(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120632
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、計測システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/347 20210101AFI20240829BHJP
A61B 5/243 20210101ALI20240829BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/347
A61B5/243
A61B5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027555
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 雅文
(72)【発明者】
【氏名】悪七 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】関原 謙介
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA10
4C127CC01
4C127FF03
4C127GG11
(57)【要約】
【課題】複数の参照センサが用いられる場合に、所望の信号の計測結果からノイズを除去する精度を高くすることができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得部と、時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得部により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理部と、を備える情報処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得部と、
時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得部により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記区間として、それぞれ同一の区間長を有し、隣接する2個の前記区間で前記区間長の1/2が重複する区間を用いる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記区間は、前記参照センサの数および信号処理対象の信号データ長に基づいて決定され、
前記信号データ長が一定である場合には、前記参照センサの数が多いほど前記区間の長さが短い、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、共分散行列を用いた演算により前記信号処理を行い、
前記共分散行列を正則化する際に正則化の程度を調整する正則化パラメータは、前記参照センサの数および前記区間に基づいて決定される、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
少なくとも1個の前記参照センサと、少なくとも1個の前記信号センサとは、同種類のセンサである、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
少なくとも1個の前記参照センサと、少なくとも1個の前記信号センサとは、異種類のセンサである、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置と、
前記信号センサと、
前記参照センサと、
を備える計測システム。
【請求項8】
目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得機能と、
時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得機能により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理機能と、
をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、計測システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の計測で良好な解析結果を得るためには、所望の信号に重畳する各種の環境ノイズの除去が必要である。
一般的に、環境ノイズを除去する手法として、所望の信号を計測するための信号センサとは別に参照センサを用意し、当該参照センサによって取得したデータについて時系列にフィルタリング処理する手法が用いられる。
環境ノイズの種類が多い場合には、それに対応して参照センサを増やす必要がある。
【0003】
特許文献1に記載された磁界計測装置では、磁気シールドルームと、当該磁気シールドルームの内部に配置される磁気センサと、当該磁気シールドルームの外部に配置される参照用磁気センサと、当該磁気センサからの磁界時系列データおよび当該参照用磁気センサからの環境磁界時系列データが入力される演算装置とを有し、当該演算装置は、当該磁界時系列データに含まれる環境磁界の大きさを、当該磁界時系列データと当該環境磁界時系列データから求めた推定環境磁界時系列データとの所定の評価関数を最小とするように求め、かつ、当該推定環境磁界時系列データを求めるにあたり、当該環境磁界時系列データに対して当該磁気シールドルームの周波数ごとの磁界低減効果を適用する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、複数の参照センサが用いられる場合に、所望の信号の計測結果からノイズを除去する精度が不十分な場合があった。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の参照センサが用いられる場合に、所望の信号の計測結果からノイズを除去する精度を高くすることができる情報処理装置、計測システムおよびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得部と、時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得部により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理部と、を備える情報処理装置である。
【0008】
一態様は、前記情報処理装置と、前記信号センサと、前記参照センサと、を備える計測システムである。
【0009】
一態様は、目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得機能と、時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得機能により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理機能と、をコンピューターに実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、情報処理装置、計測システムおよびプログラムにおいて、複数の参照センサが用いられる場合に、所望の信号の計測結果からノイズを除去する精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置を含む計測システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置の概略的な構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る区間分割の一例を示す図である。
【
図4A】実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
【
図4B】実施形態に係るM=1の場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図4C】実施形態に係るM=2の場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図4D】実施形態に係るM=4の場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図4E】実施形態に係るM=8の場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図4F】実施形態に係るM=20の場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図4G】実施形態に係る元信号の信号波形の一例を示す図である。
【
図4H】実施形態に係る元信号の信号波形の一例を示す図である。
【
図5A】実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
【
図5B】実施形態に係るTw=1kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図5C】実施形態に係るTw=6kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図5D】実施形態に係るTw=10kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図5E】実施形態に係るTw=20kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図5F】実施形態に係るTw=40kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6A】実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
【
図6B】実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=1kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6C】実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=10kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6D】実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=20kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6E】実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=40kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6F】実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=1kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6G】実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=10kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6H】実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=20kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6I】実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=40kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6J】実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=1kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6K】実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=10kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6L】実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=20kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6M】実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=40kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6N】実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=1kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6O】実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=10kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6P】実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=20kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図6Q】実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=40kの場合の信号波形の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る雑音密度での環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る情報処理装置において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る情報処理装置において行われる処理の手順の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態について説明する。
【0013】
[計測システム]
図1は、実施形態に係る情報処理装置21を含む計測システム1の概略的な構成を示す図である。
図1には、説明の便宜上、三次元直交座標系であるXYZ直交座標系を示してある。
計測システム1は、複数であるL個の信号センサA1~ALと、複数であるM個の参照センサB1~BMと、情報処理装置21と、を備える。
図1の例では、信号センサA1~ALが配置された領域を模式的に信号センサ配置部11として示してある。
【0014】
ここで、本実施形態では、一例として、L=16、M=20である場合について説明する。
なお、信号センサA1~ALの数は、2以上の任意の数であってもよい。また、本実施形態では、信号センサA1~ALの数が複数である場合を示すが、信号センサの数は1個であってもよい。
また、参照センサB1~BMの数は、2以上の任意の数であってもよい。
【0015】
図1には、測定対象31も示してある。
ここで、測定対象31は、例えば、計測システム1に含まれないが、他の例として、計測システム1に含まれると捉えられてもよい。
測定対象31としては、任意の対象が用いられてもよく、例えば、生体の全体または一部が用いられてもよい。具体例として、測定対象31として、人間の心臓、または、人間の脳、などが用いられてもよい。
【0016】
なお、複数の信号センサA1~ALが存在する場合、例えば、これら複数の信号センサA1~ALを一体に含む装置(例えば、計測装置など)が構成されてもよい。
また、複数の参照センサB1~BMが存在する場合、例えば、これら複数の参照センサB1~BMを一体に含む装置(例えば、ノイズ計測装置など)が構成されてもよい。
また、他の例として、信号センサA1~ALと参照センサB1~BMとの両方を一体に含む装置(例えば、計測装置など)が構成されてもよい。
【0017】
<信号センサの配置>
図1の例では、信号センサ配置部11は、XY平面に平行な正方形の面状の領域である。
図1の例では、信号センサ配置部11の内部に、当該正方形の1個の辺に平行な方向(X軸に平行な方向)に等間隔で、かつ、当該方向に対して垂直な方向(Y軸に平行な方向)に等間隔で、16個の信号センサA1~A16が配置されている。
具体的には、4個の信号センサA1~A4がY軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA5~A8がY軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA9~A12がY軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA13~A16がY軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
また、4個の信号センサA1、A5、A9、A13がX軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA2、A6、A10、A14がX軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA3、A7、A11、A15がX軸に平行な方向に等間隔で配置されており、4個の信号センサA4、A8、A12、A16がX軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
図1の例では、X軸に平行な方向における等間隔と、Y軸に平行な方向における等間隔とは、同じ間隔である。
図1の例では、複数の信号センサA1~ALがアレイ状に配置されている。
【0018】
ここで、信号センサA1~ALの配置(全体的な配置)の態様としては、特に限定はなく、他の態様が用いられてもよい。
また、各信号センサA1~ALの配置(例えば、位置、方向)としては、特に限定はなく、様々な態様が用いられてもよい。例えば、
図1の例では、各信号センサA1~ALの方向を同じに示してあるが、それぞれの信号センサA1~ALの方向は任意であってもよい。
なお、信号センサという名称は、説明のための名称であり、例えば、計測センサ、または、(単に)センサなど、他の名称で呼ばれてもよい。
【0019】
<測定対象の配置>
図1の例では、Z軸に平行な位置のずれを無視してXY平面に投影した場合に、信号センサ配置部11の中心(または、その付近)に、測定対象31が配置されている。
ここで、測定対象31と信号センサA1~ALとの配置関係の態様としては、特に限定はなく、他の態様が用いられてもよい。
【0020】
<目的信号>
それぞれの信号センサA1~ALは、測定対象31に起因する所望の信号(説明の便宜上、目的信号とも呼ぶ。)を計測(検出)の対象とする。この際、当該目的信号にノイズが重畳される。このため、それぞれの信号センサA1~ALは、当該目的信号と当該ノイズとが混在する信号(説明の便宜上、混在信号とも呼ぶ。)を計測(検出)する。そして、それぞれの信号センサA1~ALは、その計測結果(説明の便宜上、信号計測結果とも呼ぶ。)を得る。
【0021】
目的信号としては、任意の物理量の信号が用いられてもよく、例えば、磁気、電流、電圧、音、光、などの信号が用いられてもよい。
また、目的信号としては、例えば、生体に起因する信号(生体信号)が用いられてもよく、あるいは、生体以外の物体に起因する信号が用いられてもよい。
具体例として、測定対象31が人間の心臓である場合に、目的信号として、磁気の信号(心磁図の信号)、または、電気の信号(心電図の信号)が用いられてもよい。他の具体例として、測定対象31が人間の脳である場合に、目的信号として、磁気の信号が用いられてもよい。
【0022】
<参照センサの配置>
図1の例では、参照センサB1~B20は、信号センサ配置部11の周囲を囲むように配置されている。
具体的には、信号センサ配置部11に対してX軸に平行な方向の負側に、6個の参照センサB1~B6がY軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
また、信号センサ配置部11に対してY軸に平行な方向の正側に、6個の信号センサB6~B11がX軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
また、信号センサ配置部11に対してX軸に平行な方向の正側に、6個の信号センサB11~B16がY軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
また、信号センサ配置部11に対してY軸に平行な方向の負側に、6個の信号センサB16~B20、B1がX軸に平行な方向に等間隔で配置されている。
図1の例では、X軸に平行な方向における等間隔と、Y軸に平行な方向における等間隔とは、同じ間隔である。
図1の例では、信号センサA1~ALの周辺に、複数の参照センサB1~BMが配置されている。
【0023】
図1の例では、Y軸に平行な4個の参照センサB2~B5は、それぞれ、Y軸に平行な4個の信号センサA1~A4のそれぞれと、Y軸の同じ位置に配置されている。
同様に、Y軸に平行な4個の参照センサB12~B15は、それぞれ、Y軸に平行な4個の信号センサA4、A3、A2、A1のそれぞれと、Y軸の同じ位置に配置されている。
また、
図1の例では、X軸に平行な4個の参照センサB7~B10は、それぞれ、X軸に平行な4個の信号センサA1、A5、A9、A13のそれぞれと、X軸の同じ位置に配置されている。
同様に、X軸に平行な4個の参照センサB17~B20は、それぞれ、X軸に平行な4個の信号センサA13、A9、A5、A1のそれぞれと、X軸の同じ位置に配置されている。
【0024】
ここで、複数の参照センサB1~BMの配置(全体的な配置)の態様としては、特に限定はなく、他の態様が用いられてもよい。
また、各参照センサB1~BMの配置(例えば、位置、方向)としては、特に限定はなく、様々な態様が用いられてもよい。例えば、
図1の例では、各参照センサB1~BMの方向を同じに示してあるが、それぞれの参照センサB1~BMの方向は任意であってもよい。
なお、参照センサという名称は、説明のための名称であり、例えば、ノイズセンサ、または、(単に)センサなど、他の名称で呼ばれてもよい。
【0025】
<ノイズ>
それぞれの参照センサB1~BMは、目的信号に重畳するノイズ(ノイズの信号)を計測(検出)する。そして、それぞれの参照センサB1~BMは、その計測結果(説明の便宜上、ノイズ計測結果とも呼ぶ。)を得る。
なお、本実施形態では、それぞれの参照センサB1~BMは、目的信号の成分を計測せずに、ノイズを計測する場合について説明するが、他の例として、実用上で支障のない程度で、それぞれの参照センサB1~BMがノイズを計測した結果に目的信号の成分が含まれる構成が用いられてもよい。
【0026】
ここで、ノイズは、例えば、目的信号以外の信号(妨害信号)によるノイズであり、例えば、環境ノイズなどと呼ばれてもよい。
具体例として、目的信号が磁気の信号である場合に、ノイズが地磁気の信号であってもよい。また、この場合に、ノイズは、計測対象以外の人または他の物体(例えば、電車等)に起因する磁気の信号であってもよい。
また、具体例として、目的信号が電気の信号である場合に、ノイズが測定対象31の付近の他の回路等から発せられる電気ノイズであってもよい。
なお、電気信号と磁気信号とは、例えば、まとめて電磁気の信号(電磁波)として扱われてもよい。
【0027】
<信号センサの種類および参照センサの種類>
複数の信号センサA1~ALが用いられる場合、例えば、すべてが同じ種類のセンサ(同じ物理量を計測するセンサ)であってもよく、あるいは、異なる種類のセンサ(異なる物理量を計測するセンサ)が含まれてもよい。
複数の参照センサB1~BMが用いられる場合、例えば、すべてが同じ種類のセンサ(同じ物理量を計測するセンサ)であってもよく、あるいは、異なる種類のセンサ(異なる物理量を計測するセンサ)が含まれてもよい。
【0028】
また、各参照センサB1~BMとしては、例えば、いずれかの信号センサA1~ALと同じ種類のセンサが用いられてもよく、あるいは、信号センサA1~ALとは異なる種類のセンサが用いられてもよい。
具体例として、信号センサA1~ALとして磁気センサが用いられる場合に、参照センサB1~BMとして磁気センサが用いられてもよく、あるいは、参照センサB1~BMとして磁気センサと加速度センサとの組み合わせが用いられてもよい。
【0029】
<情報処理装置と各センサとの接続>
図1の例では、それぞれの信号センサA1~ALと情報処理装置21とは、有線または無線により、通信可能に接続される。そして、情報処理装置21は、それぞれの信号センサA1~ALによる計測結果(検出結果)を取得することが可能である。
また、それぞれの参照センサB1~BMと情報処理装置21とは、有線または無線により、通信可能に接続される。そして、情報処理装置21は、それぞれの参照センサB1~BMによる計測結果(検出結果)を取得することが可能である。
なお、
図1の例では、情報処理装置21と各センサ(信号センサA1~AL、参照センサB1~BM)との接続の詳細については、図示を省略している。
【0030】
ここで、本実施形態では、情報処理装置21は、各センサ(信号センサA1~AL、参照センサB1~BM)と通信することで、各センサによる計測結果を取得する場合を示すが、他の例として、各センサによる計測結果が可搬型の記憶媒体にいったん記憶された後に、当該記憶媒体から情報処理装置21に当該計測結果が出力されることで、情報処理装置21が当該計測結果を取得する構成が用いられてもよい。
【0031】
<情報処理装置>
図2は、実施形態に係る情報処理装置21の概略的な構成を示す図である。
情報処理装置21は、入力部111と、出力部112と、記憶部113と、制御部114と、を備える。
入力部111は、取得部131を備える。
出力部112は、表示部141を備える。
制御部114は、信号処理部151と、表示制御部152と、を備える。
信号処理部151は、区間分割部171と、周波数領域分割部172と、係数演算部173と、を備える。
【0032】
入力部111は、外部からの入力を行う。
本実施形態では、入力部111は、各センサ(信号センサA1~AL、参照センサB1~BM)から出力された信号(計測結果の信号)を入力する。具体例として、入力部111は、各センサ(信号センサA1~AL、参照センサB1~BM)から送信される信号を受信することで当該信号を入力してもよく、あるいは、可搬型の記憶装置に記憶された信号を当該記憶装置から入力してもよい。
また、入力部111は、例えば、ユーザによって操作される操作部を有していてもよく、当該操作部に対してユーザによって行われた操作の内容に応じた情報を入力してもよい。
【0033】
取得部131は、入力部111によって入力された信号を取得する。
取得部131は、取得した信号を記憶部113に記憶してもよい。
ここで、入力部111により入力される信号がアナログ信号である場合、例えば、取得部131は、A/D(Analog to Digital)変換機能を備えて、当該信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換してもよい。
また、情報処理装置21がリアルタイムの処理に適用される場合には、取得部131は、リアルタイムで信号を取得する。なお、情報処理装置21がリアルタイムの処理に適用されない場合においても、取得部131はリアルタイムで信号を取得してもよい。
【0034】
ここで、本実施形態では、取得部131が、それぞれの信号センサA1~ALによって計測された信号を取得する機能と、それぞれの参照センサB1~BMによって計測された信号を取得する機能と、を有する場合を示すが、他の例として、これらの機能が別々に備えられてもよい。
【0035】
出力部112は、外部への出力を行う。
表示部141は、信号処理結果に関する情報を表示出力する。
表示部141は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの画面を有しており、信号処理結果に関する情報を当該画面に表示出力する。他の構成例として、表示部141は、信号処理結果に関する情報を用紙に印刷出力してもよい。
なお、出力部112は、音声出力などのように、他の態様で出力を行う機能を有していてもよい。
【0036】
記憶部113は、例えば、メモリなどの記憶装置を有しており、情報を記憶する。
記憶部113は、例えば、入力された信号、および、当該信号の処理結果などの情報を記憶する。
また、記憶部113は、例えば、制御プログラムなどの情報を記憶する。
【0037】
制御部114は、各種の処理および各種の制御を行う。
本実施形態では、制御部114は、CPU(Central Processing
Unit)などのプロセッサーを有しており、当該プロセッサーが記憶部113に記憶された制御プログラムを実行することで、各種の処理および各種の制御を行う。
なお、プロセッサーは、各種の演算を行う演算装置を備える。
【0038】
信号処理部151は、信号センサA1~ALによる計測結果の信号、および、参照センサB1~BMによる計測結果の信号に基づいて、所定の処理を行う。本実施形態では、当該所定の処理は、目的信号とノイズとの混在信号から当該ノイズを除去する処理である。
ここで、当該混在信号から当該ノイズを除去する程度としては、実用上で有効な程度で、任意な程度が用いられてもよい。つまり、当該混在信号から当該ノイズの成分を完全に除去する態様が用いられてもよく、あるいは、当該混在信号から当該ノイズの成分を必要な程度で除去する態様が用いられてもよい。
【0039】
信号処理部151は、信号処理を行う際に、区間分割部171の機能、周波数領域分割部172の機能、および、係数演算部173の機能を使用することが可能である。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、信号処理部151の機能として、区間分割部171の機能、周波数領域分割部172の機能、および、係数演算部173の機能を示すが、必ずしもこれらの機能は明確に区別されなくてもよく、これらの機能は信号処理部の機能として区別されずに一体化されていてもよい。
【0040】
区間分割部171は、時間の期間を所定の区間に分割する。
ここで、区間の数、または、区間の長さ(区間長)などとしては、様々な態様が用いられてもよい。
なお、時間の長さは、例えば、信号データのサンプル数に基づいて計数等されてもよい。
【0041】
周波数領域分割部172は、時系列の信号を周波数領域ごとの信号に分割する。
周波数領域分割部172は、例えば、フーリエ変換の機能を有していてもよい。当該機能は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)の機能であってもよい。
本実施形態では、すべての信号センサA1~ALの計測結果の信号、および、すべての参照センサB1~BMの計測結果の信号について、周波数解析が行われる。
【0042】
係数演算部173は、所定の係数を演算する。本実施形態では、当該係数は、ノイズ除去のための係数である。
表示制御部152は、各種の情報を表示部141の画面に表示出力する。
【0043】
[信号処理の具体例]
本実施形態では、信号処理部151は、時間的な複数の区間のそれぞれごとに、複数の周波数領域のそれぞれごとに分析を行う。当該分析では、例えば、環境ノイズを除去する手法であるアダプティブノイズキャンセリング(ANC:Adaptive Noise Canceling)の手法が用いられてもよい。
なお、通常、ANCの手法は、時間的な複数の区間が用いられずに、時系列の全体で実行される。
【0044】
1以上の信号センサA1~ALによって得られる計測結果の信号データをy(f)で表す。信号データy(f)は、例えば、当該計測結果にFFTが行われた結果である。
本実施形態では、fは周波数成分を表し、(f)はfの関数であることを表す。
ここで、信号データy(f)は、例えば、1個の信号センサAj(j=1~L)による計測結果の信号データであってもよく、あるいは、2個以上の信号センサAjのそれぞれによる計測結果に所定の演算を行った結果の信号データであってもよい。当該所定の演算としては、例えば、平均化などの演算が用いられてもよい。
【0045】
i(i=1~M)番目の参照センサBiによる計測結果の信号データをxi(f)で表す。信号データxi(f)は、例えば、当該計測結果にFFTが行われた結果である。
この場合、信号データy(f)からノイズを除去した結果の信号データv(f)は、式(1)により表される。
ここで、w1~wMは重み付けのためのフィルタ係数であり、M個のフィルタ係数を構成要素とするベクトルをベクトルwで表す。
【0046】
【0047】
式(1)は、式(2)を計算することで得られる。
なお、式(2)において、Σyxは、一般的な計算により得られる。また、Σxx-1は、参照センサB1~BMによる計測結果の共分散行列Σxxの逆行列である。
【0048】
【0049】
共分散行列Σxxの計算について説明する。
複数の参照センサB1~BMの計測結果を式(3)で示されるベクトルx(f)で表す。
【0050】
【0051】
共分散行列Σxxは、式(4)により計算される。*は共役転置を表す。
【0052】
【0053】
ここで、Nは、信号データを複数の区間に分割する際の分割数(区間の総数)を表す。
それぞれの区間ごとにベクトルx(f)が存在し、N個の区間について総じてN個のベクトルx(f)が存在する。
安定した値を得るためには Nをある程度の大きさとすることが必要である。Nは、フィルタ係数のベクトルwの計算精度に影響する。
共分散行列Σxxの逆行列Σxx-1を安定に計算するためには、一般的に、N>3M~10M程度が必要とされる。
【0054】
本実施形態では、Nによる演算結果の安定化のために、式(5)で表される正則化が行われる。正則化により、例えば、過剰な推定が防止され得る。
ここで、γは正則化パラメータを表しており、λは固有値を表しており、Iは単位行列を表している。
【0055】
【0056】
<区間分割>
図3は、実施形態に係る区間分割の一例を示す図である。
図3には、横軸として、時間(t)を表す軸を示してある。
また、
図3には、時系列信号の信号データ211の一例を示してある。
図3の例では、当該時系列信号が正弦波である場合を示しているが、これに限られない。
図3の例では、信号処理対象とする信号データ211の全体の長さを期間Tで表している。
ここで、信号データ211は、信号センサA1~ALによる計測結果から得られる信号のデータである。信号データ211の長さ(信号データ長)は、当該計測結果の期間(時間の長さ)に対応する。なお、本実施形態では、信号データ211のサンプリング周期は、所定の周期(例えば、一定の周期)である。
また、期間Tが複数に分割された区間の総数はNである。
【0057】
N個の区間をr(r=1~N)番目の区間で表す。
図3の例では、r=1の区間からr=Nの区間まで、順に、早い時間から遅い時間に向かって並んでいる。
本実施形態では、すべての区間は、同じ長さ(区間長)を有する。当該区間長をTwで表している。
また、
図3の例では、隣り合う2個の区間であるr番目の区間と(r+1)番目の区間とが、区間長の1/2(つまり、Tw/2)だけ重複している。
ここで、分割区間の総数Nは、全体の期間Tおよび区間長Twを用いて、概算として式(6)のように表される。
【0058】
【0059】
このように、本実施形態では、トータルデータ長Tの信号を区間長Twの区間で分割し、各区間に含まれるデータでN個のx(f)を計算することで、共分散行列Σxxを計算することができ、これより、ノイズ除去結果が計算される。
例えば、各種の環境ノイズに対応できるように参照センサB1~BMの数を増やす必要があるが、本実施形態の手法では、データ分割の区間長Twを変化させることで、Nを最適な範囲に設定して対応することが可能である。
【0060】
ここで、本実施形態では、隣り合う2個の区間が区間長の1/2だけ重複する場合を示すが、重複の程度は任意であってもよく、例えば、隣り合う2個の区間が、重複せずに、接するような態様が用いられてもよい。なお、隣り合う2個の区間が重複する場合には、信号データの取りこぼしの可能性を防ぐことができる。
また、本実施形態では、すべての区間が同じ区間長を有する場合を示すが、複数の区間のなかに、区間長が異なる区間が含まれていてもよい。
【0061】
[各種設定の例]
図4A~
図4H、
図5A~
図5F、
図6A~
図6Q、および、
図7を参照して、各種設定の例を示す。
なお、これらの図に示される各グラフは、それぞれの設定に関する傾向を示すものであり、必ずしも厳密なものではない。
【0062】
<参照センサの数に関する設定の例>
図4A~
図4Hを参照して、参照センサの数に関する設定の例を示す。
トータルデータ長T=600k(kは、×1000を表す。)、5kサンプリングで120秒の計測結果を例とする。
また、データ分割区間の区間長Tw=10k、正則化パラメータγ=1e
-3の条件が用いられる場合を例とする。
本実施形態では、参照センサB1~BMの数Mを1、2、4、8、20で変化させた場合を例示する。
【0063】
図4Aは、実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
図4Aの例では、本実施形態における周波数領域分割手法のANCが用いられた場合を示してある。
図4Aに示されるグラフにおいて、横軸は周波数[Hz]を表しており、縦軸はパワースペクトラムの強度を表している。
当該グラフに、元信号のパワースペクトラム2011と、M=1の場合のパワースペクトラム2021と、M=2の場合のパワースペクトラム2022と、M=4の場合のパワースペクトラム2023と、M=8の場合のパワースペクトラム2024と、M=20の場合のパワースペクトラム2025を示してある。
【0064】
ここで、元信号は、信号センサA1~ALにより計測された信号であって、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われていない信号を表す。
また、Mが各値である場合のパワースペクトラムは、信号センサA1~ALにより計測された信号について、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われた結果を表す。
【0065】
図4B~
図4Fを参照して、Mが各値である場合の信号波形(時間ドメインの信号波形)を比較する。
図4B~
図4Fのそれぞれに示されるグラフでは、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は信号強度を表している。本例では、時間の範囲として、60~65[秒]の範囲を示してある。
【0066】
図4Bは、実施形態に係るM=1の場合の信号波形2031の一例を示す図である。
図4Cは、実施形態に係るM=2の場合の信号波形2032の一例を示す図である。
図4Dは、実施形態に係るM=4の場合の信号波形2033の一例を示す図である。
図4Eは、実施形態に係るM=8の場合の信号波形2034の一例を示す図である。
図4Fは、実施形態に係るM=20の場合の信号波形2035の一例を示す図である。
【0067】
ここで、
図4B~
図4Fの例では、時間的に所定の間隔でマイナス側(図において下側)に突出している波形部分が計測対象の信号部分(目的信号の部分)である。
図4B~
図4Fの例のように、本手法に対応するパラメータ設定で、Mの増加に伴い、ノイズ除去効果が大きくなる。例えば、信号波形を見た場合においても、Mの増加に伴い、ノイズ除去効果が大きくなっている。
これにより、本手法では、適したパラメータ設定のもとで、参照センサB1~BMの数を増やすことで、環境ノイズ除去効果が大きくなっている。
このように、本手法は、各種の環境ノイズの除去のために必要な複数の参照センサの使用に適した手法である。
【0068】
なお、
図4Gは、実施形態に係る元信号の信号波形2041の一例を示す図である。
また、
図4Hは、
図4Gの例とは異なるレンジにおける、実施形態に係る元信号の信号波形2042の一例を示す図である。
図4Gおよび
図4Hのそれぞれに示されるグラフでは、横軸は時間を表しており、縦軸は信号強度を表している。本例では、時間の範囲として、
図4B~
図4Fの場合と同様に、60~65[秒]の範囲を示してある。
縦軸については、
図4Gでは全波形が表示されるレンジが用いられており、
図4Hでは
図4B~
図4Fの場合と同様なレンジが用いられている。
【0069】
<参照センサ数に必要な分割区間に関する設定の例>
図5A~
図5Fを参照して、参照センサ数に必要な分割区間に関する設定の例を示す。
トータルデータ長T=600k(kは、×1000を表す。)、5kサンプリングで120秒の計測結果を例とする。
また、参照センサB1~BMの数M=20、正則化パラメータγ=1e
-6の条件が用いられる場合を例とする。なお、本例では、正則化パラメータの値を小さく設定することで、区間ごとの差を把握し易くしている。
【0070】
本実施形態では、区間の総数Nとして参照センサB1~BMの数Mに対して10倍程度(本例では、10倍とする)が必要であると想定する。すると、N=T/(Tw/2)およびN=10Mにより、Tw=T/(5M)=600k/(5×20)=6kとなる。
Tw=6kの前後について、Tw=1k、6k、10k、20k、40kで変化させた場合を例示する。
【0071】
図5Aは、実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
図5Aの例では、本実施形態における周波数領域分割手法のANCが用いられた場合を示してある。
図5Aに示されるグラフにおいて、横軸は周波数[Hz]を表しており、縦軸はパワースペクトラムの強度を表している。
当該グラフに、元信号のパワースペクトラム2111と、Tw=1kの場合のパワースペクトラム2121と、Tw=6kの場合のパワースペクトラム2122と、Tw=10kの場合のパワースペクトラム2123と、Tw=20kの場合のパワースペクトラム2124と、Tw=40kの場合のパワースペクトラム2125を示してある。
【0072】
ここで、元信号は、信号センサA1~ALにより計測された信号であって、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われていない信号を表す。
また、Twが各値である場合のパワースペクトラムは、信号センサA1~ALにより計測された信号について、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われた結果を表す。
【0073】
図5B~
図5Fを参照して、Twが各値である場合の信号波形(時間ドメインの信号波形)を比較する。
図5B~
図5Fのそれぞれに示されるグラフでは、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は信号強度を表している。本例では、時間の範囲として、60~65[秒]の範囲を示してある。
【0074】
図5Bは、実施形態に係るTw=1kの場合の信号波形2131の一例を示す図である。
図5Cは、実施形態に係るTw=6kの場合の信号波形2132の一例を示す図である。
図5Dは、実施形態に係るTw=10kの場合の信号波形2133の一例を示す図である。
図5Eは、実施形態に係るTw=20kの場合の信号波形2134の一例を示す図である。
図5Fは、実施形態に係るTw=40kの場合の信号波形2135の一例を示す図である。
【0075】
ここで、
図5B~
図5Fの例では、時間的に所定の間隔でマイナス側(図において下側)に突出している波形部分が計測対象の信号部分(目的信号の部分)である。
図5B~
図5Fの例では、すべての例で、雑音ノイズフロアは低く抑えられている。
図5B~
図5Dの例では、ノイズフロアは、
図5Bの例が最も大きく、
図5Cの例が中程度で、
図5Dの例が最も小さいが、波形特徴は維持している。
さらに、
図5Eの例では、ノイズフロアは、
図5B~
図5Dの例よりも低く抑えられるが、波形特徴も崩れ始めている。
さらに、
図5Fの例では、ノイズフロアは、
図5Eの例よりも低く抑えられるが、波形特徴がかなり失われている。
【0076】
これらに基づくと、例えば、Tw=6k~10k程度とすることが、本例の条件での最適域と考えられる。
このように、分割区間の区間長Twの値には十分留意する必要があると考えられる。例えば、ノイズフロアだけでなく、波形崩れについても十分留意してTwを決定する必要があると考えられる。
【0077】
<正則化パラメータに関する設定の例>
図6A~
図6Qを参照して、正則化パラメータγに関する設定の例を示す。
トータルデータ長T=600k(kは、×1000を表す。)、5kサンプリングで120秒の計測結果を例とする。
また、参照センサB1~BMの数M=20の条件が用いられる場合を例とする。
本実施形態では、正則化パラメータγを1e
-5、1e
-4、1e
-3、1e
-2で変化させた場合を例示する。
また、本実施形態では、データ分割区間の区間長Tw=1k、10k、20k、40kで変化させた場合を例示する。
【0078】
図6Aは、実施形態に係る周波数ドメインでの環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
図6Aの例では、本実施形態における周波数領域分割手法のANCが用いられた場合を示してある。
図6Aに示されるグラフにおいて、横軸は周波数[Hz]を表しており、縦軸はパワースペクトラムの強度を表している。
当該グラフに、元信号のパワースペクトラム2211と、γ=1e
-5の場合のパワースペクトラム2221と、γ=1e
-4の場合のパワースペクトラム2222と、γ=1e
-3の場合のパワースペクトラム2223と、γ=1e
-2の場合のパワースペクトラム2224を示してある。
【0079】
ここで、元信号は、信号センサA1~ALにより計測された信号であって、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われていない信号を表す。
また、γが各値である場合のパワースペクトラムは、信号センサA1~ALにより計測された信号について、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われた結果を表す。
【0080】
図6B~
図6Qを参照して、γおよびTwが各値である場合の信号波形(時間ドメインの信号波形)を比較する。
図6B~
図6Qのそれぞれに示されるグラフでは、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は信号強度を表している。本例では、時間の範囲として、60~65[秒]の範囲を示してある。
【0081】
図6Bは、実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=1kの場合の信号波形2231aの一例を示す図である。
図6Cは、実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=10kの場合の信号波形2231bの一例を示す図である。
図6Dは、実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=20kの場合の信号波形2231cの一例を示す図である。
図6Eは、実施形態に係るγ=1e
-5かつTw=40kの場合の信号波形2231dの一例を示す図である。
【0082】
図6Fは、実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=1kの場合の信号波形2232aの一例を示す図である。
図6Gは、実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=10kの場合の信号波形2232bの一例を示す図である。
図6Hは、実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=20kの場合の信号波形2232cの一例を示す図である。
図6Iは、実施形態に係るγ=1e
-4かつTw=40kの場合の信号波形2232dの一例を示す図である。
【0083】
図6Jは、実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=1kの場合の信号波形2233aの一例を示す図である。
図6Kは、実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=10kの場合の信号波形2233bの一例を示す図である。
図6Lは、実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=20kの場合の信号波形2233cの一例を示す図である。
図6Mは、実施形態に係るγ=1e
-3かつTw=40kの場合の信号波形2233dの一例を示す図である。
【0084】
図6Nは、実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=1kの場合の信号波形2234aの一例を示す図である。
図6Oは、実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=10kの場合の信号波形2234bの一例を示す図である。
図6Pは、実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=20kの場合の信号波形2234cの一例を示す図である。
図6Qは、実施形態に係るγ=1e
-2かつTw=40kの場合の信号波形2234dの一例を示す図である。
【0085】
ここで、
図6B~
図6Qの例では、時間的に所定の間隔でマイナス側(図において下側)に突出している波形部分が計測対象の信号部分(目的信号の部分)である。
図6B~
図6Qの例のように、信号波形で比較すると、区間長Twの値が小さいときには正則化パラメータγの値を小さくすることが適している。また、区間長Twの値が大きくなり波形が崩れかけたときには、正則化パラメータγの値を大きくすることが適している。
本例では、例えば、γ=1e
-3程度が最適値となると考えられる。
【0086】
<複数の参照センサが配置された場合における各種手法の設定時の例>
図7を参照して、複数の参照センサB1~BMが配置された場合における各種手法の設定時の例を示す。
トータルデータ長T=600k(kは、×1000を表す。)、5kサンプリングで120秒の計測結果を例とする。
また、区間長Tw=10k、正則化パラメータγ=1e
-4の条件が用いられる場合を例とする。
本例では、複数の参照センサが配置された場合について、各種手法での雑音密度を比較する。
本例では、各種手法として、通常の時系列手法のANC、および、本実施形態における周波数領域分割手法のANCを示す。
また、本例では、本実施形態における周波数領域分割手法のANCとして、参照センサB1~BMとして磁気センサが用いられる場合と、参照センサB1~BMとして互いに異種のセンサである磁気センサおよび加速度センサが用いられる場合を示す。
【0087】
図7は、実施形態に係る雑音密度での環境ノイズ除去結果の比較例を示す図である。
図7に示されるグラフにおいて、横軸は周波数[Hz]を表しており、縦軸はパワースペクトル密度関数(PSD:Power Spectral Density Function)[pT/√Hz]を表している。
当該グラフに、元信号の特性2311と、通常の時系列手法のANCが用いられる場合の特性2321と、参照センサB1~BMが磁気センサであって本実施形態における周波数領域分割手法のANCが用いられる場合の特性2322と、参照センサB1~BMが磁気センサおよび加速度センサであって本実施形態における周波数領域分割手法のANCが用いられる場合の特性2323を示してある。
【0088】
ここで、元信号は、信号センサA1~ALにより計測された信号であって、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われていない信号を表す。
また、PSDの特性は、信号センサA1~ALにより計測された信号について、参照センサB1~BMにより計測された信号によるノイズ除去が行われた結果を表す。
【0089】
このように、本手法において、参照センサB1~BMの種類の選択、および、参照センサB1~BMの配置は、重要であると考えられる。
なお、本例では、参照センサB1~BMのうちで、少なくとも加速度センサ(参照センサの一例)は動きを持つ場合について示したが、参照センサB1~BMに動きが無い場合には、加速度センサが使用されなくてもよい。つまり、参照センサB1~BMとしては、任意の物理量を計測するセンサが使用されてもよいが、発生しない物理量を計測するセンサが使用されても、ノイズ除去の精度は向上しないと考えられる。
【0090】
例えば、環境ノイズの種類(物理量の種類)が不明である場合には、幾つかの種類のセンサを参照センサB1~BMに含めること、および、各参照センサB1~BMの配置(例えば、位置、方向)を異ならせること、が行われてもよい。
参照センサB1~BMに複数種類のセンサを含めることで、各種の環境ノイズのデータを取得することが可能である。
また、各参照センサB1~BMの配置(例えば、位置、方向)を考慮することで、ノイズ除去の精度を向上させることが可能である。
【0091】
[情報処理装置における処理の手順の例]
図8および
図9を参照して、情報処理装置21における処理の手順の例を示す。
【0092】
<一括処理の例>
図8は、実施形態に係る情報処理装置21において行われる処理の手順の一例を示す図である。
本例では、例えば、記憶部113に記憶された所定期間Tの計測信号のデータを処理することが行われる。
本例では、情報処理装置21において、一括して処理される信号データの長さが設定されている。
また、本例では、情報処理装置21において、演算に使用されるパラメータがあらかじめ設定されている。例えば、参照センサB1~BMの数Mに最適なデータ分割区間の長さ(Tw)および正則パラメータγが設定されている。
【0093】
(ステップS1)
情報処理装置21では、取得部131は、時系列信号のデータ(信号データ)を読み込んで取得する。そして、ステップS2の処理へ移行する。
ここで、本実施形態では、信号データとして、信号センサA1~ALによって計測された信号のデータと、参照センサB1~BMによって計測された信号のデータが用いられる。
【0094】
(ステップS2)
情報処理装置21では、信号処理部151は、区間分割部171および周波数領域分割部172により、区間ごとに信号データを周波数成分に分割する。そして、ステップS3の処理へ移行する。
ここで、一括処理では、例えば、所定期間Tのすべての信号データについて、区間の分割が行われる。
【0095】
(ステップS3)
情報処理装置21では、信号処理部151は、係数演算部173により、信号処理用の係数(本実施形態では、重み付けの係数w)を演算する。そして、ステップS4の処理へ移行する。
ここで、当該係数は、ノイズ除去用のフィルタ係数に相当する。
【0096】
(ステップS4)
情報処理装置21では、信号処理部151は、演算された係数に基づく所定の信号処理を行うことで、ノイズが除去された信号を取得する。
そして、本フローが終了する。
【0097】
<動的処理の例>
図9は、実施形態に係る情報処理装置21において行われる処理の手順の他の一例を示す図である。
本例では、例えば、計測信号のデータをリアルタイムに処理することが行われる。
本例では、情報処理装置21において、演算に使用されるパラメータがあらかじめ設定されている。例えば、参照センサB1~BMの数Mに最適なデータ分割区間の長さ(Tw)および正則パラメータγが設定されている。
【0098】
(ステップS11)
情報処理装置21では、信号処理部151は、区間分割部171により、区間を設定する。そして、ステップS12の処理へ移行する。
ここで、本実施形態では、区間が動的に設定(決定)される場合を示す。なお、区間が最初に設定される場合には、初期設定となる。
なお、信号処理部151は、信号を動的に処理する態様として、例えば、指定データ長の開始位置を区間ごとにシフト(スライド)していく態様を用いてもよい。
【0099】
(ステップS12)
情報処理装置21では、信号処理部151は、周波数領域分割部172により、区間ごとに、時系列信号のデータ(信号データ)に対応する周波数成分を演算して取得する。そして、ステップS13の処理へ移行する。
ここで、本実施形態では、信号データとして、信号センサA1~ALによって計測された信号のデータと、参照センサB1~BMによって計測された信号のデータが用いられる。
また、動的処理では、例えば、指定データ長の信号データについて処理が行われる。
【0100】
(ステップS13)
情報処理装置21では、信号処理部151は、係数演算部173により、信号処理用の係数(本実施形態では、重み付けの係数w)を演算する。そして、ステップS14の処理へ移行する。
ここで、当該係数は、ノイズ除去用のフィルタ係数に相当する。
【0101】
(ステップS14)
情報処理装置21では、信号処理部151は、演算された係数に基づく所定の信号処理を行うことで、ノイズが除去された信号を取得する。
そして、本フローが終了する。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る計測システム1において、情報処理装置21では、複数の参照センサB1~BMが用いられる場合に、所望の信号(目的信号)の計測結果からノイズ(例えば、環境ノイズ)を除去する精度を高くすることができる。
【0103】
本実施形態に係る情報処理装置21では、複数の参照センサB1~BMが用いられる場合に、信号データを区間ごとに周波数分割することで、各種のノイズの除去の精度を高くすることができる。
本実施形態に係る情報処理装置21では、例えば、各種のノイズを除去するためのハードウェアとその特徴を活かした信号処理手法との組み合わせにより、計測システム1の付加価値を高めることができる。
本実施形態に係る情報処理装置21では、ノイズを計測する複数の参照センサB1~BMを備えた計測システム1において、最適な周波数領域での分割手法を利用することで、計測の高精度化が可能である。
【0104】
本実施形態に係る計測システム1では、目的信号とノイズとが混在する状態で計測される信号に関し、当該信号を計測する1以上の信号センサA1~ALおよび当該ノイズの信号を計測する複数の参照センサB1~BMを有するセンサ部と、当該センサ部で得られた信号を周波数解析する処理およびノイズ除去処理を実行する信号処理部151(演算部)と、を備える。
本実施形態に係る計測システム1では、信号センサA1~ALにより取得される時系列の信号データおよび参照センサB1~BMにより取得される時系列の信号データを、所定の分割区間ごとに、周波数成分の解析を行う。
【0105】
本実施形態に係る計測システム1では、当該分割区間(Tw)は、参照センサB1~BMの数Mおよび信号データ長(期間T)に基づいて決定される。例えば、信号データ長が一定である場合、参照センサB1~BMの数Mの増加にしたがい、分割区間の長さを短くする。
本実施形態に係る計測システム1では、信号処理部151による演算で使用される共分散行列を正則化する際に正則化の程度を調整する正則化パラメータγは、分割区間(Tw)に基づいて決定される。また、正則化パラメータγは、例えば、参照センサB1~BMの数Mおよび分割区間(Tw)に基づいて決定されてもよい。
【0106】
本実施形態に係る計測システム1では、参照センサB1~BMは、例えば、少なくとも1個の信号センサA1~ALと同種類のセンサを含んでもよい。
本実施形態に係る計測システム1では、参照センサB1~BMは、例えば、信号センサA1~ALとは異なる種類のセンサを含んでもよい。
【0107】
なお、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、オペレーティングシステムあるいは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーあるいはクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。当該揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)であってもよい。記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体であってもよい。
【0108】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0109】
また、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピューター読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、あるいは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1または複数の回路装置、あるいは、1または複数の回路素子のうちの一方または両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗あるいはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0110】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、あるいは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路あるいはフィルタ回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0111】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0112】
[付記]
(構成例1)~(構成例8)を示す。
【0113】
(構成例1)
目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得部と、
時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得部により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理部と、
を備える情報処理装置。
【0114】
(構成例2)
前記信号処理部は、前記区間として、それぞれ同一の区間長を有し、隣接する2個の前記区間で前記区間長の1/2が重複する区間を用いる、
(構成例1)に記載の情報処理装置。
【0115】
(構成例3)
前記区間は、前記参照センサの数および信号処理対象の信号データ長に基づいて決定され、
前記信号データ長が一定である場合には、前記参照センサの数が多いほど前記区間の長さが短い、
(構成例1)または(構成例2)に記載の情報処理装置。
【0116】
(構成例4)
前記信号処理部は、共分散行列を用いた演算により前記信号処理を行い、
前記共分散行列を正則化する際に正則化の程度を調整する正則化パラメータは、前記参照センサの数および前記区間に基づいて決定される、
(構成例1)から(構成例3)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0117】
(構成例5)
少なくとも1個の前記参照センサと、少なくとも1個の前記信号センサとは、同種類のセンサである、
(構成例1)から(構成例4)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0118】
(構成例6)
少なくとも1個の前記参照センサと、少なくとも1個の前記信号センサとは、異種類のセンサである、
(構成例1)から(構成例5)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0119】
本実施形態では、情報処理装置を含むシステムを実施することも可能である。
(構成例7)
(構成例1)から(構成例6)のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記信号センサと、
前記参照センサと、
を備える計測システム。
【0120】
本実施形態では、情報処理装置を構成するコンピューターにおいて実行されるプログラム(コンピュータープログラム)を実施することも可能である。
(構成例8)
目的信号とノイズとが混在する混在信号を計測する1以上の信号センサによる信号計測結果、および、前記ノイズを計測する複数の参照センサによるノイズ計測結果を取得する取得機能と、
時間的に複数に分割された区間ごとに、前記取得機能により取得された前記信号計測結果および前記ノイズ計測結果のそれぞれを複数の周波数領域に分割して、前記混在信号に含まれる前記ノイズを除去する信号処理を行う信号処理機能と、
をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0121】
1…計測システム、11…信号センサ配置部、21…情報処理装置、31…測定対象、111…入力部、112…出力部、113…記憶部、114…制御部、131…取得部、141…表示部、151…信号処理部、152…表示制御部、171…区間分割部、172…周波数領域分割部、173…係数演算部、211…信号データ、2011、2021~2025、2111、2121~2125、2211、2221~2224…パワースペクトラム、2031~2035、2041~2042、2131~2135、2231a~2231d、2232a~2232d、2233a~2233d、2234a~2234d…信号波形、2311、2321~2323…特性、A1~AL…信号センサ、B1~BM…参照センサ