(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012067
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 75/00 20060101AFI20240118BHJP
C08G 65/332 20060101ALI20240118BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08L75/00
C08G65/332
C08L71/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061171
(22)【出願日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2022112304
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本條 智士
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CH052
4J002CK001
4J002CK011
4J002CK021
4J002FD022
4J002GC00
4J002GN00
4J002HA02
4J002HA09
4J005AA04
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】本発明は、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性に優れるポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、下記一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤。R1-COO-(EO)n-CO-R2 (1)
(式(1)中、R1及びR2はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
R3-COO-(EO)m-H (2)
(式(2)中、R3はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、mは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含み、
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、下記一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、下記一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤。
R1-COO-(EO)n-CO-R2 (1)
(式(1)中、R1及びR2はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
R3-COO-(EO)m-H (2)
(式(2)中、R3はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、mは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料が知られている。スラッシュ成形法は複雑な形状の成形体が容易に成形できること、材料の歩留まりが良いことから、自動車内外装材や家電部品、玩具、雑貨品等の用途に広く使用されている。これまでにスラッシュ成形用の熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料として、成形性を確保するための粉体流動性、成形体としての性能(低温下でのソフト感、フォギング性等)について多くの改良がなされてきた。
例えば、可塑剤が使用された粉体成形用ポリウレタン樹脂組成物(特許文献1参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記可塑剤が使用された粉体成形用ポリウレタン樹脂組成物は、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性が不十分であった。
本発明は、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性に優れるポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含み、下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、下記一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、下記一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤である。
R1-COO-(EO)n-CO-R2 (1)
(式(1)中、R1及びR2はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
R3-COO-(EO)m-H (2)
(式(2)中、R3はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示し、mは平均付加モル数を示し、4~20の数を示す)
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を使用することにより、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性に優れるポリウレタン(ウレア)樹脂組成物を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において「ウレタン(ウレア)樹脂」は、ウレタン結合のみのウレタン樹脂、並びにウレタン結合、およびウレア結合の両方を含むウレタンウレア樹脂の両方を含むものとする。
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含み、下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、下記一般式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤である。
R1-COO-(EO)n-CO-R2 (1)
式(1)中、R1及びR2はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示す。
nは平均付加モル数を示し、4~20の数を示し、好ましくは4~12である。
R3-COO-(EO)m-H (2)
式(2)中、R3はベンゼン環を示し、EOはオキシエチレン基を示す。
mは平均付加モル数を示し、4~20の数を示し、好ましくは4~12である。
【0009】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有することにより、ポリウレタン(ウレア)樹脂組成物に優れた可塑性を付与し、優れた耐フォギング性及び耐熱外観性を発現することが出来る。
【0010】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤に含まれる一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の含有量は、高速液体クロマトグラフィー等を用いて分離することによって確認することができる。
【0011】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを前記の所定の割合で含有していれば良く、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とを所定の割合で混合したものを用いても良いし、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを前記の所定の割合で含む混合物となる様に酸とアルコールとのエステル化反応物を精製して得られた組成物を用いても良い。
【0012】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤として、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを所定の割合で混合したものを用いる場合、一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物はそれぞれ公知の方法でジオール(a)と安息香酸とをエステル化反応させることで得ることができる。
【0013】
ジオール(a)は、炭素数2の2価アルコールにエチレンオキサイドを付加してなるジオールであり、エチレンオキサイドの付加モル数(b)は4~20であり、炭素数2の2価アルコールにエチレンオキサイドを既知の方法で開環付加反応することで得られたものである。
炭素数2の2価アルコールとしては、可塑性及び粘度の観点より、好ましくは炭素数2のアルキレングリコールであり、具体的には、エチレングリコールが挙げられる。
エチレンオキサイドの付加モル数(b)は4~20であり、好ましくは4~12である。
【0014】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を構成する一般式(1)で表される化合物の製造方法では、ジオール(a)と安息香酸とをエステル化反応させるエステル化工程を必須とする。
具体的には、ジオール(a)、安息香酸、エステル化触媒及び必要により溶媒を反応装置に仕込み、窒素を液中に流しながら加熱しつつ、生成水を系外に除去してエステル化反応を進行させ、ジ安息香酸エステルを合成する工程である。
一般式(1)で表される化合物における安息香酸の使用量は、ジオール(a)1モルに対して好ましくは2.00~2.20モルであり、更に好ましくは2.00~2.10モルであり、最も好ましくは2.00~2.05モルである。
【0015】
一般式(1)で表される化合物の製造方法におけるエステル化触媒としては、例えば、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、シュウ酸チタンリチウム及びそれらの混合物が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の製造方法におけるエステル化触媒の含有量は、低着色性の観点から、安息香酸のカルボキシル基の総数に対して、好ましくは0.000001~10モル%であり、更に好ましくは0.000001~1モル%であり、最も好ましくは0.01~1.0モル%である。
【0016】
溶媒としては、エステル化工程後に反応装置から溶媒を留去するのに要するエネルギーを低減する観点から、沸点90~150℃の溶媒を用いることがより好ましい。
沸点90~150℃の溶媒としては、例えば、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンなどの飽和脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、2-シクロヘキセン-1-オンなどのケトン化合物;等が挙げられる。
【0017】
前記加熱時の好ましい温度範囲は120~230℃であり、更に好ましくは180~220℃である。
反応時間は好ましくは6~30時間であり、更に好ましくは7~25時間であり、最も好ましくは8~20時間である。
【0018】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を構成する一般式(2)で表される化合物の製造方法では、ジオール(a)と安息香酸とをエステル化反応させるエステル化工程を必須とする。
具体的には、ジオール(a)、安息香酸、エステル化触媒及び必要により溶媒を反応装置に仕込み、窒素を液中に流しながら加熱しつつ、生成水を系外に除去してエステル化反応を進行させ、安息香酸エステルを合成する工程である。
一般式(2)で表される化合物における安息香酸の使用量は、ジオール(a)1モルに対して好ましくは0.90~1.20モルであり、更に好ましくは1.00~1.10モルであり、最も好ましくは1.00~1.05モルである。
【0019】
一般式(2)で表される化合物の製造方法におけるエステル化触媒としては、例えば、有機スルホン酸が挙げられ、好ましくは、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸及びそれらの混合物が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物の製造方法におけるエステル化触媒の含有量は、低着色性の観点から、安息香酸のカルボキシル基の総数に対して、好ましくは0.000001~10モル%であり、更に好ましくは0.000001~1モル%であり、最も好ましくは0.01~1.0モル%である。
【0020】
溶媒としては、エステル化工程後に反応装置から溶媒を留去するのに要するエネルギーを低減する観点から、沸点90~150℃の溶媒を用いることがより好ましい。
沸点90~150℃の溶媒としては、例えば、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンなどの飽和脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、2-シクロヘキセン-1-オンなどのケトン化合物;等が挙げられる。
前記加熱時の好ましい温度範囲は60~160℃であり、更に好ましくは70~120℃である。
反応時間は好ましくは30分~10時間であり、更に好ましくは50分~6時間であり、最も好ましくは1~3時間である。
【0021】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを所定の割合で混合して本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤にする場合、混合方法としては、常法に従えばよく、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを撹拌機などを用いて撹拌する方法等があげられる。
【0022】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤として、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを前記の所定の割合で含む様に酸とアルコールとのエステル化反応物を精製調整して得られた組成物を用いる場合、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを前記の所定の割合で含む組成物を得る製造方法としては、ジオール(a)と安息香酸とをエステル化反応させるエステル化工程と、中和剤(e)を添加する中和工程と、吸着剤による吸着工程と、吸着剤をろ過する精製工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0023】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含む組成物を得る場合の前記エステル化工程における、原料の使用量は、適宜設定すればよく、特に制限されるものではない。例えば、安息香酸の使用量は、ジオール(a)1モルに対して好ましくは2.00~2.20モルであり、更に好ましくは2.00~2.10モルであり、最も好ましくは2.00~2.05モルである。
【0024】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含む、エステル化反応工程で得られた反応物に対して、中和剤(e)を添加する中和工程と吸着剤を添加する吸着工程と吸着剤をろ過する精製工程とを行うことにより、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、下記一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を製造することが出来る。
【0025】
中和工程で添加する中和剤(e)は、精製(吸着工程および濾過工程)を阻害しないアルカリ性化合物であれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸カリウム等が挙げられる。これらのうち、中和効率の観点より好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムである。
【0026】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との割合を所定の割合にするという観点から、中和剤(e)の添加量は、エステル化反応混合物の酸価に基づいて計算される未反応の安息香酸(d)と中和剤(e)とのモル比率{(d)/(e)}が、0.9~1.1となる量であることが好ましい。
なお、エステル化反応混合物の酸価は、JIS K 0070記載の酸価の測定法により求めることができる。
【0027】
前記中和工程の好ましい温度範囲は20~80℃であり、更に好ましくは55~65℃である。
前記中和工程の好ましい反応時間は10分~3時間であり、更に好ましくは30分~2時間であり、最も好ましくは1~2時間である。
【0028】
前記の吸着工程で添加する吸着剤としては、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル等が挙げられる。
市販の吸着剤としては、例えば、キョーワード600、700(それぞれ商品名:協和化学工業)、ミズカライフP-1、P-1S、P-1G、F-1G(それぞれ商品名:水澤化学工業)、トミタ-AD600、700(それぞれ商品名:富田製薬)等の珪酸塩等を用いることができる。これらの中和剤を1種のみ使用する、若しくは2種以上を併用するものであっても構わない。
吸着剤の添加量は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との割合を所定の割合にするという観点から、エステル化反応に用いた安息香酸100重量部に対して0.1~1.5重量部であり、好ましくは0.1~1.0重量部である。
【0029】
前記吸着工程の好ましい温度範囲は20~80℃であり、更に好ましくは50~60℃である。
前記吸着工程の好ましい反応時間は10分~6時間であり、更に好ましくは20分~5時間であり、最も好ましくは1~3時間である。
【0030】
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含む、エステル化反応工程で得られた反応物に対して、前記の中和工程及び吸着工程の後、さらに吸着剤をろ過する精製工程を必須とすることにより、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との合計重量に基づいて、一般式(1)で表される化合物を94~98重量%含有し、下記一般式(2)で表される化合物を2~6重量%含有するポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を製造することが出来る。精製工程はろ過によって吸着剤を除去する工程であり、これによって一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物と所定の割合で含む組成物を得ることができる。
【0031】
ろ過温度(ろ過に供する、混合物の温度)は40~70℃が好ましく、更に好ましくは50~70℃、より好ましくは50~60℃である。
【0032】
一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物ジオール(a)及び一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含む組成物を得る方法において、エステル化工程にて溶媒を使用した場合、溶媒を留去する溶媒留去工程を含んでも良い。溶媒留去工程の順序は特に限定されないが、エステル化工程と吸着工程の間、吸着工程とろ過工程との間、及びろ過工程の後で行うことが出来る。
溶媒留去工程は、これらの内、生産性の観点より吸着工程とろ過工程との間に行うことが好ましい。
前記溶媒留去工程は、減圧下で行うことが好ましく、例えば5kPa以下であり、4kPa以下で行うことが好ましく、3kPa以下で行うことがより好ましい。減圧度の下限は、例えば1Pa以上であり、10Pa以上がより好ましい。
前記溶媒留去工程の好ましい温度範囲は100~150℃であり、更に好ましくは120~130℃である。
前記溶媒留去工程の好ましい反応時間は5~20時間であり、更に好ましくは10~20時間であり、最も好ましくは12~20時間である。
【0033】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤は、ポリウレタン(ウレア)樹脂に添加し、混合して使用されるものである。本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を添加するポリウレタン(ウレア)樹脂は、ポリウレタン(ウレア)樹脂であれば特に限定されない。
【0034】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を添加するポリウレタン(ウレア)樹脂は、ウレア基濃度が0~10重量%であり、かつウレタン基濃度とウレア基濃度の合計が4~20重量%であり、かつ融点が160~260℃であり、かつガラス転移点温度が-65~0℃であることが好ましい。
ウレア基はウレタン樹脂の強度、耐溶剤性、耐摩耗性を著しく向上させるため、ウレア基を含有する場合、ウレタン樹脂の性能を大きく向上させることができる。ウレア基が存在すると、ウレア基による強度、耐溶剤性、耐摩耗性の向上の効果が著しく、またウレタン樹脂を成形加工させる際には、融点、溶融粘度を低く抑えられるため、成形時に必要な熱エネルギーを低減することができる。ウレア基濃度は0~10重量%が好ましく、1.0~7.0重量%がより好ましく、1.5~5.0重量%が最も好ましい。
また同時にウレタン基もウレア基同様にポリウレタン(ウレア)樹脂の性能を向上させており、ウレタン基濃度とウレア基濃度の合計が4~20重量%であることが好ましく、6~15重量%がさらに好ましく、8~12重量%が最も好ましい。
本発明におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度はウレタン樹脂に対するウレタン基とウレア基の重量%濃度である。
【0035】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を添加するポリウレタン(ウレア)樹脂の融点は160~260℃であることが好ましく、210~250℃であることがさらに好ましい。融点が160~260℃であれば、一般的な保存環境において、粒子のブロッキング性に優れ、かつ成形時の熱エネルギーを低減することができる。
尚、本発明における融点は、実施例に記載の方法で測定される。
【0036】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を添加するポリウレタン(ウレア)樹脂のガラス転移点温度は-65~0℃であることが好ましく、-50~-10℃であることがさらに好ましい。ガラス転移点温度が-65~0℃であれば、より低温でも耐衝撃性を有することができる。
尚、本発明におけるガラス転移点温度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0037】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤は、スラッシュ成形に使用するポリウレタン(ウレア)樹脂により好適に使用することが出来る。ポリウレタン(ウレア)樹脂は、スラッシュ成形に使用するという観点から粉末状であることが好ましい。
【0038】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤は、粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂と混合して用いることが出来る。
【0039】
前記粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂の体積平均粒子径は、好ましくは1~700μmであり、更に好ましくは10~500μm、最も好ましくは50~300μmである。
ウレタン樹脂粒子の体積平均粒子径が1μm以上である場合には、粉体流動性が良好であり、スラッシュ成形時の成形性が良好で、粉塵が発生しにくく、作業環境が良好である。ウレタン樹脂粒子の体積平均粒子径が700μm以下では、スラッシュ成形時にレベリングが良好であり、金型面にピンホールが発生しにくい。
ここで体積平均粒子径とは、レーザー式光散乱法で測定した篩い下50%の粒子径の値
である。測定機器としては、例えばマイクロトラックHRA粒度分析計9320-X100(日機装株式会社製)を挙げることができる。
【0040】
前記粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂の90%粒子径/10%粒子径の比率は、好ましくは2.0~3.0である。90%粒子径/10%粒子径の比率は、粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂の粒度分布を示し、前記範囲であると、スラッシュ成形用途に適し、スラッシュ成形後の金型面上ピンホールが少なくなり、また、粉体流動性がよく、分級工程が不要となる。
ここで90%粒子径/10%粒子径とは90%粒子径を10%粒子径で除したものをいう。前記平均粒子径、90%粒子径、10%粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置[日機装(株)製「Microtrac MT3000II」]を用いて測定することができ、90%粒子径/10%粒子径の比率を算出することができる。
【0041】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤の添加量は、溶融性、紛体流動性の観点から、ポリウレタン(ウレア)樹脂の重量に基づいて、好ましくは3~150重量%であり、更に好ましくは5~80重量%である。
【0042】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を添加するポリウレタン(ウレア)樹脂には、必要により、本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤以外の添加剤を添加することができる。
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤以外の添加剤としてはフィラー、酸化防止剤、顔料及び離型剤等が添加できる。
【0043】
フィラーとしては、例えばカオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー、金属粉末等の無機フィラーが挙げられる。
【0044】
酸化防止剤としては、例えばフェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等)、ビスフェノール系(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、リン系(トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト等)等が挙げられる。
【0045】
顔料としては、例えば公知の有機顔料及び/または無機顔料を使用することができる。有機顔料としては不溶性アゾ顔料、可溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機顔料としてはカーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化セレン化合物、金属塩類(硫酸塩、硅酸塩、炭酸塩、リン酸塩等)金属粉末等が挙げられる。
【0046】
離型剤としては、公知の離型剤が使用でき、例えば、フッ素系離型剤(リン酸フルオロアルキルエステル等)、シリコン系離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性ジメチルポリシロキサン、エーテル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル系離型剤(アルカン(炭素数11~24)酸アルケニル(炭素数6~24)エステル等)、リン酸エステル系離型剤(リン酸トリブチルエステル等)等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤以外の添加剤の添加量は、ポリウレタン(ウレア)樹脂の重量に対して好ましくは0~50重量%であり、更に好ましくは0~35重量%である。
【0048】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤及び本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤以外の添加剤を粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂に添加、混合するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0049】
本発明のポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤と、粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂とを混合することで得られた粉末状のポリウレタン(ウレア)樹脂組成物は、例えばスラッシュ成形法で成形することにより、例えばインスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品、家電部品、玩具、雑貨品等を製造することが出来る。
【実施例0050】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0051】
<製造例1>
(1)<1,4-ブタンジオール、アジピン酸の重縮合物(B)の製造>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、アジピン酸65.6重量部、1,4-ブタンジオール49.7重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、5~20mmHgの減圧下で反応させ、1,4-ブタンジオール、アジピン酸の重縮合物(B)を取り出した。得られた(B)の水酸基価を測定し、数平均分子量を計算した結果950であった。
水酸基価は、JIS K 0070(1995年版)に規定の方法で測定した。
【0052】
(2)<プレポリマー溶液(S)の製造>
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、ポリエステルジオール(B)54.8重量部、1,6-ヘキサンジオール1.6重量部、ベンジルアルコール1.1重量部、カオリン;1.6重量部、耐熱安定剤(BASFジャパン(株)製「イルガノックス1010」)3.8重量部、MEK(メチルエチルケトン)19.9重量部を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら90℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。
続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート18.7重量部を投入し、85℃で6時間反応させて、ウレタンプレポリマー(S)を90.0重量部得た。
【0053】
(3)<ポリウレタンウレア樹脂組成物(P)の製造>
反応容器に、分散剤(三洋化成工業(株)製「サンスパールPS-8」)5.3重量部を水136.8重量部に溶解させた水溶液142.1重量部とMEK33.4重量部を加えて20℃で均一に混合後、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて周速23m/s(回転数:10,000rpm)の攪拌下にイソホロンジアミン3.0重量部を加え、1分間混合した。
撹拌を継続しながら、続いて75℃に温調された前記で製造したウレタンプレポリマー溶液(S)90重量部を投入混合し、同じく周速23m/sで2分間混合した。得られた混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、粉末状のポリウレタンウレア樹脂組成物(P)を66.5重量部得た。得られた粉末状のポリウレタ
ンウレア樹脂組成物(P)のウレア基濃度は2.6重量%であり、ウレタン基濃度とウレア基濃度との合計は11.5重量%であり、融点は190℃であり、ガラス転移点温度は-35℃であり、体積平均粒子径は210μmであり、90%粒子径/10%粒子径の比率は2.7であった。
【0054】
<融点の測定>
島津(株)製フローテスターCFT-500を用いて、以下の条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度をもって融点とした。
荷重 : 5kg
ダイ : 0.5mmΦ-1mm
昇温速度 : 5℃/min.
【0055】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
示差走査熱量分析[セイコーインストルメンツ(株)製「RDC220ロボットDSC」]を用いて以下の条件で測定した。
測定条件:サンプル量5mg。
(1)-100℃から昇温速度20℃/minで100℃まで昇温し、100℃で10分保持。
(2)100℃から冷却速度-90℃/minで-100℃まで冷却し、-100℃で10分保持。
(3)-100℃から昇温速度20℃/minで100℃まで昇温する。
解析方法:2度目の昇温時のDSC曲線からTgを算出する。
【0056】
<実施例1~2、比較例1~3>
撹拌とディーン/スターク装置とを備えた反応容器に、表1に記載した重量部のジオール(a)、安息香酸、シュウ酸チタンカリウム、及びキシレンを入れ、窒素を反応容器の液中に流しながら、200℃に昇温した。その後200℃で、生成水を系外に除去しながら、20時間反応することでエステル化反応工程を行った。
得られた反応物の酸価を測定し、表1に記載した重量部の水酸化ナトリウムを中和剤として仕込み、60℃で1時間撹拌することで中和工程を行った。
次に酸吸着剤[キョーワード600、協和化学工業(株)製]を入れ、60℃で2時間、撹拌することで吸着工程を行った後ろ過して精製工程を行い、さらに3kPaに減圧下、125℃で12時間の間、キシレンを留去する溶媒留去工程を行った。
キシレン留去後の溶液を60度まで冷却後、ろ過を行い、実施例1~2、及び比較例1~3に係るポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤(X-1)~(X-2)及び(比X-1)~(比X-3)を得た。
得られたポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤(X-1)~(X-2)及び(比X-1)~(比X-3)を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、式(1)と式(2)で表される化合物が表1に記載の割合で含有されていた。
【0057】
<高速液体クロマトグラフィーの測定条件>
株式会社 日立ハイテクノロジーズ社製 LaChrom7000
展開溶媒:メタノール/水/過塩素酸ナトリウム=87/10/3(重量比)
カラム:ジーエルサイエンス社製 イナートシルPh-3
カラム温度:40℃ 流量:1.0mL/分
検出器:UV検出器(254nm)
【0058】
粉末状のポリウレタンウレア樹脂(P)100重量部、着色剤としてのカーボンブラック2.5重量部を得られたポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤(X-1)~(X-2)及び(比X-1)~(比X-3)10重量部に分散させた着色剤分散液12.5重量部とを、ヘンシェルミキサーに投入し、700回転/minで1分間攪拌した。
次いで、ナウタミキサに移し、70℃で撹拌下に4時間混合した。
さらに、離型剤としてのジメチルポリシロキサン0.06重量部(日本ユニカー(株)製「ケイL45-10000」)を投入し1時間混合した後室温まで冷却することにより、粉末状の各ポリウレタンウレア樹脂組成物(P-1)~(P-2)及び(比P-1)~(比P-3)を得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂組成物(P-1)~(P-2)及び(比P-1)~(比P-3)を以下の評価方法にしたがって評価した。結果を表2に示す。
【0059】
<表皮の作製>
予め230℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に、粉末状ポリウレタンウレア樹脂組成物を充填し、10秒後余分な粉末状ポリウレタンウレア樹脂組成物を排出した。60秒後、水冷して表皮(厚さ1mm)を作成した。この成形表皮について、耐フォギング性の評価、耐熱外観性及び溶融性の評価を行った。
【0060】
<耐フォギング性の評価>
ISO6452の規格に準拠した装置を用いて、成形品の試験サンプル(厚さ1mmの成形表皮から直径8cmの円型に切り抜いた)を100℃に加熱したガラス容器にセットし、その上部開口部に40℃に温調したガラス板をセットして、20時間フォギング試験を実施した。
次いで、試験後のガラス板のガラス霞度(HAZE)を、日本電色工業社製 NDH-5000を用いて測定した。
【0061】
<耐熱外観性の評価>
得られた表皮をタテ15cm×15cmに切り取り、光沢を測定した(K1)。
次に、表皮を、90℃の循風乾燥機内で24時間、保持した。その表皮の光沢を測定した(K2)。なお、光沢測定は、光沢計(ポータブルグロスメーターGMX-202:ムラカミカラーリサーチラボラトリー製)を用いた。
以下の式(1)により求められる光沢の変化が小さいほど、耐熱外観性に優れる。
(耐熱外観)=光沢値(K2)-光沢値(K1)
【0062】
<溶融性>(低温での可塑性の評価)
成形表皮裏面中央部を目視で観察し、以下の判定基準で溶融性を5段階で評価した。
<判定基準>
5:均一で光沢がある。
4:一部未溶融のパウダーが有るが、光沢がある。
3:裏面全面に凹凸があり、光沢はない。表面に貫通するピンホールはない。
2:裏面全面にパウダーの形状の凹凸があり、かつ表面に貫通するピンホールがある。
1:パウダーが溶融せず、成形品にならない。
×:溶融し過ぎて成形表皮が作成できない。
【0063】
【0064】
【0065】
表2の結果から、実施例1及び実施例2のポリウレタンウレア樹脂組成物(P)の成形品は、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性に優れていることが分かる。
本発明で得られるポリウレタン(ウレア)樹脂用添加剤を用いたポリウレタン(ウレア)樹脂成型品は、可塑性、耐フォギング性及び耐熱外観性に優れるため、例えばインスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品、家電部品、玩具、雑貨品等の製造時に好適に使用できる。