(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120669
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】キー制御システム、キー制御方法、キー管理装置、スマートキー
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20240829BHJP
E05B 19/00 20060101ALI20240829BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240829BHJP
【FI】
E05B49/00 K
E05B19/00 J
B60R25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027635
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸川 英史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩二
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
2E250GG06
2E250HH01
2E250JJ03
2E250JJ05
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】車両が不正に使用される恐れを低減可能な技術を提供する。
【解決手段】キー管理装置4には、車両と紐付けられているスマートキーである登録キーのキーデータが登録されている。また、キー管理装置4は、車両とは紐付けられていないスマートキーである制御キー8bを収容する収容部を備える。制御キー8bは、収容部に保管されるスマートキーであって、キー管理装置4から供給される電力で駆動する。また制御キー8bはキー管理装置4と有線接続されている。キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続したことに基づいて、制御キー8bへの給電を開始するとともに、制御キー8bのRAMに登録キーのデータを書き込む。これにより、制御キー8bを一時的に登録キーとして機能させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されてあって、前記車両の車内に保管されるスマートキー(8b)と、
前記スマートキーと通信可能であって、且つ、前記スマートキーの電源状態を制御可能に構成されているキー管理装置(4)と、を備え、
前記キー管理装置は、
携帯デバイスと無線通信するための無線通信モジュール(42)と、
前記認証のために使用されるキー情報が保存されている不揮発性の記憶媒体であるストレージ(47)と、
前記スマートキーの動作を制御する制御部(44)と、を備え、
前記制御部は、
前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在することに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、
前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて前記ストレージに保存されている前記キー情報を前記スマートキーに送信し、
前記スマートキーは、
前記認証のための通信に係る処理を行うキー側制御部(87b)と、
揮発性メモリ(872)と、
不揮発性メモリ(873)と、を備え、
前記スマートキーの前記不揮発性メモリには、前記ストレージに保存されている前記キー情報は登録されておらず、
前記キー側制御部は、
前記キー管理装置から前記キー情報を受信すると受信した前記キー情報を前記揮発性メモリに保存し、
前記揮発性メモリに保存されている前記キー情報を用いて前記認証のための通信を実施するように構成されているキー制御システム。
【請求項2】
前記キー管理装置は、
前記携帯デバイスから受信する無線信号に関連するデータに基づいて前記携帯デバイスが前記車両から前記所定距離以内に存在するか否かを判定することと、
前記携帯デバイスが前記所定距離以内に存在すると判定したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、前記スマートキーに向けて前記キー情報を送信することと、を実行するように構成されている、請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項3】
前記無線信号に関連する前記データは、前記携帯デバイスから受信する前記無線信号の信号強度、位相差、及び飛行時間との少なくとも1つに関連するデータである、請求項2に記載のキー制御システム。
【請求項4】
前記キー管理装置は、
前記携帯デバイスとの通信接続が確立したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、前記スマートキーに向けて前記キー情報を送信するように構成されている、請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項5】
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスとの通信接続が切断したことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項6】
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスから前記スマートキーを停止させる指示を受信したことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項7】
前記キー管理装置は、
前記携帯デバイスから受信する無線信号に関連するデータに基づいて前記車両から前記携帯デバイスまでの距離を算出し、
算出した前記距離が所定値以上となったことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項8】
前記キー管理装置と前記スマートキーは通信ケーブルで接続されてあって、
前記制御部は、有線通信にて前記キー情報を前記スマートキーに送信する請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項9】
前記認証装置は、通信距離が0.5m以上である第1通信方式と、通信距離が前記第1通信方式より短い第2通信方式のそれぞれで、前記認証装置と前記認証のための無線通信を実施可能に構成されており、
前記第1通信方式による前記認証のための無線通信では前記キー情報が用いられる一方、
前記第2通信方式による前記認証のための無線通信では、前記キー情報とは異なる情報を用いられ、
前記スマートキーは、前記第2通信方式による通信は実施不能に構成されているか、又は、前記第2通信方式による前記認証を成功させるためのデータが登録されていないデバイスである、請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項10】
前記第2通信方式の無線通信は、NFC(Near Field Communication)である、請求項9に記載のキー制御システム。
【請求項11】
前記携帯デバイスと前記キー管理装置の無線通信は、Bluetooth通信である請求項1から10の何れか1つに記載のキー制御システム。
【請求項12】
前記車両に保管される前記スマートキーである制御キーに加えて、
前記制御キーとは異なるスマートキーであって、前記キー情報が登録されている不揮発性メモリを備えるスマートキーである登録キー(8a)を備え、
前記キー管理装置は、
前記登録キーと通信接続している状態において、前記携帯デバイスから登録リクエストを受信したことに基づいて、前記登録キーから前記キー情報を取得し、
前記登録キーから取得した前記キー情報を前記ストレージに保存し、
前記キー情報の取得が成功したことを前記携帯デバイスに表示させるように構成されている、請求項1に記載のキー制御システム。
【請求項13】
携帯デバイスと無線通信可能に構成されているキー管理装置(4)と、車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されているスマートキー(8b)と、を含むシステムで実行されるキー制御方法であって、
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在することに基づいて前記スマートキーの電源をオンに設定するステップと、
前記キー管理装置が、前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて、前記認証に必要なキー情報を前記スマートキーに送信するステップと、
前記スマートキーが、前記キー管理装置から前記キー情報を受信するステップと、
前記スマートキーが、受信した前記キー情報を揮発性メモリに保存するステップと、
前記スマートキーが、前記揮発性メモリに保存されている前記キー情報を用いて前記認証のための無線通信を実施するステップと、
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスが前記車両から前記所定距離以内に存在しないことに基づいて前記スマートキーの電源をオフに設定するステップと、を含むキー制御方法。
【請求項14】
スマートキーを収容する収容部(41)と、
前記スマートキーと通信するためのキー通信部(411)と、
認証のために使用されるキー情報を記憶している不揮発性の記憶媒体であるストレージ(47)と、
携帯デバイスと無線通信を実施するための通信モジュールである無線通信モジュール(42)と、
前記スマートキーを制御する制御部(44)と、を備え、
前記制御部は、
前記携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在することに基づいて前記スマートキーの電源をオンに設定することと、
前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて前記キー情報を前記スマートキーに送信し、前記スマートキーの揮発性メモリに保存させることと、
前記携帯デバイスが前記車両から前記所定距離以内に存在しないことに基づいて前記スマートキーの電源をオフにすることと、を実施するように構成されているキー管理装置。
【請求項15】
キー管理装置と接続されて使用されるスマートキーであって、
前記キー管理装置と通信するためのキー側通信部(86)と、
車両に搭載されている認証装置と認証のための通信に係る処理を行うキー側制御部(87b)と、
揮発性メモリ(872)と、
不揮発性メモリ(873)と、を備え、
前記不揮発性メモリには、前記認証が成功となるキー情報は登録されておらず、
前記キー側制御部は、
前記キー管理装置から前記キー情報を受信し、
受信した前記キー情報を前記揮発性メモリに保存し、
前記揮発性メモリに保存されている前記キー情報を用いて前記認証のための通信を実施するように構成されているスマートキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両が不正に使用される恐れを低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スマートフォンなどの携帯デバイスの画面に表示されるボタン(ソフトウェアキー)を選択することにより、車両に保管されているスマートキーの動作状態(有効/無効)を切り替え可能なシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、車両に保管されているスマートキーは、携帯デバイスに対するユーザ操作に基づいて無効状態に切り替わる。そのため、ユーザがスマートキーを無効化する操作をし忘れた場合には、車両には有効なスマートキーが存在し続けることとなる。つまり、車両が不正に使用される恐れが生じる。また、無効化されていたとしても車両に保管されているスマートキーにはキー情報が記憶されている。よって、当該スマートキーが盗まれた場合には、キー情報が流出しうる。
【0005】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、車両が不正に使用される恐れを低減可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されるキー制御システムは、車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されてあって、車両の車内に保管されるスマートキー(8b)と、スマートキーと通信可能であって、且つ、スマートキーの電源状態を制御可能に構成されているキー管理装置(4)と、を備え、キー管理装置は、携帯デバイスと無線通信するための無線通信モジュール(42)と、認証のために使用されるキー情報が保存されている不揮発性の記憶媒体であるストレージ(47)と、スマートキーの動作を制御する制御部(44)と、を備え、制御部は、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在することに基づいて、スマートキーの電源をオンに設定し、スマートキーの電源をオンにしたことに基づいてストレージに保存されているキー情報をスマートキーに送信し、スマートキーは、認証のための通信に係る処理を行うキー側制御部(87b)と、揮発性メモリ(872)と、不揮発性メモリ(873)と、を備え、スマートキーの不揮発性メモリには、ストレージに保存されているキー情報は登録されておらず、キー側制御部は、キー管理装置からキー情報を受信すると受信したキー情報を揮発性メモリに保存し、揮発性メモリに保存されているキー情報を用いて認証のための通信を実施するように構成されている。
【0007】
上記のキー制御システムによれば、車両に保管されるスマートキーは、キー管理装置によって電源がオンに設定されている間のみ、認証装置による認証が成功可能なスマートキーとして機能する。認証に必要なキー情報は、揮発性メモリに保存されるため、スマートキーの電源がオフとなったタイミングでスマートキーからキー情報が消失される。車両に保管されるスマートキーがキー情報を常に保持するわけではない。そのため、当該スマートキーが盗まれることによって、キー情報が流出する恐れを低減できる。これに伴い、車両が不正に使用される恐れを低減することができる。
【0008】
また本開示に含まれるキー制御方法は、携帯デバイスと無線通信可能に構成されているキー管理装置(4)と、車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されているスマートキー(8b)と、を含むシステムで実行されるキー制御方法であって、キー管理装置が、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在することに基づいてスマートキーの電源をオンに設定するステップと、キー管理装置が、スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて、認証に必要なキー情報をスマートキーに送信するステップと、スマートキーが、キー管理装置からキー情報を受信するステップと、スマートキーが、受信したキー情報を揮発性メモリに保存するステップと、スマートキーが、揮発性メモリに保存されているキー情報を用いて認証のための無線通信を実施するステップと、キー管理装置が、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在しないことに基づいてスマートキーの電源をオフに設定するステップと、を含む。
【0009】
本開示に含まれるキー管理装置は、スマートキーを収容する収容部(41)と、スマートキーと通信するためのキー通信部(411)と、認証のために使用されるキー情報を記憶している不揮発性の記憶媒体であるストレージ(47)と、携帯デバイスと無線通信を実施するための通信モジュールである無線通信モジュール(42)と、スマートキーを制御する制御部(44)と、を備え、制御部は、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在することに基づいてスマートキーの電源をオンに設定することと、スマートキーの電源をオンにしたことに基づいてキー情報をスマートキーに送信し、スマートキーの揮発性メモリに保存させることと、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在しないことに基づいてスマートキーの電源をオフにすることと、を実施するように構成されている。
【0010】
本開示のスマートキーは、キー管理装置と接続されて使用されるスマートキーであって、キー管理装置と通信するためのキー側通信部(86)と、車両に搭載されている認証装置と認証のための通信に係る処理を行うキー側制御部(87b)と、揮発性メモリ(872)と、不揮発性メモリ(873)と、を備え、不揮発性メモリには、認証が成功となるキー情報は登録されておらず、キー側制御部は、キー管理装置からキー情報を受信し、受信したキー情報を揮発性メモリに保存し、揮発性メモリに保存されているキー情報を用いて認証のための通信を実施するように構成されている。
【0011】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両用電子キーシステムの全体像を示す図である。
【
図2】スマートECUの構成を示すブロック図である。
【
図5】制御キーの作動を示すフローチャートである。
【
図7】キー管理装置に登録キーのデータを登録する処理のシーケンス図である。
【
図8】アンロックに係る各装置の作動を示すシーケンス図である。
【
図9】制御キーの有効化にかかるキー管理装置の作動の一例を示すフローチャートである。
【
図10】アンロックに係る各装置の他の作動を示すシーケンス図である。
【
図11】アンロックに係るキー管理装置の他の作動例を示すフローチャートである。
【
図12】スタートスイッチが押下された際の各装置の作動を示すシーケンス図である。
【
図13】ユーザが携帯デバイスのロックボタンを押した場合の各装置の作動を示すシーケンス図である。
【
図14】携帯デバイスとキー管理装置との通信接続が切れた場合の各装置の作動を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。また、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明を適用することができる。
【0014】
本実施形態の車両用電子キーシステムは、
図1に示すように、車載システム1、登録キー8a、制御キー8b、及び携帯デバイス9を含む。車載システム1は、後述の通り、スマートECU2及びキー管理装置4を含む。ECUは、Electronic Control Unit(電子制御装置)の略である。車載システム1は、或る車両に搭載されたシステムである。以下における車両とは基本的には同一の車両を指す。
【0015】
登録キー8aは、車両の電子キーとしての専用デバイスである。登録キー8aは、車両の購入時に、車両とともにオーナとしてのユーザに提供される。登録キー8aは、車両の付属品と解されて良い。登録キー8aは、スマートキー、車両用携帯機、キーフォブ、キーカード、アクセスなどと呼ばれうる。登録キー8aは、車両に紐付けられたスマートキーと解されてよい。
【0016】
登録キー8aの不揮発性メモリには、キーIDや鍵コードといったキーデータが登録されている。車両に紐付けられたスマートキーとは、スマートECU2にキーデータが登録されているスマートキーと解されて良い。なお、本開示では或るスマートキーにとって、当該スマートキーと紐付けられている車両のことを対象車両とも記載する。スマートECU2へのキーデータの登録は、ディーラショップ/工場にて、所定の登録ツールを用いて実施されうる。
【0017】
登録キー8aは、スマートECU2と、所定の第1通信方式にて、スマートECU2と無線通信可能に構成されている。第1通信方式は、LF-UHF併用方式であってよい。LF-UHF併用方式は、125kHzや134kHzなどのLF(Low Frequency)帯の電波と、315MHzや、920MHzなどのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を併用して双方向通信を行う方式である。例えばLF-UHF併用方式は、車載システム1から登録キー8aに向けて信号送信にはLF帯の電波を用い、登録キー8aから車載システム1への信号送信にはUHF帯の電波を用いる方式であってよい。登録キー8aが送信するUHF帯の信号はRF信号と呼ばれうる。本開示ではLF-UHF併用方式の無線通信を、スマート通信とも記載する。もちろん、第1通信方式は、その他の方式であってよい。第1通信方式は、ユーザの利便性の観点から、通信距離が0.5m以上となる通信方式であってよい。また、第1通信方式は、防犯性の観点から、実質的な通信距離が20m未満、最大でも100mとなる通信方式であってよい。
【0018】
また、登録キー8aとスマートECU2は、第1通信方式よりも通信距離が短い第2通信方式でも、スマートECU2と無線通信可能に構成されている。例えば第2通信方式はトランスポンダ通信であってよい。トランスポンダ通信は、応答機が、送信機から発せられる電磁波の受信電力を用いて駆動し、送信機から受信した信号に応答する無線通信を指す。トランスポンダ通信は、応答機と送信機の電磁界結合を利用した無線通信である。トラスポンダ通信は、近接場通信(NFC:Near Field Communication)の一種と解されてよい。
【0019】
スマートECU2は、登録キー8aと、無線通信による認証を行うことにより、ユーザによる登録キー8aの操作なしで、ドアの開錠/施錠、車両電源のオン/オフなどの制御を行う。車両電源は、車両が走行する際にオンとなる電源である。車両電源はイグニッション電源又はシステムメインリレーであってよい。無線通信による認証は、キーデータを用いて実行される。このような機能/システムは、パッシブエントリ/パッシブスタート(Passive Entry / Passive Start:PEPS)機能/システムなどとも呼ばれうる。なお、本実施形態においては、登録キー8aは、必ずしもユーザによって携帯される必要はなく、自宅やオフィスなどといった、車外の所定の保管場所に保管されていて良い。
【0020】
なお、スマートECU2による認証とは、キーデータ(例えば鍵コード)を用いて通信相手が車両に紐付けられている装置であるかを検証する処理を指す。認証成功とは、通信相手が事前に登録されているスマートキーであると判定することに対応する。なお、登録キー8aは、ユーザに紐づくため、スマートECU2が通信相手を認証することは、間接的にユーザを認証すること、換言すれば、車両にアクセスしようとしている人物が正規のユーザであるか否かを判定することに対応する。このように本開示の認証とは、ユーザ/装置が、車両に紐付けられているユーザ/装置であるかを検証することと解されて良い。
【0021】
制御キー8bも、登録キー8aと同様に、第1通信方式及び第2通信方式にてスマートECU2と無線通信可能なデバイスである。制御キー8bは、車両と紐付けられていない点で、登録キー8aとは相違する。すなわち、制御キー8bは、制御キー8bのキーデータがスマートECU2に登録されていないスマートキーであってよい。
【0022】
制御キー8bは、後述の通り、キー管理装置4から受信する登録キー8aのキーデータを用いて一時的に車両の鍵として機能する。制御キー8bは、車両に保管されて使用される。例えば制御キー8bは、キー管理装置4に収納されていて良い。以降において登録キー8aと制御キー8bとを区別しない場合には単にスマートキーとも記載する。
【0023】
携帯デバイス9は、携帯可能かつ汎用的な情報処理端末である。携帯デバイス9は、スマートフォンや、ウェアラブルデバイス等など、多様な通信端末であってよい。携帯デバイス9とキー管理装置4は、ともに近距離通信を実施可能に構成されている。ここでの近距離通信とは、実質的な通信可能距離が1mから30m、最大でも100m程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信を指す。近距離通信はSRWC(Short Range Wireless Communication)と言い換えられても良い。以下では、近距離通信がBluetooth(登録商標) Low Energyに準拠した無線通信である場合を例にとって、各部の作動を説明する。
【0024】
<携帯デバイスの作動について>
携帯デバイス9は、キー管理装置4と通信接続していない場合、アドバタイズ信号を所定の送信間隔で送信する。アドバタイズ信号は、自分自身の存在を他のデバイスに通知(すなわちアドバタイズ)するための無線信号である。携帯デバイス9は、キー管理装置4からの接続要求を受信したことに基づいて、キー管理装置4と通信接続する。
【0025】
携帯デバイス9には、携帯デバイス9を車両の鍵として機能させるためのアプリであるデジタルキーアプリがインストールされている。デジタルキーアプリは、キー管理装置4との通信接続が確立したことに基づいて、デバイス鍵コードを用いてキー管理装置4と認証のための通信を実施する。認証は、チャレンジ-レスポンス方式によって実施されてよい。携帯デバイス9は、認証のための通信の一工程として、キー管理装置4からチャレンジコードを受信した場合には、デバイス鍵コードを用いてレスポンスコードを生成し、キー管理装置4に返送してもよい。デバイス鍵コードは、キー管理装置4が携帯デバイス9を認証するためのコードである。デバイス鍵コードは、例えばユーザ/サーバによって設定された固定値であってよい。またデバイス鍵コードは、1回使用されると破棄される、いわゆる使い捨てのコード(いわゆるワンタイムパスコード)であってもよい。
【0026】
また、デジタルキーアプリは、キー管理装置4との通信接続が確立したことに基づいて、携帯デバイス9のディスプレイに車両操作画面を表示してよい。車両操作画面は、アンロックボタンやロックボタンなど、車両の状態確認及び遠隔操作に係るソフトウェアキーを含む画面である。各種ソフトウェアキーは操作ボタンと言い換えられて良い。デジタルキーアプリは、車両操作画面に含まれる操作ボタンに対するユーザの選択操作に反応して、操作内容に応じた近距離通信信号をキー管理装置4に送信する。
【0027】
また、携帯デバイス9は、キー管理装置4からの要求に基づき、測距通信を実行する。測距通信とは、車両から携帯デバイス9までの距離であるデバイス距離を測定するための無線通信である。デバイス距離は、無線信号の飛行時間、周波数ごとの受信位相の差である受信位相差、又は受信強度に基づいて算出されて良い。デバイス距離の算出機能は、携帯デバイス9が備えていても良いし、キー管理装置4が備えていても良い。
【0028】
<車載システムの概要>
車載システム1は、スマートECU2、ボディECU3、キー管理装置4、車内ネットワーク5、スタートスイッチ6、及びドアスイッチ7を備える。スマートECU2、ボディECU3、及びキー管理装置4はそれぞれ車内ネットワーク5に接続している。スマートECU2は、スタートスイッチ6と通信ケーブルで接続されている。キー管理装置4は、ドアスイッチ7と通信ケーブルで接続されている。
【0029】
車内ネットワーク5は車両内に構築されている通信ネットワークである。車内ネットワーク5の規格としては、Controller Area Network(CAN:登録商標)や、Ethernet(登録商標)、FlexRay(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。スマートECU2とボディECU3とキー管理装置4とは、車内ネットワーク5を介して相互通信可能に構成されている。
【0030】
本開示の装置同士の接続形態は一例であって適宜変更されてよい。キー管理装置4は、車内ネットワーク5と接続していなくとも良い。キー管理装置4は、スマートECU2及びボディECU3と通信不能に構成されていても良い。
【0031】
スマートECU2は、PEPS機能を提供するECUである。すなわち、スマートECU2は、スマートキーとの認証のための通信を実施し、認証が成功したことに基づいて、車両に対するユーザ操作に対応する制御を実行する。ユーザ操作に対応する制御とは、車両のアンロック、ロック、車両電源のオンなどである。スマートECU2が認証装置に相当する。スマートECU2は、
図2に示すようにLF送信部21、UHF受信部22、及びスマート制御部23を備える。
【0032】
LF送信部21は、スマート制御部23から入力されたベースバンド信号に対応するLF信号を送信する装置である。LF信号とは、LF帯に属する所定の周波数の無線信号である。例えばLF送信部21は、スマート制御部23からの入力信号に基づき、チャレンジ信号を送信する。チャレンジ信号は、認証のためのチャレンジコードを含む信号である。当該LF送信部21は、周波数変換、変調等といった所定の信号処理を行う回路と、LFアンテナとを含む。LFアンテナは、LF信号を送信するためのアンテナである。LFアンテナは、各ドアハンドル及びインストゥルメントパネルなど、車両の複数箇所に配置されていて良い。
【0033】
UHF受信部22は、スマートキーから送信されてくるUHF信号を受信するための通信モジュールである。UHF信号は、UHF帯に属する所定周波数の無線信号である。UHF受信部22は、UHF信号を受信するためのアンテナや、復調回路、増幅回路、周波数変換回路などを備える。UHF受信部22は受信信号に対応するデータをスマート制御部23出力する。
【0034】
スマート制御部23は、LF送信部21及びUHF受信部22を用いてスマートキーを認証するための処理を行う回路モジュールである。スマート制御部23は、プロセッサ231、メモリ232、及びストレージ233を備える。プロセッサ231は、CPU(Central Processing Unit)であってよい。メモリ232はRAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶媒体である。ストレージ233は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ233には、登録キー8aのキーデータが保存されている。
【0035】
キーデータは、キーID、鍵コード、及びTP-IDを含む。キーIDは、スマートキーの識別番号である。鍵コードは、スマート通信による無線認証に使用されるコードである。無線認証とは無線通信による認証を指す。鍵コードが第1通信方式による認証で使用されるキー情報に相当する。TP-IDは、トランスポンダ通信による無線認証において鍵コードとして機能するコードに相当する。TP-IDが第2通信方式による認証で使用されるキー情報に相当する。
【0036】
スマート制御部23は、車両に配置された複数のLFアンテナから定期的に所定の応答要求信号(いわゆるウェイク信号)を送信することで、スマートキーを探索する。スマート制御部23は、スマートキーからの応答を受信した場合には、第1通信方式によるスマートキーの認証を試行する。具体的には、チャレンジ信号をLFアンテナから送信するとともに、送信したチャレンジコードと登録キー8aの鍵コードを用いて検証コードを生成する。そして、スマートキーから返送されてくるレスポンスコードと検証コードとを照合する。検証コードは、通信相手の正当性を検証するためのコードと解されて良い。
【0037】
スマート制御部23における検証コードの生成手順は、スマートキーにおけるレスポンスコードを生成する手順と同様である。よって、スマートECU2にとっての通信相手が真に登録キー8aである場合には、2つのコードは一致するはずである。スマートECU2は、受信したレスポンスコードが検証コードと一致する場合には、認証成功と判定する。一方、スマートECU2は、通信相手から受信したレスポンスコードが検証コードと一致しない場合には、認証失敗と判定する。スマートECU2はチャレンジコードを送信してから所定の応答待機時間が経過してもレスポンスコードを受信できなかった場合にも、認証失敗と判定してよい。なお、無線認証の具体的方法は適宜変更されてよい。無線認証は、スマートECU2は受信したレスポンスコードを所定の復号鍵を用いて復号したコードが、チャレンジコードと一致するか否かを判断することであっても良い。
【0038】
スマートECU2は、認証成功と判定したことに基づいて、ボディECU3と協働して、車両のアンロック/ロックなどを実行する。その他、スマート制御部23は、車側TPM61を用いてスマートキーとの無線認証を実施する。車側TPM61は後述の通り、トランスポンダ通信を実施するためのモジュールである。車側TPM61を用いたスマートキーとの無線認証は、第2通信方式による認証に対応する。
【0039】
ボディECU3は、ドアロックモータやパワースライドドアモータ、ウィンドウモータなどといった、ボディ系アクチュエータを制御するECUである。ボディECU3は、スマートECU2からの要求に基づいてドアのアンロック/ロックを実行する。ボディECU3は、スマートECU2からの要求に基づいて窓の開閉や、ハザードランプの消灯などを実行するように構成されていてもよい。
【0040】
キー管理装置4は、制御キー8bを収容する収容部41を備え、当該収容部41に保管されている制御キー8bの動作状態(有効/無効)を制御する装置である。キー管理装置4は、収容部41に加えて近距離通信モジュール42、通信インターフェース43、及び制御部44を備える。収容部41は、制御キー8bを収容する構成である。収容は保管と言い換えられて良い。収容部41の詳細は別途後述する。キー管理装置4は、グローボックス、シート下、トランク内など、車内の任意の場所に取り付けられていてよい。
【0041】
近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と近距離通信を実施するための無線通信モジュールである。近距離通信モジュール42は、近距離通信用のアンテナや、信号処理チップ、マイクロコンピュータなどを含みうる。近距離通信モジュール42は、受信データを制御部44に出力するとともに、制御部44から入力されたデータを携帯デバイス9に送信する。近距離通信モジュール42は、間欠的にスキャンを行い、携帯デバイス9を探索する。近距離通信モジュール42は、スキャンにて携帯デバイス9を発見した場合、携帯デバイス9と通信接続する。近距離通信モジュール42が携帯デバイス9と通信接続している状態は、キー管理装置4/制御部44が携帯デバイス9と通信接続している状態に対応する。
【0042】
近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9から送信されてきたデータの他、携帯デバイス9からの信号の受信強度を示すデータを制御部44に出力してよい。さらに、近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と測距通信を実施する。測距通信は、ラウンドトリップ時間(RTT:Round Trip Time)を計測するための通信であって良い。RTTは、近距離通信モジュール42が携帯デバイス9に向けて応答を要求する所定の無線信号を送信してから携帯デバイス9からの応答信号を受信するまでの時間に対応する。RTTは、無線信号の往復飛行時間と解されて良い。測距通信は、携帯デバイス9に向けて応答要求信号を送信することと、携帯デバイス9からの応答信号を受信することとを含んでよい。なお、RTT(ひいては距離)を計測する主体、換言すれば、測距のための応答要求信号を送信する装置は、携帯デバイス9であってもよい。測距に係る機能配置は適宜変更されて良い。携帯デバイス9が測距通信のイニシエータである場合には、携帯デバイス9は測距結果を近距離通信モジュール42に送信しうる。
【0043】
近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と測距通信を実施した場合には、測距通信の結果を示すデータを制御部44に出力する。測距通信の結果とは、デバイス距離の値(つまり測距値)、あるいは、測距値を特定するためのデータであってよい。測距値を特定するためのデータとは、往復飛行時間や、通信周波数(チャネル)ごとの受信位相、などであってよい。測距値を特定するためのデータは受信強度であってもよい。近距離通信モジュール42は、制御部44/携帯デバイス9の指示に基づいて測距通信を実施しても良い。近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と通信接続している間、自動的かつ定期的に測距通信を実行するように構成されていても良い。
【0044】
近距離通信モジュール42は、車両電源がオフに設定されている間も、車載バッテリの電力を用いて動作可能な状態を維持する。近距離通信モジュール42は、車載バッテリから供給される電力を用いて、車両が駐車されている間も、常にあるいは間欠的に待ち受け状態となる。なお、近距離通信モジュール42は、車両の天井部やBピラー、ドアハンドルなど、制御部44を収容する筐体の外に配置されていても良い。キー管理装置4は、複数のモジュールに分割して実現されていても良い。
【0045】
通信インターフェース43は、制御部44が車両に搭載されているセンサ及び装置と通信するための回路モジュールである。通信インターフェース43は、車内ネットワーク5の通信規格に準拠したPHYチップ及びケーブルコネクタなどを含みうる。また、通信インターフェース43は、ドアスイッチ7からの信号を受信するための回路を含む。
【0046】
制御部44は、プロセッサ45、メモリ46、ストレージ47を備える。プロセッサ45は、CPUであってよい。メモリ46は、揮発性の記憶媒体(例えばRAM)である。ストレージ47は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ47には、スマートECU2と同様に、登録キー8aのキーデータが保存されている。登録キー8aのキーデータのストレージ47への登録方法については別途後述する。またストレージ47には、携帯デバイス9を認証するための情報(例えばデバイス鍵コード)が保存されている。
【0047】
さらにストレージ47には、収容部41に保管されている制御キー8bの動作状態を制御するためのプログラムであるキー制御プログラムが保存されている。キー制御プログラムは、コンピュータを制御部44として機能させるためのインストラクションを含むプログラムである。キー制御プログラムは、プロセッサ45によって実行される。プロセッサ45がキー制御プログラムを実行することは、当該キー制御プログラムに対応するキー制御方法が実行されることに相当する。
【0048】
制御部44は、車両電源がオフの間も、車載バッテリの電力を用いて処理を実行可能な状態を維持して良い。制御部44は、キー管理装置4と携帯デバイス9とが通信接続している場合、近距離通信モジュール42に携帯デバイス9との測距通信を定期的に実施させてよい。制御部44のその他の機能、及び、作動の詳細については別途後述する。
【0049】
スタートスイッチ6はユーザが車両電源をオン/オフを切り替えるためのプッシュスイッチである。スタートスイッチ6はパワースイッチとも呼ばれうる。スタートスイッチ6は、ユーザに押された場合、オン信号をスマートECU2に出力する。スタートスイッチ6の近傍(例えば裏側)には、車側TPM61が配置されている。
【0050】
車側TPM61は、車両に搭載されているトランスポンダモジュール(TPM:transponder module)である。本開示におけるトランスポンダモジュールとは、トランスポンダ通信を実施するための通信モジュールを意味する。車側TPM61は、通信のためのアンテナコイルを含む。車側TPM61は、スマートECU2からの入力信号に応じた電磁界を形成するとともに、受信信号に対応するデータをスマートECU2に出力する。車側TPM61は、スマートECU2からの指示に基づき作動し、スマートキーとのデータ通信、例えばチャレンジコードとレスポンスコードの送受信を試行する。車側TPM61は、スマートキーとの通信に際し、データの返送を要求する側の端末、すなわちリーダ/アクティブデバイスとして動作する。
【0051】
ドアスイッチ7は、ユーザの開錠操作/施錠操作を受け付けるために、外側ドアハンドルやトランクドアハンドルなどに配置されているスイッチである。ドアスイッチ7は、プッシュ式のスイッチであってもよいし、タッチセンサであってもよい。ドアスイッチ7は、後付けされたものであってもよい。ドアスイッチ7は、ユーザに押下/タッチされている場合、オン信号をキー管理装置4に出力する。また、ドアスイッチ7は、ユーザに押下/タッチされていない場合にはオフ信号をキー管理装置4に出力する。ドアスイッチ7は、ユーザに押下/タッチされているか否かを示す信号をスマートECU2にも出力可能に構成されていても良い。なお、ドアスイッチ7は任意の要素であって省略されてもよい。
【0052】
<登録キーの構成について>
登録キー8aは
図3に示すように、LF受信部81、UHF送信部82、キー側TPM83、操作ボタン84、電源回路85、通信コネクタ86、およびコントローラ87を備える。
【0053】
LF受信部81は、車載システム1から送信されるLF信号を受信するための構成である。LF受信部81は、LF信号を受信するためのアンテナや、復調回路、周波数変換回路を含む。LF受信部81は、アンテナで受信したLF信号に対応するデータをコントローラ87に出力する。
【0054】
なお、一般的にスマートキーは、動作モードとして、アクティブモードと、スリープモードとを備える。アクティブモードは、コントローラ87等が起動しており、且つ、スマートECU2と双方向通信可能な状態である。スリープモードは、アクティブモードと比較して実行可能な機能を限定することにより、消費電力を抑制するモードである。スリープモードは、LF受信部81以外への電力供給を停止している状態であってよい。スリープモードは、LF電波の受信を待機している状態であってよい。LF受信部81は、所定の閾値以上の強度を有するLF信号(例えばウェイク信号)を受信したことに基づいて、スマートキーをスリープモードからアクティブモードに移行させる。スマートキーは、操作ボタン84が操作された場合にもスリープモードからアクティブモードへと移行してよい。
【0055】
UHF送信部82は、UHF信号を送信するためのアンテナや、変調回路などを含む通信モジュールである。UHF送信部82は、コントローラ87から入力されたデータに対応するUHF信号を送信する。
【0056】
キー側TPM83は、登録キー8aが備えるトランスポンダモジュールである。キー側TPM83は、アンテナコイル、及び、IC(Integrated Circuit)チップを含む。キー側TPM83が備えるICチップは、受信信号に応じた信号を返送するための構成であって、CPUや、TP-IDが登録されたROM(Read Only Memory)などを含む。TP-IDは、トランスポンダ通信用のICチップに書き込まれており、その値はICチップ毎に異なる。よって、登録キー8aがトランスポンダ通信での認証に使用するTP-IDは、制御キー8bがトランスポンダ通信での認証に使用するTP-IDとは相違する。
【0057】
キー側TPM83は、車側TPM61から送信されてくるチャレンジコードを受信した場合、当該チャレンジコードとTP-IDとをもとにレスポンスコードを生成して返送する。このように登録キー8aは、トランスポンダ通信にて車載システム1と認証のための無線通信を実施可能に構成されている。なお、受信信号に対する応答信号の生成に係る機能部は、コントローラ87と統合されていても良い。
【0058】
操作ボタン84は、登録キー8aに対するユーザ操作を受け付けるための構成である。操作ボタン84は、プッシュスイッチであってよい。登録キー8aは、操作ボタン84として、車両のドアを施錠するための施錠ボタンと、車両のドアを開錠するための開錠ボタンとを備えていてよい。各操作ボタン84は、ユーザに押されている場合、オン信号をコントローラ87に出力する。オン信号は、電圧レベルがロー(0)に対応する信号であって良い。
【0059】
電源回路85は、電池200から供給される電圧を、コントローラ87やUHF送信部82、LF受信部81などの動作に適した電圧に変換する回路である。電源回路85は、変換した電圧を各部に供給する。電源回路85は、プラス端子851とマイナス端子852とを含む。プラス端子851は、電池200のプラス極と電気的に接続するための端子である。マイナス端子852は、電池200のマイナス極と電気的に接続するための端子である。登録キー8aの筐体内部には、電池200がセットされるスペースである電池収容部が形成されている。電池収容部の形状は、電池200の形状(型番)に適合している。電池200は、コイン電池あるいはボタン電池などと称される、小型電池であってよい。
【0060】
通信コネクタ86は、キー管理装置4と通信するための通信ケーブルC1が接続されるコネクタである。通信コネクタ86は、コントローラ87としてのICチップが備える入力端子及び出力端子と接続されている。通信コネクタ86及び通信ケーブルC1は、コントローラ87とキー管理装置4とがデータ通信を行うための構成である。コントローラ87とキー管理装置4と通信方式はSPI(Serial Peripheral Interface)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、又はUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などであってよい。
【0061】
なお、通信コネクタ86は、任意の要素であって、省略されても良い。通信ケーブルC1の信号線が、コントローラ87bが備える特定の入出力端子あるいはそれらに連なる配線パターンに、直接はんだ付けされていても良い。登録キー8aは、キー管理装置4と無線通信を実施するように構成されていても良い。無線通信方式は、トランスポンダ通信であってもよいし、その他のNFCであってもよい。キー管理装置4は、TPMなど、登録キー8aが備えるNFC機能に対応する無線通信モジュールを備えていても良い。
【0062】
コントローラ87は、CPU871、RAM872、及びROM873を備える。コントローラ87は、ICチップとして基板に搭載されていてよい。コントローラ87は、開錠ボタンのオン信号が入力される開錠用入力端子や、施錠ボタンのオン信号が入力される施錠用入力端子など、複数の入力端子及び複数の出力端子を備える。
【0063】
登録キー8aのROM873は、キーID、鍵コード、その他データ、及び、有線通信用の暗号鍵が登録されている。スマートキーのROMに登録される「その他データ」とは、対象車両を識別番号である対象車両IDや、対象車両におけるキー番号などである。キー番号は、対象車両に紐付けられているスマートキーの登録番号に相当する。有線通信用の暗号鍵とは、キー管理装置4との暗号通信に使用されるコードである。
【0064】
キーID、鍵コード、有線通信用の暗号鍵は、スマートキーの製造時に工場にてROM873に登録されてよい。対象車両の識別番号やキー番号などといったその他データは、スマートECU2へのスマートキーの登録時に、スマートECU2から取得するデータに基づいて登録されて良い。ROM873には、キー側TPM83に割り当てられているTP-IDが登録されていても良い。コントローラ87は、キーの動作状態がスリープモードからアクティブモードに移行したことに基づいてROM873に保存されているキーデータをRAM872に展開する。
【0065】
コントローラ87は、LF受信部81からチャレンジコードが入力されたことに基づいて、RAM872に展開されている鍵コード等を用いてレスポンスコードを生成し、UHF送信部82に出力する。また、コントローラ87は、ユーザによって押下された操作ボタン84に応じたUHFコマンド信号を生成し、UHF送信部82との協働によりスマートECU2に向けて無線送信する。
【0066】
UHFコマンド信号は、車両を遠隔制御するためのUHF信号である。UHFコマンド信号には、アンロックコマンドとロックコマンドなどが含まれる。アンロックコマンドは、アンロックを指示するUHFコマンド信号である。ロックコマンドは、ロックを指示するUHFコマンド信号である。
【0067】
各種UHFコマンド信号は、対象車両以外の車両(つまり他車両)が反応しないように、車両とスマートキーとの対応関係を示すデータ、すなわちキーデータの一部又は全部を用いて生成される。例えばアンロックコマンドは、アンロックを指示する所定のコマンドコードを、鍵コードで暗号化したデータ信号であって良い。なお、本実施形態では、ローレベル(0)信号がオン信号として機能する。コントローラ87は開錠用入力端子の入力電圧がローレベルになったことに基づいて、アンロックコマンド信号を送信しうる。
【0068】
登録キー8aのコントローラ87は、キー管理装置4と有線接続されている場合、キー管理装置4からの要求に基づいて、自身のキーデータをキー管理装置4に送信する。なお、キー管理装置4がトランスポンダ通信機能を備える場合、キー管理装置4へのキーデータの送信は、トランスポンダ通信によって実施されても良い。登録キー8aは、キー管理装置4から供給される電力で動作するように構成されていてもよい。登録キー8aは、キー管理装置4から通信ケーブルC1を介して起動信号が入力されたことに基づいて、スリープモードからアクティブモードに移行してよい。
【0069】
<制御キーの構成>
制御キー8bは、
図4に示すように、部分的に登録キー8aと同様の構成及び機能を有する。ここでは、登録キー8aと制御キー8bの相違点、つまり制御キー8b特有の構成について説明する。本開示の制御キー8bは、登録キー8aとして使用可能なスマートキーの構成及びソフトウェアの一部を変更したものであってよい。登録キー8aが備えるコントローラ87との区別のため、制御キー8bのコントローラ87を以降ではコントローラ87bとも記載する。
【0070】
本実施形態の制御キー8bは、通信ケーブルC1を介してキー管理装置4と接続されて使用される。通信コネクタ86など、キー管理装置4との通信に係る制御キー8bが備える構成がキー側通信部に相当する。
【0071】
また本実施形態の制御キー8bは、電池200の代わりに、キー管理装置4から供給される電力で駆動するように構成されている。例えば制御キー8bは、電源ケーブルC2と接続される電源コネクタ88を備える。電源コネクタ88は、電池収容部のスペースに配置されてよい。制御キー8bの電源回路85は、電源コネクタ88及び電源ケーブルC2を介して供給される電力をもとに、各構成の動作電圧を生成するように構成されていてよい。電源コネクタ88は、制御キー8bの電池収容部に配置された電池型アダプタであってよい。電池型アダプタは、電源ケーブルC2の端子を電池200の形に変換する電気的構成である。ここでの電池型アダプタは、電池200と同一形状を有し、かつ、電池200のプラス極及びマイナス極のそれぞれに相当する導体部材を有する。電池型アダプタは、プラス極とマイナス極が短絡されていないダミー電池に相当する。
【0072】
なお、他の態様として、電源ケーブルC2の信号線は、はんだ等を用いて直接プラス端子851とマイナス端子852に直接接続されていてもよい。別の観点に依れば、制御キー8bは、電源回路85から筐体外部に伸びる電源ケーブルC2を備えるように構成されていても良い。制御キー8bの電源回路85、あるいは、電池収容部に配置された電池型アダプタと電源回路85とが組み合わさった構成は、キー管理装置4からの給電を受ける受電部に相当する。
【0073】
電源コネクタ88は、任意の要素であって省略されても良い。電源ケーブルC2は、電池200の形状を模した端部を有する、疑似電池ケーブルであってもよい。疑似電池ケーブルは、ケーブルと電池型アダプタとが一体化されたケーブルと解されて良い。電源ケーブルC2が疑似電池ケーブルである場合には、制御キー8b自体に電源コネクタ88を配置する必要はなくなる。電源ケーブルC2が疑似電池ケーブルである場合、制御キー8bにおける電源回路85付近の構成は、登録キー8aと同様であって良い。
【0074】
さらに、制御キー8bの電源回路85は、ワイヤレス受電回路であっても良い。制御キー8bが無線給電で駆動する構成によれば、収容部41の構成を簡素化できる。その他、電源コネクタ88と通信コネクタ86は統合されていても良い。例えば、制御キー8bは、USB Type-Cのコネクタなど、データ通信と電力供給の両方を実施可能なケーブルに適合するコネクタを備えていても良い。
【0075】
制御キー8bのROM873に登録されているキーID、及び鍵コードは、以下で説明するように、実際の無線認証には使用されない。そのため、制御キー8bのROM873に登録されているキーID、及び鍵コードは、任意の値(例えば0x00)などであってよい。その他データが格納される領域も、空白に相当する値が格納されていてよい。
【0076】
コントローラ87bは、通信ケーブルC1を介してキー管理装置4と接続されている場合、キー管理装置4から認証用データを受信し、当該認証用データをRAM872に保存する。ここでの認証用データとは、制御キー8bが登録キー8aとして機能するためのデータである。認証用データは、登録キー8aのキーデータの一部又は全部であってよい。本実施形態における認証用データは、登録キー8aのキーID、鍵コード、及びその他データを含む。認証用データがキー情報に相当する。
【0077】
コントローラ87bは、
図5に示す手順で作動するようにプログラムされている。すなわち、コントローラ87は、キー管理装置4からの給電が開始されたことに基づいて(S11)、アクティブモードに移行する(S12)。コントローラ87は、アクティブモードに復帰すると、起動処理として、いったんROM873に保存されている制御キー8bのキーデータを読み出してRAM872に保存する(S13)。コントローラ87bは、認証用データとしての登録キー8aのキーID、鍵コード、及びその他データをキー管理装置4から受信すると(S14)、RAM872の書き換えを行う(S15)。具体的には、コントローラ87bは、RAM872に読み出している自分自身のキーID、鍵コード、及びその他データを、キー管理装置4から受信したキーID、鍵コード、及びその他データに置き換える。その後、コントローラ87bは、LF受信部81を介してチャレンジコードを受信した場合には、RAM872に保存されている、登録キー8aの鍵コードを用いてレスポンスコードを生成し、UHF送信部82を用いて車両に返送する。
【0078】
また、制御キー8bは、通信ケーブルC1を介してキー管理装置4から所定のUHFコマンド信号の送信要求が入力された場合には、その要求されたUHFコマンド信号を送信する。なお、制御キー8bのROM873に登録されているキーデータを用いて生成されるUHFコマンド信号では車両は反応しない。制御キー8bは、RAM872に保存されている登録キー8aのキーID等(つまり認証用データ)を用いて車両向けのUHFコマンド信号を生成するように構成されている。
【0079】
このように制御キー8bは、キー管理装置4から受信する認証用データを用いて、擬似的に登録キー8aのように振る舞う。コントローラ87bは、受信したデータをROM873など不揮発性の記憶媒体には保存できないように構成されている。
【0080】
電源ケーブルC2を介して給電が開始された際の制御キー8bの初期状態はスリープモードであってよい。制御キー8bは、キー管理装置4と電源ケーブルC2及び通信ケーブルC1で接続されている状態において、キー管理装置4から起動信号が入力されたことに基づいてアクティブモードに移行してよい。もちろん、制御キー8bは、給電され始めたことに基づいて自動的にアクティブモードとなってもよい。制御キー8bは、電源ケーブルC2を介して給電されている間はアクティブモードを維持しても良い。その他の構成は、制御キー8bも登録キー8aと同様であってよい。
【0081】
<収容部の構成について>
収容部41は、キー管理装置4に設けられた引き出しであってよい。収容部41は、キー管理装置4の筐体に設けた凹部であってもよい。収容部41には、制御キー8bの盗難を防止するための物理的なロック機構を備える扉が設けられても良い。収容部41は、キー管理装置4から制御キー8bを取り出し可能に構成されていてよい。収容部41は、
図6に示すように、キー通信部411、給電部412、保持部413、及びプッシュアクチュエータ414を備える。
【0082】
キー通信部411は、スマートキーと通信するための構成である。キー登録時においては、キー通信部411は通信ケーブルC1を介して登録キー8aと接続される。また、キー登録完了後においては、キー通信部411は制御キー8bと接続される。キー通信部411は、制御部44から入力されたデータを、接続先に送信する。またキー通信部411は、接続先から受信したデータを制御部44に送信する。
【0083】
給電部412は、制御キー8bに電力を供給するための回路である。給電部412は、電源ケーブルC2を介して制御キー8bの電源回路85と接続されている。なお、制御キー8bがワイヤレス受電可能に構成されている場合には、給電部412は、ワイヤレス送電回路のように、無線給電するための構成であってよい。給電部412は、制御部44の指示に基づいて、制御キー8bへの給電を開始する。また、給電部412は、制御部44の指示に基づいて、制御キー8bへの給電を終了する。保持部413は、制御キー8bを収容部41に固定するための構成である。保持部413は、制御キー8bを囲むように配置された凸部/壁などであってよい。保持部413は、制御キー8bが着脱可能に構成されていて良い。
【0084】
プッシュアクチュエータ414は、制御キー8bの操作ボタン84を物理的に押すためのアクチュエータである。プッシュアクチュエータ414は、ソレノイドアクチュエータであってもよいし、モータであってもよい。プッシュアクチュエータ414は、制御キー8bが備える操作ボタン84に対応するように複数配置されていて良い。プッシュアクチュエータ414は、複数の操作ボタン84のそれぞれに対向するように配置されている。プッシュアクチュエータ414は、制御部44の指示に基づいて駆動し、操作ボタン84を押下する。プッシュアクチュエータ414は、キー管理装置4が制御キー8bにUHFコマンド信号を送信させるための構成の一例である。
【0085】
なお、プッシュアクチュエータ414は、任意の要素であって省略されても良い。コントローラ87bは、キー管理装置4から所定の信号が入力されたことに基づいて、入力信号に応じたUHFコマンド信号を送信するように構成されていても良い。また、制御キー8bの開錠用入力端子及び施錠用入力端子は、トランジスタ等のスイッチング素子を介してグランド線と接続されていてもよい。当該スイッチング素子のオンオフは制御部44によって直接的に又は間接的に制御されて良い。制御キー8bは、開錠用/施錠用の入力端子に連なるスイッチング素子のオンオフに連動してアンロックコマンド信号を送信しうる。
【0086】
<キーデータの登録プロセスについて>
ここでは
図7を用いて、登録キー8aのキーデータをキー管理装置4に登録する処理について説明する。前提としてキー管理装置4と登録キー8aは通信ケーブルC1を用いて有線接続されており、携帯デバイス9とキー管理装置4は近距離通信で無線接続している。また、キー管理装置4と携帯デバイス9とは事前にペアリング及びボンディングが実行されているものとする。以降の説明における携帯デバイス9との記載は、デジタルキーアプリ、又は、デジタルキーアプリを実行するプロセッサと読み替えられて良い。
【0087】
携帯デバイス9は、ユーザの画面操作に基づいて、キー登録画面を表示する(S01)。キー登録画面の表示は、所定画面が備える登録開始ボタンが選択されたことを、タッチパネルの信号に基づき携帯デバイス9が検出した場合に実行されてよい。キー登録画面は、登録処理中であることを示す画面であって良い。キー登録画面は、キー管理装置4と登録キー8aとの接続状態を維持する必要があることや、進行状況を示す画面であってもよい。
【0088】
携帯デバイス9は、キー登録画面の表示に伴って、近距離通信にて、キー管理装置4に向けてキー登録リクエストを送信する(S02)。キー登録リクエストは、キー管理装置4に対し、登録キー8aからキーデータを取得するように指示する信号であってよい。
【0089】
キー管理装置4は、キー登録リクエストを受信すると、登録キー8aに向けてデータリクエストを送信する(S03)。データリクエストは、キーデータの送信を要求する信号である。なお、登録キー8aがキー管理装置4から供給される電力で動作するように構成されている場合、キー登録リクエストを送信する前に、登録キー8aに電力を供給し、登録キー8aを起動させるステップがあってよい。
【0090】
登録キー8aは、キーリクエストを受信したことに基づいて、キーデータをキー管理装置4に返送する(S04)。なお、キーデータは、有線通信用の暗号鍵で暗号化された状態で送受信されてよい。登録用キーが備える有線通信用の暗号鍵は、キー管理装置4にも登録されていてよい。
【0091】
キー管理装置4は、キーデータを受信すると、受信したキーデータをストレージ47に保存する(S05)。その後、キー管理装置4は、携帯デバイス9に向けて登録完了通知を送信する(S06)。携帯デバイス9は、登録完了通知を受信したことに基づいて、登録完了画面を表示する(S07)。
【0092】
以上により、キー管理装置4へのキーデータの登録処理は完了となる。上記登録シーケンスは、ディーラショップなどでのスマートECU2へのスマートキーの登録作業と並列的に(同時に)実施されてよい。また、上記の登録シーケンスは、自宅等にてユーザによって実施されても良い。
【0093】
なお、キー管理装置4と登録キー8aとの通信方法は有線通信に限定されない。キー管理装置4がトランスポンダ通信機能を備える場合、キー管理装置4はトランスポンダ通信で登録キー8aからキーデータを受信するように構成されていても良い。
【0094】
<アンロック時の作動例>
ここでは、ユーザが車外から携帯デバイス9を用いて車両のアンロックを行う場合の各装置の作動について、
図8を用いて説明する。前提として、携帯デバイス9を携帯しているユーザは、車両から十分に離れており、携帯デバイス9とキー管理装置4とは通信接続していない。また、キー管理装置4には登録キー8aのキーデータが登録されており、且つ、制御キー8bが収容部41にセットされている。制御キー8bが収容部41にセットされている状態とは、制御キー8bに電源ケーブルC2及び通信ケーブルC1が接続されている状態である。
【0095】
携帯デバイス9を所持するユーザが車両に接近すると、キー管理装置4は携帯デバイス9との通信接続を確立する(S101)。具体的にはキー管理装置4は、スキャンによって携帯デバイス9から発せられたアドバタイズ信号を受信したことに基づき、携帯デバイス9と通信接続する。
【0096】
キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続したことに基づいて、制御キー8bの電源をオンに設定し、起動させる(S102)。なお、制御キー8bの電源をオンに設定することには、制御キー8bへの給電を開始することに加えて、制御キー8bに起動信号を送信することを含んでも良い。
【0097】
制御キー8bは、電源がオンになったことに基づいて、起動処理を実行する(S103)。起動処理は、ROM873に保存されている制御キー8b自身のキーデータをRAM872に展開することを含む。制御キー8bは、起動が完了すると、キー管理装置4に起動が完了したことを示す信号を出力しても良い。
【0098】
キー管理装置4は、ステップS102にて制御キー8bの電源をオンに設定したことに基づいて、制御キー8bに、認証用データとして、登録キー8aのキーデータの一部又は全部を送信する(S104)。認証用データの送信は、電源オンから所定時間後に実施されてよい。また、キー管理装置4は、制御キー8bから起動完了の通知信号を受信したことに基づいて認証用データを送信しても良い。
【0099】
制御キー8bは、認証用データがキー管理装置4から入力されると、当該入力された認証用データをRAM872に保存する(S105)。例えば、制御キー8bは、RAM872に保存されている自分自身の鍵コード等を、キー管理装置4から受信した認証用データで上書き保存する。制御キー8bは、RAM872への認証用データの保存が完了した場合に、その旨を示す信号である書換完了信号をキー管理装置4に出力しても良い。
【0100】
キー管理装置4は、ステップS104にて制御キー8bに認証用データを送信したこと又は書換完了信号を受信したことに基づいて、携帯デバイス9に準備完了通知を送信する(S106)。準備完了通知は、制御キー8bの有効化が完了したことを示す信号であってよい。制御キー8bの有効化とは、制御キー8bの電源をオンに設定し、且つ、認証用データを制御キー8bのRAM872に保存することを指す。準備完了通知は有効化通知と言い換えられてよい。なお、準備完了通知の送信(S106)は、任意の要素であって省略されても良い。
【0101】
携帯デバイス9は、準備完了通知を受信したことに基づいて、車両操作画面内の操作ボタンを有効化する(S107)。車両操作画面は、ソフトウェアキーとして、開錠のためのアンロックボタン、施錠のためのロックボタン、ヘッドライトの点灯状態を切り替えるためのヘッドライトボタン、ハザードランプの点灯状態を切り替えるためのハザードランプボタンなどを含みうる。デジタルキーアプリは、操作ボタンが無効である場合、操作ボタンをグレーアウトした状態で表示して良い。携帯デバイス9は、制御キー8bの状態(有効/無効)に連動して操作ボタンの表示態様を変更してよい。当該構成によれば、ユーザは、システムの作動状態を認識しやすくなる。なお、携帯デバイス9の操作ボタンの表示態様を制御キー8bの状態に連動させて変更することは変更は任意の要素であって省略されて良い。
【0102】
携帯デバイス9は、画面内のアンロックボタンがユーザによって押されたことを検出すると、アンロックリクエストをキー管理装置4に送信する(S108)。アンロックリクエストは、アンロックのための制御の実行をキー管理装置4に要求する近距離通信信号である。
【0103】
キー管理装置4は、アンロックリクエストを受信すると、アンロックのための制御を実行する(S109)。例えばキー管理装置4は、アンロックリクエストを受信したことに基づいて、制御キー8bにアンロックコマンドの送信要求を出力する。アンロックコマンドの送信要求とは、アンロックコマンドを送信するように指示する信号である。アンロックコマンドの送信要求は、電気的に/機械的に、コントローラ87bの開錠用入力端子にオン信号を入力するための信号であって良い。例えばアンロックコマンドの送信要求は、開錠用端子に連なるスイッチング素子をオンに設定するための信号であって良い。
【0104】
なお、キー管理装置4は、携帯デバイス9からアンロックリクエストを受信した場合、制御キー8bの開錠ボタンに対応するプッシュアクチュエータ414を動作させることによって物理的に制御キー8bの開錠ボタンを押下してもよい。このような作動によっても、キー管理装置4は、制御キー8bにアンロックコマンドを送信させることができる。つまり、アンロックのための制御は、開錠ボタンに対応するプッシュアクチュエータ414を動作させることであってもよい。
【0105】
制御キー8bは、キー管理装置4からアンロックコマンドの送信要求が入力されたことに基づいて、アンロックコマンドを送信する(S110)。制御キー8bは、RAM872に保存されているキーデータ、換言すれば登録キー8aのキーデータの一部又は全部を用いて、アンロックコマンドを生成し、無線送信する。スマートECU2は、アンロックコマンドを受信すると、ボディECU3と協働して車両を開錠する(S111)。
【0106】
上記では一例として、キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続した場合に制御キー8bを有効化する。しかしながら、制御キー8bを有効化する条件はこれに限定されない。キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続しており且つ、測距通信にて特定される測距値が所定値未満であることを条件に、制御キー8bを有効化するように構成されていても良い。
【0107】
図9は上記の技術思想に対応するキー管理装置4の作動の一例を示すフローチャートである。キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続すると(S21)、携帯デバイス9との測距通信を定期的に実行する(S22)。そして、測距通信の結果として得られる測距値が所定の有効化閾値未満である場合に(S23 YES)、制御キー8bを有効化する(S24)。
図9のステップS13に示す「D」は測距値を表し、「Th0」は有効化閾値を示している。有効化閾値は5m、8m、10mに相当する値に設定されていてよい。
【0108】
上記構成によれば、測距値が閾値以上である場合には、制御キー8bの電源をオンにしない。よって、ユーザが車両から離れている状況において制御キー8bを有効化する恐れを低減できる。また、制御キー8bを有効化するシーンが限定されるため、消費電力を低減する効果や、セキュリティを高める効果が期待できる。制御キー8bの電源をオンにするための状態である第1状態は、携帯デバイス9と通信接続している状態であってもよいし、携帯デバイス9と通信接続しており且つ、測距値が所定値未満である状態であってもよい。
【0109】
その他、キー管理装置4は、携帯デバイス9と通信接続しており且つ、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値以上であることを条件に、制御キー8bを有効化するように構成されていても良い。キー管理装置4は、携帯デバイス9の信号の受信強度が所定値未満である場合には、制御キー8bを有効化しないように構成されていても良い。第1状態は、携帯デバイス9と通信接続しており且つ、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値以上である状態であってもよい。
【0110】
制御キー8bを有効化する条件は、携帯デバイス9が車両周辺に存在すると判定する条件と言い換えられても良い。キー管理装置4は、携帯デバイス9との通信接続の状況、測距値、及び受信強度の少なくとも何れか1つを用いて、携帯デバイス9が車両周辺に存在すると判定して良い。キー管理装置4は、携帯デバイス9が車両周辺に存在すると判定したことに基づいて、制御キー8bを有効化するよう構成されていてよい。
【0111】
<アンロックにかかる他の作動例>
キー管理装置4にドアスイッチ7が接続されている場合、キー管理装置4は、ドアスイッチ7からオン信号が入力されたことに基づいてアンロックのための制御を実行するように構成されていても良い。
図10は、ドアスイッチ7に対するユーザ操作に反応して車両をアンロックする際の各装置の作動を示すシーケンス図である。
【0112】
図10に示すステップS101~S105は、
図8に示すステップS101~S105と同様である。ステップS101~S105は、キー管理装置4が制御キー8bを有効化するシーケンス(以降、有効化シーケンス)に相当する。キー管理装置4は、制御キー8bが有効化されている状態において、ドアスイッチ7からオン信号が入力されると(S120)、アンロックコマンドの送信要求を制御キー8bに出力する(S121)。制御キー8bは、アンロックコマンドの送信要求が入力されたことに基づいて、アンロックコマンドを無線送信する(S122)。スマートECU2は、アンロックコマンドを受信したことに基づいて、ボディECU3と協働して車両を開錠する(S123)。
【0113】
上記の構成によればユーザは携帯デバイス9を操作することなく、車両の開錠を実施可能となる。なお、キー管理装置4は、車両の状態に応じてドアスイッチ7からのオン信号に対して異なる制御を実行して良い。例えばキー管理装置4は、車両が施錠されている場合にはドアスイッチ7からのオン信号をもとにアンロックのための制御を行う一方、車両が開錠されている場合にはドアスイッチ7からのオン信号をもとにロックのための制御を実施してよい。
【0114】
ロックのための制御とは、制御キー8bにロックコマンドの送信要求を出力することであってよい。また、ロックのための制御は、制御キー8bの施錠用ボタンに対応するプッシュアクチュエータ414を動作させることによって、施錠ボタンを物理的に押すことであってもよい。なお、ドアハンドルには開錠用のドアスイッチ7と、施錠用のドアスイッチ7が別々に設けられていても良い。
【0115】
以上では、キー管理装置4は、制御キー8bが有効化されている状態において、ドアスイッチ7からオン信号が入力された場合にアンロック/ロックのための制御を実行するパターンについて述べた。一方、アンロック/ロックのための制御の実行条件は上記の条件に限定されない。
【0116】
キー管理装置4は、測距通信にて特定される測距値が所定値未満であることを条件に、アンロックのための制御を実行するように構成されていても良い。換言すれば、キー管理装置4は、ドアスイッチ7からオン信号が入力されても、測距値が所定値以上である場合には、アンロックのための制御を実行しないように構成されていても良い。ロックのための制御の実行条件についても同様である。つまり、キー管理装置4は、測距値が特定の範囲に収まっていることが、車両の使用にかかる所定の制御を実行するための必要条件に設定されていても良い。
【0117】
図11は上記の技術思想に対応するキー管理装置4の作動の一例を示すフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、制御キー8bが有効である場合に実施されて良い。キー管理装置4は、制御キー8bが有効である状況において、ドアスイッチ7からオン信号が入力されると(S31 YES)、携帯デバイス9と測距通信を実行する(S32)。なお、ステップS32は、直前に実行された測距通信の結果を読み出すステップであってもよい。キー管理装置4は、ステップS32の結果として取得した測距値が所定の開錠閾値未満である場合には(S33)、アンロックのための制御を実行する(S34)。
図11のステップS33に示す「D」は測距値を表し、「Th1」は開錠閾値を示している。開錠閾値は2mや4m、6mに相当する値に設定されてよい。開錠閾値は、セキュリティを高めるために、有効化閾値よりも小さい値に設定されていてよい。また他の態様として開錠閾値は有効化閾値と同じ値に設定されていても良い。
【0118】
上記構成によれば、測距値が所定値以上である場合には、制御キー8bが有効な状況でドアスイッチ7が押下されても、制御キー8bはアンロックのための制御を実行しない。よって、携帯デバイス9(ユーザ)が車両付近に存在しない状況において、キー管理装置4が車両を開錠してしまう恐れを低減できる。
【0119】
その他、キー管理装置4は、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値以上であることを条件に、制御キー8bをアンロックのための制御を実施するように構成されていても良い。キー管理装置4は、携帯デバイス9の信号の受信強度が所定値未満である場合には、ドアスイッチ7からオン信号が入力されても、アンロックのための制御を実行しないように構成されていても良い。ロックのための制御の実行条件もまた、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値以上であることを含んでいてよい。
【0120】
なお、ロックのための制御の実行条件は、防犯性の観点から、アンロックのための制御の実行条件よりも緩和されていてよい。アンロックのための制御の実行条件は測距値が所定値未満あるいは受信強度が所定値以上であることを含む一方、ロックのための制御の実行条件は測距値又は受信強度が所定範囲に収まっていることを含んでいなくとも良い。
【0121】
<車両電源オン時の作動例>
ここでは、ユーザが携帯デバイス9をもって車両に乗車し、車両電源をオンにするシーンにおける各装置の作動について説明する。
図12は、スタートスイッチ6に対するユーザ操作に反応して車両電源をオンに設定するための各装置の作動を示すシーケンス図である。前提として、携帯デバイス9とキー管理装置4は通信接続済みであって且つ有効化シーケンス(S101~S105)は実行されている。
【0122】
スマートECU2は、スタートスイッチ6からオン信号が入力されると(S130)、LF送信部21からチャレンジコードを送信させる(S131)。スタートスイッチ6の押下をトリガにチャレンジコードを送信するLFアンテナは車内に配置されたLFアンテナであってよい。制御キー8bは車内に配置されていることから当該チャレンジコードを受信可能である。
【0123】
制御キー8bは、チャレンジコードを受信すると、RAM872に保存されている鍵コードを用いてレスポンスコードを生成し、スマートECU2に返送する(S131)。制御キー8bのRAM872に保存されている鍵コードとは、これまでの説明の通り、登録キー8aの鍵コードである。このように制御キー8bは、キー管理装置4から受信した認証用データを用いて登録キー8aの代わりに、スマートECU2との認証のための無線通信を実施する。
【0124】
スマートECU2は、レスポンスコードを受信すると、コード照合を実行する(S133)。コード照合は、受信したレスポンスコードとスマートECU2自身が生成した検証コードとを照合する処理である。スマートECU2はコード照合の結果、受信したレスポンスコードとスマートECU2自身が生成した検証コードとが一致することに基づいて車両電源をオンに設定する(S134)。なお、車両電源状態の切り替えは、車両電源を制御するECUである電源ECUとの協働により実施されて良い。電源ECUはエンジンECUであってもよい。
【0125】
<施錠時の作動例>
ここでは、ユーザが携帯デバイス9のソフトウェアキーを操作することにより車両のロックを行う場合の各装置の作動について、
図13を用いて説明する。携帯デバイス9とキー管理装置4は通信接続済みであって且つ有効化シーケンス(S101~S105)は実行されている。
【0126】
携帯デバイス9は、タッチパネルからの信号に基づき、画面に表示されているロックボタンが押下されたことを検出すると、ロックリクエストをキー管理装置4に送信する(S201)。ロックリクエストは、ロックのための制御の実行をキー管理装置4に要求する近距離通信信号である。
【0127】
キー管理装置4は、ロックリクエストを受信すると、ロックのための制御を実行する(S202)。例えばキー管理装置4は、ロックリクエストを受信したことに基づいて、制御キー8bにロックコマンドの送信要求を出力する。ロックコマンドの送信要求とは、ロックコマンドを送信するように指示する信号である。ロックコマンドの送信要求は、コントローラ87bの施錠用入力端子にロー(0)を入力するための信号であって良い。ロックコマンドの送信要求は、施錠用入力端子に連なるスイッチング素子をオンに設定する制御信号であって良い。
【0128】
制御キー8bは、キー管理装置4からロックコマンドの送信要求を受信したことに基づいて、ロックコマンドを送信する(S203)。スマートECU2は、アンロックコマンドを受信すると、ボディECU3と協働して車両を開錠する(S204)。
【0129】
なお、キー管理装置4は、携帯デバイス9からのロックリクエストの受信をトリガにロックのための制御を実行した場合には、その後、次に説明する制御キー8bの無効化に係る処理を実施して良い。車両が施錠された後は、車両は駐車された状態が所定時間(例えば5分)以上継続する可能性が高い。ロックリクエストを受信した場合には速やかに制御キー8bを無効化することにより、登録キー8aのキーデータが流出する恐れをより一層低減できる。
【0130】
<通信切断時の作動について>
携帯デバイス9へのユーザ操作、又は、ユーザ(携帯デバイス9)が車両から離れたことに基づいて、携帯デバイス9とキー管理装置4との通信接続は切断される。
図14は通信切断時のキー管理装置4及び制御キー8bの作動を表すシーケンス図である。キー管理装置4は、携帯デバイス9との通信接続が切れた場合、制御キー8bの電源をオフにする(S301)。具体的には、制御キー8bの電源オフは、制御キー8bへの給電を遮断することによって実現されてよい。制御キー8bにおいては、給電が遮断されることにより、RAM872に保存されていたデータが自動的に消去される(S302)。つまり、制御キー8bから登録キー8aのキーデータは消去される。このように本実施形態の制御キー8bは、キー管理装置4から電力供給されなくなること(換言すれば電源オフ)により、無効化される。
【0131】
以上では、携帯デバイス9との通信接続が切れたことに基づいて制御キー8bの電源をオフにするパターンについて述べたが、キー管理装置4が制御キー8bを無効化するイベント(以降、無効化イベント)はこれに限定されない。無効化イベントは無効化条件と言い換えられて良い。
【0132】
キー管理装置4は、車両が施錠されたことに基づいて制御キー8bの電源をオフにしてよい。また、キー管理装置4は、制御キー8bの電源をオンに設定してから一定時間経過した場合に、制御キー8bの電源をオフにしてもよい。キー管理装置4は測距値が所定値(例えば10m)以上となった場合に、制御キー8bの電源をオフにしてもよい。キー管理装置4は、全乗員の降車を検知してから所定時間経過した場合に制御キー8bの電源をオフにしてもよい。全乗員の降車は、重量センサ及び(又は)座席センサの出力に基づいて検出されて良い。
【0133】
キー管理装置4は、携帯デバイス9から制御キー8bを無効化する指示信号を近距離通信で受信した場合に、制御キー8bの電源をオフにしてもよい。制御キー8bを無効化する指示信号は、制御キー8bの停止を指示する信号と解されて良い。無効化イベントは、1つの局面において、ユーザによる車両の使用が終了したことを示すイベントと解されて良い。上記のようにキー管理装置4は、ユーザによる車両の使用が終了したことを示すイベントを検知したことに基づいて制御キー8bの電源をオフにして良い。制御キー8bの電源をオフにするための状態である第2状態は、携帯デバイス9と通信接続が切れた状態であってもよいし、測距値が所定値以上である状態であってもよい。また、第2状態は、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値未満である状態であってもよい。
【0134】
なお、制御キー8bの電源をオフにする制御は、制御キー8bのRAM872への通電が遮断され、RAM872内のデータが消えるものであればよい。仮に制御キー8bがメモリクリア型のスマートキーである場合、制御キー8bの電源をオフにする制御は、制御キー8bをスリープモード又は節電モードに移行させることであってもよい。本開示におけるメモリクリア型のスマートキーとは、スリープモード時/節電モード時に、RAM872への通電を遮断するか、又は、RAM872におけるキーデータの保存領域をクリアするように構成されたスマートキーである。スマートキーの節電モードは、LF電波の受信待機を停止するモードである。
【0135】
制御キー8bは、キー管理装置4からの所定の信号(以降、クリア信号)が入力されたことに基づいてRAM872をクリアするように構成されていても良い。RAM872をクリアすることは、RAM872に保存されている認証用データを削除することに相当する。クリアは解放などと言い換えられて良い。制御キー8bのRAM872がクリアされた状態もまた、制御キー8bが無効化された状態に含まれてよい。制御キー8bが登録キー8aとして振る舞うことができない状態が、制御キー8bが無効化された状態と解されて良い。コントローラ87bは、上記の無効化イベントが発生したことに基づいてRAM872をクリアするように構成されていても良い。
【0136】
<効果>
上記構成において制御キー8bのROM873そのものには、ユーザによる車両の使用を可能とするキーデータ(つまり認証用データ)は登録されていない。換言すれば、制御キー8bは、認証成功となるキーデータが記録されている不揮発性メモリは備えない。キー管理装置4は、携帯デバイス9が車両周辺に存在することを検出したことに基づいて、制御キー8bの電源をオンにするとともに制御キー8bのRAM872に認証用データを書き込むことにより、一時的に制御キー8bを登録キー8aのように作動させる。
【0137】
当該構成によれば、スマートキーにしか対応していない既存の車両にも擬似的にデジタルキーシステムを導入可能となるといった利点を有する。なお、本開示でのデジタルキーシステムとは、スマートフォン等の汎用的な情報処理端末を車両の鍵として機能させるシステムを指す。
【0138】
また、キー管理装置4は、携帯デバイス9との通信接続が切断したことなど、ユーザによる車両の使用が終了したことを示すイベントを検知したことに基づいて制御キー8bの電源をオフにする。制御キー8bにおいて、有効な認証用データはRAM872にのみ保持されるため、制御キー8bの電源がオフになると、制御キー8bから登録キー8aのキーデータは自動的に消去される。よって、仮に第三者が車両に保管されている制御キー8bを盗んだとしても、登録キー8aの鍵コード等が漏洩する恐れはない。
【0139】
また、制御キー8bが一時的に有効化されている場合であっても、キー管理装置4から制御キー8bが取り外された瞬間に、制御キー8bの電源がオフとなり、RAM872のデータは消失する。つまり、有効な制御キー8bは、キー管理装置4から取り外された時点で自動的に無効なスマートキーへと切り替わる。本実施形態の制御キー8bは、有効なまま、車外に持ち出されることはない。このように本実施形態の構成によれば車両が不正に使用される恐れを低減できる。
【0140】
上記の実施形態では、制御キー8bのTP-IDは、スマートECU2には登録されていない。また、制御キー8bのキー側TPM83及びROM873には、登録キー8aのTP-IDは保存されていない。つまり制御キー8bは、第2通信方式による認証を成功させるためのデータが登録されていないスマートキーである。よって、第三者が制御キー8bを車側TPM61にかざしたとしても、トランスポンダ通信による認証は成功しない。よって、制御キー8bと車両とのトランスポンダ通信によって車両が不正に使用されることを回避できる。
【0141】
さらに、上記実施形態によれば、携帯デバイス9を所持したユーザが車両に接近することにより自動的に制御キー8bが有効となる。そのため、ユーザの利便性が高い。つまり、ユーザの利便性を高めつつ、セキュリティ性も高めることができる。
【0142】
なお、本実施形態の制御キー8bのソフトウェアは、一般的なスマートキーのソフトウェアを、RAM872に保存されている鍵コード等をキー管理装置4から入力された鍵コード等に置き換えるように変更したものであってよい。制御キー8bと一般的なスマートキーとの変更点は小さいため、一般的なスマートキーのROMの空き容量が少ない場合であっても、一般的なスマートキーを制御キー8bとして機能するよう変更可能である。また、ソフトウェアからの変更点が少ないということは、バグの発生率及び開発費を抑制できるといった利点を有する。
【0143】
上記のキー管理装置4と制御キー8bが別々の装置として開発及び製造されてよい。スマートキーは車両メーカ毎、車種毎にハードウェアやソフトが異なることがある。しかしながら、キー管理装置4から入力されるキーデータをRAM872に保存して、認証処理に使用するようにさえ構成されていれば、多様なスマートキーを本開示の制御キー8bとして利用可能である。キー管理装置4が、制御キー8bとは別の装置として設けられていることにより、車両メーカごと、車種ごとにキー管理装置4を修正する必要がなくなるといった効果が期待できる。
【0144】
<制御キーの構成の補足>
制御キー8bは、LF信号の受信状態を示す信号をキー管理装置4に出力するように構成されていて良い。キー管理装置4は、制御キー8bから入力されるLF信号の受信状態を示す信号に基づいて、制御キー8bが待機状態であるか否かを判定しても良い。キー管理装置4は、制御キー8bが待機状態であると判定した場合には、制御キー8bの電源をオフにして良い。
【0145】
制御キー8bは、必ずしも電源ケーブルC2でキー管理装置4と接続されている必要はない。制御キー8bは、内蔵電池で駆動可能に構成されていてもよい。その場合には、制御キー8bは、キー管理装置4から入力される信号によって電源のオン/オフが切り替えられるとともに、キー管理装置4との有線通信が切断したことに基づいてRAM872をクリアするように構成されていてよい。例えばキー管理装置4は、通信ケーブルC1が通信コネクタ86から取り外されたことに基づいてRAM872をクリアするように構成されていて良い。
【0146】
制御キー8bは、キー側TPM83を備えていなくとも良い。つまり、制御キー8bは、第2通信方式による通信が物理的に実施不能に構成されていてもよい。なお、他の実施形態として制御キー8bは、NFCでキー管理装置4と通信するように構成されていても良い。例えば制御キー8bはNFCにて認証用データや各種指示信号を送受信してもよい。
【0147】
<制御部の動作モードについて>
制御部44は、車両電源がオフの間は節電モードに移行するように構成されていても良い。制御部44の節電モードは、例えば制御部44への電力供給が完全に遮断された、いわゆる電源オフの状態であってもよい。制御部44の節電モードは、フラッシュメモリなどの書き込み可能な不揮発性メモリにプログラムの実行状態を保存した状態でプロセッサ45やメモリ46への電力供給を止めた状態であってもよい。節電モードに対して、プロセッサ45が機能している状態を通常モードとも称する。
【0148】
車両電源がオフの間、制御部44が節電モードとなる構成においては、近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と通信接続したことに基づいて制御部44を通常モードに移行させるように構成されていてよい。近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と通信接続しており、且つ、測距値が所定値未満となった場合に制御部44を通常モードに移行させてもよい。近距離通信モジュール42は、携帯デバイス9と通信接続しており、且つ、携帯デバイス9からの信号の受信強度が所定値以上となった場合に制御部44を通常モードに移行させてもよい。
【0149】
<システム構成について>
キー管理装置4は、筐体内に配置された近距離通信モジュール42に加えて、筐体外に配置された、他の近距離通信モジュール42と接続されていても良い。制御部44は、複数の近距離通信モジュール42のそれぞれで生成される測距値をもとに車両に対する携帯デバイス9の位置を判定してもよい。制御部44は、車両を基準とする所定の作動エリア内に携帯デバイス9が存在すると判定したことを条件に、制御キー8bを有効化するように構成されていて良い。制御部44は、携帯デバイス9が作動エリア内に携帯デバイス9が存在しないと判定したことを条件に、制御キー8bを無効化するように構成されていて良い。作動エリアは、車外において携帯デバイス9がドアハンドルから所定距離以内となる範囲を含んでよい。作動エリアは、車内を含んで良い。
【0150】
その他、キー管理装置4は、所定のサーバとセルラー通信可能に構成されていても良い。ここでのセルラー通信は、LTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなどに準拠した無線通信であってよい。キー管理装置4がカーシェアリングサービス用の車両で使用される場合、キー管理装置4は、当該カーシェアリングサービスを提供するためのサーバとセルラー通信可能に構成されていて良い。サーバは、携帯デバイス9からの要求(例えば利用予約)に基づいてデバイス鍵コードを生成し、携帯デバイス9とキー管理装置4のそれぞれに配信する。デバイス鍵コードは、ワンタイムパスコードであってよい。このような構成によれば、サービス利用者は、自分の携帯デバイス9を擬似的に車両のスマートキー/デジタルキーとして機能させる事ができ、利便性が向上しうる。
【0151】
以上ではキー管理装置4と携帯デバイス9との通信において、キー管理装置4がセントラルとして機能する構成について述べたが、各通信装置の役割は入れ替わってもよい。携帯デバイス9がセントラルとして機能するように役割設定がなされていても良い。
【0152】
<無線モジュールの通信方式の補足>
キー管理装置4と携帯デバイス9との通信方式(つまり第1通信方式)は、Bluetooth LE(Low Energy)に限定されず、Bluetooth Classicであってもよい。Bluetooth通信は、Bluetooth LEに準拠した無線通信であってもよいし、Bluetooth Classicに準拠した無線通信であってもよい。また、将来的に創出されうる新たなBluetooth規格に準拠した無線通信もまた、Bluetooth通信に含まれてよい。さらに、第1の通信方式は、Wi-Fiや、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)、EnOcean(登録商標)、Zigbee(登録商標)などであってもよい。
【0153】
第2通信方式は、NFCであってよい。本開示におけるNFCは、通信可能距離が最大でも0.3mとなる通信であってよい。NFCは、実質的な通信距離が0.1m以下の通信であってよい。第2通信方式としてのNFCは、例えばISO/IEC 18092(NFCIP-1)又はISO/IEC 21481(NFCIP-2)に準拠する方式であってよい。NFCは、Type-A、Type-B、Type-Fであってもよい。また、NFCには、トランスポンダを用いた通信、すなわちスマートキーとスマートECU2とのトランスポンダ通信も含まれる。
【0154】
<付言(1)>
本開示には以下の技術的思想も含まれる。さらに、以下に開示の種々の技術的思想に対応するキー管理装置、プログラム、スマートキーもまた、本開示の範囲に含まれる。
【0155】
[技術的思想1]
車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されてあって、前記車両の車内に保管されるスマートキー(8b)と、
前記スマートキーと通信可能であって、且つ、前記スマートキーの電源状態を制御可能に構成されているキー管理装置(4)と、を備え、
前記キー管理装置は、
携帯デバイスと無線通信するための無線通信モジュール(42)と、
前記認証のために使用されるキー情報が保存されている不揮発性の記憶媒体であるストレージ(47)と、
前記スマートキーの動作を制御する制御部(44)と、を備え、
前記制御部は、
前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在することに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、
前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて前記ストレージに保存されている前記キー情報を前記スマートキーに送信し、
前記スマートキーは、
前記認証のための通信に係る処理を行うキー側制御部(87b)と、
揮発性メモリ(872)と、
不揮発性メモリ(873)と、を備え、
前記スマートキーの前記不揮発性メモリには、前記ストレージに保存されている前記キー情報は登録されておらず、
前記キー側制御部は、
前記キー管理装置から前記キー情報を受信すると受信した前記キー情報を前記揮発性メモリに保存し、
前記揮発性メモリに保存されている前記キー情報を用いて前記認証のための通信を実施するように構成されているキー制御システム。
【0156】
なお、制御部は、携帯デバイスと通信接続した場合に、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在すると判断してよい。また、制御部は、携帯デバイスと通信接続しており、かつ、携帯デバイスとの通信によって定まる測距値が所定値未満である場合に、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在すると判断してよい。さらに制御部は、携帯デバイスと通信接続しており、かつ、携帯デバイスからの信号の受信強度が所定値以上である場合に、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在するとみなしてよい。
【0157】
[技術的思想2]
前記キー管理装置は、
前記携帯デバイスから受信する無線信号に関連するデータに基づいて前記携帯デバイスが前記車両から前記所定距離以内に存在するか否かを判定することと、
前記携帯デバイスが前記所定距離以内に存在すると判定したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、前記スマートキーに向けて前記キー情報を送信することと、を実行するように構成されている、技術的思想1に記載のキー制御システム。
【0158】
[技術的思想3]
前記無線信号に関連する前記データは、前記携帯デバイスから受信する前記無線信号の信号強度、位相差、及び飛行時間との少なくとも1つに関連するデータである、技術的思想2に記載のキー制御システム。
【0159】
[技術的思想4]
前記キー管理装置は、
前記携帯デバイスから受信する無線信号に関連するデータに基づいて前記携帯デバイスが所定距離以内に存在するか否かを判定し、
前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在し、且つ、前記携帯デバイスとの通信接続が確立したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオンに設定し、前記キー情報を前記スマートキーに送信する、技術的思想1から3の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0160】
[技術的思想5]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスとの通信接続が切断したことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている技術的思想1から4の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0161】
なお、上記技術的思想5には、キー管理装置が、携帯デバイスとの通信接続が切断したことに基づいてスマートキーの電源をオフに設定するキー制御システムが含まれる。また、上記技術的思想5には、キー管理装置が、携帯デバイスとの通信接続が切断したことに基づいてスマートキーの電源をオンにしたままスマートキーの揮発性メモリをクリアするキー制御システムも含まれる。
【0162】
[技術的思想6]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスから前記スマートキーを停止させる指示を受信したことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている技術的思想1から5の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0163】
なお上記技術的思想6には、キー管理装置が、携帯デバイスからスマートキーを停止させる指示を受信したことに基づいてスマートキーの電源をオフに設定するキー制御システムが含まれる。また、上記技術的思想6には、キー管理装置が、携帯デバイスからスマートキーを停止させる指示を受信したことに基づいてスマートキーの電源をオンにしたままスマートキーの揮発性メモリをクリアするキー制御システムも含まれる。
【0164】
[技術的思想7]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスと前記車両との距離が所定値以上となったことに基づいて、前記揮発性メモリから前記キー情報を消去するように構成されている技術的思想1から6の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0165】
なお、上記技術的思想7には、キー管理装置が、携帯デバイスと車両との距離が所定値以上となったことに基づいてスマートキーの電源をオフに設定するキー制御システムが含まれる。また、上記技術的思想7には、キー管理装置が、携帯デバイスと車両との距離が所定値以上となったことに基づいてスマートキーの電源をオンにしたままスマートキーの揮発性メモリをクリアするキー制御システムも含まれる。
【0166】
[技術的思想8]
前記キー管理装置と前記スマートキーは通信ケーブルで接続されてあって、
前記制御部は、有線通信にて前記キー情報を前記スマートキーに送信する技術的思想1から7の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0167】
[技術的思想9]
前記認証装置は、通信距離が0.5m以上である第1通信方式と、通信距離が前記第1通信方式よりも短い第2通信方式のそれぞれで、前記認証装置と前記認証のための無線通信を実施可能に構成されており、
前記第1通信方式による前記認証のための無線通信では前記キー情報が用いられる一方、
前記第2通信方式による前記認証のための無線通信では、前記キー情報とは異なる情報を用いられ、
前記スマートキーは、前記第2通信方式による通信は実施不能に構成されているか、又は、前記第2通信方式による前記認証を成功させるためのデータが登録されていないデバイスである、技術的思想1から8の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0168】
[技術的思想10]
前記第2通信方式の無線通信は、NFC(Near Field Communication)である、技術的思想9に記載のキー制御システム。
【0169】
[技術的思想11]
前記携帯デバイスと前記キー管理装置の無線通信は、Bluetooth(登録商標)通信である技術的思想1から10の何れか1つに記載のキー制御システム。
[技術的思想12]
前記車両に保管される前記スマートキーである制御キーに加えて、
前記制御スマートキーとは異なるスマートキーであって、前記キー情報が登録されている不揮発性メモリを備えるスマートキーである登録キー(8a)を備え、
前記キー管理装置は、
前記登録キーと通信接続している状態において、前記携帯デバイスから登録リクエストを受信したことに基づいて、前記登録キーから前記キー情報を取得し、
前記登録キーから取得した前記キー情報を前記ストレージに保存し、
前記キー情報の取得が成功したことを前記携帯デバイスに表示させるように構成されている、技術的思想1から11の何れか1つに記載のキー制御システム。
【0170】
[技術的思想13]
携帯デバイスと無線通信可能に構成されているキー管理装置(4)と、車両に搭載されている認証装置と認証のための無線通信を実施可能に構成されているスマートキー(8b)と、によって実行されるキー制御方法であって、
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在することに基づいて前記スマートキーの電源をオンに設定するステップと、
前記キー管理装置が、前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて、前記認証に必要なキー情報を前記スマートキーに送信するステップと、
前記スマートキーが、前記キー管理装置から前記キー情報を受信するステップと、
前記スマートキーが、受信した前記キー情報を揮発性メモリに保存するステップと、
前記スマートキーが、前記揮発性メモリに保存されている前記キー情報を用いて前記認証のための無線通信を実施するステップと、
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスが車両から前記所定距離以内に存在しないことに基づいて前記スマートキーの電源をオフに設定するステップと、を含むキー制御方法。
【0171】
なお、制御部は、携帯デバイスとの通信接続が切断した場合に携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在しなくなったと判断してよい。また、制御部は、携帯デバイスとの通信によって定まる測距値が所定値以上である場合に、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在しないと判断してよい。さらに制御部は、携帯デバイスからの信号の受信強度が所定値未満である状況が所定時間継続した場合に、携帯デバイスが車両から所定距離以内に存在しなくなったと判断してよい。
【0172】
[技術的思想14]
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスから受信する無線信号に関連するデータに基づいて前記携帯デバイスが所定距離以内に存在するか否かを判定するステップと、
前記キー管理装置が、前記携帯デバイスが所定距離以内に存在すると判定したことに基づいて、前記スマートキーを起動し、前記スマートキーに向けて前記キー情報を送信するステップと、を含む技術的思想13に記載のキー制御方法。
【0173】
[技術的思想15]
前記携帯デバイスが所定距離以内に存在するか否かを判定するステップは、前記携帯デバイスから受信する前記無線信号の信号強度、位相差、及び飛行時間との少なくとも1つに関連するデータを用いて前記携帯デバイスが所定距離以内に存在するか否かを判定するステップである、技術的思想14に記載のキー制御方法。
【0174】
[技術的思想16]
前記スマートキーの電源をオンに設定するステップは、前記携帯デバイスが前記車両から所定距離以内に存在し、且つ、前記携帯デバイスとの通信接続が確立した場合に実行される技術的思想13から15の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0175】
[技術的思想17]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスとの通信接続が切断したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオフに設定するか、前記揮発性メモリをクリアするための信号を出力するステップを含む、技術的思想13から16の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0176】
[技術的思想18]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスから前記スマートキーを停止させる指示を受信したことに基づいて、前記スマートキーの電源をオフに設定するか、前記揮発性メモリをクリアするための信号を出力するステップを含む、技術的思想13から17の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0177】
[技術的思想19]
前記キー管理装置は、前記携帯デバイスと前記車両との距離が所定値以上となったことに基づいて、前記スマートキーの電源をオフに設定するか、前記揮発性メモリをクリアするための信号を出力するステップを含む、技術的思想13から18の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0178】
[技術的思想20]
前記キー管理装置が前記キー情報を前記スマートキーに送信するステップは、有線通信にて前記キー管理装置が前記キー情報を前記スマートキーに送信するステップである、技術的思想13から19の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0179】
[技術的思想21]
前記キー管理装置と前記携帯デバイスとの無線通信は、Bluetooth(登録商標)通信である、技術的思想13から20の何れか1つに記載のキー制御方法。
【0180】
[技術的思想22]
スマートキーと有線通信であって且つ携帯デバイスと無線通信可能なキー管理装置が備えるプロセッサに、
携帯デバイスと無線通信を実施するための無線通信モジュールから前記携帯デバイスとの通信状態を示すデータを取得させることと、
前記携帯デバイスとの通信状態が第1状態になったことに基づいて、前記キー管理装置と通信接続されている前記スマートキーの電源をオンに設定させることと、
前記スマートキーの電源をオンにしたことに基づいて、所定のストレージに保存されているキー情報を読み出し、前記スマートキーの揮発性メモリに保存させることと、
前記携帯デバイスとの通信状態が第2状態になったことに基づいて前記スマートキーの電源をオフにさせることと、を実施させる命令を含むプログラム。
【0181】
[技術的思想23]
キー管理装置と接続されて使用されるスマートキーが備えるプロセッサに、
前記キー管理装置から前記キー情報を受信させることと、
受信した前記キー情報を前記揮発性メモリに保存させること、
前記揮発性メモリに保存されている、受信した前記キー情報を用いて認証装置と認証のための通信を実施させることと、を実施させる命令を含む、スマートキー向けのプログラム。
【0182】
[技術的思想24]
スマートキー(8b)と収容する収容部(41)と、
前記スマートキーと通信するためのキー通信部(411)と、
携帯デバイスと無線通信するための無線通信モジュール(42)と、
前記携帯デバイスとの通信状況に応じて前記スマートキーの動作を制御する制御部(44)と、を備え、
前記制御部は、
前記携帯デバイスと通信接続したことに基づいて、無線通信モジュールから前記携帯デバイスまでの距離を計測するための無線通信である測距通信を前記携帯デバイスと実施し、
前記測距通信の結果として得られる測距値が所定値未満となったことに基づいて、前記スマートキーを有効化し、
前記携帯デバイスとの通信接続が切れるか、または、前記測距値が所定値以上となった場合には、前記スマートキーを無効化するキー管理装置。
【0183】
[技術的思想25]
前記第2通信方式の無線通信は、トランスポンダを用いた無線通信である、技術的思想9に記載のキー制御システム。
【0184】
<付言(2)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。各フローチャートに示す制御は矛盾のない範囲で組み合わせて/並列的に実行されてよい。取得、判定、検出、生成、及び算出といった表現は相互に言い換えられて良い。或る装置が或るデータを取得することには、当該装置が他の装置/センサから入力された信号を元に当該データを生成することも含まれる。
【0185】
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。プロセッサは、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)など、任意の演算コアであってよい。キー管理装置4が備える機能の一部又は全部は、ハードウェアとして実現されても良い。キー管理装置4が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)、IC(Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)の何れかを用いて実現されていてもよい。
【0186】
コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションを含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてよい。コンピュータプログラムの記録媒体は、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等、多様な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0187】
2 スマートECU(認証装置)、4 キー管理装置、8a 登録キー、8b 制御キー(スマートキー)、41 収容部、42 近距離通信モジュール(無線通信モジュール)、44 制御部、86 通信コネクタ(キー側通信部)、411 キー通信部、412 給電部、47 ストレージ、87b コントローラ(キー側制御部)、872 RAM(揮発性メモリ)、873 ROM(不揮発性メモリ)