(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120648
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吹付け装置
(51)【国際特許分類】
B05B 13/04 20060101AFI20240829BHJP
B05B 15/68 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B15/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027591
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 重洋
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
(72)【発明者】
【氏名】長塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖司
【テーマコード(参考)】
4D073
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA10
4D073BB06
4D073CB16
4D073CB19
4F035AA04
4F035CA01
4F035CD05
4F035CD18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成する、吹付け装置を提供する。
【解決手段】処理対象面Fを吹付け施工するための吹付け装置100であって、前記処理対象面に対向して配置される内フレーム60と、該内フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、前記内フレームを支持するフレーム支持構造10と、を備え、該フレーム支持構造が、前記内フレームを囲う架構体20と、該架構体内で前記内フレームを昇降させるフレーム昇降装置50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象面を吹付け施工するための吹付け装置であって、
前記処理対象面に対向して配置される内フレームと、
該内フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、
前記内フレームを支持するフレーム支持構造と、を備え、
該フレーム支持構造が、
前記内フレームを囲う架構体と、
該架構体内で前記内フレームを昇降させるフレーム昇降装置と、
を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記フレーム支持構造に、前記架構体を前記処理対象面に沿って移動自在に支持する支持構造移動機構を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吹付け装置において、
前記支持構造移動機構が、前記架構体に設ける移動体と、該移動体の移動方向をガイドするガイド部材と、を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項4】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記フレーム支持構造に、前記架構体を前記処理対象面に対して取り外し自在に固定する固定機構が設けられることを特徴とする吹付け装置。
【請求項5】
請求項4に記載の吹付け装置において、
前記固定機構に、マグネット工具を備えることを特徴とする吹付け装置。
【請求項6】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記内フレームが、
平面形状のフレーム本体と、
該フレーム本体に沿って上下方向に移動するガーダと、
該ガーダ上を左右方向に移動するトロリーと、を有し、
該トロリーに、前記噴射ノズルが搭載されることを特徴とする吹付け装置。
【請求項7】
請求項6に記載の吹付け装置において、
前記トロリーに、前記噴射ノズルと前記処理対象面との間隔を調整する位置調整機構が設けられ、
該位置調整機構に、前記噴射ノズルが設置されることを特徴とする吹付け装置。
【請求項8】
請求項1に記載の吹付け装置において、
前記吹付け材料が、研削材であることを特徴とする吹付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や構造物に設定された処理対象面を吹付け施工するために用いる吹付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吹付け材料を構造物の壁面などに噴射する吹付け施工は、人力で実施する場合、作業員が噴射ノズルを備えた吹付けガンを担ぎながら、位置・向きを調整する。さらには、噴射ノズルに接続されたホースの取り回しなどを行う必要があるなど、多大な労力を要する。また、作業員の技能によっては、吹付け材料を噴射させたのちの吹付け面にムラが生じるなど、出来形に不具合を生じる場合もある。
【0003】
このため、従来より吹付け施工の省人化が進められている。例えば、特許文献1には、構造物の表面処理に使用する表面処理装置が開示されている。特許文献1の表面処理装置は、処理対象面に沿って敷設されるガイドレールと、ガイドレール上を移動する表面処理ロボットを備える。
【0004】
表面処理ロボットには、マニピュレータとノズルが設けられており、表面処理ロボットをガイドレール上で移動させつつ、マニピュレータを動作プログラムに従って可動させる。これにより、マニピュレータに取り付けられているノズルの位置や姿勢を制御し、処理対象面を表面処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、表面処理ロボットを採用することで、吹付け施工の省人化を図ることができる。また、表面処理の均質化を図ることができる。ところが、表面処理ロボットの導入は、動作プログラムの構築が煩雑であり、また、多大な費用を要する。さらには、処理対象面が狭隘な環境下にあると、表面処理ロボットの搬出入や設置スペースの確保が困難となる場合があるなど、様々な課題を生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の吹付け装置は、処理対象面を吹付け施工するための吹付け装置であって、前記処理対象面に対向して配置される内フレームと、該内フレーム内を移動し、前記処理対象面に吹付け材料を噴射する噴射ノズルと、前記内フレームを支持するフレーム支持構造と、を備え、該フレーム支持構造が、前記内フレームを囲う架構体と、該架構体内で前記内フレームを昇降させるフレーム昇降装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の吹付け装置は、前記フレーム支持構造に、前記架構体を前記処理対象面に沿って移動自在に支持する支持構造移動機構を備える
【0010】
本発明の吹付け装置は、前記支持構造移動機構が、前記架構体に設ける移動体と、該移動体の移動方向をガイドするガイド部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の吹付け装置は、前記フレーム支持構造に、前記架構体を前記処理対象面に対して取り外し自在に固定する固定機構が設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明の吹付け装置は、前記固定機構に、マグネット工具を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の吹付け装置は、前記内フレームが、平面形状のフレーム本体と、該フレーム本体に沿って上下方向に移動するガーダと、該ガーダ上を左右方向に移動するトロリーと、を有し、該トロリーに、前記噴射ノズルが搭載されることを特徴とする。
【0014】
本発明の吹付け装置は、前記トロリーに、前記噴射ノズルと前記処理対象面との間隔を調整する位置調整機構が設けられ、該位置調整機構に、前記噴射ノズルが設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の吹付け装置は、前記吹付け材料が、研削材であることを特徴とする。
【0016】
上記の吹付け装置によれば、フレーム支持構造に設けた架構体内で、噴射ノズルを備えた内フレームが昇降するとともに、内フレーム内で噴射ノズルが自在に移動する。また、架構体は支持構造移動機構を介して、処理対象面に沿って移動する。これにより、作業員は、処理対象面が高さ方向及び幅方向ともに広域に渡る場合にも、噴射ノズルを備える吹付けガンを担ぐことなく吹付け装置を操作することで、吹付け施工を実施できる。
【0017】
また、吹付け装置全体がスリムな形状であるため、処理対象面が狭隘な環境下にあっても、現場への搬出入が容易であるとともに、吹付け装置の設置スペースを確保しやすい。
【0018】
これにより、例えば、十分な作業空間を確保することが困難な道路橋の更新工事において、せいが高くかつ長大な鋼桁に対して広域な処理対象面が設定されている場合にも、吹付け装置を導入し、架構体内で吹付けノズルを備えた内フレームを昇降させ、また、架構体を鋼桁に沿って移動させつつ、断続的に吹付け施工を実施できる。したがって、吹付け施工の大幅な省力化を図ることができる。
【0019】
また、内フレームには、上下方向に移動するガーダと、ガーダ上を左右方向に移動するトロリーを設け、このトロリーに噴射ノズルを搭載する。これにより、トロリーの移動速度を調整する、もしくは位置調整機構を利用して噴射ノズルと処理対象面との間隔を調整することも可能であり、処理対象面に吹付け材料を吹付けたのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。また、フレーム支持構造に固定機構を設けることで、吹付け施工時には、吹き付け装置を処理対象面が設定された構造物などに安定して固定することができる。
【0020】
このように、吹付け装置は、処理対象面が狭隘な環境下にある場合にも導入が容易で、かつ作業ロボットなどと比較して手軽に使用でき、吹付け施工の施工性を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、噴射ノズルを備える内フレームをフレーム支持構造に支持させ、フレーム支持構造を介して内フレームを移動させる簡略な構成で、吹付け施工の省力化を図りつつ、処理対象面に吹付け材料を噴射したのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態における吹付け装置を示す図である。
【
図2】本実施の形態における吹付け装置の断面(A-A)を示す図である。
【
図3】本実施の形態における吹付け装置の断面(B-B)を示す図である。
【
図4】本実施の形態におけるトロリーの詳細を示す図である。
【
図5】本実施の形態における吹付け装置の断面(C-C)を示す図である。
【
図6】本実施の形態における吹付け装置を用いた施工手順を示す図である(その1)。
【
図7】本実施の形態における吹付け装置を用いた施工手順を示す図である(その2)。
【
図8】本実施の形態における支持構造移動機構の設置位置の他の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、建物や構造物に設定された処理対象面に、吹付け材料を噴射して吹付け面を形成する、吹付け施工に用いられるものであり、特に、処理対象面が狭隘な環境下にある場合に好適な装置である。吹付け装置は、ブラスト作業、塗装作業、モルタル吹付け作業など、いずれの吹付け材を噴射して吹付け施工する場合にも採用可能である。
【0024】
本実施の形態では、橋梁の床版取替工事において、既設の鋼桁を処理対象面に設定し、ブラスト作業を実施する場合を事例に挙げ、
図1~
図8を参照しつつ、その詳細を説明する。
【0025】
≪≪≪吹付け装置≫≫≫
吹付け装置100は、
図1で示すように、鋼桁200のウェブ面に設定された処理対象面Fに対向して配置されており、フレーム支持構造10と、内フレーム60と、吹付けガンSと、コントロールボックスCとを備えている。
【0026】
≪≪フレーム支持構造≫≫
フレーム支持構造10は、
図1で示すように、架構体20と、固定機構30と、支持構造移動機構40と、フレーム昇降装置50と、を備えている。
【0027】
≪架構体≫
架構体20は、間隔を設けて対をなして配置された支柱21と、これらに跨るようにして配置された上梁221及び下梁222とにより構成されて平面形状をなしている。
【0028】
上梁221及び下梁222は、対応する連結金具Mを介して支柱21の上側及び下側にそれぞれ設置され、支柱21の離間間隔や上梁221と下梁222の配置間隔は、適宜変更自在に組み立てられている。また、両端部に固定機構30が設けられている。一方、対をなす支柱21には、その下部に支持構造移動機構40が設けられている。
【0029】
≪固定機構≫
固定機構30は、
図2で示すように、マグネット工具31と取付部材32とにより構成されている。マグネット工具31は、付属のレバー312の向きを変えることで、前面に設けられた吸着面311の処理対象面Fに対する吸着力を、入状態(吸着力有り)、切状態(吸着力無し)に切り替えることのできる工具である。
【0030】
取付部材32は、棒状部材により構成され、マグネット工具31の背面から吸着面311と直交する方向へ突出するようにして、設けられている。そして、連結金具Mを介して架構体20の上梁221に接続されている。これにより、架構体20は、固定機構30を介して処理対象面Fが設定された鋼桁200のウェブ面に、着脱自在に取り付けられる。
【0031】
≪支持構造移動機構≫
支持構造移動機構40は、
図2で示すように、支柱21の下部に設けられた車輪41と、車輪41の走行方向を案内するガイド部材42とにより構成されている。ガイド部材42は車輪41が走行する溝を有するレールであり、処理対象面Fに沿って延在している。
【0032】
支持構造移動機構40の走行手段に車輪41を採用したが、これに限定するものではなく、滑り移動するものなどを採用してもよい。また、ガイド部材42も車輪41に対応した適宜の形状のものを採用できる。さらに、ガイド部材42の設置位置もいずれでもよい。
【0033】
例えば、
図2で示すように、鋼桁200の下フランジ210に接続金具220を取り付け、この接続金具220を介して、鋼桁200に支持させるなどしてもよい。接続金具220には、下フランジ210から張り出す張出し部230を設け、この張出し部230に支持構造移動機構40のガイド部材42を支持させている。
【0034】
これにより、支持構造移動機構40に支持される架構体20は、鋼桁200に設定した処理対象面Fに対向して立設した姿勢となる。そして、固定機構30のマグネット工具31が切状態(吸着力無し)のとき、処理対象面Fに沿って移動可能となる。
【0035】
一方、マグネット工具31が入状態(吸着力有り)のとき、架構体20を安定して停止状態にできる。このように処理対象面Fに沿って移動もしくは固定可能な架構体20には、内フレーム60を昇降するフレーム昇降装置50が設置されている。
【0036】
≪フレームフレーム昇降装置≫
フレーム昇降装置50は、架構体20内で内フレーム60を上下方向に移動させることが可能な機構を備えていればいずれを採用してもよく、本実施の形態では、吊り機構を採用している。
【0037】
具体的には、
図1で示すように、架構体20の支柱21に設置されたウィンチ51と、ウィンチ51から繰り出されるワイヤー52と、ワイヤー52の延在方向を転換する方向転換プーリ53,54とを備えている。
【0038】
ウィンチ51から繰り出されるワイヤー52は、上梁221に設置された方向転換プーリ53,54を経由し、その先端が架構体20の内側に垂れ下げられている。したがって、ワイヤー52の先端を内フレーム60に取り付け、ウィンチ51を電動もしくは手動で稼働させることで、架構体20内で、内フレーム60を上下方向に自在に移動させることができる。
【0039】
≪≪内フレーム≫≫
内フレーム60は、
図1で示すように、フレーム本体70と、ノズル移動機構80と、位置調整機構90とを備えている。
【0040】
≪内フレーム本体≫
フレーム本体70は、架構体20の内側に収まる大きさに形成されており、間隔を設けて対をなして配置された支柱71と、連結金具Mを介して支柱71の上側及び下側にそれぞれ設置された上梁721及び下梁722と、により構成されている。
【0041】
上梁721は、中央部に連結環73が設けられており、ワイヤー52の先端が接続されている。また、上梁721及び下梁722にはその両端面に、架構体20の支柱21の内側面に沿って移動する車輪74が設けられている。これにより、フレーム本体70は、フレーム昇降装置50が操作されると、横揺れなど生じることなく架構体20内をスムーズに昇降移動することができる。
【0042】
なお、架構体20の支柱21とフレーム本体70との間に介装する部材は、車輪74に限定されるものではない。架構体20の支柱21とフレーム本体70との間隔を一定に保持でき、かつ支柱21の内側面に沿って移動可能な部材であれば、いずれを採用してもよい。
【0043】
≪ノズル移動機構≫
ノズル移動機構80は、
図1で示すように、ガーダ81、トロリー82、及びガーダ昇降機構83を備え、トロリー82に吹付けガンSが搭載されている。ガーダ81は、上梁221及び下梁222と平行に配置される長尺部材により構成され、トロリー82の走行路をなす。
【0044】
ガーダ81及びトロリー82はいずれの形状のものを採用してもよいが、
図3で示すように、ガーダ81にはH形鋼を採用している。ガーダ81として用いるH形鋼は、ウェブが略水平となる姿勢に配置されている。
【0045】
また、トロリー82は、
図4(a)及び(b)で示すように、トロリー本体821と車輪822とにより構成されている。トロリー本体821は、ガーダ81の断面より大きい内空部を有する断面コの字型の外形状を有する。
【0046】
4つの車輪822は、トロリー本体821の内空部であって、ガーダ81を構成するH形鋼の一方のフランジと噛み合う位置に、それぞれ設けている。これにより、トロリー82は、
図1で示すように、ガーダ81に沿って、フレーム本体70の左右方向(処理対象面Fの横方向)に移動が可能となる。
【0047】
≪ガーダ昇降機構≫
ガーダ昇降機構83は、
図3で示すように、昇降ガイド831とキャリッジ832とを備えている。キャリッジ832には、ガーダ81の把持部8321が設けられている。
【0048】
キャリッジ832は、昇降ガイド831に案内されて、支柱71に沿って上下移動可能な機構であれば、いずれの構造のものを採用してもよい。例えば、
図3では、昇降ガイド831にラックを設けるとともに、キャリッジ832にピニオンを設けている。これにより、ガーダ81は、トロリー82とともにガーダ昇降機構83を介して、フレーム本体70の上下方向に移動する。
【0049】
こうして、トロリー82は、フレーム本体70内で上下方向及び左右方向に自在に移動することができる。したがって、このトロリー82に吹付けガンSが設けることで、吹付けガンSはフレーム本体70内を自在に移動することが可能となる。
【0050】
≪吹付けガン≫
吹付けガンSは、市場で取引されているいずれの形状のものも採用可能であり、本実施の形態では
図5で示すように、研削材Gを圧縮空気と共に噴射する噴射ノズルNを備えたブラスト加工用のものを採用している。吹付けガンSは、図示を省略しているが、接続配管を介して研削材供給装置やエアコンプレッサ、切削粉回収装置などに接続されている。
【0051】
この吹付けガンSは、トロリー82に直接搭載してもよいが、本実施の形態では、吹付けガンSと処理対象面Fとの距離を調整可能な位置調整機構90を介して搭載している。
【0052】
≪位置調整機構≫
位置調整機構90は、
図4(a)で示すように、調整レール91と調整レール91上を移動するスライダー92との組み合わせを、トロリー82の上面に、2体設けている。
【0053】
調整レール91は、
図5で示すように、処理対象面Fに対して直交して設けられている。また、この2体のスライダー92には、
図4(b)で示すように、これらに跨るようにして架台93が設置されている。この架台93に、吹付けガンS搭載している。
【0054】
≪コントロールボックス≫
コントロールボックスCは、
図1で示すように、ノズル移動機構80のトロリー82及びガーダ昇降機構83と電気接続されているとともに、これらの動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。また、吹付けガンSを、例えば、フレーム本体70内で上下方向もしくは左右方向に移動させるための操作ボタンが設けられている。
【0055】
作業員が操作ボタンが操作すると、操作ボタンに対応した指令が制御部に入力され、指令を受けた制御部はノズル移動機構80を制御する。したがって、例えば作業員が、吹付けガンSを上昇移動させるための操作ボタンを操作すると、指令を受けた制御部は、
図3で示すようなガーダ昇降機構83のキャリッジ832を、昇降ガイド831に沿って上昇させる。
【0056】
これにより、キャリッジ832の把持部8321に把持されているガーダ81が上昇し、ガーダ81に設けられているトロリー82も上昇する。したがって、トロリー82に設置した吹付けガンSが、フレーム本体70内で上昇移動する。
【0057】
同様に、作業員がコントロールボックスCを用いて、例えば吹付けガンSを左方向に移動させるための操作ボタンを操作する。すると、指令を受けた制御部は、
図1で示すように、トロリー82をガーダ81に沿って左方向に移動させる。したがって、トロリー82に設置した吹付けガンSも、フレーム本体70内で左移動する。
【0058】
このようなコントロールボックスCを用いた吹付けガンSの操作は、フレーム本体70内の上下移動や左右移動だけに限定されるものではない。制御部を適宜設定することにより、例えば、移動速度の調整機能や、非常停止機能、原点復帰機能(吹付けガンSを作動開始位置に戻す機能)など、吹付け施工に好適な様々な機能を操作可能とすることができる。
【0059】
上記の吹付け装置100は、架構体20及び内フレーム60がスリムに形成されている。したがって、処理対象面Fが狭隘な環境下にあっても、現場への搬出入が容易である。また、鋼桁200の下フランジ210を利用して設置することもでき、設置ペースを確保しやすい。
【0060】
さらに、吹付けガンSを備えた内フレーム60をフレーム支持構造10に支持させた簡略な構成であるため、作業ロボットなどと比較して手軽に使用でき、吹付け施工の施工性を大幅に向上することが可能となる。
【0061】
≪≪≪施工対象面の吹付け施工方法≫≫≫
吹付け装置100を利用して、処理対象面Fに向けて研削材Gを噴射し吹付け面を形成する、吹付け施工の実施手順の一例を、以下に示す。
【0062】
まず、
図1及び
図2で示すように、鋼桁200の下フランジ210に接続金具220を取り付け、接続金具220の張出し部230に支持構造移動機構40を介して、架構体20を支持させる。また、架構体20に設けた固定機構30を入状態(吸着力有り)にして処理対象面Fに固定する。
【0063】
さらに、架構体20の内側に内フレーム60を配置し、フレーム本体70とワイヤー52の先端とを接続する。そして、トロリー82に設けた位置調整機構90に、吹付けガンSを設置する。このような組み立て作業は、ヤードなどで事前に済ませておいてもよい。
【0064】
次に、フレーム昇降装置50を操作して、内フレーム60の高さ位置を調整する。コントロールボックスCを操作して吹付けガンSを原点に配置する。例えば
図6(a)では、架構体20の左上隅部を原点に設定している。
【0065】
また、
図4及び
図5を参照して説明したように、位置調整機構90を利用して、処理対象面Fに対する噴射ノズルNの離間間隔を調整する。さらに、位置調整機構90の架台93に対する吹付けガンSの設置角度を調整し、処理対象面Fに対する噴射ノズルNの姿勢や向きなどを調整する。
【0066】
この作業が終了したのち、作業員はコントロールボックスCを操作して吹付けガンSを上下方向及び左右方向に移動させつつ、処理対象面Fに向けて噴射ノズルNより研削材Gを噴射する。
【0067】
例えば、
図6(a)で示すように、吹付けガンSを原点に設定した左上隅部から一筆書き状に、左右方向及び下方向に向けて連続移動させる。すると、処理対象面Fのうちフレーム本体70に対向する範囲全体に研削材Gが吹付けられる。こうして
図6(b)で示すように、吹付け面FEが形成されたところで、研削材Gの噴射を一旦停止させる。
【0068】
次いで、
図7(a)で示すように、フレーム昇降装置50を操作して内フレーム60の高さ位置を調整し、最下部に配置する。また、処理対象面Fの吹付け残し範囲における左上隅部近傍を原点に設定し、コントロールボックスCを操作して吹付けガンSをこの原点に配置する。
【0069】
この作業が終了したのち、作業員は再度、コントロールボックスCを操作して吹付けガンSを上下方向及び左右方向に移動させつつ、処理対象面Fの吹き残し範囲に向けて噴射ノズルNより研削材Gを噴射する。これにより、処理対象面Fにおける架構体20と対向する範囲に吹付け面FEが形成される。こののち、研削材Gの噴射を停止する。
【0070】
この状態で、吹付け面FEに隣接して処理対象面Fの未施工範囲が残存している場合には、この未施工範囲と架構体20が対向するよう、架構体20を移動させる。移動作業は、まず、固定機構30のマグネット工具31を切状態(吸着力無し)にして、架構体20と処理対象面Fとの固定を解除する。次に、支持構造移動機構40を利用して、架構体20を移動させる。
【0071】
そして、固定機構30のマグネット工具31を入状態(吸着力有り)にして、架構体20を処理対象面Fの未施工範囲に固定する。こののち、上記のとおり、吹付け作業を実施する。このような作業を、処理対象面Fのすべてに吹付け面が形成されるまで、繰り返し実施する。
【0072】
上記のとおり、吹付け装置100によれば、十分な作業空間を確保することが困難な道路橋の更新工事などにおいて、せいが高くかつ長大な鋼桁200に広域な処理対象面Fが設定されている場合に有効である。つまり、架構体20内で吹付けガンSを備えた内フレーム60昇降させ、また、架構体20を鋼桁200に沿って移動させつつ、断続的に吹付け施工を実施できる。これにより、吹付け施工の大幅な省力化を図ることができる。
【0073】
また、トロリー82の移動速度を調整する、もしくは位置調整機構90を利用して噴射ノズルNと処理対象面Fとの間隔を調整すれば、これまで作業員の技能によって生じていた吹付けムラが抑制される。したがって、処理対象面Fを研削材Gを吹付けたのちの吹付け面に、高品質な出来形を形成することが可能となる。
【0074】
本発明の吹付け装置は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0075】
例えば、本実施の形態では、支持構造移動機構40を介して架構体20を、鋼桁200の下フランジ210に支持させたが、これに限定するものではない。
図8で示すように、隣り合う鋼桁200を連結するように配置される中段足場300に、架構体20を支持させてもよい。
【0076】
具体的には、中段足場300を鋼桁200の下フランジ210に支持させる際に用いる掴み金具310の上部にガイド部材42を設置する。このため、ガイド部材42にはその下部に、掴み金具310の上部に対応する形状の支持部421を形成している。この支持部421を利用して、掴み金具310の上部にガイド部材42を載置、もしくは挟持金具などを用いて固定する。
【0077】
また、本実施の形態では、位置調整機構90を利用して作業員の手作業により、処理対象面Fに対する噴射ノズルNの離間距離を調整するものとした。しかし、これに限定するものではなく、位置調整機構90もコントロールボックスCを用いて作業員が操作できる構成にしてもよい。
【0078】
さらに、架構体20内で内フレーム60を昇降させるフレーム昇降装置も吊り機構に限定されるものではない。例えば、ノズル移動機構80に設けたガーダ昇降機構83の昇降ガイド831とキャリッジ832のようなラックアンドピニオンの構造を、架構体20の支柱21と内フレーム60を構成するフレーム本体70の上梁721などに設けるなどしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 吹付け装置
10 フレーム支持構造
20 架構体
21 支柱
221 上梁
222 下梁
30 固定機構
31 マグネット工具(固定具)
311 吸着面
312 レバー
32 取付部材
40 支持構造移動機構
41 車輪
42 ガイド部材
421 支持部
50 フレーム昇降装置
51 ウィンチ
52 ワイヤー
53 方向転換プーリ
54 方向転換プーリ
60 内フレーム
70 フレーム本体
71 支柱
721 上梁
722 下梁
80 ノズル移動機構
81 ガーダ
82 トロリー
821 トロリー本体
822 車輪
83 ガーダ昇降機構
831 昇降ガイド
832 キャリッジ
8321 把持部
90 位置調整機構
91 調整レール
92 スライダー
93 架台
200 鋼桁
210 下フランジ
220 接続金具
230 張出し部
300 中段足場
310 掴み金具
M 連結金具
G 研削材(吹付け材料)
C コントロールボックス
F 処理対象面
FE 吹付け面
S 吹付けガン
N 噴射ノズル