸引部と、前記除去部によって揮発性物質が除去された空気を排気する排気部と、を備え、前記除去部は、前記吸引部によって吸引した空気から揮発性物質を除去するものでもよい。これにより、収容室内の揮発性物質を確実に除去して空気を浄化することができる。
【0009】
前記浄化装置は、ヒーターを備えてもよい。これにより、浄化装置を保育器外に設置した場合、保育器内と保育器外との温湿度差によって結露が生じることを防止できる。
【0010】
前記浄化装置は、前記吸引部が前記吸引部によって吸引した空気を前記除去部に導く第1流路と、前記排気部が前記揮発性物質が除去された空気を排気するための第2流路とが、異なる流路として設けられていてもよい。上記構成によれば、第1流路と第2流路とが異なる流路として設けられることにより、これら2つの流路を流れる空気が混じりあうことが防止され、収容室内の揮発性物質を確実に除去して空気を浄化することができる。
【0011】
前記浄化装置は、特定気体を減圧機構により減圧して吸気する吸気部を備え、前記吸引部は、前記空気とともに、前記吸気部が吸気した特定気体を吸引してもよい。これにより、患児に供給する際に減圧することが必要な医療用エア等の特定気体を、収容室に導くことができる。
【0012】
前記揮発性物質は、エタノールであってもよい。エタノールを除去することにより、患児の健康状態を的確に維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、保育器内の患児が、意図せず揮発性物質に暴露されてしまうことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態に係る保育器に対して設置された浄化装置の概略斜視図である。
図2図1に示す浄化装置の概略構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係るエタノール除去方法を説明するためのフローチャートである。
図4図1に示す浄化装置の変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<浄化装置の概要>
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態に係る保育器1に対して設置された浄化装置2の概略斜視図である。図2は、図1に示す浄化装置2の概略構成を示す図である。
【0016】
浄化装置2は、保育器1が備える収容室101内に収容された患児Xに対する揮発性物質による医療行為にともない気化した揮発性物質を含む空気(第1空気)を浄化する装置である。浄化装置2は、患児Xを収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室101を備えた保育器1に対して設置される。
【0017】
本実施形態では、揮発性物質は、エタノールである。浄化装置がエタノールを除去して浄化することにより、患児の健康状態を的確に維持することができる。以下、揮発性物質としてエタノールを例に説明するが、本開示はこれに限定されるものではなく、揮発性物質がイソプロパノール等である場合も含む。
【0018】
<保育器の構成>
以下では保育器1は、閉鎖型保育器を例にして説明する。患児Xに対する医学的介入(点滴投与等)には、保育器1内で実施されるものがある。また、保育器1内の空気に含まれるエタノールを吸着除去する必要がある。従って、第1空気を浄化する浄化装置2が保育器1に対して設置されている。これにより、患児Xに対する医学的介入を保育器1内において行うことの安全性を向上させることができる。
【0019】
図1に示すように、保育器1は、患児Xを収容する収容室101と、収容室101を載置する載置台102とを含む。収容室101内には、ベッド11、ベッド11の前後に配置された衝立部12が配置されている。ベッド11の表面11aは、患児Xが置かれる載置面である。ベッド11は、載置台102上に設けられたベッドステージ13に設置されている。ベッドステージ13は、ベッド11を上下方向または上下左右方向に動かすことが可能である。衝立部12は、ベッド11の表面11aから所定の高さおよび所定の幅を有する透明な樹脂で形成されている。
【0020】
収容室101には、医師または看護師が患児Xに対して点滴投与等の処置を行うための処置用の開口部101aが2個設けられている。収容室101内で患児Xに対して何らかの処置をする場合には、必ず消毒する必要がある。例えば、酒精綿を用いて患児Xの手等の処置対象の部位を消毒する。収容室101内で酒精綿を使用すれば、当該収容室101内にエタノールが発生する。
【0021】
保育器1は、患児Xを収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器(所謂、閉鎖型保育器)である。このため、保育器1には、さらに、循環部410、供給部420、排出部430が設けられている。循環部410は、温度および湿度が調節された空気を収容室101に循環させる。供給部420は、空気を収容室101外から収容室101内に供給する。排出部430は、収容室101内の空気の少なくとも一部を収容室101外に排出する。これにより、保育器1は、患児Xを収容する収容室における温湿度が維持され、温湿度が維持できるレベルで自然吸排気を行い換気されている。なお、保育器1は温湿度に加えて、酸素濃度が調整可能であってもよい。循環部410で供給される空気の気流は、患児に影響を与えないようにその向きおよび速度等が考慮されている。
【0022】
載置台102には、保育器1の機能などを、使用者(医師、看護師等)が操作できるように操作パネル102aが設けられている。保育器1において収容室101内の空気は、循環部410によって温度および湿度が調整されている。
【0023】
保育器1は、空気を収容室101に循環させる循環部410、空気を収容室101外から収容室101内に供給可能な供給部420、収容室101内の空気の少なくとも一部を収容室101外に排出可能な排出部430が設けられている。このため、保育器1は、収容室101外の空気を収容室101内に供給して収容室101内の空気のエタノールの濃度を低下させることができる。
【0024】
<浄化装置の構成>
図1および図2に示すように、浄化装置2は、除去部3と、筐体4と、固定部5と、吸引部6と、排気部7と、を備える。除去部3は、吸引部6によって吸引した第1空気からエタノールを除去するものである。吸引部6は、例えば軸流ファンであり、第1空気を吸引する。除去部3は、単一の破砕状の活性炭(不図示)を含み、第1空気に含まれる気化されたエタノールを吸着し、第1空気からエタノールを除去する。
【0025】
破砕状の活性炭は、着脱可能な不図示のカートリッジ内に収容されている。これにより、カートリッジ内に収容された破砕状の活性炭の交換が容易である。また、破砕状の活性炭は使い捨てである。このため、カートリッジの交換は、以下のように行う。除去部3から取り出したカートリッジに収容された破砕状の活性炭は捨てて、新しい破砕状の活性炭をカートリッジに収容し、再度、カートリッジを除去部3に取り付ける。
【0026】
除去部3の下流側には、不図示のガスセンサが設けられている。ガスセンサは、活性炭によるエタノールの吸着能力の低下検出するためのセンサである。具体的には、除去部3の制御部(図示せず)は、ガスセンサによって検出されたエタノール濃度が予め設定した値(活性炭の交換要と判断するための値)以上であると判断すれば、活性炭のエタノール吸着能力が所定基準よりも低下していると判断する。つまり、制御部は、ガスセンサによって検出されたエタノール濃度から、活性炭の交換時期であることを知らせることができる。このように、制御部は、ガスセンサが検出したエタノール濃度から、活性炭の吸着状態(破過している(吸着機能を超えて吸着して、吸着対象が漏れている)状態か、あるいは十分に吸着できている状態か)を判断する。よって、ガスセンサは破過センサとして機能する。つまり、ガスセンサは、除去部内の活性炭の吸着能力の低下を検出するセンサであり、ガスセンサの検出結果に基づき、除去部内の活性炭の交換時期を知らせるようになっている。
【0027】
除去部3は、不図示の流路切替え機構を備えており、後述する第2流路22と第4流路24との流路を切り替える流路切替弁が設けられているが、流路の切替態様としては、除去部3に複数のファンを設けて制御するなど、その他の公知の構成であってもよい。
【0028】
筐体4は、例えば箱型であり、少なくとも除去部3を保持可能なものである。固定部5は、筐体4を、保育器1外に固定するためのものである。本実施形態では、固定部5は一対のL字状であり、一端側が筐体4に固定され、他端側が保育器1に固定されているが、固定態様についてはこれに限られない。
【0029】
排気部7は、例えば軸流ファンであり、除去部3によってエタノールが除去された空気(第2空気)を排気する。浄化装置2には、第1流路21と第2流路22とが異なる流路として設けられている。第1流路21は、吸引部6によって吸引された第1空気を除去部3に導く。第1流路21は、一端側が保育器1の収容室101内に接続されており、他端側が除去部3に接続されている。第2流路22は、エタノールが除去された第2空気を排気部7が排気するためのものである。第2流路22は、一端側が保育器1の収容室101内に接続されており、他端側が除去部3に接続されている。上記のように、第1流路21と第2流路22とが異なる流路として設けられていることにより、これら2つの流路を流れる空気(第1流路21を流れる第1空気、第2流路22を流れる第2空気)が混じりあうことが防止され、収容室101内のエタノールを確実に除去して空気を浄化することができる。
【0030】
浄化装置2は、さらに吸気部9を備える。吸気部9は、コンプレッサー91と、減圧弁92と、を備える。吸気部9は、コンプレッサー91により収容室101外部から空気を取り込んだ特定気体としての医療エアを、減圧弁92(減圧機構)により減圧して吸気する。減圧弁92を設けて医療エアの圧力を下げることにより、収容室内の患児に与える負担を低減できる。
【0031】
吸引部6は、第1空気とともに、吸気部9が吸気した医療エアを吸引する。これにより、患児に供給する際に減圧することが必要な医療用エア等の特定気体を、収容室101に導くことができる。また、第2空気および医療エアを収容室101内に導くことができるため、収容室101内をより確実に浄化することができる。
【0032】
浄化装置2には、さらに第3流路23と、第4流路24と、が異なる流路として設けられている。第3流路23は、吸気部9によって吸気した医療エアを除去部3に導く。
【0033】
第3流路23は、一端側が筐体4の外周面に接続されており、他端側が吸引部6を介して除去部3に接続されている。第3流路23と第1流路21とが異なる流路として浄化装置2に設けられている。これにより、第1空気と医療エアとが混じりあうことが低減される。なお、第1流路21と第3流路23とが異なる流路として設けられているが、第1流路21と、第3流路23とが流路の途中において接続される構成でもよい。
【0034】
第4流路24は、第1空気を収容室101外部に排出する。第4流路24は、一端側が除去部3に接続されており、他端側が筐体4の外面に接続されている。第4流路24は、除去部3の流路切替弁により第1流路21に接続される。
【0035】
浄化装置2は、さらに、ヒーター8を備える。保育器1と浄化装置2との温湿度差によって結露が生じることを防止できる。
【0036】
(浄化装置の駆動制御)
浄化装置2の駆動制御は、各装置に設けられた操作部(図示せず)の操作によって行う。浄化装置2は、電源のオン・オフにより内部の吸引部6および排気部7内の軸流ファンの駆動および停止を行うようになっている。この電源は、電池(1次電池、充電池等)であってもよく、外部電源であってもよく、また、外部電源と充電池との組み合わせであってもよい。通常、収容室101内で患児Xに対して処置を行う際に、処置者(医師または看護師)によって電源をオンすることで、吸引部6および排気部7の軸流ファンを駆動させる。また、浄化装置2における吸引力は、吸引部6および排気部7内の軸流ファンの回転数によって調整することができるので、除去するエタノールの濃度に応じて軸流ファンの回転数を変えることで、適切にエタノールの吸引および除去を行うことができる。
【0037】
また、浄化装置2は、それぞれ動作状況(駆動状況)を表示する機能を有している。駆動状況を表示する機能とは、運転中であるか否か、停止中であるか否か、フィルタ(除去部の活性炭)交換要か否か、トラブル発生しているか否か、バッテリー低下しているか否か等を明示的に表示することを示す。この場合、駆動状況は、表示パネルに表示してもよいし、駆動状況に応じたランプを点灯させることによって表示してもよい。これにより、処置者は、浄化装置2の作動忘れを無くすことができる。また、浄化装置2は、フィルタの交換を促す表示をすることが可能となる。
【0038】
(浄化装置の排気方向)
浄化装置2の排気方向(エタノールを除去した空気を排気する方向)は、保育器1内の空気の循環を阻害しない方向であり、且つ、患児Xに当たらない方向が好ましい。これにより、保育器1は、機能(温湿度の維持機能等)を維持し、且つ、空気が患児Xにあたることによって、患児の体温を奪ったり、不感蒸泄による水分喪失を促進させたりすることが無いため、患児Xの安全性を確保することができる。
【0039】
(浄化装置による効果)
浄化装置2は、第1空気からエタノールを除去する除去部3と、少なくとも除去部3を保持可能な筐体4と、筐体4を保育器1外に固定するための固定部5と、を備える。これにより、患児Xに対する医療行為の邪魔にならずに、収容室101内のエタノールを除去して第1空気を浄化することができる。浄化装置2が吸引部6と排気部7とを備えることにより、収容室101内のエタノールを確実に除去して第1空気を浄化することができる。
【0040】
<エタノール除去方法>
図3は、本実施形態に係るエタノール除去方法の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態に係るエタノール除去方法は、患児Xを収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室101を備えた保育器1内に設置され、収容室101内に収容された患児Xに対するエタノールによる医療行為に伴い気化したエタノールを収容室101から除去する。
【0041】
ステップ1(S1)において、浄化装置2は、収容室101内の第1空気を第1流路21に導く(ガイドステップ)。第1流路21は、本実施形態において、吸気手段を実現する構成である。
【0042】
ステップ2(S2)において、浄化装置2は、第1流路21から第1空気を吸引部6によって吸引する(吸引ステップ)。吸引部6は、本実施形態において、吸引手段を実現する構成である。
【0043】
ステップ3(S3)において、浄化装置2は、第1空気に含まれるエタノールを除去部3によって除去する(除去ステップ)。除去部3は、本実施形態において、除去手段を実現する構成である。
【0044】
ステップ(S4)において、浄化装置2は、第2空気を排気部7によって排気する(排気ステップ)。排気部7は、本実施形態において、排気手段を実現する構成である。
【0045】
上記構成によれば、収容室101内の空気を第1流路21に導くためのガイドステップを含んでいるため、吸引部6(吸引手段)によって空気を効率良く導くことができる。これにより、吸引部6を構成するファンは小型で済むため、エタノール除去方法を実現するための装置全体を小型にすることができる。
【0046】
また、排気ステップにおいて、排気部7(排気手段)による空気の排気方向は、第1流路21(吸気手段)が設けられる方向とは異なる方向であってよい。吸引部6は、第1空気を吸引し、排気部7は第2空気を排気する。このため、第1流路21に、第2空気が導かれると、第1空気を効率よく吸気することができない。従って、排気部7による空気の排気方向を、第1流路21が設けられる方向とは異なる方向にすることで、排気部7から排気される空気(エタノールが除去された空気)によって、第1流路21によるエタノールを含む空気の吸気を邪魔しないようにできる。
【0047】
〔変形例1〕
前記実施形態では、吸引部6が第1空気とともに、吸気部9が吸気した医療エアを吸引する例について説明したが、これに限られない。吸気部9から取り込まれた外部からの空気は、吸引部6を介さずに収容室101内に直接流れ込む構成であってもよい。この場合、浄化装置2において除去部3とは別のフィルタによって外部の空気を清浄状態にしてもよい。これにより、例えば除去部3の除去機能が低下している場合であっても、清浄状態の空気が収容室101内に排気されて、排出部430が収容室101内の第1空気を収容室101外に排出することができるため、収容室101内の気体からエタノールをより確実に浄化することができる。
【0048】
〔変形例2〕
前記実施形態における浄化装置2は、回復モードで駆動制御される構成でもよい。ここで、回復モードとは、除去部3に吸着したエタノールなどの揮発性物質を脱離させ、除去部3のエタノールの除去機能を回復させるモードを意味する。また、回復モードにおいて、例えば吸引部6の軸流ファンの回転方向を逆回転させ、排気部7の軸流ファンの回転方向を逆回転させることによって、空気の流れを逆にしても良い。
【0049】
また後述のように除去部3の上流側(例えば除去部3と吸引部6との間)に第4流路24を設けることで、逆回転させた際に脱離した揮発性物質を効率的に収容室101の外部に排出することができる。
【0050】
また、除去部3の下流側(例えば除去部3と排気部7との間)に外気を取り込む流路を設けて、当該流路から外気を取り込んで、除去部3を通して除去部3のエタノールを脱離させ、第4流路24から排出するようにしてもよい。これにより、効率的に除去部3のエタノールを脱離することができる。
【0051】
〔変形例3〕
前記実施形態では、第1流路21と第2流路22とが異なる流路として設けられている例について説明したが、第1流路21および第2流路22の一部が共通となっていてもよい。図4は、図1に示す浄化装置2の変形例の概略構成を示す図である。図4に示すように、第1流路21および第2流路22は、保育器1の収容室101内に接続されている一端側が共通となっている。浄化装置2と保育器1の収容室101内とを1箇所で接続できるため、保育器1において簡略化した構成とすることができる。
【0052】
〔変形例4〕
前記実施形態では、除去部3が第1空気からエタノールを除去する例について説明したが、これに限られない。例えば、除去部3は、さらに医療エアまたは収容室101内の空気に含まれるエタノールを除去してもよい。これにより、浄化装置2は、第1空気以外の気体を浄化することができるため、収容室101内の気体からエタノールをより確実に浄化することができる。
【0053】
〔変形例5〕
前記実施形態では、浄化装置2は、循環部410とは別に設けられている例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、浄化装置2が備える除去部3は、循環部410において第1空気を収容室101に循環させる流路に設けられていても良い。この場合、循環部410内の循環手段(軸流ファン、ポンプなど)が吸引部6および排気部7として機能し、循環部410において除去部3の上流側の流路が第1流路21として機能し、除去部3の下流側の流路が第2流路22として機能する。以上のように、浄化装置2と循環部410とを一体的に設けることにより、浄化装置2と循環部410とで形成される空間を低減できる。
【0054】
〔変形例6〕
前記実施形態では、排気部7が第2流路22を介して第2空気を排気する例について説明したが、これに限られない。除去部3において流路切替弁によって、第1流路21を流れる空気が、第2流路22ではなく第4流路24に流れる方向に切り替えられている場合には、吸引部6が排気部7としての機能も備える。このようにして、除去部3が第4流路24を介して第2空気を排気することも可能である。これにより、例えば除去部3における活性炭の機能が低下している場合であっても、第2空気とともに第1空気を保育器1の外部に排気できるため、第1空気からエタノールを確実に浄化することができる。
【0055】
また、除去部3において流路切替弁によって、第1流路21を流れる空気が、第2流路22ではなく第4流路24に流れる方向に切り替えられている場合には、第4流路24を介して第1空気を排気すればよいため、除去部3を設けなくていなくてもよい。この場合、浄化装置2は、第4流路24を介して第1空気を保育器1の外部に排気することによって、第1空気からエタノールを除去する。
【0056】
また、第4流路24が除去部3の上流側(例えば、第4流路24が吸引部6と除去部3との間)に設けられる場合、浄化装置2が除去部3を備えつつ、第1空気を外部に効率的に排気することができる。
【0057】
〔変形例7〕
前記実施形態では、浄化装置2が筐体4とは別に固定部5を備えている例について説明したが、これに限られない。例えば筐体4が地面上に設置されることで固定される場合、筐体4の底面が固定部5としての機能を有していても良い。
【0058】
〔変形例8〕
前記実施形態では、浄化装置2が吸引部6とは別に排気部7を備える例について説明したが、浄化装置2が吸引部6および排気部7のうち1つを備えてもよい。浄化装置2が吸引部6を備えておらず排気部7を備えている場合、排気部7が吸引部6としての機能も有する。浄化装置2が排気部7を備えておらず吸引部6を備えている場合、吸引部6が排気部7としての機能も有する。従って、浄化装置2の構成要素を低減して部品点数を減らすことができ、製造上のコストを低減できる。
【0059】
〔変形例9〕
前記実施形態では、特定気体として医療エアを用いる例について説明したが、NICU(新生児集中治療室)内の空気、またはタンク内に補充されている酸素ガスを使用してもよい。酸素ガスを使用する場合、吸気部9はコンプレッサー91を備える必要はない。
【0060】
〔変形例10〕
前記実施形態では、除去部3は、単一の破砕状の活性炭(不図示)を含む例について説明したが、これに限定されるものではなく、活性炭は2つ以上であってもよい。例えば、除去部3は、シート状の活性炭およびペレット状の活性炭を含んでいてもよい。シート状の活性炭は、吸引部6から吸気された第1空気に含まれるエタノールの大部分を素早く吸着する。従って、シート状の活性炭は、第1空気に含まれるエタノールの量が少なければ、全てのエタノールを吸着することになる。ペレット状の活性炭は、吸引部6によって吸引された第1空気に含まれるエタノールをゆっくり確実に吸着する。除去部3によってエタノールが吸着された第2空気は、除去部3から第2流路22を介して収容室101内に排気される。
【0061】
以上のように、シート状の活性炭を吸着材として用いることで、高濃度のエタノールを素早く大量に吸着し、ペレット状の活性炭を吸着材として用いることで、シート状の活性炭によって吸着しきれていないエタノールをゆっくり吸着する。
【0062】
従って、筐体4の吸引部6から吸気された空気は、シート状の活性炭によって素早く大量にエタノールが吸着され、さらに、ペレット状の活性炭によってエタノールがもれなく吸着されるので、吸引部6から吸気された空気中のエタノールを十分に除去することができる。
【0063】
〔変形例11〕
前記実施形態の除去部において使用する吸着材として、破砕状の活性炭を用いる例について説明したが、これに限定されず、シート状の活性炭、およびペレット状の活性剤等の他の吸着材を使用してもよい。
【0064】
さらに、除去部3においてエタノールの吸着と分解を両方行って除去するようにしてもよい。例えば、シート状の活性炭とペレット状の活性炭のそれぞれに、吸着材と触媒を備え、一つの除去部内で吸着材によるエタノールの吸着と触媒によるエタノールの分解を行うようにしてもよい。あるいは、シート状の活性炭が触媒によってエタノールを分解し、ペレット状の活性炭が吸着材によってエタノールを吸着してもよいし、シート状の活性炭が吸着材によってエタノールを吸着し、ペレット状の活性炭が触媒によってエタノールを分解してもよい。なお、シート状の活性炭とペレット状の活性炭とにおいて使用される吸着材、または触媒は、シート状の活性炭とペレット状の活性炭とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
また、シート状の活性炭およびペレット状の活性炭は、吸着や分解する対象が異なっていてもよい。例えば、除去部3は、エタノール以外の揮発性物質を吸着または分解し、ペレット状の活性炭は、エタノールを吸着または分解するようにしてもよく、あるいは、シート状の活性炭は、エタノールを吸着または分解し、ペレット状の活性炭は、エタノール以外の揮発性物質を吸着または分解するようにしてもよい。
【0066】
〔変形例12〕
前記実施形態の浄化装置2では、電源のオン・オフによって駆動制御を行っていたが、これに限定されるものではない。例えば、収容室101内にエタノールの濃度を検知する濃度センサを設置し、濃度センサの検知信号に基づき、浄化装置2の駆動制御を行うようにしてもよい。例えば、濃度センサの検知信号が示すエタノールの濃度が、所定濃度以上になったときに、浄化装置2の吸引部6および排気部7の駆動を開始させ、所定濃度よりも下がれば、浄化装置2の吸引部6および排気部7の駆動を停止させるようにしてもよい。さらに、浄化装置2が駆動している間、濃度センサの検知信号が示すエタノールの濃度が所定濃度よりもさらに上昇したことを示せば、吸引部6および排気部7内の軸流ファンの回転数を上げるようにして、吸引力を上げて収容室101内のエタノールをより積極的に吸引するようにしてもよい。これにより、迅速にエタノールを吸引して除去することができる。
【0067】
〔変形例13〕
前記実施形態では、浄化装置2は、風速を検出するセンサ(以下、風速センサと称する)を設けてもよい。この場合、浄化装置2における制御部は、風速センサによって検出された風速に応じて、吸引部6および排気部7の軸流ファンを回転させるモータの駆動を制御する。制御部は、例えば、風速センサが所定範囲内の風速を検知すれば、吸引部6および排気部7の軸流ファンの回転数を一定に保つようにモータを制御する。制御部は、例えば、風速センサが所定範囲を超えて一定の風速よりも速い風速であると検知すれば、吸引部6および排気部7の軸流ファンの回転数を下げるようにモータを制御し、一定の風速よりも遅い風速であると検知すれば、吸引部6および排気部7の軸流ファンの回転数を上げるようにモータを制御する。これにより、浄化装置2は、特に、吸引部6および排気部7の軸流ファンを回転させるモータが過剰に作動することで、保育器1内の環境に影響することを防ぐことができる。このように、浄化装置2は、風速センサを備えることで、吸気側の風速を常に監視することが可能となる。この結果、浄化装置2は、自身に対して、適量の空気を吸引させることが可能となる。
【0068】
〔変形例14〕
前記実施形態では、浄化装置2の駆動制御を、各装置に設けられた操作部の操作によって行う例について説明したが、保育器1が備える操作パネル102aの操作によって行われるようにしてもよい。
【0069】
〔変形例15〕
前記実施形態では、浄化装置2において、第2流路22から排気される第2空気の流量を検知する流量センサが設けられてもよい。浄化装置2の制御部は、流量センサによって検知された流量が所定範囲内の流量であれば、排気部7の軸流ファンの動作は正常であると判定し、流量センサによって検知された流量が所定範囲を超えた流量であれば、除去機能に異常があると判定する。この場合の除去機能に異常があるとは、排気部7の軸流ファンの動作が正常でない場合、あるいは、第2流路22から第2空気が排気できない場合を示す。第2空気が排気できない場合とは、排気部7がフィルタの目詰まり、あるいは異物によって詰まった状態が考えられる。そして、浄化装置2は、除去機能に異常があると判定した場合、除去機能が異常であることを処置者に報知する。これにより、エタノールが除去できない状態で、浄化装置2を使用し続けることがない。よって、流速センサが設けられた浄化装置2は、安全管理上好ましい装置といえる。なお、浄化装置2において、流量センサは、第1流路21から吸引される第1空気の流量を検知する流量センサが設けられてもよい。この場合、浄化装置2の制御部は、吸引部6の軸流ファンの動作は正常および異常を判定することができる。
【0070】
〔変形例16〕
前記実施形態では、供給部420が空気を供給する例について説明したが、これに限られない。供給部420は、空気を供給する以外、例えば保育器1外の空気(例えば保育器1が設置されたNICU(新生児集中治療室)内の空気)を供給してもよい。この場合には、NICU内の空気の供給時に活性炭やフィルタなどを通すことで、清浄な空気にして保育器1内に供給することができる。
【0071】
〔変形例17〕
さらに、供給部420は、空気と、NICU内の空気とを切替えて保育器1内に供給するようにしてもよい。この場合には、上述したフィルタなどでNICU内の空気を清浄空気にすること以外に、保育器1外(NICU内)のエタノール濃度を検知するセンサを設け、当該センサの検出結果に応じて、空気と、NICU内の空気とのどちらから供給するかを判断してもよい。さらに、保育器1内のエタノール濃度を検知するセンサを設け、当該センサの検出結果と、保育器1外(NICU内)のエタノール濃度を検知するセンサの検出結果とに応じて、空気と、NICU内の空気のどちらから供給するかを切り替えてもよい。例えば、供給部420は、2つのセンサの検出結果から、保育器1内のエタノール濃度より、NICU内のエタノール濃度が低いと判断すれば、供給部420はNICUの空気を保育器1内に供給し、NICU内のエタノール濃度が高と判断すれば、空気を保育器1内に供給する。
【0072】
浄化装置2には、単一の破砕状の活性炭が破過状態であるか否かを検知する破過センサ(ガスセンサ)が設けられていてもよい。上記構成によれば、破過センサ(ガスセンサ)が設けられていることで、単一の破砕状の活性炭の破過状態を把握することができるため、単一の破砕状の活性炭の状態を把握することができる。
【0073】
単一の破砕状の活性炭は、交換可能であってもよい。上記構成によれば、単一の破砕状の活性炭が交換可能であるため、単一の破砕状の活性炭が破過状態であれば、直ぐに交換することができる。
【0074】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 保育器、2 浄化装置、3 除去部、4 筐体、5 固定部、6 吸引部、7 排気部、8 ヒーター、9 吸気部、11 ベッド、11a 表面、12 衝立部、13 ベッドステージ、21 第1流路、22 第2流路、23 第3流路、24 第4流路、91 減圧弁、92 コンプレッサー、101 収容室、101a 開口部、102 載置台、102a 操作パネル、410 循環部、420 供給部、430 排出部、X 患児(処置対象)
図1
図2
図3
図4