(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120690
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】操作補助システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/75 20150101AFI20240829BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20240829BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240829BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
E05F15/75
E05F15/611
B60J5/04 C
B60J5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027673
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 竜
(72)【発明者】
【氏名】宮代 龍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茉衣子
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA01
2E052CA06
2E052DA05
2E052DB05
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA10
2E052GB12
2E052GB15
2E052GD07
2E052LA02
(57)【要約】
【課題】手動操作の誤検出及び補助動作の誤作動を抑制する。
【解決手段】実施形態の操作補助システムは、開閉部にかかる加速度を検出するセンサと、開閉部を変位させる駆動力を発生させる駆動部と、センサにより検出された加速度に基づいて、ユーザが開閉部に力を加えることにより開閉部を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する手動操作検出部と、手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、手動操作検出部は、開閉部にかかる加速度と、所定期間における加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が第1閾値以上となった場合に、手動操作が行われたと判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉部に対するユーザによる操作を補助する操作補助システムであって、
前記開閉部にかかる加速度を検出するセンサと、
前記開閉部を変位させる駆動力を発生させる駆動部と、
前記センサにより検出された前記加速度に基づいて、前記ユーザが前記開閉部に力を加えることにより前記開閉部を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する手動操作検出部と、
前記手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要する前記ユーザの操作力を軽減するように前記駆動部を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記手動操作検出部は、前記開閉部にかかる前記加速度と、所定期間における前記加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が第1閾値以上となった場合に、前記手動操作が行われたと判定する、
操作補助システム。
【請求項2】
前記手動操作検出部は、前記センサにより検出された前記加速度から所定のカットオフ周波数より高い周波数の成分を抽出するハイパスフィルタの適用後の加速度が第2閾値以上となってから所定の禁止期間が経過するまでの間、前記手動操作の検出を禁止する、
請求項1に記載の操作補助システム。
【請求項3】
前記手動操作検出部は、前記センサにより検出された前記加速度から所定のカットオフ周波数より高い周波数の成分を抽出するハイパスフィルタの適用後の前記加速度が第2閾値以上となってから所定の禁止期間が経過するまでの間、前記第1閾値を当該禁止期間以外における値より大きい値に補正する、
請求項1に記載の操作補助システム。
【請求項4】
開閉部を変位させる駆動力を発生させる駆動部を制御するための処理を実行する制御装置であって、
前記開閉部にかかる加速度に基づいて、ユーザが前記開閉部に力を加えることにより前記開閉部を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する手動操作検出部と、
前記手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要する前記ユーザの操作力を軽減するように前記駆動部を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記手動操作検出部は、前記開閉部にかかる前記加速度と、所定期間における前記加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が第1閾値以上となった場合に、前記手動操作が行われたと判定する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、操作補助システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体において、ユーザがドア等の開閉部を操作する際に、ユーザの操作を補助するように開閉部を駆動させるシステムが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシステムにおいて、開閉部にかかる加速度に基づいて開閉部に対するユーザによる手動操作を検出し、手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動力(アシスト力)を発生させる補助動作を実行する場合がある。このような場合、検出された加速度に手動操作以外の外乱に起因するノイズが含まれていると、手動操作が誤検出され、補助動作が誤作動する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の実施形態が解決しようとする課題の一つは、手動操作の誤検出及び補助動作の誤作動を抑制可能な操作補助システム及び制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、開閉部に対するユーザによる操作を補助する操作補助システムであって、開閉部にかかる加速度を検出するセンサと、開閉部を変位させる駆動力を発生させる駆動部と、センサにより検出された加速度に基づいて、ユーザが開閉部に力を加えることにより開閉部を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する手動操作検出部と、手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、手動操作検出部は、開閉部にかかる加速度と、所定期間における加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が第1閾値以上となった場合に、手動操作が行われたと判定する。
【0007】
上記構成によれば、加速度と平均加速度との差分値に基づいて手動操作の有無が判定される。これにより、外乱に起因して加速度が瞬間的に大きくなった場合でも、手動操作の誤検出を抑制でき、延いては駆動部による補助動作の誤作動を抑制できる。
【0008】
また、上記構成において、手動操作検出部は、センサにより検出された加速度から所定のカットオフ周波数より高い周波数の成分を抽出するハイパスフィルタの適用後の加速度が第2閾値以上となってから所定の禁止期間が経過するまでの間、手動操作の検出を禁止してもよい。
【0009】
上記構成によれば、ハイパスフィルタ後の加速度に基づいて外乱の存否が判定され、外乱が存在すると判定された(ハイパスフィルタ後の加速度が第2閾値以上となった)場合には、所定の禁止期間が経過するまでの間、手動操作の検出が禁止される。これにより、外乱による手動操作の誤検出を抑制する効果を向上させることができる。
【0010】
また、上記構成において、手動操作検出部は、センサにより検出された加速度から所定のカットオフ周波数より高い周波数の成分を抽出するハイパスフィルタ後の加速度が第2閾値以上となってから所定の禁止期間が経過するまでの間、第1閾値を当該禁止期間以外における値より大きい値に補正してもよい。
【0011】
上記構成によれば、ハイパスフィルタ後の加速度に基づいて外乱の存否が判定され、外乱が存在すると判定された(ハイパスフィルタ後の加速度が第2閾値以上となった)場合には、所定の禁止期間が経過するまでの間、第1閾値が大きい値に補正される。これにより、禁止期間において手動操作を検出し難くすることができ、外乱による手動操作の誤検出を抑制する効果を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態は、開閉部を変位させる駆動力を発生させる駆動部を制御するための処理を実行する制御装置であって、開閉部にかかる加速度に基づいて、ユーザが開閉部に力を加えることにより開閉部を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する手動操作検出部と、手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、手動操作検出部は、開閉部にかかる加速度と、所定期間における加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が第1閾値以上となった場合に、手動操作が行われたと判定する。
【0013】
上記構成によれば、加速度と平均加速度との差分値に基づいて手動操作の有無が判定される。これにより、外乱に起因して加速度が瞬間的に大きくなった場合でも、手動操作の誤検出を抑制でき、延いては駆動部による補助動作の誤作動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態の操作補助システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のECUの機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の加速度及び平均加速度のそれぞれの時系列変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の差分値の時系列変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の外乱存在時におけるHPF後の加速度とHPF前の加速度と差分値との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の外乱非存在時におけるHPF後の加速度とHPF前の加速度との関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のECUによる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態の外乱存在時におけるHPF後の加速度と第1閾値との関係の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のECUによる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によりもたらされる作用、結果及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によりも実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の操作補助システムSのシステム構成の一例を示す図である。本実施形態の操作補助システムSは、四輪自動車等の車両1に搭載されたドア2(開閉部の一例)に対するユーザ(乗員)による操作を補助するシステムである。本実施形態のドア2は、ユーザが車両1に対して乗降する際に開閉されるヒンジドアである。
【0017】
操作補助システムSは、駆動ユニット11(駆動部の一例)、ロック機構12、加速度センサ13(センサの一例)、障害物センサ14及びECU(Electronic Control Unit)15(制御装置の一例)を有する。
【0018】
駆動ユニット11は、ドア2を変位させる駆動力を発生させるユニットであり、例えば電動モータ、リンク機構等を含むアクチュエータを利用して構成され得る。駆動ユニット11は、例えばドア2のヒンジ部等に設置され、後述するECU15からの制御信号に応じてドア2を開放方向又は閉鎖方向に変位させる駆動力を発生させる。
【0019】
ロック機構12は、ドア2を施錠状態又は解放状態のどちらかに切り替える機構である。本実施形態のロック機構12は、ECU15からの制御信号に応じて電気的に作動するアクチュエータを備え、当該制御信号に応じて施錠状態と解放状態とを切り替える。
【0020】
加速度センサ13は、ドア2にかかる加速度を検出するセンサである。加速度センサ13は、例えば互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの加速度を検出可能な3軸加速度センサ等であり得る。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、例えば、車両1の幅(左右)方向、前後方向及び上下方向等であり得る。加速度センサ13は、ドア2の内部に設置される。加速度センサ13は、ECU15と一体的に構成されてもよい。
【0021】
障害物センサ14は、車両1の周辺に存在する障害物を検出するセンサである。障害物センサ14は、例えば車体(ドア2等)から障害物までの距離を測定可能な測距センサであり、例えば超音波センサ、ミリ波センサ、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ等であり得る。
【0022】
ECU15は、駆動ユニット11及びロック機構12を制御する情報処理装置である。ECU15は、例えばCPU(Central Processing Unit)、メモリ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、入力I/F(Interface)、出力I/F等を利用して構成され得る。ECU15は、車両1に搭載されたバッテリ21と所定の電送路を介して接続している。また、ECU15は、車両1に搭載された他ECU22やユーザI/F23等とCAN(Controller Area Network)等の通信網を介して接続している。他ECU22は、例えば車両1の走行を制御するための処理を行うECU等であり得る。ユーザI/F23は、例えば車内に搭載されユーザ(乗員)により設定操作等が可能な操作ユニット等であり得る。
【0023】
本実施形態のECU15は、加速度センサ13等から取得した情報に基づいて、ドア2に対するユーザによる操作を補助するように駆動ユニット11等を制御するための処理を実行する。
【0024】
図2は、第1実施形態のECU15の機能構成の一例を示す図である。ECU15は、取得部101、フィルタ処理部102、手動操作検出部103及び駆動制御部104を有する。これらの機能部101~104は、ECU15を構成するハードウェア(CPU等)とソフトウェア(メモリに記憶されたプログラム等)との協働により構成される。また、機能部101~104のうち少なくとも1つが専用のハードウェア(回路等)により構成されてもよい。
【0025】
取得部101は、加速度センサ13からドア2にかかる加速度を示す加速度情報を取得する。加速度情報には、ドア2に瞬間的に係る加速度の時系列変化を示す情報等が含まれる。
【0026】
フィルタ処理部102は、取得部101により取得された加速度情報に対して所定のフィルタ処理を実行する。本実施形態のフィルタ処理は、ハイパスフィルタ(HPF)を実行し、HPF後の加速度を出力する。本実施形態のHPFは、加速度センサ13により検出された加速度から所定のカットオフ周波数より高い周波数の成分を抽出する処理である。HPFは、例えば、カットオフ周波数より高い周波数で変動する加速度の値を増加させるように作用するものであり得る。
【0027】
HPF後の加速度は、例えば下記式(1)により算出され得る。式(1)中、afilnはHPF後の加速度を示し、anは現在の加速度を示し、an-1は前回周期の加速度を示し、afiln-1は前回周期のHPF後の加速度を示し、Tは1周期分の時間を示し、fcはカットオフ周波数を示している。なお、当該算出法は一例であり、HPF後の加速度の算出法はこれに限定されるものではない。
【0028】
【0029】
手動操作検出部103は、取得部101により取得された加速度情報(加速度センサ13により検出された加速度)に基づいて、ユーザがドア2に力を加えることによりドア2を開放又は閉鎖させる手動操作を検出する。
【0030】
駆動制御部104は、手動操作検出部103により手動操作が検出された場合に、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減させる駆動力(アシスト力)が発生するように、駆動ユニット11を制御する。
【0031】
本実施形態の手動操作検出部103は、手動操作の誤検出を抑制するための機能を有する。具体的には、手動操作検出部103は、ドア2にかかる加速度(瞬間的な加速度)と、所定期間における当該加速度の平均値である平均加速度と、の差分値が所定の第1閾値以上となった場合に、手動操作が行われたと判定する。
【0032】
図3は、第1実施形態の加速度及び平均加速度のそれぞれの時系列変化の一例を示す図である。
図3において、瞬間的な加速度の時系列変化を示す線L1と、平均加速度の時系列変化を示す線L2と、が例示されている。線L1上の各時点における加速度の値は、加速度センサ13により所定の周期Δt毎に検出された瞬間的な加速度である。線L2上の各時点における平均加速度の値は、所定期間(例えば複数の周期Δt分の期間)内に検出された複数の瞬間的な加速度の平均値であり、例えば移動平均等の適宜な手法を用いて算出され得るものである。
【0033】
図4は、第1実施形態の差分値の時系列変化の一例を示す図である。
図4において、瞬間的な加速度(
図3の線L1)と平均加速度(
図3の線L2)との差分値の時系列変化を示す線L3が例示されている。
【0034】
本実施形態の手動操作検出部103は、差分値が所定の第1閾値Th1以上となった場合に、ユーザによる手動操作が行われた(開始された)と判定する。
図4に示される例では、時刻t1に手動操作が行われたと判定されることとなる。
【0035】
ドア2にかかる加速度は、当該ドア2に対するユーザによる手動操作以外の外乱に起因して瞬間的に増加する場合がある。外乱とは、例えば、対象となっているドア2以外のドアの開閉、車室内の乗員の動作、外部から車体に与えられる振動等であり得る。そこで、本実施形態のように、瞬間的な加速度と平均加速度との差分値に基づいて手動操作の有無を判定することにより、外乱に起因して加速度が瞬間的に大きくなった場合でも、手動操作が行われたと誤判定される可能性を低減できる。
【0036】
また、本実施形態の手動操作検出部103は、HPF後の加速度(フィルタ処理部102によるHPFが適用された後の加速度)に基づいて外乱の有無を判定し、外乱が存在すると判定された場合には、手動操作の検出を所定期間禁止する。具体的には、HPF後の加速度が所定の第2閾値以上となってから所定の禁止期間が経過するまでの間、手動操作の検出が禁止される。
【0037】
図5は、第1実施形態の外乱存在時におけるHPF後の加速度とHPF前の加速度と差分値との関係の一例を示す図である。
図5において、外乱存在時におけるHPF後の加速度の時系列変化を示す線L4と、HPF前の加速度の時系列変化を示す線L1と、差分値の時系列変化を示す線L3と、が例示されている。これらの線L4,L1,L3の時系列は一致しているものとする。
【0038】
ここで例示する線L4は、外乱が存在する場合におけるHPF後の加速度に対応している。例えば、対象となっているドア2以外のドアが閉められた際の衝撃等の外乱が発生すると、対象となっているドア2に搭載された加速度センサ13により検出される加速度に高周波の変動が生じ、線L4に例示されるように、HPF後の加速度が増大する現象が生ずる。
【0039】
本実施形態の手動操作検出部103は、
図5に示されるように、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上となった時刻t2から所定の禁止期間ΔTが経過するまでの間、当該HPF後の加速度に対応するHPF前の加速度の値をマスクする。本例では、
図5中中央のグラフに例示されるように、禁止期間ΔTにおけるHPF前の加速度を0とする。これに伴い、禁止期間ΔTにおける差分値も0となる。
【0040】
上記のように、本実施形態においては、HPF後の加速度に基づいて外乱の存否が判定され、外乱が存在すると判定された場合には、所定の禁止期間ΔTが経過するまでの間、手動操作の検出が禁止される。このような処理により、外乱による手動操作の誤検出をより確実に抑制できる。
【0041】
図6は、第1実施形態の外乱非存在時におけるHPF後の加速度とHPF前の加速度との関係の一例を示す図である。
図6において、HPF前の加速度の時系列変化を示す線L1と、当該線L1に基づいて導出され、外乱が存在しない場合におけるHPF後の加速度の時系列変化を示す線L4と、が例示されている。
図6に示されるように、外乱が存在しない場合には、HPF前の加速度が大きく変動しても、HPF後の加速度の値は低いままとなる。
【0042】
図7は、第1実施形態のECU15による処理の一例を示すフローチャートである。取得部101が加速度センサ13により検出された加速度を取得すると(S101)、フィルタ処理部102は、当該加速度に対してHPFを実行し(S102)、手動操作検出部103は、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上であるか否かを判定する(S103)。
【0043】
HPF後の加速度が第2閾値Th2以上でない場合(S103:No)、すなわち外乱が存在しない(外乱の影響が十分に小さい)場合、手動操作検出部103は、HPF前の加速度に基づいて差分値を算出する(S105)(
図3及び
図4参照)。一方、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上である場合(S103:Yes)、すなわち外乱が存在する(外乱の影響がある程度大きい)場合、手動操作検出部103は、HPF前の加速度を禁止期間ΔTが経過するまでの間マスクし(S104)、マスクされたHPF前の加速度に基づいて差分値を算出する(S105)(
図5参照)。
【0044】
その後、手動操作検出部103は、上記のように算出された差分値が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する(S106)。差分値が第1閾値Th1以上である場合(S106:Yes)、手動操作検出部103は、手動操作が行われたと判定し(S107)、駆動制御部104は、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動ユニット11を制御する(S108)。一方、差分値が第1閾値Th1以上でない場合(S106:No)、手動操作は行われていないと判定され、本ルーチンを終了する。
【0045】
上記実施形態によれば、加速度センサ13により検出された瞬間的な加速度と平均加速度との差分値に基づいて手動操作の有無が判定される。これにより、外乱に起因して加速度が瞬間的に大きくなった場合でも、手動操作の誤検出を抑制でき、延いては駆動ユニット11による補助動作の誤作動を抑制できる。また、HPF後の加速度に基づいて外乱の存否が判定され、外乱が存在すると判定された場合には、所定の禁止期間ΔTが経過するまでの間、手動操作の検出が禁止される。これにより、外乱による手動操作の誤検出を抑制する効果を向上させることができる。
【0046】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、HPF後の加速度に基づいて外乱が存在すると判定された(HPF後の加速度が第2閾値Th2以上である)場合に、所定の禁止期間ΔTが経過するまでの間、HPF前の加速度がマスクされ、手動操作の検出が禁止される構成を例示したが、外乱が存在すると判定された後の処理はこれに限定されるものではない。本実施形態においては、HPF後の加速度に基づいて外乱が存在すると判定された場合に、第1閾値Th1を禁止期間ΔT以外における値より大きい値に補正する。
【0047】
図8は、第2実施形態の外乱存在時におけるHPF後の加速度と第1閾値Th1,Th1´との関係の一例を示す図である。
図8において、外乱が存在する場合におけるHPF後の加速度の時系列変化を示す線L4と、差分値の時系列変化を示す線L3と、第1閾値Th1,Th1´と、が例示されている。
【0048】
本実施形態においては、
図8に示されるように、HPF後の加速度が第2閾値Th2に達した時刻t2から禁止期間ΔTが経過するまでの間、第1閾値が値Th1から値Th1´に補正される。禁止期間ΔTに対応する値Th1´は、禁止期間ΔT以外の期間に対応する値Th1より大きい値である。第1閾値をこのように補正することにより、禁止期間ΔTにおいて手動操作が検出され難くなる。このような手法によっても、外乱による手動操作の誤検出を抑制する効果を向上させることができる。
【0049】
図9は、第2実施形態のECU15による処理の一例を示すフローチャートである。取得部101が加速度センサ13により検出された加速度を取得すると(S201)、フィルタ処理部102は、当該加速度に対してHPFを実行し(S202)、手動操作検出部103は、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上であるか否かを判定する(S203)。
【0050】
HPF後の加速度が第2閾値Th2以上でない場合(S203:No)、すなわち外乱が存在しない(外乱の影響が十分に小さい)場合、手動操作検出部103は、HPF前の加速度に基づいて差分値を算出する(S205)(
図3及び
図4参照)。一方、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上である場合(S203:Yes)、すなわち外乱が存在する(外乱の影響がある程度大きい)場合、手動操作検出部103は、禁止期間ΔTにおける第1閾値を禁止期間ΔT以外の期間に対応する値Th1より大きい値Th1´に補正し(S204)、その後、HPF前の加速度に基づいて差分値を算出する(S205)。
【0051】
その後、手動操作検出部103は、差分値が第1閾値Th1又はTh1´以上であるか否かを判定する(S206)。このとき、第1閾値は、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上でなかった場合(S203:No)には、通常の値Th1となり、HPF後の加速度が第2閾値Th2以上であった場合(S203:Yes)には、値Th1より大きい値Th1´となる。
【0052】
差分値が第1閾値Th1又はTh1´以上である場合(S206:Yes)、手動操作検出部103は、手動操作が行われたと判定し(S207)、駆動制御部104は、当該手動操作に要するユーザの操作力を軽減するように駆動ユニット11を制御する(S208)。一方、差分値が第1閾値Th1又はTh1´以上でない場合(S206:No)、手動操作は行われていないと判定され、本ルーチンを終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、HPF後の加速度が第2閾値Th2に達した時刻t2から禁止期間ΔTが経過するまでの間、第1閾値が値Th1より大きい値Th1´に補正される。第1閾値をこのように補正することにより、禁止期間ΔTにおいては手動操作が検出され難くなる。これにより、外乱による手動操作の誤検出を抑制する効果を向上させることができる。
【0054】
(変形例)
上記実施形態においては、HPF後の加速度に基づいて外乱の存否を判定し、外乱が存在すると判定された場合、手動操作の検出を禁止する処理(第1実施形態)、又は第1閾値Th1を大きくして手動操作が検出され難くする処理(第2実施形態)が含まれるが、これらの処理は必須のものではない。これらの処理が省略された構成であっても、手動操作の誤作動を抑制する効果が得られる。
【0055】
上記実施形態又は変形例の操作補助システムSの機能を実現するための処理をコンピュータ(ECU15等)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、上記実施形態及びその変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態又はその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…車両、2…ドア、11…駆動ユニット、12…ロック機構、13…加速度センサ、14…障害物センサ、15…ECU、101…取得部、102…フィルタ処理部、103…手動操作検出部、104…駆動制御部、S…操作補助システム、Th1,Th1´…第1閾値、Th2…第2閾値、ΔT…禁止期間