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特開2024-120667走行制御システム、走行制御装置、自律装置、走行制御方法、走行制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120667
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】走行制御システム、走行制御装置、自律装置、走行制御方法、走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240829BHJP
   B65G 35/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G05D1/02 H
B65G35/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027633
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤本 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】川北 幸治
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD08
5H301DD17
5H301GG09
5H301JJ05
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な走行制御システム等を提供する。
【解決手段】走行制御システムは、プロセッサを有し、搬送物品を積載して自律走行可能な自律装置の走行を制御する。プロセッサは、走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することを実行するように構成される。プロセッサは、制御パターンを自律装置に付与することを実行するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御する走行制御システムであって、
前記プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与することと、
を実行するように構成される走行制御システム。
【請求項2】
前記制御パターンを取得することは、
前記路面条件、前記物品条件、及び前記自律装置に関する装置条件に応じた、前記制御パターンを取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記制御パターンを取得することは、
前記搬送物品の少なくとも一部の固液状態を含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記制御パターンを取得することは、
固体状の前記搬送物品の硬さを含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項5】
前記制御パターンを取得することは、
塑性変形が想定される範囲の前記硬さを有する固体状の前記搬送物品の姿勢を含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む請求項4に記載の走行制御システム。
【請求項6】
前記制御パターンを取得することは、
前記走行路面の凹凸度が前記物品条件に応じた許容凹凸度範囲に対して範囲外となる路面エリアでは、走行を禁止する前記制御パターンを取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項7】
前記制御パターンを取得することは、
前記物品条件に応じて、前記走行路面の凹凸度が高いほど、許容速度範囲が制限された前記制御パターンを取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項8】
前記制御パターンを取得することは、
前記物品条件に応じて、前記走行路面の凹凸度が高いほど、許容加速度範囲が制限された前記制御パターンを取得することを含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項9】
前記制御パターンを取得することは、
前記路面条件及び前記物品条件を取得することと、
前記路面条件及び前記物品条件に応じた前記制御パターンを出力可能な制限制御モデルにより、前記制御パターンを最適化することと、
を含む請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項10】
プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)に搭載可能に構成され、前記自律装置の走行を制御する走行制御装置であって、
前記プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与することと、
を実行するように構成される走行制御装置。
【請求項11】
プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置であって、
前記プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与することと、
を実行するように構成される自律装置。
【請求項12】
搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される走行制御方法であって、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与することと、
を含む走行制御方法。
【請求項13】
搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む走行制御プログラムであって、
前記命令は、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得させることと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与させることと、
を含む走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律装置の走行を制御する走行制御技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の作業ステーション間の路面を走行する無人搬送車が開示されている。この無人搬送車は、路面の状態を検出するセンサが取り付けられたロボットを搭載している。無人搬送車は、センサにより検出された凹凸の深さ等の路面の状態に基づき、振動の振幅を所定の閾値以下にする走行速度により走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7000378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の無人搬送車は、走行による振動が搬送する物品に与える影響について考慮できていない。例えば、ケーキ等の柔らかい食品や飲み物等、搬送する物品によっては、転倒により変形したり零れたりする等、走行中の振動による影響が大きくなる虞がある。特許文献1の無人搬送車は、こうした搬送する物品に応じた走行について開示されていない。
【0005】
本開示の課題は、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な走行制御システムを、提供することにある。本開示の別の課題は、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な走行制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な自律装置を、提供することにある。本開示の又別の課題は、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な走行制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能な走行制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御する走行制御システムであって、
プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
制御パターンを自律装置に付与することと、
を実行するように構成される。
【0008】
本開示の第二態様は、プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)に搭載可能に構成され、自律装置の走行を制御する走行制御装置であって、
プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
制御パターンを自律装置に付与することと、
を実行するように構成される。
【0009】
本開示の第三態様は、プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置であって、
プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
制御パターンを自律装置に付与することと、
を実行するように構成される。
【0010】
本開示の第四態様は、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される走行制御方法であって、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
制御パターンを自律装置に付与することと、
を含む。
【0011】
本開示の第五形態は、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む走行制御プログラムであって、
命令は、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び搬送物品に関する物品条件に応じた、自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得させることと、
制御パターンを自律装置に付与させることと、
を含む。
【0012】
これら第一~第五態様によると、路面条件及び物品条件に応じた、走行制限制御を含む制御パターンが、自律装置に付与される。故に、走行路面の凹凸状態に加え、搬送物品を考慮して制限された自律装置の走行制御が実現され得る。したがって、搬送する物品に対する影響を抑制した走行が可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態の適用される自律装置の外観を示す概略図である。
図2】第一実施形態の適用される自律装置の機能構成を示す模式図である。
図3】第一実施形態における走行制御システムを含む全体システムの機能構成を示すブロック図である。
図4】第一実施形態による走行制御フローを示すフローチャートである。
図5】第一実施形態による走行制御フローを示すフローチャートである。
図6】制限制御モデルの一例を示すグラフである。
図7】制限制御モデルの一例を示すグラフである。
図8】制限制御モデルの一例を示すグラフである。
図9】制限制御モデルにより制御パターンを最適化する処理の一例を模式的に示す図である。
図10】走行エリアの一例を示す模式図である。
図11】グローバルコストマップの一例を示す模式図である。
図12】グローバルコストマップの一例を示す模式図である。
図13】走行エリアの一例を示す模式図である。
図14】ローカルコストマップの一例を示す模式図である。
図15】ローカルコストマップの一例を示す模式図である。
図16】第二実施形態による走行制御フローを示すフローチャートである。
図17】第二実施形態による走行制御フローを示すフローチャートである。
図18】第三実施形態による走行制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。又、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第一実施形態)
第一実施形態の走行制御システム100は、図1及び図2に示す、搬送物品Lを自律走行により搬送する自律装置(autonomous robot)1の走行制御に関連する処理を遂行する。尚、自律装置1は、自律走行車(autonomous vehicle)等を含む。自律装置1は、走行エリア内にて前後左右の任意方向に自律走行する。自律装置1は、走行施設としての駅や病院、倉庫等を走行エリアとして自律走行して搬送物品Lを搬送する、物流車両であってもよい。又は、自律装置1は、走行施設としての道路を走行エリアとして自律走行して搬送物品Lを配送先へ搬送する、配送車両であってもよい。自律装置1は、搬送物品Lの搬送機能を備えている限り、これら以外の装置であってもよい。さらにいずれの種の自律装置1であっても、外部センタとの通信によりリモートでの走行支援又は走行制御を受けてもよい。
【0016】
自律装置1は、図1,2に示すように、ボディ2、センサ系3、通信系4、地図データベース5、入力ユニット6、及び走行系7を備えている。ボディ2は、例えば金属等により、中空状に形成されている。ボディ2は本実施形態では、外部のうち上部へ向かって開放された荷室20を、前後左右からは囲んで形成している。ボディ2において荷室20は、少なくとも一つの搬送物品Lを荷台上に積載可能な空間サイズを、有している。尚、ボディ2の構造としては、図1,2に示す構造以外にも、例えば扉により荷室20を外部に対して閉塞可能な構造等を、採用可能である。
【0017】
センサ系3は、自律装置1により利用可能なセンシング情報を、自律装置1における外界及び内界のセンシングによって取得する。そのためにセンサ系3の構成要素は、ボディ2に搭載されている。具体的にセンサ系3は、外界センサ30と内界センサ31とを含んで構成されている。
【0018】
外界センサ30は、自律装置1の周辺環境となる外界から、センシング情報としての外界情報を取得する。外界センサ30は、自律装置1の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を取得する。物体検知タイプの外界センサ30は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0019】
内界センサ31は、自律装置1の内部環境となる内界から、センシング情報としての内界情報を取得する。内界センサ31は、自律装置1の内界としての荷室20内の荷台上において搬送物品Lを検知することで、内界情報を取得する。物品検知タイプの内界センサ31は、例えば重量センサ、圧力センサ、カメラ、及びRFID(Radio Frequency Identifier)リーダ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ31は、自律装置1の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。運動検知タイプの内界センサ31は、例えば速度センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0020】
通信系4は、制御システム100により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系4は、自律装置1の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信する、測位タイプであってもよい。測位タイプの通信系4は、例えばGNSS受信機等である。通信系4は、自律装置1の外界に存在するV2Xシステムとの間において通信信号を送受信する、V2Xタイプであってもよい。V2Xタイプの通信系4は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系4は、自律装置1の内界に存在する端末との間において通信信号を送受信する、端末通信タイプであってもよい。端末通信タイプの通信系4は、例えばBluetooth(登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0021】
地図データベース5は、走行制御システム100により利用可能な地図情報を、記憶する。地図データベース5は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成されている。地図データベース5は、自律装置1の自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図データベース5は、自律装置1の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図データベース5は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されていてもよい。
【0022】
地図データベース5は、例えばV2Xタイプの通信系4を介した外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、自律装置1の走行環境を表す情報として、三次元にデータ化されている。特に三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されるとよい。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。地図データベース5は、ラスタ形式のラスタマップ50と、ベクタ形式のベクタマップ51と、を含んでいる。ベクタマップ51は、路面の凹凸について、高さ情報や、後述の乗越レベルに関する情報を、少なくとも含んでいる。
【0023】
入力ユニット6は、自律装置1のユーザによる入力操作を受け付ける。入力スイッチ40は、例えばタッチパネルや物理ボタン等、ユーザのタッチ入力を受け付けるタッチ入力タイプであってもよい。又は、入力ユニット6は、ユーザの音声を認識する音声入力タイプであってもよい。又は、入力ユニット6は、スマートフォン等のユーザの操作端末からの入力操作を通信により取得する、通信入力タイプであってもよい。
【0024】
走行系7は、バッテリ70、電動アクチュエータ71、駆動輪72及び従動輪73を含んで構成されている。バッテリ70は、例えばボディ2の下部に搭載されている。バッテリ70は、例えばリチウムイオン電池等の蓄電池を主体に、構成されている。バッテリ70は、放電によって自律装置1に搭載された電装品へ供給する電力を、外部からの充電によって蓄える。バッテリ70は、電動アクチュエータ71からの回生電力を、蓄えてもよい。バッテリ70は、電動アクチュエータ71、センサ系3、通信系4、入力ユニット6、電動アクチュエータ71及び走行制御システム100に対し、ワイヤハーネス等を介して電力供給可能に接続されている。
【0025】
電動アクチュエータ71は、ボディ2内に搭載されている。電動アクチュエータ71は、駆動輪72ごとに対応する個別の電動モータを主体に構成されている。電動アクチュエータ71は、複数の駆動輪72を独立して回転駆動する。電動アクチュエータ71は、制御システム100からの制御指令に応じたモータ速度にて、駆動輪72を回転駆動する。電動アクチュエータ71は、各駆動輪72の回転中に制動を与える、ブレーキユニットを備えていてもよい。電動アクチュエータ71は、各駆動輪72を停止中にロックする、ロックユニットを備えていてもよい。
【0026】
駆動輪72は、ボディ2により複数支持されている。各駆動輪72は、それぞれ独立して回転可能に構成されている。駆動輪72は、例えばメカナムホイールやオムニホイール等、駆動輪72同士の回転速度差により旋回動作が可能な車輪とされる。従動輪73は、駆動輪72に従動して回転する車輪である。従動輪73は、例えば図1,2に示すように、駆動輪72の前後に設けられている。
【0027】
図3に示す走行制御システム100は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系3、通信系4、地図データベース5、入力ユニット6、走行系7に接続されている。走行制御システム100は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0028】
走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律装置1の走行を計画する、プランニングECU(Electronic Control Unit)であってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律装置1のセンサ系3を制御する、センシングECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律装置1の自己位置を含む自己状態量を地図データベース5に基づき推定する、ロケータECUであってもよい。制御システム10を構成する専用コンピュータは、自律装置1の電動アクチュエータ71を制御する、アクチュエータECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、例えば通信系4を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、ボディ2外のコンピュータであってもよい。
【0029】
走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、メモリ101とプロセッサ102とを、少なくとも一つずつ有している。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。ここで記憶とは、自律装置1の起動オフによってもデータが保持される蓄積であってもよいし、自律装置1の起動オフによりデータが消去される一時的な格納であってもよい。プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0030】
走行制御システム100においてプロセッサ102は、自律装置1の走行を制御するためにメモリ101に記憶された、走行制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより走行制御システム100は、自律装置1の走行を制御するための機能ブロックを、複数構築する。走行制御システム100において構築される複数の機能ブロックには、図3に示すように取得ブロック110、監視ブロック120及び出力ブロック130が含まれている。
【0031】
これらのブロック110,120,130の共同により、走行制御システム100が自律装置1の走行を制御する走行制御方法は、図4に示す走行制御フローに従って実行される。本走行制御フローは、自律装置1の起動中に繰り返し実行される。尚、本走行制御フローにおける各「S」は、走行制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0032】
まずS100にて、取得ブロック110は、物品条件を取得する。物品条件は、搬送物品Lに応じた、後述の制御パターンを規定する、搬送物品Lに関するパラメータである。例えば、物品条件は、搬送物品Lの許容最大加速度、許容最大ジャーク、重量、固有振動数、固体状の搬送物品Lの硬さ、塑性変形が想定される範囲の硬さを有する固体状の搬送物品Lの姿勢及び搬送物品Lの少なくとも一部の固液状態等のうち少なくとも一種類である。例えば、固体状の搬送物品Lが柔らかいほど、後述の走行制限制御の制限度合が、より厳しく設定されることになる。さらに、塑性変形が想定される範囲の硬さを有する固体状の搬送物品Lの姿勢が、より転倒し易い姿勢であるほど、走行制限制御の制限度合が、より厳しく設定されることになる。又、固液状態の搬送物品Lがより液体状態に近いほど、走行制限制御の制限度合が、より厳しく設定されることになる。又、ここで、許容最大加速度及び許容最大ジャークは、水平方向(前後、左右)及び上下方向の各方向について規定されているパラメータである。許容最大加速度及び許容最大ジャークは、搬送物品Lの転倒や塑性変形等を回避する上限値として、搬送物品Lごとに設定される。
【0033】
物品条件は、例えばメモリ101等に搬送物品Lの種別ごとに予め記憶されている。取得ブロック110は、荷室20に積載された搬送物品Lの種別を識別し、該当する物品条件を読み出すことで、物品条件を取得する。取得ブロック110は、例えば物品検知タイプの内界センサ31により搬送物品Lを識別すればよい。又は、取得ブロック110は、入力ユニット6に入力された搬送物品Lに関する情報により搬送物品Lを識別してもよい。尚、取得ブロック110は、物品条件自体を入力ユニット6や通信系4を介して外部から取得してもよい。
【0034】
続くS110にて、取得ブロック110は、車両情報を取得する。車両情報は、物品条件とともに制御パターンを規定する自律装置1に関するパラメータであり、装置条件と表現することもできる。例えば、車両情報は、自律装置1における搬送物品Lの積載量、自律装置1の車両特性等が含まれる。車両特性は、振動に対する自律装置1の挙動に関連するパラメータである。例えば、車両特性は、弾性特性、ダンパ特性、及びボディ2のフレーム構造等の少なくとも一種類である。取得ブロック110は、各車両情報を、メモリ101等の記憶媒体、内界センサ31、入力ユニット6等の少なくとも一種類から取得する。
【0035】
そしてS120にて、取得ブロック110は、エリアマップ情報を取得する。エリアマップ情報は、物品条件及び車両情報とともに制御パターンを規定する情報である。エリアマップ情報は、自律装置1の出発地点SP及び目的地点GPを含む、自律装置1が走行し得る範囲としての走行エリアについての地図情報である。エリアマップ情報は、走行エリアにおける路面の凹凸状態に関する情報を、少なくとも含んでいる。凹凸状態に関する情報は、路面に形成された凹凸の位置範囲、高さ、及び乗越レベル等を含んでいる。ここで路面の凹凸は、路面において高低差を生じさせる形状や設置物により構成されるものである。例えば、路面の凹凸としては、視覚障害者誘導用ブロック(所謂点字ブロック)、縁石、段差スロープ、砂利道等の少なくとも一種類以上が含まれる。凹凸の高さ及び乗越レベルは、「凹凸度」の一例である。
【0036】
ここで、凹凸の乗越レベルは、自律装置1が当該凹凸を通過した際の搬送物品Lへの影響度の大きさに応じて規定されるパラメータである。乗越レベルは、凹凸種類ごとの一般的な高さや、凹凸の連続度合等に応じて、凹凸種類ごとに総合的に規定される。又、乗越レベルは、凹凸の種類ごとに、通過する自律装置1が受ける振動に関する実験結果に応じて規定されてもよい。一例として、乗越レベルの低い順に、タイル床は「レベル0」、砂利道は「レベル1」、視覚障害者誘導用ブロックは「レベル2」、段差スロープは「レベル3」、縁石は「レベル4」に設定される。ここで視覚障害者誘導用ブロックに着目すると、1つのブロックは複数の突起を有しており、凹凸が連続した構造となっている。故に、当該突起と同等の高さの段差が唯一存在する路面構造よりも、搬送物品Lへの影響度が大きくなる。したがって、乗越レベルにおける「レベル2」は、凹凸の高さにより規定される制限速度よりも小さい制限速度を規定する乗越レベルとして、定義され得る。尚、乗越レベルは、上述した各レベル間にて小数点以下も含む数値としてより細分化されて分類されていてもよい。
【0037】
取得ブロック110は、例えば地図データベース5に記憶されたエリアマップ情報を、取得する。特に、取得ブロック110は、ベクタマップ51から走行エリアにおけるエリアマップ情報を取得する。エリアマップ情報の取得対象となる走行エリアは、自律装置1による搬送サービスの対象エリアとして予め規定されたエリア全域であってもよいし、対象エリアの中から出発地点SP及び目的地点GPに応じてさらに限定されたエリアであってもよい。エリアマップ情報は、「路面条件」の一例である。
【0038】
続くS130において、取得ブロック110は、路面の凹凸状態に応じた自律装置1の制御パターンを、搬送物品毎に取得する。ここで、制御パターンは、物品条件及びエリアマップ情報に応じて自律装置1の走行を制限する走行制限制御を含む、自律装置1における走行制御の態様である。走行制御の態様は、例えば走行エリアに応じて許容される自律装置1の速度範囲、加速度範囲及び走行位置(走行ルート)範囲の少なくとも一種類である。又、走行制限制御は、自律装置1の速度、加速度及び走行位置の少なくとも一種類について、許容範囲を搬送物品Lが未積載の場合よりも制限する制御である。すなわち、走行制限制御の制限度合が厳しく設定される条件下では、この許容範囲がより小さく制限されることになる。
【0039】
具体的には、取得ブロック110は、搬送物品Lごとの制限制御モデルと、エリアマップ情報における路面の凹凸状態と、に応じて、走行エリアにおける凹凸が形成された小エリアごとに、制御パターンを取得する。制限制御モデルは、物品条件及び車両情報に応じて規定される、凹凸状態と許容される制御との関係情報である。例えば、制限制御モデルは、凹凸の高さと許容される速度範囲(許容速度範囲)との関係情報と、凹凸の高さと許容される加速度範囲(許容加速度範囲)との関係情報と、を含んでいる。さらに、制限制御モデルは、凹凸の乗越レベルと許容される速度範囲との関係情報と、凹凸の乗越レベルと許容される加速度範囲との関係情報と、を含んでいる。
【0040】
例えば、凹凸の高さと許容速度範囲とは、図6のグラフに示される関係にて表される。図6においてドットハッチングにて示された領域では、凹凸の乗り越えが許容される。又、ドットハッチングが施されていない領域では、凹凸の乗り越えが禁止される。換言すれば、この場合許容速度範囲がゼロとなる。例えば、凹凸の高さが4mmより大きい場合、いかなる速度でも当該凹凸の乗り越えは禁止される。そして凹凸の高さが4mm以下の場合、凹凸の高さに応じて許容速度範囲が変化する。具体的には、凹凸の高さが低いほど、許容される速度範囲は大きくなる。上述したグラフの領域により規定される凹凸の高さ範囲は、「許容凹凸度範囲」の一例である。
【0041】
又、凹凸の乗越レベルと許容速度範囲とは、図7のグラフに示される関係にて表される。図7においても、ドットハッチングにて示された領域にて凹凸の乗り越えが許容され、ドットハッチングが施されていない領域にて凹凸の乗り越えが禁止される。例えば、乗越レベルが1より大きい場合、いかなる速度でも当該凹凸の乗り越えは禁止され、乗越レベルが1以下の場合、乗越レベルに応じて許容速度範囲が変化する。具体的には、乗越レベルが低いほど、許容される速度範囲は大きくなる。上述したグラフの領域により規定される凹凸の乗越レベル範囲は、「許容凹凸度範囲」の一例である。
【0042】
尚、凹凸の高さと許容加速度範囲、乗越レベルと許容加速度範囲についても、例えば図8に示すようなグラフに示される関係にて、表される。以上の制限制御モデルは、シミュレーションモデル及び統計データ等に応じて、規定される。
【0043】
取得ブロック110は、対象となる凹凸について、上述した高さに関する制限制御モデルに応じた許容速度範囲及び許容加速度範囲を、搬送物品Lごとに算出する。さらに、取得ブロック110は、同じ凹凸エリアについて、凹凸の乗越レベルに関する制限制御モデルに応じた許容速度範囲及び許容加速度範囲も、搬送物品Lごとに算出する。
【0044】
一例として、走行エリア中において視覚障害者誘導用ブロックBにより形成された凹凸エリアを想定する。ここで、自律装置1に搬送物品Lとして複数種類(例えば2種類)の物品α,βが積載されるとする。そして、物品αについては、図6~8に示す制限制御モデルが取得されるとする。この場合、想定凹凸エリアにおける凹凸高さが4mmであったとすると、物品αにおける凹凸高さに関する制御パターンの一つとして、-Va<V<Vaの許容速度範囲が取得される(図6,9参照)。一方で、想定凹凸エリアは視覚障害者誘導用ブロックにより形成されているため、物品αにおける凹凸の乗越レベルに関する制御パターンの一つとしては、許容速度範囲ゼロ、すなわち想定凹凸エリアの走行禁止との情報が取得される。
【0045】
又、物品βについては、図9に示すように、凹凸高さに関する制御パターンの一つとして、-Vb1<V<Vb1の許容速度範囲が取得されたとする。そして、物品βについての凹凸の乗越レベルに関する制御パターンの一つとしては、-Vb2<V<Vb2の許容速度範囲が取得されたとする。ここで、Vb1はVaよりも大きい値であり、Vb2はゼロより大きい値であるとする。尚、各物品α,βについて、許容加速度範囲についても同様に取得される。以上のように、S130では、搬送物品Lごとに、凹凸高さに関する制御パターンと、乗越レベルに関する制御パターンとが、実際に自律装置1に付与される制御パターンの候補として各々取得される(図9参照)。
【0046】
次いでS140では、取得ブロック110は、走行エリアにおける凹凸の形成された各小エリアのそれぞれについて自律装置1に付与する制御パターンを、S130にて取得された制御パターンの候補の中から選択することで、取得する。取得ブロック110は、複数の候補の中から、最も制限が厳しいものを、付与する制御パターンとして選択する。
【0047】
具体的には、取得ブロック110は、まず凹凸高さに関する搬送物品Lごとの許容速度範囲から、最も範囲の小さい許容速度範囲を抽出する。図9に示す例では、物品αにおける凹凸高さに関する許容速度範囲-Va<V<Vaが、物品βにおける凹凸高さに関する許容速度範囲-Vb1<V<Vb1よりも制限が厳しい制御パターンとなる。したがって、取得ブロック110は、想定凹凸エリアに対する凹凸高さに関する許容速度範囲として、-Va<V<Vaを抽出する。
【0048】
同様に、取得ブロック110は、凹凸の乗越レベルに関する搬送物品Lごとの許容速度範囲から、最も範囲の小さい許容速度範囲を選択する。図9に示す例では、物品αにおける凹凸の乗越レベルに関する許容速度範囲ゼロが、物品βにおける凹凸高さに関する許容速度範囲-Vb2<V<Vb2よりも制限が厳しい制御パターンとなる。したがって、取得ブロック110は、想定凹凸エリアに対する凹凸の乗越レベルに関する許容速度範囲として、許容速度範囲ゼロ(すなわち走行禁止)を抽出する。
【0049】
さらに、取得ブロック110は、抽出した凹凸高さに関する許容速度範囲及び凹凸の乗越レベルに関する許容速度範囲のうち、より制限の厳しい許容速度範囲を、対象となる凹凸エリアに関して自律装置1に付与する許容速度範囲として取得する。図9に示す例では、取得ブロック110は、凹凸の乗越レベルに関する許容速度範囲の方を、想定凹凸エリアに関して自律装置1に付与する許容速度範囲として決定、取得する。尚、取得ブロック110は、自律装置1に付与する許容加速度範囲についても、同様に取得する。以上のS130及びS140の処理により、少なくとも一種類以上の搬送物品Lを搬送する場合において、制御パターンが最適化される。
【0050】
続くS150では、出力ブロック130が、走行エリア内の各凹凸について取得された制御パターンに基づいて、後述の経路計画に利用可能なグローバルコストマップを生成する。グローバルコストマップは、走行エリアについて各地点の制御パターン情報が関連付けられた地図情報である。
【0051】
例えば、出力ブロック130は、ある地点について許容速度範囲がゼロ、すなわち乗り越えが禁止された制御パターンが取得されていた場合には、グローバルコストマップにおける当該地点を通過禁止エリアA1に設定する。具体的には、図10に示すように、走行エリア内において視覚障害者誘導用ブロックBが設置されたエリアに対して走行禁止の制御パターンが取得されていた場合、出力ブロック130は、図11に示すように当該エリアを通過禁止エリアA1に設定する。
【0052】
一方で、出力ブロック130は、ある地点について所定の許容速度範囲を規定した制御パターンが取得されていた場合には、グローバルコストマップにおける当該地点に関連して、コスト加算エリアA2を設定する(図12参照)。コスト加算エリアA2は、通過する経路に対して所定のコストが加算されるエリアである。
【0053】
続くS160では、出力ブロック130が、グローバルコストマップに応じた経路計画を実行する。経路は、出発地点SPから目的地点GPまでの、自律装置1の走行位置及び各走行位置の通過順序を規定する情報である。計画された経路は、後述の軌道を計画する際のリファレンス情報として利用される。
【0054】
具体的には、出力ブロック130は、コストが許容コスト範囲内で、且つ走行距離が最短となるように、経路を計画する。例えば図10に示す走行エリアでは、視覚障害者誘導用ブロックBを回避する経路と当該ブロックBを通過する経路との2通りの経路が計画可能となっている。そして、後者の方が前者よりも短い経路となるとする。視覚障害者誘導用ブロックBが通過禁止エリアA1に設定されていた場合、出力ブロック130は、図11に示すように通過禁止エリアA1を回避する経路P1を計画する。一方で、同様の走行エリアにおいて視覚障害者誘導用ブロックBがコスト加算エリアA2に設定されていた場合、出力ブロック130は、コストが許容コスト範囲内である限り、図12に示すように視覚障害者誘導用ブロックBを通過する経路を計画する。
【0055】
続くS170では、各ブロック110,120,130の共同により、経路に沿って目的地点GPへと走行する自律装置1の走行制御が実行される。S170の処理においては、エリアマップ情報にて参照された凹凸に関するより具体的な制御パターン、及びエリアマップ情報から欠落していた凹凸に関する制御パターンが、自律装置1による路面の監視結果に応じて取得される。S170の詳細処理について、図5のフローに従って以下説明する。
【0056】
まずS171では、監視ブロック120が、監視範囲Rにおける路面についての監視情報を、外界センサ30から取得する。監視情報は、例えば監視範囲Rにおける凹凸の位置範囲、高さ、乗越レベルに関する情報を、少なくとも含んでいる。
【0057】
S172では、取得ブロック110が、物品条件、車両情報及び監視情報に応じて、搬送物品Lごとの制御パターンを取得する。この処理は、エリアマップ情報が監視情報に置き換わった以外はS130の処理と実質同様の処理である。さらに、続くS173の処理は、S140の処理と実質同様の処理である。
【0058】
そしてS174では、出力ブロック130が、監視範囲R内の路面の凹凸について取得された制御パターンに応じた、ローカルコストマップを生成する。ローカルコストマップは、監視範囲Rを含む自律装置1周辺の各地点に、当該地点の制御パターンに関する情報が関連付けられた地図情報である。ローカルコストマップは、グローバルコストマップに対してより小さい範囲についての地図情報である。
【0059】
具体的には、出力ブロック130は、ある地点について許容速度範囲がゼロ、すなわち乗り越えが禁止された制御パターンが取得されていた場合には、ローカルコストマップにおける当該地点を通過禁止エリアA1に設定する。一方で、出力ブロック130は、ある地点について所定の許容速度範囲を規定した制御パターンが取得されていた場合には、ローカルコストマップにおける当該地点に関連して、コスト加算エリアA2及び減速エリアA3を設定する。減速エリアA3は、例えば許容速度範囲内までの走行速度の減速を規定されたエリアである。減速エリアA3は、コスト加算エリアA2の周辺に設定される。
【0060】
続くS175では、出力ブロック130が、ローカルコストマップに応じた軌道計画を生成する。軌道計画は、自律装置1の現在地点から特定の通過地点までの、自律装置1の軌道に関する情報である。ここで軌道とは、経路に沿った自律装置1の各走行位置と各走行位置の時間パラメータとを規定した情報である。尚、ここで自律装置1が経路に沿うとは、自律装置1が経路に対して所定距離範囲内を保っていることを意味する。又、各走行位置の時間パラメータは、各走行位置の通過時刻等を含む。これにより、軌道は、自律装置1の走行位置に加え、速度や加速度を規定する情報となる。
【0061】
例えば、図13に示すように、路面の一部分を遮るように設置された視覚障害者誘導用ブロックBに関する情報が、監視情報として取得されたとする。図14に示すように、この視覚障害者誘導用ブロックBが設置されたエリアが通過禁止エリアA1に設定されたローカルコストマップが生成されていた場合、出力ブロック130は、通過禁止エリアA1を迂回する軌道T1を、生成する。一方で図15に示すように、この視覚障害者誘導用ブロックBが設置されたエリアがコスト加算エリアA2として設定されたローカルコストマップが生成されていたとする。この場合、出力ブロック130は、コストが許容コスト範囲内となる限り、コスト加算エリアA2を通過する軌道T2を、生成する。さらに、出力ブロック130は、コスト加算エリアA2における制御パターン、及び当該エリアA2の周辺に設定された減速エリアA3に応じて、軌道T2の時間パラメータを設定する。
【0062】
そして、S176では、出力ブロック130が、軌道計画に応じた制御指令を、走行系7に対して出力することで、制御パターンを自律装置1に付与する。制御指令は、自律装置1の進行方向、速度及び加速度等を含んでいる。続くS177では、出力ブロック130が、センサ情報等に基づいて、制御指令に応じて走行した自律装置1が目的地点GPに到着したか否かを判定する。到着していないと判定した場合にはS171へと戻って走行を継続し、到着したと判定した場合には本フローを終了し、自律装置1の走行を完了する。
【0063】
以上の第一実施形態によれば、路面条件及び物品条件に応じた、走行制限制御を含む制御パターンが、自律装置1に付与される。故に、走行路面の凹凸状態に加え、搬送物品Lを考慮して制限された自律装置1の走行制御が実現され得る。したがって、搬送物品Lに対する影響を抑制した走行が可能となり得る。
【0064】
(第二実施形態)
図16,17に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の走行制御システム100が自律装置1の走行を制御する走行制御方法は、図16,17のフローに従って実行される。
【0065】
図16に示すように、S120の処理の後、本フローはS125へと移行する。S125では、S171と同様に、監視ブロック120が、監視範囲Rにおける路面についての監視情報を、外界センサ30から取得する。S125の処理の後、本フローはS130へと移行する。これにより、S130,S140における制御パターンの決定において、取得ブロック110は、エリアマップ情報に加えて監視情報に応じた制御パターンを決定する。さらに、図17に示すように、S177にて目的地点GPに未到着であると判定された場合には、本フローは図16のS125へと移行する。
【0066】
以上の処理により、軌道計画に基づく制御指令により自律装置1が走行すると、走行中に外界センサ30から取得された監視情報に応じた制御パターンが、S130,S140にて決定される。そして、S150,S160の処理により、この制御パターンに応じたグローバルコストマップ、及び経路計画が生成される。すなわち、本実施形態では、走行中に取得された監視情報により、制御パターン、グローバルコストマップ、及び経路計画が、適宜更新され得る。
【0067】
(第三実施形態)
図18に示すように第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。第三実施形態におけるS170の詳細処理では、まずS171の処理の代わりに、S171aの処理が実行される。S171aでは、取得ブロック110が、ローカルエリアマップ情報を取得する。ここでローカルエリアマップ情報は、自律装置1の周辺に限定されたエリアマップ情報である。ローカルエリアマップ情報は、「路面条件」の一例である。
【0068】
S171aの後に本フローはS172へと移行する。これにより、S172,S173では、取得ブロック110は、ローカルエリアマップ情報に応じた制御パターンを決定する。尚、S171aの処理は、S171の処理と並列して実行されてもよい。すなわち、取得ブロック110は、制御パターンの決定においてローカルエリアマップ情報及び監視情報の両方を利用してもよい。
【0069】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0070】
変形例において、取得ブロック110は、物品条件及び路面条件の入力に対して制御パターンを出力するように学習された学習済みモデルに対して、物品条件及び路面条件を入力することで、制御パターンを取得してもよい。学習済みモデルは、例えばニューラルネットワークモデル等、機械学習アルゴリズムによってチューニングされたモデルである。
【0071】
変形例において走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。又こうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0072】
ここまでの説明形態の他に上述の実施形態及び変形例は、自律装置1に搭載可能に構成されてプロセッサ102及びメモリ101を少なくとも一つずつ有する走行制御装置として、実施されてもよい。具体的には、上述の実施形態及び変形例は、処理回路(例えば処理ECU等)又は半導体装置(例えば半導体チップ等)の形態で実施されてもよい。
【0073】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0074】
(技術的思想1)
プロセッサ(102)を有し、搬送物品(L)を積載して自律走行可能な自律装置(1)の走行を制御する走行制御システムであって、
前記プロセッサは、
走行路面の凹凸状態に関する路面条件及び前記搬送物品に関する物品条件に応じた、前記自律装置の走行制限制御を含む制御パターンを、取得することと、
前記制御パターンを前記自律装置に付与することと、
を実行するように構成される走行制御システム。
【0075】
(技術的思想2)
前記制御パターンを取得することは、
前記路面条件、前記物品条件、及び前記自律装置に関する装置条件に応じた、前記制御パターンを取得することを含む技術的思想1に記載の走行制御システム。
【0076】
(技術的思想3)
前記制御パターンを取得することは、
前記搬送物品の少なくとも一部の固液状態を含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む技術的思想1又は技術的思想2に記載の走行制御システム。
【0077】
(技術的思想4)
前記制御パターンを取得することは、
固体状の前記搬送物品の硬さを含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む技術的思想1から技術的思想3のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【0078】
(技術的思想5)
前記制御パターンを取得することは、
塑性変形が想定される範囲の前記硬さを有する固体状の前記搬送物品の姿勢を含む前記物品条件に応じた前記制御パターンを、取得することを含む技術的思想4に記載の走行制御システム。
【0079】
(技術的思想6)
前記制御パターンを取得することは、
前記走行路面の凹凸度が前記物品条件に応じた許容凹凸度範囲に対して範囲外となる路面エリアでは、走行を禁止する前記制御パターンを取得することを含む技術的思想1から技術的思想5のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【0080】
(技術的思想7)
前記制御パターンを取得することは、
前記物品条件に応じて、前記走行路面の凹凸度が高いほど、許容速度範囲が制限された前記制御パターンを取得することを含む技術的思想1から技術的思想6のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【0081】
(技術的思想8)
前記制御パターンを取得することは、
前記物品条件に応じて、前記走行路面の凹凸度が高いほど、許容加速度範囲が制限された前記制御パターンを取得することを含む技術的思想1から技術的思想7のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【0082】
(技術的思想9)
前記制御パターンを取得することは、
前記路面条件及び前記物品条件を取得することと、
前記路面条件及び前記物品条件に応じた前記制御パターンを出力可能な制限制御モデルにより、前記制御パターンを最適化することと、
を含む技術的思想1から技術的思想8のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【0083】
尚、以上において技術的思想1~9は、走行制御装置、自律装置1、走行制御方法及び走行制御プログラムの形態で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1:自律装置、100:走行制御システム、101:メモリ(記憶媒体)、102:プロセッサ、L:搬送物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18