(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120651
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/471 20060101AFI20240829BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240829BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F13/535 200
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027596
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 咲葵
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA14
3B200BA02
3B200BB05
3B200BB24
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB23
3B200DE03
3B200DE06
(57)【要約】
【課題】男性の前立腺全摘出後の尿漏れ症状の回復を補助することができ、かつ尿漏れが生じた際には尿を吸収することが可能な吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示は、装着時に肌側に位置する液透過性のトップシート11と、装着時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12の間に配置される吸収体13とを備える吸収性物品10であって、吸収性物品10の肌側面10aを肌側へ突出させる液透過性又は液吸収性の凸部14を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時に肌側に位置する液透過性のトップシートと、装着時に非肌側に位置する液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体とを備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の肌側面を肌側へ突出させる液透過性又は液吸収性の凸部を備える
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記凸部は、直径が30mm以上70mm以下で、高さが15mm以上50mm以下の略半球状に形成され、耐荷重が7kgf以上30kgf以下のセルロース繊維、または硬度が147N以上186.2N以下の親水性ウレタンフォームから構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
長手方向の寸法は、100mm以上300mm以下であり、
幅方向の寸法は、50mm以上150mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記バックシートの非肌側面には、粘着剤が設けられており、
前記粘着剤を設けている領域の寸法は、長手方向の寸法が前記吸収性物品の長手方向の寸法の50%以上90%以下であり、幅方向の寸法が前記吸収性物品の幅方向の寸法の50%以上90%以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、尿漏れに対応した男性用ちびりガードペニスキャップが開示されている。この男性用ちびりガードペニスキャップは、男性器の形状に合わせて吸水紙を袋状に加工し、先端亀頭部分を30~40mm残し、それ以降胴部に切込みを入れ、その胴部に脱落防止用のシール付糸を付けた物と、ゴムバンドからなる。使用する際には、袋状に加工した吸水紙を男性器に被せ、切込み部を重ね合わせてゴムバンドで留め、脱落防止シールを下着に貼る。
【0003】
特許文献2には、排尿後尿滴下防止装具が開示されている。この排尿後尿滴下防止装具は、下着の胴体部分での滑り止めの位置に使用するゴム紐もしくは紐の左右の骨盤辺りの位置から、ゴム紐状のものを前下方向に向けて半円状にして吊り下げ、その一番下部が泌尿器の陰嚢の後ろの両足との間に位置する長さに調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-166004号公報
【特許文献2】特開2018-153601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、男性の前立腺全摘出者は、前立腺の摘出後にほとんどの人が尿漏れ症状を引き起こすといわれている。この尿漏れの原因は、「尿道括約筋の障害」や「膀胱機能の問題」と考えられるが、骨盤底筋を鍛えることによって、摘出後から約6か月間で約90%の摘出者の尿漏れ症状は回復するという報告がある。
【0006】
特許文献1に記載の男性用ちびりガードペニスキャップ(吸収性物品)、及び特許文献2に記載の排尿後尿滴下防止装具は、いずれも男性の尿漏れに対応するためのものであるが、前立腺全摘出後の尿漏れ症状を改善するものではない。
【0007】
そこで、本開示は、男性の前立腺全摘出後の尿漏れ症状の回復を補助することができ、かつ尿漏れが生じた際には尿を吸収することが可能な吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、装着時に肌側に位置する液透過性のトップシートと、装着時に非肌側に位置する液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体とを備える吸収性物品であって、前記吸収性物品の肌側面を肌側へ突出させる液透過性又は液吸収性の凸部を備える。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の吸収性物品であって、前記凸部は、直径が30mm以上70mm以下で、高さが15mm以上50mm以下の略半球状に形成され、耐荷重が7kgf以上30kgf以下のセルロース繊維、または硬度が147N以上186.2N以下の親水性ウレタンフォームから構成される。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の吸収性物品であって、長手方向の寸法は、100mm以上300mm以下であり、幅方向の寸法は、50mm以上150mm以下である。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の吸収性物品であって、前記バックシートの非肌側面には、粘着剤が設けられており、前記粘着剤を設けている領域の寸法は、長手方向の寸法が前記吸収性物品の長手方向の寸法の50%以上90%以下であり、幅方向の寸法が前記吸収性物品の幅方向の寸法の50%以上90%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、男性の前立腺全摘出後の尿漏れ症状の回復を補助することができ、かつ尿漏れが生じた際には尿を吸収することが可能な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。
【
図3】男性の身体の説明図であって、(a)は前立腺摘出前の状態を、(b)は前立腺全摘出後の状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る吸収性物品について説明する。
【0015】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態を意味する。また、「前側」とは、吸収性物品を着用したときに着用者の腹側となる方向を意味し、「後側」とは、着用者の背側となる方向を意味する。また、左右方向は、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向を意味する。また、吸収性物品の各構成部材の長手方向とは、吸収性物品の長尺の方向(着用時に着用者の前後に沿う方向)をいい、図中の矢印Xに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の幅方向とは、長手方向と直交する短尺の方向(着用時に着用者の左右に沿う方向)をいい、図中の矢印Yに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Zに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうち吸収性物品を着用したときの着用者の身体に向かう方向をいい、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向をいう。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。
図2は、
図1のII-II矢視断面図である。なお、
図2は、簡略化した断面図である。また、各図は、吸収性物品の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、吸収性物品の用途等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0017】
[吸収性物品]
本開示に係る吸収性物品は、尿漏れが多い、特に前立腺を全摘出した男性に適した吸収性物品である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る吸収性物品10は、例えば下着に取り付けられて体液を吸収するための吸収性物品である。吸収性物品10は、装着時に肌側に位置する液透過性のトップシート11と、装着時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に配置される吸収体13と、凸部14とを備える。なお、吸収性物品10は、トップシート11及びバックシート12以外の他のシート(例えば、立体ギャザー、吸収体13を担持するキャリアシート15等)を備えていてもよい。本実施形態では吸収性物品10は、キャリアシート15を備えている。また、吸収性物品10の形状は、特に限定されるものではないが、略矩形型や小判型であることが好ましい。
【0019】
吸収性物品10の長手方向の寸法(最大長。以下同じ。)L1は、下限値100mm以上であることが好ましく、上限値300mm以下であることが好ましい。また、吸収性物品10の幅方向の寸法L2は、下限値50mm以上であることが好ましく、上限値150mm以下であることが好ましい。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することにより、男性の軽失禁製品に適したパッド型の吸収性物品10を得ることができる。
【0020】
(トップシート)
トップシート11は、吸収体13に向けて体液を速やかに通過させて吸収体13の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート11は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。基材の一例としては、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態のトップシート11としては、エアスルー不織布、又はスパンボンド不織布が好ましい。
【0021】
トップシート11には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート11には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0022】
(バックシート)
バックシート12は、吸収体13が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えたシート状基材である。基材の一例としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート12には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート12にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。これらの中でも、本実施形態のバックシート12としては、通気性フィルムが好ましい。
【0023】
(止着材)
バックシート12の非肌側面12aには、吸収性物品10を下着等の衣類や紙おむつ等に止着するための止着材として粘着剤16が設けられる。粘着剤16としては、特に限定はないが、例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体等のホットメルト系粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。上記の粘着剤16を、バックシート12の非肌側面12aに塗布することで、粘着剤16を止着材として機能させることができる。吸収性物品10の使用時には、吸収性物品10は、粘着剤16を介して下着等の衣類や紙おむつ等に装着される。なお、使用前の吸収性物品10の粘着剤16には、剥離可能なシート(剥離紙等)を貼り付けて、粘着剤16を保護してもよい。
【0024】
バックシート12の非肌側面12aの粘着剤16を設けている領域(粘着剤16が塗布されている領域)の長手方向の寸法は、吸収性物品10の長手方向の寸法L1を100%として、下限値が寸法L1の50%以上であることが好ましく、上限値が寸法L1の90%以下であることが好ましい。また、粘着剤16を設けている領域の幅方向の寸法は、吸収性物品10の幅方向の寸法L2を100%として、下限値が寸法L2の50%以上であることが好ましく、上限値が寸法L2の90%以下であることが好ましい。粘着剤16を設けている領域の寸法を上記範囲に設定することによって、粘着剤16の無駄を抑えることができ、吸収性物品10全体がズレ難くなることによって、最も重要な後述する凸部14が身体からズレないことを期待できる。
【0025】
(吸収体)
吸収体13としては、例えば、吸収性繊維と高吸収性ポリマー(以下、「SAP」という場合がある。)とを含むフラッフ吸収体や、液吸収性シート間にSAP粒子を固着したSAPシート等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の吸収体13としては、フラッフ吸収体が好ましい。
【0026】
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。また、液吸収性シートとしては、上記吸収性繊維の1種又は2種以上から構成されるシートが挙げられる。これらの中でも、本実施形態の吸収体13の吸収性繊維としては、フラッフパルプが好ましい。
【0027】
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
吸収体13において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものであってもよく、或いは吸収性繊維間にSAP粒子を固着したものであってもよい。
【0029】
(キャリアシート)
SAP粒子の漏洩防止や吸収体13の形状の安定化の目的から、吸収体13を担持するキャリアシート15を設けてもよい。本実施形態では、キャリアシート15を、吸収体13の肌側面上に配置している。キャリアシート15の基材としては、親水性を有するものであればよく、例えば、ティッシュ、吸収紙、エアレイド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。これらの中でも、本実施形態のキャリアシート15としては、ティッシュが好ましい。また、キャリアシート15を複数備える場合は、複数のキャリアシート15の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0030】
(立体ギャザー)
吸収性物品10の肌側面に、着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するための左右の立体ギャザー(図示省略)を設けてもよい。この場合、立体ギャザーは、トップシート11の肌側面11aの幅方向の両端部において、吸収性物品10の長手方向に沿って延びるように設けられる。立体ギャザーは、撥水性及び/又は防水性のギャザーシートと、弾性伸縮部材とを含む。
【0031】
ギャザーシートは、撥水性及び/又は防水性(液不透過性)を有するシートであり、例えば不織布から構成される。不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。ギャザーシートは、例えば、幅方向の一端(固定端)がトップシート11の肌側面11aの幅方向の両端付近に固定され、幅方向の他端が起立性を有する自由端である。なお、ギャザーシートの固定位置は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、ギャザーシートの幅方向の一端(固定端)を、バックシート12の肌側面の幅方向の両端付近に固定し、ギャザーシートの幅方向の中間部を、トップシート11の肌側面11aの幅方向の両端付近に固定してもよい。
【0032】
弾性伸縮部材は、ギャザーシートの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、ギャザーシートの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。弾性伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0033】
(凸部)
凸部14は、吸収性物品10の肌側面10a(本実施形態ではトップシート11の肌側面11a)を肌側へ突出させるための部材であって、液透過性又は液吸収性を有する。本実施形態の凸部14は、吸収体13の肌側に位置するキャリアシート15とトップシート11との間に配置される。凸部14は、吸収性物品10の長手方向の中央部、かつ幅方向の中央部に配置される。
【0034】
凸部14は、耐荷重が7kgf以上30kgf以下のセルロース繊維、又は硬度が147N以上186.2N以下の親水性ウレタンフォームから構成されることが好ましい。更に、凸部14の形状は、略半球状であることが好ましく、平面側を非肌側へ向けて肌側へ突出する状態に配置されることが好ましい。略半球状の凸部14の直径Dは、下限値が30mm以上であることが好ましく、上限値が70mm以下であることが好ましい。また、略半球状の凸部14の高さ(平面からの最大高さ)Hは、下限値が15mm以上であることが好ましく、上限値が50mm以下であることが好ましい。凸部14を、上記素材で略半球状に形成し、凸部14の大きさ(直径D及び高さH)を上記範囲に設定することによって、使用時に硬過ぎず、かつ後述するように骨盤底筋を好適に上方へ押し上げることができる。なお、凸部14をセルロース繊維で構成する場合の耐荷重は、セルロース繊維に規定(7kg以上)のおもりを載荷して4時間放置した後、おもりを取り除き、最大たわみ量を測定し、負荷中のたわみ率が1%以内で、使用上支障のある異常がないことを確認して測定することができる。
【0035】
なお、凸部14は、トップシート11と吸収体13との間に配置されることが好ましいが、トップシート11よりも肌側に配置してもよい。例えば、凸部14を、トップシート11の肌側面11a上に固定的に設けてもよく、これにより、吸収性物品10の肌側面10aを肌側へ突出させてもよい。
【0036】
(使用方法)
次に、吸収性物品10を使用する場合の一例について説明する。
【0037】
図3は、男性の身体の説明図であって、(a)は前立腺摘出前の状態を、(b)は前立腺全摘出後の状態をそれぞれ示す。
図4は、吸収性物品の装着についての説明図である。なお、図中のaは膀胱を、bは恥骨を、cは尿道を、dは骨盤底筋を、eは肛門を、fは直腸を、gは前立腺を、それぞれ示す。
【0038】
図3(a)に示すように、前立腺gを切除していない状態では、前立腺gは、直腸fと恥骨bとの間にあり、膀胱aの下方の出口で尿道cを取り囲んでいる。前立腺がん等の治療のため前立腺gを全摘出すると、
図3(b)に示す状態になる。前立腺gの尿道c側には、図示しない尿道括約筋(尿が漏れないように締める筋肉)が張り付いているので、前立腺gを全摘出した際に尿道括約筋に障害が発生し、前立腺gの全摘出後に尿漏れが発生することが多い。このような尿漏れ症状は、骨盤底筋dを鍛えることによって回復する可能性がある。
【0039】
図4に示すように、吸収性物品10を使用する場合、吸収性物品10の肌側面10aのうち凸部14によって突出している突出部分Aを股下の肛門eの前方辺りに当接させるように、吸収性物品10を装着する。このように、吸収性物品10を装着すると、骨盤底筋dが吸収性物品10の突出部分Aに押されて上方へ押し上げられる。
【0040】
上記のように構成された吸収性物品10では、吸収性物品10の肌側面10aを肌側へ突出させる液透過性又は液吸収性の凸部14を備える。このため、吸収性物品10を装着することによって、骨盤底筋dを凸部14によって上方へ押し上げることができる。このように、凸部14で物理的に骨盤底筋dを押し上げて刺激することによって、骨盤底筋dを意識させて鍛えることができるので、男性の前立腺全摘出後の尿漏れ症状の回復が期待できる。
【0041】
また、凸部14は、液透過性又は液吸収性を有するので、凸部14を設けても、尿をトップシート11側から吸収体13へ移動させることができ、吸収体13によって尿を吸収することができる。このため、尿漏れが生じた場合、吸収性物品10で尿を吸収することができるので、下着や着衣が濡れてしまうことを防止することができる。
【0042】
このように、本実施形態によれば、男性の前立腺全摘出後の尿漏れ症状の回復を補助することができ、かつ尿漏れが生じた際には尿を吸収することができる。
【0043】
なお、吸収性物品10のバックシート12の非肌側面12aに粘着剤16を設けなくてもよい。例えば、紙おむつの外装体に予め固定される吸収性物品の場合には、粘着剤16を設けなくてもよい。
【0044】
また、凸部14の素材、形状、大きさは、上記に限定されるものではなく、凸部14は、少なくとも吸収性物品10の肌側面10aを肌側へ突出させる液透過性又は液吸収性の凸部であればよい。
【0045】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10:吸収性物品
11:トップシート
12:バックシート
13:吸収体
14:凸部
16:粘着剤