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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120673
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20240829BHJP
   C01B 39/46 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027648
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山村 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 智樹
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA20D
4G066AA61B
4G066AA71D
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA02
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD21
4G073CZ50
4G073FB19
4G073FB26
4G073FB36
4G073FD01
4G073GA03
4G073UA06
4G073UB38
(57)【要約】
【課題】従来品よりも低いエネルギーにより二酸化炭素を吸着できる二酸化炭素吸着剤の提供。
【解決手段】圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフ上において、100kPa~400kPaに相当する領域の任意の2点を結んだ線の傾きが、57.9以上であるゼオライトを含む二酸化炭素吸着剤。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフ上において、100kPa~400kPaに相当する領域の任意の2点を結んだ線の傾きが、57.9以上であるゼオライトを含むことを特徴とする二酸化炭素吸着剤。
【請求項2】
X線回折の測定において、2θ=12.37°~12.43°、及び26.60°~26.76°にピークを有するゼオライトを含むことを特徴とする二酸化炭素吸着剤。
【請求項3】
前記ゼオライトが、X線回折の測定において、2θ=12.37°~12.43°のピークの高さをA、2θ=26.60°~26.76°のピークの高さをBとしたとき、B/Aが、0.03~0.09である請求項2記載の二酸化炭素吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線の吸収及び放出の性質を有する温室効果ガスの一種である二酸化炭素は、近年の産業活動の活発化に伴い、大気中の濃度が上昇していることが知られている。そこで、大気中の二酸化炭素の濃度を増加させないために、二酸化炭素の排出量と吸収量とを均衡させるカーボンニュートラルと呼ばれる取り組みが盛んにおこなわれている。
【0003】
カーボンニュートラルに向けた取り組みの一種として、火力発電所などから排出される二酸化炭素を大気中に放出させないことを目的として、二酸化炭素を回収、及び貯蓄するシステムが注目されている。
二酸化炭素を回収するシステムとして、例えば、圧力を変化させて吸着するPSA方式(圧力スイング吸着)、温度を変化させて吸着するTSA方式(温度スイング吸着)などが挙げられる。これらのシステムに用いられる二酸化炭素吸着剤は、粘土鉱物の一種であるゼオライトが主に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ゼオライトを用いた二酸化炭素回収システムは、ゼオライトの中でもFAU型ゼオライトを用い、PSA方式により設計されることが多い。具体的には、真空下(0kPa)から大気圧下(100kPa)にかけて二酸化炭素を吸着させ、真空下で脱離させて二酸化炭素を分離する。しかしながら、このように吸着を行う場合、真空ポンプ、及び高圧コンプレッサー等のエネルギー消費の高い装置を使用することになるため、エネルギー消費量が大きく、二酸化炭素の回収コストが高くなり、広く普及させることは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-109818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来品よりも低いエネルギーにより二酸化炭素を吸着できる二酸化炭素吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の目的を達成するため、従来品よりも低いエネルギーにより二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着剤に用いられるゼオライトの性質とは、真空ではない条件下において二酸化炭素を十分に吸着する性質であることを見出した。真空ではない条件下で十分に二酸化炭素を吸着することができれば、二酸化炭素を吸着させるために真空ポンプ、高圧コンプレッサーなどのエネルギーを必要とする装置を用いることなく、従来品よりも低いエネルギーによる二酸化炭素の吸着が期待できる。
【0008】
そして、本発明者らは、この条件を満たすゼオライトは、圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した際に、真空より高い圧力の領域において、特徴的な傾きを有するゼオライトであることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明の二酸化炭素吸着剤は、
圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフ上において、100kPa~400kPaに相当する領域の任意の2点を結んだ線の傾きが、57.9以上であるゼオライトを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の二酸化炭素吸着剤は、
X線回折の測定において、2θ=12.37°~12.43°、及び26.60°~26.76°にピークを有するゼオライトを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の態様においては、ゼオライトが、X線回折の測定において、2θ=12.37°~12.43°のピークの高さをA、2θ=26.60°~26.76°のピークの高さをBとしたとき、B/Aが、0.03~0.09であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来品よりも低いエネルギーにより二酸化炭素を吸着できる二酸化炭素吸着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、実施例1のゼオライトのXRD測定結果である。
図1B図1Bは、実施例2のゼオライトのXRD測定結果である。
図1C図1Cは、実施例3のゼオライトのXRD測定結果である。
図1D図1Dは、実施例4のゼオライトのXRD測定結果である。
図1E図1Eは、実施例5のゼオライトのXRD測定結果である。
図1F図1Fは、実施例6のゼオライトのXRD測定結果である。
図1G図1Gは、比較例1のゼオライトのXRD測定結果である。
図2図2は、実施例1~3、及び比較例1の二酸化炭素吸着等温線を示した図である。
図3A図3Aは、実施例1のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3B図3Bは、実施例2のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3C図3Cは、実施例3のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3D図3Dは、実施例4のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3E図3Eは、実施例5のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3F図3Fは、実施例6のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
図3G図3Gは、比較例1のゼオライトにおける圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(二酸化炭素吸着剤)
実施形態に係る二酸化炭素吸着剤は、ゼオライトと、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0015】
<ゼオライト>
ゼオライトは、ケイ素又はアルミニウムと、酸素と、を含んで構成される、TO4ユニット(T元素は、骨格を構成する酸素以外の元素)を基本単位とする化合物である。具体的には、結晶性の多孔質であるアルミノケイ酸塩、結晶性の多孔質であるアルミノリン酸塩(ALPO)、又は結晶性の多孔質であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)などが挙げられる。ゼオライトは、このTO4ユニットが、複数個(数個~数十個)つながった構造単位(CBU)から成り立っている。そのために、規則的なチャンネル(管状細孔)とキャビティ(空洞)を有している。
二酸化炭素を吸着できるゼオライトの種類はFAU型を含めて数多く報告されている。
ゼオライトは、下記の性質を有すれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、GIS型が好ましい。
【0016】
実施形態に係るゼオライトは、二酸化炭素の吸着等温線、及びX線回折(XRD測定)結果について、以下の特徴を有する。
【0017】
<<二酸化炭素吸着等温線>>
ゼオライトの二酸化炭素吸着等温線とは、ゼオライトを一定温度にし、二酸化炭素の圧力と吸着量の変化を測定し、その結果を横軸に二酸化炭素の圧力、縦軸に二酸化炭素の吸着量としてプロットして作成したグラフである。即ち、圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果である。
【0018】
実施形態に係るゼオライトは、二酸化炭素吸着等温線を、横軸を圧力の自然対数、縦軸を二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフ上において、100kPa~400kPaに相当する領域の任意の2点を結んだ線の傾きが、57.9以上である。
【0019】
二酸化炭素吸着等温線(圧力と二酸化炭素の吸着量との変化)、及び圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果の横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量としたプロットは以下のような操作をして作成する。
ゼオライト0.1gを高圧試料管(Microtrac BEL株式会社製)に入れ、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORPMAXII、Microtrac BEL株式会社製)内に設置し、400℃、1.15×10-5kPa以下で4時間加熱真空脱気処理する。加熱真空脱気処理後、試料管を恒温循環水中に入れ、水槽温度を25±0.03℃に制御し、液化炭酸ガス(中・四国エア・ウォーター株式会社製、純度99.5vol%以上)を用いて絶対圧0.03kPa~900kPaまで測定する。この測定結果を、横軸を二酸化炭素の圧力、縦軸を二酸化炭素の吸着量においてプロットし、二酸化炭素の吸着等温線を作成する。なお、圧力変化が300秒間において0.1%以内となったときに飽和吸着量に達したものと判定する。
【0020】
得られた二酸化炭素の吸着等温線を、横軸を二酸化炭素の圧力の自然対数、縦軸を二酸化炭素の吸着量に換算してプロットする。このプロットにより得られた線において、100kPa~400kPaに相当する領域の任意の2点を結んだ線の傾きを計算する。
【0021】
<<X線回折(XRD)>>
本発明のゼオライトは、XRD測定において、2θ=12.37°~12.43°、及び26.60°~26.76°にピーク(X線回折ピーク)を有する。
【0022】
また、ゼオライトは、2θ=12.37°~12.43°のピークの高さをA、2θ=26.60°~26.76°のピークの高さをBとしたとき、B/Aが、0.03~0.09であることが好ましい。
【0023】
XRDの測定は、通常の粘土鉱物のXRD測定に用いられる測定であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0024】
XRDのピーク位置、及びB/Aの値は、後述するゼオライトの製造方法における原料の組成比、ゲルを調製する際の撹拌時間、水熱合成の条件を調節することにより、所定の位置にピークを有するゼオライトが得られる。
【0025】
ゼオライトの粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、体積平均一次粒径であれば、10nm~100μmが好ましく、20nm~50μmがより好ましい。
ゼオライトの体積平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子の観察によって測定することができる。
また、ゼオライトの体積平均二次粒径は、例えば、100nm~1mmが好ましく、500nm~500μmがより好ましい。
【0026】
<<ゼオライトの製造方法>>
本実施形態のゼオライトは、一般的なゼオライトの製造方法により製造することができる。一般的なゼオライトの製造方法は、スラリー調製工程、及び水熱合成工程を有する。
【0027】
<<<スラリー調製工程>>>
スラリーを調製する工程は、シリカ源、アルミニウム源、及びアルカリ金属源を混合して、スラリーを調製する工程である。
【0028】
シリカ源は、ゼオライトを構成するケイ素原子になる原料化合物である。シリカ源としては、例えば、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点から、水ガラスが好ましい。
【0029】
アルミニウム源は、ゼオライトを構成するアルミニウム原子になる原料化合物である。アルミニウム源は、例えば、擬ベーマイト、ギブサイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;水酸化アルミニウム;アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点から、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0030】
アルカリ金属源は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、Na、K、Li、Rbなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点から、Na、Kが好ましい。
【0031】
スラリーには、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属以外にも、本発明の効果を阻害しない限り、アルカリ土類金属を含む化合物、有機構造規定材(いわゆるテンプレート)、種晶などを含有してもよい。
スラリーにおけるケイ素原子/アルミニウム原子の比は、2.5~25.5が好ましく、4.5~6.5がより好ましい。
【0032】
スラリーは、シリカ源、アルミ源、及びアルカリ金属源、更に必要に応じてその他の成分を一段階又は多段階で混合することにより調製できる。
多段階で混合する際の順序は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。多段階で混合する際には、撹拌しながらでも撹拌せずに行ってもよい。
【0033】
撹拌方法は、一般的に使用される撹拌方法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、翼撹拌、振動撹拌、揺動撹拌、遠心式撹拌などが挙げられる。
【0034】
撹拌における回転速度は、一般的に用いられる撹拌速度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1rpm~2,000rpmが挙げられる。
【0035】
スラリーを調製する工程における温度は、一般的に用いられる温度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10℃~40℃が挙げられる。
【0036】
混合時間は、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、5分間~3時間が挙げられる。
【0037】
<<<水熱合成工程>>>
水熱合成工程は、上述のスラリーを高温高圧下に置く工程である。高温高圧下とは、溶媒が沸騰する温度、大気圧より高い圧力であることを意味し、具体的には、スラリーを耐圧容器内にて加熱し、ゼオライトの結晶を合成する工程である。
【0038】
水熱合成の温度は、一般的に用いられる温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、合成時間が短くなる点から80℃~145℃が好ましく、90℃~140℃がより好ましい。
なお、水熱合成の温度は一定でもよく、段階的に変化させてもよい。また、水熱合成は、スラリーを撹拌しながら行っても、静置により行ってもよい。
【0039】
水熱合成の時間は、一般的に用いられる時間であれば、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、3時間~30日間が好ましく、10時間~10日間がより好ましい。
【0040】
耐圧容器の形状、及び大きさは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できる。
【0041】
水熱合成工程の加熱方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、耐圧容器をヒーターで覆う方法、オイルバスでの加熱、高温槽での加熱、マイクロ波による加熱などが挙げられる。
【0042】
本実施形態のゼオライトは、スラリー調製工程、及び水熱合成工程以外にも、分離及び乾燥工程、焼成工程を有していてもよい。
【0043】
分離及び乾燥工程は、水熱合成工程後に、生成物である固体と水を含む液体とを分離し、乾燥する工程である。分離方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、濾過、デカンテーション、噴霧乾燥法(回転噴霧、ノズル噴霧及び超音波噴霧など)、回転蒸発器を用いた乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、又は自然乾燥法などが挙げられる。
分離工程により得られたゼオライトは、そのまま用いても、水、又は所定の溶剤で洗浄してもよい。
乾燥温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、20℃~150℃が挙げられる。
乾燥する際の雰囲気は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、空気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスなどが挙げられる。
【0044】
焼成工程は、ゼオライトを焼成する工程であり、有機構造規定剤を用いた場合に行うことが多い。
焼成温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、300℃~550℃が挙げられる。
焼成時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、30分間~3時間が挙げられる。
焼成する際の雰囲気は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、空気、窒素、アルゴンなどの不活性ガスなどが挙げられる。
【0045】
<その他の成分>
その他の成分は、通常の二酸化炭素吸着剤に含まれるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、上記の構造を有しないゼオライト、活性炭などが挙げられる。
【実施例0046】
次に、実施例により本願発明を説明するが、本願発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1~6、比較例1)
表1の配合に基づき、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)、アルミン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)、水ガラス3号(キシダ化学株式会社製)、及び蒸留水を10分間攪拌し、混合ゲルを調製した。得られた混合ゲルを、フッ素樹脂内筒を有するステンレス製オートクレーブ(容量:100mL)に入れ、表1に記載の条件により水熱合成を行った。水熱合成後、オートクレーブを水冷して冷却した後、内容物を濾過し、120℃にて乾燥させ、粉末状のゼオライトを得た。
【0048】
【表1】
【0049】
得られたゼオライトのXRD(X線回折)測定を行った。測定結果を図1A図1Gに示す。
【0050】
XRD測定は、CuKα線により、測定装置(SMART LAB、RIGAKU社製)を用い、以下の条件により行った。
管球電圧 40kV
管球電流 50mA
測定温度 25℃
測定範囲 5deg~90deg
単色化法 Kβフィルタあり
得られたデータを解析ソフト(PDXL2)により解析した。データ補正は、Si標準値に基づいた補正を行った。
【0051】
XRD測定の結果、2θ=12.37~12.43の間、及び2θ=26.60~26.76の間にピークを有するか否かについて、表2に示した。この角度にピークを有しているものが「〇」、有していないものを「×」と表記した。また、2θ=12.37~12.43の間のピーク高さをA、2θ=26.60~26.76の間のピーク高さをBとしたとき、Aの高さに対するBの高さの比(B/A)の値を表2に併記した。
【0052】
【表2】
【0053】
<二酸化炭素吸着能の評価>
得られたゼオライトについて、圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定することで、二酸化炭素の吸着等温線を作成した。結果を図2に示す。
【0054】
二酸化炭素吸着等温線は、次のようにして作成した。各ゼオライト0.1gを高圧試料管(Microtrac BEL株式会社製)に入れ、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORPMAXII、Microtrac BEL株式会社製)内に設置し、400℃、1.15×10-5kPa以下で4時間加熱真空脱気処理した。加熱真空脱気処理後、試料管を恒温循環水中に入れ、水槽温度を25±0.03℃に制御し、液化炭酸ガス(中・四国エア・ウォーター株式会社製、純度99.5vol%以上)を用いて絶対圧0.03kPa~900kPaまで測定した。なお、圧力変化が300秒間において0.1%以内となったときに飽和吸着量に達したものと判定した。
【0055】
図2から明らかなように、実施例1~3のゼオライトは、200kPa近傍において吸着量が急激に増加しているのに対し、比較例1のゼオライトは200kPa近傍において、吸着量の急激な増加がみられない。この結果は、実施例1~3のゼオライトが、従来のゼオライトに比べて高い圧力下でも優れた二酸化炭素吸着能があることを示している。
【0056】
実施例1~6、比較例1のゼオライトについて、圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸を二酸化炭素吸着量として換算した。換算した結果を図3A図3Gに示す。このグラフにおいて、100kPa~400kPaに相当する領域において、任意の2点を取り、傾きを算出した。この領域における各ゼオライトにおける傾きの最大値を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3の結果からも明らかなように、200kPa近傍において吸着量が急激に増加している実施例1~6は、傾きの最大値が57.9以上であるのに対し、200kPa近傍において吸着量が急激に増加していない比較例1の傾きの最大値は18.6であった。したがって、圧力と二酸化炭素の吸着量との変化を測定した結果を、横軸を自然対数に換算した圧力、縦軸に二酸化炭素の吸着量としてプロットしたグラフ上において、100kPa~400kPaに対応する領域の傾きが57.9以上であれば、従来のゼオライトに比べて高い圧力下でも優れた二酸化炭素吸着能があるゼオライトであることが明らかになった。このことは、実施例1~6のゼオライトが、エネルギー消費の多い真空ポンプ、高圧コンプレッサーなどを用いることなく、大気圧下において二酸化炭素を吸着できるため、従来品よりも低いエネルギーにより二酸化炭素を吸着できるゼオライトであり、優れた二酸化炭素吸着剤となることを示した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G