(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120677
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】LED封止用シート
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20240829BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240829BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240829BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240829BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240829BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240829BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240829BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240829BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L33/56
C09J7/38
C09J133/00
C09J133/06
C09J7/29
H01L23/30 F
B32B27/30 A
B32B27/00 M
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027658
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】沖田 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】越智 元気
(72)【発明者】
【氏名】野呂 弘司
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
4M109
5F142
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
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(57)【要約】
【課題】使用環境下においても、金属配線や側面電極のイオンマイグレーションが発生しにくく、耐久性に優れるミニ/マイクロLED表示装置を製造するのに適する封止用シート(LED封止用シート)を提供すること。
【解決手段】本発明のLED封止用シート10Aは、第1面1aおよび第2面1bを有する基材1と、基材1の第1面1aに粘着剤層2が積層された積層構造を有する。封止材層2は、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤を含む。前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、水酸基含有モノマーの割合は、10重量%以下である。封止材層2におけるカルボン酸系不純物の含有量は、0.5ppm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する基材と、前記基材の第1面に封止材層が積層された積層構造を有するLED封止用シートであって、
前記封止材層が、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤を含み、
前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、水酸基含有モノマーの割合は、10重量%以下であり、
前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量は、0.5ppm以下である、LED封止用シート。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1に記載のLED封止用シート。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、10重量%以上である、請求項2に記載のLED封止用シート。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、窒素原子含有モノマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シート。
【請求項5】
前記基材の第2面は、反射防止処理及び/又はアンチグレア処理されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シート。
【請求項6】
前記封止材層の100kHzでの初期誘電率ε0と、温度85℃、相対湿度85%の条件下で240時間投入後の100kHzでの誘電率ε1との差の絶対値Δε(|ε0-ε1|)は、1以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シート。
【請求項7】
可視光透過率が、90%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シート。
【請求項8】
ヘイズが、1%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シート。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のLED封止用シートと、LED表示パネルとが積層されたミニ/マイクロLED表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED封止用シートに関する。より詳細には、本発明は、ミニ/マイクロLED表示装置の封止に適するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代型の表示装置として、ミニ/マイクロLED表示装置(Mini/Micro Light Emitting Diode Display)が開発されている。ミニ/マイクロLED表示装置は、基本構成として、多数の微小なLEDチップ(光半導体素子)が高密度に配列された基板が表示パネルとして使用され、該LEDチップは封止材で封止され、最表層に樹脂フィルムやガラス板などのカバー部材が積層されるものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
ミニ/マイクロLED表示装置では、表示パネルの基板上に、LEDチップに電気を供給するための金属配線が配置されており、表示パネルの側面には、金属配線に電気を供給する電極(側面電極)が配置されている。金属配線や側面電極を形成する金属として、導電性に優れる銀や銅が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDチップを封止している封止材が使用環境下で吸湿すると、金属配線や側面電極を形成する陽極の金属が封止材に溶け出し、陰極に移動して再度金属が生成されるイオンマイグレーションが発生する場合がある。特に、銀や銅は封止材へのイオンマイグレーションを起こしやすく、イオンマイグレーションが発生すると、陽極が消失して接触抵抗値が上昇するため、応答性が低下して、画質が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、本発明の目的は、使用環境下においても、金属配線や側面電極のイオンマイグレーションが発生しにくく、耐久性に優れるミニ/マイクロLED表示装置を製造するのに適する封止用シート(LED封止用シート)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の側面は、第1面および第2面を有する基材と、前記基材の第1面に封止材層が積層された積層構造を有するLED封止用シートを提供する。本発明の第1の側面のLED封止用シートを「本発明のLED封止用シート」と称する場合がある。本発明のLED封止用シートは、ミニ/マイクロLED表示装置におけるカバー部材と封止材層を構成するものである。
【0008】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層はアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤を含む。この構成は、上記封止材層の特性(特に、後掲の透湿度、誘電率等)の調整、透明性、粘着性、耐候性、コスト、粘着剤の設計のしやすさの点より、好適である。
【0009】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、水酸基含有モノマーの割合は、10重量%以下である。アクリル系ポリマーが水酸基含有モノマーを多く含むと、水酸基は水との親和性が高いため、吸湿性が高くなる傾向がある。また、水酸基含有モノマーは製造される過程で、アクリル酸イオン等のカルボン酸系不純物が比較的多く混入するため、市販品には不純物として一定の割合でアクリル酸イオンが存在している。上記アクリル系ポリマーにおいて、水酸基含有モノマーの割合が10重量%以下であるという構成は、アクリル系ポリマーの吸湿性を低く制御すると共に、アクリル酸イオン等のカルボン酸系不純物の含有量を低減し、イオンマイグレーションの発生を抑制できる点で好ましい。
【0010】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量は、0.5ppm以下である。ミニ/マイクロLED表示装置において、封止材層に酸が含まれていると、陽極からの金属イオンの溶出が促進され、イオンマイグレーションが発生しやすくなる。前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量が0.5ppm以下であるという構成は、前記封止材層中の酸の含有量が低下して、イオンマイグレーションが抑制されるという点で、好適である。
【0011】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。この構成は、前記長鎖のアルキル基の作用により、低誘電率の封止材層を実現することができ、封止材層が誘電分極されにくくなり、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しにくくなるという点で、好適である。
【0012】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、10重量%以上であることが好ましい。この構成は、低誘電率の封止材層を実現することができ、封止材層が誘電分極されにくくなり、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しにくくなるという点で、好適である。
【0013】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、窒素原子含有モノマーを含むことが好ましい。この構成は、前記封止材層の各種特性(特に、後掲の透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性向上、接着信頼性、紫外線吸収剤等の各種添加剤との相溶性、透明性の点より、好適である。
【0014】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記基材の第2面は、反射防止処理及び/又はアンチグレア処理されていることが好ましい。前記基材の第2面が反射防止処理及び/又はアンチグレア処理されているという構成は、ミニ/マイクロLED表示装置の基板上に配置された金属配線による反射を防止できる点で好ましい。
【0015】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層の100kHzでの初期誘電率ε0と、温度85℃、相対湿度85%の条件下で240時間投入後の100kHzでの誘電率ε1との差の絶対値Δε(|ε0-ε1|)は、1以下であることが好ましい。封止材層が分極すると、水分子が引き寄せられ、吸湿しやすくなる。前記Δεが1以下であるという構成は、ミニ/マイクロLED表示装置が、加湿熱環境下でも、封止材層が誘電分極されにくく、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しない安定した性能を実現できるという点で、好適である。
【0016】
本発明のLED封止用シートの可視光透過率は、90%以上であることが好ましい。本発明のLED封止用シートの可視光透過率が90%以上であるという構成は、LED表示装置における優れた透明性や優れた外観が得られる点で、好ましい。
【0017】
本発明のLED封止用シートのヘイズは、1%以下であることが好ましい。本発明のLED封止用シートのヘイズが1%以下であるという構成は、LED表示装置における優れた透明性や優れた外観が得られる点で好ましい。
【0018】
また、本発明の第2の側面は、本発明のLED封止用シートと、LED表示パネルとが積層されたミニ/マイクロLED表示装置を提供する。本発明の第2の側面のミニ/マイクロLED表示装置を「本発明のLED表示装置」と称する場合がある。本発明のLED表示装置は、本発明のLED封止用シートを積層構造中に有するため、使用環境下においてもイオンマイグレーションの発生を抑制できる。従って、本発明のLED表示装置は、使用環境下において、良好な画質を維持でき、耐久性が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のLED封止用シートを、ミニ/マイクロLED表示装置の製造に使用することにより、使用環境下においてもイオンマイグレーションの発生を抑制できる。本発明のLED封止用シートを使用して製造される本発明のLED表示装置は、使用環境下において、良好な画質を維持でき、耐久性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明のLED封止用シートの一実施形態を示す模式図(断面図)である。
【
図2】
図2は、本発明のLED封止用シートの他の一実施形態を示す模式図(断面図)である。
【
図3】
図3は、
図2のLED封止用シートが積層された本発明のLED表示装置の一実施形態を示す模式図(断面図)である。
【
図4】
図4は、
図2のLED封止用シートが積層された本発明のLED表示装置の他の一実施形態を示す模式図(断面図)である。
【
図5】
図5は、マイグレーション試験の手順を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の側面は、第1面および第2面を有する基材と、前記基材の第1面に封止材層が積層された積層構造を有するLED封止用シート(本発明のLED封止用シート)を提供する。本発明のLED封止用シートを構成する前記基材及び封止材層を、本明細書において、それぞれ、「本発明の基材」及び「本発明の封止材層」と称する場合がある。また、「シート」には、「テープ」の意味を含むものとする。すなわち、本発明のLED封止用シートは、テープ状の形態を有するLED封止用テープであってもよい。
【0022】
本発明の第2の側面は、本発明のLED封止用シートと、LED表示パネルとが積層されたミニ/マイクロLED表示装置(本発明のLED表示装置)を提供する。
【0023】
以下、本発明のLED封止用シートの実施形態を図に関連して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例示に過ぎない。
図1は、本発明のLED封止用シートの一実施態様を示す模式図(断面図)である。
図1において、LED封止用シート10Aは、基材1と、封止材層2とが積層された積層構造を有する。基材1は、第1面1aおよび第2面1bを有し、基材1の第1面1aに封止材層2が積層されている。
【0024】
図2において、LED封止用シート10Bは、基材1と、封止材層2とが積層された積層構造を有する。基材1は、第1面1aおよび第2面1bを有し、基材1の第1面1aに封止材層2が積層されている。基材1の第2面1bは、反射防止処理及び/又はアンチグレア処理3が施されている。
以下、各構成について説明する。
【0025】
<LED封止用シート>
本発明のLED封止用シートにおける「LED封止用」とは、LED表示パネルを構成する部材の少なくとも一部を封止するために用いられることを意味し、具体的には、基板、LEDチップ、金属配線層、側面電極等の少なくとも一部の表面を封止していればよい。例えば、基板、LEDチップ、金属配線層、及び側面電極の全てを封止していてもよく、LEDチップ、及び金属配線層のみを封止していてもよく、側面電極のみを封止していてもよい。
【0026】
本発明のLED封止用シートは、本発明の基材の第1面に本発明の封止材層が積層されている限り、その形態は特に限定されない。例えば、片面のみに封止材層が積層していてもよく、両面に封止材層が積層していてもよい。また、本発明の基材の両面に封止材層が積層している場合、両方の封止材層が本発明の封止材層であってもよいし、一方の封止材層が本発明の封止材層であり、他方の封止材層が本発明の封止材層以外の封止材層(その他の封止材層)であってもよい。本発明のLED封止用シートがミニ/マイクロLED表示装置の最表面を構成する場合は片面のみに本発明の封止材層が形成される形態が好ましい。
【0027】
本発明のLED封止用シートは、本発明の基材、本発明の封止材層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層、例えば、本発明の基材以外の基材、本発明の封止材層以外の封止材層、中間層、下塗り層、帯電防止層、はく離ライナー、表面保護フィルムなどを、表面又は任意の層間に有していてもよい。
【0028】
本発明のLED封止用シートの可視光透過率は、特に限定されないが、90%以上が好ましい。本発明のLED封止用シートの可視光透過率が90%以上であるという構成は、本発明のLED表示装置における優れた透明性や優れた外観が得られる点で好ましく、より好ましくは92%以上であり、95%以上であってもよい。本発明のLED封止用シートの可視光透過率の上限は、特に限定されないが、99%以下であってもよい。
【0029】
本発明のLED封止用シートの可視光透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。本発明のLED封止用シートの可視光透過率は、本発明の基材を構成する樹脂の種類や厚さ、本発明の封止材層を構成する樹脂の種類や厚さ、基材表面に反射防止処理及び/又はアンチグレア処理を施すことなどにより調整することができる。
【0030】
本発明のLED封止用シートのヘイズは、特に限定されないが、1%以下が好ましい。本発明のLED封止用シートのヘイズが1%以下であるという構成は、本発明のLED表示装置における優れた透明性や優れた外観が得られる点で好ましく、より好ましくは0.9%以下であり、0.8%以下であってもよい。本発明のLED封止用シートのヘイズの下限は、特に限定されないが、本発明のLED表示装置の視認性の観点から、0.1%程度であってもよい。
【0031】
本発明のLED封止用シートのヘイズは、JIS K 7136に準拠して測定することができる。本発明のLED封止用シートのヘイズは、本発明の基材を構成する樹脂の種類や厚さ、本発明の封止材層を構成する樹脂の種類や厚さ、基材表面に反射防止処理及び/又はアンチグレア処理を施すことなどにより調整することができる。
【0032】
本発明のLED封止用シートの厚みは、特に制限されないが、例えば、寸法安定性、強度、取り扱い性などの作業性、薄層性などの点を考慮すると、10~500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20~300μmの範囲であり、最適には、30~200μmの範囲である。
【0033】
<基材>
本発明の基材は、第1面と第2面を有するフィルム状(基板状)の形態を有するものである。本発明の基材を構成する素材としては、ガラスやプラスチックフィルム等があげられる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー(COP)(例えば、商品名「アートン」(JSR(株)製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン(株)製)等)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、透明ポリイミド(CPI)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのプラスチック材料が挙げられ、寸法安定性に優れ、収縮しにくいポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、透明ポリイミド(CPI)が好ましい。なお、これらのプラスチック材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の基材は、本発明のLED封止用シートを被着体(LED表示パネル等)に貼付する際に、封止材層とともに被着体に貼付される部分である。本発明のLED封止用シートの使用時(貼付時)に剥離されるはく離ライナーは「基材」には含まない。
【0034】
本発明の基材は、本発明のLED表示装置を構成する光学部材であれば、特に限定されず、カバー部材、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられ、好ましくはカバー部材として用いられる。本発明の基材がカバー部材である場合には、第2面が、本発明のLED表示装置の最表面となる。
【0035】
本発明の基材のガラス転移点(Tg)は、特に限定されないが、60℃以上であることが好ましい。本発明の基材のガラス転移点が60℃以上であるという構成は、使用環境下での本発明のLED表示装置の機械的物性が安定する点で好ましい。本発明のLED表示装置の機械的物性の安定性の観点から前記基材のガラス転移点は63℃以上、又は65℃以上であってもよい。また、前記基材のガラス転移点の上限値は特に限定されないが、基材の成形プロセスが簡便化できる点で、前記基材のガラス転移点は、350℃以下が好ましく、250℃以下、200℃以下、140℃以下、130℃以下、又は125℃以下であってもよい。
【0036】
本発明の基材のガラス転移点(Tg)は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。本発明の基材のガラス転移点(Tg)は、本発明の基材を構成する樹脂の種類などにより調整することができる。
【0037】
本発明の基材のヘイズは、特に限定されないが、1%以下が好ましい。本発明の基材のヘイズが1%以下であるという構成は、本発明のLED表示装置における優れた透明性や優れた外観が得られる点で好ましく、より好ましくは0.9%以下であり、0.8%以下であってもよい。本発明の基材のヘイズの下限は、特に限定されないが、本発明のLED表示装置の視認性の観点から、0.1%程度であってもよい。
【0038】
本発明の基材のヘイズは、JIS K 7136に準拠して測定することができる。本発明の基材のヘイズは、本発明の基材を構成する樹脂の種類や厚さ、基材表面に反射防止処理及び/又はアンチグレア処理を施すことなどにより調整することができる。
【0039】
本発明の基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、寸法安定性、強度、取り扱い性などの作業性、薄層性などの点を考慮すると、10~500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20~300μmの範囲であり、最適には、30~200μmの範囲である。本発明の基材の屈折率は、特に制限されないが、例えば、1.30~1.80の範囲であり、好ましくは、1.40~1.70の範囲である。
【0040】
本発明の基材の第2面は、反射表面処理及び/又はアンチグレア処理が施されていることが好ましい。本発明の基材の第2面に反射表面処理及び/又はアンチグレア処理が施されているという構成は、本発明のLED表示装置の基板上に配置された金属配線による反射を防止できる点で好ましい。
【0041】
前記反射防止処理としては、公知の反射防止処理を特に限定なく使用することができ、例えば、アンチリフレクション(AR)処理が挙げられる。
【0042】
前記アンチリフレクション(AR)処理としては、公知のAR処理を特に制限なく適用することができ、具体的には、本発明の基材の第2面上に厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層した反射防止層(AR層)を形成することにより実施することができる。前記AR層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380~780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450~650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするようにAR層を設計することが好ましい。
【0043】
前記AR層としては、一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層が挙げられ、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、AR層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0044】
また、前記AR層は、反射防止層形成用塗工液により形成することもできる。前記反射防止層形成用塗工液は、例えば、樹脂、フッ素元素含有添加剤、中空粒子、中実粒子および希釈溶媒等を含んでいてもよく、例えば、これらを混合して製造できる。
【0045】
前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0046】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、本発明の基材の第2面の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記樹脂は、硬化前の重量平均分子量が、例えば、100以上、300以上、500以上、1,000以上、または2,000以上であってもよく、100,000以下、70,000以下、50,000以下、30,000以下、または10,000以下であってもよい。前記硬化前の重量平均分子量が高ければ、硬度は低下するが、屈曲させた際に割れが起こり難くなる傾向がある。一方、前記硬化前の重量平均分子量が低ければ、分子間架橋密度が向上し、硬度が高くなる傾向がある。
【0048】
前記樹脂としては、多官能アクリレート(例えば、ペンタスリトールトリアクリレート)を含むことが好ましい。
【0049】
前記硬化型樹脂の硬化のために、例えば、硬化剤を添加してもよい。前記硬化剤は、特に限定されず、例えば、公知の重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等)を適宜用いることができる。前記硬化剤の添加量は特に限定されないが、前記反射防止層形成用塗工液中の前記樹脂100重量部に対し、例えば、0.5重量部以上、1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、または2.5重量部以上であってもよく、15重量部以下、13重量部以下、10重量部以下、7重量部以下、または5重量部以下であってもよい。
【0050】
前記フッ素元素含有添加剤は、特に限定されないが、例えば、分子中にフッ素を含む有機化合物または無機化合物であってもよい。前記有機化合物は、特に限定されないが、例えば、フッ素含有防汚コーティング剤、フッ素含有アクリル化合物、フッ素およびケイ素含有アクリル化合物等があげられる。前記有機化合物は、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KY-1203」、DIC株式会社製の商品名「メガファック」等があげられる。前記無機化合物も、特に限定されない。前記フッ素元素含有添加剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、前記反射防止層形成用塗工液中の固形分全体の重量に対し、前記固形分中のフッ素元素の重量が、例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、または0.25重量%以上であってもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下であってもよい。また、例えば、前記反射防止層形成用塗工液中の前記樹脂100重量部に対し、前記フッ素元素含有添加剤の重量が、例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、または0.25重量%以上であってもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下であってもよい。
【0051】
前記中空粒子は、特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、アクリル粒子、アクリル-スチレン共重合粒子等であってもよい。前記シリカ粒子は、例えば、日揮触媒化成工業株式会社製の商品名「スルーリア5320」、「スルーリア4320」等があげられる。前記中空粒子の重量平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、または70nm以上であってもよく、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、または110nm以下であってもよい。前記中空粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。前記中空粒子を添加することで、例えば、前記反射防止層の低屈折率、良好な反射防止特性等を実現できる。前記中空粒子の添加量は特に限定されないが、前記反射防止層形成用塗工液中の前記樹脂100重量部に対し、例えば、30重量部以上、50重量部以上、70重量部以上、90重量部以上、または100重量部以上であってもよく、300重量部以下、270重量部以下、250重量部以下、200重量部以下、または180重量部以下であってもよい。反射防止層の低屈折率化の観点からは、前記中空粒子の添加量が少なすぎないことが好ましく、反射防止層の機械特性確保の観点からは、前記中空粒子の添加量が多すぎないことが好ましい。
【0052】
前記中実粒子は、特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、酸化ジルコニウム粒子、チタン含有粒子(例えば、酸化チタン粒子)等であってもよい。前記シリカ粒子は、例えば、日産化学工業株式会社製の商品名「MEK-2140Z-AC」、「MIBK-ST」、「IPA-ST」等があげられる。前記中実粒子の重量平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、または25nm以上であってもよく、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、または100nm以下であってもよい。前記中実粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。前記中実粒子を添加することで、例えば、前記フッ素元素含有添加剤が、塗工した前記反射防止層形成用塗工液の表面に偏在しやすくなり、反射防止層の耐擦傷性に優れ、低屈折率、良好な反射防止特性等を実現できる。前記中実粒子の添加量は特に限定されないが、前記反射防止層形成用塗工液中の前記樹脂100重量部に対し、例えば、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、または25重量部以上であってもよく、150重量部以下、120重量部以下、重量部以下、100重量部以下、または80重量部以下であってもよい。
【0053】
前記希釈溶媒は、例えば、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含む混合溶媒でもよい。この場合の混合比率は特に限定されないが、MIBKの重量を100重量%とした場合、PMAの重量が、例えば、20重量%以上、50重量%以上、100重量%以上、150重量%以上、または200重量%以上であってもよく、400重量%以下、350重量%以下、300重量%以下、または250重量%以下であってもよい。
【0054】
前記希釈溶媒は、例えば、MIBKおよびPMAに加え、さらにTBA(ターシャリーブチルアルコール)を含む混合溶媒でもよい。この場合の混合比率は特に限定されないが、MIBKの重量を100重量%とした場合、PMAの重量が、例えば、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、または100重量%以上であってもよく、200重量%以下、180重量%以下、150重量%以下、130重量%以下、または110重量%以下であってもよい。また、MIBKの重量を100重量%とした場合、TBAの重量が、例えば、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、または100重量%以上であってもよく、200重量%以下、180重量%以下、150重量%以下、130重量%以下、または110重量%以下であってもよい。
【0055】
前記希釈溶媒の添加量も特に限定されないが、例えば、反射防止層形成用塗工液全体の重量に対する固形分の重量が、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、または1.5重量%以上となるようにしてもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下となるようにしてもよい。塗工性確保(ヌレ、レベリング)の観点からは、前記固形分の含有率が高すぎないことが好ましく、風乾ムラ、白化など乾燥起因の外観不良防止の観点からは、前記固形分の含有率が低すぎないことが好ましい。
【0056】
つぎに、本発明の基材の第2面の上に、前記反射防止層形成用塗工液を塗工する(前記塗工工程)。塗工方法は特に限定されず、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の公知の塗工方法を適宜用いることができる。前記反射防止層形成用塗工液の塗工量も特に限定されないが、形成される前記反射防止層の厚みが、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、または2.0μm以上となるようにしてもよく、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下となるようにしてもよい。
【0057】
つぎに、塗工した前記反射防止層形成用塗工液を乾燥させて塗膜を形成する(前記塗膜形成工程)。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0058】
さらに、前記塗膜を硬化させてもよい(硬化工程)。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。前記紫外線硬化におけるエネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される反射防止層の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される反射防止層の着色を防止することができる。
【0059】
前記アンチグレア(AG)処理としては、公知のAG処理を特に制限なく適用することができ、例えば、本発明の基材の第2面上にアンチグレア層を形成することにより実施することができる。前記アンチグレア層としては、公知のものを制限なく採用することができ、一般的に、樹脂中にアンチグレア剤として無機又は有機の粒子を分散した層として形成される。
【0060】
前記アンチグレア層としては、特に限定されないが、例えば、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含むアンチグレア層形成材料を用いて形成されており、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記アンチグレア層の表面に凸状部が形成される。当該構成により、アンチグレア層は、アンチグレア性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、粒子の凝集を利用してアンチグレア層を形成しているにもかかわらず、外観欠点となるアンチグレア層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させることができる。
【0061】
前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0062】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、前記アンチグレア層の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
前記樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂を含むことが好ましく、硬化型ウレタンアクリレート樹脂および多官能アクリレート(例えば、ペンタスリトールトリアクリレート)の共重合物であることがより好ましい。
【0065】
前記アンチグレア層を形成するための粒子は、形成されるアンチグレア層の表面を凹凸形状にしてアンチグレア性を付与し、また、アンチグレア層のヘイズ値を制御することを主な機能とする。アンチグレア層のヘイズ値は、前記粒子と前記樹脂との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記粒子としては、例えば、無機粒子と有機粒子とがある。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化ジルコニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0066】
前記粒子の重量平均粒径(D)は、2.5~10μmの範囲内にあることが好ましい。前記粒子の重量平均粒径を、前記範囲とすることで、例えば、よりアンチグレア性に優れ、かつ白ボケが防止できる。前記粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、3~7μmの範囲内である。なお、前記粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、粒子が前記細孔を通過する際の粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出する。
【0067】
前記粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。
【0068】
前記アンチグレア層における前記粒子の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.2~12重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.5~12重量部の範囲であり、さらに好ましくは1~7重量部の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、よりアンチグレア性に優れ、かつ白ボケが防止できる。
【0069】
前記アンチグレア層は、チキソトロピー付与剤を含んでいてもよい。前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の凝集状態の制御を容易に行うことができる。前記アンチグレア層を形成するためのチキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレア等があげられる。
【0070】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した粘土であることが好ましい。有機粘土としては、例えば、層状有機粘土をあげることができる。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME-100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル(株)製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN-400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも(株)ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業(株)製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0071】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200-20(商品名、楠本化成(株)製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学(株)製)等があげられる。
【0072】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0073】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0074】
前記凸状部の前記アンチグレア層の粗さ平均線からの高さが、アンチグレア層の厚みの0.4倍未満であることが好ましい。より好ましくは、0.01倍以上0.4倍未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.01倍以上0.3倍未満の範囲である。この範囲であれば、前記凸状部に外観欠点となる突起物が形成されることを好適に防止できる。前記アンチグレア層は、このような高さの凸状部を有することで、外観欠点を生じにくくすることができる。ここで、前記平均線からの高さは、例えば、特開2017-138620号公報に記載の方法により測定することができる。
【0075】
前記アンチグレア層における前記チキソトロピー付与剤の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.1~5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.2~4重量部の範囲である。
【0076】
前記アンチグレア層の厚み(d)は、特に制限されないが、3~12μmの範囲内にあることが好ましい。アンチグレア層の厚み(d)を、前記範囲とすることで、例えば、本発明のLED封止用シートのカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記粒子の重量平均粒径(D)は、前述のように、2.5~10μmの範囲内にあることが好ましい。前記アンチグレア層の厚み(d)と、前記粒子の重量平均粒径(D)とが、前述の組み合わせであることで、さらにアンチグレア性に優れるものとすることができる。前記アンチグレア層の厚み(d)は、より好ましくは、3~8μmの範囲内である。
【0077】
前記アンチグレア層の厚み(d)と前記粒子の重量平均粒径(D)との関係は、0.3≦D/d≦0.9の範囲内にあることが好ましい。このような関係にあることにより、よりアンチグレア性に優れ、かつ白ボケが防止でき、さらに、外観欠点のないアンチグレア層とすることができる。
【0078】
本発明のLED封止用シートでは、前述のように、前記アンチグレア層は、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記アンチグレア層の表面に凸状部を形成する。前記凸状部を形成する凝集部においては、前記粒子が、前記アンチグレア層の面方向に、複数集まった状態で存在する。これにより、前記凸状部が、なだらかな形状となっている。前記アンチグレア層は、このような形状の凸状部を有することで、アンチグレア性を維持しつつ、かつ、白ボケを防止することができ、さらに、外観欠点を生じにくくすることができる。
【0079】
前記アンチグレア層の表面形状は、アンチグレア層形成材料に含まれる粒子の凝集状態を制御することで、任意に設計することができる。前記粒子の凝集状態は、例えば、前記粒子の材質(例えば、粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。ここで、前記アンチグレア層形成材料に含まれるチキソトロピー付与剤により、前記粒子の凝集状態をコントロールすることができる。この結果、前記粒子の凝集状態を前述のようにすることができ、前記凸状部を、なだらかな形状とすることができる。
【0080】
本発明のLED封止用シートにおいて、本発明の基材が樹脂等から形成されている場合、本発明の基材と前記アンチグレア層との界面において、浸透層を有していることが好ましい。前記浸透層は、前記アンチグレア層の形成材料に含まれる樹脂成分が、本発明の基材に浸透して形成される。浸透層が形成されると、本発明の基材と前記アンチグレア層との密着性を向上させることができ、好ましい。前記浸透層は、厚みが0.2~3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5~2μmの範囲である。例えば、本発明の基材がポリエステル系樹脂であり、前記アンチグレア層に含まれる樹脂がアクリル樹脂である場合には、前記浸透層を形成させることができる。前記浸透層は、例えば、本発明のLED封止用シートの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
【0081】
このような浸透層を有する本発明のLED封止用シートに適用した場合であっても、アンチグレア性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を容易に形成することができる。前記浸透層は、前記アンチグレア層との密着性が乏しい基材であるほど、密着性の向上のため、厚く形成することが好ましい。
【0082】
前記アンチグレア層において、最大径が200μm以上の外観欠点がアンチグレア層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。より好ましくは、前記外観欠点が無いことである。
【0083】
前記アンチグレア層表面の凹凸形状において、平均傾斜角θa(°)が0.1~5.0の範囲であることが好ましく、0.3~4.5の範囲であることがより好ましく、1.0~4.0の範囲であることがさらに好ましく、1.6~4.0であることが特に好ましい。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、特開2017-138620に記載の方法により測定される値である。
平均傾斜角θa=tan-1Δa (1)
【0084】
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
【0085】
θaが、上記範囲にあると、よりアンチグレア性に優れ、かつ白ボケが防止できる。
【0086】
前記アンチグレア層を形成するにあたり、調製したアンチグレア層形成材料(塗工液)がチキソ性を示していることが好ましく、下記で規定されるTi値が、1.3~3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.3~2.8の範囲である。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0087】
Ti値が、1.3未満であると、外観欠点が生じやすくなり、アンチグレア性、白ボケについての特性が悪化する。また、Ti値が、3.5を超えると、前記粒子が凝集しにくく分散状態となりやすくなる。
【0088】
前記アンチグレア層の製造方法は、特に制限されず、いかなる方法で製造されてもよいが、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および溶媒を含むアンチグレア層形成材料(塗工液)を準備し、前記アンチグレア層形成材料(塗工液)を本発明の基材の第2面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させてアンチグレア層を形成することにより、製造できる。金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
【0089】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて最適な溶媒種類や溶媒比率が存在する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。
【0090】
本発明の基材として、例えば、ポリエステル系樹脂を採用して浸透層を形成する場合は、ポリエステル系樹脂に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
【0091】
前記溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤によるアンチグレア層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0092】
前記アンチグレア層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。前記アンチグレア層の表面に防汚性が求められる場合、または、反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層がアンチグレア層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。このため、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0093】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01~5重量部の範囲である。
【0094】
前記アンチグレア層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0095】
前記アンチグレア層形成材料には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0096】
前記アンチグレア層形成材料を本発明の基材の第2面上に塗工する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0097】
前記アンチグレア層形成材料を塗工して本発明の基材の上に塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させる。前記硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0098】
前記アンチグレア層形成材料の塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化がより十分となり、形成されるアンチグレア層の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm2以下であれば、形成されるアンチグレア層の着色を防止することができる。
【0099】
以上のようにして、本発明の基材の第2面に、前記アンチグレア層を形成することができる。なお、前述の方法以外の製造方法でアンチグレア層を形成してもよい。前記アンチグレア層の硬度は、鉛筆硬度において、層の厚みにも影響されるが、2H以上の硬度を有することが好ましい。
【0100】
前記アンチグレア層は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0101】
前記アンチグレア層の上に、上述のAR層(低屈折率層)を配置してもよい。例えば、LED表示パネルに本発明のLED封止用シートを装着した場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気とアンチグレア層界面での光の反射があげられる。AR層は、その表面反射を低減させるものである。なお、前記アンチグレア層および反射防止層は、それぞれ、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0102】
また、汚染物の付着防止および付着した汚染物の除去容易性の向上のために、フッ素基含有のシラン系化合物若しくはフッ素基含有の有機化合物等から形成される汚染防止層を前記反射防止層及び/又はアンチグレア層上に積層することが好ましい。
【0103】
本発明の基材および前記アンチグレア層の少なくとも一方に対し表面処理を行うことが好ましい。本発明の基材の表面を表面処理すれば、前記アンチグレア層との密着性がさらに向上する。また、前記アンチグレア層の表面を表面処理すれば、前記AR層との密着性がさらに向上する。
【0104】
本発明の基材のカール発生を防止するために、前記アンチグレア層の他方の面に対し溶剤処理を行ってもよい。また、カール発生を防止するために、前記アンチグレア層の他方の面に透明樹脂層を形成してもよい。
【0105】
<封止材層>
本発明のLED封止用シートにおいて、厚さ50μm、温度40℃、相対湿度92%、24時間の条件下における前記封止材層の透湿度は、1000g/m2・24時間以下であることが好ましい。ミニ/マイクロLED表示装置において、使用環境下で封止材層が吸湿すると、陰極側で水が電気分解されて水酸化物イオンが生成する。生成した水酸化物イオンは、陽極に移動し、陽極を構成する金属と反応して、金属イオンが溶け出して、イオンマイグレーションが発生しやすくなる。前記封止材層の前記透湿度が1000g/m2・24時間以下であるという構成は、ミニ/マイクロLED表示装置の使用環境における前記封止材層への吸湿を抑制し、イオンマイグレーションが抑制されるという点で、好適である。
【0106】
ミニ/マイクロLED表示装置の使用環境における前記封止材層への吸湿を抑制し、イオンマイグレーションがより一層抑制されるという点で、前記封止材層の前記透湿度は、900g/m2・24時間以下が好ましく、より好ましくは800g/m2・24時間以下、さらに好ましくは700g/m2・24時間以下である。前記封止材層の前記透湿度の下限値は、特に限定されないが、封止材層中の水分を外部に逃がし得るという点で、10g/m2・24時間以上であってもよい。
【0107】
前記封止材層の前記透湿度は、後掲の実施例に記載の方法により測定することができ、封止材層を形成するための組成物の組成(例えば、ベースポリマーの種類や分子量、使用量、モノマー組成、官能基の種類及び量、架橋剤の種類及び量)や硬化条件(加熱条件、放射線照射条件)等により調整することができる。
【0108】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量は、0.5ppm以下であることが好ましい。ミニ/マイクロLED表示装置において、封止材層に酸が含まれていると、陽極からの金属イオンの溶出が促進され、イオンマイグレーションが発生しやすくなる。前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量が0.5ppm以下であるという構成は、前記封止材層中の酸の含有量が低下して、イオンマイグレーションが抑制されるという点で、好適である。
【0109】
前記カルボン酸系不純物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマーが挙げられる、また、上記カルボン酸系不純物には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマーも含まれるものとする。前記封止材層中の酸の含有量が低下して、イオンマイグレーションがより一層抑制されるという観点から、前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量は、好ましくは0.4ppm以下、より好ましくは0.3ppm以下、さらに好ましくは0.2ppm以下である。前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量の下限値は、特に限定されず少ないほど好ましいが、0.01ppm程度含まれていてもよい。本発明の封止材層がカルボン酸系不純物を2種以上含む場合は、その合計の含有量とする。
【0110】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層におけるハロゲン化物イオン、及び硫化物イオンの合計含有量は、1ppm以下であることが好ましい。前記封止材層におけるハロゲン化物イオン、及び硫化物イオンの合計含有量が1ppm以下であるという構成は、前記封止材層中の酸の含有量が低下して、イオンマイグレーションが抑制されるという点で、好適である。
【0111】
前記ハロゲン化物イオンとしては、ハロゲン原子のイオンであり、例えば、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)及びヨウ化物イオン(I-)が挙げられる。前記硫化物イオンとしては、硫酸イオン(SO4
2-)、硫酸水素イオン(HSO4
-)、亜硫酸イオン(SO3
2-)、亜硫酸水素イオン(HSO3
-)、硫化水素イオン(HS-)等が挙げられる。前記封止材層中の酸の含有量が低下して、イオンマイグレーションがより一層抑制されるという観点から、前記封止材層におけるハロゲン化物イオン及び硫化物イオンの合計含有量は、好ましくは0.5ppm以下、より好ましくは0.4ppm以下、さらに好ましくは0.3ppm以下である。前記封止材層におけるハロゲン化物イオン及び硫化物イオンの合計含有量の下限値は、特に限定されず少ないほど好ましいが、0.01ppm程度含まれていてもよい。本発明の封止材層がハロゲン化物イオン、硫化物イオンを2種以上含む場合は、その合計の含有量とする。
【0112】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層における窒素含有カチオン系不純物の含有量は、0を超えて10ppm以下であることが好ましい。ミニ/マイクロLED表示装置において、封止材層に塩基が含まれていると、陰極における水の電気分解が促進され、イオンマイグレーションが発生しやすくなる。前記封止材層における窒素含有カチオン系不純物の含有量が0を超えて10ppm以下であるという構成は、前記封止材層中の塩基の含有量が低下して、イオンマイグレーションが抑制されるという点で、好適である。
【0113】
前記窒素含有カチオン系不純物としては、例えば、2-ピロリドン、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン等が挙げられる。前記封止材層中の塩基の含有量が低下して、イオンマイグレーションがより一層抑制されるという観点から、前記封止材層における窒素含有カチオン系不純物の含有量は、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。前記封止材層における窒素含有カチオン系不純物の含有量の下限値は、特に限定されず少ないほど好ましいが、0.001ppm程度含まれていてもよい。本発明の封止材層が窒素含有カチオン系不純物を2種以上含む場合は、その合計の含有量とする。
【0114】
前記封止材層に含まれるカルボン酸系不純物の含有量、ハロゲン化物イオン及び硫化物イオンの合計含有量、及び窒素含有カチオン系不純物の含有量は、それぞれ、後掲の実施例に記載の方法により測定することができ、封止材層を形成するための組成物の組成(例えば、ベースポリマーの種類や分子量、使用量、モノマー組成、官能基の種類及び量、架橋剤の種類及び量)等により調整することができる。
【0115】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層の100kHzでの初期誘電率ε0は、3.5以下であることが好ましい。封止材層が分極すると、水分子が引き寄せられ、吸湿しやすくなる。前記誘電率ε0が3.5以下であるという構成は、封止材層が誘電分極されにくくなり、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しにくくなるという点で、好適である。イオンマイグレーションがより一層発生しにくくなるという点で、前記誘電率ε0は、3.4以下がより好ましく、3.3以下がさらに好ましい。前記誘電率ε0の下限値は、特に限定はなく、低いほど好ましいが、1.1程度であってもよい。
【0116】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層の初期誘電率ε0と、温度85℃、相対湿度85%の条件下で240時間投入後の誘電率ε1との差の絶対値Δε(|ε0-ε1|)は、1以下であることが好ましい。前記Δεが1以下であるという構成は、ミニ/マイクロLED表示装置が、加湿熱環境下でも、封止材層が誘電分極されにくく、イオンマイグレーションが発生しない安定した性能を実現できるという点で、好適である。加湿熱環境下でも、封止材層が誘電分極されにくく、イオンマイグレーションが発生しないより安定した性能を実現できるという点で、前記Δεは、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。前記Δεの下限値は、特に限定はなく、低いほど好ましいが、0.1程度であってもよい。
【0117】
本発明のLED封止用シートにおいて、前記封止材層の温度85℃、相対湿度85%の条件下で240時間投入後の100kHzでの誘電率ε1は、3以下であることが好ましい。前記誘電率ε1が3以下であるという構成は、ミニ/マイクロLED表示装置が、加湿熱環境下でも、封止材層が誘電分極されにくく、イオンマイグレーションが発生しない安定した性能を実現できるという点で、好適である。加湿熱環境下でも、封止材層が誘電分極されにくく、イオンマイグレーションが発生しないより安定した性能を実現できるという点で、前記誘電率ε1は、2.9以下がより好ましく、2.8以下がさらに好ましい。前記誘電率ε1の下限値は、特に限定はなく、低いほど好ましいが、1.1程度であってもよい。
【0118】
前記誘電率ε0、誘電率ε1、それらの差の絶対値Δε(|ε0-ε1|)は、後掲の実施例に記載の方法により測定することができ、封止材層を形成するための組成物の組成(例えば、ベースポリマーの種類や分子量、使用量、モノマー組成、官能基の種類及び量、架橋剤の種類及び量)や硬化条件(加熱条件、放射線照射条件)等により調整することができる。
【0119】
本発明の封止材層のガラス転移点(Tg)は-10℃以下であることが好ましい。本発明の封止材層のTgが-10℃以下であるという構成は、低温環境下でも前記封止材層の応力緩和性が維持され、本発明のLED表示装置の使用環境下における収縮又は膨張に前記封止材層が十分に追従し、浮きや剥がれを抑制でき、被着体との密着性を十分に確保できる点で好ましい。本発明のLED表示装置における浮きや剥がれを抑制し、被着体との良好な密着性の点で、本発明の封止材層のガラス転移点は-15℃以下が好ましく、-20℃以下であってもよい。本発明の封止材層のTgの下限値は特に限定されないが、本発明のLED封止用シートの保管時に端部から封止材層がはみ出す不具合が生じにくいなどの加工性の観点から、-50℃以上が好ましく、-40℃以上であってもよい。
【0120】
本発明の封止材層のガラス転移点(Tg)は、特に、限定されないが、後掲のFOXの式による計算値であってもよい。本発明の封止材層のガラス転移点(Tg)は、本発明の封止材層を形成するための組成物の組成(例えば、ベースポリマーの種類や分子量、使用量、モノマー組成、官能基の種類及び量、架橋剤の種類及び量)や硬化条件(加熱条件、放射線照射条件)等により調整することができる。
【0121】
本発明の封止材層は粘着剤層であることが好ましく、粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、封止材層を構成する粘着剤としては、上記封止材層の特性(特に、透湿度、誘電率等)、透明性、粘着性、耐候性、コスト、粘着剤の設計のしやすさの点より、アクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤がより好ましい。つまり、本発明の封止材層は、アクリル系粘着剤から構成されたアクリル系粘着剤層、又はゴム系粘着剤から構成されたゴム系粘着剤層であることが好ましく、アクリル系粘着剤層が、特に、好ましい。上記粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0122】
上記アクリル系粘着剤層は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有する。上記アクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)を含むポリマーである。上記アクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むポリマーであることが好ましい。なお、アクリル系ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0123】
本発明の封止材層を形成する粘着剤組成物は、いずれの形態であってもよい。例えば、粘着剤組成物は、エマルジョン型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などであってもよい。中でも、生産性の点、光学特性や外観性に優れる粘着剤層が得やすい点より、溶剤型、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。特に、粘着剤層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。
【0124】
つまり、本発明の封止材層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤層が好ましく、活性エネルギー線硬化型のアクリル系粘着剤組成物により形成されることが好ましい。
【0125】
上記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好ましい。即ち、上記活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物は、紫外線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。
【0126】
上記アクリル系粘着剤層を形成する粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)としては、例えば、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、又は、アクリル系ポリマーを構成する単量体(モノマー)の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)若しくはその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物などが挙げられる。前者としては、例えば、いわゆる溶剤型のアクリル系粘着剤組成物などが挙げられる。また。後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型のアクリル系粘着剤組成物などが挙げられる。上記「モノマー混合物」とは、ポリマーを構成するモノマー成分を含む混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、「プレポリマー」と称する場合もあり、上記モノマー混合物中のモノマー成分のうちの1又は2以上のモノマー成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0127】
上記アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成(形成)された重合体である。上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成(形成)された重合体であることが好ましい。すなわち、上記アクリル系ポリマーは、構成単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。なお、上記アクリル系ポリマーは、1種又は2種以上のモノマー成分により構成される。
【0128】
必須のモノマー成分としての上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0129】
アクリル系ポリマーは、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)」と称する場合がある)を含むポリマーであることが好ましい。すなわち、本発明のアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)のような長鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分を重合することにより得られるものであることが好ましい。前記長鎖のアルキル基の作用により、低誘電率の封止材層を実現することができ、封止材層が誘電分極されにくくなり、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しにくくなるという点で、好適である。
【0130】
誘電率を下げるには、クラジウス-モソッティ(Clausius-Mossotti)の式より、分子の双極子モーメントを小さくし、モル体積を大きくすれば良いと考えられる。本発明の封止材層における主成分であるアクリル系ポリマーを構成する主モノマー単位に係る、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)は、長鎖のアルキル基を有することから、粘着剤組成物から得られる封止材層ではモル体積が増加して双極子モーメントが下がると考えられる。このように、モル体積が増加し、双極子モーメントが小さくなるような、双方のバランスを有する封止材層に含まれるアクリル系ポリマーは、アルキル基として、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)をモノマーユニットとして含むことが好ましく、炭素数12以上の分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)含むことがより好ましい。
【0131】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)(炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)のホモポリマーのTgは、-80~0℃であることが好ましく、さらには-70~-10℃であることが好ましい。ホモポリマーのTgが、-80℃以下では、封止材層の常温での弾性率が下がりすぎる場合があり好ましくなく、0℃を超える場合には接着力が低下する場合があり好ましくない。ホモポリマーのTgは、示差走査熱量系(DSC)により、測定した値である。また、分岐鎖状のアルキル基は、低誘電率と適度の弾性率を満足できる点から、炭素数12以上であるが、(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法によって、適宜に好ましいアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを選択することができる。例えば、溶液重合等により(メタ)アクリル系ポリマーを製造する場合には、前記アルキル基は、さらには炭素数12~18が好ましく、さらには炭素数12~16が好ましく、さらには炭素数12~14であるのが好ましい。放射線重合等により、アクリル系ポリマーを製造する場合には、前記アルキル基は、さらには炭素数12~18が好ましく、さらには炭素数14~18であるのが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに係る、ホモポリマーのTgが-80~0℃であっても、炭素数が11以下では、封止材層を低誘電率化する効果は大きくない。
【0132】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソステアリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が12~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、特に、イソミスチリルアクリレート(炭素数14,Tg=-56℃)、イソステアリルアクリレート(炭素数18,Tg=-18℃)、イソドデシルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、イソペンタデシルアクリレート、イソヘキサデシルアクリレート、イソヘプタデシルアクリレート、および前記例示のメタクリレート系モノマー等の炭素数12~20の分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
また、前記炭素数12以上のアルキル基のなかでも、t-ブチル基などの分岐鎖状のアルキル基をエステル基の末端に有するものは、特に、モル体積が増加し、双極子モーメントが下がって、双方のバランスを有する封止材層が得られると考えられる点で好ましい。エステル基の末端に有する分岐鎖状のアルキル基としては、t-ブチル基、ネオペンチル基などの炭素数4~6の分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特にt-ブチル基が好ましい。t-ブチル基をエステル基の末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)の好ましい例としては、下記式で表わされる、イソステアリルアクリレートが挙げられる。
【化1】
【0134】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)としては、メタクリル酸アルキルエステルの方が、アクリル酸アルキルエステルよりも、モル体積の増加と双極子モーメントの低下による、封止材層を低誘電率化する効果の点から好ましい。一方、アクリル酸アルキルエステルの方が、メタクリル酸アルキルエステルよりも、アクリル系ポリマーの重合時間を短縮して生産性を向上できる点で好ましい。特に、本発明のアクリル系ポリマーを放射線重合により硬化させる場合には、アクリル酸アルキルエステルが好適である。
【0135】
アクリル系ポリマーの全モノマー単位(アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量)における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)の含有量(割合)は、特に限定されないが、低誘電率の封止材層を実現することができ、封止材層が誘電分極されにくくなり、吸湿性が低下する結果、イオンマイグレーションが発生しにくくなるという点で、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、10重量%以上が好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。一方、優れた接着力、段差追従性を実現する観点から、60重量%以下で用いることが好ましく、より好ましくは50重量%以下である。
【0136】
前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)」と称する場合がある)をモノマー成分として含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)はホモポリマーのTgが高いモノマー成分であるため、アクリル系ポリマーが、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)よりもホモポリマーのTgがより低い(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)を含むことにより、アクリル系ポリマー自体のTgを調整し、本発明の封止材層の応力緩和性を向上させ、段差追従性を改善することができる。
【0137】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルなどの炭素数が1~11の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)のホモポリマーのTgは、-100~-30℃であることが好ましく、さらには-90~-40℃であることが好ましい。ホモポリマーのTgが、-100℃以下では、封止材層の常温での弾性率が下がりすぎる場合があり好ましくなく、-30℃を超える場合には、封止材層の応力緩和性が低下し、段差追従性が不十分になる場合がある。
【0139】
なかでも、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)としては、封止材層の応力緩和性を改善して段差追従性を調整する点より、アルキル基の炭素数が6~11の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が8~11の直鎖状の又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、特に好ましくはアクリル酸2-エチルヘキシル(炭素数8の分岐鎖状アルキル,Tg=-70℃)である。
【0140】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)としては、メタクリル酸アルキルエステルの方が、アクリル酸アルキルエステルよりも、モル体積の増加と双極子モーメントの低下による、封止材層を低誘電率化する効果の点から好ましい。一方、アクリル酸アルキルエステルの方が、メタクリル酸アルキルエステルよりも、アクリル系ポリマーの重合時間を短縮して生産性を向上できる点で好ましい。特に、本発明のアクリル系ポリマーを放射線重合により硬化させる場合には、アクリル酸アルキルエステルが好適である。
【0141】
前記アクリル系ポリマーの全モノマー単位(アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量)における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)の含有量(割合)は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、3~70重量部が好ましく、より好ましくは10~60重量部、さらに好ましくは20~55重量部である。3重量部以上を用いることは接着力、段差追従性の維持の面で好ましく、70重量%以下で用いることは低誘電率化の面で好ましい。
【0142】
前記アクリル系ポリマーにおける上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)の割合((メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)/(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B))は、特に限定されないが、0.3~2が好ましく、より好ましくは0.4~1.5、さらに好ましくは0.5~1.3である。当該割合が0.3以上であるという構成は、封止材層の誘電率を低下させて、イオンマイグレーションを抑制する観点から、好適である。また、当該割合が2以下であるという構成は、接着力、段差追従性の維持の面で好ましい。
【0143】
上記アクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分として、モノマー単位として上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)とともに、共重合性モノマーを含んでいてもよい。すなわち、上記アクリル系ポリマーは、構成単位として、共重合性モノマーを含んでいてもよい。なお、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
上記共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性向上、接着信頼性、紫外線吸収剤等の各種添加剤との相溶性、透明性の点より、分子内に窒素原子を有するモノマー、分子内に水酸基を有するモノマーが好ましく挙げられる。すなわち、上記アクリル系ポリマーは、構成単位として、分子内に窒素原子を有するモノマーを含むことが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーは、構成単位として、分子内に水酸基を有するモノマーを含むことが好ましい。
【0145】
上記分子内に窒素原子を有するモノマーは、分子内(1分子内)に窒素原子を少なくとも1つ有するモノマー(単量体)である。本明細書において、上記「分子内に窒素原子を有するモノマー」を「窒素原子含有モノマー」と称する場合がある。上記窒素原子含有モノマーとしては、特に限定されないが、環状窒素含有モノマー、(メタ)アクリルアミド類などが好ましく挙げられる。なお、窒素原子含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0146】
上記環状窒素含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものであれば特に限定されない。上記環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。
【0147】
上記環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル環状アミド(ラクタム系ビニルモノマー)、窒素含有複素環を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0148】
上記N-ビニル環状アミドとしては、例えば、下記式(1)で表されるN-ビニル環状アミドが挙げられる。
【化2】
(式(1)中、R
1は2価の有機基を示す)
【0149】
上記式(1)におけるR1は2価の有機基であり、好ましくは2価の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基であり、より好ましくは2価の飽和炭化水素基(例えば、炭素数3~5のアルキレン基など)である。
【0150】
上記式(1)で表されるN-ビニル環状アミドとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオンなどが挙げられる。
【0151】
上記窒素含有複素環を有するビニル系モノマーとしては、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等の窒素含有複素環を有するアクリル系モノマーなどが挙げられる。
【0152】
上記窒素含有複素環を有するビニル系モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピラジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピラゾール、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルオキサゾール、ビニルイソオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルイソチアゾール、ビニルピリダジン、(メタ)アクリロイルピロリドン、(メタ)アクリロイルピロリジン、(メタ)アクリロイルピペリジンなどが挙げられる。
【0153】
上記窒素含有複素環を有するビニル系モノマーとしては、中でも、窒素含有複素環を有するアクリル系モノマーが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルピロリジン、(メタ)アクリロイルピペリジンである。
【0154】
上記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。上記N-アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。さらに、上記N-アルキル(メタ)アクリルアミドには、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドも含まれる。上記N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0155】
また、上記(メタ)アクリルアミド類には、例えば、各種のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドも含まれる。上記N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0156】
また、上記(メタ)アクリルアミド類には、例えば、各種のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドも含まれる。上記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0157】
また、上記環状窒素含有モノマー、上記(メタ)アクリルアミド類以外の窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルなどが挙げられる。上記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。上記イミド基含有モノマーとしては、マレイミド系モノマー(例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等)、イタコンイミド系モノマー(例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド等)、スクシンイミド系モノマー(例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等)など挙げられる。上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0158】
中でも、上記窒素原子含有モノマーとしては、環状窒素含有モノマーが好ましく、N-ビニル環状アミドがより好ましい。より具体的には、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)が特に好ましい。
【0159】
上記アクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記窒素原子含有モノマーを含有する場合、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、上記窒素原子含有モノマーの割合は、特に限定されないが、1重量%以上が好ましく、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上であり、10重量%以上、または15重量%以上であってもよい。上記割合が1重量%以上であると、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性がより向上し、高い接着信頼性を得ることができ、好ましい。また、上記窒素原子含有モノマーの割合の上限は、適度な柔軟性を有する封止材層を得る点、透明性に優れる封止材層を得る点、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点、さらに、窒素含有カチオン系不純物の含有量低減の観点から、30重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0160】
上記分子内に水酸基を有するモノマーは、分子内(1分子内)に水酸基(ヒドロキシル基)を少なくとも1つ有するモノマーであり、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものが好ましく挙げられる。ただし、上記分子内に水酸基を有するモノマーには、上記窒素原子含有モノマーは含まれないものとする。すなわち、本明細書において、分子内に窒素原子と水酸基をともに有するモノマーは、上記「窒素原子含有モノマー」に含まれるものとする。本明細書においては、上記「分子内に水酸基を有するモノマー」を「水酸基含有モノマー」と称する場合がある。なお、水酸基含有モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0161】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)などの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;ビニルアルコール;アリルアルコールなどが挙げられる。
【0162】
中でも、上記水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)である。
【0163】
上記アクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記水酸基含有モノマーを含有する場合、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、上記水酸基含有モノマーの割合は、特に限定されないが、10重量%以下であることが好ましい。アクリル系ポリマーが水酸基含有モノマーを多く含むと、水酸基は水との親和性が高いため、吸湿性が高くなる傾向がある。また、水酸基含有モノマーは製造される過程で、アクリル酸イオン等のカルボン酸系不純物が比較的多く混入するため、市販品には不純物として一定の割合でアクリル酸イオンが存在している。上記アクリル系ポリマーにおいて、水酸基含有モノマーの割合が10重量%以下であるという構成は、アクリル系ポリマーの吸湿性を低く制御すると共に、アクリル酸イオン等のカルボン酸系不純物の含有量を低減し、イオンマイグレーションの発生を抑制できる点で好ましく、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。また、上記水酸基含有モノマーの割合の下限値は、特に限定されないが、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性向上、高い接着信頼性を得る点、架橋剤との反応点になる点から、0.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.8重量%以上であり、さらに好ましくは1重量%以上である。
【0164】
上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、上記窒素原子含有モノマー及び上記水酸基含有モノマーの割合の合計は、特に限定されないが、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性向上、高い接着信頼性を得る点より、5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上である。また、上記割合の合計の上限は、適度な柔軟性を有する封止材層を得る点、透明性に優れる封止材層を得る点、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは35重量%以下である。
【0165】
前記アクリル系ポリマーにおける上記窒素原子含有モノマーと水酸基含有モノマーの割合(窒素原子含有モノマー/水酸基含有モノマー)は、特に限定されないが、5~50が好ましく、より好ましくは7~40、さらに好ましくは10~30であり、特に好ましくは15~20である。当該割合が5以上であるという構成は、高湿環境下での白濁化の抑制と耐久性向上、接着信頼性、水酸基が架橋剤の反応点になり得る点、アクリル系ポリマーの吸湿性を低く制御すると共に、アクリル酸イオン等のカルボン酸系不純物の含有量を低減し、イオンマイグレーションの発生を抑制できる点等から、好ましい。また、当該割合が50以下であるという構成は、水酸基含有モノマーに由来する水酸基が後掲の架橋剤の反応点になり得る点から、好ましい。
【0166】
窒素原子含有モノマー及び水酸基含有モノマー以外の共重合性モノマーとしては、さらに、脂環構造含有モノマーが挙げられる。上記脂環構造含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ脂環構造を有するものであれば特に限定されない。例えば、シクロアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、上記脂環構造含有モノマーに含まれる。なお、脂環構造含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0167】
上記脂環構造含有モノマーにおける脂環構造は、環状の炭化水素構造であり、炭素数5以上であることが好ましく、炭素数6~24がより好ましく、炭素数6~15がさらに好ましく、炭素数6~10が特に好ましい。
【0168】
上記脂環構造含有モノマーとしては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、下記式(2)で表されるHPMPA、下記式(3)で表されるTMA-2、下記式(4)で表されるHCPAなどの(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。なお、下記式(4)において、線でつないだシクロヘキシル環と括弧内の構造式との結合場所は特に限定されない。これらの中でも、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0169】
【0170】
上記アクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記脂環構造含有モノマーを含有する場合、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、上記脂環構造含有モノマーの割合は、特に限定されないが、耐久性向上、高い接着信頼性を得る点より、10重量%以上であることが好ましい。また、上記脂環構造含有モノマーの割合の上限は、適度な柔軟性を有する封止材層を得る点、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、50重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0171】
さらに、共重合性モノマーとしては、例えば、多官能性モノマーが挙げられる。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。なお、多官能性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0172】
上記アクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記多官能性モノマーを含有する場合、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、上記多官能性モノマーの割合は、特に限定されないが、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、0.5重量%以下(例えば、0重量%を超えて0.5重量%以下)が好ましく、より好ましくは0.2重量%以下(例えば、0重量%を超えて0.2重量%以下)である。
【0173】
また、上記多官能性モノマーは、上記アクリル系ポリマーに加えて、アクリル系粘着剤組成物に配合してもよい。アクリル系粘着剤組成物が、アクリル系ポリマーに加えて多官能性モノマーを含有する場合、該多官能性モノマーの含有量(配合量)は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、0.5重量部以下(例えば、0重量部を超えて0.5重量部以下)が好ましく、より好ましくは0.2重量部以下(例えば、0重量部を超えて0.2重量部以下)である。
【0174】
また、上記共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなどが挙げられる。中でも、上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸2-メトキシエチル(MEA)である。なお、上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0175】
上記アクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として、上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを含む場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとの割合は、特に限定されないが、[前者:後者](重量比)で、100:0を超えて25:75以下が好ましく、より好ましくは100:0を超えて50:50以下である。
【0176】
他にも、上記共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物、オレフィン類又はジエン類、ビニルエーテル類、塩化ビニルなどが挙げられる。上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる、また、上記カルボキシル基含有モノマーには、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマーも含まれるものとする。上記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどが挙げられる。上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。上記芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。上記ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。上記オレフィン類又はジエン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどが挙げられる。上記ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0177】
上記アクリル系ポリマーは、優れた耐腐食性を有するアクリル系粘着剤層を得る点、イオンマイグレーションを抑制する点より、ポリマーを構成するモノマー成分として酸性基含有モノマーを含まない又は実質的に含まないことが好ましく、特にカルボキシル基含有モノマーを含まない又は実質的に含まないことが好ましい。酸性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマーなどが挙げられる。具体的には、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、酸性基含有モノマーの割合が、0.05重量%以下(好ましくは0.01重量%以下)であるものは、実質的に含有しないということができる。
【0178】
本発明の封止材層中のベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)の含有量は、特に限定されないが、本発明の封止材層の総重量100重量%に対して、50重量%以上(例えば、50~100重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば、80~100重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、90~100重量%)である。
【0179】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、100000~5000000であり、好ましくは500000~4000000、より好ましくは750000~3000000である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100000以上であるという構成は、粘着力が向上し、耐発泡剥がれ性が向上する点で好ましい。一方、アクリル系ポリマーの重量平均分子量を5000000以下であるという構成は、粘着力を高くしやすく、耐発泡剥がれ性が向上する点で好ましい。
【0180】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。例えば、東ソー株式会社製の高速GPC装置「HPLC-8120GPC」を用いて、下記の条件により測定することができる。
カラム:TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
【0181】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、-70~-10℃が好ましく、より好ましくは-65~-15℃、さらに好ましくは-60~-20℃である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度を-70℃以上であると、凝集力が向上し、耐発泡剥がれ性が向上しやすく、好ましい。また、アクリル系ポリマーのガラス転移温度が-10℃以下であるという構成は、低温環境下でも前記封止材層の応力緩和性が維持され、本発明のLED表示装置の使用環境下における収縮又は膨張に前記封止材層が十分に追従し、浮きや剥がれを抑制でき、被着体との密着性を十分に確保できる点で好ましい。
【0182】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、下記FOXの式で表されるガラス転移温度(理論値)である。
1/Tg = W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記式中、Tgはアクリル系ポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Tgiはモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wiはモノマーiのモノマー成分全量中の重量分率を表す(i=1、2、・・・・n)。
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマーのホモポリマーのTgとしては、下記の値を採用できる。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ヘキシルアクリレート -65℃
n-オクチルアクリレート -65℃
イソノニルアクリレート -60℃
n-ノニルアクリレート -58℃
n-ブチルアクリレート -55℃
エチルアクリレート -20℃
ラウリルアクリレート 0℃
2-エチルヘキシルメタクリレート -10℃
メチルアクリレート 8℃
n-ブチルメタクリレート 20℃
メチルメタクリレート 105℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
【0183】
また、上記に記載のないモノマーのホモポリマーのTgとしては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。さらに、上記文献にも記載されていないモノマーのホモポリマーのTgとしては、上述の測定方法により得られる値(粘弾性試験によるtanδのピークトップ温度)を採用できる。
【0184】
本発明の封止材層が含有する、上記アクリル系ポリマーなどのベースポリマーは、モノマー成分を重合することにより得られる。この重合方法としては、特に限定されないが、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、封止材層の透明性、コストなどの点より、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、活性エネルギー線重合方法がより好ましい。
【0185】
また、上記のモノマー成分の重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられてもよい。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0186】
上記のモノマー成分の重合に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤が用いられてもよい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0187】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエート等)、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。中でも、特開2002-69411号公報に開示されたアゾ系重合開始剤が好ましい。上記アゾ系重合開始剤としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と称する場合がある)、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(以下、「AMBN」と称する場合がある)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。なお、熱重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0188】
上記アクリル系ポリマーの重合の際に上記アゾ系重合開始剤を用いる場合、上記アゾ系重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分100重量部に対して、0.05重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、0.5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3重量部以下である。
【0189】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。他にも、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。上記α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム等が挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン等が挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジル等が挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。上記チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等が挙げられる。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0190】
上記アクリル系ポリマーの重合の際に上記光重合開始剤を用いる場合、上記光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、3重量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量部以下である。
【0191】
上記アクリル系粘着剤組成物は、上記アクリル系ポリマーとともに、重量平均分子量が1000~30000であるアクリル系オリゴマーを含有することが好ましい。アクリル系オリゴマーを含有していると、本発明のLED封止用シートにおける界面における被着体への接着性が向上するので、強接着性を得やすくなり、また優れた耐発泡剥がれ性を得やすくなる。なお、本明細書では、「重量平均分子量が1000~30000であるアクリル系オリゴマー」を単に「アクリル系オリゴマー」と称する場合がある。
【0192】
上記アクリル系オリゴマーとしては、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーが好ましく挙げられ、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーがより好ましく挙げられる。すなわち、上記アクリル系オリゴマーとしては、モノマー単位として分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル系ポリマーが好ましく挙げられ、モノマー単位として分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むアクリル系ポリマーがより好ましく挙げられる。
【0193】
上記分子内(1分子内)に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「環含有(メタ)アクリル酸エステル」と称する場合がある)の環状構造(環)は、芳香族性環、非芳香族性環の何れであってもよく、特に限定されない。上記芳香族性環としては、例えば、芳香族性炭素環[例えば、ベンゼン環等の単環炭素環や、ナフタレン環等の縮合炭素環等]、各種の芳香族性複素環等が挙げられる。上記非芳香族性環としては、例えば、非芳香族性脂肪族環(非芳香族性脂環式環)[例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等のシクロアルケン環等]、非芳香族性橋かけ環[例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン等における二環式炭化水素環;アダマンタン等における三環以上の脂肪族炭化水素環(橋かけ式炭化水素環)等]、非芳香族性複素環[例えば、エポキシ環、オキソラン環、オキセタン環等]等が挙げられる。
【0194】
上記三環以上の脂肪族炭化水素環(三環以上の橋かけ式炭化水素環)としては、例えば、下記式(5a)で表されるジシクロペンタニル基、下記式(5b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(5c)で表されるアダマンチル基、下記式(5d)で表されるトリシクロペンタニル基、下記式(5e)で表されるトリシクロペンテニル基等が挙げられる。
【化6】
【0195】
すなわち、上記環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル等の芳香族性環を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なかでも、上記環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に、非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)であり、さらに好ましくはアクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)である。なお、環含有(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0196】
上記非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルのなかでも、三環以上の脂肪族炭化水素環(特に、三環以上の橋かけ式炭化水素環)を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合、特に、重合阻害を起こしにくい点で好ましい。また、不飽和結合を有しない上記式(5a)で表されるジシクロペンタニル基、上記式(5c)で表されるアダマンチル基、上記式(5d)で表されるトリシクロペンタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合には、耐発泡剥がれ性をより高めることができ、さらに、ポリエチレンやポリプロプレン等の低極性の被着体に対する接着性を顕著に向上させることができる。
【0197】
アクリル系オリゴマーの全モノマー単位(アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量)における上記環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量(割合)は、特に限定されないが、アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、10~90重量部が好ましく、より好ましくは20~80重量部である。上記環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量が10重量部以上であると、耐発泡剥がれ性が向上しやすくなり、好ましい。また、含有量が90重量部以下であると、封止材層が適度な柔軟性を有し、粘着力や段差吸収性等が向上しやすくなり、好ましい。
【0198】
また、アクリル系オリゴマーのモノマー単位としての上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等のアルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。なかでも、アクリル系ポリマーとの相溶性が良好となる点で、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。なお、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0199】
アクリル系オリゴマーの全モノマー単位(アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量)における上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量(割合)は、特に限定されないが、耐発泡剥がれ性の点で、アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、10~90重量部が好ましく、より好ましくは20~80重量部、さらに好ましくは20~60重量部である。含有量が10重量部以上であると、特に、アクリル樹脂やポリカーボネート製の被着体に対する粘着力が向上しやすくなり、好ましい。
【0200】
アクリル系オリゴマーのモノマー単位としては、上記環含有(メタ)アクリル酸エステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他にも、これらのモノマーと共重合が可能なモノマー(共重合性モノマー)が含まれていてもよい。なお、アクリル系オリゴマーの全モノマー単位(アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量)における上記共重合性モノマーの含有量(割合)は、特に限定されないが、アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、49.9重量部以下(例えば、0~49.9重量部)が好ましく、より好ましくは30重量部以下である。また、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0201】
アクリル系オリゴマーのモノマー単位としての上記共重合性モノマー(アクリル系オリゴマーを構成する上記共重合性モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等];ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコール等];アミド基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等];アミノ基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等];シアノ基含有モノマー[例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等];スルホン酸基含有モノマー[例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム等];リン酸基含有モノマー[例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等];イソシアネート基含有モノマー[例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等]、イミド基含有モノマー[シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等]等が挙げられる。
【0202】
上記のように、アクリル系オリゴマーは、モノマー単位として分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むアクリル系ポリマーであることが好ましい。なかでも、モノマー単位として、環含有(メタ)アクリル酸エステル、及び、上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むアクリル系ポリマーであることが好ましい。上記のモノマー単位として環含有(メタ)アクリル酸エステル及び直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むアクリル系ポリマーにおいて、アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対する環含有(メタ)アクリル酸エステルの量は、特に限定されないが、10~90重量部が好ましく、より好ましくは20~80重量部である。また、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、特に限定されないが、10~90重量部が好ましく、より好ましくは20~80重量部、さらに好ましくは20~60重量部である。
【0203】
さらに、アクリル系オリゴマーの特に好ましい具体的構成としては、モノマー単位として(1)アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、及びメタクリル酸シクロヘキシルからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー、ならびに(2)メタクリル酸メチルを含むアクリル系ポリマーが挙げられる。上記の特に好ましい具体的構成のアクリル系オリゴマーにおける、アクリル系オリゴマーの全モノマー単位中の、(1)アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、及びメタクリル酸シクロヘキシルの含有量(2種以上を含む場合はこれらの合計量)は、アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、30~70重量部、(2)メタクリル酸メチルの含有量は30~70重量部であることが好ましい。ただし、上記アクリル系オリゴマーは、上記具体的構成に限定されるものではない。
【0204】
アクリル系オリゴマーは、上記モノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合することにより得ることができる。上記アクリル系オリゴマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)等が挙げられる。なかでも、塊状重合方法、溶液重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0205】
アクリル系オリゴマーの重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられてもよい。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤が挙げられる。なお、このような溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0206】
さらに、アクリル系オリゴマーの重合に際しては、公知乃至慣用の重合開始剤(例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤等)が使用されてもよい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0207】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。なお、溶液重合を行う場合には、油溶性の重合開始剤を使用することが好ましい。また、熱重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0208】
上記熱重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系オリゴマーの全モノマー単位(アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量)100重量部に対して、0.1~15重量部である。
【0209】
また、上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、上記で挙げられたアクリル系ポリマーの重合に際して用いられる光重合開始剤と同じ光重合開始剤が挙げられる。上記光重合開始剤の使用量は、特に限定されず、適宜選択される。
【0210】
上記アクリル系オリゴマーの重合に際しては、分子量を調整するため(具体的には、重量平均分子量を1000~30000に調整するため)に、連鎖移動剤が使用されてもよい。上記連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトエタノール、α-チオグリセロール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、オクチルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、t-ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t-ブチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。なかでも、加湿による本発明のLED封止用シートの白化を抑制する観点から、α-チオグリセロール、チオグリコール酸メチルが好ましく、α-チオグリセロールが特に好ましい。なお、連鎖移動剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0211】
上記連鎖移動剤の含有量(使用量)は、特に限定されないが、アクリル系オリゴマーの全モノマー単位(アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、より好ましくは0.2~15重量部、さらに好ましくは0.3~10重量部である。連鎖移動剤の含有量(使用量)を上記範囲とすることにより、重量平均分子量が1000~30000に制御されたアクリル系ポリマーを容易に得ることができる。
【0212】
上記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、1000~30000であり、好ましくは1000~20000、より好ましくは1500~10000、さらに好ましくは2000~8000である。アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が1000以上であるので、粘着力や保持特性が向上し、耐発泡剥がれ性が向上する。一方、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は30000以下であるので、粘着力を高くしやすく、耐発泡剥がれ性が向上する。
【0213】
上記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。例えば、東ソー株式会社製の高速GPC装置「HPLC-8120GPC」を用いて、下記の条件により測定することができる。
カラム:TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
【0214】
上記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、20~300℃が好ましく、より好ましくは30~300℃、さらに好ましくは40~300℃である。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度を20℃以上であると、耐発泡剥がれ性が向上しやすく、好ましい。また、アクリル系オリゴマーのガラス転移温度が300℃以下であると、封止材層が適度な柔軟性を有し、良好な粘着力や良好な段差吸収性が得やすくなり、優れた接着信頼性を得やすくなるので、好ましい。
【0215】
上記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、上記FOXの式で表されるガラス転移温度(理論値)である。
上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマーのホモポリマーのTgとしては、下記の表1記載の値を採用できる。また、表1に記載のないモノマーのホモポリマーのTgとしては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。さらに、上記文献にも記載されていないモノマーのホモポリマーのTgとしては、上述の測定方法により得られる値(粘弾性試験によるtanδのピークトップ温度)を採用できる。
【0216】
【表1】
なお、表1における「DCPMA/MMA=60/40」のコポリマーは、DCPMA60重量部とMMA40重量部のコポリマーを意味する。
【0217】
上記アクリル系粘着剤組成物がアクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーを含有する場合のアクリル系オリゴマーの含有量は、特に限定されないが、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、1~30重量部が好ましく、より好ましくは2~20重量部であり、さらに好ましくは2~10重量部である。すなわち、上記粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、特に限定されないが、上記アクリル系ポリマーの全モノマー単位100重量部に対して、1~30重量部が好ましく、より好ましくは2~20重量部であり、さらに好ましくは2~10重量部である。上記アクリル系粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、特に限定されないが、例えば、上記モノマー混合物100重量部に対して、1~30重量部が好ましく、より好ましくは2~20重量部であり、さらに好ましくは2~10重量部である。アクリル系オリゴマーの含有量が1重量部以上であると、優れた接着性及び優れた耐発泡剥がれ性が得やすくなり、好ましい。また、アクリル系オリゴマーの含有量が30重量部以下であると、優れた透明性と接着信頼性が得やすくなり、好ましい。また、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、アクリル系オリゴマーの含有量は10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましい。
【0218】
アクリル系ポリマー及びアクリル系オリゴマーを含有する上記粘着剤組成物の作製方法としては、特に限定されない。例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物又はアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物の部分重合物(アクリル系ポリマーを形成するモノマー混合物又はその部分重合物)に、アクリル系オリゴマー、添加剤等を必要に応じて添加して、混合することを経て、作製される。
【0219】
本発明の封止材層を構成する粘着剤組成物の他の好ましい一実施形態として、ゴム系ポリマーを主成分とするゴム系粘着剤組成物が挙げられる。ゴム系ポリマーとしては、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR);ポリイソプレン(PIP);ポリイソブチレン(PIB);ブテン(1-ブテン、およびcis-もしくはtrans-2-ブテンを指す。)および/または2-メチルプロペン(イソブチレン)を主モノマーとするブテン系ポリマー;A-B-A型ブロック共重合体ゴムおよびその水素化物、例えばスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SIBS)、スチレン-ビニル・イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SVIS)、SBSの水素化物であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、SISの水素化物であるスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS)、等の種々のゴム系ポリマーが挙げられる。これらのゴム系ポリマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0220】
本発明の封止材層は、特に限定されないが、紫外線吸収剤(UVA)を含有することが好ましい。本発明の封止材層が紫外線吸収剤を含むと、紫外線によるLED表示パネルのダメージを抑制できる点で好ましい。なお、紫外線吸収剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0221】
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0222】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系化合物)としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」、BASF社製)、ベンゼンプロパン酸および3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)のエステル化合物(商品名「TINUVIN 384-2」、BASF社製)、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートおよび2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2イル)フェニル]プロピオネートの混合物(商品名「TINUVIN 109」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 900」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」、BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(商品名「TINUVIN 1130」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 234」、BASF社製)、2-[5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 326」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN 328」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 329」、BASF社製)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](商品名「TINUVIN 360」、BASF社製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN 213」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN 571」、BASF社製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb 250」、住友化学(株)製)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](商品名「アデカスタブ LA-31」、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0223】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物)としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(C10-C16(主としてC12-C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN 400」、BASF社製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物(商品名「TINUVIN 405」、BASF社製)、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 460」、BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN 1577」、BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「アデカスタブ LA-46」、(株)ADEKA製)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 479」、BASF社製)などが挙げられる。他にも、下記式(6)で示される化合物(商品名「TINUVIN 477」、BASF社製)が挙げられる。
【化7】
【0224】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物)、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤(オキシベンゾフェノン系化合物)としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(無水及び三水塩)、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(商品名「KEMISORB 111」、ケミプロ化成(株)製)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(商品名「SEESORB 106」、シプロ化成(株)製)、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0225】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤(サリチル酸エステル系化合物)としては、例えば、フェニル2-アクリロイルオキシベンゾエート、フェニル2-アクロリイルオキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN 120」、BASF社製)などが挙げられる。
【0226】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤(シアノアクリレート系化合物)としては、例えば、アルキル2-シアノアクリレート、シクロアルキル2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート、アルケニル2-シアノアクリレート、アルキニル2-シアノアクリレートなどが挙げられる。
【0227】
上記紫外線吸収剤としては、高い紫外線吸収性を有しつつ、耐腐食性(特に、耐UV性)をより向上させる点、優れた光学特性、高い透明性を有する封止材層の得やすさの点、優れた光安定性をもつ点より、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤がより好ましい。特に、炭素数が6以上の基及び水酸基を置換基として有するフェニル基がベンゾトリアゾール環を構成する窒素原子に結合しているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0228】
また、上記紫外線吸収剤は、より高い紫外線吸収性を得、耐腐食性(特に、耐UV性)をより向上させる点から、下記で求められる吸光度Aが0.5以下であることが好ましい。
吸光度A:前記紫外線吸収剤の0.08%トルエン溶液に対して、波長400nmの光を当て、測定される吸光度
【0229】
本発明の封止材層が紫外線吸収剤を含有する場合、本発明の封止材層(特にアクリル系粘着剤層)中の上記紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、耐腐食性(特に、耐UV性)をより向上させる点より、ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量部以上であり、さらに好ましくは0.1重量部以上である。また、上記紫外線吸収剤の含有量の上限は、紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制し、優れた光学特性、高い透明性、及び、優れた外観特性を得る点より、ベースポリマー100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは9重量部以下であり、さらに好ましくは8重量部以下である。
【0230】
本発明の封止材層は、光安定剤を含有していてもよい。本発明の封止材層が光安定剤を含有する場合は、特に、上記紫外線吸収剤とともに光安定剤を含有することが好ましい。光安定剤は、光酸化で生成するラジカルを捕捉できるので、封止材層の光(特に紫外線)に対する耐性を向上させることができる。なお、光安定剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0231】
上記光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系光安定剤(フェノール系化合物)、リン系光安定剤(リン系化合物)、チオエーテル系光安定剤(チオエーテル系化合物)、アミン系光安定剤(アミン系化合物)(特にヒンダードアミン系安定剤(ヒンダードアミン系化合物))などが挙げられる。
【0232】
上記フェノール系光安定剤(フェノール系化合物)としては、例えば、2,6-ジ-第3級ブチル-4-メチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-第3級ブチルフェノール、2,6-ジ-第3級ブチル-4-エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、n-オクタデシル3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-第3級ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-第3級ブチル)ベンジルマロネート、トコフェロール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-第3級ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-第3級ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-第3級ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(6-第3級ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(6-第3級ブチル-m-クレゾール)、スチレン化フェノール、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、ビス(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルエステル)カルシウム、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3級ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3-(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、1,3,5-トリス(4-第3級ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-第3級ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、2,2'-オキサミドビス[エチル3-(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-第3級ブチルアニリノ)-2,4-ジオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、ビス[2-第3級ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第3級ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-第3級ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス{2-[3-(3,5-ジ-第3級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0233】
リン系光安定剤(リン系化合物)としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-第3級ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-第3級ブチル-4-(3-第3級ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-第3級ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-第3級ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-第3級ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-n-ブチリデンビス(2-第3級ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3級ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-第3級ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、トリス(2-[(2,4,8,10-テトラキス-第3級ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]エチル)アミンなどが挙げられる。
【0234】
チオエーテル系光安定剤(チオエーテル系化合物)としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート化合物;テトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物などが挙げられる。
【0235】
アミン系光安定剤(アミン系化合物)としては、例えば、コハク酸ジメチルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物(商品名「TINUVIN 622」、BASF社製)、コハク酸ジメチルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物とN,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンとの1対1の反応生成物(商品名「TINUVIN 119」、BASF社製)、ジブチルアミン・1,3-トリアジン・N、N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(商品名「TINUVIN 2020」、BASF社製)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}(商品名「TINUVIN 944」、BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(商品名「TINUVIN 765」、BASF社製)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名「TINUVIN 770」、BASF社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(商品名「TINUVIN 123」、BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(商品名「TINUVIN 144」、BASF社製)、シクロヘキサンおよび過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物(商品名「TINUVIN 152」、BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(商品名「TINUVIN 292」、BASF社製)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名「アデカスタブ LA-63P」、(株)ADEKA製)などが挙げられる。アミン系安定剤としては、特に、ヒンダードアミン系安定剤が好ましい。
【0236】
本発明の封止材層が光安定剤を含有する場合、本発明の封止材層(特に、アクリル系粘着剤層)中の、光安定剤の含有量は、特に限定されないが、光に対する耐性を発現しやすくする点より、ベースポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部以上である。また、上記含有量の上限は、光安定剤自体による着色が生じにくくなり、高い透明性が得やすい点、光学特性の点より、ベースポリマー100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
【0237】
本発明の封止材層の形成には、特に限定されないが、架橋剤が用いられていてもよい。例えば、アクリル系粘着剤層におけるアクリル系ポリマーを架橋し、ゲル分率をコントロールすることができる。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0238】
上記架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。
【0239】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。また、上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業(株)製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」、日本ポリウレタン工業(株)製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」、三井化学(株)製)などの市販品も挙げられる。
【0240】
上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。また、上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学(株)製)などの市販品も挙げられる。
【0241】
本発明の封止材層の形成に架橋剤が用いられる場合、上記架橋剤の使用量は、特に限定されないが、十分な接着信頼性を得る点より、ベースポリマー100重量部に対して、0.001重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上である。また、上記使用量の上限は、封止材層において適度な柔軟性を得て、粘着力を向上させる点、封止材層の上記の各種特性(特に、透湿度、誘電率等)を所定の範囲に制御しやすい観点から、ベースポリマー100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは5重量部以下である。
【0242】
本発明の封止材層(特に、アクリル系粘着剤層)は、加湿条件下での接着信頼性を向上させる点、特にガラスに対する接着信頼性を向上させる点より、シランカップリング剤を含有していてもよい。なお、シランカップリング剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記封止材層がシランカップリング剤を含有すると、加湿条件下での接着性、特にガラスに対する接着性を向上させることができる。
【0243】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。さらに、シランカップリング剤としては、例えば、商品名「KBM-403」(信越化学工業(株)製)などの市販品も挙げられる。中でも、上記シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0244】
本発明の封止材層がシランカップリング剤を含有する場合、本発明の封止材層(特に、アクリル系粘着剤層)中の、上記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、上記ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.02重量部以上である。また、上記シランカップリング剤の含有量の上限は、上記ベースポリマー100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0245】
本発明の封止材層は、帯電防止剤を含有していてもよい。なお、帯電防止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記封止材層が帯電防止剤を含有すると、LED表示パネル等の被着体の破損を防止することができる。
【0246】
前記帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤、スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤、アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤、アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤、更には、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体が挙げられる。
【0247】
本発明の封止材層が帯電防止剤を含有する場合、本発明の封止材層中の、上記帯電防止剤の含有量は、特に限定されないが、上記ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.02重量部以上である。また、上記帯電防止剤の含有量の上限は、上記ベースポリマー100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0248】
本発明の封止材層は、必要に応じて、さらに、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、着色剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。なお、このような添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0249】
本発明の封止材層のヘイズは、特に限定されないが、外観特性、透明性、光学特性の点より、1%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以下である。なお、本明細書において、封止材層のヘイズは、例えば、ヘイズメーターを用い、JIS K 7136に準じて測定することができる。
【0250】
本発明の封止材層の可視光透過率は、特に限定されないが、外観特性、透明性、光学特性の点より、90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。なお、本明細書において、封止材層の可視光透過率は、例えば、ヘイズメーターを用い、JIS K 7361-1に準じて測定することができる。なお、上記可視光透過率は、波長400~780nmの光(可視光)の透過率である。
【0251】
本発明の封止材層の厚みは、特に限定されないが、十分な接着信頼性を得る点より、12μm以上が好ましく、好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは70μm以上である。上記厚みが12μm以上であると、本発明のLED表示装置の使用環境下における収縮又は膨張に封止材層が十分に追従し、浮きや剥がれを抑制できる点で好ましい。また、上記厚みは、光学特性の点より、500μm以下が好ましく、好ましくは300μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。
【0252】
<LED封止用シートの製造>
本発明のLED封止用シートは、本発明の基材の第1面上に、本発明の封止材層を積層させることより調製することができる。
【0253】
本発明の基材の第1面上に本発明の封止材層を積層させる方法は、特に限定されず、例えば、上記粘着剤組成物をはく離ライナー上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層を乾燥硬化させることや、上記粘着剤組成物をはく離ライナー上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層に活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、はく離ライナー上にシート状の封止材層に成形し、本発明の基材の第1面上に前記封止材層を貼り合わせることにより行うことができる。また、必要に応じて、さらに、加熱乾燥してもよい。
活性エネルギー線の照射により硬化を行う際は、塗膜の表面にさらにはく離ライナーを付設して、粘着剤組成物を2枚のはく離ライナー間に挟持した状態で活性エネルギー線を照射して、酸素による重合阻害を防止することが好ましい。
【0254】
本発明の基材の第1面上に本発明の封止材層を積層させる別の方法は、例えば、上記粘着剤組成物を本発明の基材の第1面上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層を乾燥硬化させることや、上記粘着剤組成物を本発明の基材の第1面上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層に活性エネルギー線を照射して硬化させることにより行うこともできる。また、必要に応じて、さらに、加熱乾燥してもよい。
活性エネルギー線の照射により硬化を行う際は、塗膜の表面にはく離ライナーを付設して、粘着剤組成物を本発明の基材とはく離ライナーの間に挟持した状態で活性エネルギー線を照射して、酸素による重合阻害を防止することが好ましい。
【0255】
活性エネルギー線照射の前に、溶媒の除去等を目的として、シート状の塗膜を加熱してもよい。加熱による溶媒等の除去を行う場合は、はく離ライナーを付設する前に実施することが好ましい。
【0256】
上記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好ましい。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されない。
【0257】
上記粘着剤組成物は、公知乃至慣用の方法で作製することができる。例えば、溶剤型のアクリル系粘着剤組成物は、上記アクリル系ポリマーを含有する溶液に、必要に応じて、添加剤(例えば、紫外線吸収剤など)を混合することにより、作製することができる。例えば、活性エネルギー線硬化型のアクリル系粘着剤組成物は、上記アクリル系モノマーの混合物又はその部分重合物に、必要に応じて、添加剤(例えば、紫外線吸収剤など)を混合することにより、作製することができる。
【0258】
なお、上記粘着剤組成物の塗布(塗工)には、公知のコーティング法を利用してもよい。例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0259】
特に、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物により封止材層を形成する場合、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。なお、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が紫外線吸収剤を含有する場合には、光重合開始剤として、広い波長範囲で吸光特性を有する光重合開始剤を少なくとも含むことが好ましい。例えば、紫外光に加え、可視光でも吸光特性を有する光重合開始剤を少なくとも含むことが好ましい。これは、紫外線吸収剤の作用により活性エネルギー線による硬化の阻害が懸念されるところ、広い波長範囲で吸光特性を有する光重合開始剤を含んでいると、粘着剤組成物において高い光硬化性が得やすくなるからである。
【0260】
<帯電防止層>
本発明のLED封止用シートにおいて、表面又は任意の層間に帯電防止層を有していてもよい。本発明のLED封止用シートが帯電防止層を有することにより、LED表示パネル等の被着体の破損を防止することができる。前記帯電防止層は、本発明の基材と本発明の封止材層の間に形成されることが好ましい。
【0261】
前記帯電防止層としては、特に限定されないが、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液をはく離ライナー上にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的には、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液を本発明の基材の第1面にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的なコーティングの方法としては、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0262】
前記導電性ポリマーとしては、例えば、π共役系導電性ポリマーにポリアニオンがドープされた導電性ポリマーなどが挙げられる。π共役系導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの鎖状導電性ポリマーが挙げられる。ポリアニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸などが挙げられる。
【0263】
前記帯電防止層の厚みとしては、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~900nmである。前記 帯電防止層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0264】
<はく離ライナー>
本発明のLED封止用シートにおいて、本発明の封止材層の表面(本発明の封止材層の粘着面)は、使用時までははく離ライナーにより保護されていてもよい。はく離ライナーは封止材層の保護材として用いられるものであり、本発明のLED封止用シートを被着体に貼付する際に剥がされる。
【0265】
上記はく離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを利用でき、具体的には、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体など)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。
【0266】
上記はく離ライナーとしては、例えば、はく離ライナー用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されているはく離ライナーを好適に用いることができる。このようなはく離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2~3層の複合体)などが挙げられる。
【0267】
上記剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0268】
前記はく離ライナーの厚さは、特に限定されず、5~100μmの範囲から適宜選択すればよい。
【0269】
上記はく離ライナーは、LED表示パネル等の被着体の破損を防止するため、はく離ライナー用基材の少なくとも一方の面に帯電防止層が形成されていてもよい。帯電防止層ははく離ライナーの一方の面(剥離処理面または未処理面)に形成されていてもよく、はく離ライナーの両面(剥離処理面及び未処理面)に形成されていてもよい。
【0270】
前記帯電防止層としては、特に限定されないが、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液をはく離ライナー上にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的には、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液をはく離ライナー上(剥離処理面及び/又は未処理面)にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的なコーティングの方法としては、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0271】
前記導電性ポリマーとしては、上記の本発明のLED封止用シートを構成する帯電防止層を構成する導電性ポリマーと同様のものを使用することができる。
【0272】
前記帯電防止層の厚みとしては、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~900nmである。前記帯電防止層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0273】
<表面保護フィルム>
本発明のLED封止用シートにおいて、本発明の基材の第2面は、表面保護フィルムにより保護されていてもよい。前記表面保護フィルムは、本発明のLED封止用シート、本発明のLED表示装置や本発明のタイリングディスプレイの製造時や搬送時に本発明の基材の第2面の保護材として用いられるものである。
【0274】
前記表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。
【0275】
前記表面保護フィルムの厚みは、代表的には20μm~250μmであり、好ましくは30μm~150μmである。
【0276】
前記表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して本発明の基材の第2面に剥離可能に貼り合わせられる。好ましくは、封止材層が形成された表面保護フィルムを形成し、これを本発明のLED封止用シートの本発明の基材の第2面に貼り合わせる。前記表面保護フィルムの積層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベース樹脂とし、このベース樹脂に、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などから選ばれる架橋剤、さらにはシランカップリング剤などが配合された粘着剤組成物が挙げられる。封止材層の厚みは、通常1μm~60μm、好ましくは3μm~30μmである。封止材層が薄すぎると粘着性が低下する、気泡が混入しやすくなるなどの不具合が生じるおそれがあり、厚すぎると粘着剤がはみ出すなどの不具合が生じるおそれがある。耐薬品性、密着性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0277】
<LED表示装置>
本発明のLED表示装置は、本発明のLED封止用シートと、LED表示パネルとが積層された積層構造を有する。本発明のLED表示装置は、本発明のLED封止用シートを積層構造中に有するため、使用環境下においても金属配線や側面電極のイオンマイグレーションの発生を抑制でき、イオンマイグレーションに起因する画質の悪化を抑制できる。従って、本発明のLED表示装置は、使用環境下において、良好な画質を維持でき、耐久性が高い。さらに、LED表示パネルに、LEDチップ、配線、側面電極などにより形成される凹凸形状の段差がある場合、当該段差に本発明の封止材層が十分に追従し、気泡などを残すことなく、充填することができる。
【0278】
本発明のLED表示装置は、本発明のLED封止用シート及び上記LED表示パネル以外の光学部材を、表面又は任意の層間に備えていてもよい。上記光学部材としては、特に限定されないが、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、視野角調整フィルム、光学補償フィルムなどが挙げられる。なお、上記光学部材には、LED表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護板等)も含むものとする。
【0279】
以下、本発明のLED表示装置の実施形態を図に関連して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例示に過ぎない。
図3は、本発明のミニ/マイクロLED表示装置の一実施態様を示す模式図(断面図)である。
【0280】
図3において、ミニ/マイクロLED表示装置20Aは、LED封止用シート10Bの封止材層2が、LED表示パネル4に積層されている。LED表示パネル4は、基板5上に、金属配線層(図示略)が形成されており、金属配線層上に微細なRGBのLEDチップ6が交互に配列されており、金属配線層はLEDチップ6に電気を供給する。LED表示パネル4の側面には、金属配線層に電気を供給するための側面電極7が配置されている。
【0281】
図3の実施形態において、封止材層2は、金属配線層と、複数のLEDチップ6と、側面電極7と、側面電極7の対極側の側面電極(図示略)を封止している。金属配線層、側面電極7、及び側面電極7の対極側の側面電極の電極間の封止材層2には電圧が印加されている。この状態で、封止材層2が吸湿すると、陽極の金属が封止材に溶け出し、陰極に移動して再度金属が生成されるイオンマイグレーションが発生しやすくなり、封止材層2にカルボン酸系不純物などの酸性不純物が含まれていると、イオンマイグレーションはさらに促進される。
【0282】
本実施形態において、封止材層2の透湿度は低く制御されており、さらにカルボン酸系不純物の含有量が0.5ppm以下に制御されているため、イオンマイグレーションが効果的に抑制されており、イオンマイグレーションに起因する画質の悪化を抑制できる。従って、LED表示装置20Aは、使用環境下において、良好な画質を維持でき、耐久性が高い。さらに、封止材層2は段差追従性が高いため、LED表示パネル20AにおけるLEDチップ6、金属配線、側面電極7により形成される凹凸形状の段差段差に封止材層2が十分に追従し、気泡などを残すことなく、充填することができる。
【0283】
図4は、本発明のミニ/マイクロLED表示装置の他の一実施態様を示す模式図(断面図)である。
図4において、ミニ/マイクロLED表示装置20Bは、LED封止用シート10Bの封止材層2が、LED表示パネル4に積層されている。LED表示パネル4は、基板5上に、金属配線層(図示略)が形成されており、金属配線層上に微細なRGBのLEDチップ6が交互に配列されており、金属配線層はLEDチップ6に電気を供給する。LED表示パネル4の側面には、金属配線層に電気を供給するための側面電極7が配置されている。
【0284】
図4において、金属配線層と、複数のLEDチップ6の間は、本発明の封止材層以外の封止材層8で封止されている。本実施形態において、封止材層8は着色剤を含有しており、外光の金属配線層に対する反射を抑制し、複数のLEDチップ6のRGB間の混色を防止して、外観及びコントラストを向上させている。
【0285】
図4において、封止材層2は、複数のLEDチップ6の上面と、側面電極7と、側面電極7の対極側の側面電極(図示略)を封止している。側面電極7、及び側面電極7の対極側の側面電極電極間の封止材層2は、電圧が印加されている。この状態で、封止材層2が吸湿すると、陽極の金属が封止材に溶け出し、陰極に移動して再度金属が生成されるイオンマイグレーションが発生しやすくなり、封止材層2にカルボン酸系不純物などの酸性不純物が含まれていると、イオンマイグレーションはさらに促進される。
【0286】
本実施形態において、封止材層2の透湿度は低く制御されており、さらにカルボン酸系不純物の含有量が0.5ppm以下に制御されているため、イオンマイグレーションが効果的に抑制されており、イオンマイグレーションに起因する画質の悪化を抑制できる。従って、LED表示装置20Bは、使用環境下において、良好な画質を維持でき、耐久性が高い。さらに、封止材層2は段差追従性が高いため、LED表示パネル20Bにおける側面電極7と封止材層8により形成される凹凸形状の段差段差に封止材層2が十分に追従し、気泡などを残すことなく、充填することができる。
【0287】
本発明のLED表示装置は、前記LED表示パネルと、本発明のLED封止用シートの封止材層を貼り合わせることにより製造することができる。
【0288】
具体的には、LED表示パネルと本発明のLED封止用シートの貼り付けは、加熱及び/又は加圧下で積層させるにより実施することができる。加熱及び/又は加圧下で積層させた後に活性エネルギー線を照射して硬化を行ってもよい。活性エネルギー線の照射は、本発明の封止材層の形成と同様に行うことができる。
【実施例0289】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0290】
製造例1
(防眩性フィルム1の調製)
〔防眩層1形成用塗工液の調製〕
防眩層形成材料に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(新中村化学社製、商品名「NKオリゴ UA-53H-80BK」)40重量部と、ペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)57.5重量部と、ジルコニア粒子と紫外線硬化性樹脂とを含有する光学調整層用組成物の希釈液(「オプスターZ7540」、JSR社製)2.5重量部と、シリコーン粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130ND」)2.8重量部と、チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(クニミネ工業株式会社製、商品名「スメクトンSAN」)2.5重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)3重量部と、架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子(積水化成品工業社製 商品名「SSX-103DXE」)6.5重量部と、レベリング剤(共栄社化学株式会社製、商品名「LE-303」)0.1重量部とを混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6重量%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が38重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比64/36)で希釈して、超音波分散機を用いて、防眩層形成材料(塗工液)を調製した。
【0291】
〔防眩層1の形成〕
基材として、透明プラスチックフィルム基材(PETフィルム、東レ株式会社製、商品名「38U413」、厚さ:38μm)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩層形成材料(塗工液)を、ワイヤーバーを用いて塗布して塗膜を形成した(塗工工程)。ついで、95℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた(乾燥工程)。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み6.5μmの防眩層を形成した。このようにして、前記光透過性基材と前記防眩層1との積層体を得た。
【0292】
〔反射防止層1形成用塗工液の調製〕
ペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)100重量部と、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」)100重量部と、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MIBK-ST」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)40重量部と、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」)12重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)5重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD2959」)5重量部とを混合した。その混合物に、希釈溶媒としてMIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を70:30重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が1.5重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液を調製した。
〔反射防止層1の形成〕
前記光透過性基材と前記防眩層1との積層体の防眩層面に、前記反射防止層形成用塗工液をワイヤーバーで塗工した(塗工工程)。前記塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した(乾燥工程)。乾燥後の前記塗膜に、高圧水銀ランプで積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化処理した(硬化工程)。これにより、前記塗膜を硬化させ、厚み0.1μmの反射防止層1を形成した(反射防止層形成工程)。以上のようにして、本製造例1の防眩性フィルム1を製造した。
【0293】
製造例2
(アクリル系粘着剤組成物1の調製)
〔プレポリマーおよびアクリル系粘着剤組成物1の調製〕
プレポリマー形成用モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)51重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、イソステアリルアクリレート(ISA)30重量部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「Omnirad184」0.1重量部、BASF製「Omnirad651」0.1重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物を得た。上記のプレポリマー組成物100重量部に、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物1を調製した。
【0294】
製造例3
(プレポリマーおよびアクリル系粘着剤組成物2の調製)
プレポリマー形成用モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)40.5重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、イソステアリルアクリレート(ISA)40.5重量部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「Omnirad184」0.1重量部、BASF製「Omnirad651」0.1重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物を得た。上記のプレポリマー組成物100重量部に、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物2を調製した。
【0295】
製造例4
(プレポリマーおよびアクリル系粘着剤組成物3の調製)
プレポリマー形成用モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)40.5重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、イソステアリルアクリレート(ISA)40.5重量部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.15重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「Omnirad184」0.1重量部、BASF製「Omnirad651」0.1重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物を得た。上記のプレポリマー組成物100重量部に、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物3を調製した。
【0296】
製造例5
(プレポリマーおよびアクリル系粘着剤組成物4の調製)
ブチルアクリレート(BA)57重量部、シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業社製「ビスコート#155」)12重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)23重量部、及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)8重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「Omnirad184」0.1重量部、BASF製「Omnirad651」0.1重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物を得た。上記のプレポリマー組成物100重量部に、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物4を調製した。
【0297】
製造例6
(プレポリマーおよびアクリル系粘着剤組成物5の調製)
プレポリマー形成用モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA)95重量部、及びアクリル酸(AA)5重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF製「Omnirad184」0.1重量部、BASF製「Omnirad651」0.1重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物を得た。上記のプレポリマー組成物100重量部に、シランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、アクリル系粘着剤組成物5を調製した。
【0298】
実施例1
(封止材層1の調製)
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)を基材(兼重はく離ライナー)として、基材の離型層上に上記のアクリル系粘着剤組成物1を厚み50μmになるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽はく離ライナー)として片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRE75」)の離型層を貼り合わせた。この積層体に、カバーシート側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm2になるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、厚み50μmの封止材層1を得た。
(LED封止用シート1の調製)
上記で得られた封止材層1から一方のはく離ライナーを剥離して露出させた粘着面を、製造例1で示した防眩性フィルム1の非防眩層面に貼り付けることにより、防眩性フィルム1/封止材層1/はく離ライナーからなるLED封止用シート1を得た。
【0299】
実施例2
(LED封止用シート2の調製)
上記に記載したアクリル系粘着剤組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして、防眩性フィルム1/封止材層2/はく離ライナーからなるLED封止用シート2を得た。
【0300】
実施例3
(LED封止用シート3の調製)
上記に記載したアクリル系粘着剤組成物3を使用した以外は、実施例1と同様にして、防眩性フィルム1/封止材層3/はく離ライナーからなるLED封止用シート3を得た。
【0301】
比較例1
(LED封止用シート4の調製)
上記に記載したアクリル系粘着剤組成物4を使用した以外は、実施例1と同様にして、防眩性フィルム1/封止材層4/はく離ライナーからなるLED封止用シート4を得た。
【0302】
比較例2
(LED封止用シート5の調製)
上記に記載したアクリル系粘着剤組成物5を使用した以外は、実施例1と同様にして、防眩性フィルム1/封止材層5/はく離ライナーからなるLED封止用シート5を得た。
【0303】
(評価)
上記の実施例及び比較例で得られた封止材層、LED封止用シートを用いて、以下の評価を行った。評価方法を以下に示す。結果を表2に示す。
【0304】
(1)透湿度の測定
実施例、比較例で得られた厚み50μmの封止材層の一方のはく離ライナーを剥がし、粘着面を露出させて、該粘着面により、粘着シートをトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、厚み25μm、コニカミノルタ(株)製)に貼り合わせた。そして、もう一方のはく離ライナーを剥がして、測定用サンプルを得た。
次に、この測定用サンプルを用いて、下記条件で、透湿度試験方法(カップ法、JIS Z 0208に準じる)により、透湿度(水蒸気透過率)を測定した。
測定温度:40℃
相対湿度:92%
測定時間:24時間
なお、測定の際には、恒温恒湿槽を使用した。
【0305】
(2)カルボン酸系不純物(アクリル酸イオン)、塩化物イオン、及び硫化物イオンの含有量の測定
実施例、比較例で得られた封止材層を10×10cm(100cm2)に切り出し、1面側のはく離ライナーを剥がしてPETフィルムに貼り合わせた後、2面側のはく離ライナーを剥がした。2面側糊面を開放状態にしてPP製容器に入れて秤量し超純水を50mL添加した。次に100℃の乾燥機で45分間の加熱抽出を行い、得られた抽出液について、以下の条件のイオンクロマトグラフィーによる定量分析を行った。
測定装置:Thermo Fisher Scientific製,ICS-3000
分離カラムおよびガードカラム:Dionex IonPac AS18-fast(4mm×150mm)/Dionex IonPac AG18-fast(4mm×30mm)
除去システム:Dionex ADRS-600(エクスターナルモード)
検出器電気伝導度検出器
溶離液組成KOH水溶液(溶離液ジェネレーターEGCIIIを使用)
溶離液流量:1.2mL/min
試料注入量:250μL
【0306】
(3)窒素含有カチオン系不純物含有量の測定
試料調製方法は、上記のカルボン酸系不純物測定方法と同様に実施した。
測定装置等は下記の通り。
測定装置:Thermo Fisher Scientific製,ICS-5000
分離カラムおよびガードカラム:Dionex IonPac CS16(3mm×250mm)/Dionex IonPac CG16(3mm×50mm)
除去システム:Dionex CDRS-600(エクスターナルモード)
検出器電気伝導度検出器
溶離液組成MSA水溶液(溶離液ジェネレーターEGC500を使用)
溶離液流量0.36mL/min
試料注入量25μL
【0307】
(4)マイグレーション発生有無の評価
マイグレーション試験は、
図5に示すマイグレーション試験装置100を用いて行った。まず、ガラスエポキシ基板101を用意した。次に、ガラスエポキシ基板101上に、銀ペースト30を幅1mm、長さ50mm、厚さ30μmになるように2箇所、0.05mmの間隔をあけて塗布した。その後、2箇所の銀ペースト30の間隔を埋めるようにLED封止用シート(102)を銀ペースト30上に貼り合わせた。続いて、銀ペースト30の端部同士間に直流電源回路を接続した。マイグレーション試験装置100を85℃85%RH環境下で電源(電圧24V)をONにし、LED封止用シートの変化を観察した。マイグレーションが生じた場合、銀ペースト30間の導通が達成されて、LED封止用シートの封止材層表面に析出物が発生する。電源をONしてから500時間以内に析出物が生じた場合を「あり」、500時間以上析出物が発生しなかった場合を「なし」として評価した。
【0308】
(5)腐食性の評価
LED封止用シートを銅箔(株式会社UACJ製箔 圧延銅箔、TCU-0-35-RT-250-100-W)上に貼付し、85℃85%RH環境下に240時間投入した。その後取り出して銅箔が変色している場合「腐食あり」、変色してない場合「腐食なし」として評価した。
【0309】
(6)誘電率
実施例又は比較例で得られたLED封止用シートの剥離ライナーを剥がして銅箔に貼付し、防眩性フィルム側にアルミ電極を置き以下の装置により周波数100kHzにおける比誘電率を測定した。測定は3サンプルを作製し、それらの3サンプルの測定値の平均を比誘電率とした。なお、封止材層の周波数100kHzでの比誘電率は、JIS K 6911に準じて、下記条件で測定した。
測定方法:容量法(装置:Agilent Technologies 4294A Precision Impedance Analyzer)
電極構成:12.1mmΦ、0.5mm厚みのアルミ板
測定環境:23±1℃、52±1%RH
85℃85%RH環境投入前サンプルの誘電率をε0、LED封止用シートを銅箔に貼付し85℃85%RHに240時間投入したサンプルを測定したものをε1とし、誘電率差絶対値Δε(|ε0-ε1|)を算出した。
【0310】
【0311】
以下に、本発明のバリエーションを付記する。
〔付記1〕
第1面および第2面を有する基材と、前記基材の第1面に封止材層が積層された積層構造を有するLED封止用シートであって、
前記封止材層が、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤を含み、
前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、水酸基含有モノマーの割合は、10重量%以下であり、
前記封止材層におけるカルボン酸系不純物の含有量は、0.5ppm以下である、LED封止用シート。
〔付記2〕
前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、付記1に記載のLED封止用シート。
〔付記3〕
前記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)中の、炭素数12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、10重量%以上である、付記2に記載のLED封止用シート。
〔付記4〕
前記アクリル系ポリマーは、構成するモノマー成分として、窒素原子含有モノマーを含む、付記1~3のいずれか1つに記載のLED封止用シート。
〔付記5〕
前記基材の第2面は、反射防止処理及び/又はアンチグレア処理されている、付記1~4のいずれか1つに記載のLED封止用シート。
〔付記6〕
前記封止材層の100kHzでの初期誘電率ε0と、温度85℃、相対湿度85%の条件下で240時間投入後の100kHzでの誘電率ε1との差の絶対値Δε(|ε0-ε1|)は、1以下である、付記1~5のいずれか1つに記載のLED封止用シート。
〔付記7〕
可視光透過率が、90%以上である、付記1~6のいずれか1つに記載のLED封止用シート。
〔付記8〕
ヘイズが、1%以下である、付記1~7のいずれか1つに記載のLED封止用シート。
〔付記9〕
付記1~8のいずれか1つに記載のLED封止用シートと、LED表示パネルとが積層されたミニ/マイクロLED表示装置。