(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120715
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/70 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16K31/70 Z
F16K31/70 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027713
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 隆
(72)【発明者】
【氏名】柳屋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 邦俊
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA03
3H057BB32
3H057CC06
3H057DD11
3H057EE01
3H057FA17
3H057FB15
3H057HH01
3H057HH18
(57)【要約】
【課題】管路に傾いた状態で組み込まれることを抑制できる制御弁を提供する。
【解決手段】可変オリフィス装置1は、流体が流れる弁口34を有するケース10と、ケース10に収容される弁体40と、を有する。ケース10が、円筒形状を有するケース本体20と、ケース本体20の第1端21に取り付けられた、弁口34を有するシート30と、を有する。ケース本体20の第1端21の内周面に、ケース雌ねじ21cが設けられている。シート30の外周面に、ケース雌ねじ21cに螺合されるシート雄ねじ30cが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる弁口を有するケースと、前記ケースに収容される弁体と、を有し、前記流体の温度変化に応じて生じる前記ケースおよび前記弁体の伸縮量の差によって前記弁口の開口面積が変化する制御弁であって、
前記ケースが、筒形状を有するケース本体と、前記ケース本体の第1端に取り付けられた、前記弁口を有するシートと、を有し、
前記ケース本体の内周面に、ケース雌ねじが設けられ、
前記シートの外周面に、前記ケース雌ねじに螺合されるシート雄ねじが設けられていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記ケースが、前記ケース雌ねじに螺合され、前記シートを前記ケース本体に固定する止めねじをさらに有し、
前記止めねじが、前記弁口と前記ケース本体の外側とを接続する流体通路を有する、請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ケース本体の前記第1端における前記シートが螺合された部分が、縮径変形される、請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記弁体が、棒形状または筒形状を有する軸部と、前記軸部の第1端に連設された、前記弁口と向かい合う弁部と、を有し、
少なくとも前記ケース本体および前記軸部が樹脂製である、請求項1に記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数をα1、膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数をα2、膨潤伸び率をβ2とし、
前記弁体における前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL1とし、
前記ケースにおける前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL2とし、
前記流体の使用温度範囲の上限温度と下限温度との差をDtとしたとき、
以下の式(1)を満たす、請求項4に記載の制御弁。
(α2×Dt×L2)-(α1×Dt×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(1)
【請求項6】
前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数をα1、膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数をα2、膨潤伸び率をβ2とし、
前記弁体における前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL1とし、
前記ケースにおける前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL2としたとき、
以下の式(2)を満たす、請求項4に記載の制御弁。
(α2×L2)-(α1×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(2)
【請求項7】
前記弁体を構成する樹脂の膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の膨潤伸び率をβ2としたとき、
以下の式(3)を満たす、請求項4に記載の制御弁。
(β2×L2)-(β1×L1)=0 ・・・(3)
【請求項8】
前記流体の温度が使用温度範囲の下限温度であるとき、前記弁部が前記シートに接し、
前記弁部が前記シートに押しつけられる力が、前記ケースおよび前記弁体を構成する材料の許容応力のうちの最も低い許容応力以下である、請求項4に記載の制御弁。
【請求項9】
前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数と、前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数と、が異なる、請求項4に記載の制御弁。
【請求項10】
前記ケースが、前記弁部が配置される弁室と、前記弁室と前記ケースの外側とを接続する横孔と、を有している、請求項4に記載の制御弁。
【請求項11】
前記ケース本体の外周面に流通孔が設けられ、
前記流通孔が、前記ケース本体の内側空間に接続されている、請求項10に記載の制御弁。
【請求項12】
前記ケース本体の第2端側の端面に流通孔が設けられ、
前記流通孔が、前記ケース本体の内側空間に接続されている、請求項4に記載の制御弁。
【請求項13】
前記軸部が、筒形状を有し、
前記軸部の第2端が、前記ケースの外側に露出しており、
前記軸部の第2端側の端面に、流通孔が設けられ、
前記流通孔が、前記軸部の内側空間に接続されている、請求項4に記載の制御弁。
【請求項14】
前記軸部の少なくとも第2端が、前記ケースの外側に露出しており、
前記軸部の外周面に、流通溝が設けられ、
前記流通溝が、前記軸部における前記ケース本体の内側空間に配置される部分から前記ケース本体の外側に露出する部分まで延びている、請求項4に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流れる流体の温度に応じて流量を制御する制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の制御弁の一例が特許文献1に開示されている。この制御弁は、例えば、冷媒などの流体が流れる管路(流路)に組み込まれる。制御弁は、ケースと、弁体と、を有する。ケースは、樹脂製であり、円筒形状を有する。弁体は、金属製であり、丸棒形状を有する。弁体は、ケースに収容される。ケースの第1端には、弁口および横孔が設けられている。弁体の第1端が、弁口と向かい合う。弁体の第2端が、ケースの第2端にねじ構造によって取り付けられる。管路を流れる流体は、横孔からケースに入り、ケースの弁口から出ていく。
【0003】
管路を流れる流体の温度が変化すると、ケースおよび弁体が伸縮する。ケースおよび弁体の伸縮量の差によって、弁口の開口面積が変化する。そのため、制御弁は、管路を流れる流体の温度に応じて流体の流量を自動的に制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-086902号公報
【特許文献2】特開2015-113909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御弁において、弁体を中心軸周りに回転させてケースに対して中心軸方向に移動させることによって制御弁における流体の温度と流体の流量との関係である流量制御性を調整する。そのあと、ロックナットによって弁体の第2端をケースの第2端に固定する。
【0006】
ケースの第1端は、管路に固定される。ケースの第2端は、管路の内周面と間隔をあけて配置される。そのため、ロックナットの重みによって、制御弁が傾いた状態で管路に組み込まれることがある。
【0007】
また、特許文献2の制御弁は、ロックナットと管路との隙間が小さく、ロックナットを回すための工具を管路に挿入することが難しい。そのため、制御弁を管路に組み込んだ後に、流量制御性を調整することが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、管路に傾いた状態で組み込まれることを抑制できる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る制御弁は、流体が流れる弁口を有するケースと、前記ケースに収容される弁体と、を有し、前記流体の温度変化に応じて生じる前記ケースおよび前記弁体の伸縮量の差によって前記弁口の開口面積が変化する制御弁であって、前記ケースが、筒形状を有するケース本体と、前記ケース本体の第1端に取り付けられた、前記弁口を有するシートと、を有し、前記ケース本体の内周面に、ケース雌ねじが設けられ、前記シートの外周面に、前記ケース雌ねじに螺合されるシート雄ねじが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記ケースが、前記ケース雌ねじに螺合され、前記シートを前記ケース本体に固定する止めねじをさらに有し、前記止めねじが、前記弁口と前記ケース本体の外側とを接続する流体通路を有する、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記ケース本体の前記第1端における前記シートが螺合された部分が、縮径変形される、ことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記弁体が、棒形状または筒形状を有する軸部と、前記軸部の第1端に連設された、前記弁口と向かい合う弁部と、を有し、少なくとも前記ケース本体および前記軸部が樹脂製である、ことが好ましい。
【0013】
本発明において、
前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数をα1、膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数をα2、膨潤伸び率をβ2とし、
前記弁体における前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL1とし、
前記ケースにおける前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL2とし、
前記流体の使用温度範囲の上限温度と下限温度との差をDtとしたとき、
以下の式(1)を満たす、ことが好ましい。
(α2×Dt×L2)-(α1×Dt×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(1)
【0014】
本発明において、
前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数をα1、膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数をα2、膨潤伸び率をβ2とし、
前記弁体における前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL1とし、
前記ケースにおける前記流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL2としたとき、
以下の式(2)を満たす、ことが好ましい。
(α2×L2)-(α1×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(2)
【0015】
本発明において、
前記弁体を構成する樹脂の膨潤伸び率をβ1とし、
前記ケースを構成する樹脂の膨潤伸び率をβ2としたとき、
以下の式(3)を満たす、ことが好ましい。
(β2×L2)-(β1×L1)=0 ・・・(3)
【0016】
本発明において、前記流体の温度が使用温度範囲の下限温度であるとき、前記弁部が前記シートに接し、前記弁部が前記シートに押しつけられる力が、前記ケースおよび前記弁体を構成する材料の許容応力のうちの最も低い許容応力以下である、ことが好ましい。
【0017】
本発明において、前記弁体を構成する樹脂の線膨張係数と、前記ケースを構成する樹脂の線膨張係数と、が異なる、ことが好ましい。
【0018】
本発明において、前記ケースが、前記弁部が配置される弁室と、前記弁室と前記ケースの外側とを接続する横孔と、を有している、ことが好ましい。
【0019】
本発明において、前記ケース本体の外周面に流通孔が設けられ、前記流通孔が、前記ケース本体の内側空間に接続されている、ことが好ましい。
【0020】
本発明において、前記ケース本体の第2端側の端面に流通孔が設けられ、前記流通孔が、前記ケース本体の内側空間に接続されている、ことが好ましい。
【0021】
本発明において、前記軸部が、筒形状を有し、前記軸部の第2端が、前記ケースの外側に露出しており、前記軸部の第2端側の端面に、流通孔が設けられ、前記流通孔が、前記軸部の内側空間に接続されている、ことが好ましい。
【0022】
本発明において、前記軸部の少なくとも第2端が、前記ケースの外側に露出しており、前記軸部の外周面に、流通溝が設けられ、前記流通溝が、前記軸部における前記ケース本体の内側空間に配置される部分から前記ケースの外側に露出される部分まで延びている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ケース本体の第1端の内周面にケース雌ねじが設けられ、シートの外周面にケース雌ねじに螺合されるシート雄ねじが設けられている。これにより、弁体をケース本体に固定し、ケース本体に螺合されたシートを中心軸周りに回転させることで制御弁の流量制御性を調整できる。そのため、ケース本体の第2端に配置されるロックナットが不要になり、ロックナットの重みによって、制御弁が傾いた状態で管路に組み込まれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例に係る可変オリフィス装置が管路に組み込まれた状態を示す図である。
【
図3】可変オリフィス装置の近傍を示す拡大図である。
【
図4】可変オリフィス装置のシートの固定構造の第1変形例を示す図である。
【
図5】可変オリフィス装置のシートの固定構造の第2変形例を示す図である。
【
図6】可変オリフィス装置のシートの固定構造の第3変形例を示す図である。
【
図7】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第1変形例を示す図である。
【
図8】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第2変形例を示す図である。
【
図9】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第3変形例を示す図である。
【
図10】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第4変形例を示す図である。
【
図11】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第5変形例を示す図である。
【
図12】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第6変形例を示す図である。
【
図13】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第7変形例を示す図である。
【
図14】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第8変形例を示す図である。
【
図15】可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第9変形例を示す図である。
【
図16】可変オリフィス装置の第1変形例を示す図である。
【
図17】可変オリフィス装置の第2変形例を示す図である。
【
図18】可変オリフィス装置の第3変形例を示す図である。
【
図19】可変オリフィス装置の第4変形例を示す図である。
【
図20】可変オリフィス装置の第5変形例を示す図である。
【
図21】可変オリフィス装置の第6変形例を示す図である。
【
図22】可変オリフィス装置の第7変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例に係る可変オリフィス装置について、
図1~
図22を参照して説明する。可変オリフィス装置は、制御弁の一例である。
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る可変オリフィス装置が管路に組み込まれた状態を示す図である。
図2は、可変オリフィス装置を示す図である。
図3は、可変オリフィス装置の近傍を示す拡大図である。
図4~
図6は、可変オリフィス装置のシートの固定構造の第1~第3変形例を示す図である。
図7~
図15は、可変オリフィス装置の弁体の固定構造の第1~第9変形例を示す図である。
図16~
図22は、可変オリフィス装置の第1~第7変形例を示す図である。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
本実施例に係る可変オリフィス装置は、エアコンシステムの管路に組み込まれる。可変オリフィス装置は、管路を流れる流体(冷媒)の流量を制御する。可変オリフィス装置は、例えば、流体の温度が上がると流量を増加させ、流体の温度が下がると流量を減少させる。
【0031】
図1~
図3に示すように、可変オリフィス装置1は、ケース10と、弁体40と、を有する。可変オリフィス装置1は、管路100に組み込まれる。
【0032】
ケース10は、ケース本体20と、シート30と、止めねじ38と、を有する。
【0033】
ケース本体20は、例えば、ポリアミド(PA)などの樹脂製である。ケース本体20は、例えば、ステンレス鋼や真ちゅう、アルミニウム合金などの金属製でもよい。ケース本体20は、円筒形状を有する。ケース本体20は、角筒形状を有していてもよい。ケース本体20は、両方の端面に開口を有する。ケース本体20の第1端21の内周面には、ケース雌ねじ21cが設けられている。ケース本体20の第2端22の内径は、ケース本体20の中央部(第1端21(ケース雌ねじ21c)と第2端22との間の部分)の内径より小さい。ケース本体20の中央部の内周面によって画定される空間は、内側空間24と、弁室25と、を有する。弁室25は、内側空間24に接続されている。弁室25は第1端21寄りに配置され、内側空間24は第2端22寄りに配置されている。
【0034】
ケース本体20は、1つまたは複数の横穴23を有する。本実施形態では、一例として、ケース本体20は、2個の横孔23を有する。2個の横孔23は、例えば円形の孔であり、ケース本体20の外周面から内周面まで貫通している。2個の横孔23は、ケース雌ねじ21cの第2端22側に隣接している。2個の横孔23は、弁室25に接続されている。2つの横孔23は、弁室25とケース10の外側とを接続する。2個の横孔23は、上下方向に向かい合う。
【0035】
ケース本体20の第1端21の外周面には、支持部26が設けられている。支持部26は、環状突部であり、第1端21の外周面に周方向全体にわたって配置されている。支持部26の外径は、管路100の内径と同一である。支持部26の外径は、管路100を縮径変形させたときに管路100に固定可能であれば、管路100の内径より小さくてもよい。支持部26およびケース雌ねじ21cの中心軸方向の位置が重なっている。支持部26は、環状溝26aを有している。環状溝26aは、支持部26の外周面の幅方向中央に配置されている。環状溝26aは、支持部26の外周面に周方向全体にわたって配置されている。
【0036】
ケース本体20の第1端21は、ケース本体20の一端(
図2A、
図2Bにおいて左端)およびその近傍を含む。ケース本体20の第2端22は、ケース本体20の他端(
図2A、
図2Bにおいて右端)およびその近傍を含む。
【0037】
シート30は、例えば、ステンレス鋼や真ちゅう、アルミニウム合金などの金属製である。シート30は、例えば、樹脂製でもよい。シート30の外周面には、シート雄ねじ30cが設けられている。シート雄ねじ30cは、ケース雌ねじ21cに螺合される。シート30は、弁口34と、弁座35と、を有している。弁口34は、シート30を中心軸方向に貫通している。弁口34における第1端側(各断面図において左側)の第1部分34aは、シート30を中心軸周りに回転させる工具を挿入可能であり、かつ、工具が回転方向に係合可能な形状を有している。第1部分34aは、工具の一例である六角棒スパナを嵌合可能に形成されている。第1部分34aは正六角形の孔である。弁口34における第2端側(各断面図において右側)の第2部分34bは、円形の孔である。第2部分34bの外径は、第1部分34aの外径より小さい。弁座35は、シート30における第2端側の端面に配置されている。弁座35は、弁口34を囲む。弁口34は、弁室25に開口している。
【0038】
止めねじ38は、例えば、ステンレス鋼や真ちゅう、アルミニウム合金などの金属製である。止めねじ38は、樹脂製でもよい。止めねじ38の外周面には、雄ねじ38cが設けられている。雄ねじ38cは、ケース雌ねじ21cに螺合される。止めねじ38は、流体通路39を有している。流体通路39は、止めねじ38を中心軸方向に貫通している。流体通路39は、止めねじ38を中心軸周りに回転させる工具を挿入可能であり、かつ、工具が回転方向に係合可能な形状を有している。流体通路39は、工具の一例である六角棒スパナを嵌合可能に形成されている。流体通路39は、弁口34の第1部分34aと同一の正六角形の孔である。流体通路39は、弁口34とケース本体20の外側とを接続する。止めねじ38は、シート30とともにケース本体20にねじ構造によって取り付けられ、シート30をケース本体20に固定する。
【0039】
弁体40は、ケース10に収容される。弁体40は、軸部50と、弁部60と、を一体的に有する。
【0040】
軸部50は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂製である。軸部50は、ケース本体20と種類の異なる樹脂で構成されていることが好ましい。軸部50は、例えば、ステンレス鋼や真ちゅう、アルミニウム合金などの金属製でもよい。軸部50は、丸棒形状を有する。軸部50は、円筒形状を有していてもよい。軸部50の外径は、中心軸方向全体にわたって一定である。軸部50の第1端51には、弁部60が同軸に接続されている。軸部50の第2端52側の端面は、ケース本体20の第2端22側の端面と面一である。
【0041】
軸部50の第2端52は、ケース本体20の第2端22に固定される。具体的には、ケース本体20の中央部の内径(内側空間24の径)が軸部50の外径よりわずかに大きく、ケース本体20の第2端22の内径が軸部50の外径より小さく、軸部50の第2端52がケース本体20の第2端22に圧入されている。内側空間24には、軸部50の第2端52以外の部分が配置され、当該部分がケース本体20の中央部によって中心軸方向に伸縮可能に支持されている。または、軸部50の第2端52が、接着剤によってケース本体20の第2端22に接合されていてもよい。または、ケース本体20と軸部50とがともに樹脂製のときは、軸部50の第2端52が溶着によってケース本体20の第2端22に接合されていてもよい。なお、接着剤による接合や溶着による接合等のように、圧入以外の固定手段によって軸部50の第2端52がケース本体20の第2端22に固定される構成の場合は、軸部50の第2端52は、ケース本体20の第2端22に圧入されることに限定されない。この一例としては、軸部50の第2端52の外径は、ケース本体20の第2端22の内径と同一の径に設定されていてもよい。
【0042】
軸部50の第1端51は、軸部50の一端(
図2Bにおいて左端)およびその近傍を含む。軸部50の第2端52は、軸部50の他端(
図2Bにおいて右端)およびその近傍を含む。
【0043】
弁部60は、例えば、ステンレス鋼や真ちゅう、アルミニウム合金などの金属製である。弁部60は、例えば、PPSなどの樹脂製でもよく、軸部50と一体的に樹脂で成形されていてもよい。弁部60は、円柱形状を有する。弁部60の外径は、軸部50の外径より小さく、弁口34の第2部分34bの内径より大きい。弁部60の先端61は、円錐形状を有する。弁部60は、弁室25に配置される。弁部60の先端61は、弁口34と中心軸方向に向かい合う。
【0044】
管路100を流れる流体は、横孔23を通り弁室25に流入し、弁室25から弁口34および流体通路39を通り管路100に流出する。または、管路100を流れる流体は、流体通路39および弁口34を通り弁室25に流入し、弁室25から横孔23を通り管路100に流出する。そして、流体の温度変化に応じて生じるケース10および弁体40の伸縮量の差によって弁口34の開口面積が変化する。
【0045】
可変オリフィス装置1は、一例として、弁部60の先端61が弁座35に弁体40側から接することで、弁口34を閉じる構成である。しかしながら、可変オリフィス装置1は、弁部60が弁口34の開口縁となる弁座35に接することで弁口34を閉じる構成に限定されない。他の例では、可変オリフィス装置1は、弁部60が弁口34の縁に当接する構成ではなく、弁部60が弁口40内に進入して弁部60の外周面と弁口34の内周面とによって弁口34を閉じる構成、または、弁部60の外周面と弁口34の内周面とによって流路を設ける構成であってもよい。すなわち、この変形例では、弁部60は、弁口34に進入可能な形状に形成される。そして、弁部60は、弁部60が弁口34に進入したときに弁部60の外周面が弁口34の内周面に面接触することで弁口34を閉じる形状に形成されてもよい。または、弁部60は、弁口34に進入したときに、弁口34の内周面との間に隙間(最小絞り通路)を形成して少量の流体が流れる形状に形成されてもよい。
【0046】
または、弁部60の外径が、ケース本体20の中央部の内径(弁室25の径)と同一であり、弁部60が横孔23と径方向に向かい合うようにしてもよい。このようすることで、横孔23が弁口となり、流体の温度変化に応じて生じるケース10および弁体40の伸縮量の差によって横孔23の開口面積が変化する。
【0047】
可変オリフィス装置1において、ケース本体20、シート30(弁口34)、止めねじ38(流体通路39)および弁体40(軸部50、弁部60)は、それぞれの中心軸が一致している。
【0048】
可変オリフィス装置1は、例えば、次のようにして組み立てられる。
【0049】
軸部50の第2端52を先頭にして、弁体40を第1端21側の端面の開口からケース本体20に挿入する。弁体40の軸部50の第2端52をケース本体20の第2端22に圧入する。弁体40の弁部60が、弁室25に配置される。シート30のシート雄ねじ30cをケース本体20のケース雌ねじ21cに螺合させて、シート30をケース本体20に取り付ける。弁体40の弁部60が、弁口34と向かい合う。
【0050】
次に、試験装置に接続された管路に可変オリフィス装置1を組み込む。試験装置は、可変オリフィス装置1の組立工程において用いられ、管路を流れる流体(例えば空気)の温度を任意の値に設定できる装置である。試験装置は、所定温度の流体を一定の流量で管路に流す。可変オリフィス装置1の弁口34を通過する流体の流量が流体の温度に応じた設定値になるように、シート30の弁口34の第1部分34aに六角棒スパナを差し込んでシート30を中心軸周りに回転させる。シート30は、回転方向に応じて弁部60に近づき、または、弁部60から離れる。弁口34を通過する流体の流量が設定値になると、止めねじ38を、ケース雌ねじ21cに螺合させる。止めねじ38の流体通路39に六角棒スパナを差し込んで止めねじ38を中心軸周りに回転させ、止めねじ38がシート30に当接するように締め付け、シート30をケース本体20に固定する。このようにして、可変オリフィス装置1が組み立てられ、流量制御性が調整される。
【0051】
可変オリフィス装置1は、エアコンシステムの管路100に挿入される。支持部26の外径が管路100の内径と同一である場合は、支持部26の外周面が、管路100の内周面にスライド可能に接する。管路100における環状溝26aに対応する部分が縮径変形されることによって、可変オリフィス装置1が管路100に固定される。なお、可変オリフィス装置1は、環状溝26aにOリングが嵌め込まれ、管路100に押し込まれることによって、管路100に固定されてもよい。
【0052】
可変オリフィス装置1は、管路100を流れる流体の温度に応じてケース10および弁体40が伸縮する。ケース10および弁体40の伸縮量の差によって弁体40の弁部60が弁口34に近づきまたは弁口34から離れて、弁口34の開口面積が変化する。これにより、弁口34を流れる流体の流量が流体の温度に応じて自動的に制御される。
【0053】
可変オリフィス装置1は、弁体40(軸部50)を構成する樹脂の線膨張係数をα1、膨潤伸び率をβ1とし、ケース10(ケース本体20)を構成する樹脂の線膨張係数をα2、膨潤伸び率をβ2とし、弁体40における流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL1とし、ケース10における流体の温度変化に応じて伸縮する部分の長さをL2とし、流体の使用温度範囲の上限温度t2と下限温度t1との差をDtとしたとき、以下の式(1)を満たす。
(α2×Dt×L2)-(α1×Dt×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(1)
【0054】
「線膨張係数」は、「線熱膨張係数」(JISK6900)とも呼ばれ、温度変化1度当たりの単位長さ当たりの材料の長さの可逆的な変化である。具体的には、温度変化をΔTとし、温度変化前の材料の長さをN1とし、温度変化後の材料の長さをN2としたとき、材料の線膨張係数αは以下の式で示される。
α=(N2-N1)/(N1×ΔT)
【0055】
樹脂は、液体の中に浸漬されたり、蒸気にさらされたりすることにより体積が増大する特性を有する。この特性は、「膨潤」(JISK6900)と呼ばれる。「膨潤伸び率」とは、膨潤による単位長さ当たりの材料の長さの変化である。具体的には、膨潤させる前の材料の長さをN1とし、膨潤による体積の増大が飽和した材料の長さをN2としたとき、材料の膨潤伸び率βは、以下の式で示される。
β=(N2-N1)/N1
【0056】
このようにすることで、流体の温度が下限温度t1から上限温度t2まで変化したときに生じるケース10および弁体40の伸縮量の差(式(1)の左辺)が、膨潤によって生じるケース10および弁体40の伸び量の差(同右辺)よりも大きくなる。そのため、膨潤によって生じる可変オリフィス装置1の流量制御性の変化を効果的に抑制できる。
【0057】
または、可変オリフィス装置1において、以下の式(2)を満たすようにしてもよい。
(α2×L2)-(α1×L1)>|(β2×L2)-(β1×L1)|
・・・(2)
【0058】
このようにすることで、流体の温度が単位温度(1度)だけ変化したときに生じるケース10および弁体40の伸縮量の差(式(2)の左辺)が、膨潤によって生じるケース10および弁体40の伸び量の差(同右辺)よりも大きくなる。そのため、温度変化による伸縮量の差に対して膨潤による伸び量の差が十分に小さくなり、膨潤によって生じる可変オリフィス装置1の流量制御性の変化をより効果的に抑制できる。
【0059】
または、可変オリフィス装置1において、以下の式(3)を満たすようにしてもよい。
(β2×L2)-(β1×L1)=0 ・・・(3)
【0060】
このようにすることで、膨潤によって生じるケース10の伸び量(式(3)の左辺第1項)と弁体40の伸び量(同第2項)とが同一になる。そのため、膨潤によって生じる可変オリフィス装置1の流量制御性への影響を解消できる。
【0061】
例えば、膨潤伸び率β1が0.12であり、膨潤伸び率β2が0.15であるとき、長さL1を100mmとし、長さL2を80mmとする。このようにすることで、上記式(3)を満たし、膨潤によって生じる可変オリフィス装置1の流量制御性への影響を解消できる。
【0062】
なお、可変オリフィス装置1は、部品寸法および材料特性などに許容誤差を含むため、上記式(1)~(3)についても許容誤差の範囲を含む。特に上記式(3)は、左辺の値が、厳密に0の場合と、許容誤差によって生じる0以外の範囲内の値である場合と、を含む。
【0063】
また、可変オリフィス装置1において、弁体40を構成する樹脂の線膨張係数α1と、ケース10を構成する樹脂の線膨張係数α2と、が異なっていてもよい。このようにすることで、流体の温度変化に応じて生じるケース10および弁体40の伸縮量の差を比較的大きくすることができる。なお、線膨張係数α1と線膨張係数α2とが同一でもよい。
【0064】
以上説明したように、可変オリフィス装置1は、流体が流れる弁口34を有するケース10と、ケース10に収容される弁体40と、を有する。可変オリフィス装置1は、流体の温度変化に応じて生じるケース10および弁体40の伸縮量の差によって弁口34の開口面積が変化する。ケース10が、円筒形状を有するケース本体20と、ケース本体20の第1端21に取り付けられた、弁口34を有するシート30と、を有する。ケース本体20の第1端21の内周面に、ケース雌ねじ21cが設けられ、シート30の外周面に、ケース雌ねじ21cに螺合されるシート雄ねじ30cが設けられている。
【0065】
このようにすることで、弁体40をケース本体20に固定し、ケース本体20に螺合されたシート30を中心軸周りに回転させることで可変オリフィス装置1の流量制御性を調整できる。そのため、従来の可変オリフィス装置のようにロックナットの重みによって可変オリフィス装置が傾いた状態で管路100に組み込まれることを抑制できる。また、弁口34の形状を六角棒スパナなどの比較的細い工具に適合させることによって、可変オリフィス装置1を管路100に組み込んだ後に、シート30を回転させて流量制御性を調整できる。
【0066】
また、ケース10が、ケース雌ねじ21cに螺合され、シート30をケース本体20に固定する止めねじ38を有する。止めねじ38が、弁口34とケース本体20の外側とを接続する流体通路39を有する。このようにすることで、比較的簡易な固定構造でシート30をケース本体20に固定できる。また、流体通路39の形状を六角棒スパナなどの比較的細い工具に適合させることによって、可変オリフィス装置1を管路100に組み込んだ後に、止めねじ38を回転させることができる。
【0067】
また、弁体40が、丸棒形状を有する軸部50と、軸部50の第1端51に連設された、弁口34と向かい合う弁部60と、を有する。そして、ケース本体20および軸部50が樹脂製である。このようにすることで、ケース本体20または軸部50が金属製である構成に比べて、可変オリフィス装置1が軽くなる。そのため、可変オリフィス装置が傾いた状態で管路100に組み込まれることをより効果的に抑制できる。また、ケース10および弁体40がともに膨潤する。そのため、ケース10および弁体40の一方のみ膨潤する構成に比べて、可変オリフィス装置1の流量制御性の変化を抑制できる。
【0068】
また、可変オリフィス装置1は、流体の温度が使用温度範囲の下限温度t1であるとき、弁部60の先端61がシート30の弁座35に接する構成を有していてもよい。この構成において、先端61が弁座35に押しつけられる力が、ケース10および弁体40を構成する材料の許容応力のうちの最も低い許容応力以下となるようにする。このようにすることで、膨潤によってケース10および弁体40が伸びた場合に部材が変形したり破壊されたりすることを抑制できる。
【0069】
図4~
図6に、可変オリフィス装置1のシートの固定構造の変形例を示す。各変形例において、可変オリフィス装置1と同一には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0070】
図4に示す可変オリフィス装置1Aは、ケース10Aと、弁体40と、を有する。ケース10Aは、ケース本体20と、シート30と、止めねじ38Aと、を有する。止めねじ38Aは、正六角形の頭部を備えた六角ボルト形状を有する。可変オリフィス装置1Aにおいて、シート30は、止めねじ38Aによってケース本体20に固定される。このようにすることで、止めねじ38Aの流体通路39の形状を工具に適合させる必要がなくなり、流体通路39の流路面積を弁口34(第1部分34a)の流路面積より大きくすることができる。そのため、流体の圧力損失を低減できる。
【0071】
図5に示す可変オリフィス装置1Bは、ケース10Bと、弁体40と、を有する。ケース10Bは、ケース本体20と、シート30と、を有する。ケース10Bは、止めねじ38を有していない。可変オリフィス装置1Bにおいて、シート30は、ねじ用接着剤(図示なし)によってケース本体20に固定される。
【0072】
図6に示す可変オリフィス装置1Cは、ケース10Cと、弁体40と、を有する。ケース10Cは、ケース本体20Cと、シート30と、を有する。ケース10Cは、止めねじ38を有していない。ケース本体20Cの環状溝26aは、可変オリフィス装置1のケース本体20の環状溝26aより浅い。シート30は、環状溝26aに対応する位置に螺合されている。シート30および環状溝26aの中心軸方向の位置が重なっている。可変オリフィス装置1Cは、エアコンシステムの管路100に挿入され、管路100における環状溝26aに対応する部分が縮径変形されることによって管路100に固定される。このとき、ケース本体20Cにおける環状溝26aに対応する部分も縮径変形され、シート30がケース本体20Cに固定される。
【0073】
図7~
図15に、可変オリフィス装置1の弁体の固定構造の変形例を示す。各変形例において、可変オリフィス装置1と同一には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0074】
図7に示す可変オリフィス装置1Dは、ケース10Dと、弁体40と、を有する。ケース10Dは、ケース本体20Dと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Dは、第1端21が開口し、第2端22が閉じている。軸部50の第2端52がケース本体20Dの第2端22の壁部に突き当たるまで当該ケース本体20Dに圧入されることによって、弁体40がケース本体20Dに固定される。
【0075】
図8に示す可変オリフィス装置1Eは、ケース10Eと、弁体40Eと、キー71Eと、を有する。ケース10Eは、ケース本体20Eと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Eの第2端22には、キー溝22eが設けられている。弁体40Eは、軸部50Eと、弁部60と、を有している。軸部50Eの第2端52には、キー溝52eが設けられている。キー溝22eおよびキー溝52eに角柱形状のキー71Eが圧入されることによって、弁体40Eがケース本体20Eに固定される。キー71Eは、例えば、円柱形状など角柱形状以外の形状を有していてもよい。
【0076】
図9に示す可変オリフィス装置1Fは、ケース10Fと、弁体40Fと、を有する。ケース10Fは、ケース本体20Fと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Fの第2端22の内径は、ケース本体20Fの中央部の内径より大きい。弁体40Fは、軸部50Fと、弁部60と、を有している。軸部50Fの第2端52の外周面には、圧入部52fが設けられている。圧入部52fは、環状突部であり、第2端52の外周面に周方向全体にわたって配置されている。圧入部52fの外径は、ケース本体20Fの第2端22の内径より大きい。圧入部52fがケース本体20Fの第2端22に圧入されることによって、弁体40Fがケース本体20Fに固定される。
【0077】
図10に示す可変オリフィス装置1Gは、ケース10Gと、弁体40Gと、弁体止めねじ72Gと、を有する。ケース10Gは、ケース本体20Gと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Gの第2端22には、ねじ孔22gが設けられている。弁体40Gは、軸部50Gと、弁部60と、を有している。軸部50Gの第2端52には、平面部52gが設けられている。ケース本体20Gの第2端22において、ねじ孔22gと平面部52gとが向かい合う。弁体止めねじ72Gがねじ孔22gに螺合される。弁体止めねじ72Gが平面部52gに当接するように締め付けられることによって、弁体40Gがケース本体20Gに固定される。なお、軸部50Gは、平面部52gを有しない構成でもよく、この構成において、弁体止めねじ72Gは、軸部50Gの円筒形状の外周面に当接するように締め付けられる。
【0078】
図11に示す可変オリフィス装置1Hは、ケース10Hと、弁体40Hと、を有する。ケース10Hは、ケース本体20Hと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Hの第2端22の内周面には、係止溝22hが設けられている。係止溝22hは、ケース本体20Hの第2端22の内周面に周方向全体にわたって配置されている。弁体40Hは、軸部50Hと、弁部60と、を有している。軸部50Hの第2端52には、複数の弾性片52hが設けられている。複数の弾性片52hは、径方向に弾性変形可能である。複数の弾性片52hは、中心軸周りに等間隔で配置されている。複数の弾性片52hの外側の面には、ケース本体20Hの係止溝22hに係止する係止突起52h1が設けられている。複数の弾性片52hと係止溝22hとでスナップフィット構造を構成している。複数の弾性片52hが係止溝22hに係止することによって、弁体40Hがケース本体20Hに固定される。
【0079】
図12に示す可変オリフィス装置1Jは、ケース10Jと、弁体40Jと、を有する。ケース10Jは、ケース本体20Jと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Jの第2端22には、複数の弾性片22jが設けられている。複数の弾性片22jは、径方向に弾性変形可能である。複数の弾性片22jは、中心軸周りに等間隔で配置されている。複数の弾性片22jの内側の面には、係止突起22j1が設けられている。弁体40Jは、軸部50Jと、弁部60と、を有している。軸部50Jの第2端52の外周面には、ケース本体20Jの係止突起22j1が係止する係止溝52jが設けられている。係止溝52jは、軸部50Jの第2端52の外周面に周方向全体にわたって配置されている。複数の弾性片22jと係止溝52jとでスナップフィット構造を構成している。複数の弾性片22jが係止溝52jに係止することによって、弁体40Jがケース本体20Jに固定される。
【0080】
図13に示す可変オリフィス装置1Kは、ケース10Kと、弁体40Kと、を有する。ケース10Kは、ケース本体20Kと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Kの第2端22の内周面には、雌ねじ22kが設けられている。弁体40Kは、軸部50Kと、弁部60と、を有している。軸部50Kの第2端52の外周面には、雌ねじ22kに螺合される雄ねじ52kが設けられている。軸部50Kの第2端52側の端面には、六角棒スパナを嵌合可能な正六角形の穴が設けられている。軸部50Kの雄ねじ52kがケース本体20Kの雌ねじ22kに螺合されることによって、弁体40Kがケース本体20Kに固定される。弁体40Kは、さらにねじ用接着剤によってケース本体20Kに固定されていてもよい。
【0081】
図14に示す可変オリフィス装置1Mは、ケース10Mと、弁体40Mと、を有する。ケース10Mは、ケース本体20Mと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Mの第2端22の内周面には、2個の係止凹部22mが設けられている。2個の係止凹部22mは、周方向に延びている。2個の係止凹部22mは、径方向に向かい合う。弁体40Mは、軸部50Mと、弁部60と、を有している。軸部50Mの第2端52の外周面には、2個の係止突起52mが設けられている。ケース本体20Mの第2端22側の端面の開口22bが、弁体40Mを中心軸方向に投影した形状の外形と同一の形状を有している。弁体40Mをケース本体20Mの第2端22側の開口22bに挿入して弁体40Mを中心軸周りに回転させると、2個の係止突起52mが2個の係止凹部22mに係止する。係止突起52mが係止凹部22mに係止することによって、弁体40Mがケース本体20Mに固定される。
【0082】
図15に示す可変オリフィス装置1Nは、ケース10Nと、弁体40Nと、ピン73Nと、を有する。ケース10Nは、ケース本体20Nと、シート30と、止めねじ38と、を有する。ケース本体20Nの第2端22には、ピン孔22nが設けられている。弁体40Nは、軸部50Nと、弁部60と、を有している。軸部50Nの第2端52には、ピン孔52nが設けられている。ケース本体20Nのピン孔22nおよび弁体40Nのピン孔52nにピン73Nが嵌合されている。ピン孔22nおよびピン孔52nとピン73Nとでピン止め構造を構成している。ピン73Nの長さは、ケース本体20Nの外径よりやや大きい(
図15B)。ピン73Nの長さは、ケース本体20Nの外径より大きく、管路100の内径よりやや小さくてもよい(
図15C)。ピン孔22nおよびピン孔52nにピン73Nが嵌合されることによって、弁体40Nがケース本体20Nに固定される。
【0083】
図16~
図22に、可変オリフィス装置1の変形例を示す。各変形例において、可変オリフィス装置1と同一の構成には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0084】
図16に示す可変オリフィス装置1Pは、ケース10Pと、弁体40と、を有する。ケース10Pは、ケース本体20Pと、シート30と、止めねじ38と、を有する。
【0085】
ケース本体20Pの外周面に、複数の流通孔27Pが設けられている。複数の流通孔27Pは、ケース本体20Pの内側空間24に接続されている。複数の流通孔27Pは、ケース本体20Pの外周面から内周面まで貫通している。複数の流通孔27Pは、円形の孔である。複数の流通孔27Pは、三角形、四角形または六角形などの多角形の孔でもよい。ケース本体20Pは、10個の流通孔27Pを有する。複数の流通孔27Pは、中心軸方向に等間隔で5個ずつ2列に並べられている。一方の列の流通孔27Pと他方の列の流通孔27Pとが上下方向に向かい合う。ケース本体20Pは、流通孔27Pを1個のみ有していてもよい。複数の流通孔27Pを通じて、ケース10Pの外側と内側空間24との間で流体が流れる。
【0086】
可変オリフィス装置1Pは、複数の流通孔27Pを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0087】
図17に示す可変オリフィス装置1Qは、ケース10Qと、弁体40と、を有する。ケース10Qは、ケース本体20Qと、シート30と、止めねじ38と、を有する。
【0088】
ケース本体20Qの外周面に、複数の流通孔27Qが設けられている。複数の流通孔27Qは、ケース本体20Qの内側空間24に接続されている。複数の流通孔27Qは、ケース本体20Qの外周面から内周面まで貫通している。複数の流通孔27Qは、長円形の孔である。ケース本体20Qは、2個の流通孔27Qを有する。2個の流通孔27Qは、上下方向に向かい合う。ケース本体20Qは、流通孔27Qを4個有していてもよく、4個の流通孔27Qが中心軸周りに等間隔で配置されていてもよい。複数の流通孔27Qを通じて、ケース10Qの外側と内側空間24との間で流体が流れる。
【0089】
可変オリフィス装置1Qは、複数の流通孔27Qを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0090】
図18に示す可変オリフィス装置1Rは、ケース10Rと、弁体40と、を有する。ケース10Rは、ケース本体20Rと、シート30と、止めねじ38と、を有する。
【0091】
ケース本体20Rの外周面に、流通孔27Rが設けられている。流通孔27Rは、ケース本体20Rの内側空間24に接続されている。流通孔27Rは、ケース本体20Rの外周面から内周面まで貫通している。流通孔27Rは、1条のらせん状の孔である。ケース本体20Rは、流通孔27Rを複数条有していてもよい。流通孔27Rを通じて、ケース10Rの外側と内側空間24との間で流体が流れる。
【0092】
可変オリフィス装置1Rは、流通孔27Rを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0093】
図19に示す可変オリフィス装置1Sは、ケース10Sと、弁体40と、を有する。ケース10Sは、ケース本体20Sと、シート30と、を有する。
【0094】
ケース本体20Sの内周面に、複数の流通溝28Sが設けられている。複数の流通溝28Sは、ケース本体20Sの内周面における横孔23近傍から第2端22側の端面まで中心軸方向に延びている。ケース本体20Sは、2個の流通溝28Sを有している。2個の流通溝28Sは、上下方向と直交する方向に向かい合う。複数の流通溝28Sの第1端28aが弁室25に配置され、第2端28bがケース本体20Sの第2端22側の端面に配置される。複数の流通溝28Sは、弁室25から内側空間24を通りケース本体20Sの外側まで延びている。流通溝28Sは、ケース本体20Sの内側空間24に接続された流通孔である。すなわち、ケース本体20Sの第2端22側の端面に流通孔(流通溝28Sの第2端28b)が設けられ、流通孔が、ケース本体20Sの内側空間24に接続されている。複数の流通溝28Sを通じて、ケース10Sの外側と内側空間24との間で流体が流れる。
【0095】
流通溝28Sの第1端28aは、流通溝28Sの一端(
図19Bにおいて左端)およびその近傍を含む。流通溝28Sの第2端28bは、流通溝28Sの他端(
図19Bにおいて右端)およびその近傍を含む。
【0096】
可変オリフィス装置1Sは、複数の流通溝28Sを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0097】
図20に示す可変オリフィス装置1Tは、ケース10Tと、弁体40と、を有する。ケース10Tは、ケース本体20Tと、シート30と、を有する。
【0098】
ケース本体20Tの内周面に、複数の流通溝28Tが設けられている。複数の流通溝28Tは、ケース本体20Tの内周面における横孔23近傍から第2端22側の端面まで中心軸方向に延びている。ケース本体20Tは、6個の流通溝28Tを有している。6個の流通溝28Tは、中心軸周りに等間隔で配置されている。複数の流通溝28Tの第1端28aが弁室25に配置され、第2端28bがケース本体20Tの第2端22側の端面に配置される。複数の流通溝28Tは、弁室25から内側空間24を通りケース本体20Tの外側まで延びている。流通溝28Tは、ケース本体20Tの内側空間24に接続された流通孔である。すなわち、ケース本体20Tの第2端22側の端面に流通孔(流通溝28Tの第2端28b)が設けられ、流通孔が、ケース本体20Tの内側空間24に接続されている。複数の流通溝28Tを通じて、ケース10Tの外側と内側空間24との間で流体が流れる。
【0099】
流通溝28Tの第1端28aは、流通溝28Tの一端(
図20Bにおいて左端)およびその近傍を含む。流通溝28Tの第2端28bは、流通溝28Tの他端(
図20Bにおいて右端)およびその近傍を含む。
【0100】
可変オリフィス装置1Tは、複数の流通溝28Tを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0101】
図21に示す可変オリフィス装置1Uは、ケース10と、弁体40Uと、を有する。弁体40Uは、軸部50Uと、弁部60と、を一体的に有する。
【0102】
軸部50Uの第2端52は、例えば、圧入や溶着、接着剤による接着などの固定手段によって、ケース10のケース本体20の第2端22に固定される。軸部50Uの第2端52の端面は、ケース本体20の第2端22と面一に配置される。なお、軸部50Uの第2端52の端面が、ケース本体20の内側に配置されていてもよく、ケース本体20の外側に配置されていてもよい。すなわち、少なくとも軸部50Uの第2端52がケース10の外側に露出していればよい。「第2端52がケース10の外側に露出する構成」とは、「第2端52がケース10の外側から視認可能である構成」のことである。
【0103】
軸部50Uの外周面に、複数の流通溝58Uが設けられている。複数の流通溝58Uは、軸部50Uの第1端51から第2端52まで中心軸方向に延びている。軸部50Uは、3個の流通溝58Uを有している。軸部50Uは、流通溝58Uを1個のみ有していてもよい。3個の流通溝58Uは、中心軸周りに等間隔で配置されている。複数の流通溝58Uの第1端58aが弁室25に配置され、第2端58bが軸部50Uの第2端52側の端面(すなわち、ケース本体20の第2端22側の端面)に配置される。軸部50Uの第2端52側の端面は、ケース10の外側に露出している。複数の流通溝58Uは、弁室25から内側空間24を通りケース本体20の外側まで延びている。流通溝58Uは、ケース本体20の内側空間24に接続された流通孔である。すなわち、ケース本体20の第2端22側の端面に流通孔(流通溝58Uの第2端58b)が設けられ、流通孔が、ケース本体20の内側空間24に接続されている。複数の流通溝58Uを通じて、ケース10の外側と内側空間24との間で流体が流れる。流通溝58Uは、軸部50Uにおけるケース本体20の内側空間24に配置される部分からケース10の外側に露出する部分まで延びていればよい。
【0104】
流通溝58Uの第1端58aは、流通溝58Uの一端(
図21Bにおいて左端)およびその近傍を含む。流通溝58Uの第2端58bは、流通溝58Uの他端(
図21Bにおいて右端)およびその近傍を含む。
【0105】
可変オリフィス装置1Uは、複数の流通溝58Uを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0106】
図22に示す可変オリフィス装置1Vは、ケース10と、弁体40Vと、を有する。弁体40Vは、軸部50Vと、弁部60と、を一体的に有する。
【0107】
軸部50Vは、円筒形状を有する。軸部50Vの第1端51の外周面には、軸部50Vの内周面によって画定される内側空間54Vに接続された開口54aが設けられている。開口54aは、弁室25に配置されている。軸部50Vの第2端52側の端面には、内側空間54Vに接続された開口54bが設けられている。開口54bは、ケース10の外側に露出する。内側空間54Vは、弁室25からケース本体20の外側まで延びている。開口54bは、軸部50Vの内側空間54Vに接続された流通孔である。開口54bを通じて、ケース10の外側と内側空間54Vとの間で流体が流れる。
【0108】
可変オリフィス装置1Vは、円筒形状の弁体40Vを有すること以外は、可変オリフィス装置1と同一の構成を有する。
【0109】
可変オリフィス装置1A~1H、1J、1K、1M、1N、1P~1Vは、可変オリフィス装置1と同一の作用効果を奏する。
【0110】
可変オリフィス装置1P~1Rにおいて、管路100を流れる流体が流通孔27P~27Rを通じて内側空間24に流れ込む。そのため、流体の温度変化に応じてケース本体20P~20Rおよび弁体40をより速く伸縮させることができる。
【0111】
可変オリフィス装置1S、1Tにおいて、管路100を流れる流体が流通溝28S、28Tを通じて内側空間24に流れ込む。そのため、流体の温度変化に応じてケース本体20S、20Tおよび弁体40をより速く伸縮させることができる。
【0112】
可変オリフィス装置1Uにおいて、管路100を流れる流体が流通溝58Uを通じて内側空間24に流れ込む。そのため、流体の温度変化に応じてケース本体20および弁体40Uをより速く伸縮させることができる。
【0113】
可変オリフィス装置1Vにおいて、管路100を流れる流体が開口54bを通じて内側空間54Vに流れ込む。そのため、流体の温度変化に応じて弁体40Vをより速く伸縮させることができる。
【0114】
可変オリフィス装置1P~1Vにおいて、横孔23以外の流路(例えば、流通孔27P~27R、流通溝28S、28T、58U、内側空間54V)を通じて、ケース10、10P~10Tの外側と弁室25との間で流体が十分に流れるのであれば、横孔23を省略してもよい。
【0115】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。また、本明細書において、「同一」は、厳密に同一であることと、実質的に同一であることと、を含む。
【0116】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1、1A~1H、1J、1K、1M、1N、1P~1V…可変オリフィス装置
10、10A~10H、10J、10K、10M、10N、10P~10T…ケース
20、20C~20H、20J、20K、10M、20N、20P~20T…ケース本体
21…第1端、21c…ケース雌ねじ
22…第2端、22b…開口、22e…キー溝、22g…ねじ孔、
22h…係止溝、22j…弾性片、22j1…係止突起、22k…雌ねじ、
22m…係止凹部、22n…ピン孔
23…横孔、24…内側空間、25…弁室
26…支持部、26a…環状溝
27P、27Q、20R…流通孔
28S、28T…流通溝、28a…第1端、28b…第2端
30…シート、30c…シート雄ねじ
34…弁口、34a…第1部分、34b…第2部分、35…弁座
38…止めねじ、38A…止めねじ、38c…雄ねじ
39…流体通路
40、40E~40H、40J、40K、40M、40N、40U、40V…弁体
50、50E~50H、50J、50K、50M、50N、50U、50V…軸部
51…第1端
52…第2端、52e…キー溝、52f…圧入部、52g…平面部
52h…弾性片、52h1…係止突起、52j…係止溝、52k…雄ねじ
52m…係止突起、52n…ピン孔
54V…内側空間、54a…開口、54b…開口
58U…流通溝、58a…第1端、58b…第2端
60…弁部、61…先端
71E…キー、72G…弁体止めねじ、73N…ピン
100…管路