(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120705
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】水素貯蔵システムおよび水素供給システム
(51)【国際特許分類】
F17C 9/04 20060101AFI20240829BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20240829BHJP
F25D 3/10 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
F17C9/04
F17C11/00 C
F25D3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027695
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
【テーマコード(参考)】
3E172
3L044
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA04
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172BD05
3E172EA02
3E172EA03
3E172EA35
3E172EB02
3E172EB08
3E172FA04
3E172FA23
3E172FA27
3E172GA17
3E172GA26
3E172JA09
3L044AA04
3L044CA12
3L044DB02
3L044DB03
3L044KA04
3L044KA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、液体水素気化器の運転中に生じる冷熱を水素吸蔵合金の水素吸蔵時の冷却源に利用することで、水素ガスの圧縮動力を削減できる水素貯蔵システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る水素貯蔵システムは、熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、上記熱媒が循環する熱媒循環ラインとを備え、上記熱媒循環ラインは、上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、
上記熱媒が循環する熱媒循環ラインと
を備え、
上記熱媒循環ラインは、上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む水素貯蔵システム。
【請求項2】
第1熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、
上記第1熱媒が循環する第1循環ラインと、
上記水素吸蔵合金に冷媒として供給される第2熱媒が循環する第2循環ラインと、
上記液体水素との熱交換後の上記第1熱媒と、上記水素吸蔵合金に供給される前の上記第2熱媒とを熱交換するための熱交換器と
を備える水素貯蔵システム。
【請求項3】
上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインをさらに備える請求項1または請求項2に記載の水素貯蔵システム。
【請求項4】
上記水素貯蔵ユニットが2つの上記水素貯蔵容器を有しており、
上記2つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に、上記冷媒と上記温媒とを交互に供給する制御部を備える請求項3に記載の水素貯蔵システム。
【請求項5】
上記水素貯蔵ユニットが3つの上記水素貯蔵容器を有しており、
上記3つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金への上記水素ガス、上記冷媒および上記温媒の供給を制御する制御部を備えており、
上記制御部が、上記3つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵または放出とを循環して行うように制御可能に設けられている請求項3に記載の水素貯蔵システム。
【請求項6】
上記水素貯蔵ユニットが4以上の上記水素貯蔵容器を有しており、
上記4以上の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金への上記水素ガス、上記冷媒および上記温媒の供給を制御する制御部を備えており、
上記制御部が、上記4以上の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵と、水素の放出とを循環して行うように制御可能に設けられている請求項3に記載の水素貯蔵システム。
【請求項7】
熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器と、上記液体水素気化器から上記水素吸蔵合金に水素ガスを供給するための水素ガス供給路を含む水素ラインとを有する水素貯蔵ユニットと、
上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む熱媒循環ラインと、
上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインと、
上記水素ライン、上記熱媒循環ライン、および上記温媒循環ラインの流路を制御する制御部と
を備え、
上記水素ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に水素ガスを供給するように流路を切り替え可能な第1切替弁を有し、
上記熱媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記熱媒を供給するように流路を切り替え可能な第2切替弁を有し、
上記温媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように流路を切り替え可能な第3切替弁を有し、
上記制御部が、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように上記第1切替弁、上記第2切替弁および上記第3切替弁を制御可能に設けられている水素貯蔵システム。
【請求項8】
第1熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器と、上記液体水素気化器から上記水素吸蔵合金に水素ガスを供給するための水素ガス供給路を含む水素ラインとを有する水素貯蔵ユニットと、
上記第1熱媒が循環する第1循環ラインと、
上記水素吸蔵合金に冷媒として供給される第2熱媒が循環する第2循環ラインと、
上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインと、
上記液体水素との熱交換後の上記第1熱媒と、上記水素吸蔵合金に供給される前の上記第2熱媒とを熱交換するための熱交換器と、
上記水素ライン、上記第2循環ライン、および上記温媒循環ラインの流路を制御する制御部と
を備え、
上記水素ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に水素ガスを供給するように流路を切り替え可能な第1切替弁を有し、
上記第2循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記熱媒を供給するように流路を切り替え可能な第2切替弁を有し、
上記温媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように流路を切り替え可能な第3切替弁を有し、
上記制御部が、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように上記第1切替弁、上記第2切替弁および上記第3切替弁を制御可能に設けられている水素貯蔵システム。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項7または請求項8に記載の水素貯蔵システムと、
上記液体水素気化器に供給される液体水素が貯留される液体水素槽と
を備える水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵システムおよび水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。例えば、燃料電池自動車をはじめとするモビリティ用燃料として水素を使用する場合、モビリティは高圧水素タンクに水素ガスを貯蔵することが一般的である。このため、上記モビリティに水素ガスを供給するための水素供給設備には、高圧で水素ガスを供給するための圧縮機構が必要とされている。
【0003】
また、今日では、カーボンニュートラルを実現するために、二酸化炭素を回収して化成品の原料とするプロセスが検討されている。かかるプロセスでは、一般に、二酸化炭素の還元剤として水素が使用される。二酸化炭素と反応させる観点からは、水素ガスを高圧で二酸化炭素に供給することが望まれている。
【0004】
高圧水素ガスの放出には機械駆動による水素圧縮機が用いられることがある。機械駆動による水素ガス圧縮機としては、レシプロ式、油圧ブースター式、ダイヤフラム式等が存在するが、いずれも駆動部を有しており、定期的に消耗品のメンテナンスを行うことを要する。
【0005】
このような観点から、水素吸蔵合金を用いた静的機構による化学式圧縮機が提案されている(特許文献1参照)。水素吸蔵合金は、水素を吸蔵する際に発熱するため、この発熱によって水素の吸蔵効率が低下することがある。そのため、特許文献1では、冷媒によって水素吸蔵合金を冷却することで効率的な水素の吸蔵を可能にしている。対象物を効率的に冷却するものとしては、低温液化ガスの気化による冷熱を回収し、回収した冷熱を冷却対象物の冷却に利用することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-019884号公報
【特許文献2】特開2017-190829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の融合システムは、生産プロセスで使用するガスを低温液化ガスを気化することで生成するガス供給設備と、対象物を冷却する冷却部、上記低温液化ガスの気化による冷熱を回収する冷熱回収部、および回収した冷熱を上記冷却部に供給する冷却用冷熱供給部を有する冷却設備とを備えている。特許文献1には、水素吸蔵合金を冷却する具体的な手段が示されていないが、特許文献2のように他の設備で発生する冷熱を回収して利用することにより冷却対象物である水素吸蔵合金を効率的に冷却可能にすることが考えられる。しかし、特許文献2では冷熱の回収と回収した冷熱の利用とに時間差があるため、水素吸蔵合金を十分に冷却することが困難になるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水素吸蔵合金の冷却効率を高めることができる水素貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る水素貯蔵システムは、熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、上記熱媒が循環する熱媒循環ラインとを備え、上記熱媒循環ラインは、上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る水素貯蔵システムは、水素吸蔵合金の冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る水素供給システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の水素供給システムにおける水素貯蔵容器の一例を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の水素貯蔵容器に含まれている水素貯蔵モジュールを示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の一実施形態に係る水素供給システムの一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明のさらに別の一実施形態に係る水素供給システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0013】
本発明の一態様に係る水素貯蔵システムは、熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、上記熱媒が循環する熱媒循環ラインとを備え、上記熱媒循環ラインは、上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む。
【0014】
当該水素貯蔵システムは、水素吸蔵合金が水素を貯蔵および放出できるため、低コストかつ効率的に上記水素貯蔵容器による水素ガスの貯蔵および排出をすることができる。当該水素貯蔵システムは、水素ガスを生成する液体水素気化器の冷熱を熱媒によって回収し、冷熱を回収した熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給している。また、冷熱の回収と回収した冷熱の利用とが略同時に行われる。このため、当該水素貯蔵システムは、エネルギーロス(熱損失)を抑制して効率的に上記水素吸蔵合金を冷却することができ、低コストで上記水素吸蔵合金の冷却効率を高めることができる。
【0015】
本発明の別の一態様に係る水素貯蔵システムは、第1熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニットと、上記第1熱媒が循環する第1循環ラインと、上記水素吸蔵合金に冷媒として供給される第2熱媒が循環する第2循環ラインと、上記液体水素との熱交換後の上記第1熱媒と、上記水素吸蔵合金に供給される前の上記第2熱媒とを熱交換するための熱交換器とを備える。
【0016】
当該水素貯蔵システムは、液体水素気化器によって発生する冷熱を第1熱媒が回収し、回収した冷熱を水素吸蔵合金に供給される前の第2熱媒と熱交換しているため、エネルギーロスをより低減して上記水素吸蔵合金の冷却効率をより向上することができる。
【0017】
当該水素貯蔵システムは、上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインをさらに備えてもよい。上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインをさらに備えることで、上記水素吸蔵合金による水素放出効率を向上できる。このため、当該水素貯蔵システムは、水素ガス供給の安定性および効率性を向上することができる。
【0018】
上記水素貯蔵ユニットが2つの上記水素貯蔵容器を有しており、上記2つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に、上記冷媒と上記温媒とを交互に供給する制御部を備えていてもよい。上記2つの水素貯蔵容器それぞれの水素吸蔵合金に上記冷媒と上記温媒とを交互に供給することで、上記2つの水素貯蔵容器によって交互に水素ガスの貯蔵および排出をすることができる。このため、当該水素貯蔵システムは連続的な水素ガスの貯蔵および供給をすることができる。
【0019】
上記水素貯蔵ユニットが3つの上記水素貯蔵容器を有しており、上記3つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金への上記水素ガス、上記冷媒および上記温媒の供給を制御する制御部を備えており、上記制御部が、上記3つの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵または放出とを循環して行うように制御可能に設けられていてもよい。上記3つの水素貯蔵容器それぞれの水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵または放出とを循環して行うことにより、当該水素貯蔵システムにおける水素ガスの貯蔵および供給の連続性を向上することができる。
【0020】
上記水素貯蔵ユニットが4以上の上記水素貯蔵容器を有しており、上記4以上の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金への上記水素ガス、上記冷媒および上記温媒の供給を制御する制御部を備えており、上記制御部が、上記4以上の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵と、水素の放出とを循環して行うように制御可能に設けられていてもよい。上記4以上の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に対して、上記冷媒の供給と、上記温媒の供給と、水素の吸蔵と、水素の放出とを循環して行うことにより、当該水素貯蔵システムにおける水素ガスの貯蔵および供給の連続性をより向上することができる。
【0021】
本発明の別の一態様に係る水素貯蔵システムは、熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器と、上記液体水素気化器から上記水素吸蔵合金に水素ガスを供給するための水素ガス供給路を含む水素ラインとを有する水素貯蔵ユニットと、上記液体水素気化器によって熱交換された上記熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給する供給路と、上記水素吸蔵合金との熱交換後の上記熱媒を上記液体水素気化器に還流する還流路とを含む熱媒循環ラインと、上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインと、上記水素ライン、上記熱媒循環ライン、および上記温媒循環ラインの流路を制御する制御部とを備え、上記水素ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に水素ガスを供給するように流路を切り替え可能な第1切替弁を有し、上記熱媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記熱媒を供給するように流路を切り替え可能な第2切替弁を有し、上記温媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように流路を切り替え可能な第3切替弁を有し、上記制御部が、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように上記第1切替弁、上記第2切替弁および上記第3切替弁を制御する。
【0022】
当該水素貯蔵システムは、水素ガスを生成する液体水素気化器の冷熱を熱媒によって回収し、冷熱を回収した熱媒を冷媒として上記水素吸蔵合金に供給している。また、冷熱の回収と回収した冷熱の利用とが略同時に行われる。このため、当該水素貯蔵システムは、エネルギーロスを抑制して効率的に上記水素吸蔵合金を冷却することができ、低コストで上記水素吸蔵合金の冷却効率を高めることができる。また、当該水素貯蔵システムは、水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器を有しており、上記制御部によって、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給できるので、連続的な水素ガスの貯蔵および排出を容易に行うことができる。
【0023】
本発明のさらに別の一態様に係る水素貯蔵システムは、第1熱媒との熱交換によって液体水素を気化する液体水素気化器と、この液体水素気化器によって気化された水素ガスが貯蔵される水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器と、上記液体水素気化器から上記水素吸蔵合金に水素ガスを供給するための水素ガス供給路を含む水素ラインとを有する水素貯蔵ユニットと、上記第1熱媒が循環する第1循環ラインと、上記水素吸蔵合金に冷媒として供給される第2熱媒が循環する第2循環ラインと、上記水素吸蔵合金と熱交換される温媒が循環する温媒循環ラインと、上記液体水素との熱交換後の上記第1熱媒と、上記水素吸蔵合金に供給される前の上記第2熱媒とを熱交換するための熱交換器と、上記水素ライン、上記第2循環ライン、および上記温媒循環ラインの流路を制御する制御部とを備え、上記水素ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に水素ガスを供給するように流路を切り替え可能な第1切替弁を有し、上記第2循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記熱媒を供給するように流路を切り替え可能な第2切替弁を有し、上記温媒循環ラインが、上記2以上の水素貯蔵容器のうちのいずれかの水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように流路を切り替え可能な第3切替弁を有し、上記制御部が、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給するように上記第1切替弁、上記第2切替弁および上記第3切替弁を制御する。
【0024】
当該水素貯蔵システムは、液体水素気化器によって発生する冷熱を第1熱媒が回収し、回収した冷熱を水素吸蔵合金に供給される前の第2熱媒と熱交換しているため、エネルギーロスをより低減して上記水素吸蔵合金の冷却効率をより向上することができる。また、当該水素貯蔵システムは、水素吸蔵合金を含む2以上の水素貯蔵容器を有しており、上記制御部によって、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記水素ガスおよび上記冷媒を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金に上記温媒を供給できるので、連続的な水素ガスの貯蔵および排出を容易に行うことができる。
【0025】
本発明のさらに別の一態様に係る水素供給システムは、上記水素貯蔵システムと、上記液体水素気化器に供給される液体水素が貯留される液体水素槽とを備える。
【0026】
当該水素供給システムは、液体水素槽に貯留されている液体水素を気化する液体水素気化器の冷熱を用いて水素吸蔵合金を冷却する上記水素貯蔵システムを備えるので、燃料電池自動車などのモビリティに水素ガスを安定してかつ効率的に供給することができる。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0028】
[第一実施形態]
本発明の一実施形態である水素供給システム1は、
図1に示すように、水素貯蔵システム3と、水素貯蔵システム3が有する液体水素気化器4に供給される液体水素Hが貯留される液体水素槽2とを備える。
【0029】
<液体水素槽>
液体水素槽2は、液体水素Hを貯留する。液体水素Hは、例えば、専用のタンクローリー等で輸送され、液体水素槽2内に充填される。液体水素槽2は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。なお、
図1では1つの液体水素槽2が示されているが、当該水素供給システム1には複数の液体水素槽が配置されてもよい。
【0030】
<水素貯蔵システム>
当該水素貯蔵システム3は、熱媒M1との熱交換によって液体水素Hを気化する液体水素気化器4と、この液体水素気化器4によって気化された水素ガスGが貯蔵される水素吸蔵合金5を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニット6と、熱媒M1が循環する熱媒循環ラインL1とを備える。上記熱媒循環ラインL1は、液体水素気化器4によって熱交換された熱媒M1を冷媒として水素吸蔵合金5に供給する供給路L11と、水素吸蔵合金5との熱交換後の熱媒M1を液体水素気化器4に還流する還流路L12とを含む。本実施形態の水素貯蔵ユニット6は、第1水素貯蔵容器7と第2水素貯蔵容器8との2つの水素貯蔵容器を有する。水素貯蔵ユニット6は、液体水素気化器4から2つの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に水素ガスGを供給するための水素ガス供給路Lgを含む水素ラインLhを有する。水素ガス供給路Lgは、液体水素槽2から液体水素気化器4に液体水素Hが供給される液体水素供給路Ldと、水素吸蔵合金5から放出された水素を水素吸蔵容器7,8外に排出する水素ガス排出路Leとともに、水素ラインLhを構成している。
【0031】
水素貯蔵システム3は、水素吸蔵合金5と熱交換される温媒M2が循環する温媒循環ラインL2をさらに備える。温媒循環ラインL2は、温媒槽10から水素吸蔵合金5に温媒M2を供給する温媒供給路L21と、水素吸蔵合金5と熱交換後の温媒M2を温媒槽10に還流する温媒還流路とを有する。上記温媒還流路は、全体的または部分的に還流路L12と兼用されていてもよい。温媒M2は、水素貯蔵容器7,8が水素ガス排出路Leから水素ガスGを排出する際に水素吸蔵合金5を加温する。このようにすることで、水素貯蔵容器7,8は水素ガスGを効率的に排出することができる。
【0032】
水素ラインLh(より詳しくは、水素ガス供給路Lg)は、2つの水素貯蔵容器7,8のうちのいずれかの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に水素ガスGを供給するように流路を切り替え可能な第1切替弁V1を有する。熱媒循環ラインL1は、2つの水素貯蔵容器7,8のうちのいずれかの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に熱媒M1を供給するように流路を切り替え可能な第2切替弁V2を有する。温媒供給ラインL2は、2つの水素貯蔵容器7,8のうちのいずれかの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に温媒M2を供給するように流路を切り替え可能な第3切替弁V3を有する。
【0033】
水素貯蔵システム3は、2つの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に、冷媒M1(熱媒M1)と温媒M2とを交互に供給する制御部(不図示)を備える。換言すれば、上記制御部は、水素ラインLh(より詳しくは、水素ガス供給路Lg)、熱媒循環ラインL1(より詳しくは、供給路L11)、および温媒循環ラインL2(より詳しくは、温媒供給路L21)の流路を制御する。具体的には、上記制御部は、同一の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金5に水素ガスGおよび冷媒M1を供給し、かつ他の水素貯蔵容器の水素吸蔵合金5に温媒M2を供給するように第1切替弁V1、第2切替弁V2および第3切替弁V3を制御する。例えば、上記制御部は、第1水素貯蔵容器7の水素吸蔵合金5への水素ガスGおよび冷媒M1の供給、ならびに第2水素貯蔵容器8の水素吸蔵合金5への温媒M2の供給を行う手順と、第2水素貯蔵容器8の水素吸蔵合金5への水素ガスGおよび冷媒M1の供給、ならびに第1水素貯蔵容器7の水素吸蔵合金5への温媒M2の供給を行う手順とを交互に行うように第1切替弁V1、第2切替弁V2および第3切替弁V3を制御する。
【0034】
より具体的には、例えば上記制御部は、水素を吸蔵し、または水素吸蔵を開始する第1水素貯蔵容器7の水素吸蔵合金5に熱媒M1が供給されるように熱媒循環ラインL1の第2切替弁V2を制御する。また、上記制御部は、液体水素気化器4が生成した水素ガスGが第1水素貯蔵容器7に供給されるように水素ラインLhの第1切替弁V1を制御する。第2切替弁V2の制御と、第1切替弁V1の制御とは、同時であってもよく、同時でなくてもよい。例えば、第1水素貯蔵容器7に水素ガスGを供給する前から熱媒M1を供給してもよい。水素吸蔵を開始する前の水素吸蔵合金5に熱媒M1を供給することで、水素吸蔵合金5は水素を迅速かつ効率的に吸蔵することができる。一方で、上記制御部は、吸蔵した水素を放出し、または吸蔵した水素の放出を開始する第2水素貯蔵容器8の水素吸蔵合金5に温媒M2が供給されるように温媒供給路L21の第3切替弁V3を制御する。第2水素貯蔵容器8は、稼働を停止している状態(水素ガスGの供給がされず、かつ水素ガスGの排出または排出の準備もしていない状態)であってもよい。第2水素貯蔵容器8に水素ガスGが供給されている場合は、第1水素貯蔵容器7は水素ガスGの排出、排出の準備、または稼働を停止している。このように2つの水素貯蔵容器7,8に冷媒M1と温媒M2とを交互に供給して交番運転させることで、水素貯蔵システム3は連続的に水素ガスGを排出することができる。
【0035】
上記制御部は、液体水素Hの供給および停止、液体水素気化器4の起動および停止、熱媒M1を循環するための熱媒ポンプP1の起動および停止、温媒M2を循環するための温媒ポンプP2の起動および停止などを制御するものであってもよい。上記制御部は、これらの制御ができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、所定のプログラムが記録されているパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0036】
第1切替弁V1、第2切替弁V2および第3切替弁V3としては、気体または液体が流動する流路が切り替えられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば公知の三方弁を用いることができる。
【0037】
液体水素気化器4は、液体水素槽2が液体水素供給路Ldを通じて供給する液体水素Hを気化して水素ガスGを生成する。液体水素気化器4は、熱媒M1との熱交換によって液体水素Hを気化するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば公知の蒸発機などを用いることができる。
【0038】
熱媒M1は、熱媒循環ラインL1を循環する。熱媒循環ラインL1は、冷媒として熱媒M1を水素吸蔵合金5に供給する供給路L11と、水素吸蔵合金5との熱交換後の熱媒M1を液体水素気化器4に還流する還流路L12とを含む。具体的には、熱媒M1は、熱媒M1を貯留する熱媒槽9から熱媒ポンプP1で液体水素気化器4に供給され、液体水素Hの気化による冷熱を回収して冷却される。冷熱を回収して冷却された熱媒M1は、第1水素貯蔵容器7または第2水素貯蔵容器8内に冷媒として供給され、水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5を冷却する。この冷却によって水素吸蔵合金5の水素吸蔵効率を向上することができる。水素吸蔵合金5との熱交換によって昇温した熱媒M1は、循環路L2によって熱媒槽9に戻り、液体水素気化器4に還流される。熱媒M1としては、特に限定されるものではなく、例えば、水(純水)などを用いることができる。
【0039】
温媒M2は、温媒供給路L21で水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に供給され、水素貯蔵容器7,8内の水素吸蔵合金5と熱交換される。具体的には、水素吸蔵合金5を加温する。温媒供給路L21は、温媒槽10から水素貯蔵容器7,8に温媒M2を供給するための流路である。温媒M2は、還流路L12によって温媒槽10に還流される。還流路L12は第4切替弁V4を有する。上記制御部は、第4切替弁V4を制御することで、熱媒M1は熱媒槽9に還流され、温媒M2は温媒槽10に還流される。温媒M2は、温媒供給路L21の温媒ポンプP2の下流に配置されている例えば空温式熱交換器またはヒータ等の加熱器Tによって加熱される。温媒M2としては、特に限定されるものではなく、例えば、水(純水)などを用いることができる。
【0040】
第1水素貯蔵容器7は水素吸蔵合金5を有する。具体的な例示としては、
図2および
図3に示すように、第1水素貯蔵容器7は、水素吸蔵合金5を担持する水素貯蔵モジュール51を内部に備える。第1水素貯蔵容器7は、水素ガスGが流入する水素ガス流入口7aと、水素ガスGを排出する水素ガス排出口7bが形成されているケーシング71を有する。第1水素貯蔵容器7は、
図2では3つの水素貯蔵モジュール51を備えているが、水素貯蔵モジュール51の数はこれに限定されるものではない。水素吸蔵合金5を含む第2水素貯蔵容器8は、第1水素貯蔵容器7と同一の構成を有する。第2水素貯蔵容器8は、第1水素貯蔵容器7と異なる構成としてもよい。
【0041】
水素貯蔵モジュール51は、筒状の本体51aと、この本体51aの外表面から径方向に突出している複数のフィン51aと、この複数のフィン51aの間に充填されている合金部52とを有する。合金部52は、樹脂5aと水素吸蔵合金5とを含む。水素貯蔵モジュール51は、本体51aの内周側に挿入される熱媒用管53を有する。熱媒用管53と本体51aとの間には、伝熱シート54が配置される。伝熱シート7は、例えばアルミニウムを主成分とするシート状部材である。伝熱シート54によって、熱媒M1および温媒M2と合金部52の水素吸蔵合金5との熱交換を容易かつ確実に行うことができる。
【0042】
熱媒用管53は、筒状の内管531と有底筒状の外管532とを含み、外管532の内部に内管531を挿入させた二重管の構造を有する。本体51aは、熱媒用管53を挿抜可能なカートリッジである。熱媒用管53では、熱媒M1および温媒M2が内管531に供給され、供給された熱媒M1および温媒M2は外管532へと流れて外管532と内管531との隙間を通じて排出される。すなわち、内管531および外管532は、熱媒M1および温媒M2の流路を画定している。具体的には、熱媒M1および温媒M2は、外管532の開口している側の内管531の開口である熱媒流入口531aから供給される。そして、熱媒M1および温媒M2は、外管532の底に面する側の内管531の開口から外管532の内部に流れ、外管532と内管531との隙間を通じて外管532の開口である熱媒流出口532aから排出される。熱媒M1および温媒M2は、熱媒用管53に供給されて排出されるまでの間に本体51aを介して水素吸蔵合金5と熱交換をする。水素貯蔵モジュール51は、上記流路に熱媒M1を流通させることで水素吸蔵合金5による水素吸蔵を促進し、上記流路に温媒M2を流通させることで水素吸蔵合金5による水素放出を促進する。
【0043】
ケーシング71内には、内管531の熱媒流入口7c側を保持する第一保持部材72と、外管532の熱媒排出口7d側を保持する第二保持部材73と、熱媒用管54の上記他方の端部側を保持する第三保持部材74とが配置される。第一保持部材72、第二保持部材73および第三保持部材74は、径方向に並列するように複数の水素吸蔵合金5を保持している。
【0044】
第一保持部材72および第二保持部材73は、ケーシング71内に熱媒M1および温媒M2の流路を形成する隔壁でもある。具体的には、ケーシング71の内面の一部と第一保持部材72の一方の面とは、内管531の熱媒流入口531aと連通する熱媒流入路75を構成している。ケーシング71の内面の他の一部および第一保持部材72の他方の面と、第二保持部材73の一方の面とは、外管532の熱媒流出口532aと連通する熱媒流出路76を構成している。ケーシング71は、熱媒流入路75に熱媒M1および温媒M2を供給するための熱媒供給口7cと、熱媒体流出路76から熱媒M1および温媒M2を排出するための熱媒排出口7dとを有する。
【0045】
合金部52の樹脂5aとしては、水素吸蔵合金5に吸蔵された水素の放出加熱温度よりも高い軟化点を有するものであれば特に限定されるものでなく、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、若しくはポリウレタン等の加熱によって硬化する熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはセルロイド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の光照射によって硬化する樹脂、または、触媒型硬化剤、反応型硬化剤等の硬化促進剤の添加によって硬化する樹脂が挙げられる。中でも、加熱、光照射、または効果促進剤の添加によって硬化する樹脂であることが好ましい。上記熱硬化樹脂としては、硬化温度が20℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0046】
樹脂5aは、粉体が固形化したものであってもよいし、液体が固体化したものであってもよい。合金部52における樹脂5aの含有率としては、特に限定されるものではないが、例えば0.5質量%以上10質量%以下である。樹脂5aの含有率が上記下限に満たないと、合金部52の形成が困難になるおそれがある。樹脂5aの含有率が上記上限を超えると、相対的に吸蔵合金53bの含有率が低下し、効果的な水素の吸蔵および放出ができなくなるおそれがある。また、樹脂5aの含有率が上記上限を超えると、樹脂の種類によっては、合金部52の粘性が低下し、本体51aへの付着が困難になるおそれがある。
【0047】
水素吸蔵合金5としては、公知のものを用いることができ、例えば2元系合金、3元系合金、4元系合金、または5元系合金が挙げられる。水素吸蔵合金5の粒径としては、例えば、10μm以上1000μm以下である。
【0048】
<利点>
当該水素供給システム1の水素貯蔵システム3は、水素吸蔵合金5が水素を貯蔵および放出できるため、低コストかつ効率的に水素貯蔵容器7,8による水素ガスの貯蔵および排出をすることができる。当該水素貯蔵システム3は、水素ガスGを生成する液体水素気化器4の冷熱を熱媒M1によって回収し、冷熱を回収した熱媒M1を冷媒として水素吸蔵合金5に供給している。当該水素貯蔵システム3では冷熱の回収と回収した冷熱の利用とが略同時に行われるため、エネルギーロス(熱損失)が少なく、効率的に水素吸蔵合金5を冷却することができる。このため、低コストで水素吸蔵合金5の冷却効率を高めることができる。このため、当該水素貯蔵システム3は、水素吸蔵合金5による水素の充填率を向上することができ、安定してかつ効率的に水素ガスGの貯蔵および高圧の水素ガスGの排出をすることができる。
【0049】
[第二実施形態]
以下、本発明の他の一実施形態である水素供給システム20について
図4を参照しつつ説明する。なお、上述した水素供給システム1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
当該水素供給システム20は、水素貯蔵システム21と液体水素槽2とを備える。
【0051】
<水素貯蔵システム>
水素貯蔵システム21は、第1熱媒M3との熱交換によって液体水素Hを気化する液体水素気化器4と、この液体水素気化器4によって気化された水素ガスGが貯蔵される水素吸蔵合金5を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニット22と、第1熱媒M3が循環する第1循環ラインL3と、水素吸蔵合金5に冷媒として供給される第2熱媒M4が循環する第2循環ラインL4と、液体水素Hとの熱交換後の第1熱媒M3と、水素吸蔵合金5に供給される前の第2熱媒M4とを熱交換するための熱交換器23とを備える。本実施形態の水素貯蔵ユニット22は、第1水素貯蔵容器7と第2水素貯蔵容器8との2つの水素貯蔵容器を有する。水素貯蔵ユニット22は、液体水素気化器4から2つの水素貯蔵容器7,8に水素ガスGを供給するための水素ガス供給路Lgを含む水素ラインLhを有する。水素ガス供給路Lgは、液体水素槽2から液体水素気化器4に液体水素Hが供給される液体水素供給路Ldと、水素吸蔵合金5から放出された水素を水素吸蔵容器7,8外に排出する水素ガス排出路Leとともに、水素ラインLhを構成している。
【0052】
水素貯蔵システム21は、温媒M2が循環する温媒循環ラインL2をさらに備える。水素貯蔵システム21は、2つの水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5に、冷媒M4(第2熱媒M4)と温媒M2とを交互に供給する制御部(不図示)を備える。水素ラインLh(より詳しくは、水素ガス供給路Lg)は、水素ガスGの流路を切り替え可能な第1切替弁V1を有し、第2循環ラインL4(より詳しくは、第2供給路L41)は、第2熱媒M4の流路を切り替え可能な第2切替弁V2を有し、温媒循環ラインL2(より詳しくは、温媒供給路L21)は、温媒M2の流路を切り替え可能な第3切替弁V3を有する。上記制御部は、第1切替弁V1、第2切替弁V2および第3切替弁V3を切り替えて各ラインの流路を制御可能に設けられている。つまり、水素貯蔵システム21は、2つの水素貯蔵容器7,8を交番運転する。
【0053】
第1熱媒M3は、第1熱媒M3を貯留する第1熱媒槽24と液体水素気化器4とを第1循環ラインL3で循環する。第1循環ラインL3は、第1熱媒M3を第1熱媒槽24から液体水素気化器4に供給する第1供給路L31と、液体水素気化器4から第1熱媒槽24に還流する第1還流路L32とを含む。第1循環ラインL3には、第1熱媒M3を供給するための第1熱媒ポンプP3と、液体水素Hとの熱交換後の第1熱媒M3を第2熱媒M4と熱交換するための熱交換器23とが配置されている。第1熱媒M3は、液体水素気化器4で液体水素Hの気化による冷熱を回収して冷却される。第1熱媒M3としては、液体水素Hが気化する際の冷熱を効率的に回収できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばプロパンを用いることができる。
【0054】
第2熱媒M4は、第2熱媒M4を貯留する第2熱媒槽25と水素貯蔵容器7,8の水素吸蔵合金5とを第2循環ラインL4で循環する。第2循環ラインL4は、第2熱媒M4を第2熱媒槽25から水素吸蔵合金5に供給する第2供給路L41と、還流路L12とを含む。第2供給路L41には、熱交換器23が配置されている。第2供給路L41は、第2熱媒M4を供給するための第2熱媒ポンプP4を有する。第2熱媒M4は、第2熱媒ポンプP4の下流に配置されている熱交換器23で第1熱媒M3との熱交換で冷却され、水素吸蔵合金5に供給される。第2熱媒M4としては、特に限定されるものではなく、例えば、水(純水)などを用いることができる。
【0055】
<利点>
当該水素供給システム20の水素貯蔵システム21は、水素吸蔵合金5が水素を貯蔵および放出できるため、低コストかつ効率的に水素貯蔵容器7,8による水素ガスGの貯蔵および排出をすることができる。当該水素貯蔵システム21は、液体水素気化器4によって発生する冷熱を第1熱媒M3が回収し、回収した冷熱を水素吸蔵合金5に供給される前の第2熱媒M4と熱交換しており、また冷熱の回収と回収した冷熱の利用とが略同時に行われるため、エネルギーロスをより低減して水素吸蔵合金5の冷却効率をより向上することができる。このため、当該水素貯蔵システム21は、水素吸蔵合金5による水素の充填率をより向上することができ、より安定してかつ効率的に水素ガスGの貯蔵および高圧の水素ガスGの排出をすることができる。
【0056】
[第三実施形態]
以下、本発明のさらに他の一実施形態である水素供給システム30について
図5を参照しつつ説明する。なお、上述した水素供給システム1,20と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
当該水素供給システム30は、水素貯蔵システム31と液体水素槽2とを備える。
【0058】
水素貯蔵システム31は、第1熱媒M3との熱交換によって液体水素Hを気化する液体水素気化器4と、この液体水素気化器4によって気化された水素ガスGが貯蔵される水素吸蔵合金5を含む水素貯蔵容器とを有する水素貯蔵ユニット32と、上記第1熱媒M3が循環する第1循環ラインL3と、上記水素吸蔵合金5に冷媒として供給される第2熱媒M4が循環する第2循環ラインL6と、上記液体水素Hとの熱交換後の上記第1熱媒M3と、上記水素吸蔵合金5に供給される前の上記第2熱媒M4とを熱交換するための熱交換器23とを備える。本実施形態の水素貯蔵ユニット32は、第1水素貯蔵容器7、第2水素貯蔵容器8、第3水素貯蔵容器33および第4水素貯蔵容器34の4つの水素貯蔵容器を有する。水素貯蔵ユニット22は、液体水素気化器4から4つの水素貯蔵容器7,8,33,34に水素ガスGを供給するための水素ガス供給路L5を有する。第2循環ラインL6は、第2供給路L61と還流路L21とを含む。水素ガス供給路L5は、水素ラインLhの一部を構成している。
【0059】
水素貯蔵システム31は、温媒M2が循環する温媒循環ラインL7を備える。温媒循環ラインL7は、温媒供給路L71と還流路L21とを含む。水素ラインLh(より詳しくは、水素ガス供給路L5)は、水素ガスGの流路を切り替え可能な第1切替弁V1,V5,V6を有する。第2循環ラインL6(より詳しくは、第2供給路L61)は、第2熱媒M4の流路を切り替え可能な第2切替弁V2,V7,V8を有する。温媒循環ラインL7(より詳しくは、温媒供給路L71)は、温媒M2の流路を切り替え可能な第3切替弁V3,V9,V10を有する。水素貯蔵システム31は、各切替弁を制御する制御部(不図示)をさらに備える。水素貯蔵システム31は、4つの水素貯蔵容器7,8,33,34を交番運転する。第1切替弁V1,V5,V6、第2切替弁V2,V7,V8、第3切替弁V3,V9,V10としては、気体または液体が流動する流路を、その配置に応じて切り替えられるものを用いることができ、例えば公知の三方弁または四方弁を用いることができる。
【0060】
当該水素貯蔵システム31が交番運転する制御の一例について説明する。ここでは、第1水素貯蔵容器7が水素ガスGを排出する工程、第2水素貯蔵容器8が水素ガスGの排出の開始(準備)をする工程、第3水素貯蔵容器33が水素ガスGを供給される準備をする工程、第4水素貯蔵容器34が水素ガスGを供給される工程を行っている場合の制御について説明する。
【0061】
上記制御部は、第4水素貯蔵容器34に水素ガスGが供給され、かつ他の水素貯蔵容器7,8,33に水素ガスGが供給されないように第1切替弁V1,V5,V6を制御する。同時に、上記制御部は、第4水素貯蔵容器34と水素ガスGの供給の準備をしている第3水素貯蔵容器33とに第2熱媒M4が供給され、かつ他の水素貯蔵容器7,8に第2熱媒M4が供給されないように第2切替弁V2,V7,V8を制御する。また、上記制御部は、水素ガスGを放出している第1水素貯蔵容器7と、水素ガスGの排出の準備をしている第2水素貯蔵容器8に温媒M2が供給され、かつ他の水素貯蔵容器33,34に温媒M2が供給されないように第3切替弁V3,V9,V10を制御する。
【0062】
第4水素貯蔵容器34の水素吸蔵合金5に十分な水素が充填されると、上記制御部は、第4水素貯蔵容器34に水素ガスGの供給が停止され、かつ第3水素貯蔵容器33に水素ガスGが供給されるように第1切替弁V1,V6を制御する。同時に、上記制御部は、第4水素貯蔵容器34に第2熱媒M4が供給されないように第2切替弁V8を制御する。上記制御部は、第1水素貯蔵容器7の水素ガスGの排出が終了すると、温媒M2が供給されないように第3切替弁V3を制御すると共に、第2熱媒M4が供給されるように第1切替弁V1を制御する。水素ガスGを連続して排出する場合は、上記制御部は、第1水素貯蔵容器7の水素ガスGの排出終了と同時に、第4水素貯蔵容器34が水素ガスGを排出するように制御してもよい。
【0063】
<利点>
当該水素供給システム30の水素貯蔵システム31は、4つの水素貯蔵容器7,8,33,34を有するため、水素ガスGを排出する連続性をより向上することができる。
【0064】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0065】
当該水素貯蔵システムは、1つまたは3つの水素貯蔵容器を有してもよく、5以上の水素貯蔵容器を備えてもよい。
【0066】
水素貯蔵容器は、必ずしも複数の水素貯蔵モジュールを備える必要はなく、1つの貯蔵モジュールのみを有していてもよい。また、水素貯蔵容器における水素貯蔵モジュールの配置は、上述の実施形態の構成に限定されるものではない。
【0067】
上記実施形態では、水素貯蔵モジュールが本体と複数のフィンと合金部とを有するもので説明したが、水素貯蔵モジュールの構成はこれに限定されるものではない。
【0068】
上記水素吸蔵合金は、樹脂中に保持されていることを要しない。また、上記合金部は、上記本体に部分的に配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明の水素貯蔵システムおよび水素供給システムは、例えば、燃料電池自動車、燃料電池フォークリフト等のモビリティに水素ガスを供給する水素ステーション、化学品およびその基幹物質となるものへの化学反応装置に水素ガスを供給する水素供給装置などに適している。
【符号の説明】
【0070】
1,20,30 水素供給システム
2 液体水素槽
3,21,31 水素貯蔵システム
4 液体水素気化器
5 水素吸蔵合金
51 水素貯蔵モジュール
51a 本体
51b フィン
52 合金部
5a 樹脂
53 熱媒用管
531 内管
531a 熱媒流入口
532 外管
532a 熱媒流出口
54 伝熱シート
6,22,32 水素貯蔵ユニット
7 第1水素貯蔵容器
71 ケーシング
72 第一保持部材
73 第二保持部材
74 第三保持部材
75 熱媒流入路
76 熱媒流出路
7a 水素ガス流入口
7b 水素ガス排出口
7c 熱媒供給口
7d 熱媒排出口
8 第2水素貯蔵容器
9 熱媒槽
10 温媒槽
23 熱交換器
24 第1熱媒槽
25 第2熱媒槽
33 第3水素貯蔵容器
34 第4水素貯蔵容器
G 水素ガス
H 液体水素
L1 熱媒循環ライン
L11 供給路
L12 還流路
L2,L7 温媒循環ライン
L21,L71 温媒供給路
L3 第1循環ライン
L31 第1供給路
L32 第1還流路
L4,L6 第2循環ライン
L41,L61 第2供給路
Le 水素ガス排出路
Ld 液体水素供給路
Lg,L5 水素ガス供給路
Lh 水素ライン
M1 熱媒
M2 温媒
M3 第1熱媒
M4 第2熱媒
P1 熱媒ポンプ
P2 温媒ポンプ
P3 第1熱媒ポンプ
P4 第2熱媒ポンプ
T 加熱器
V1,V5,V6 第1切替弁
V2,V7,V8 第2切替弁
V3,V9,V10 第3切替弁
V4 第4切替弁