(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120638
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】エステル交換反応生成物及びその製造方法、ポリオール組成物並びに接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20240829BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240829BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027562
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000118556
【氏名又は名称】伊藤製油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】巽 理寧
(72)【発明者】
【氏名】飯場 雅実
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA171
4J040ED151
4J040EF021
4J040EF111
4J040EF281
4J040GA05
4J040GA20
4J040JA13
4J040JB02
4J040MA02
4J040PA13
(57)【要約】
【課題】金属を含む被着体への接着性に優れた接着剤組成物及びそれを与えるポリオール組成物、並びに、これらの組成物の製造に好適に用いられ、液状であり取り扱いが容易なエステル交換反応生成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエステル交換反応生成物は、エステル交換触媒の存在下、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、ヒマシ油及びポリオールを除く)とを、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、31~55質量%、32~58質量%及び7~20質量%の割合で用いて得られたものである。ポリオールは、ジオール及びトリオールから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換触媒の存在下、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、前記ヒマシ油及び前記ポリ乳酸を除く)とから得られたエステル交換反応生成物であって、
前記ヒマシ油、前記ポリ乳酸及び前記ポリオールの使用量の割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、31~55質量%、32~58質量%及び7~20質量%であることを特徴とするエステル交換反応生成物。
【請求項2】
前記ポリオールが、ジオール及びトリオールから選ばれた少なくとも1種を含む請求項1に記載のエステル交換反応生成物。
【請求項3】
水酸基価が150~260mgKOH/gである請求項1に記載のエステル交換反応生成物。
【請求項4】
ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が850~1700である請求項1に記載のエステル交換反応生成物。
【請求項5】
請求項1に記載のエステル交換反応生成物を製造する方法であって、
芳香族化合物を含む有機溶媒の中において、エステル交換触媒の存在下、加熱しながら、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、前記ヒマシ油及び前記ポリ乳酸を除く)とを反応させることを特徴とするエステル交換反応生成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のエステル交換反応生成物を含有することを特徴とするポリオール組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のエステル交換反応生成物又は請求項6に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとが組み合わされてなることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項8】
ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物を与えるポリオール組成物に配合される接着性改良剤であって、請求項1に記載のエステル交換反応生成物を含有することを特徴とする接着性改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を含む被着体への接着性に優れた接着剤組成物及びそれを与えるポリオール組成物、並びに、これらの組成物の製造に用いるエステル交換反応生成物及びその製造方法に関する。本明細書において、「金属」は、単体金属及び合金を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
各種産業において、接着剤により物品(被着体)どうしを接合させてなる一体化物が広く用いられている。使用される接着剤は、一般に、被着体の表面の構成材料により選択されるが、従来、公知の接着剤を、濡れ性に劣り、接着性も劣る、例えば、無極性の高分子、金属、ガラス等からなる被着体に適用すると、十分な接着強度が得られないことから、それを改良するために、被着体を、予め、コロナ処理、紫外線照射(UV処理)、プラズマ処理、フレーム処理等の表面改質に供してから接着剤を使用する方法が採用されている。しかしながら、この方法では、接着性が向上する一方、表面改質により材料の性質が変化する等の不具合をもたらすことがあった。そこで、不具合を抑制するために、被着体の構成材料に合わせて、接着剤の組成改良が試みられてきた。
【0003】
例えば、樹脂フィルムと、金属蒸着フィルム又は金属箔との接着に好適な接着剤組成物として、特許文献1には、(A)ポリエーテルポリオール(但し、下記(C)中のポリエチレングリコールは除く)、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選ばれるポリオール成分と、(B)末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、(C)2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールまたは/および数平均分子量100~3000のポリエチレングリコールを含有することを特徴とする無溶剤型接着剤組成物が開示されている。このような、ポリオール及びポリイソシアネートを併用する接着剤は、「反応型接着剤(2液型接着剤)」として広く用いられている。
【0004】
石油資源の使用量抑制の観点から、ポリオールは、少なくとも一部に、天然物由来の原料、例えば、植物等からの抽出物を用いて製造可能であることが特許文献2に記載されている。即ち、特許文献2には、反応混合物の総重量に基づいて50~85重量%の量で存在するポリ乳酸と、前記反応混合物の前記総重量に基づいて13~30重量%の量で存在する少なくとも1種の天然油と、前記反応混合物の前記総重量に基づいて2~36重量%の量で存在するジオールと、任意選択でエステル交換触媒とを含む反応混合物の反応から生じるエステル交換ポリ乳酸が開示されている。更に、この特許文献2には、a)ジオール、ポリ乳酸、及び任意選択でエステル交換触媒を一緒に組み合わせて反応混合物を形成し、それを第1の温度まで加熱して溶融反応混合物を形成する工程;b)溶融反応混合物に少なくとも1種の天然油を添加し、第1の温度よりも高い第2の温度まで加熱し、該第2の温度を所定の時間維持する工程;c)第2の温度よりも高い第3の温度まで加熱し、該第3の温度を所定の時間維持する工程;d)第3の温度よりも高い第4の温度まで加熱し、該第4の温度を所定の時間維持する工程;及び、e)反応混合物を冷却し、エステル交換ポリ乳酸反応生成物を回収する工程を含む、エステル交換ポリ乳酸の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、イソシアネート官能性成分と反応して二成分積層接着剤を形成するためのイソシアネート反応性成分であって、高分子ポリ乳酸と少なくとも1つの天然油を含む反応混合物のエステル交換生成物、および高OH官能性ポリオール生成物を含む、イソシアネート反応性成分、並びに、このイソシアネート反応性成分を含有する二成分接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-118503号
【特許文献2】特開2019-503428号(特許6788679号)
【特許文献3】特開2021-521283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、金属を含む被着体への接着性に優れた接着剤組成物及びそれを与えるポリオール組成物、並びに、これらの組成物の製造に好適に用いられ、液状であり取り扱いが容易なエステル交換反応生成物及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、ポリオール組成物及びポリイソシアネートを併用する、従来、公知の接着剤組成物において、ポリオール組成物を構成するポリオールの一部として用いることにより、被着体への接着性を更に向上させることができる接着性改良剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリ乳酸がバイオマス資源由来とすることができるので、二酸化炭素の排出削減の観点から、エステル交換触媒の存在下、このようなポリ乳酸と、ヒマシ油と、他のポリオールとを特定の割合で用いてエステル交換反応させたところ、得られた反応生成物が、金属を含む被着体への接着性に優れた無溶剤の2液型接着剤組成物を与えることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.エステル交換触媒の存在下、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、ヒマシ油及びポリ乳酸を除く)とから得られたエステル交換反応生成物であって、
上記ヒマシ油、上記ポリ乳酸及び上記ポリオールの使用量の割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、31~55質量%、32~58質量%及び7~20質量%であることを特徴とするエステル交換反応生成物。
2.上記ポリオールが、ジオール及びトリオールから選ばれた少なくとも1種を含む上記項1に記載のエステル交換反応生成物。
3.水酸基価が150~260mgKOH/gである上記項1に記載のエステル交換反応生成物。
4.ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が850~1700である上記項1に記載のエステル交換反応生成物。
5.上記項1に記載のエステル交換反応生成物を製造する方法であって、芳香族化合物を含む有機溶媒の中において、エステル交換触媒の存在下、加熱しながら、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、ヒマシ油及びポリ乳酸を除く)とを反応させることを特徴とするエステル交換反応生成物の製造方法。
6.上記項1に記載のエステル交換反応生成物を含有することを特徴とするポリオール組成物。
7.上記項1に記載のエステル交換反応生成物又は上記項6に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとが組み合わされてなることを特徴とする接着剤組成物。
8.ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物を与えるポリオール組成物に配合される接着性改良剤であって、上記項1に記載のエステル交換反応生成物を含有することを特徴とする接着性改良剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエステル交換反応生成物は、その製造原料を特定の割合で反応させて得られたものであることから、液状で取り扱いやすい。従って、例えば、2液型の接着剤組成物の製造に用いるポリオール組成物の調製も容易となる。また、本発明のエステル交換反応生成物又はそれを含有するポリオール組成物を、ポリイソシアネートと組み合わせて、ポリオール成分とポリイソシアネートとからポリウレタンを形成させると、接着性を発現させることができる。本発明のエステル交換反応生成物又はそれを含有するポリオール組成物を、ポリイソシアネートと組み合わせてなる本発明の接着剤組成物は、金属を含む被着体への接着性に優れる。この接着剤組成物は無溶剤とすることができるので、使用時の排気作業は不要であり、作業環境の衛生性を損なうことがない。
本発明のエステル交換反応生成物製造方法によれば、芳香族化合物を反応溶媒として用いることにより、効率よく製造することができる。また、製造原料のポリ乳酸は、植物由来のバイオマス素材である乳酸を単量体として用いて得られたものとすることができるので、二酸化炭素の排出削減に寄与することができる。
また、ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物を与える従来、公知のポリオール組成物に、本発明のエステル交換反応生成物を添加して、新たなポリオール組成物を構成させ、得られたポリオール組成物及びポリイソシアネートを組み合わせて接着剤組成物とした場合には、被着体への接着性が改良される接着剤組成物を得ることができる。従って、本発明のエステル交換反応生成物を、従来、公知のポリオールと併用し、被着体への接着性を改良する接着性改良剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエステル交換反応生成物は、エステル交換触媒の存在下、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(但し、ヒマシ油及びポリ乳酸を除く、以下、「ポリオール(A1)」という)とを、所定量で用いて得られたものであり、通常、液状である。以下、「エステル交換反応生成物」を、「エステル交換ポリオール」という。
本発明のエステル交換ポリオールの構成について、本発明者らは、少なくとも、ヒマシ油に含まれた複数のエステル化合物がポリ乳酸及び/又はポリオール(A1)と反応(エステル交換反応)して得られた、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物の複数種を含む混合物であると推定している。その他、ポリ乳酸(PLA)及びポリオール(A1)のエステル交換反応生成物(PLA-ポリオール-PLA、PLA-ポリオール等の、いずれも、互いにエステル結合を介して連結された化合物)が含まれることがあると推定している。
【0012】
上記ヒマシ油は、複数種の脂肪酸のグリセリドを含むものである。この脂肪酸は、少量の飽和脂肪酸を含むものの主成分が不飽和脂肪酸である。そして、不飽和脂肪酸として、リシノレイン酸(CH3(CH2)5CH(OH)CH2CH=CH(CH2)7COOH)が高含率で含まれるため、ヒマシ油は、他のエステル化合物を含むこともあるが、主成分は、このリシノレイン酸のトリグリセリドである。
【0013】
上記ポリ乳酸は特に限定されず、D-乳酸(D-ラクチド、D体)、L-乳酸(L-ラクチド、L体)及びDL-乳酸(DL-ラクチド)から選ばれた少なくとも1種に由来する構造単位を含む単独重合体又は共重合体とすることができる。
【0014】
乳酸は、ブドウ糖、砂糖等の糖類に乳酸菌を作用させ、発酵することにより得られる。また、上記糖類は、さとうきび等からの抽出や、とうもろこし、じゃがいも、さつもいも、米、小麦等から得られるでんぷんに酵素を作用させることによって得ることができる。従って、ポリ乳酸の製造原料である乳酸は、バイオマスである植物を出発原料として合成可能な、植物由来のバイオマス素材である。
【0015】
上記ポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは50,000~500,000、より好ましくは50,000~300,000である。
【0016】
上記ポリオール(A1)は、脂肪族化合物、脂環式化合物及び芳香族化合物のいずれでもよい。尚、上記ポリオール(A1)が脂肪族化合物又は脂環式化合物である場合には、炭素-炭素二重結合を含んでもよい。
【0017】
上記ポリオール(A1)としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ペンチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,9,9-テトラメチル-1,10-デカンジオール、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタテトロール、2,3,4,5-ヘキサテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族化合物;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2′-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、スピログリコール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4′-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2,2′-ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の脂環式化合物;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4′-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン、ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族化合物が挙げられる。
【0018】
本発明において、ポリオール(A1)は、より好ましくは、炭化水素を構成する2つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換されてなる化合物、更に好ましくは、ジオール及びトリオール、特に好ましくは、脂肪族炭化水素を構成する2つ又は3つの水素原子がヒドロキシ基に置換されてなる化合物である。このような脂肪族のジオール及びトリオールに含まれる炭素原子数は、好ましくは3~10、より好ましくは3~6である。
【0019】
本発明のエステル交換ポリオールは、取り扱いが容易な液状とすることができ、金属を含む被着体への接着性に優れた接着剤組成物を与えることから、ヒマシ油、ポリ乳酸及びポリオール(A1)の使用量を、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、31~55質量%、32~58質量%及び7~20質量%として得られたものである。好ましい使用量は、31~53質量%、33~57質量%及び8~17質量%であり、特に好ましくは、31~50質量%、35~55質量%及び9~15質量%である。
【0020】
本発明のエステル交換ポリオールの製造に用いるエステル交換触媒は、後述される。
【0021】
本発明のエステル交換ポリオールの水酸基価について、下限値は、好ましくは150mgKOH/g、より好ましくは160mgKOH/g、更に好ましくは165mgKOH/gである。また、上限値は、好ましくは260mgKOH/g、より好ましくは245mgKOH/g、更に好ましくは230mgKOH/gである。この水酸基価は、JIS K 0070に準ずる方法により測定されたものである。
【0022】
本発明のエステル交換ポリオールの重量平均分子量について、下限値は、好ましくは850、より好ましくは875、更に好ましくは900である。また、上限値は、好ましくは1700、より好ましくは1650、更に好ましくは1600である。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたものである。
【0023】
本発明のエステル交換ポリオールの粘度について、下限値は、好ましくは450mPa・s、より好ましくは500mPa・s、更に好ましくは550mPa・sである。また、上限値は、好ましくは25,000mPa・s、より好ましくは23,000mPa・s、更に好ましくは22,000mPa・sである。この粘度は、JIS Z 8803に準ずる方法により、B型粘度計を用いて、25℃で測定されたものである。
【0024】
本発明のエステル交換ポリオールは、ポリイソシアネートと組み合わせて、特に、金属を含む被着体への接着性に優れた接着剤組成物を与える原料として特に好適である。
【0025】
本発明のエステル交換ポリオールを製造する方法は、エステル交換触媒の存在下、各々、所定量の、ヒマシ油、ポリ乳酸及びポリオール(A1)を反応させる工程を含むものであれば、特に限定されない。例えば、(1)3成分(全原料成分)を同時にエステル交換反応させる方法;(2)3成分のうち2成分のエステル交換反応を行い、その完結前又は完結後に残りの1成分を添加して更にエステル交換反応を行う方法;(3)2成分をいずれも全量ではなく一部を用いてエステル交換反応させ、その完結前又は完結後にそれぞれの残部と残りの1成分の全量とを添加して更にエステル交換反応を行う方法;(4)3成分をいずれも全量ではなく一部を用いてエステル交換反応させ、その完結前又は完結後にそれぞれの残部を添加して更にエステル交換反応を行う方法、等とすることができる。上記方法(2)、(3)及び(4)において、2回目のエステル交換反応を行う場合、残りの原料は、反応系に一括添加するかあるいは分割添加することができる。これらの原料使用方法は、後述する本発明のエステル交換ポリオールの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という)についても適用することができる。
【0026】
次に、本発明の製造方法について、説明する。本発明の製造方法は、芳香族化合物を含む有機溶媒の中において、エステル交換触媒の存在下、加熱しながら、ヒマシ油と、ポリ乳酸と、ポリオール(A1)とを反応させるものである。ヒマシ油、ポリ乳酸及びポリオール(A1)の使用量は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、31~55質量%、32~58質量%及び7~20質量%であり、好ましくは、31~53質量%、33~57質量%及び8~17質量%であり、特に好ましくは、31~50質量%、35~55質量%及び9~15質量%である。
【0027】
本発明においては、反応溶媒として、芳香族化合物を含む有機溶媒を用いる。この芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、イソプロピルベンセン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-イソプロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0028】
また、本発明に係るエステル交換触媒としては、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
M1Lx (1)
(式中、M1は、元素周期表の第2主族元素、第3主族元素、第4主族元素又は第3副族元素から第9副族元素までの金属元素であり、Lは、C、O、P、S又はNを介してM1に結合する配位子であり、xは2~6から選ばれた整数(金属元素M1の酸化数)である。)
【0029】
上記一般式(1)におけるM1は、好ましくはTi、Al又はCoであり、特に好ましくはTiである。
【0030】
上記一般式(1)におけるLは、キレート化配位子及び非キレート化配位子のいずれでもよい。本発明において、Lは非キレート化配位子であることが好ましい。この場合、配位子Lとしては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシ基、アルキルスルホキシ基、アリール基等が挙げられる。これらの有機基に含まれる炭素原子の数について、上限値は、好ましくは7、より好ましくは6、特に好ましくは5であり、下限値は、好ましくは1、より好ましくは2、特に好ましくは3である。
【0031】
上記エステル交換触媒として用いることができるTi化合物としては、テトラエチルオルトチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメシルチタネート、クロロトリイソプロピルオルトチタネート、テトラ(フェニルメチレン)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロリド、チタンアセチルアセトネート等が挙げられる。これらのうち、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0032】
上記エステル交換触媒の使用量は、ヒマシ油、ポリ乳酸及びポリオール(A1)の総量に対して、好ましくは0.015~0.050質量%、より好ましくは0.015~0.020質量%である。
【0033】
本発明の製造方法において、エステル交換反応に供する原料成分の使用方法は特に限定されず、上記のように、種々の手段を採用することができるが、エステル交換ポリオールは、不活性ガス雰囲気下、全原料成分を撹拌しながら加熱することにより製造することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン等を用いることができる。また、反応温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは195℃以上、であり、上限温度は、通常、230℃である。
【0034】
本発明において、エステル交換反応の後、反応溶媒の除去、エステル交換触媒の失活化等を行って、エステル交換ポリオールを回収することができる。
【0035】
本発明のポリオール組成物は、上記本発明のエステル交換ポリオールを含有するものである。含まれるエステル交換ポリオールは、1種のみ又は2種以上とすることができる。従来、ポリオール組成物は、接着剤の製造原料としてだけでなく、発泡体、塗料、ポリエステル樹脂、床材等の製造原料として用いられているが、本発明のポリオール組成物も同様に、このような製品の製造原料として好適に用いることができる。
【0036】
本発明のポリオール組成物は、用途に応じて、更に、他のポリオール、ヒドロキシ基以外の活性水素基(以下、「活性水素基Q」という)を有する化合物、各種添加剤を含有することができる。
【0037】
他のポリオールとしては、従来、公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
本発明のポリオール組成物が他のポリオールを含有する場合、その合計量の含有割合の上限は、エステル交換ポリオールの含有量を100質量部とすると、好ましくは200質量部、より好ましくは160質量部、更に好ましくは120質量部である。
【0038】
活性水素基Qを有する化合物としては、2つ以上の活性水素基Qを有する化合物、1つ以上の活性水素基Q及び1つのヒドロキシ基を有する化合物等が挙げられる。尚、活性水素基Qは、好ましくはアミノ基である。
【0039】
添加剤としては、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、防腐剤、着色剤等が挙げられる。
【0040】
本発明のポリオール組成物の粘度(25℃)について、下限値は、好ましくは450mPa・s、より好ましくは500mPa・sである。また、上限値は、好ましくは25,000mPa・s、より好ましくは23,000mPa・sであるため、取り扱いやすい。
【0041】
本発明の接着剤組成物は、上記本発明のエステル交換ポリオール又は上記本発明のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとが組み合わされてなる2液型組成物である。本発明においては、被着体への接着性の観点から、エステル交換ポリオールに含まれたヒドロキシ基又はポリオール組成物に含まれたヒドロキシ基の合計量と、イソシアネートにおけるイソシアネート基の合計量との当量比(NCO/OH)、即ち、イソシアネートインデックスが、好ましくは1.00~1.10、より好ましくは1.00~1.05となるように構成される。
【0042】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、又はこれらの変性体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);粗製ジフェニルメタンジイソシアネート;多核ポリフェニレンポリメチルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート(TDI);1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート(NDI);1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート;1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート(PDI);キシレンジイソシアネート(XDI);テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);トリジンジイソシアネート(TODI);2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチル-4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′-ジメトキシ-4,4′-ジフェニレンジイソシアネート、3,3′-ジクロロ-4,4′-ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)及びリジントリイソシアネート(LTI)や、これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体又はアダクト体等が挙げられる。
【0045】
脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート(CHDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加XDI(H6XDI)、水素添加MDI(H12MDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)や、これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体又はアダクト体等が挙げられる。
【0046】
本発明において、ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートを含むことが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むことがより好ましい。
【0047】
本発明の接着剤組成物を使用する場合、上記本発明のエステル交換ポリオール又は上記本発明のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを混合して製造し、被着体に供することが好ましい。上記のように、エステル交換ポリオール及びポリオール組成物は、取り扱いが容易な粘度を有するため、作業性に優れた接着剤組成物を容易に製造することができる。接着剤組成物を製造する場合、ミキサー、ロール、混練機等を用いることができる。混合時の温度は、好ましくは25℃~50℃、より好ましくは25℃~40℃である。
【0048】
本発明の接着剤組成物を用いる場合、この組成物が可使時間(ポットライフ)を有するので、組成物を製造した後、30分以内に被着体に塗工することが好ましい。被着体への塗工は、接着に関わる部分に対する全面塗工及び部分塗工のいずれでもよい。尚、接着温度は、特に限定されず、好ましくは85℃~105℃、より好ましくは85℃~100℃である。
また、被着体どうしを接合する場合、必要に応じて、圧締させてもよい。
【0049】
本発明の接着性改良剤は、上記本発明のエステル交換ポリオールを含有するものであり、必要により、上記本発明のポリオール組成物に配合可能であるとした各種添加剤を含有することができる。本発明の接着性改良剤は、ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物を与える、従来、公知のポリオール組成物(従来、公知のポリオール成分を含有する組成物であり、以下、「他のポリオール組成物」という)に配合される成分である。そして、この接着性改良剤を含有する接着剤組成物を被着体に適用すると、接着性を更に向上させることができる。
【0050】
本発明の接着性改良剤に含有されるエステル交換ポリオールは、1種のみ又は2種以上とすることができる。
【0051】
他のポリオール組成物は、接着剤組成物を与える従来、公知のポリオール組成物であれば、特に限定されない。ポリオール成分は、脂肪族炭化水素を構成する2つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換されてなる化合物(脂肪族多価アルコール);ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリオレフィンポリオール;ポリマーポリオール;ヒマシ油又はその誘導体に、アルキレンオキサイドを付加して得られた化合物等とすることができる。
【0052】
本発明の接着性改良剤の好ましい使用方法は、他のポリオール組成物に含有されるポリオール成分100質量部に対して、エステル交換ポリオールを、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上(但し、上限は、通常、80質量部)となるように混合し、その後、ポリイソシアネートと併用して接着剤組成物を調製することである。
【0053】
本発明に係る被着体は特に限定されず、接着剤組成物が塗工される表面部分(被塗工部)の構成材料が無機材料及び有機材料のいずれからなるものでもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。本発明の接着剤組成物は、被塗工部に金属が含まれる被着体に好適である。この「被塗工部に金属が含まれる」とは、被塗工部が1種又は2種以上の金属からなる場合、及び、被塗工部が金属と、金属以外の材料(金属以外の無機化合物、有機材料等)とからなる場合、のいずれでもよいことを意味する。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
1.エステル交換ポリオールの製造及び評価
エステル交換触媒であるテトライソプロポキシチタン(IV)の存在下、ヒマシ油、ポリ乳酸、及び、ポリオールとしてのジオール又はトリオールを反応させて、エステル交換ポリオールを製造し、物性評価を行った。
【0056】
実施例1-1
伊藤製油社製ヒマシ油「工1」(商品名、官能基数f:2.7、水酸基価:161.0mgKOH/g、酸価:1.2mgKOH/g、粘度(25℃):690mPa・s)、豊原集団製ポリ乳酸「FY201」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを、それぞれ、33g、55g及び12g秤量し、これらを四つ口フラスコに入れ、更に、キシレン10gを入れ、十分に撹拌した。
次いで、反応系を窒素ガス雰囲気とし、撹拌下、テトライソプロポキシチタン(IV)0.015gを添加した。そして、昇温して210℃で5時間反応させた。
その後、反応液を脱溶剤(30mmHg、140℃)に供し、キシレンを除去した。そして、75%リン酸水溶液を添加して120℃に調整して触媒を失活させた。次いで、昭和化学社製濾過助剤「ラヂオライト#900」(商品名)を投入して脱水し、更に、フィルター濾過することにより、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P1)」という)を得た。
【0057】
得られたエステル交換ポリオール(P1)の水酸基価、酸価、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び粘度を測定し、表1に示した。
水酸基価及び酸価は、JIS K 0070に準ずる方法により測定した。重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。粘度は、JIS Z 8803に準ずる方法により、東機産業社製B型粘度計「TVB-10」(型式名)を用いて25℃で測定した。
【0058】
実施例1-2
ポリ乳酸として、上記の「FY201」(商品名)に代えて、豊原集団製ポリ乳酸「FY801」(商品名)を用いた以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P2)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0059】
実施例1-3
ポリ乳酸として、上記の「FY201」(商品名)に代えて、浙江海正生物材料社製ポリ乳酸「REVODE110」(商品名)を用いた以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P3)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0060】
実施例1-4
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY801」(商品名)、及び、1,3-プロパンジオールを用い、使用量を、それぞれ、36g、55g及び9gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P4)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0061】
実施例1-5
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY801」(商品名)、及び、1,3-プロパンジオールを用い、使用量を、それぞれ、33g、55g及び12gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P5)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0062】
実施例1-6
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY201」(商品名)、及び、トリメチロールプロパンを用い、使用量を、それぞれ、31g、55g及び14gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P6)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0063】
実施例1-7
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY801」(商品名)、及び、トリメチロールプロパンを用い、使用量を、それぞれ、31g、55g及び14gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P7)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0064】
実施例1-8
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY201」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを用い、使用量を、それぞれ、50g、35g及び15gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(P8)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0065】
比較例1-1
製造原料として、ポリ乳酸を不使用として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを用い、使用量を、それぞれ、90g及び10gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(PP1)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0066】
比較例1-2
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY201」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを用い、使用量を、それぞれ、20g、55g及び25gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(PP2)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0067】
比較例1-3
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY201」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを用い、使用量を、それぞれ、60g、35g及び5gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、液状のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(PP3)」という)を得た。そして、表1に物性を示した。
【0068】
比較例1-4
製造原料として、上記のヒマシ油「工1」(商品名)、ポリ乳酸「FY801」(商品名)、及び、ジエチレングリコールを用い、使用量を、それぞれ、33g、60g及び7gとした以外は、実施例1-1と同様の操作を行ったところ、固体のエステル交換ポリオール(以下、「エステル交換ポリオール(PP4)」という)を得た。そして、表1に、水酸基価及び酸価を示した。
【0069】
【0070】
2.接着剤組成物の製造及び評価(1)
表1に示されたエステル交換ポリオール又はヒマシ油と、ポリイソシアネートとを用いて、接着剤組成物を製造し、引張せん断接着強さ試験による接着性評価を行った。ポリイソシアネートとして、東ソー社製ポリメリックMDI「ミリオネート MR-200」(商品名、以下「ポリイソシアネート(S1)」という)を用いた。
【0071】
実施例2-1~2-8及び比較例2-1~2-4
イソシアネートインデックスが1.00となるように、表1の各エステル交換ポリオール及びポリイソシアネート(S1)を混合し、各接着剤組成物を得た。尚、エステル交換ポリオール(PP4)は固体であったので、比較例2-4では、液状の接着剤組成物が得られず、接着性評価を行うことができなかった。
次いで、各接着剤組成物と、アルミニウム合金(A5052P)からなる試験片とを用いて、JIS K 6850に準ずる引張せん断接着強さ試験を行った。接着剤組成物による接着条件を85℃×5時間とし、一体化物を剥離するときの引張速度を毎分1mmとした。そして、接着強度を測定し、引張後の剥離状態を目視で観察した。これらの結果を表2に示す。
【0072】
比較例2-5
イソシアネートインデックスが1.00となるように、上記のヒマシ油「工1」(商品名)及びポリイソシアネート(S1)を混合し、接着剤組成物を得た。その後、上記と同様にして、引張せん断接着強さ試験を行い、接着強度を測定し、引張後の剥離状態を目視で観察した。これらの結果を表2に示す。
【0073】
また、実施例2-1~2-8で得られた接着剤組成物のそれぞれを用いて、ポリウレタン硬化物を作製し、JIS K 7311に準じて、Shore D硬さ、引張強さ、伸び、引裂強さ及び体積抵抗率を測定した(表2参照)。
【0074】
【0075】
表2から以下のことが分かる。
比較例2-1は、ヒマシ油及びジエチレングリコールをエステル交換させて得られたエステル交換ポリオール(PP1)をポリイソシアネート(S1)と併用した例であり、接着強度が6.63MPaと低かった。比較例2-2又は2-3は、ヒマシ油、ポリ乳酸及びジエチレングリコールをエステル交換させて得られたエステル交換ポリオール(PP2)又は(PP3)をポリイソシアネート(S1)と併用した例であり、接着強度が、それぞれ、3.18MPa及び4.73MPaと低かった。また、比較例2-5は、エステル交換ポリオールに代えてヒマシ油をポリイソシアネート(S1)と併用した例であり、接着強度が3.27MPaと低かった。
一方、実施例2-1~2-8は、本発明に係る接着剤組成物の例であり、接着強度がいずれも8MPa以上であった。
【0076】
3.接着剤組成物の製造及び評価(2)
実施例3-1
クラレ社製ポリエステルポリオール「クラレポリオール P-1020」(商品名)及びエステル交換ポリオール(P1)を、それぞれ、1:1の質量比で混合し、ポリオール組成物を得た。次いで、イソシアネートインデックスが1.00となるように、このポリオール組成物と、ポリイソシアネート(S1)とを混合し、接着剤組成物を得た。その後、実施例2-1と同様にして、接着強度を測定し、引張後の剥離状態を目視で観察した。この結果を表3に示す。
【0077】
【0078】
4.エステル交換ポリオールの接着性改良剤としての利用
接着剤組成物の製造に用いるポリオール組成物を、上記で得られたエステル交換ポリオール(P1)と、従来、公知のポリオールであるヒマシ油又はポリエステルポリオールとを混合して調製した。そして、このポリオール組成物と、ポリイソシアネート(S1)とを用いて、接着剤組成物を製造した。一方、エステル交換ポリオールを不使用としたポリオール組成物と、ポリイソシアネート(S1)とを用いた接着剤組成物も製造した。その後、これらの接着剤組成物を用いて、上記と同様にして、引張せん断接着強さ試験による接着性評価を行い、接着性能を比較した。
【0079】
実施例4-1
クラレ社製ポリエステルポリオール「クラレポリオール P-1020」(商品名)及びエステル交換ポリオール(P1)を、それぞれ、80質量%及び20質量%の割合で用いて混合し、ポリオール組成物を得た。次いで、イソシアネートインデックスが1.00となるように、このポリオール組成物と、ポリイソシアネート(S1)とを混合し、接着剤組成物を得た。その後、実施例2-1と同様にして、接着強度を測定し、引張後の剥離状態を目視で観察した。これらの結果を表4に示す。
【0080】
実施例4-2
上記のポリエステルポリオール「クラレポリオール P-1020」(商品名)に代えて、上記のヒマシ油「工1」(商品名)を用いた以外は、実施例4-1と同様の操作を行って、ポリオール組成物を調製し、次いで、接着剤組成物を得た。その後、接着性評価を行った(表4参照)。
【0081】
比較例4-1
上記のポリエステルポリオール「クラレポリオール P-1020」(商品名)及びエステル交換ポリオール(P1)の組み合わせでなく、ポリエステルポリオール「クラレポリオール P-1020」(商品名)のみを用いてこれをポリオール組成物とした。次いで、実施例4-1と同様の操作を行って、接着剤組成物を得た。その後、接着性評価を行った(表4参照)。
【0082】
表4には、実施例4-2で得られた接着剤組成物の接着性能と比較するために、比較例2-5で得られた接着剤組成物の接着性能を併記した。
【0083】
【0084】
表4から以下のことが分かる。
実施例4-1と比較例4-1とを比べると、ポリエステルポリオールの一部をエステル交換ポリオールに置き換えたポリオール組成物、及びポリイソシアネートを用いて得られた実施例4-1の接着剤組成物による接着強度は、比較例4-1の接着剤組成物による接着強度の約1.8倍高かった。
また、実施例4-2と比較例2-5とを比べると、ヒマシ油の一部をエステル交換ポリオールに置き換えたポリオール組成物、及びポリイソシアネートを用いて得られた実施例4-2の接着剤組成物による接着強度は、比較例2-5の接着剤組成物による接着強度の約1.3倍高かった。
従って、ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物を与える従来、公知のポリオール組成物において、本発明のエステル交換ポリオールを、ポリエステルポリオール、ヒマシ油等の、一般的なポリオールと併用してポリオール組成物を構成させ、ポリイソシアネートと組み合わせて接着剤組成物とした場合には、金属への接着性が改良される接着剤組成物が得られることが分かった。即ち、本発明のエステル交換ポリオールは、ポリオール組成物に配合する接着性改良剤として好適であることも分かった。
本発明の接着剤組成物は、車両用部品、建築土木用部品、住宅設備用品、生活用品、スポーツ・レジャー用品、農林業用資材、漁業用資材、シート類等の製造に好適である。
本発明のポリオール組成物は、接着剤組成物の製造原料だけでなく、発泡体、塗料、ポリエステル樹脂等の製造原料としても好適である。
本発明のエステル交換反応生成物は、このようなポリオール組成物又は接着剤組成物の製造に好適に用いられる。