(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120670
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】拡底型の鋼管杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/28 20060101AFI20240829BHJP
E02D 5/48 20060101ALI20240829BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D5/48
E02D5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027640
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】591223404
【氏名又は名称】株式会社トラバース
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【弁理士】
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA01
2D041CA05
2D041CB06
2D041DB02
2D041FA14
(57)【要約】
【課題】製造が容易な拡底型の鋼管杭を提供する。
【解決手段】拡底型の鋼管杭1は、鉛直に延びている。この拡底型の鋼管杭1は、鉛直に延びていて、下端縁に一対の切欠き2aを有していると共に、下方に馬鹿穴2bを有している円形鋼管2と、馬鹿穴2bに対応するボルト穴31aを有し、円形鋼管2の外形よりも大きい内径の筒体31と、筒体31の下端に溶接で固定されている鋼製の底体32と、筒体31の外周に溶接で固定されている鋼製の翼体33と、筒体31の中に掛け渡されて筒体31の中に溶接で固定されている鋼材34と、を有し、鋼材34の両端が一対の切欠き2aの各々に配置されると共に、ボルト穴31aが馬鹿穴2bに対応するように円形鋼管2の下端に被せられている翼部材3と、ボルト穴31aにねじ込まれて馬鹿穴2bに達しているボルト4と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直に延びている拡底型の鋼管杭であって、
鉛直に延びていて、下端縁に一対の切欠きを有していると共に、下方に馬鹿穴を有している円形鋼管と、
前記馬鹿穴に対応するボルト穴を有し、前記円形鋼管の外径よりも大きい内径の筒体と、前記筒体の下端に溶接で固定されている鋼製の底体と、前記筒体の外周に溶接で固定されている鋼製の翼体と、前記筒体の中に掛け渡されて前記筒体の中に溶接で固定されている鋼材と、を有し、前記鋼材の両端が前記一対の切欠きの各々に配置されると共に、前記ボルト穴が前記馬鹿穴に対応するように前記円形鋼管の下端に被せられている翼部材と、
前記ボルト穴にねじ込まれて前記馬鹿穴に達しているボルトと、を備えていることを特徴とする
拡底型の鋼管杭。
【請求項2】
前記鋼材は、該鋼材の両端が前記一対の切欠きの各々に配置されていることで、前記円形鋼管及び前記翼部材の相対回転を防止することを特徴とする
請求項1に記載の拡底型の鋼管杭。
【請求項3】
前記翼体は、正六角形の鋼板が半分に切断され、前記筒体の外周に固定される部分が切り抜かれている一対の翼板であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の拡底型の鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡底型の鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉛直に延びている円形鋼管の下端に翼が固定されている拡底型の鋼管杭が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような拡底型の鋼管杭は、4m~20m程度の長さを有する円形鋼管に対して、翼を溶接で取り付ける必要があるので、製造が容易ではなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、製造が容易な拡底型の鋼管杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、鉛直に延びている拡底型の鋼管杭(例えば、後述する拡底型の鋼管杭1)であって、鉛直に延びていて、下端縁に一対の切欠き(例えば、後述する切欠き2a)を有していると共に、下方に馬鹿穴(例えば、後述する馬鹿穴2b)を有している円形鋼管(例えば、後述する円形鋼管2)と、前記馬鹿穴に対応するボルト穴(例えば、後述するボルト穴31a)を有し、前記円形鋼管の外径よりも大きい内径の筒体(例えば、後述する筒体31)と、前記筒体の下端に溶接で固定されている鋼製の底体(例えば、後述する底体32)と、前記筒体の外周に溶接で固定されている鋼製の翼体(例えば、後述する翼体33)と、前記筒体の中に掛け渡されて前記筒体の中に溶接で固定されている鋼材(例えば、後述する鋼材34)と、を有し、前記鋼材の両端が前記一対の切欠きの各々に配置されると共に、前記ボルト穴が前記馬鹿穴に対応するように前記円形鋼管の下端に被せられている翼部材(例えば、後述する翼部材3)と、前記ボルト穴にねじ込まれて前記馬鹿穴に達しているボルト(例えば、後述するボルト4)と、を備えていることを特徴とする拡底型の鋼管杭である。
【0007】
本発明の拡底型の鋼管杭によれば、ボルトを用いて翼部材を円形鋼管に取り付けることができ、円形鋼管に対する溶接は不要である。また、本発明の拡底型の鋼管杭によれば、円形鋼管が有する穴が、ボルト穴ではなく馬鹿穴であるので、翼部材を円形鋼管の下端に被せる際、翼部材の筒体が有するボルト穴を円形鋼管の馬鹿穴に容易に対応させることができる。このように、本発明の拡底型の鋼管杭によれば、製造が容易である。
【0008】
(2)本発明はまた、前記鋼材は、該鋼材の両端が前記一対の切欠きの各々に配置されていることで、前記円形鋼管及び前記翼部材の相対回転を防止することを特徴とする上記(1)に記載の拡底型の鋼管杭である。
【0009】
(3)本発明はまた、前記翼体は、正六角形の鋼板が半分に切断され、前記筒体の外周に固定される部分が切り抜かれている一対の翼板(例えば、後述する翼板331)であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の拡底型の鋼管杭である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記(1)~(3)に記載の拡底型の鋼管杭によれば、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る拡底型の鋼管杭の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る拡底型の鋼管杭について詳細に説明する。
【0013】
まず、
図1~
図6を用いて、拡底型の鋼管杭1の構成について説明する。
図1は、拡底型の鋼管杭1の正面図である。
図2は、拡底型の鋼管杭1の分解正面図である。
図3は、拡底型の鋼管杭1の左側面図である。
図4は、拡底型の鋼管杭1の平面図である。
図5は、翼部材3の平面図である。
図6は、複数の翼板331を製造する鋼板Pの平面図である。
【0014】
図1~
図4に示す拡底型の鋼管杭1は、回転トルク及び圧入力を与えることによって地盤に対して貫入することで、地盤を補強する工法に用いられる。このような拡底型の鋼管杭1を用いた工法は、先端根固めやプレボーリング等を必要としないことから、排土処理が一切不要であり、土壌汚染の心配がなく、環境に与える負荷が小さい。
【0015】
拡底型の鋼管杭1は、鉛直に延びている。具体的に、拡底型の鋼管杭1は、円形鋼管2と、翼部材3と、一対のボルト4と、を備えている。
【0016】
円形鋼管2は、鉛直に延びていて、地盤に対する支持力を生じさせる。この円形鋼管2は、下端縁に一対の切欠き2aを有していると共に、下方に一対の馬鹿穴2bを有している。具体的に、円形鋼管2は、翼部材3が被せられて当該翼部材3の筒体31が有する一対のボルト穴31aに対応する位置に、一対の馬鹿穴2bを有している。
【0017】
一対の切欠き2aは、それぞれ、円形鋼管2の下端縁における互いに円周方向に等間隔となる位置に、鉛直に延びるスリット状に形成されている。
【0018】
一対の馬鹿穴2bは、それぞれ、円形鋼管2の下方における互いに円周方向に等間隔となる位置であって、円形鋼管2の下方から視て、円周方向において一対の切欠き2aと交互になる位置に形成されている。
【0019】
図1~
図5に示す翼部材3は、円形鋼管2の下端に取り付けられていることで、地盤に対する支持力を向上させる。すなわち、翼部材3は、鋼材34の両端が、円形鋼管2の一対の切欠き2aの各々に配置されると共に、ボルト穴31aが円形鋼管2の馬鹿穴2bに対応するように円形鋼管2の下端に被せられている。具体的に、翼部材3は、筒体31と、底体32と、翼体33と、鋼材34と、を有している。
【0020】
筒体31は、円形鋼管2の外径よりも大きい内径を有している。この筒体31は、円形鋼管2の一対の馬鹿穴2bの各々に対応する一対のボルト穴31aを有している。筒体31の下端には、鋼製の底体32が溶接で固定されている。筒体31の外周には、鋼製の翼体34が溶接で固定されている。一対のボルト穴31aは、それぞれ、筒体31の下方から視て、筒体31における互いに円周方向に等間隔となる位置に形成されている。
【0021】
底体32は、筒体31の外径と略同じ径を有している円形の鋼板である。この底体32は、筒体31の下端に溶接で固定されている。
【0022】
翼体33は、円形鋼管2の下端を拡底させる鋼製の翼であり、筒体31の外周に溶接で固定されている。この翼体33は、鋼板P(
図6参照)を切断した一対の翼板331である。
図6に示すように、一対の翼板331は、それぞれ、鋼板Pが正六角形に切断され、その正六角形の鋼板Pが半分に切断され、筒体31(
図1~
図5参照)の外周に固定される部分332が切り抜かれたものである。
【0023】
図1~
図5に戻って説明する。鋼材34は、長方形状の鋼板であり、筒体31の中に掛け渡されて筒体31の中に溶接で固定されている。具体的に、鋼材34は、筒体31の内面、又は底体32の上面に溶接で固定されている。この鋼材34は、当該鋼材34の両端が、円形鋼管2の一対の切欠き2aの各々に配置されていることで、円形鋼管2及び翼部材3の相対回転を防止する。
【0024】
一対のボルト4は、それぞれ、翼部材3の筒体31の外側からボルト穴31aにねじ込まれて円形鋼管2の馬鹿穴2bに達している。
【0025】
以上説明したように、拡底型の鋼管杭1は、鉛直に延びている。この拡底型の鋼管杭1は、鉛直に延びていて、下端縁に一対の切欠き2aを有していると共に、下方に馬鹿穴2bを有している円形鋼管2と、馬鹿穴2bに対応するボルト穴31aを有し、円形鋼管2の外径よりも大きい内径の筒体31と、筒体31の下端に溶接で固定されている鋼製の底体32と、筒体31の外周に溶接で固定されている鋼製の翼体33と、筒体31の中に掛け渡されて筒体31の中に溶接で固定されている鋼材34と、を有し、鋼材34の両端が一対の切欠き2aの各々に配置されると共に、ボルト穴31aが馬鹿穴2bに対応するように円形鋼管2の下端に被せられている翼部材3と、ボルト穴31aにねじ込まれて馬鹿穴2bに達しているボルト4と、を備えている。
【0026】
このような本発明の実施形態に係る拡底型の鋼管杭1によれば、ボルト4を用いて翼部材3を円形鋼管2に取り付けることができ、円形鋼管2に対する溶接は不要である。また、拡底型の鋼管杭1によれば、円形鋼管2が有する穴が、ボルト穴ではなく馬鹿穴2bであるので、翼部材3を円形鋼管2の下端に被せる際、翼部材3の筒体31が有するボルト穴31aを円形鋼管2の馬鹿穴2bに容易に対応させることができる。このように、拡底型の鋼管杭1によれば、製造が容易である。
【0027】
また、拡底型の鋼管杭1において、鋼材34は、当該鋼材34の両端が一対の切欠き2aの各々に配置されていることで、円形鋼管2及び翼部材3の相対回転を防止する。
【0028】
また、拡底型の鋼管杭1において、翼体33は、正六角形の鋼板Pが半分に切断され、筒体31の外周に固定される部分が切り抜かれている一対の翼板331である。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置・大きさ・長さ・数量・形状・材質などは適宜変更できる。
【0030】
例えば、ボルト4の数は、一対(2本)に限定されず、1本又は3本以上であってもよい。円形鋼管2が有している馬鹿穴2bの数は、一対(2つ)に限定されず、ボルト4の数に対応して、1つ又は3つ以上であってもよい。翼部材3の筒体31が有しているボルト穴31aの数は、一対(2つ)に限定されず、ボルト4の数に対応して、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0031】
また、一対の翼板331は、それぞれ、鋼板Pが正六角形に切断され、その正六角形の鋼板Pが半分に切断され、筒体31の外周に固定される部分332が切り抜かれたものに限定されず、すなわち、正六角形を前提としたものに限定されず、他の正多角形や円形を前提としたものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 拡底型の鋼管杭
2 円形鋼管
2a 切欠き
2b 馬鹿穴
3 翼部材
31 筒体
31a ボルト穴
32 底体
33 翼体
331 翼板
34 鋼材
4 ボルト
P 鋼板