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2024-120735集電層に用いられる金属箔積層体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120735
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】集電層に用いられる金属箔積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240829BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240829BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B32B15/08 G
B32B15/092
C08L101/00
C08L63/00 A
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027749
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5H017
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB33B
4F100AB33C
4F100AK01A
4F100AK42D
4F100AK53A
4F100AK54A
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA02A
4F100CA21A
4F100CA23A
4F100EJ91D
4F100GB41
4F100GB43
4F100JB13A
4F100JB16A
4F100JG01A
4F100JL11
4J002CD05W
4J002CH08X
4J002EL136
4J002EP026
4J002ET016
4J002EU096
4J002EU116
4J002EW136
4J002GF00
5H017BB01
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH03
(57)【要約】
【課題】適度な柔軟性と強度とを保ち、かつ軽量化を達成することができる金属箔積層体および当該金属箔積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の(A)~(C)成分:(A)熱硬化性樹脂;(B)熱可塑性樹脂;および(C)硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属箔層と、を有する積層体、ならびに(1)樹脂組成物からなる樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように配置する工程;(2)樹脂組成物層を熱硬化する工程;および(3)熱硬化後、樹脂組成物層の両面の金属箔からキャリアを剥離する工程を含む、当該積層体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)成分:
(A)熱硬化性樹脂;
(B)熱可塑性樹脂;および
(C)硬化剤
を含む樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属箔層と、を有する積層体。
【請求項2】
(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(B)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
樹脂組成物が(D)硬化促進剤をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
樹脂組成物が(E)導電フィラーをさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
金属箔層が銅箔層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
樹脂層の厚さが3~60μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
(1)樹脂組成物からなる樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように配置する工程;
(2)樹脂組成物層を熱硬化する工程;および
(3)熱硬化後、樹脂組成物層の両面の金属箔からキャリアを剥離する工程
を含む、製造方法。
【請求項9】
工程(1)が、(1a-1)一方の面にキャリアを有する金属箔の他方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1a-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程(1)が、(1b-1-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、(1b-1-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程、および(1b-1-3)支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
工程(1)が、(1b-2-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1b-2-2)支持体を剥離し、樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電層に用いられる金属箔積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5G、Beyond 5Gの中で、装置に組み込まれるデバイス数が益々増加するにあたり、それを駆動する電池の重量・サイズが重く、大きくなる傾向にある。その為、一定の電流を担保しつつ、重量を軽くすることが望まれる。例えば、太陽電池パネルや電池を搭載して成層圏を飛行し、地上に無線通信サービスを提供するHAPSや、電気自動車EVなどでは、重量の軽量化が求められる為、電池中に使われる電極の軽量化が必須となる。集電層として用いられる金属箔の厚みを薄くすることで要求に応えられるが、金属箔の薄膜化は技術的な限界があり、極薄金属箔は容易に皺やピンホールが発生するため、生産工程への適用が難しい。
【0003】
例えば、特許文献1は導電性樹脂層と金属層とを備える樹脂集電体を開示し、段落[0017]に「導電層が有する2つの主面のうち、導電性樹脂層の一方の主面のみに設けられていてもよく、導電性樹脂層の両方の主面にそれぞれ設けられていてもよい」とあるように、金属層は片面に限定されず、両面も想定される。金属層の厚さは5~200nm未満とある。一方、導電性樹脂層に含まれる高分子化合物として、段落[0012]にエポキシ樹脂が例示されているが、ポリオレフィン系が好ましいとあり、エポキシ樹脂を含む組成については具体的な開示はない。また実施例に記載の樹脂層の厚さが85μmと厚く、銅箔層は真空蒸着法で形成しており、転写銅箔を用いる製造法について言及されていない。また、特許文献1には、樹脂集電体の製造方法について、金属層の形成は蒸着による方法しか例示されていない。薄膜の樹脂層上に直接真空蒸着法を適用させようとすると、真空蒸着時の熱により樹脂層の収縮や皺が発生してしまう。
【0004】
また、特許文献2には、中間に樹脂層を含む集電体が積層された積層体を準備する準備工程と、前記積層体の端部領域に積層方向の孔を形成する孔形成工程と、前記孔の内壁に導電性接着剤を塗布する塗布工程と、前記積層体の前記孔の部分を含む上面領域及び下面領域にタブを配置する配置工程と、前記積層体と前記タブとを溶接する溶接工程とを備える積層集電体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-33066号公報
【特許文献2】特開2021-97020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、適度な柔軟性と強度とを保ち、かつ軽量化を達成することができる金属箔積層体および当該金属箔積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成とすることにより、適度な柔軟性と強度とを保ち、かつ軽量化を達成することができる金属箔積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]下記の(A)~(C)成分:
(A)熱硬化性樹脂;
(B)熱可塑性樹脂;および
(C)硬化剤
を含む樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属箔層と、を有する積層体。
[2](A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、[1]に記載の積層体。
[3](B)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]樹脂組成物が(D)硬化促進剤をさらに含む、[1]~[3]のいずれか1に記載の積層体。
[5]樹脂組成物が(E)導電フィラーをさらに含む、[1]~[4]のいずれか1に記載の積層体。
[6]金属箔層が銅箔層である、[1]~[5]のいずれか1に記載の積層体。
[7]樹脂層の厚さが3~60μmである、[1]~[6]のいずれか1に記載の積層体。
[8][1]~[7]のいずれか1に記載の積層体の製造方法であって、
(1)樹脂組成物からなる樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように配置する工程;
(2)樹脂組成物層を熱硬化する工程;および
(3)熱硬化後、樹脂組成物層の両面の金属箔からキャリアを剥離する工程
を含む、製造方法。
[9]工程(1)が、(1a-1)一方の面にキャリアを有する金属箔の他方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1a-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、[8]記載の方法。
[10]工程(1)が、(1b-1-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、(1b-1-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程、および(1b-1-3)支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、[8]記載の方法。
[11]工程(1)が、(1b-2-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1b-2-2)支持体を剥離し、樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、[8]記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属箔単体で集電層を作製する場合と比べて、軽量化することができかつ柔軟性を有する金属箔積層体を提供することができる。また、本発明によれば、金属箔および樹脂層の厚さの調整、樹脂層への導電性の付与等により、集電層を自由に設計することができる。また、蒸着により金属膜を有機フィルム上に形成する場合、工程時の熱により有機フィルムの収縮や皺が発生するため、有機フィルムを厚膜にする必要があり、製造可能な積層物(集電層)の薄型化が困難であった。一方、本発明によれば、転写により金属膜を形成することにより有機層(樹脂層)が薄膜であっても積層物を作製することが可能である。さらに、本発明によれば、樹脂組成物層の両面に金属箔層を形成した後に熱硬化する工程を経ることで、金属箔層と有機層(樹脂層)との密着性が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
[積層体]
本発明の積層体は、下記の(A)~(C)成分:
(A)熱硬化性樹脂;
(B)熱可塑性樹脂;および
(C)硬化剤
を含む樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属箔層と、を有する。
【0011】
<(A)熱硬化性樹脂>
本発明の樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等が挙げられ、なかでも低温硬化性等の観点からエポキシ樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。熱硬化性樹脂は、樹脂組成物中の架橋成分として作用する。
【0012】
エポキシ樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有し、かつ、透過率の高いものを使用することができる。例えば、水素添加エポキシ樹脂(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、炭化水素鎖を主骨格に含むエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体等が挙げられる。
【0013】
エポキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、反応性等の観点から、好ましくは50~5,000g/eqであり、より好ましくは50~3,000g/eqであり、さらに好ましくは80~2,000g/eqであり、特に好ましくは100~1,500g/eqである。なお、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0014】
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0015】
エポキシ樹脂は、液状または固形のいずれでもよく、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用してもよい。ここで、「液状」および「固形」とは、常温(25℃)および常圧(1atm)でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状エポキシ樹脂であることが好ましい。本発明の1つの実施態様において、ワニス粘度の観点から、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂との質量比(液状エポキシ樹脂:固形エポキシ樹脂)は、1:2~1:0が好ましく、1:1.5~1:0がより好ましい。
【0016】
「水素添加エポキシ樹脂」とは、芳香環含有エポキシ樹脂を水素添加して得られるエポキシ樹脂を意味する。水素添加エポキシ樹脂の水添化率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。「鎖状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、直鎖状または分岐状のアルキル鎖、またはアルキルエーテル鎖を持つエポキシ樹脂を意味し、「環状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、分子内に環状脂肪族骨格、例えばシクロアルカン骨格を持つエポキシ樹脂を意味する。「アルキルフェノール型エポキシ樹脂」とは、置換基として1以上のアルキル基および1以上のヒドロキシ基を有するベンゼン環骨格を持ち、前記ヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に変換されているエポキシ樹脂を意味する。
【0017】
水素添加エポキシ樹脂としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、本発明の効果が発揮される限りにおいては、上記好適なエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が熱硬化性樹脂中に含まれていてもよい。
【0018】
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8000」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約205g/eq)、「デナコールEX-252」(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:約213g/eq))、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8040」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約1000g/eq))等が挙げられる。
【0019】
フッ素含有エポキシ樹脂は、例えば、WO2011/089947に記載のフッ素含有エポキシ樹脂を用いることができる。
【0020】
鎖状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」、ナガセケムテックス社製)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-411」、ナガセケムテックス社製)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-421」、ナガセケムテックス社製)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」、ナガセケムテックス社製)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-321」、ナガセケムテックス社製)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-211」、ナガセケムテックス社製)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-212」、ナガセケムテックス社製)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」、ナガセケムテックス社製)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」、ナガセケムテックス社製)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」、ナガセケムテックス社製)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-911」、ナガセケムテックス社製)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」、ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0021】
環状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」等が挙げられる。
【0022】
アルキルフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「HP-820」;新日鉄住金化学工業社製「YDC-1312」;ナガセケムテックス社製「EX-146」等が挙げられる。
【0023】
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」とは、ノボラック構造および2価のビフェニル構造が結合した主鎖を持つエポキシ樹脂を意味する。「フルオレン型エポキシ樹脂」とは、フルオレン骨格を持つエポキシ樹脂を意味する。「フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂」とは、芳香環を有するフッ素含有エポキシ樹脂を意味する。例えば、WO2011/089947に記載のフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0024】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「828EL」、「1001」および「1004AF」;DIC社製「840」および「850-S」;新日鉄住金化学工業社製「YD-128」等が挙げられる。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物としては、例えば、新日鐵化学工業社製「ZX-1059」(エポキシ当量:約165g/eq)が挙げられる。
【0025】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「807」;DIC社製「830」;新日鉄住金化学工業社製「YDF-170」等が挙げられる。
【0026】
炭化水素鎖を主骨格に含むエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ADEKA社製「EP-4000S」、「EP-4010S」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YL7175-500」「YL7175-1000」、「YL7410」、「YX7105」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製「EXA-4850」、「EXA-4850-150」、「EXA-4816」、「EXA-4822」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製「EG-280」;ナガセケムテックス社製「EX-830」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YX7400」(ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0027】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「N-730A」、「N-740」、「N-770」および「N-775」;三菱ケミカル社製「152」および「154」等が挙げられる。
【0028】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬社製「NC-3000」、「NC-3000L」および「NC-3100」等が挙げられる。
【0029】
フルオレン型エポキシ樹としては、例えば、大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG-100」、「CG-500EG-200」および「EG-280」等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の靭性付与の観点から、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは10~70質量%であり、より好ましくは15~65質量%であり、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0031】
<(B)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂は、本発明の効果が発揮されれば特に限定されるものではなく、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、熱可塑性エラストマー(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)など)等が挙げられ、なかでも熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂を配合することにより、シート状の形態への成膜が可能となる。
【0032】
樹脂組成物から形成される樹脂組成物層への可撓性の付与、樹脂組成物層を形成する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、15,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。しかし、この重量平均分子量が大きすぎると、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)との相溶性が低下する等の傾向がある。そのため、この重量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましい。
【0033】
フェノキシ樹脂も、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と同様に、エポキシ基を有し得る。フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは15,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000である。エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは5,000~30,000g/eqであり、より好ましくは6,000~25,000g/eqであり、さらに好ましくは7,000~20,000g/eqである。
【0034】
好適なフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、およびノルボルネン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、「YX7200B35」(三菱ケミカル社製:ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX7180BH40」(三菱ケミカル社製)、「1256B40」(三菱ケミカル社製:ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX6954BH35」(三菱ケミカル社製:ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、「FX-293」(日鉄ケミカル&マテリアル社製:ビスフェノールA骨格含有樹脂)、「FX-310」(日鉄ケミカル&マテリアル社製:ビスフェノールA骨格含有樹脂)等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良好である等の観点から、ポリエステル樹脂もまた好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂としては、例えば、「UE-9200」、「UE-3600」、「UE-9800」、「UE-9900」、「UE-9820」、「UE-3550」、「UE-3380」、「UE-3510」、「UE-3400」、「UE-3220」、「UE-3500」、「UE-9100」(いずれもユニチカ社製:飽和共重合ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物のシート状の形態への成膜および硬化物のクラック抑制の観点から、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは3~50質量%であり、より好ましくは4~45質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%である。
【0039】
<(C)硬化剤および(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤は、熱硬化性樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されない。反りや熱ひずみの発生量を抑制する観点から、硬化剤として、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下で、熱硬化性樹脂を硬化し得るもの(低温硬化可能なもの)が好ましい。硬化剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
硬化剤としては、熱硬化性樹脂として好ましいエポキシ樹脂の硬化剤につき、例示する。例えば、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物、1級・2級アミン系化合物等が挙げられる。
【0041】
硬化剤は、好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物およびアミンアダクト化合物から選ばれる1種以上であり、より好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物および3級アミン系化合物から選ばれる1種以上である。
【0042】
特に、本発明における硬化剤としては、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下で熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)を硬化し得るイオン液体、すなわち、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)の硬化作用を有する塩が好ましい。イオン液体は、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)に均一に溶解している状態で使用されるのが望ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、硬化剤に加え、硬化時間を調整する等の目的で(D)硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂として好ましいエポキシ樹脂の硬化促進剤につき、例示する。例えば、ジメチルウレア化合物等が挙げられる。
【0044】
本発明における硬化剤としてのイオン液体を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン等)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0045】
本発明における硬化剤としてのイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン等の下記一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0046】
【化1】
【0047】
(但し、Rは炭素数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、或いは置換または無置換のフェニル基であり、Xはアミノ酸の側鎖を表す。)
【0048】
該式(1)におけるアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニン等が挙げられ、中でも、グリシンが好ましい。
【0049】
上述の中でも、カチオンはアンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンは、より詳細には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン等である。
【0050】
また、アニオンはフェノール系アニオン、一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンが好ましく、N-アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0051】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオンが挙げられる。また、カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、デカン酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンが殊更好ましい。また、一般式(1)で示されるN-アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオンが好ましく、N-アセチルグリシンイオンが殊更好ましい。
【0052】
具体的なイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が殊更好ましい。
【0053】
上記イオン液体の合成法としては、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウムおよびアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位から構成される前駆体に、NaBF、NaPF、CFSONaやLiN(SOCF等を反応させるアニオン交換法、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法、およびアミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法等があるが、これらに限定されない。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いることも可能であるし、さらに有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)を差し液濃縮しても構わない。
【0054】
本発明における硬化剤としての酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。酸無水物化合物の具体例としては、リカシッドTH、TH-1A、HH、MH、MH-700、MH-700G(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0055】
本発明における硬化剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明における硬化剤としての3級アミン系化合物の具体例としては、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)などが挙げられる。
【0057】
本発明における硬化促進剤としてのジメチルウレア化合物の具体例としては、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0058】
本発明における硬化剤としてのアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物等が挙げられる。アミンアダクト系化合物の具体例としては、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0059】
本発明における硬化剤としての有機酸ジヒドラジド化合物の具体例としては、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0060】
本発明における硬化剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuPK、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0061】
本発明における硬化剤としてのジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミド化合物の具体例としては、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0062】
本発明における硬化剤としての1級・2級アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミンであるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等、脂環式アミンであるN-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等、芳香族アミンである、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。1級・2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.1~40質量%が好ましく、0.5~38質量部がより好ましく、1~35質量部がさらに好ましい。この含有量が0.1質量%よりも少ないと、十分な硬化性が得られないおそれがあり、この含有量が40質量%より多いと、樹脂組成物の保存安定性が損なわれることがある。なお、硬化剤としてイオン液体を使用する場合、イオン液体の量は、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.1~20質量%が好ましく、0.5~18質量%がより好ましく、1~15質量%がさらに好ましい。
【0064】
本発明の樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合には、その含有量は、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して0.05~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。この含有量が0.05質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長くなる傾向にあり、10質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0065】
本発明における樹脂組成物は、硬化剤と硬化促進剤とを組み合わせて使用するのが好ましい。硬化剤および硬化促進剤の組み合わせとして、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物およびアミンアダクト化合物から選ばれる少なくとも1種とジメチルウレア化合物との組み合わせが好ましい。
【0066】
<(E)導電フィラー>
本発明の樹脂組成物には、積層体の導電性を向上させるために、導電フィラーをさらに含有させることができる。導電フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、金属系粉末(ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅、亜鉛及びチタン等)、金属酸化物系粉末(酸化スズ、酸化インジウム及び酸化亜鉛等)、金属被覆系粉末(導電材料を被覆した無機材料及び有機材料等)などが挙げられ、軽量化の観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック等が好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、Raven760ULTRA、Raven780ULTRA、Raven790ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1080ULTRA、Raven1170、Raven1190ULTRA II、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven2500ULTRA、Raven3500、Raven5000ULTRA II、Raven5250、Raven5750、Raven7000(以上、コロンビア・カーボン社製);Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Regal1330R、Regal1400R、Regal1660R、Mogul L(以上、キャボット社製);Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、SpecIal Black 4、SpecIal Black 4A、SpecIal Black 5、Special Black 6(以上、デグサ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF-88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(以上、三菱化学社製);等が挙げられる。カーボンナノチューブとしては、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)等のマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)等が挙げられる。導電フィラーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
導電フィラーの粒径は、フィルムの観点から、一次粒子の粒経が5μm以下が好ましく、さらには3μm以下が好ましい。例えば、一次粒子の粒経が0.001~3μmのもの、より好ましくは0.005~2μmのものを用いることができる。なお、本発明において「粒径」は、レーザー回折式粒度分布計を用いて相対粒子量が50%(全粒子量に対して50%、全粒子量と粒子径でグラフ化した際に粒子量の中間になる点の粒子径)である粒径(メジアン径)を粒径として測定したものである。
【0068】
本発明の樹脂組成物中の導電フィラーの含有量は、導電性の観点から、樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
【0069】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、上述の成分とは異なるその他の添加剤をさらに含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、シランカップリング剤;ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填材;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;リン系化合物、金属水酸化物等の難燃剤;等を挙げることができる。
【0070】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明における樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上記配合成分を、必要により溶媒等を添加し、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0071】
<樹脂層>
本発明の積層体において、樹脂層は、上記で説明した樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂層は、例えば、以下の[積層体の製造方法]において説明する工程によって形成することができる。樹脂層の厚さは、軽量化及び電気抵抗値の観点から、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに一層好ましく、20μm以下が特に好ましい。樹脂層の厚さの下限は、層形成の観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。本発明の1つの実施態様において、樹脂層の厚さは、好ましくは3~60μmであり、より好ましくは5~50μmである。
【0072】
<金属箔層>
本発明の積層体において、金属箔層は樹脂層の両面に形成されている。金属としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、チタンなどが挙げられ、電解液に対する耐久性等の観点から、銅及びニッケルが好ましい。金属箔層は、例えば、以下の[積層体の製造方法]において説明する工程によって形成することができる。金属箔層の厚さは、軽量化及び電気抵抗値の観点から、好ましくは0.005~2μmであり、より好ましくは0.01~1.5μmであり、さらに好ましくは0.02~1μmである。
【0073】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、
(1)樹脂組成物からなる樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように配置する工程;
(2)樹脂組成物層を熱硬化する工程;および
(3)熱硬化後、樹脂組成物層の両面の金属箔からキャリアを剥離する工程
を含む。
一方の面にキャリアを有する金属箔(以下、「キャリア付き金属箔」と称する場合がある)を用いることにより、樹脂組成物層に金属箔を転写することができるので、樹脂層上に極薄の金属箔層を形成することが可能となる。なお、[積層体の製造方法]の説明における樹脂組成物は、上記で説明した樹脂組成物である。
【0074】
キャリア付き金属箔のキャリアは、金属箔を樹脂組成物層に転写することができれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。キャリアは、金属箔を有する面にシリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理、マット処理、コロナ処理等が施されていてもよい。本発明においてキャリアが離型層を有する場合、該離型層もキャリアの一部とみなす。キャリアの厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは20~125μmである。
【0075】
<工程(1)>
本発明の1つの実態態様において、工程(1)は以下の工程を含む;
(1a-1)一方の面にキャリアを有する金属箔の他方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1a-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程。
【0076】
工程(1a-1)は、例えば、有機溶剤を配合してワニス状にした樹脂組成物をキャリア付き金属箔の金属箔上に塗工し、得られた塗膜を加熱あるいは熱風吹きつけ等で乾燥して金属箔上に樹脂組成物層を形成することによって行われる。
【0077】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤はいずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
乾燥条件は特に制限はないが、通常50~100℃程度で3~15分程度が好適である。
【0079】
乾燥後の樹脂組成物層の厚さは、通常3μm~200μm、好ましくは5μm~100μm、さらに好ましくは5μm~50μmの範囲である。
【0080】
工程(1a-2)は、例えば、工程(1a-1)で形成した樹脂組成物層に、ロールラミネータ―、真空ラミネーターなどを用いて、バッチ式、ロールでの連続式などの方法によって、キャリア付き金属箔の金属箔を貼合することによって行われる。
【0081】
本発明の別の実態態様において、工程(1)は以下の工程を含む;
(1b-1-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、(1b-1-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程、および(1b-1-3)支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程。
【0082】
工程(1b-1-1)は、例えば、上記工程(1a-1)と同様にして、支持体上に樹脂組成物層を形成することにより行うことができる。本工程で用いる支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。また支持体はアルミ箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔であってもよい。支持体は、樹脂組成物層が形成される面にシリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理、マット処理、コロナ処理等が施されていてもよい。本発明において支持体が離型層を有する場合、該離型層も支持体の一部とみなす。支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは20~125μmである。
【0083】
工程(1b-1-2)は、例えば、上記工程(1a-2)と同様にして、樹脂組成物層にキャリア付き金属箔の金属箔を貼合することにより行うことができる。
【0084】
工程(1b-1-3)は、例えば、支持体を剥離した後、上記工程(1a-2)と同様にして、露出した樹脂組成物層にキャリア付き金属箔の金属箔を貼合することにより行うことができる。
【0085】
本発明のさらに別の実態態様において、工程(1)は以下の工程を含む;
(1b-2-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1b-2-2)支持体を剥離し、樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程。
【0086】
工程(1b-2-1)は、例えば、上記工程(1b-1-1)と同様にして、支持体上に樹脂組成物層を形成することにより行うことができる。
【0087】
工程(1b-2-2)は、例えば、支持体を剥離した後、上記工程(1a-2)と同様にして、樹脂組成物層の両面にキャリア付き金属箔の金属箔を貼合することにより行うことができる。
【0088】
<工程(2)>
熱硬化は、例えば、プレス、真空ラミネーターなどを用いて加熱圧着することによって行うことができる。樹脂組成物層と金属箔との密着性の観点から、温度は、70℃以上150℃未満が好ましく、80℃以上150℃未満がより好ましく、圧力は、0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。本工程により、樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を形成することができる。
【0089】
<工程(3)>
熱硬化後、樹脂組成物層(硬化した樹脂組成物層、すなわち、樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層)の両面の金属箔からキャリアを剥離することにより、本発明の樹脂層と該樹脂層の両面に形成された金属箔層とを有する積層体(金属箔層/樹脂層/金属箔層の積層構造を有する積層体)を得ることができる。
【0090】
[用途]
本発明の積層体は、例えば、集電層、とりわけ電池の負極の集電層として好適に用いることができる。
【実施例0091】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0092】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(A)成分:
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」、エポキシ当量:約165g/eq)
可撓性エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX7105」)
(B)成分:
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「YX7200B35」、溶媒:MEK、不揮発分:35%、エポキシ当量:約8000g/eq)
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「YX7180BH40」、溶媒:MEKとアミンの混合溶媒、不揮発分:40%、エポキシ当量:約9000g/eq)
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」、溶媒:MEK、不揮発分:40%、エポキシ当量:約7800g/eq)
(C)成分:
四国化成工業社製「2E4MZ」
(D)成分:
サンアプロ社製「U-CAT3512T」
(E)成分:
カーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)
カーボンブラック(平均粒径20nm、三菱ケミカル社製「MA600」)
比較例成分:
日本ポリプロ社製「ノバテックMA3」(ポリプロピレン(PP))
日本ポリエチレン社製「ノバテックUF230」(ポリエチレン(PE))
【0093】
<実施例1>
下記表に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて積層体を作製した。なお、下記表に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。具体的には、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」)とフェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」)とさらにカーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)とを配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して混合物を得た。さらに、得られた混合物に硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」)と硬化剤(四国化成工業社製「2E4MZ」)とを配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物のワニスを得た。
【0094】
得られたワニスを、支持体(ノンシリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm、以下「離型PETフィルム」と略す)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが10μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80℃で10分間乾燥した後、形成された樹脂組成物層の表面に、保護フィルムとして離型PETフィルムをその離型処理面が樹脂組成物層と接するように貼り合わせ、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの積層構造を有するシートを得た。
【0095】
得られたシートの保護フィルムを剥離し、露出した樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、次いで支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、80℃、0.3MPaで加熱圧着し、オーブンにて100℃で60分加熱することにより樹脂組成物層を熱硬化して、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0096】
<実施例2>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」)の使用量を80部から40部に変え、可撓性エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX7105」)40部をさらに配合したこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0097】
<実施例3>
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」)の使用量を120部から60部に変え、フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「YX7200B35」)60部をさらに配合したこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0098】
<実施例4>
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」)の使用量を120部から60部に変え、フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「YX7180BH40」)60部をさらに配合したこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0099】
<実施例5>
カーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)をカーボンブラック(平均粒径20nm、三菱ケミカル社製「MA600」)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0100】
<実施例6>
カーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)の使用量を24部から10部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0101】
<実施例7>
カーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)の使用量を24部から50部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0102】
<実施例8>
乾燥後の樹脂組成物層の厚さを10μmから20μmに変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0103】
<実施例9>
銅箔の厚さを0.1μmから1μmに変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0104】
<実施例10>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」)の使用量を80部から60部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0105】
<実施例11>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(新日鐵化学工業社製「ZX-1059」)の使用量を80部から100部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0106】
<実施例12>
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」)の使用量を120部から80部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0107】
<実施例13>
フェノキシ樹脂溶液(三菱化学社製「1256B40」)の使用量を120部から160部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0108】
<実施例14>
カーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)を除いた配合に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を作製した。
【0109】
<比較例1>
銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の代わりに市販の銅箔(厚さ12μm)を用いた。
【0110】
<比較例2>
銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の代わりに市販のPETフィルム(厚さ12μm)を用いた。
【0111】
<比較例3>
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテックMA3」)およびカーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)をメルトブレンドし、高温の押出機でゲル化した後、離型PETフィルムの離型処理面上に、樹脂組成物層の厚さが10μmとなるようにロールで圧延して、支持体/樹脂組成物層の積層構造を有するシートを得た。
【0112】
得られたシートの樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、次いで支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、80℃、0.3MPaで加熱圧着して、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の作製を試みた。
【0113】
<比較例4>
ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「ノバテックUF230」)およびカーボンブラック(平均粒径50nm、三菱ケミカル社製「#20」)をメルトブレンドし、押出機フィルム成形機に通して、離型PETフィルムの離型処理面上に、樹脂組成物層の厚さが10μmとなるようにフィルム状に押し出して、支持体/樹脂組成物層の積層構造を有するシートを得た。
【0114】
得られたシートの樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、次いで支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、キャリア付き銅箔(キャリア:PET;厚さ:38μm;銅箔厚さ:0.1μm)の銅箔を貼り合わせ、80℃、0.3MPaで加熱圧着して、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の作製を試みた。
【0115】
<比較例5>
得られたシートの樹脂組成物層の両面への銅箔層(厚さ:1μm)の形成を蒸着工程により行ったこと以外は実施例1と同様の方法にて、銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の作製を試みた。
【0116】
実施例および比較例で得られた銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を、以下の方法で評価した。
【0117】
<膜性の評価>
実施例および比較例で得られた銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体の状態を、下記の通りで判断した。
〇(良):膜(樹脂層)形成が良好で集電層として使用が可能
×(不良):膜(樹脂層)形成は可能だがタック性が強く集電層として使用が不可、または膜(樹脂層)形成は可能だが銅箔層との密着性が弱く集電層として使用が不可、または製膜不可、または蒸着工程において銅箔層が薄膜のため強度を保つことができず製膜不可
【0118】
<重量の評価>
実施例および比較例で得られた銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を5cm角にカットし、精密天秤で測定し、単位面積あたりの重量を計算した。また、下記の通りで判断した。
○(良):単位面積あたりの重量が5mg/cm未満
×(不良):単位面積あたりの重量が5mg/cm以上
【0119】
<抵抗値の評価>
実施例および比較例で得られた銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を5cm角にカットし、4探針法による低抵抗率計[MCP-T700、(株)三菱化学アナリテック製]を用いて、銅箔層表面の抵抗値を測定した。また、下記の通りで判断した。
○(良):抵抗値が1Ω/□未満
×(不良):抵抗値が1Ω/□以上または高抵抗のため測定不可
【0120】
<密着性の評価>
実施例および比較例で得られた銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体を5cm角にカットし、一方の銅箔層を剥離し、露出した樹脂層にガラス(日本電気硝子社製「OA-10G」)を貼り合わせ、ガラス/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する評価用サンプルを作製し、JIS K5600-5-6を参考にしてクロスカット試験を実施し、下記の通りで判断した。
○(良):傷の状態が全正方形面積の15%未満
×(不良):傷の状態が全正方形面積の15%以上
【0121】
【表1】
【0122】
表1の結果から、本発明の実施例の銅箔層/樹脂層/銅箔層の積層構造を有する積層体は、膜性、重量、抵抗値および密着性の評価がいずれも良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の積層体は、樹脂層の膜性に優れており(膜形成が良好であり)、軽量であり、低抵抗値であり(導電性に優れ)、かつ樹脂層と金属箔層との密着性が高く、従って、集電層、とりわけ電池の負極の集電層などとして好適に用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)および(E)成分:
(A)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂
(B)熱可塑性樹脂
C)硬化剤;および
(E)導電フィラーとしてカーボンブラック
を含む樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、該樹脂層の両面に形成された金属箔層と、を有する積層体。
【請求項2】
(B)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
樹脂組成物が(D)硬化促進剤をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
金属箔層が銅箔層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
樹脂層の厚さが3~60μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
(1)樹脂組成物からなる樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように配置する工程;
(2)樹脂組成物層を熱硬化する工程;および
(3)熱硬化後、樹脂組成物層の両面の金属箔からキャリアを剥離する工程
を含む、製造方法。
【請求項7】
工程(1)が、(1a-1)一方の面にキャリアを有する金属箔の他方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1a-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項記載の方法。
【請求項8】
工程(1)が、(1b-1-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、(1b-1-2)樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程、および(1b-1-3)支持体を剥離し、露出した樹脂組成物層に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項記載の方法。
【請求項9】
工程(1)が、(1b-2-1)支持体の一方の面に樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥して樹脂組成物層を形成する工程、および(1b-2-2)支持体を剥離し、樹脂組成物層の両面に、一方の面にキャリアを有する金属箔をその他方の面が接するように貼合する工程を含む、請求項記載の方法。