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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012065
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】防振ユニット及び精密機械用防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240118BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240118BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20240118BHJP
   F16F 3/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F16F15/04 B
F16F15/08 C
F16F1/18 Z
F16F3/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057189
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022112284
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛川 光雄
(72)【発明者】
【氏名】恩田 暁広
(72)【発明者】
【氏名】兼山 良
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA04
3J048BC04
3J048CB05
3J048DA01
3J048EA07
3J059AA04
3J059AA08
3J059BA19
3J059BA41
3J059BB09
3J059BC01
3J059BC05
3J059GA50
(57)【要約】
【課題】高い振動吸収性及び振動減衰性を有し、小型、軽量、安価であって、精密機械等の被支持体を支持するのに好適な防振ユニット及び精密機械用防振装置を提供する。
【解決手段】基台と精密機械との間に介在して精密機械を支持するとともに、基台または精密機械に印加された振動を吸収する防振ユニット10であって、板状のばね部材をU字型に形成したばね部11と、基台に接続される第1接続部12と、ばね部11の一端部と第1接続部12との間に設けられた第1延長部16と、精密機械に接続される第2接続部13と、ばね部11の他端部と第2接続部13との間に設けられた第2延長部17とを有する板ばね部材14と、板ばね部材14の振動を吸収する防振部材15と、を備え、防振部材15は、ばね部11の内側面に固着され、当該ばね部11の振動を減衰させる振動減衰部20を有する。また、この防振ユニット10を4個用いて精密機械用防振装置を構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と被防振体との間に介在して前記被防振体を支持するとともに、前記基台または前記被防振体に印加された振動を吸収する防振ユニットであって、
板状のばね部材をU字型に形成したばね部と、前記基台に接続される第1接続部と、前記ばね部の一端部と前記第1接続部との間に設けられた第1延長部と、前記被防振体に接続される第2接続部と、前記ばね部の他端部と前記第2接続部との間に設けられた第2延長部とを有する板ばね部材と、
前記板ばね部材の振動を吸収する防振部材と、を備え、
前記防振部材は、
前記ばね部の少なくとも内側面に固着され、当該ばね部の振動を減衰させる振動減衰部を有する
ことを特徴とする防振ユニット。
【請求項2】
基台と被防振体との間に介在して前記被防振体を支持するとともに、前記基台または前記被防振体に印加された振動を吸収する防振ユニットであって、
板状のばね部材をU字型に形成したばね部と、前記基台に接続される第1接続部と、前記ばね部の一端部と前記第1接続部との間に設けられた第1延長部と、前記被防振体に接続される第2接続部と、前記ばね部の他端部と前記第2接続部との間に設けられた第2延長部とを有する板ばね部材と、
前記板ばね部材の振動を吸収する防振部材と、を備え、
前記防振部材は、
前記ばね部の少なくとも内側面に固着され、当該ばね部の振動を減衰させる振動減衰部を有し、
前記ばね部は、U字型に形成された開口部が第1接続部側へ開口して配置され、
前記第1延長部は、前記ばね部の一端部から第1接続部へ傾斜して延伸して設けられ、
前記第2延長部は、前記ばね部の他端部から第2接続部へ延伸して設けられた
ことを特徴とする防振ユニット。
【請求項3】
前記防振部材は、
前記振動減衰部に加え、前記第1延長部と前記第2延長部の対向面に、少なくとも一方の対向面から他方の対向面に向かって突出する突出部を有し、前記第1接続部と前記第2接続部とが所定距離以上近づいた場合に前記突出部が当接して、前記第1接続部と前記第2接続部とが互いに近づく方向への移動を規制するストッパを備え、
前記振動減衰部と前記ストッパとが一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防振ユニット。
【請求項4】
前記ばね部の内側面に固着された部位の前記振動減衰部は、前記ばね部の縁部の内側面に固着された部位の前記振動減衰部よりも厚い
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防振ユニット。
【請求項5】
前記ばね部の内側面に固着された部位の前記振動減衰部は、前記ばね部の縁部の内側面に固着された部位の前記振動減衰部よりも厚い
ことを特徴とする請求項3に記載の防振ユニット。
【請求項6】
前記板ばね部材の前記ばね部の前記振動減衰部とは反対側である外側に備えられ、前記第1接続部側及び前記第2接続部側の少なくとも一方から他方に向かって突出する外側突出部を有し、前記第1接続部と前記第2接続部とが所定距離以上離間した場合に前記外側突出部が当接して、第1接続部と前記第2接続部とが互いに離間する方向へ移動して前記ばね部が開くような変形を規制する第2ストッパを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の防振ユニット。
【請求項7】
前記ばね部の一部を前記ばね部の前記振動減衰部とは反対側である外側に突出し、前記第2ストッパに内蔵されて当該第2ストッパを支持する第2ストッパ支持部を備えた
ことを特徴とする請求項6に記載の防振ユニット。
【請求項8】
前記ばね部の前記第1接続部と前記第2接続部との間の延長方向中間位置である中間部の幅は、前記第1接続部側及び前記第2接続部側の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の防振ユニット。
【請求項9】
前記ばね部は、前記第1接続部と前記第2接続部の少なくとも一方から前記中間部に向かって幅が減少していることを特徴とする請求項8に記載の防振ユニット。
【請求項10】
前記板ばね部材は、
前記第1延長部及び/又は前記第2延長部に、一方の対向面から他方の対向面に向かって突出するように屈曲して形成された屈曲部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防振ユニット。
【請求項11】
前記板ばね部材は、
前記第1延長部及び/又は前記第2延長部に、一方の対向面から他方の対向面に向かって突出するように屈曲して形成された屈曲部を備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の防振ユニット。
【請求項12】
前記板ばね部材は、
前記第1延長部及び/又は前記第2延長部に、一方の対向面から他方の対向面に向かって突出するように屈曲して形成された屈曲部を備えた
ことを特徴とする請求項5に記載の防振ユニット。
【請求項13】
前記板ばね部材は、
前記第1延長部及び/又は前記第2延長部に、一方の対向面から他方の対向面に向かって突出するように屈曲して形成された屈曲部を備えた
ことを特徴とする請求項8に記載の防振ユニット。
【請求項14】
精密機械を基台に支持する精密機械用防振装置であって、
前記基台と前記精密機械との間に介在して前記精密機械を支持するとともに、前記基台または前記精密機械に印加された振動を吸収する請求項1または2の防振ユニットを複数備えたことを特徴とする精密機械用防振装置。
【請求項15】
基台と被防振体との間に介在して前記被防振体を支持するとともに、前記基台または前記被防振体に印加された振動を吸収する防振ユニットであって、
前記基台に接続される第1接続部と、板状のばね部材をU字型に形成した第1のばね部と、前記第1のばね部の一端部と前記第1接続部との間に設けられた第1延長部と、
前記被防振体に接続される第2接続部と、板状のばね部材をU字型に形成し前記第1のばね部の開口における対向方向に開口するよう配置された第2のばね部と、前記第2のばね部の他端部と前記第2接続部との間に設けられた第2延長部と、
前記第1のばね部の他端部と前記第2のばね部の一端部とを接続する中間延長部と、
を有する板ばね部材と、
前記板ばね部材の振動を吸収する防振部材と、を備え、
前記防振部材は、
前記第1のばね部及び前記第2のばね部の少なくとも内側面に固着され、当該第1のばね部及び第2のばね部の振動を減衰させる振動減衰部を有する
ことを特徴とする防振ユニット。
【請求項16】
精密機械を基台に支持する精密機械用防振装置であって、
前記基台と前記精密機械との間に介在して前記精密機械を支持するとともに、前記基台または前記精密機械に印加された振動を吸収する請求項15の防振ユニットを複数備えたことを特徴とする精密機械用防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被防振体を支持するとともに振動を吸収する防振ユニット及び精密機械用防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道等の車両、ロケットを含む航空機、油圧ショベル等の各種作業機器等に搭載される各種センサ、コントロールユニット、精密動作するアクチュエータユニット等の精密機械には、振動が印加されることを抑制するために防振装置が使用されている。防振装置の多くは、精密機械と当該精密機械を支持する基台との間に介装されている。また、エンジン等の振動を発生する機械と基台との間にも、基台への振動の伝達を抑制するために、防振装置が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、船舶用エンジンと基台との間に備えられる防振装置(防振ユニット)が開示されている。特許文献1の防振装置は、U字型に形成した板ばねを使用しており、基台とエンジン等の被支持体との間に備えられ、当該防振装置によって被支持体を基台から上方に浮かすように支持している。また、強い振動によって基台と被支持体とが近づいて衝突した場合に衝撃を低下させるために、被支持体から下方に突出するロッド体を設け、このロッド体の頭部に対向するようにバンプクッションたる弾性部材が配設されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両にコンパクトディスクプレーヤ―等の精密機械を搭載するための防振装置(防振ユニット)が開示されている。特許文献2の防振装置は、コンパクトディスクプレーヤ―等の被支持体と基台との間にオーム字状に形成したばね部材を備え、複数の防振装置によって被支持体を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-8793号公報
【特許文献2】実開昭61-34696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、車両や航空機、作業機械等にセンサ、コントロールユニット、アクチュエータユニット等の精密機械が多数搭載されるようになってきており、この精密機械の支持部には、高い振動吸収性及び振動減衰性を有するとともに、小型、軽量、安価な防振装置が要求されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された防振装置は、板ばねによって振動を吸収することは可能であったとしても、減衰機構を別に有していないため、板ばねの内部減衰だけでは吸収した振動エネルギーを十分に減衰し消散することができない。すなわち、速やかな振動収束は期待できない。また、印加された振動が高周波振動の場合には、板ばね自体の固有値と一致した際、共振(サージング)が生じるおそれがある。
【0008】
特許文献1に記載された防振装置のロッド体及び弾性部材は、基台に対する被支持体の上下方向の過大変位を制限するとともに破損を抑制するためのストッパとして機能するものであるが、ロッド体や弾性部材を別に用意して取り付けする必要があり、構造が複雑化し、小型、軽量、安価な防振装置とすることが困難である。
【0009】
一方、特許文献2に記載された防振装置では、オーム字状バネ体が2枚の板ばね材で粘弾性体を挟んで形成した構造であるので、高周波微振動に対しては板ばね材で挟持された粘弾性体により良好な振動減衰性を有するが、比較的大きい振幅の振動に対しては十分な減衰性を得ることが困難である。また、ばね部材の構造が複雑であるので高価になるといった問題点がある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、高い振動吸収性及び振動減衰性を有し、小型、軽量、安価であって、精密機械等の被支持体を支持するのに好適な防振ユニットと、当該防振ユニットを用いた精密機械用防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の防振ユニットは、基台と被防振体との間に介在して前記被防振体を支持するとともに、前記基台または前記被防振体に印加された振動を吸収する防振ユニットであって、板状のばね部材をU字型に形成したばね部と、前記基台に接続される第1接続部と、前記ばね部の一端部と前記第1接続部との間に設けられた第1延長部と、前記被防振体に接続される第2接続部と、前記ばね部の他端部と前記第2接続部との間に設けられた第2延長部とを有する板ばね部材と、前記板ばね部材の振動を吸収する防振部材と、を備え、前記防振部材は、前記ばね部の少なくとも内側面に固着され、当該ばね部の振動を減衰させる振動減衰部を有する。
【0012】
また、本発明の防振ユニットは、基台と被防振体との間に介在して前記被防振体を支持するとともに、前記基台または前記被防振体に印加された振動を吸収する防振ユニットであって、前記基台に接続される第1接続部と、板状のばね部材をU字型に形成した第1のばね部と、前記第1のばね部の一端部と前記第1接続部との間に設けられた第1延長部と、前記被防振体に接続される第2接続部と、板状のばね部材をU字型に形成し前記第1のばね部の開口における対向方向に開口するよう配置された第2のばね部と、前記第2のばね部の他端部と前記第2接続部との間に設けられた第2延長部と、前記第1のばね部の他端部と前記第2のばね部の一端部とを接続する中間延長部と、を有する板ばね部材と、前記板ばね部材の振動を吸収する防振部材と、を備え、前記防振部材は、前記第1のばね部及び前記第2のばね部の少なくとも内側面に固着され、当該第1のばね部及び第2のばね部の振動を減衰させる振動減衰部を有する。
【0013】
また、本発明の精密機械用防振装置は、基台と精密機械との間に介在して精密機械を支持するとともに、基台または精密機械に印加された振動を吸収し減衰する上記の防振ユニットを複数備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防振ユニットによれば、板ばね部材によって基台または精密機械に印加される振動を吸収し、振動減衰部によって吸収された振動エネルギーを減衰消散する。
【0015】
振動減衰部がU字型に形成されたばね部の内側面に固着されているので、ばね部の変形に追従し基台と精密機械とのあらゆる方向の相対移動に対して高い振動減衰効果を得ることができる。特に、ばね部が圧縮方向(基台と被防振体が接近する方向)に変形する場合、振動減衰部がU字型に形成されたばね部で挟み込まれて圧縮されることになるので、振動減衰部の変形による減衰を奏するとともに、圧縮により生じる反発力がばね部のバネ定数に重畳される。これにより、上下方向に強いばね定数を持つつとともに強い振動減衰性を有し、また、その他の方向変位に対しては、柔らかい防振ユニットとすることができる。
【0016】
これにより、高い振動吸収性及び振動減衰性を有し、小型、軽量、安価であって、精密機械等の被支持体を支持するのに好適な防振ユニット、及びこれを用いた精密機械用防振装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の精密機械用防振装置の正面図である。
図2】第1実施形態の精密機械用防振装置の底面図である。
図3】本発明の第1実施形態の防振ユニットの正面図である。
図4】第1実施形態の防振ユニットの上面図である。
図5】第1実施形態の防振ユニットの右側面図である。
図6】本発明の第2実施形態の防振ユニットの正面図である。
図7】本発明の第3実施形態の防振ユニットの正面図である。
図8】第3実施形態の防振ユニットの上面図である。
図9】第3実施形態の防振ユニットにおける第2ストッパの機能を示す説明図である。
図10】第3実施形態の防振ユニットにおける第1ストッパ及び第2ストッパの機能を示す説明図である。
図11】第3実施形態における板ばね部材の形成方法を示す説明図である。
図12】本発明の第4実施形態の防振ユニットの上面図である。
図13】本発明の第5実施形態の防振ユニットの上面図である。
図14】本発明の第6実施形態の防振ユニットの正面図である。
図15】本発明の第7実施形態の防振ユニットの正面図である。
図16】本発明の第8実施形態の防振ユニットの正面図である。
図17】第8実施形態の防振ユニットの右側面図である。
図18】第8実施形態の防振ユニットを使用した本発明の第2実施形態の精密機械用防振装置の側面図である。
図19】本発明の第9実施形態の防振ユニットの正面図である。
図20】圧縮荷重を受けたときの状態を示す第9実施形態の防振ユニットの正面図である。
図21】本発明の第3実施形態の精密機械用防振装置の底面図である。
図22】本発明の第4実施形態の精密機械用防振装置の底面図である。
図23】本発明の第5実施形態の精密機械用防振装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態の精密機械用防振装置の構成>
図1、2は、本発明の第1実施形態の精密機械用防振装置40の外形図であり、図1は正面図、図2は底面図である。
【0020】
図1、2に示すように、本発明の第1実施形態の精密機械用防振装置40は、基台1と精密機械2(被防振体)との間に介在し、基台1に対して上方に間隔をおいて配置した精密機械2を支持する装置である。精密機械2は、例えば車両に搭載されたコントロールユニットやセンサのように、振動を受け易い環境下に設置される場合がある。
【0021】
精密機械2は、例えば略矩形箱状である。以下、水平方向に延びる精密機械2の底面2aの長手方向を左右方向、短手方向を前後方向として説明する。
【0022】
本実施形態の精密機械用防振装置40は、防振ユニット10を4個備えて構成されている。4個の防振ユニット10は、精密機械2の下部を支持するが、矩形状である精密機械2の底面2aの四隅付近に配置されている。4個の防振ユニット10は、夫々個々に精密機械2を支持する構造となっている。なお、例えば精密機械2を載置する台座に4個の防振ユニット10を備え、台座と4個の防振ユニット10を一体的に構成して精密機械用防振装置40としてもよい。
【0023】
防振ユニット10の下部は、ボルト41によって基台1に固定され、防振ユニット10の上部は、ボルト42によって精密機械2の下部に固定されている。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の精密機械用防振装置40では、精密機械2の底面2aの四隅の位置に配置された防振ユニット10のうち、対角位置の一組の防振ユニット10の幅方向の中心線を結ぶ線Lcが、精密機械2の重心位置Cの前後左右位置を夫々通過するように、詳しくは防振ユニット10の中心線を結ぶ線Lcが、重心位置Cを通る鉛直線上で交差するように、防振ユニット10の後述するU字状のばね部11の開口側の向きが設定されている。
【0025】
また、防振ユニット10における基台1との取り付け部及び精密機械2との取り付け部は、基台1と精密機械2との間に位置しているが、防振ユニット10の上下方向中間部が精密機械2よりも側方に突出して配置されている。
【0026】
<第1実施形態の防振ユニットの構造>
図3~5に示すように、本発明の第1実施形態の防振ユニット10は、精密機械2と基台1との間に配置された板ばね部材14と、板ばね部材14の振動を減衰する防振部材15と、を備えている。なお、以下の各実施形態の防振ユニットにおいては、精密機械用防振装置において配置された状態での上下方向を使用して説明する。
【0027】
板ばね部材14は、例えば金属の矩形板状の弾性材をU字型に屈曲して形成されている。板ばね部材14の一端部及び他端部は向かい合って互いに平行に延びている。板ばね部材14は、U字状に屈曲した部位であるばね部11と、一端部である第1接続部12と、他端部である第2接続部13と、第1接続部12とばね部11との間の部位である第1延長部16と、第2接続部13とばね部11との間の部位である第2延長部17と、を有している。第1接続部12及び第2接続部13には、夫々ボルト穴18が設けられている。第1接続部12は、下方側に配置され基台1に接続される。第2接続部13は上方側に配置され、精密機械2に接続される。第1延長部16及び第2延長部17は、それぞれ第1接続部12とばね部11の一端を接続し、第2接続部13とばね部11の他端を接続する部位を指し、一体且つ境目無しに備えられることが好ましい。本実施形態において、ばね部11は、板ばね部材14のうち屈曲している部位であり、第1接続部12と第1延長部16、及び第2接続部13と第2延長部17は、夫々直線状に延びた部位である。
【0028】
防振部材15は、例えばゴムあるいは樹脂エラストマー等の弾性を有する部材によって構成され、ばね部11の内側面に接着材や加硫接着等によって固着されており、ばね部11の振動、ひいては板ばね部材14の振動を減衰させる機能を有する。
【0029】
防振部材15は、ばね部11から第1延長部16及び第2延長部17まで夫々延びている。防振部材15の第1延長部16側(即ち第1接続部12側)の端部には、第2延長部17側に向かって延びる第1突出部23が備えられている。また、防振部材15の第2延長部17側(即ち第2接続部13側)の端部には、第1延長部16側に向かって延びる第2突出部24が備えられている。第1突出部23と第2突出部24とは、上下方向に離間した位置に配置され、その突出方向先端部は互いに向かい合う対向面を有している。なお、第1突出部23及び第2突出部24が、本発明の第1ストッパ22に該当する。
【0030】
精密機械2を4個の防振ユニット10によって支持した場合に、第1突出部23の先端部の対向面と第2突出部24の先端部の対向面とが所定距離離間するように、板ばね部材14のばね定数、第1突出部23及び第2突出部24の突出長さが設定されている。
【0031】
以上のように、精密機械2は4個の防振ユニット10によって支持され、精密機械2と基台1とが離間して配置されている。したがって、例えば車両の移動に伴う基台1の振動が精密機械2に直接に伝わらず、防振ユニット10に伝達される。防振ユニット10は、板状のばね部材をU字状に屈曲して形成したばね部11を有しているので、基台1の振動がばね部11に伝達して撓むことで振動が吸収され、精密機械2側に振動が印可されることを抑制することができる。
【0032】
さらに、ばね部11の内側面に防振部材15が固着されているので、U字型に形成された板ばね部材14の振動により内側面に挟持された防振部材15が強制的に変形され防振部材15の内部減衰により振動エネルギーが熱として、減衰、消散され、速やかに振動が収束される。したがって、板ばね部材のみの防振ユニットと比較して高い振動減衰効果を得ることができる。
【0033】
また、板ばね部材14が圧縮方向(基台1と被防振体(精密機械2)が接近する方向)に変形する場合、防振部材15がU字型に形成されたばね部11で挟み込まれて圧縮されることになるので、防振部材15の圧縮により生じる反発力がばね部11のバネ定数に重畳され、被防振体を支承する機能を備えた防振装置に適する。
【0034】
また、防振ユニット10に印加された高周波振動が板ばね部材の固有値と一致した場合でも、ばね部11に固着された防振部材15(振動減衰部20)によって減衰されるため共振(サージング)が抑えられる。
【0035】
このように、ばね部11及び振動減衰部20を有する防振ユニット10によって、精密機械2の保護を図ることができる。
【0036】
また、基台1と精密機械2とが相対的に大きく振動して、板ばね部材14及び防振部材15の弾性力に抗して第1接続部12と第2接続部13とが近づいたとしても、弾性を有する第1突出部23と第2突出部24とが接触し、精密機械2と基台1との衝撃的接触を防止することができる。
【0037】
また、振動減衰部20と第1突出部23と第2突出部24とが防振部材15として一体的に形成されており、この防振部材15と板ばね部材14の2個の部品によって防振ユニット10を構成することができるので、防振ユニット10を簡単な構成にし、小型、軽量、かつ安価に製造することができる。
【0038】
また、防振ユニット10を、夫々、U字型に形成されたばね部11の開口側が精密機械2の重心位置Cを通る鉛直線に向かうようにX字状に配置することで、精密機械2の左右前後及び斜めのいずれの移動方向にも対応しバランスよく振動を吸収し減衰することができる。
【0039】
<他の実施形態の防振ユニットの構造>
以下、他の実施形態の防振ユニットについて説明する。
【0040】
図6は、本発明の第2実施形態の防振ユニット50の正面図である。
【0041】
図6に示すように、第2実施形態の防振ユニット50は、第1実施形態の防振ユニット10に対して、ばね部11に固着した振動減衰部20の厚さが大きくなっている。詳しくは、ばね部11の内側面に固着された部位の振動減衰部20の厚さaは、ばね部11の縁部の内周面に固着された部位の振動減衰部20の厚さbよりも厚く形成されている。
【0042】
このように、ばね部11に固着した防振部材15の振動減衰部20が厚くなっていることで、振動減衰部20のゴムばねが付加されるとともに、より強い振動減衰効果を得ることができる。詳しくは、防振ユニット50において、U字状に形成されたばね部11の内側面の振動減衰部20の中央がより厚く形成されているため、第1接続部12と第2接続部13とが近づく方向に移動した場合に、ばね部11の内側の振動減衰部20が圧縮されてより大きなゴムばねが重畳されるとともに振動振幅量(変位量)に応じた減衰性がより大きくなる。すなわち、より非線形性の強い振動吸収性及び減衰効果を得ることができる。
【0043】
図7、8は、本発明の第3実施形態の防振ユニット60の構造を示し、図7は正面図、図8は上面図である。図9は、第3実施形態の防振ユニット60における第2ストッパの機能を示す説明図である。図10は、第3実施形態の防振ユニット60における第1ストッパ及び第2ストッパの機能を示す説明図である。図11は、第3実施形態の防振ユニット60の板ばね部材61の製造方法を示す説明図である。
【0044】
図7~10に示すように、第3実施形態の防振ユニット60は、第1接続部12と第2接続部13とがばね部11の中央部を支点として互いに離間するとき、つまりU字型に形成されたばね部11の端部が弧を描くように開くとき、その過大変位を規制し(図9)、また、第1接続部12と第2接続部13とが直線的に接近するとき、つまり第1接続部12の下面と第2接続部13の上面が平行状態で接近するとき、その過大変位を第1ストッパ22と協働して規制する(図10)第2ストッパ30を更に備えている。第2ストッパ30は、ばね部11の外側に備えられ、第1接続部12側から第2接続部13側に向かって突出する外側突出部31と、第2接続部13側から第1接続部12側に向かって突出する外側突出部32により構成されている。これにより、基台1に対する精密機械2の上下方向の過大変位を効果的に抑制することができる。
【0045】
板ばね部材61には、第2ストッパ30を支持する第2ストッパ支持部33、34が備えられている。第2ストッパ支持部33、34は、第1実施形態の板ばね部材14の一部をばね部11の外側に突出して形成されている。第2ストッパ支持部33は第1接続部12側の第1延長部16から直線的に外方に延び、外側突出部31を支持する。第2ストッパ支持部34は第2接続部13側の第2延長部17から直線的に外方に延び、外側突出部32を支持する。
【0046】
図11に示すように板ばね部材61の製造方法は、プレス等により、矩形平板状のばね部材の左右両端部近傍にボルト穴18を夫々設けるとともに、中間部にコの字状の切り込みを左右対称に設けてから、左右の端部を近づけるようにU字状に折り曲げる。これにより、切り込まれた内側の部位が折り曲げられずに、屈曲した部位であるばね部11の外側に直線状に残るように突出して第2ストッパ支持部33、34が形成され、U字状の板ばね部材61が形成される。そして、板ばね部材61の内側面に第1実施形態と同様に振動減衰部20を形成するとともに、ばね部11の外側面に振動減衰部20と同様の弾性材を第2ストッパ支持部33、34を内蔵するように形成して、外側突出部31、32を形成する。この場合、第2ストッパ支持部33、34がばね部材で形成されることになるため、第2ストッパ30は、第2ストッパ支持部33、34により弾性的に支持される。
【0047】
以上のように、第3実施形態の防振ユニット60は、簡単な構成で、第1接続部12と第2接続部13とが互いに接近する方向と離間する方向への夫々の移動を適切に規制することができる。これにより、例えば基台1等の急な移動によって上下方向に大きな加速度を受けた場合でも、基台1と精密機械2との相対移動を抑制し、第1接続部12と第2接続部13との衝撃的な接触を回避して、精密機械2の保護を図ることができる。なお、本実施例における第2ストッパ支持部33、34は、板ばね部材61の一部から形成して設けたが、これに限定するものではなく、別途、支持片を用意して板ばね部材61に溶接などを用いて結合することとしてもよい。
【0048】
図12は、本発明の第4実施形態の防振ユニット70の構造を示す上面図である。図13は、本発明の第5実施形態の防振ユニット80の構造を示す上面図である。
【0049】
図12、13に示すように、第4実施形態の防振ユニット70及び第5実施形態の防振ユニット80は、第1実施形態の防振ユニット10に対して板ばね部材14の形状が異なっている。
【0050】
第4実施形態の防振ユニット70の板ばね部材14と、第5実施形態の防振ユニット80の板ばね部材14は、ばね部11の中間部35の幅が、第1接続部12側及び第2接続部13側の幅よりも小さく形成されている。第1延長部16及び第2延長部17は、第1接続部12及び第2接続部13と幅が同一である。
【0051】
図12に示すように、第4実施形態の防振ユニット70においては、第1延長部16及び第2延長部17に対してばね部11の幅は一定としている。したがって、第1延長部16とばね部11との境界、及び第2延長部17とばね部11との境界において段差を有するように、板ばね部材14の幅が変化している。
【0052】
一方、図13に示すように、第5実施形態の防振ユニット80においては、第1延長部16及び第2延長部17に対してばね部11の幅が小さくなっているが、ばね部11の幅は一定でなく、第1延長部16及び第2延長部17からばね部11の延長方向中間位置である中間部35に向かって徐々に減少するように構成している。
【0053】
このように、ばね部11の中間部35の幅が両端部より小さくする(第4実施形態)ことで、ばね部11における弾性力を小さく、すなわち、上下方向はもちろん前後及び左右方向、加えて、ばね部11における捩れ方向を柔らかくすることができる。そして、ばね部11の中間部35の幅が両端部より中間部35に向けて徐々に減少するようにする(第5実施形態)ことで、上下方向、前後及び左右方向のバネ定数の低下を抑えながらばね部11における捩れ方向を柔らかくすることができる。このようにばね部11の形状を変更することで、ばね部11の弾性力を任意に変更することができ、防振ユニット70、80における振動吸収性能を容易に変更した設定にすることができる。但し、この防振ユニット70、80における前後及び左右方向の弾性力、防振ユニット70、80の捻じれについては、防振ユニット70、80の設置個数や配置、後述するボルト41、42による連結部が回転可能であるか否かによって影響を受ける。連結部を回転可能に連結することによって、回転可能な範囲で防振ユニット70、80が取り得る最適な位置に回転する。この最適な位置とは、受荷した荷重に対してばね部11が最も緩和可能な位置である。
【0054】
図14は、本発明の第6実施形態の防振ユニット90の正面図である。
【0055】
図14に示すように、第6実施形態の防振ユニット90は、板ばね部材14のばね部11と第1延長部16及び第2延長部17との夫々の間に、一方の対向面から他方の対向面に向かって突出するように、言い換えると第1延長部16から第2延長部17に向かって、及び第2延長部17から第1延長部16に向かって夫々突出するように、屈曲して形成された屈曲部36を備えている。
【0056】
ばね部11と第1延長部16との間に設けられた屈曲部36は、第1接続部12側から第2接続部13側に向かって突出するように屈曲している。ばね部11と第2延長部17との間に設けられた屈曲部36は、第2接続部13側から第1接続部12側に向かって突出するように屈曲している。
【0057】
このように屈曲部36を備えることで、当該屈曲部36が板ばね部材14の変形端部になり、板ばね部材14の変形が第1接続部12、第2接続部13に伝播することが防止される。すなわち、板ばね部材14が印加された振動により、繰り返し圧縮、伸長、捻じれ変形するとき、第1接続部12、第2接続部13側に伝播される応力を、板ばね部材14の幅方向に横断し帯状に形成された屈曲部36で受けることになる。これにより、第1接続部12、第2接続部13、特にボルト穴18の端部に応力が集中して破断することを抑制できる。これにより、防振ユニット90の耐久性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1突出部23及び第2突出部24内に夫々屈曲部36が位置する。これにより、第1突出部23及び第2突出部24の夫々において、その厚みを調整することができる。すなわち、弾性体からなる第1ストッパ22の緩衝性を調整することができる。
【0059】
図15は、本発明の第7実施形態の防振ユニット100の正面図である。図15に示すように、第7実施形態の防振ユニット100は、第6実施形態の防振ユニット90に対してばね部11の屈曲半径が小さく、第1延長部16及び第2延長部17が第1接続部12側及び第2接続部13側の一方から他方に向かって傾斜して延びている。
【0060】
屈曲部36は、第1延長部16と第1接続部12との間、及び第2延長部17と第2接続部13との間に夫々備えられている。
【0061】
このように、第1延長部16及び第2延長部17の長さを長くすることで、板ばね部材14が上下方向により撓みやすくなり、より細かい(小さい)振動を吸収するのに好適なものにすることができる。
【0062】
図16は、本発明の第8実施形態の防振ユニット110の正面図である。図17は、第8実施形態の防振ユニット110の右側面図である。図18は、第8実施形態の防振ユニット110を使用した第2実施形態の精密機械用防振装置190の側面図である。
【0063】
図16図17に示すように、第8実施形態の防振ユニット110は、第1実施形態の防振ユニット10に対し、ばね部11の位置が異なる。
【0064】
ばね部11は、第2接続部13よりも第1接続部12側とは反対側の上方に位置しており、第1接続部12側に向かって開口するように配置されている。これに伴い、第1接続部12とばね部11との間の第1延長部16は、ばね部11から第1接続部12に向かって下方に傾斜して延伸されるとともに、第2接続部13とばね部11との間の第2延長部17は、ばね部11から第2接続部13に向かって下方に傾斜している。
【0065】
第1延長部16及び第2延長部17の長さをより長く確保し、傾斜して配置しているので、上下方向変位においてはばね部11が回転するように変形し、左右方向においてはばね部11のU字状端部が開閉するように変形する。つまり、上述した他の防振ユニットとは変形モードが異なる。特に、上下方向変位においてばね部11の内面側に配置された振動減衰部20が挟み込まれないため、上下方向変位におけるバネ定数を低くすることができる。すなわち、より柔らかい防振ユニットとすることができる。防振ユニット110およびその他の防振ユニットを印加される振動に応じて適宜組み合わせてもよい。
【0066】
なお、図18に示すように、第8実施形態の防振ユニット110を使用した第2実施形態の精密機械用防振装置190では、防振ユニット110のばね部11が精密機械2の底面2aより上方に位置し、精密機械2の側面より外方に位置することになる。この場合、ばね部11が精密機械2の側面より外方によけることができるので精密機械2と基台1との隙間を小さくすることができる。また、ばね部11の大きさが精密機械2と基台1との隙間の制約をうけない。なお、第1延長部16及び第2延長部17が斜めに傾斜していることで、第1延長部16及び第2延長部17の長さを確保しつつも、精密機械2の側面からの突出を抑制してコンパクトに構成することができる。
【0067】
図19は、本発明の第9実施形態の防振ユニット120の正面図である。図20は、圧縮荷重を受けたときの状態を示す第9実施形態の精密機械用防振装置120の正面図である。
【0068】
図19図20に示すように、第9実施形態の防振ユニット120は、第1実施形態の防振ユニット10に対し、板バネ部材の形状が異なる。
【0069】
本実施形態の板バネ部材121は、S字状に屈曲して形成されている。詳しくは、板バネ部材121は、第1実施形態におけるばね部11と同様に形成された2個のU字状のばね部122A、122Bが、それぞれ開口方向が互いに逆方向を向き上下方向にオフセットして配置され、下側に位置する第1のばね部122Aの上端部(他端部)と上側に位置する第2のばね部122Bの下端部(一端部)とが中間延長部123を介して接続した形状になっている。夫々のU字状のばね部122A、122Bには、第1実施形態と同様に内側に振動減衰部20を有する防振部材15が備えられている。なお、本実施形態の防振ユニット120では、第1実施形態の防振ユニット10における第1突出部23及び第2突出部24が設けられていないが、各防振部材15に夫々設けてもよい。
【0070】
2個のばね部122A、122Bは、左右方向(図19の左右方向)にオフセットして配置されている。防振ユニット120に荷重が加えられていない場合、または振動が加えられていない静止状態において、中間延長部123は、第1接続部12及び第2接続部13と略平行に伸びるように配置されていることが好ましいが、これに限定されない。
【0071】
図20に示すように、防振ユニット120が例えば圧縮荷重を受けて、第1接続部12と第2接続部13とが互いに近づく方向に移動した際に、板バネ部材121とともに2個の振動減衰部20で振動を吸収する。
【0072】
第1接続部12と第2接続部13とが互いに近づく方向に移動した際に、第1のばね部122Aと第2のばね部122Bとが左右にオフセットされているため、それぞれの変形を阻害しない。また、このとき、中間延長部123の第1接続部12側の端部が第2接続部13側の端部よりも第1接続部12側(図20での下方)に近くなるように傾斜する。
【0073】
これにより、防振ユニット120は、第1接続部12と第2接続部13とが互いに近づく方向に移動するとき、第1のばね部122A及び第2のばね部122Bそれぞれの一端部と他端部が、第1のばね部122A及び第2のばね部122BのU字状部位を中心として円弧状に変位し近接する。また、防振ユニット120は、第1接続部12と第2接続部13とが互いに遠ざかる方向に移動するとき、第1のばね部122A及び第2のばね部122Bそれぞれの一端部と他端部が、第1のばね部122A及び第2のばね部122BのU字状部位を中心として円弧状に変位し離間する。つまり、夫々のばね部のU字状部位を中心に一端部及び他端部が円弧状に開閉する変形となるので、U字状部位全体の変形となり1点に応力が集中しづらく、柔らかくできる。さらにU字部位の曲率が大きく変化しないので、板バネ部材121が左右方向に大きく変形せず、防振ユニット120の周囲に移動(変形)用のスペースが確保できない場合に適した防振ユニット120にすることができる。
【0074】
また、ばね部(122A、122B)及び防振部材15をそれぞれ2個有し、それぞれの変形を互いに阻害しないので、ばね部(122A,122B)の変形がそれぞれに振り分けられ、防振ユニット120全体としてのばね定数を低減させて、振動吸収性を向上させることができる。また、ばね部122A、122Bでの変形が抑制されることで、ばね部122A、122Bの耐久性を向上させることができる。
【0075】
また、上述のとおり、本実施形態においては、夫々のばね部122A、122BのU字状部位を中心に一端部及び他端部が円弧状に開閉する変形となるが、第1接続部12及び第2接続部13が、それぞれ基台1と精密機械2の底面2aに接続固定されている場合は、実体として第1のばね部122Aの一端部、第2のばね部122Bの他端部が大きく変位することになる。このとき、第1接続部12及び第2接続部13に第1延長部16及び第2延長部17、これらを介して接続される第1のばね部122Aの一端部及び第2のばね部122Bの他端部は変形が抑制されるので、第1接続部12と基台1との接続部、及び第2接続部13と精密機械2の底面2aとの接続部(固定部)における応力集中を低減させ、当該接続部における耐久性を向上させることができる。
【0076】
以上の実施形態のように、板ばね部材14及び防振部材15の形状を適宜変更することで、振動吸収性および振動減衰性を適宜変更、組み合わせして設定し、要求仕様に適した制振性能を有する防振ユニットを提供することができる。
【0077】
<他の実施形態の精密機械用防振装置の構成>
以下、他の実施形態の精密機械用防振装置について説明する。
【0078】
図21は、本発明の第3実施形態の精密機械用防振装置200の底面図である。図22は、本発明の第4実施形態の精密機械用防振装置210の底面図である。図23は、本発明の第5実施形態の精密機械用防振装置220の底面図である。
【0079】
上記の第1実施形態の精密機械用防振装置40では、防振ユニット10が水平面で精密機械2の重心位置Cに向くように配置されているが、精密機械2に対する防振ユニット10の取り付け位置や取り付け向きを適宜変更してもよい。
【0080】
例えば、例えば図21に示すように、第3実施形態の精密機械用防振装置200では、防振ユニット10におけるU字状のばね部11の開口側が精密機械2の長手方向である左右方向に向き、防振ユニット10が精密機械2の左右端面から左右方向に突出するように配置されている。
【0081】
また、図22に示すように、第4実施形態の精密機械用防振装置210では、ばね部11の開口側が精密機械2の短手方向である前後方向に向くように防振ユニット10を配置し、防振ユニット10が精密機械2の前後端面から前後方向に突出するように配置されている。防振ユニット10の取り付け向きについては、精密機械2の周辺のスペースや防振を必要とする方向、実際に振動が大きい方向に対応して設定するとよい。例えば精密機械2を車両に搭載した場合には、車両の加減速によって車両前後方向に精密機械2が移動したときの振動を吸収し減衰し易いように、ばね部11の開口側が車両前後方向に向くように防振ユニット10の向きを1設定すればよい。
【0082】
また、精密機械2の取り付け位置の周囲のスペースが少ない場合では、図23に示す第5実施形態の精密機械用防振装置220のように、防振ユニット10が精密機械2の前後左右端面から側方に突出しないように配置してもよい。
【0083】
なお、他の形状の防振ユニット50、60、70、80、90、100、110、120についても、上記のように精密機械2に対する取り付け位置や取り付け向きを適宜変更してもよい。
【0084】
<その他の実施形態>
また、本発明は上記実施形態に限定するものではない。例えば、上記実施形態では、防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120は、ボルト41、42によって基台1及び精密機械2の下部に固定されているが、防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120と基台1、防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120と精密機械2のいずれか、あるいは両方について回転可能に支持するように構成してもよい。但し、防振ユニット110のように、ばね部11が精密機械2の底面2aより上方に位置する場合には、防振ユニット110と精密機械2とが相対的に回転した際に、精密機械2の側面と防振ユニット110の第2延長部17とが当接しないように、例えばストッパを設けて対応することが望ましい。
【0085】
また、上記実施形態のように精密機械2の底面2aの四隅である角部が直角である場合には、精密機械2と防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120との間に角形のワッシャやブラケットを挟むようにするとよい。これにより、基台1と精密機械2とが相対的に振動した際に、精密機械2の底面2aの角部が防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120の上面に当接して応力が集中することを抑制し、防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120の保護を図ることができる。
【0086】
また。上記の実施形態において、各防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120を上下方向に対して斜めにあるいは横方向に傾斜して配置してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、4個の防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120を使用しているが、4個以外の個数で精密機械2を支持するようにしてもよい。
【0088】
また、防振ユニット10、50、60、70、80、90、100、110、120等によって精密機械以外の機器等を支持してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 基台
2 精密機械(被防振体)
10、50、60、70、80、90、100、110、120 防振ユニット
11 ばね部
12 第1接続部
13 第2接続部
14、61、121 板ばね部材
15 防振部材
16 第1延長部
17 第2延長部
20 振動減衰部
22 第1ストッパ(ストッパ)
23 第1突出部
24 第2突出部
30 第2ストッパ(外側突出部)
33、34 第2ストッパ支持部
35 中間部
40、190、200、210、220 精密機械用防振装置
122A 第1のばね部
122B 第2のばね部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23