(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120712
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】生体画像解析装置、生体画像解析方法、及び、生体画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20240829BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/107
G06T7/00 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027706
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】515108727
【氏名又は名称】あっと株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】武野 團
(72)【発明者】
【氏名】中野 讓
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄大
【テーマコード(参考)】
4C038
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB13
4C038VB40
4C038VC05
5L096BA06
5L096CA01
5L096DA02
5L096JA03
5L096JA09
5L096JA20
(57)【要約】
【課題】 被験体の血管が撮像された生体画像を用いて、被検体の健康状態を的確に評価可能な生体画像解析装置を提供する。
【解決手段】本発明の生体画像解析装置は、複数のテンプレート画像からなるテンプレート画像群と、各テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報とを記憶する記憶手段と、被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、マッチング手法により、生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出手段と、類似度に基づいて、紐付け情報を選択する紐付け情報選択手段と、を備える、
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のテンプレート画像からなるテンプレート画像群と、各テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報とを記憶する記憶手段と、
被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、
マッチング手法により、前記生体画像と前記テンプレート画像との類似度を算出する類似度算出手段と、
前記類似度に基づいて、前記紐付け情報を選択する紐付け情報選択手段と、を備える、
生体画像解析装置。
【請求項2】
前記生体画像の特徴量を抽出する特徴量抽出手段をさらに備え、
前記類似度算出手段は、前記特徴量に基づいて類似度を算出する、
請求項1に記載の生体画像解析装置。
【請求項3】
前記紐付け情報が、被験体の健康状態に関する情報である、
請求項2に記載の生体画像解析装置。
【請求項4】
前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、
前記特徴量が、前記毛細血管の曲率である、
請求項3に記載の生体画像解析装置。
【請求項5】
前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、
前記特徴量が、前記毛細血管の、前記頭頂部を含む範囲における曲率変化である、
請求項3に記載の生体画像解析装置。
【請求項6】
前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、
前記特徴量が、前記毛細血管の曲率又は前記頭頂部を含む範囲における曲率変化であり、
前記特徴量抽出手段が、毛細血管を細線化した細線化画像における3点以上の端点を有する線図形のうち、3点以上の端点から選択された2点を両端とする線図形から前記特徴量を抽出し、
前記両端は、線図形上の端点間の経路長を基に選択される、
請求項3に記載の生体画像解析装置。
【請求項7】
前記記憶手段が、各紐付け情報の重要度を記憶し、
前記紐付け情報選択手段が、前記類似度及び前記重要度に基づいて前記紐付け情報を選択する、
請求項3に記載の生体画像解析装置。
【請求項8】
前記類似度に基づいて、前記生体画像を前記テンプレート画像群に追加するか否かを判定する判定手段をさらに備える、
請求項1~7いずれか一項に記載の生体画像解析装置。
【請求項9】
前記判定手段が、前記類似度が低い場合に前記生体画像を前記テンプレート画像群に追加すると判定する、請求項8に記載の生体画像解析装置。
【請求項10】
前記マッチング手法が、弾性マッチングである、請求項1~7いずれか一項に記載の生体画像解析装置。
【請求項11】
前記弾性マッチングが、DPマッチングである、請求項10に記載の生体画像解析装置。
【請求項12】
被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、
マッチング手法により、前記生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出ステップと、
前記類似度に基づいて、前記テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択する紐付け情報選択ステップと、を含む、
非診断的な生体画像解析方法。
【請求項13】
被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、
マッチング手法により、前記生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出ステップと、
前記類似度に基づいて、前記テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択する紐付け情報選択ステップと、を
コンピュータに実行させる生体画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体画像とテンプレート画像との類似度に基づいて情報を選択する、生体画像解析装置、生体画像解析方法、及び、生体画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被験体の血管の撮像画像から、被験体の健康状態を非侵襲的に評価する技術が知られている。例えば、毛細血管の形状を評価する技術として、毛細血管の屈曲数、動脈と静脈との交差数、屈曲度等の指標を基に異常度を算出する健康状態評価支援システム(特許文献1参照)が知られている。同文献では、屈曲度の実施形態として、単位長さ当たりの角度変化の積算値を算出している。
【0003】
また、毛細血管の密度、太さ、形状、及び、血流速度を数値化、基準テーブルの数値データと比較してクラス分けし、該クラス分けされたこれらデータを分析評価手段によって分析評価し、健康状態の総合評価として表示手段に出力することを特徴とする医療診断支援システム(特許文献2参照)が知られている。
【0004】
また、光超音波画像化システムにより得られた3次元画像を用いて、手指を所定の角度で屈曲したときの血管の曲率変化量を計算し、曲率変化量テーブルを参照することで、被験者の血管年齢を評価する画像処理装置(特許文献3参照)が知られている。
【0005】
本願出願人は、毛細血管頭頂部が撮像された画像を用いて、毛細血管頭頂部の形状のパラメータを測定することで、被験者の血液異常の有無を予測することが可能であることを開示した(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-106202号公報
【特許文献2】特開2006-325714号公報
【特許文献3】特開2020-069110号公報
【特許文献4】特開2022-098370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする第一の課題は、被験体の血管が撮像された生体画像を用いて、被検体の健康状態を的確に評価することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする第二の課題は、血管形状のパラメータを複数計測することなく、迅速且つ的確に、被検体の健康状態を的確に評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、マッチング手法を用いた画像解析により、血管形状のパラメータを直接計測しなくとも、被検体の健康状態を的確に評価できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、複数のテンプレート画像からなるテンプレート画像群と、各テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報とを記憶する記憶手段と、被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、マッチング手法により、前記生体画像と前記テンプレート画像との類似度を算出する類似度算出手段と、前記類似度に基づいて、前記紐付け情報を選択する紐付け情報選択手段と、を備える、生体画像解析装置である。
【0011】
また、別の本発明は、前記生体画像の特徴量を抽出する特徴量抽出手段をさらに備え、前記類似度算出手段は、前記特徴量に基づいて類似度を算出する、生体画像解析装置である。前記紐付け情報が、被験体の健康状態に関する情報であり得る。
【0012】
また、別の本発明は、前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、前記特徴量が、前記毛細血管の曲率である、生体画像解析装置である。さらに別の本発明は、前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、前記特徴量が、前記毛細血管の、前記頭頂部を含む範囲における曲率変化である、生体画像解析装置である。
【0013】
また、別の本発明は、前記生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であって、前記特徴量が、前記毛細血管の曲率又は前記頭頂部を含む範囲における曲率変化であり、前記特徴量抽出手段が、毛細血管を細線化した細線化画像における3点以上の端点を有する線図形のうち、3点以上の端点から選択された2点を両端とする線図形から前記特徴量を抽出し、前記両端は、線図形上の端点間の経路長を基に選択される、生体画像解析装置である。
【0014】
また、別の本発明は、前記記憶手段が、各紐付け情報の重要度を記憶し、前記紐付け情報選択手段が、前記類似度及び前記重要度に基づいて前記紐付け情報を選択する、生体画像解析装置である。
【0015】
また、別の本発明は、前記類似度に基づいて、前記生体画像を前記テンプレート画像群に追加するか否かを判定する判定手段をさらに備える、生体画像解析装置である。
【0016】
また、別の本発明は、前記判定手段が、前記類似度が低い場合に前記生体画像を前記テンプレート画像群に追加すると判定する、生体画像解析装置である。
【0017】
本発明におけるマッチング手法は、弾性マッチングであり得、弾性マッチングは、DPマッチングであり得る。
【0018】
本発明は、さらに、被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、マッチング手法により、前記生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて、前記テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択する紐付け情報選択ステップと、を含む、生体画像解析方法を提供する。本発明の方法は、非診断的及び/又は診断的な方法であり得る。
【0019】
本発明は、さらに、被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、マッチング手法により、前記生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて、前記テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択する紐付け情報選択ステップと、をコンピュータに実行させる生体画像解析プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、血管形状の複雑なパラメータを複数計測しなくとも、被検体の健康状態を的確に反映した情報を提示することができる。本発明によれば、被検体の健康状態を、非侵襲的且つ的確に評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施態様を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施態様による画像解析のフローチャートである。
【
図3】本発明の別の実施態様による画像解析のフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例により得られたクエリ画像及びテンプレート画像の特徴量をグラフ化したものである。
【
図7】本発明の実施例により得られた、クエリ画像とテンプレート画像との類似度を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の生体画像解析装置は、記憶手段と、画像受付手段と、類似度算出手段と、紐付け情報選択手段とを備える。また、別の発明は、特徴量抽出手段、及び/又は判定手段をさらに備える生体画像解析装置である。本発明の生体画像解析装置を、実施形態に基づき詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の一実施形態である生体画像解析装置10の機能ブロック図を
図1に示し、生体画像解析装置10による生体画像解析の一例のフロー図を
図2に示す。
【0024】
生体画像解析装置10が備える画像受付手段14、特徴量抽出手段16、類似度算出手段18、判定手段20、紐付け情報選択手段22,及び表示手段24における各処理は、コンピュータのCPUにおいて実行される。また、表示手段22は、ディスプレイ等の出力装置に、所定の情報を表示させる処理を実行する。
【0025】
記憶手段12は、少なくとも、複数のテンプレート画像からなるテンプレート画像群と、各テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報とを記憶する。記憶手段12は、好ましくは、ストレージデバイスであり得る。本発明の別の実施態様では、複数のテンプレート画像からなるテンプレート画像群と、各テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報とを記憶したストレージデバイスを備える。
【0026】
記憶手段12に記憶されるテンプレート画像は、血管の画像であり、好ましくは毛細血管の画像であり、より好ましくは指爪床部毛細血管の画像である。また、テンプレート画像が毛細血管の画像である場合、毛細血管の頭頂部を含む画像であることが好ましい。本発明において、画像は、二次元画像であり得る。
【0027】
テンプレート画像は、毛細血管の撮像画像であってもよいが、ユーザが自ら生成した仮想的な毛細血管の画像であってもよい。様々な形状のテンプレート画像を用いることで、漏れのない解析が可能となる。
【0028】
テンプレート画像は、以下に述べる方法により予め特徴量が抽出されていることが好ましい。すなわち、テンプレート画像は、後述する、二値化処理、細線化処理、第一及び第二端点の選択処理、並びに補間処理等の、毛細血管の形状を鮮明化する画像処理が予めなされた血管又は毛細血管の画像であり、特徴量が予め抽出された画像であり得る。好ましくは、記憶手段12は、各テンプレート画像の特徴量を記憶する。
【0029】
毛細血管の頭頂部は、係蹄(キャピラリーループ)とも呼称され、皮下直下に形成される動脈から静脈への接続部位である。指爪床部毛細血管の場合は、毛細血管頭頂部は、指の長手方向に走る血管が屈曲して形成されたヘアピン状の先端部を指す。
【0030】
紐付け情報は、各テンプレート画像に紐付けられた情報である。本発明の一実施態様では、紐付け情報は、被検体の健康状態に関する情報であり、具体的には、被検体が健康か不健康か、将来的に特定の疾病に罹患するリスクが高いか否か等に関する情報である。
【0031】
さらに具体的には、紐付け情報は、被検体が特定の疾病に罹患しているか否か、及び/又は特定の疾病に将来的に罹患する可能性が高いか否か等を示す情報である。特定の疾病とは、例えば、生活習慣病等であり得る。また、被検体は、ヒト(被験者)又は動物であり得る。
【0032】
テンプレート画像とその紐付け情報とは、コホート研究やケースコントロール研究等の疫学的調査によって得られる。例えば、複数の被検体の現在又は過去の毛細血管の画像から、特定の疾患に罹患している者とそうでない者とを統計的に区別できるパターンを見出し、見出されたパターンに分類される毛細血管を有する被検体をグループ化し、当該グループの疾患の罹患率を算出する。見出されたパターンに分類される毛細血管の画像がテンプレート画像、算出された罹患率が紐付け情報として、記憶手段12に記憶される。
【0033】
また、記憶手段12は、各紐付け情報の重要度を記憶してもよい。重要度が高い紐付け情報としては、例えば、特定の疾病への罹患リスクが極めて高いことなどが挙げられる。後述する紐付け情報選択手段22は、複数の紐付け情報の中から、重要度に基づいて、表示手段24が表示する紐付け情報を選択してもよい。重要度は、任意の方法で決定され得る。
【0034】
画像受付手段14は、被検体の血管が撮像された撮像画像、すなわちクエリ画像を受け付ける(S101)。クエリ画像は、好ましくは毛細血管の画像であり、より好ましくは指爪床部毛細血管の画像である。クエリ画像が毛細血管の画像である場合、毛細血管頭頂部を含む画像であることが好ましい。また、クエリ画像は、複数の血管、好ましくは複数の毛細血管を含む画像であり得る。1の被検体は複数の毛細血管を有するため、複数の毛細血管を解析対象とすることで、被検体の健康状態のより的確な評価が可能となるためである。
【0035】
また、生体画像解析装置の別の態様は、毛細血管頭頂部の画像を撮像する撮像手段を備える。本発明で用いられる撮像画像は、例えば、被験体の指の爪床部分を観察対象とし、可視光や赤外線等が照射された観察対象を、CCDやCMOS等の撮像素子を具備する撮像部が撮像することで、指爪床の1又は複数の毛細血管を含む撮像画像である、クエリ画像の画像情報が得られる。
【0036】
特徴量抽出手段16は、類似度算出手段において類似度を算出するため、クエリ画像の特徴量を抽出する(S102)。特徴量を抽出するため、血管形状を鮮明化する画像処理が実行される。血管形状を鮮明化する画像処理の一例のフロー図を
図3に示す。クエリ画像に複数の血管が含まれる場合には、全部又は一部の血管について、血管形状を鮮明化する画像処理が実行される。
【0037】
まず、画像上の血管を黒、血管以外を白とする二値化画像が生成される(S201)。二値化画像は、反応拡散方程式を用いる方法や、大津の二値化法等、公知の方法により生成され得る。二値化画像は記憶手段12に記憶され得る。
【0038】
次に、二値化画像から、血管の領域を細線化した細線化画像が生成される(S202)。細線化画像は、Hilditchの方法、田村の方法等、公知の方法により生成され得る。細線化画像は記憶手段12に記憶され得る。
【0039】
次に、細線化画像中の線図形から、毛細血管の形状を反映した線図形の第一端点を選択し(S203)、第二端点を選択し(S204)、第一端点及び第二端点を有する線図形の画像を生成する(S205)。本実施態様の解析対象である毛細血管の通常の形状は、分岐がない、一本の管である。しかしながら、毛細血管が撮像された画像を基に生成した細線化画像には、複数の分岐点を持つ線図形が表示されることがある。そこで、当該線図形から、毛細血管の両端を選択し、毛細血管の形状を反映した線図形を抽出する処理を実行する。
【0040】
毛細血管の両端を選択する処理は、分岐を持つ線図形における3点以上の端点について、任意の一の端点と他の端点との経路から、毛細血管の形状を反映する経路を選択し、当該経路を構成する2点を選択する。具体的には、当該処理は、以下のステップで実行される。まず、線図形上の任意の端点を第一端点として選択する(S203)。ここで選択される第一端点は、毛細血管の心臓側、すなわち、毛細血管の頭頂部とは逆側の端点である。第一端点は、毛細血管の動脈側及び/又は静脈側のどちらに存在するものでも構わないが、最も心臓に近い、すなわち頭頂部から遠い端点を選択することが好ましい。
【0041】
次に、第一端点を出発点、線図形上の他の端点を終点とした線図形上の経路の長さを算出し、算出した経路長を基に、第二端点を選択する(S204)。一実施態様では、撮像画像中の毛細血管の動脈側又は静脈側に対応する端点を第一端点として選択し(第一端点選択ステップ;S203)、当該端点から線図形上の経路が最も長い端点を、毛細血管の静脈側又は動脈側に対応する端点を第二端点として選択する(第二端点選択ステップ;S204)。第一端点と第二端点とからなる線図形、すなわち分岐のない線図形を、毛細血管の形状に対応した線図形として生成する(線図形作成ステップ;S205)。線図形作成ステップで生成された画像は、生体画像解析装置の記憶手段に記憶され得る。
【0042】
次に、線図形が滑らかな曲線となるように、線図形上の各点の座標を補間した補間後画像を生成する(S206)。補間は、線形補間や三次スプライン補間等の公知の方法により実行され得る。補間後画像は、記憶手段12に記憶され得る。
【0043】
生体画像解析装置10の特徴量抽出手段16は、毛細血管が撮像された画像から特徴量を抽出する。具体的には、特徴量は、撮像画像中の毛細血管の曲率であり、毛細血管の、毛細血管頭頂部を含む範囲における曲率変化であり、より具体的には、補間後画像上の線図形における第一端点及び第二端点間の各点における曲率及び/又はその変化量であり得る。
【0044】
ここで、曲率とは、曲線の曲がり具合を示す数値である。生体画像解析装置の一実施態様では、血管形状を鮮明化する画像処理によって得られた画像、すなわち補間後画像における第一端点及び第二端点間の各点の曲率を算出する(S207)。
【0045】
類似度算出手段18は、クエリ画像とテンプレート画像との類似度を算出する。類似度の算出は、クエリ画像の特徴量と、テンプレート画像群に含まれる各テンプレート画像の特徴量とをマッチングすることで実行される。具体的には、クエリ画像の第一端点から第二端点間の曲率と、各テンプレート画像の第一端点から第二端点間の曲率とをマッチングし、類似度を算出する。
【0046】
ここで、マッチング手法として、弾性マッチングやマハラノビス距離マッチング等の既知のパターンマッチングのアルゴリズムが用いられる。さらに具体的には、弾性マッチングとしては、Dynamic Programming(DP)マッチング、端点フリーDPマッチング等のアルゴリズムが用いられる。
【0047】
マッチング手法としてはDPマッチングが好ましく用いられる。同じ毛細血管であっても、撮像条件によって、特徴的な形状が存在する画像上の位置(端点からの距離)が変化する場合がある。DPマッチングは、非線形伸縮を許容するマッチングする手法であり、特徴の位置が、類似度に与える影響を排除することができるため、他の手法と比べて、より正確なマッチングが可能となる。
【0048】
類似度算出手段18は、クエリ画像の特徴量と、各テンプレート画像の特徴量との類似度を距離として算出してもよい。かかる場合には、算出された距離の値が小さいほど類似しており、算出された距離の値が大きいほど類似していないことを示す。
【0049】
紐付け情報選択手段22は、算出された類似度に基づき、記憶手段に記憶された紐付け情報を選択する。紐付け情報選択手段22は、クエリ画像との類似度が最も高いテンプレート画像に紐付けされた紐付け情報を選択してもよく、クエリ画像との類似度を基に設定された重み付け係数から算出されたスコアに従って1又は複数の紐付け情報を選択してもよい。
【0050】
前述のように、クエリ画像とテンプレート画像との類似度が距離で表される場合には、閾値を定めておき、算出された距離が閾値を越えないテンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を、紐付け情報情報選択手段22が選択してもよい。
【0051】
また、紐付け情報選択手段22は、複数の紐付け情報の中から、クエリ画像とテンプレート画像との類似度に加え、紐付け情報の重要度に基づいて、表示手段24が表示する紐付け情報を選択してもよい。例えば、紐付け情報選択手段22は、予め定められた類似度(距離)の閾値を基に、閾値を越えないテンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択し、それらの紐付け情報の中から、各紐付け情報の重要度を基に、表示すべき紐付け情報を選択する。
【0052】
表示手段24は、紐付け情報情報選択手段22において選択された紐付け情報を表示する。具体的には、選択された紐付け情報をディスプレイ等の出力装置に表示させる処理が実行される。
【0053】
生体画像解析装置10は、クエリ画像をテンプレート画像群に追加するか否かを判定する判定手段20を、さらに備える。判定手段20は、クエリ画像とテンプレート画像との類似度を基に、クエリ画像をテンプレート画像に追加するか否かを判定し、クエリ画像が、テンプレート画像のいずれとも類似度が低い場合に、クエリ画像をテンプレート画像群に追加すると判定するものであることが好ましい。
【0054】
判定手段20により、テンプレート画像群が自動的に拡充されるため、生体画像解析装置による解析の精度を高めることができる。クエリ画像とテンプレート画像との類似度が距離で表される場合には、閾値を予め定めておき、いずれのテンプレート画像との距離も閾値を越えるクエリ画像は、テンプレート画像群に追加すると判定すればよい。
【0055】
紐付け情報選択手段22と、判定手段20とにおける閾値は、共通の閾値を用いても良いが、それぞれ異なる閾値を設定してもよい。
【0056】
判定手段20が、テンプレート画像に追加すると判定したクエリ画像は、テンプレート画像群を構成するテンプレート画像として記憶手段12に記憶される。併せて、クエリ画像を撮像した被検体の健康状態に関する情報を、紐付け情報として記憶手段12に記憶してもよい。
【0057】
本発明は、さらに生体画像解析方法を提供する。本発明の生体画像解析方法は、パーソナルコンピュータで実現され、記憶部及び制御部を備えたコンピュータにおいて、これらのハードウェア資源と協働して実現される。
【0058】
本発明の生体画像解析方法は、被験体の血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、マッチング手法により、生体画像とテンプレート画像との類似度を算出する類似度算出ステップと、類似度に基づいて、テンプレート画像に紐付けられた紐付け情報を選択する紐付け情報選択ステップと、を含む、生体画像解析方法である。
【0059】
別の生体画像解析方法は、生体画像の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップをさらに含み、類似度算出ステップは、特徴量に基づいて類似度を算出する。
【0060】
本発明の生体画像解析方法においては、紐付け情報が、被験体の健康状態に関する情報であり得る。また、生体画像は、毛細血管頭頂部が撮像された画像であり、特徴量が、毛細血管の曲率、及び/又は、毛細血管の頭頂部を含む範囲における曲率変化であり得る。
【0061】
本発明の別の生体画像解析方法は、生体画像が、毛細血管頭頂部が撮像された画像であり、特徴量が、毛細血管の曲率又は頭頂部を含む範囲における曲率変化であり、特徴量抽出ステップは、毛細血管を細線化した細線化画像における3点以上の端点を有する線図形のうち、3点以上の端点から選択された2点を両端とする線図形から特徴量を抽出し、両端は、線図形上の端点間の経路長を基に選択される。
【0062】
本発明の別の生体画像解析方法では、紐付け情報選択ステップは、紐付け情報の重要度及び生体画像とテンプレート画像との類似度に基づいて、紐付け情報を選択する。また、別の生体画像解析方法では、紐付け情報選択ステップにより選択された紐付け情報を表示する表示ステップを含む。
【0063】
別の生体画像解析方法は、類似度に基づいて、生体画像をテンプレート画像群に追加するか否かを判定する判定ステップをさらに含む。判定ステップは、類似度が低い場合に生体画像をテンプレート画像群に追加すると判定する判定ステップであり得る。
【0064】
生体画像解析方法におけるマッチング手法は、弾性マッチング及び/又はDPマッチングであり得る。
【0065】
本発明は、生体画像解析方法をコンピュータに実行させる生体画像解析プログラムをさらに提供する。本発明の別態様は、上述のプログラムを記憶した記憶媒体である。記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な有形記憶媒体であり得る。
【実施例0066】
実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0067】
ある被験者の指爪部毛細血管の頭頂部の撮像画像を、本発明の生体画像解析装置を用いて解析した実施例を示す。
図4は、撮像画像から本発明の画像処理により得られた画像群を示す。Aは指爪部毛細血管の頭頂部を撮像したグレースケールの撮像画像であり、Bは撮像画像Aを二値化した二値化画像であり、Cは二値化画像Bを細線化した細線化画像である。
【0068】
図4Dは、細線化画像Cから第一端点及び第二端点を選択して得られた線図形を示す画像である。第一端点及び第二端点の選択について、別の例を参照して詳しく説明する。
図5のC’は、別の毛細血管頭頂部の二値化画像から得られた細線化画像である。
【0069】
毛細血管頭頂部の細線化画像C’は、複数の端点を有する線図形として表示された。そこで、端点のうち、最も心臓側に位置する端点を第一端点30として選択し、それ以外の端点は第二端点候補32とした。第一端点30から、各第二端点候補32までの経路を探索し、最も長い経路を構成する第二端点候補32を、第二端点34として選択した。第一端点30及び第二端点34から構成される線図形を、毛細血管頭頂部の形状を表す線図形として選択し、第一端点30及び第二端点34以外の端点、及びそれらの端点が構成する線図形を削除した。そのように生成された図形が
図4D、及び
図5D’である。
【0070】
さらに、
図4のEは、選択画像Dの線図形が滑らかになるように補間した補間後画像である。また、Fは補間後画像Eの各点における曲率をプロットしてグラフ化した曲率グラフである。
【0071】
図6及び
図7を参照し、類似度算出手段における類似度算出の実施例を説明する。
図6には、クエリ画像の曲率グラフQ(
図4Fに相当)と、記憶手段12に記憶されたテンプレート画像の曲率グラフT1~T6を模式的に示した。
【0072】
本実施例の記憶手段には、テンプレート画像として6枚のテンプレート画像、各テンプレート画像の特徴量である第一端点から第二端点間の曲率、及び、各テンプレート画像の紐付け情報が記憶されている。曲率グラフQに示されるクエリ画像の曲率と、曲率グラフT1~T6に示される各テンプレート画像の曲率を、DPマッチングによりマッチングした。
【0073】
マッチングの結果出力されたテーブルを
図7に示す。類似度は、距離として表され、距離が小さいほど類似していることを示す。距離の閾値は、予め0.3に設定されていたため、本実施例の紐付け情報選択手段は、T1に紐付けられた紐付け情報を選択し、表示手段は当該紐付け情報を表示した。