(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120698
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027686
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】耕納 健
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB16
5H609BB18
5H609PP01
5H609PP06
5H609PP17
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ07
5H609QQ08
5H609QQ14
5H609RR01
5H609RR35
5H609RR36
5H609RR39
5H609RR40
5H609RR51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータの冷却効率を向上できる駆動装置を提供する。
【解決手段】中心軸線を中心として回転するロータを有するモータと、前記モータを収容するモータ収容部11を有するハウジング10と、を備える。前記モータ収容部は、内側面に凸部50p、50qが設けられる第1流路50と、少なくとも一部が前記凸部の内部に配置される第2流路60と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転するロータを有するモータと、
前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、
前記モータ収容部は、
内側面に凸部が設けられる第1流路と、
少なくとも一部が前記凸部の内部に配置される第2流路と、を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記モータの軸方向一方側で前記ロータに連結されるギヤ部を備え、
前記ハウジングは、
前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、
前記モータ収容部とギヤ収容部の内部空間同士を区画する隔壁と、を有し、
前記隔壁には、前記モータ収容部の内部空間とギヤ収容部の内部空間とを繋ぐ隔壁開口が設けられ、
前記モータ収容部は、前記中心軸線を径方向外側から囲む筒状部を有し、
前記第2流路は、前記筒状部の内周面に設けられ前記隔壁開口に向かって軸方向に沿って延び前記凸部の内部に配置される溝状の軸方向流路部を有する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記モータの軸方向一方側で前記ロータに連結されるギヤ部を備え、
前記ハウジングは、前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、を有し、
前記モータ収容部は、前記中心軸線を径方向外側から囲む筒状部を有し、
前記第2流路は、
前記筒状部の内側面に設けられ軸方向に沿って延び前記凸部の内部に配置される溝状の軸方向流路部と、
前記軸方向流路部の軸方向他方側の端部と前記ギヤ収容部の内部区間とを繋ぐ戻り流路部と、を有する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記第1流路が延びる方向に沿って延びるリブ状であり、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記凸部の内部で前記凸部の延びる方向に沿って延びる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記第1流路が延びる方向と交差する方向に延びるリブ状であり、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記凸部の内部で前記凸部の延びる方向に沿って延びる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1流路は、周方向に沿って延びる、
請求項4又は5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第1流路は、軸方向に沿って延びる、
請求項4又は5に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第2流路は、
周方向に沿って延びる周方向流路部と、
前記周方向流路部の下端部に繋がり軸方向に沿って延びる軸方向流路部と、を有する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1流路の内側面には、複数の前記凸部が設けられる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第1流路と前記第2流路には、互いに異なる流体が流れる、
請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車に搭載される駆動装置の開発が盛んに行われている。このような駆動装置には冷却構造が搭載される。冷却構造としては、例えば、ハウジングに冷却水が流れる冷却水路と、潤滑油が流れる供給路とが設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジングに2つの流路を設けることでそれぞれの流路を流れる流体同士の間で熱交換をさせ、モータの冷却効率を高めることができる。しかしながら、従来構造の駆動装置では、流体間の熱交換が十分に行われておらず、モータの冷却効率が十分に高められていなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、モータの冷却効率を向上できる駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、中心軸線を中心として回転するロータを有するモータと、前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備える。前記モータ収容部は、内側面に凸部が設けられる第1流路と、少なくとも一部が前記凸部の内部に配置される第2流路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置においてモータの冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置の模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の第1流路および第2流路の展開模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のモータ収容部の一部を示す断面斜視図である。
【
図4】
図4は、変形例1の駆動装置の模式図である。
【
図5】
図5は、変形例2のモータ収容部の一部を示す断面斜視図である。
【
図6】
図6は、変形例3のモータ収容部の一部を示す断面斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例4の第1流路および第2流路の展開模式図である。
【
図8】
図8は、変形例5の第1流路および第2流路の展開模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
適宜図に示す中心軸線J1は、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸線J1は、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸線J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする周方向、つまり中心軸線J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、左側(+Y側)は「軸方向一方側」に相当し、右側(-Y側)は「軸方向他方側」に相当する。
【0013】
適宜図に示す矢印θは、周方向を示している。以下の説明においては、周方向のうち軸方向一方側(+Y側)から見て中心軸線J1を中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち軸方向一方側から見て中心軸線J1を中心として時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0014】
図1は、本実施形態の駆動装置1の模式図である。本実施形態の駆動装置1は、車両に搭載され、車軸47を回転させる駆動装置である。駆動装置1が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
【0015】
<駆動装置>
駆動装置1は、モータ2と、ギヤ部3と、ハウジング10と、を備える。ハウジング10は、モータ2を収容するモータ収容部11と、ギヤ部3を収容するギヤ収容部15と、を有する。
【0016】
<モータ>
モータ2は、駆動装置1を駆動する部分である。モータ2は、軸方向に延びる中心軸線J1を中心として回転するロータ30と、ステータ35と、を有する。
【0017】
ロータ30は、モータシャフト31と、ロータ本体32と、を有する。モータシャフト31は、中心軸線J1を中心として回転する。モータシャフト31は、ベアリング8A、8Cによって回転可能に支持されている。モータシャフト31の軸方向一方側(+Y側)の端面には、軸方向他方側(-Y側)に凹む挿入凹部31aが設けられる。モータシャフト31の軸方向一方側の端部には、ギヤ部3が接続されている。ロータ本体32は、モータシャフト31の外周面に固定されている。図示は省略するが、ロータ本体32は、ロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。
【0018】
ステータ35は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ35は、ロータ30を径方向外側から囲む。ステータ35は、ステータコア36と、コイル37と、を有する。ステータコア36は、ロータ30を囲む環状である。コイル37は、インシュレータ(逗子略)を介してステータコア36に装着される。コイル37には、例えば交流電圧が印加される。
【0019】
<ギヤ部>
ギヤ部3は、モータ2の軸方向一方側(+Y側)でロータ30に連結される。ギヤ部3は、ロータ30の回転を車両の車軸47に伝達する。
図1に示すように、本実施形態のギヤ部3は、モータ2に接続された減速装置3Aと、減速装置3Aに接続された差動装置3Bと、を有する。減速装置3Aは、モータ2の動力を差動装置3Bに伝達する。差動装置3Bは、減速装置3Aを介して伝達されたモータ2の動力を車両の車軸47に伝達する。
【0020】
減速装置3Aは、第1シャフト45と、第2シャフト46と、第1ギヤ41と、第2ギヤ42と、第3ギヤ43と、を有する。第1シャフト45は、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる。本実施形態では、第1シャフト45の軸方向他方側(-Y側)の端部は、モータシャフト31の挿入凹部31aに挿入される。挿入凹部31aの内周面と第1シャフト45の外周面とは、例えば、スプライン嵌合などの連結手段によって連結される。これにより、第1シャフト45は、モータシャフト31と同期して回転する。第2シャフト46は、中心軸線J1と平行に延びるギヤ軸線J2を中心として軸方向に延びる。第1ギヤ41は、第1シャフト45の外周面に設けられる。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、第2シャフト46の外周面に設けられる。第2ギヤ42と第3ギヤ43とは、ギヤ軸線J2周りを回転する。第2ギヤ42は、第1ギヤ41と噛み合う。
【0021】
差動装置3Bは、リングギヤ44を有する。リングギヤ44は、第3ギヤ43と噛み合う。リングギヤ44の下側の端部は、ギヤ収容部15内に貯留された第2流体Oに浸漬している。リングギヤ44が回転することで、第2流体Oがかき上げられる。かき上げられた第2流体Oは、例えば、減速装置3Aおよび差動装置3Bに潤滑油として供給される。差動装置3Bは、差動軸線J3回りに車軸47を回転させる。差動軸線J3は、中心軸線J1と平行に延びる仮想軸である。
【0022】
<ハウジング>
ハウジング10は、上述したモータ収容部11およびギヤ収容部15に加えて、モータ収容部11とギヤ収容部15の内部空間同士を区画する隔壁19を有する。以下の説明において、モータ収容部11の内部空間をモータ室A1と呼び、ギヤ収容部15の内部空間をギヤ室A2と呼ぶ場合がある。
【0023】
モータ収容部11は、中心軸線J1を中心とする略円筒状の筒状部12と、モータカバー13と、を有する。筒状部12は、中心軸線J1を径方向外側から囲む。したがって、筒状部12は、モータ室A1を径方向外側から囲む。本実施形態では、筒状部12の内周面12aには、ステータコア36の外周面36aが圧入される。したがって、ステータ35は、筒状部12の内周面12aに接触する。筒状部12の軸方向他方側(-Y側)の開口は、モータカバー13によって覆われる。また、筒状部12の軸方向一方側(+Y側)の開口は、隔壁19によって覆われる。
【0024】
ギヤ収容部15は、モータ収容部11の軸方向一方側(+Y側)に位置する。ギヤ収容部15の内部には、第2流体Oが収容されている。第2流体Oは、ギヤ室A2の下部領域に貯留されている。第2流体Oは、モータ2を冷却する冷媒として使用される。第2流体Oは、ギヤ部3に対して潤滑油としても使用される。第2流体Oとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0025】
ギヤ収容部15は、第1部材15aと第2部材15bとを有する。第1部材15aは、軸方向一方側(+Y側)に開口する凹形状である。第2部材15bは、軸方向他方側(-Y側)に開口する凹形状である。第1部材15aと第2部材15bとは、開口同士を向かい合わせて組み付けられてギヤ収容部15を構成する。第1部材15aは、軸方向と直交して延びる側壁部16と、側壁部16の外縁から軸方向一方側(+Y側)に延びる周壁部17と、有する。側壁部16は、モータ2の軸方向一方側(+Y側)かつギヤ部3の軸方向他方側(-Y側)に位置する。周壁部17は、ギヤ部3を径方向外側から囲む。上述の隔壁19は、側壁部16の一部である。すなわち、隔壁19は、側壁部16のうちモータ収容部11とギヤ収容部15の内部空間同士を区画する部分のみを表す。また、側壁部16は、隔壁19に連なりモータ収容部11の径方向外側に延びる張出壁部16aを有する。
【0026】
張出壁部16aの軸方向他方側(-Y側)を向く面には、ポンプ9が取り付けられる。ポンプ9は、モータ収容部11に設けられる第2流路60内に第2流体Oを圧送する。なお、モータ収容部11から第2流路60に至る経路の途中には、ポンプ9に加えて、第2流体Oを冷却するクーラが配置されていてもよい。本実施形態においてポンプ9は、電動ポンプである。なお、ポンプ9は、モータシャフト31またはギヤ部3の何れかのシャフト45、46、47によって回転させられる機械式のポンプであってもよい。また、ポンプ9の少なくとも一部は、ギヤ収容部15またはモータ収容部11の内部に配置されてもよい。
【0027】
隔壁19は、モータ収容部11の軸方向一方側(+Y側)、かつギヤ収容部15の軸方向他方側(-Y側)に位置する。隔壁19は、中心軸線J1に直行する平面に沿って延びる。隔壁19には、挿通孔19aと隔壁開口19hが設けられる。挿通孔19a、および隔壁開口19hは、モータ収容部11の内部空間(モータ室A1)とギヤ収容部の内部空間(ギヤ室A2)とを繋ぐ。挿通孔19aには、モータシャフト31および第1シャフト45が挿通される。挿通孔19aの内周面には、ベアリング8A、8Bが保持される。隔壁19は、ベアリング8A、8Bを介してモータシャフト31および第1シャフト45を支持する。隔壁開口19hは、隔壁19の下端部に位置する。隔壁開口19hは、モータ室A1の下部領域に開口する。隔壁開口19hは、モータ室A1の下部領域に溜まる第2流体Oをギヤ室A2に移動させる。
【0028】
<第1流路、第2流路>
モータ収容部11は、第1流路50と第2流路60とを有する。第1流路50は、第1流体Wが内部に流れる流路である。第2流路60は、第2流体Oが内部に流れる流路である。
【0029】
本実施形態において、第1流体Wは、冷却水であり、第2流体Oは、上述したように、例えばオイルである。しかしながら、第1流体W、および第2流体Oの種類はあくまで一例である。ただし、2つの流体(第1流体Wおよび第2流体O)のうち、ギヤ室A2に流入する流体(本実施形態の第2流体)は、コイル37の短絡を抑制するために絶縁性の液体であることが好ましい。
【0030】
本明細書において「流路」とは、流体が流れる経路を意味する。したがって、「流路」とは、定常的に一方向に向かう流体の流動を作る「流路」のみならず、流体を一時的に滞留させる経路および流体が滴り落ちる経路をも含む概念である。流体を一時的に滞留させる経路とは、例えば、流体を貯留するリザーバなどを含む。
【0031】
(第1流路)
第1流路50は、モータ収容部11の筒状部12に設けられる。第1流路50を流れる第1流体Wは、図示略の冷却装置によって冷却されている。図示略の冷却装置とは、たとえば車両に搭載されるラジエータである。第1流路50を流れる第1流体Wは、筒状部12の内部を通過することで筒状部12を冷却し、さらに筒状部12の内周面12aに固定されるステータ35を間接的に冷却する。
【0032】
本実施形態の第1流路50は、軸方向においてステータ35の軸方向の全長に亘って設けられる。このため、第1流路50を流れる第1流体Wは、ステータ35を軸方向の全長に亘って冷却することができる。
【0033】
図2は、一実施形態の第1流路50および第2流路60の展開模式図である。
第1流路50は、流入口50aと流出口50bと蛇行流路50cとを有する。流入口50aは、筒状部12の軸方向他方側(-Y側)の端部に位置し、流出口50bは、筒状部12の軸方向一方側(+Y側)の端部に位置する。
【0034】
流入口50aは、蛇行流路50cの上流側の端部に繋がる。流入口50aを介して、蛇行流路50cに第1流体Wは流入する。流出口50bは、蛇行流路50cの下流側の端部に繋がる。流出口50bを介して、蛇行流路50cから第1流体Wは流出する。流出口50bから流出した第1流体Wは、外部の配管を通り図示略の冷却装置(たとえば、ラジエータ)で冷却された後に、再び流入口50aから蛇行流路50cに流入する。
【0035】
蛇行流路50cは、軸方向に沿って直線状に延びる複数の第1軸方向流路部51と、周方向に沿って延びる複数の第1周方向流路部52と、周方向に沿って延びる一対の末端流路部53と、を有する。それぞれの第1軸方向流路部51の軸方向の長さ寸法は、それぞれの第1周方向流路部52、および末端流路部53の周方向の長さ寸法よりも大きい。
【0036】
本実施形態において、複数の第1軸方向流路部51は、互いに平行に延びる。本実施形態において、複数の第1軸方向流路部51は、周方向に沿って略等間隔に並ぶ。本実施形態の蛇行流路50cは、7個の第1軸方向流路部51を有する。ここで、7個の第1軸方向流路部51のうち中央に配置される1個を中央軸方向流路部51cと呼ぶ。言い換えると、本実施形態では、蛇行流路50cは、奇数個の第1軸方向流路部51を有する。周方向に並ぶ当該奇数個の第1軸方向流路部51のうち中央に配置される1個の第1軸方向流路部51を、中央軸方向流路部51cと呼ぶ。
図1に示すように、中央軸方向流路部51cは、中心軸線J1の直下に配置される。なお、中央軸方向流路部51cは、中心軸線J1の直下に配置されていれば、必ずしも複数の第1軸方向流路部51の中央に位置していなくてもよい。
【0037】
なお、第1軸方向流路部51は、軸方向に沿って「直線状」に延びていれば、必ずしも厳密な意味で直線的に延びていなくてもよい。すなわち、第1軸方向流路部51は、軸方向に沿って延びていれば、軸方向に対し若干傾斜して延びていてもよく、さらに傾斜する方向を変えながらして延びていてもよい。
【0038】
図2に示すように、第1周方向流路部52は、周方向に隣り合う第1軸方向流路部51同士を繋ぐ。第1周方向流路部52は、一端側流路部52aと、他端側流路部52bと、を有する。一端側流路部52aは、周方向に隣り合う第1軸方向流路部51の軸方向一方側(+Y側)の端部同士を繋ぐ。他端側流路部52bは、周方向に隣り合う第1軸方向流路部51の軸方向他方側(-Y側)の端部同士を繋ぐ。本実施形態の蛇行流路50cは、6個の第1周方向流路部52を有する。6個の第1周方向流路部52のうち3個は、隣り合う第1軸方向流路部51の軸方向一方側(+Y側)の端部同士を繋ぐ一端側流路部52aであり、他の3個は隣り合う第1軸方向流路部51の軸方向他方側(-Y側)の端部同士を繋ぐ他端側流路部52bである。一端側流路部52aと他端側流路部52bとは、周方向において交互に並ぶ。
【0039】
一対の末端流路部53は、蛇行流路50cの両端部に位置する。一対の末端流路部53には、それぞれ流入口50aおよび流出口50bが接続される。ここで、一対の末端流路部53のうち、流入口50aに繋がる一方を上流側末端流路部53aと呼び、流出口50bに繋がる他方を下流側末端流路部53bと呼ぶ。上流側末端流路部53aは、最も周方向他方側(-θ)に位置する第1軸方向流路部51の軸方向他方側(-Y側)の端部に繋がる。なお、最も周方向他方側(-θ)に位置する第1軸方向流路部51の軸方向一方側(+Y側)の端部には、一端側流路部52aが繋がる。下流側末端流路部53bは、最も周方向一方側(+θ)に位置する第1軸方向流路部51の軸方向一方側(+Y側)の端部に繋がる。最も周方向一方側(+θ)に位置する第1軸方向流路部51の軸方向他方側(-Y側)の端部には、他端側流路部52bが繋がる。
【0040】
本実施形態の第1流路50は、第1軸方向流路部51において軸方向に延びる。本実施形態によれば、第1流路50は、軸方向に延びる領域においてステータ35の外周面を軸方向にわたって冷却することができる。すなわち、本実施形態の第1流路50によれば、モータ2を軸方向に沿って冷却しやすい。
【0041】
本実施形態の第1流路50は、蛇行流路50cにおいて、軸方向に蛇行しながら周方向に延びる。また、蛇行流路50cは、ステータ35の軸方向の全長に亘って設けられる。これにより、蛇行流路50cを流れる第1流体Wは、ステータ35の軸方向の全長を冷却する。なお、本実施形態の蛇行流路50cは、矩形波状である。蛇行流路50cを略矩形波状とすることで、蛇行流路50cが正弦波状である場合などと比較して、水路を密に構成することができ、ステータ35をムラなく冷却できる。なお、ここで矩形波状とは、厳密な意味で矩形状に水路が蛇行する場合のみならず、矩形の角部が所定の曲率で湾曲する場合(すなわち、略矩形波状)をも含む概念である。
【0042】
図3は、モータ収容部11の一部を示す断面斜視図である。
図3に示すように、第1軸方向流路部51の径方向外側を向く内側面50fには、複数の凸部50p、50qが設けられる。言い換えると、モータ収容部11の筒状部12の外側面には、複数の凸部50p、50qが設けられる。本実施形態の凸部50p、50qは、軸方向又は周方向の何れか一方に沿ってリブ状に延びる。ここで複数の凸部50p、50qのうち、周方向に沿って延びる凸部を第1凸部50pと呼び、軸方向に沿って延びる凸部を第2凸部50qと呼ぶ。第1凸部50pは、複数の第1軸方向流路部51に設けられる。一方で、第2凸部50qは、複数の第1軸方向流路部51のうち中央軸方向流路部51cにのみ設けられる。
【0043】
(第2流路)
図1に示すように、第2流路60は、モータ収容部11の筒状部12に設けられる。より詳細には、第2流路60は、筒状部12の内周面12aとステータコア36の外側面との間に構成される。第2流路60を流れる第2流体Oは、筒状部12と接触するため、筒状部12に設けられた第1流路50を流れる第1流体Wによって冷却される。また、第2流体Oは、モータ2に直接的に接触してモータ2を直接的に冷却する。すなわち、第2流路60内を流れる第2流体Oは、少なくともステータコア36に直接的に接触して、ステータコア36を直接的に冷却する。
【0044】
第2流路60には、ポンプ9によって第2流体Oが供給される。ポンプ9は、ギヤ室A2の下部領域に溜まる第2流体Oを吸い上げ、モータ2の上側からモータ室A1に供給する。モータ室A1に供給される第2流体Oは、ステータコア36の外周面36aを伝いつつ第2流路60内を通り、モータ室A1の下部領域に溜まる。モータ室A1の下部領域に溜まった第2流体Oは、隔壁開口19hを通って再びギヤ室A2に流入する。
【0045】
本実施形態の第2流路60は、複数の第2周方向流路部(周方向流路部)61と、1つの第2軸方向流路部(軸方向流路部)62と、を有する。第2周方向流路部61および第2軸方向流路部62は、筒状部12の内周面12aに設けられる溝状である。第2周方向流路部61および第2軸方向流路部62は、それぞれ、径方向内側に向かって開口している。第2周方向流路部61および第2軸方向流路部62の開口は、それぞれ、ステータコア36の外周面36aによって覆われる。
【0046】
第2周方向流路部61は、周方向に沿って延びる。複数の第2周方向流路部61は、軸方向に沿って等間隔に並ぶ。本実施形態の第2周方向流路部は、中心軸線J1を中心とする周方向全体に亘って設けられる略円環状である。本実施形態において、第2周方向流路部61の深さ寸法、および幅寸法は、第2周方向流路部61の全長に亘って一様である。したがって第2周方向流路部61の流路断面積は、第2周方向流路部61の全長に亘って一様である。第2周方向流路部61内の第2流体Oは、重力の作用によって下方に向かって流れる。なお、第2周方向流路部61の深さ寸法、および幅寸法に関する構成は、本実施形態に限定されず、深さ寸法、幅寸法、および断面積は、長さ方向に沿って変化していてもよい。
【0047】
第2軸方向流路部62は、軸方向に沿って延びる。第2軸方向流路部62は、中心軸線J1の直下に位置する。第2軸方向流路部62は、複数の第2周方向流路部61の下端部に繋がる。なお、ここで第2周方向流路部61の下端部とは、第2周方向流路部61の経路中の最も下方に位置する部分を意味しており、第2周方向流路部61の末端を意味するものではない。複数の第2周方向流路部61を流れる第2流体Oは、第2軸方向流路部62の内部で合流する。このため、第2軸方向流路部62に流入した第2流体Oを第2軸方向流路部62の下流側(本実施形態ではギヤ室A2)にまとめて導くことができる。
【0048】
第2軸方向流路部62は、隔壁開口19hに向かって軸方向に沿って延びる。すなわち、第2軸方向流路部62の下流側の端部は、隔壁開口19hに繋がる。本実施形態の第2軸方向流路部62の底面62bは、軸方向一方側(+Y側)に向かうに従い下方に位置する方向に傾斜する。このため、第2軸方向流路部62内の第2流体Oは、重力の作用によって軸方向一方側(+Y側)に向かって流れる。
【0049】
本実施形態の第2軸方向流路部62は、隔壁開口19hに向かって延びるため、モータ室A1の下部領域に溜まった第2流体Oを隔壁開口19hに導くことができる。本実施形態によれば、第2軸方向流路部62は、モータ室A1からギヤ室A2への第2流体Oの流入を促し、モータ室A1の第2流体Oの液位の高まりを抑制し、第2流体Oがロータ30と接触してロータ30の回転の抵抗になることを抑制できる。
【0050】
図2に示すように、本実施形態の第2軸方向流路部62は、軸方向(Y軸方向)と平行に延びる。しかしながら、
図2に二点鎖線で示す変形例の第2軸方向流路部62Aのように、第2軸方向流路部62Aは、軸方向に沿って延びていれば、軸方向に対して周方向に傾斜していてもよい。
【0051】
図2に示すように、第2軸方向流路部62は、径方向から見て、第1流路50の中央軸方向流路部51cに重なる。第2軸方向流路部62の幅方向の中心位置は、径方向から見て、中央軸方向流路部51cの幅方向の中心位置と略一致する。第2軸方向流路部62の幅寸法は、中央軸方向流路部51cの幅寸法よりも小さい。また、
図3に示すように、第2軸方向流路部62は、径方向から見て、第2凸部50qに重なる。第2軸方向流路部62の底面62bは、中央軸方向流路部51cの内側面50fの少なくとも一部よりも径方向外側に位置する。したがって、本実施形態の第2軸方向流路部62は、少なくとも一部が第2凸部50qの内部に配置される。第2軸方向流路部62を流れる第2流体Oは、第1流路50と重なる部分で第1流体Wと熱交換を行う。
【0052】
同様に、第2周方向流路部61は、径方向から見て、第1流路50の第1軸方向流路部51に重なる。また、第2周方向流路部61は、第1凸部50pに重なる。本実施形態の第2周方向流路部61は、少なくとも一部が第1凸部50pの内部に配置される。第2周方向流路部61を流れる第2流体Oは、第1流路50と重なる部分で第1流体Wと熱交換を行う。
【0053】
本実施形態の第2流路60は、少なくとも一部が第1流路50の内側面50fに設けられる凸部50p、50qの内部に配置される。本実施形態によれば、第1流路50に凸部50p、50qを設けることで、第1流路50の内側面50fのうち第2流路60側に配置される面の表面積を広く確保できる。同様に、第2流路60の一部を凸部50p、50qの内部に配置することで、第2流路60の内側面のうち第1流路50側に配置される面の表面積を広く確保できる。これにより、第1流路50内の第1流体Wと第2流路60内の第2流体Oとの間の熱交換が促進され、第1流路50と第2流路60との熱交換効率を高めることができる。また、本実施形態によれば、第1流体Wによって第2流体Oを効率的に冷却することでき、第2流体Oによってモータ2を効果的に冷却できる。
【0054】
本実施形態によれば、第1流路50の内側面50fに凸部50p、50qが設けられることで、第2流路60を流れる第1流体Wが凸部50p、50qに当たるため、第1流路50内でに乱流が生じやすくなる。これにより、第1流体Wと凸部50p、50qを構成する壁面との間の熱交換が促進され、結果的に第1流体Wと凸部50p、50q内の第2流体Oとの間の熱交換効率が高まる。
【0055】
本実施形態において、第1凸部50pは周方向に沿って延び、当該第1凸部50pが設けられる第1軸方向流路部51は軸方向に沿って延びる。すなわち、第1凸部50pは、第1流路50が延びる方向(軸方向)と交差する方向(周方向)に延びるリブ状である。また、第2流路60の少なくとも一部(本実施形態の第2周方向流路部61)は、第1凸部50pの内部で第1凸部50pの延びる方向に沿って延びる。本実施形態によれば、第1流路50内の第1流体Wの流動方向に対し、第1凸部50pが交差する方向に延びる。すなわち、第1凸部50pが第1流路50内の第1流体Wの流れを遮るように配置されるため、第1流体Wが第1凸部50pに衝突して乱流がより一層生じやすくなる。結果的に、第1流体Wと第1凸部50pを構成する壁面との間の熱交換が促進され、第1流体Wと第2流体Oとの間の熱交換効率が高まる。
【0056】
なお、本実施形態の第1凸部50pの延びる方向は、第1流路50の第1軸方向流路部51と直交する。しかしながら、第1凸部50pは、第1軸方向流路部51と交差する方向に延びてしていれば乱流発生の効果を一定以上得ることができる。ここで、「交差する方向」とは、基準となる方向と直交する方向に対し±45°の範囲の方向に延びることを意味する。
【0057】
図2に示すように、第2流路60の第2周方向流路部61は、軸方向に沿って並んで配置される。このため、第1流路50の1つの第1軸方向流路部51は、径方向から見て複数の第2周方向流路部61と重なる。また、第1軸方向流路部51の内側面には、それぞれ第2周方向流路部61と重なる部分に第1凸部50pが設けられる。すなわち、本実施形態の第1流路50の内側面には、複数の第1凸部50pが設けられ、それぞれの第1凸部50pの内部に第2流路60の一部が配置される。本実施形態によれば、第1流路50を流れる第1流体Wが、一方向に流れる際に複数の第1凸部50pと接触しながら第2流体Oと熱交換を行うこととなり、第1流路50内にさらに複雑な乱流を生じさせることができる。
【0058】
図3に示すように、本実施形態の第2凸部50qと中央軸方向流路部51cとは、ともに軸方向に沿って延びる。すなわち、第2凸部50qは、第1流路50が延びる方向に沿って延びるリブ状である。また、第2流路60の少なくとも一部(本実施形態の第2軸方向流路部62)は、第2凸部50qの内部で第2凸部50qの延びる方向に沿って延びる。本実施形態によれば、第2凸部50qによる第1流路50内を流れる第1流体Wが乱流状態となる一定の効果を得つつ、第1流路50内での第1流体Wの圧力損失が増大し過ぎることを抑制できる。これにより、第1流路50の流路内で乱流を発生させつつ第1流路内の第1流体Wの流速を十分に確保し、円滑に第1流体Wによって第2流体Oを効率的に冷却できる。
【0059】
なお、本実施形態の第2凸部50qの延びる方向は、第1流路50の中央軸方向流路部51cと平行である。しかしながら、第2凸部50qは、中央軸方向流路部51cが延びる方向に沿って延びてしていれば上述の効果を一定以上得ることができる。ここで、「沿って延びる」とは、基準となる方向と平行な方向に対し±45°の範囲の方向に延びることを意味する。
【0060】
本実施形態において第1流路50と第2流路60には、互いに異なる流体(第1流体Wおよび第2流体O)が流れる。このため、駆動装置1は、第1流路50および第2流路60を流れる各流体の間で熱交換を行うことができ、各部に最適な流体を流すことができる。しかしながら、第1流体Wと第2流体Oとは、同一の流体であってもよい。例えば、第1流体Wおよび第2流体Oが共に潤滑油であってもよい。
【0061】
<変形例>
次に上述の実施形態に採用可能な変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例の説明において、既に説明した実施形態又は変形例と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
(変形例1)
図4は、変形例1の駆動装置101の模式図である。本変形例の駆動装置101は、上述の実施形態と比較して、モータ収容部111の第2流路160の構成が異なる。
【0063】
上述の実施形態と同様に、本変形例の駆動装置101は、モータ2と、ギヤ部3(
図4で省略)と、ハウジング110と、を備える。ハウジング110は、モータ収容部111とギヤ収容部15と隔壁19とを有する。モータ収容部111は、中心軸線J1を径方向外側から囲む筒状部112を有する。筒状部112には、第1流体Wが流れる第1流路50と、第2流体Oが流れる第2流路160と、が設けられる。第1流路50は、軸方向に蛇行しながら周方向に延びる蛇行流路50cを有する。第1流路50の内側面50fには、複数の凸部50p、150qが設けられ、これらの凸部50p、150qの内部に第2流路160の一部が配置される。
【0064】
本変形例の第2流路160は、複数の第2周方向流路部(周方向流路部)161と、1つの第2軸方向流路部(軸方向流路部)162と、1つの戻り流路部163と、を有する。第2周方向流路部161および第2軸方向流路部162は、筒状部112の内周面112aに設けられる溝状である。第2周方向流路部161および第2軸方向流路部162は、径方向内側に向かって開口する。第2周方向流路部161および第2軸方向流路部162の開口は、それぞれ、ステータコア36の外周面36aによって覆われる。一方で戻り流路部163は、筒状部112の内部に設けられる貫通孔である。
【0065】
上述の実施形態と同様に、第2周方向流路部161は、周方向に沿って延びる。第2周方向流路部161は、少なくとも一部が第1凸部50pの内部に配置される。これにより、第2周方向流路部161内の第2流体Oと第1流路50の第1流体Wとの間の熱交換が促進される。
【0066】
第2軸方向流路部162は、軸方向に沿って延びる。第2軸方向流路部162は、少なくとも一部が第2凸部150qの内部に配置される。これにより、第2軸方向流路部162内の第2流体Oと第1流路50の第1流体Wとの間の熱交換が促進される。第2軸方向流路部162は、中心軸線J1の直下に位置する。第2軸方向流路部162は、複数の第2周方向流路部161の下端部に繋がる。複数の第2周方向流路部161を流れる第2流体Oは、第2軸方向流路部162の内部で合流する。第2軸方向流路部162の底面162bは、軸方向他方側(-Y側)に向かうに従い下方に位置する方向に傾斜する。このため、第2軸方向流路部162内の第2流体Oは、重力の作用によって軸方向他方側(-Y側)に向かって流れる。
【0067】
戻り流路部163は、第2軸方向流路部162の下側に位置する。戻り流路部163は、軸方向に沿って延びる。戻り流路部163の軸方向他方側(-Y側)の端部は、第2軸方向流路部162に繋がる。戻り流路部163の軸方向一方側(+Y側)の端部は、ギヤ室A2に開口する。すなわち、戻り流路部163は、第2軸方向流路部162の軸方向他方側(-Y側)の端部とギヤ収容部15の内部区間(ギヤ室A2)とを繋ぐ。言い換えると、戻り流路部163は、モータ収容部111(モータ室A1)とギヤ収容部15(ギヤ室A2)とを繋ぐ。
【0068】
本変形例の第2軸方向流路部162、および戻り流路部163によれば、モータ収容部111(モータ室A1)の下部領域に溜る第2流体Oをギヤ室A2に導くことができ、モータ室A1の第2流体Oの液位の高まりを抑制し、第2流体Oがロータ30と接触してロータ30の回転の抵抗になることを抑制できる。
【0069】
また、本変形例の戻り流路部163は、モータ収容部111に設けられため、戻り流路部163内の第2流体Oは、同じくモータ収容部111に設けられる第1流路50の第1流体Wによって冷却される。本変形例によれば、ギヤ室A2に戻す第2流体Oを冷却することができ、第2流体O全体の温度を低下させることができる。なお、戻り流路部163は、第1流路50の内側面50fに設けられる凸部の内部に配置されていてもよい。この場合は、戻り流路部163内の第2流体Oを第1流路50の第1流体Wによってさらに冷却することができる。
【0070】
(変形例2)
図5は、変形例2のモータ収容部211の一部を示す断面斜視図である。本変形例のモータ収容部211は、上述の実施形態と比較して、第2流路260、および第2流路260が配置される凸部250q(第2凸部)の構成が主に異なる。
【0071】
本変形例のモータ収容部211の筒状部212には、第1流体Wが流れる第1流路250と、第2流体Oが流れる第2流路260と、が設けられる。第1流路250は、軸方向に沿って延びる第1軸方向流路部251を有する。第1軸方向流路部251の内側面250fには、軸方向に沿って延びる複数(本変形例では2つ)のリブ状の凸部250qが設けられる。
【0072】
一方で、第2流路260は、軸方向に沿って並行して延びる複数(本変形例では2つ)の第2軸方向流路部(軸方向流路部)262を有する。複数の第2軸方向流路部262は、筒状部212の内周面212aに設けられる溝状である。第2軸方向流路部262は、径方向径方向内側に向かって開口する。第2軸方向流路部262の開口は、ステータコア36の外周面36a(
図5において省略)によって覆われる。複数の第2軸方向流路部262は、それぞれ異なる凸部250qの内部に配置される。すなわち、本変形例の第1流路250の内側面250fには、複数の凸部250qが設けられ、それぞれの凸部250qの内部に第2流路260の一部が配置される。本変形例によれば、第1流路250内の第1流体Wと第2流路260内の第2流体Oとの間の熱交換効率をさらに高めることができる。
【0073】
なお、本変形例において、第1流路250の内側面250fであって2つの凸部250qの間の部分は、凸部250qの先端の面に対し溝状に凹む凹溝部250cと見做すことができる。凹溝部250cは、第1流体Wが流れる流路の一部として機能する。さらに、第2流路260の2つの第2軸方向流路部262同士の間の部分は、径方向内側に向かってリブ状に突出する凸部(以下、溝間凸部260c)と見做すことができる。溝間凸部260cの内部には、凹溝部250cの一部が配置される。すなわち、本変形例のモータ収容部211は、内側面に溝間凸部260cが設けられる第2流路260と、少なくとも一部(凹溝部250c)が溝間凸部260cの内部に配置される第1流路250と、を有する。
【0074】
(変形例3)
図6は、変形例3のモータ収容部311の一部を示す断面斜視図である。本変形例のモータ収容部311は、上述の実施形態と比較して、第2流路360の構成が主に異なる。
【0075】
本変形例のモータ収容部311の筒状部312には、第1流体Wが流れる第1流路350と、第2流体Oが流れる第2流路360と、が設けられる。第1流路350は、軸方向に沿って延びる第1軸方向流路部351を有する。第1軸方向流路部351の内側面350fには、軸方向に沿って延びるリブ状の凸部350q(第2凸部)が設けられる。第2流路360は、軸方向に沿って延びる第2軸方向流路部(軸方向流路部)362を有する。本変形例の第2軸方向流路部362は、貫通孔である。第2軸方向流路部362は、凸部350qの内部に配置される。本変形例に示すように、第2流路360は、必ずしも凹溝状でなくてもよい。
【0076】
(変形例4)
図7は、変形例4の第1流路450および第2流路460の展開模式図である。本変形例のモータ収容部411の筒状部412には、第1流体Wが流れる第1流路450と、第2流体Oが流れる第2流路460と、が設けられる。
【0077】
第1流路450は、流入口50aと流出口50bと蛇行流路450cとを有する。また、蛇行流路450cは、周方向に蛇行しながら軸方向に延びる。蛇行流路450cは、軸方向に沿って延びる複数(本変形例では3個)の第1軸方向流路部451と、周方向に沿って延びる複数(本変形例では4個)の第1周方向流路部452とを有する。第1周方向流路部452の周方向の長さ寸法は、第1軸方向流路部451の軸方向の長さ寸法よりも大きい。複数の第1周方向流路部452は、互いに平行に延びる。複数の第1周方向流路部452は、軸方向に沿って略等間隔に並ぶ。第1軸方向流路部451は、軸方向に隣り合う第1周方向流路部452同士を繋ぐ。1個の第1軸方向流路部451は、隣り合う第1周方向流路部452の周方向一方側(+θ)の端部同士を繋ぎ、他の2個の第1軸方向流路部451は隣り合う第1周方向流路部452の周方向他方側(-θ)の端部同士を繋ぐ。周方向一方側に位置する第1軸方向流路部451と周方向他方側に位置する第1軸方向流路部451とは、軸方向において交互に並ぶ。第1周方向流路部452には、それぞれ1つの凸部450qが設けられる。凸部450qは、軸方向に沿って延びるリブ状である。
【0078】
本変形例の第1流路450は、第1周方向流路部452において周方向に延びる。本変形例によれば、第1流路450は、周方向に延びる領域においてステータ35の外周面を周方向にわたって冷却することができる。すなわち、本変形例の第1流路450によれば、モータ2を周方向に沿って冷却しやすい。
【0079】
第2流路460は、軸方向に沿って延びる第2軸方向流路部(軸方向流路部)462を有する。第2軸方向流路部462は、筒状部412の内周面412aに設けられる溝状である。第2軸方向流路部462は、径方向内側に向かって開口する。第2軸方向流路部462の開口は、ステータコア36の外周面36a(
図7において省略)によって覆われる。第2軸方向流路部462は、隔壁開口19hに向かって軸方向に沿って延びる。すなわち、第2軸方向流路部462の下流側の端部は、隔壁開口19hに繋がる。第2軸方向流路部462は、モータ室A1の第2流体Oを、隔壁開口19hを介してギヤ室A2に導く。第2軸方向流路部462は、凸部450qの内部に配置される。第2軸方向流路部462を流れる第2流体Oは、凸部450qの内部に配置される部分で第1流体Wと熱交換を行う。
【0080】
本変形例の凸部450qは、第1流路450が延びる方向(周方向)と交差する方向(軸方向)に延びるリブ状である。また、第2流路460の少なくとも一部(第2軸方向流路部462)は、凸部450qの内部で凸部450qの延びる方向に沿って延びる。本変形例によれば、第1流路450内の第1流体Wの流動方向に対し、凸部450qが交差する方向に延びることで、第1流路450内で第1流体が乱流状態になりやすく、第1流体Wと第2流体Oとの間の熱交換効率が高まる。
【0081】
(変形例5)
図8は、変形例5の第1流路550および第2流路560の展開模式図である。本変形例のモータ収容部511の筒状部512には、第1流体Wが流れる第1流路550と、第2流体Oが流れる第2流路560と、が設けられる。
【0082】
第1流路550は、流入口50aと流出口50bと螺旋流路550cとを有する。また、螺旋流路550cは、中心軸線J1を中心として螺旋状に延びる。螺旋流路550cには、軸方向に並ぶ複数の凸部550qが設けられる。凸部550qは、軸方向に沿って延びるリブ状である。
【0083】
第2流路560は、軸方向に沿って延びる第2軸方向流路部(軸方向流路部)562を有する。第2軸方向流路部562は、筒状部512の内周面512aに設けられる溝状である。第2軸方向流路部562は、径方向内側に向かって開口する。第2軸方向流路部562の開口は、ステータコア36の外周面36a(
図7において省略)によって覆われる。第2軸方向流路部562は、隔壁開口19hに向かって軸方向に沿って延びて、モータ室A1の第2流体Oを、隔壁開口19hを介してギヤ室A2に導く。第2軸方向流路部562は、凸部550qの内部に配置される。第2軸方向流路部562を流れる第2流体Oは、凸部550qの内部に配置される部分で第1流体Wと熱交換を行う。
【0084】
本変形例の凸部550qは、第1流路550が延びる方向(周方向)と交差する方向(軸方向)に延びるリブ状である。また、第2流路560の少なくとも一部(第2軸方向流路部562)は、凸部550qの内部で凸部550qの延びる方向に沿って延びる。本変形例によれば、第1流路550内の第1流体Wの流動方向に対し、凸部550qが交差する方向に延びることで、第1流路550内で第1流体Wが乱流状態になりやすくなり、第1流体Wと第2流体Oとの間の熱交換効率が高まる。
【0085】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0086】
例えば、上述の本実施形態および変形例では、筒状部に設けられる流路のうち径方向外側に配置される第1流体の内側面に凸部が設けられ、径方向内側に配置される第2流路が当該凸部の内部に配置される場合について説明した。しかしながら、径方向内側に配置される第2流路の内側面に設けられる凸部の内部に、径方向外側に配置される第1流路の一部が配置されていてもよい。
【0087】
上述の実施形態および変形例では、凸部が第1流路の内側面のうち径方向外側を向く面に設けられる場合について説明した。しかしながら、凸部が設けられる面は、本実施形態に限定されない。また、上述の実施形態および変形例では、凸部が一方向に延びるリブ状である場合について説明したが凸部の形状は本実施形態に限定されず、例えば円柱状であってもよい。凸部が複数設けられる場合、各凸部の形状は互いに同じであってもよく、異なる形状が含まれていてもよい。
【0088】
上述の実施形態および変形例では、第1流路と第2流路とが筒状部の径方向に並んで配置される場合について説明した。しかしながら、第1流路と第2流路との位置関係は、本実施形態に限定されず、例えば、第1流路と第2流路とは、周方向において並んで配置されていてもよい。
【0089】
上述の実施形態および変形例では、モータ収容部に、一つながりの第1流路が1つのみ設けられる場合について説明した。しかしながら、第1流路は、途中で分岐および合流していてもよい。また、モータ収容部には、それぞれ流入口および流出口を有する複数の第1流路が設けられていてもよい。さらに、1つの第1流路中に複数の流入口および流出口が設けられていてもよい。
【0090】
上述の実施形態において第1流路と第2流路とが、互いに独立した流路である場合について説明した。しかしながら、第1流路と第2流路とは、一つながりの流路の各部であってもよい。すなわち、第1流路の上流側、又は下流側に第2流路が繋がって配置されていてもよい。これらの場合には、駆動装置は、同種類の流体同士の間で熱交換を行う。
【0091】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心として回転するロータを有するモータと、前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、前記モータ収容部は、内側面に凸部が設けられる第1流路と、少なくとも一部が前記凸部の内部に配置される第2流路と、を有する、駆動装置。
(2) 前記モータの軸方向一方側で前記ロータに連結されるギヤ部を備え、前記ハウジングは、前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、前記モータ収容部とギヤ収容部の内部空間同士を区画する隔壁と、を有し、前記隔壁には、前記モータ収容部の内部空間とギヤ収容部の内部空間とを繋ぐ隔壁開口が設けられ、前記モータ収容部は、前記中心軸線を径方向外側から囲む筒状部を有し、前記第2流路は、前記筒状部の内周面に設けられ前記隔壁開口に向かって軸方向に沿って延び前記凸部の内部に配置される溝状の軸方向流路部を有する、(1)に記載の駆動装置。
(3) 前記モータの軸方向一方側で前記ロータに連結されるギヤ部を備え、前記ハウジングは、前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、を有し、前記モータ収容部は、前記中心軸線を径方向外側から囲む筒状部を有し、前記第2流路は、前記筒状部の内側面に設けられ軸方向に沿って延び前記凸部の内部に配置される溝状の軸方向流路部と、前記軸方向流路部の軸方向他方側の端部と前記ギヤ収容部の内部区間とを繋ぐ戻り流路部と、を有する、(1)に記載の駆動装置。
(4) 前記凸部は、前記第1流路が延びる方向に沿って延びるリブ状であり、前記第2流路の少なくとも一部は、前記凸部の内部で前記凸部の延びる方向に沿って延びる、(1)~(3)の何れか一項に記載の駆動装置。
(5) 前記凸部は、前記第1流路が延びる方向と交差する方向に延びるリブ状であり、前記第2流路の少なくとも一部は、前記凸部の内部で前記凸部の延びる方向に沿って延びる、(1)~(3)の何れか一項に記載の駆動装置。
(6) 前記第1流路は、周方向に沿って延びる、(4)又は(5)に記載の駆動装置。
(7) 前記第1流路は、軸方向に沿って延びる、(4)又は(5)に記載の駆動装置。
(8) 前記第2流路は、周方向に沿って延びる周方向流路部と、前記周方向流路部の下端部に繋がり軸方向に沿って延びる軸方向流路部と、を有する、(1)~(7)の何れか一項に記載の駆動装置。
(9) 前記第1流路の内側面には、複数の前記凸部が設けられる、(1)~(8)の何れか一項に記載の駆動装置。
(10) 前記第1流路と前記第2流路には、互いに異なる流体が流れる、(1)~(9)の何れか一項に記載の駆動装置。
【符号の説明】
【0092】
1,101…駆動装置、2…モータ、3…ギヤ部、10,110…ハウジング、11,111,211,311,411,511…モータ収容部、12,112,212,312,412,512…筒状部、12a,112a,212a,412a,512a…内周面、15…ギヤ収容部、19…隔壁、19h…隔壁開口、30…ロータ、50,250,350,450,550…第1流路、50f,250f,350f…内側面、50p,50q、250q,350q,450q,550q…凸部、60,160,260,360,460,560…第2流路、61,161…第2周方向流路部(周方向流路部)、62,62A,162,262,362,462,562…第2軸方向流路部(軸方向流路部)、163…戻り流路部、J1…中心軸線