(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120695
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 41/02 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F04B41/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027683
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】成澤 伸之
(72)【発明者】
【氏名】八木 将人
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA35
3H076BB40
3H076BB41
3H076BB50
3H076CC07
3H076CC48
3H076CC99
(57)【要約】
【課題】タンクの共用化を図りつつ、圧縮機構の大型化、大容量化に伴う問題の発生を抑制できる気体圧縮機を提供する。
【解決手段】気体圧縮機100は、タンク103上に設けられた台板120,130と、台板120,130の上に取り付けられ、台板120,130を覆う架台110とを備える。架台110の上には、圧縮機本体101と、電動機102とが取り付けられる。台板120,130の上には、複数種類の圧縮機本体101のそれぞれの取付け位置に対応した複数種類の架台110のうちのいずれか一つが取り付けられる。架台110は、圧縮機本体101の下方に位置する貫通穴115を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体を貯留するタンクと、
前記タンク上に設けられた土台と、
前記土台の上に取り付けられ、前記土台を覆う架台と、
前記架台の上に取り付けられ、圧縮気体を生成する圧縮機構と、
前記架台の上に取り付けられ、前記圧縮機構を駆動する動力を発生する動力機構と、を備え、
前記土台の上には、複数種類の圧縮機構のそれぞれの取付け位置に対応した複数種類の前記架台のうちのいずれか一つが取り付けられており、
前記架台は、前記圧縮機構の下方に位置する貫通穴を有する、気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記土台は、複数設けられており、
複数の前記土台のうちの少なくとも一つが前記圧縮機構の下方に配置されている、気体圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の気体圧縮機において、
前記圧縮機構の下方に配置された土台は、前記架台の前記貫通穴に連通する土台貫通穴を有する、気体圧縮機。
【請求項4】
請求項2に記載の気体圧縮機において、
前記圧縮機構の下方に配置された土台は、前記圧縮機構と前記架台との複数の固定点の水平方向外側における少なくとも4点で、前記架台と固定されている、気体圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記土台は、前記架台が載置される載置部と、前記タンクと接合する接合部とを有し、
前記接合部は、前記載置部よりも前記タンクの長手方向に突出する凸部を有する、気体圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記架台は、前記圧縮機構および前記動力機構が載置される支持板と、該支持板の少なくとも一端縁から該支持板に対して垂直方向に延びる折り部とを有する、気体圧縮機。
【請求項7】
請求項6に記載の気体圧縮機において、
前記折り部は、前記支持板の短手方向の両側端縁にそれぞれ設けられている、気体圧縮機。
【請求項8】
請求項7に記載の気体圧縮機において、
前記支持板の短手方向の両側端縁に設けられた前記折り部は、前記支持板の端縁からそれぞれ反対方向に延びる、気体圧縮機。
【請求項9】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記架台は、前記圧縮機構に対して近接離間移動可能に前記動力機構を締結するための長穴を有する、気体圧縮機。
【請求項10】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記架台は、前記圧縮機構および前記動力機構が載置される支持板と、該支持板の下面に取り付けられ、前記動力機構の下方に位置する補強部材とを有する、気体圧縮機。
【請求項11】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記架台は、複数に分割されている、気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクマウント型圧縮機では、タンク上に圧縮機構用の土台と動力機構用の土台とが溶接され、該土台の上に圧縮機構と動力機構とがねじ止めによって固定されている。
【0003】
このような場合において、タンクを異なる機種間で共用化したいというニーズがある。しかし、異なる機種では圧縮機構や動力機構のサイズが異なるため、これらを固定できる土台が異なる。タンク上に溶接する土台が変わると、タンク自体が同じであっても別の品番を付した部品として管理することになるため、共用化による生産管理の簡素化というメリットを享受することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の
図7には、圧縮機構と動力機構の下に台板36を設け、台板36をタンクを支持する支持ブロック21に取り付けた構成が開示されている。
しかし、このような構成では、仮に台板36を機種ごとに用意することでタンクの共用化ができたとしても、圧縮機構の大型化、大容量化に伴う騒音等の問題が生じるという課題が残る。
【0006】
本発明は、タンクの共用化を図りつつ、圧縮機構の大型化、大容量化に伴う問題の発生を抑制できる気体圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る気体圧縮機は、圧縮気体を貯留するタンクと、前記タンク上に設けられた土台と、前記土台の上に取り付けられ、前記土台を覆う架台と、前記架台の上に取り付けられ、圧縮気体を生成する圧縮機構と、前記架台の上に取り付けられ、前記圧縮機構を駆動する動力を発生する動力機構と、を備え、前記土台の上には、複数種類の圧縮機構のそれぞれの取付け位置に対応した複数種類の前記架台のうちのいずれか一つが取り付けられており、前記架台は、前記圧縮機構の下方に位置する貫通穴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンクの共用化を図りつつ、圧縮機構の大型化、大容量化に伴う問題の発生を抑制できる気体圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る気体圧縮機を示す分解斜視図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係る気体圧縮機を示す正面図である。
【
図1C】本発明の第1実施形態に係る気体圧縮機を示す平面図である。
【
図2A】本発明の第2実施形態に係る気体圧縮機の第1例を示す正面図である。
【
図2B】本発明の第2実施形態に係る気体圧縮機の第1例を示す右側面図である。
【
図3A】本発明の第2実施形態に係る気体圧縮機の第2例を示す斜視図である。
【
図3B】本発明の第2実施形態に係る気体圧縮機の第2例を示す正面図である。
【
図3C】本発明の第2実施形態に係る気体圧縮機の第2例を示す右側面図である。
【
図4A】本発明の第3実施形態に係る気体圧縮機を示す正面図である。
【
図4B】本発明の第3実施形態に係る気体圧縮機のタンクを除く部分を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、同一または同種の構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1A~
図1Cは、本発明の 第1実施形態に係る気体圧縮機100の構成を示す。本実施形態では、気体としての空気を圧縮するレシプロタイプの気体圧縮機100について説明する。なお、説明の便宜上、
図1Aに示すように前後左右上下の各方向を設定する。
図1A~
図1Cに示す気体圧縮機100は、ピストン(図示せず)とシリンダとを1つずつしか持たない1気筒1段圧縮機である。
【0012】
気体圧縮機100は、圧縮機本体(圧縮機構)101と、タンク103と、電動機(動力機構)102と、動力伝達機構106と、台板(土台)120,130と、架台110とを備えている。圧縮機本体101は、圧縮空気(圧縮気体)を生成する。タンク103は、圧縮機本体101にて生成された圧縮空気を貯留する。電動機102は、圧縮機本体101を駆動する動力を発生する。
【0013】
動力伝達機構106は、電動機102から圧縮機本体101へ動力を伝達する。本実施形態では、動力伝達機構106は、駆動プーリ107と、従動プーリ108と、ベルト109とを有している。駆動プーリ107は、電動機102の後方に設けられており、電動機102の回転軸(図示省略)に接続されている。従動プーリ108は、圧縮機本体101の後方に設けられており、圧縮機本体101のクランクシャフト(図示省略)に接続されている。従動プーリ108は、回転時に冷却風を発生させる冷却ファンが付設されている。ベルト109は、従動プーリ108と駆動プーリ107との間に架け渡されている。
【0014】
タンク103は、円筒形状の胴部104と、胴部104の両端に溶接される鏡板105とを有している。本実施形態では、複数の台板120,130が設けられている。これらの台板120,130は、タンク103の胴部104の上に溶接されることで設けられている。一方の台板120は、圧縮機本体101の下方に配置されている。他方の台板130は、一方の台板120よりも電動機102側に離れた位置に配置されている。
【0015】
従来、一方の台板120に圧縮機本体101、他方の台板130に電動機102を直接配置する構成としていたが、タンク103を共用化する場合に以下の問題点がある。
(1)台板120は、圧縮方式や出力が異なると圧縮機本体101を固定するボルト、ナットのピッチが異なるため、タンク103を共用化する場合、ボルト挿通用の複数個の穴を各機種で使用可能に設ける必要がある。さらに、ボルト挿通用の穴は、ピッチの他にも、製品の重心位置や、圧縮機本体101から従動プーリ108の端面までの距離を考慮する必要がある。このため、圧縮機本体101の固定に使用されるボルト挿通用の穴の一部が複数の機種で重なり、ボルト、ナットによる圧縮機本体101の固定が不可となるおそれがある。
【0016】
(2)圧縮機本体101をベルト109を用いて駆動する場合、一般的に電動機102を左右に動かしてベルト109の張力を設定するため、台板130は、電動機102の固定に用いるボルト挿通用の長穴を設ける必要がある。この長穴は、電動機102を固定するボルト、ナットのピッチによっては、ボルト挿通用の長穴の一部が複数の機種で重なり、ボルト、ナットによる電動機102の固定が不可となるおそれがある。
【0017】
これらの問題点を解決するため、本実施形態では、タンク103上に設けられる台板120,130と、圧縮機本体101および電動機102との間に、架台110が配置されている。
【0018】
すなわち、架台110は、台板120,130の上に取り付けられており、台板120,130を覆っている。圧縮機本体101および電動機102は、架台110の上に取り付けられる。台板120,130の上には、複数種類の圧縮機本体101のそれぞれの取付け位置に対応した複数種類の架台110のうちのいずれか一つが取り付けられる。なお、架台110は、複数に分割されていてもよい。
【0019】
架台110は、圧縮機本体101および電動機102が載置される平板状の支持板116を有している。支持板116は、台板120,130に設置される固定用のボルト121,131が挿通する穴111,113と、電動機102を左右へ移動可能に固定するためのボルト(図示省略)が挿通する長穴114とを有する。また、支持板116は、圧縮機本体101を固定するためのボルト112が挿通する穴150を有する。
【0020】
ボルト112は、例えば、穴150に下方からネジ軸を挿通した状態で頭部を点溶接等によって支持板116に予め接合する。ただし、ボルト112は、締結時に作業者によって支えられながら穴150に挿通されてもよい。なお、ネジによる締結(固定)は、板厚によって、ボルトおよびナットによるネジ固定、タップ加工によるネジ固定、並びにバーリング加工によるネジ固定のいずれかが選択されるとよい。例えば、板厚3.2mmの場合、タップ加工によるネジ山の確保が困難なため、ボルトおよびナット、もしくはバーリングによるネジ固定が好ましい。
【0021】
台板120は、加振源である圧縮機本体101の下方、例えば直下に配置される。台板130は、台板120の電動機102側の端面と、胴部104の圧縮機本体101とは反対側の端面との間に配置される。台板120は、架台110上における圧縮機本体101固定のボルト112の4本の水平方向外側において、架台110と4点で締結される。台板130は、架台110と2点で締結される。
【0022】
架台110を分割する場合、例えば、台板120の高さよりも台板130の高さが架台110の板厚分だけ高くなるようにずらし、台板120上で分割した架台110を重ね合わせて台板120に共締めしてもよい。あるいは、台板120と架台110との締結点数を増やすことで、分割した架台110の取付位置を左右同一高さに揃えてもよい。なお、電動機102は、圧縮機本体101の左右どちら側に配置してもよい。台板120と架台110との締結点の数は、4点以上であってもよく、振動およびタンク溶接部応力が小さければ減らしてもよい。
【0023】
台板120,130は、架台110が載置される平板状の載置部123,133と、タンク103と接合する接合部124,134とを有する。接合部124,134は、載置部123,133の前後方向の両側端縁から鉛直下方に延びている。載置部123,133と接合部124,134とは、1枚の平板を折り曲げて形成されている。接合部124,134の下端縁とタンク103の外周面とが、溶接によって接合される。
【0024】
台板130の接合部134は、載置部133よりもタンク103の長手方向(左右方向)に突出する凸部132を有している。凸部132を設けることで応力集中点をずらし、応力緩和が可能となる。なお、凸部132は、
図1では接合部134の左側に設けられているが、右側または左右両側に設けられてもよい。また、台板120の接合部124に対しても、台板130の接合部134と同様な凸部が設けられてもよい(
図4A参照)。
【0025】
本実施形態では、架台110は、圧縮機本体101の下方、例えば直下に位置する貫通穴115を有している。また、圧縮機本体101の下方に配置された台板120は、架台110の貫通穴115に連通する土台貫通穴122を有している。
【0026】
前記したように、本実施形態に係る気体圧縮機100は、タンク103上に設けられた台板120,130と、台板120,130の上に取り付けられ、台板120,130を覆う架台110とを備える。架台110の上には、圧縮機本体101と、電動機102とが取り付けられる。台板120,130の上には、複数種類の圧縮機本体101のそれぞれの取付け位置に対応した複数種類の架台110のうちのいずれか一つが取り付けられる。架台110は、圧縮機本体101の下方に位置する貫通穴115を有する。
【0027】
このような本実施形態によれば、以下のようなメリットがある。
架台110を各々の製品に合わせ、固定用の穴位置を調整することで脚部のピッチ、重心位置の異なる圧縮機本体101および電動機102を同一のタンク103に載せることができ、製品の重心位置も調整可能となる。このため、タンク103の共用化が可能となる。これにより、急を要する生産計画変更にも対応することが可能といった効果が得られる。特に第2種圧力容器を使用する気体圧縮機100においては、外部機関での検定が必要なため、生産管理の簡素化の効果を十分に受けることが可能となる。
【0028】
加振源である圧縮機本体101は振動するため、架台110と共鳴する場合がある。この場合、圧縮機本体101の下方に配置される架台110に貫通穴115を設けることで音の反響を防ぎ、騒音値を低減することが可能となる。
したがって、タンク103の共用化を図りつつ、圧縮機本体101の大型化、大容量化に伴う騒音等の問題の発生を抑制できる気体圧縮機100を提供することができる。
【0029】
また、架台110を用いた構成とすることで、タンク103よりも上の部分の組立工程は、タンク103上に載せた状態で実施する必要がない。これにより、作業者が組み立て易い高さ等で作業を行うことができ、作業者への負担を軽減することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、複数の台板120,130が設けられており、複数の120,130のうちの少なくとも一つである台板120が圧縮機本体101の下方に配置されている。この構成では、圧縮機本体101の下方において架台110と台板120とを重ねることで剛性を向上できるため、振動低減が図られる。
【0031】
また、本実施形態では、圧縮機本体101の下方に配置された台板120は、架台110の貫通穴115に連通する土台貫通穴122を有する。この構成では、圧縮機本体101を台板120で支持して振動低減を図りつつ、音の反響を防ぎ、騒音値を低減することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、圧縮機本体101の下方に配置された台板120は、圧縮機本体101と架台110との複数の固定点の水平方向外側における少なくとも4点で、架台110と固定されている。この構成では、台板120と架台110とが強固に固定されるため、振動低減が可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、台板130の接合部134は、載置部133よりもタンク103の長手方向に突出する凸部132を有している。凸部132を設けることで応力集中点をずらすことができ、これにより、溶接部の応力を緩和することが可能となる。また、台板130とタンク103との溶接部の強度が不十分な場合に、溶接長さを確保することに有用となる。なお、凸部132は、溶接部の応力が小さい場合には省略されてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、架台110は、圧縮機本体101に対して近接離間移動可能に電動機102を締結するための長穴114を有する。長穴114によって、ベルト109の張力の調整や、例えば電動機102が異なっても駆動プーリ107の径を変更することで圧縮機本体101の回転速度を揃える場合の軸間距離の調整が可能となる。
【0035】
また、架台110を複数に分割した場合には、架台110の分割部品単体の重量が減少するため、作業者への負担を軽減することが可能となる。また、架台110の分割部品単体のサイズが小さくなるため、架台110の折り部117(
図2A参照)の曲げ加工や、ボルト112の頭部の架台110への点溶接などの作業効率が向上する。
【0036】
[第2実施形態]
図2A、
図2Bは、本発明の第2実施形態の第1例に係る気体圧縮機100Aの構成を示す。
図3A~
図3Cは、本発明の第2実施形態の第2例に係る気体圧縮機100Bの構成を示す。本実施形態では、
図2A、
図2B、
図3A~
図3Cを参照して、第1実施形態に対して、架台110の板厚を薄くしつつ、振動対策を施した形状について説明する。
【0037】
第1実施形態では、架台110が平板状の支持板116から構成される例を示したが、実際には、気体圧縮機100の出力が上がるにつれ、圧縮機本体101と電動機102の重量は増加し、発生する振動は増加する。第1実施形態における振動対策としては架台110の板厚を大きくすることが考えられるが、この方法では材料費が嵩む。このため、
図2A、
図2B、
図3A~
図3Cに示すように、架台110の支持板116の少なくとも一端縁から支持板116に対して垂直方向に任意の高さで延びる折り部117,118,119が追加される。これにより、架台110の剛性が向上し、振動が低減される。
【0038】
本実施形態では、折り部117,118(
図2A、
図2B参照)、折り部117,119(
図3A~
図3C参照)は、支持板116の短手方向(前後方向)の両側端縁にそれぞれ設けられている。これにより、架台110の剛性がさらに向上し、振動がより低減される。ただし、折り部は支持板116の短手方向の片側端縁だけに設けられてもよい。
【0039】
図2A、
図2Bに示す本実施形態の第1例では、架台110の前後方向の両側端縁の折り部117,118は、台板120,130を覆う方向、すなわち支持板116の端縁からそれぞれ同じ下方に延びる。この場合、架台110上で電動機102を左右方向にスライドさせて位置調整する際のボルトおよびナットの締め付け作業のために、作業者の指が架台110の下に入りやすくする必要がある。このため、架台110は、短手方向(前後方向)の長さを伸ばし、タンク103の外周面と架台110の折り部117の先端との距離を十分に確保する必要がある。なお、この距離を十分に確保できない場合、支持板116上の電動機102のスライド用の長穴114(
図1参照)の近辺に貫通穴を設けたり、あるいは折り部117,118に任意形状の切り欠きを設けたりしてもよい。ただし、貫通穴や切り欠きを設ける場合、電動機102の始動時の大きなトルクによって貫通穴や切り欠きに生じる曲げ応力が許容値以下であることを確認する必要がある。このため、架台110の短手方向を伸ばすことが望ましい。
【0040】
図2A、
図2Bに示す本実施形態の第1例において、圧縮方式、出力によっては、気体圧縮機100Aの重心位置が圧縮機本体101の後方に位置し、圧縮機本体101を前方に配置したい場合がある。この場合、圧縮機本体101から従動プーリ108の端面までの距離が短いため、圧縮機本体101を前方に配置すると、架台110の折り部118と台板120,130が干渉するといった問題が想定される。
【0041】
このような問題を解決するため、
図3A~
図3Cに示す本実施形態の第2例では、支持板116の短手方向の両側端縁に設けられた折り部117,119は、支持板116の端縁からそれぞれ反対方向に延びる。本実施形態では、圧縮機本体101と従動プーリ108との間に位置する架台110の折り部119が、台板120,130とは反対方向に曲げられる。これにより、干渉の防止、および架台110の剛性の向上を図りつつ、台板120,130のサイズ、位置を調整することなく、気体圧縮機100Bの重心位置を調整することが可能となる。
【0042】
[第3実施形態]
図4A、
図4Bは、本発明の第3実施形態に係る気体圧縮機100Cの構成を示す。
本実施形態では、架台110は、圧縮機本体101および電動機102が載置される支持板116の下面に取り付けられ、電動機102の下方に位置する補強部材140を有する。これにより、電動機102の特に始動時の大きなトルクにより電動機102が例えば矢印A方向に傾くことによって架台110に発生する応力を低減できる。
【0043】
図4A、
図4Bでは、支持板116の下面前側における電動機102の下方に、断面L字形状の補強部材140が取り付けられている。ここでは、補強部材140は、支持板116の下面前側に設けられるが、補強部材140の設置位置は、架台110の短手方向(電動機102の回転軸方向)の長さと、電動機102の重心位置によって、変更してもよい。例えば、補強部材140は、支持板116の下面後側に設けられてもよく、支持板116の下面の前側および後側の両方の位置に設けられてもよい。
【0044】
補強部材140は、支持板116の長手方向(左右方向)に沿って延びている。ここでは、補強部材140の前側端面は、台板120,130の接合部124,134の前側端面と同一平面上に位置されているが、接合部124,134の前側端面よりも内側(後側)に位置されてもよい。電動機102のトルクや、圧縮機本体101および電動機102の重量によって、補強部材140の位置は変更可能である。補強部材140の高さ(上下方向寸法)は、補強部材140がタンク103に接触しない高さに設定されている。
補強部材140を断面L字形状にすることによって、剛性および強度を高めることができ、架台110に発生する応力をより低減することができる。
【0045】
また、補強部材140の左右方向の長さは、
図4A、
図4Bに示すような長さまで長くなくともよい。補強部材140の左右方向の長さは、電動機102や圧縮機本体101の重量、および電動機102の重心位置によって変化するものである。例えば補強部材140をもっと短くして圧縮機本体101側寄りのみに存在する構成としてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、
図4Bに示すように、架台110は、電動機102の下方、例えば直下に位置する貫通穴141を有している。この場合、補強部材140によって架台110に発生する応力を低減しつつ、貫通穴141を設けることで音の反響を防ぎ、騒音値を低減することが可能となる。
【0047】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、一の実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、一の実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
例えば、前記した実施形態では、レシプロタイプの圧縮機本体101を備えた気体圧縮機100について説明したが、圧縮機本体101は、レシプロタイプに限定されるものではない。また、圧縮機本体101は、前記実施形態では空気を圧縮するものであるが、これに限定されるものではなく、空気以外の他の気体を圧縮するものであってもよい。
また、圧縮機本体101、電動機102、および動力伝達機構106の少なくとも一部を覆うカバーが架台110に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100,100A~100C 気体圧縮機
101 圧縮機本体(圧縮機構)
102 電動機(動力機構)
103 タンク
110 架台
116 支持板
114 長穴
115 貫通穴
117~119 折り部
120,130 台板(土台)
123,133 載置部
124,134 接合部
132 凸部
140 補強部材