(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120744
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】産業機器用制御システム及びトルク検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 3/14 20060101AFI20240829BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20240829BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01L3/14 A
F16H1/32 B
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027760
(22)【出願日】2023-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年2月24日 智頭電気株式会社へ販売 令和5年2月10日 四国計測工業株式会社へ販売 令和5年2月14日 東京工業大学へ販売 令和5年2月15日 株式会社アイディエスへ販売 令和5年2月20日 大和製衡株式会社へ販売 令和5年2月22日 ライト電業株式会社へ販売 令和5年2月22日 株式会社アールティへ販売
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】河村 友裕
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS12
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CX01
3C707CX03
3C707DS01
3C707HS27
3C707HT26
3C707KV01
3C707KV06
3C707KW05
3C707KX10
3C707MT04
3J027FA37
3J027FA43
3J027FB32
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC07
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE14
(57)【要約】
【課題】波動歯車装置が搭載された産業機器において、回転リップルの抑制とノイズ耐性の向上とに寄与すること。
【解決手段】ロボットに搭載された波動歯車装置は、内歯が形成された剛性内歯歯車と、剛性内歯歯車の内側に配置され外歯が形成された可撓性外歯歯車と、可撓性外歯歯車の内側に設けられ、可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより外歯を内歯に部分的に噛み合わせるとともに剛性内歯歯車と可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カムとを有している。可撓性外歯歯車には、第1歪みゲージ91A~91Cと第2歪みゲージ92A~92Cとが中心軸線を囲むように配列されている。第1歪みゲージ91A~91C1からの信号は検出器96の合成部96aにて合成され、第2歪みゲージ92A~92Cからの信号は検出器97の合成部97aにて合成され、合成された両信号はロボットコントローラ42にて比較される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に内歯が形成された環状の剛性内歯歯車と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯が形成された可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カムとを有する波動歯車装置と、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置とを備えた産業機器に適用され、前記トルク検出装置にて検出したトルクに応じて前記産業機器を制御する産業機器用制御システムであって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数の第1歪みゲージと複数の第2歪みゲージとで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部と
を備えている産業機器用制御システム。
【請求項2】
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心及び前記第1歪みゲージを結ぶ仮想直線と、前記回動中心及び少なくとも何れかの前記第2歪みゲージを結ぶ仮想直線とのなす角が、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度の整数倍となるように配置されている請求項1に記載の産業機器用制御システム。
【請求項3】
前記波動歯車装置は、前記剛性カムが楕円形をなす2ローブ型の波動歯車装置であり、
前記第1歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置され、前記第2歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置されており、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とした点対称の関係となるように配置されている請求項2に記載の産業機器用制御システム。
【請求項4】
内周面に内歯が形成された環状の剛性内歯歯車と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯が形成された可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カムとを有する波動歯車装置を備えた産業機器に適用され、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数の第1歪みゲージと複数の第2歪みゲージとで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部と
を備えているトルク検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器用制御システム及び産業機器に適用されるトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられる産業用ロボット等の産業機器には、減速機として波動歯車装置が搭載されているものがある。波動歯車装置は、剛性内歯歯車と、その内側に配置された可撓性外歯歯車と、可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせるとともに噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(波動発生器)とで構成されている。近年では産業機器や作業者の保護等の観点から、例えば運転時にトルクを監視し、過度に大きなトルクが発生した場合には減速や停止等の制御を行うように構成されたものがあり、波動歯車装置が搭載された産業機器においては、例えば可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号に基づいてトルクを検出するといった対応が講じられている。
【0003】
但し、可撓性外歯歯車においては波動歯車装置の構造上、剛性カムの回動によって伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージをからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化することとなる。このような出力信号の変化、すなわちトルク検出にて誤差の要因となる成分(所謂回転リップル)を抑制すべく、複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成するといった技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、産業機器においては、駆動部へ駆動電力を供給するための電源線をノイズ源としたノイズ(高電圧サージノイズ)が信号線に印加される可能性がある。特に強電線である電源線と弱電線である信号線とが近接配置される場合にはそのような懸念が一層強くなる。また、工場においては産業機器が多数設置されることが多く、他の産業機器の電源線等がノイズ源になる可能性もある。上述の如く波動歯車装置に併設する歪みゲージの数を増やすことは回転リップルを抑制する上では好ましいものの、歪みゲージの数が増えれば歪みゲージに付属の信号線(リード線)にノイズが印加される機会も増えると懸念される。つまり、産業機器のノイズ耐性を向上させることが困難になると懸念される。
【0006】
このように、波動歯車装置が搭載された産業機器においては、回転リップルを抑制しつつ、ノイズ耐性を向上させる上でトルク検出に係る構成に未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記例示した課題等に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、波動歯車装置が搭載された産業機器において、回転リップルの抑制とノイズ耐性の向上とに寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0009】
第1の手段.内周面に内歯が形成された環状の剛性内歯歯車と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯が形成された可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カムとを有する波動歯車装置と、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置とを備えた産業機器に適用され、前記トルク検出装置にて検出したトルクに応じて前記産業機器を制御する産業機器用制御システムであって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数の第1歪みゲージと複数の第2歪みゲージとで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部と
を備えている。
【0010】
本手段に示す波動歯車装置においては、剛性カムが回動することで、可撓性外歯歯車に伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化する信号となる。この点、複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成する構成にすることは、トルク検出の誤差要因となる回転リップルを抑制する上で好ましい。ここで、産業機器においては、内蔵されている駆動部へ駆動電力を供給するための電源線や他の産業機器の電源線等をノイズ源としたノイズが信号線に印加される可能性がある。上述の如く歪みゲージの数を増やすことは回転リップルを抑制する上では好ましいものの、歪みゲージの数が増えれば歪みゲージに付属の信号線(リード線)にノイズが印加される機会も増えると懸念される。
【0011】
この点、本手段に示すように、複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成した第1信号と、複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成した第2信号とを比較すれば、第1歪みゲージからの出力信号及び第2歪みゲージからの出力信号の何れかにノイズが印加されることで、第1信号と第2信号とが大きく乖離する等して第1信号と第2信号との関係が崩れることとなる。つまり、第1信号と第2信号との比較によって少なくとも何れかの出力信号にノイズが印加された旨を把握できる。これは、ノイズに起因した誤動作を抑制する上で好ましい。以上の通り、本手段に示す構成によれば、回転リップルの抑制とノイズ耐性の強化とに寄与できる。
【0012】
第2の手段.内周面に内歯が形成された環状の剛性内歯歯車と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯が形成された可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カムとを有する波動歯車装置を備えた産業機器に適用され、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数の第1歪みゲージと複数の第2歪みゲージとで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部と
を備えている。
【0013】
本手段に示すトルク検出装置によれば、出力信号にノイズが印加された場合には、第1信号と第2信号との比較によって当該ノイズを把握可能となり、回転リップルの抑制とノイズ耐性の強化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態におけるロボットシステムを示す概略図。
【
図2】ロボットシステムの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】(a)可撓性外歯歯車の平面図、(b1)第1歪みゲージの位置関係を示す概略図、(b2)第2歪みゲージの位置関係を示す概略図。
【
図7】各検出信号の波形と合成した波形とを示す概略図。
【
図9】(a)第2の実施形態における歪みゲージの配置を示す概略図、(b1),(b2)合成した波形を示す概略図。
【
図10】(a)第3の実施形態における歪みゲージの配置を示す概略図、(b1),(b2)合成した波形を示す概略図。
【
図11】(a)第4の実施形態における歪みゲージの配置を示す概略図、(b1),(b2)合成した波形を示す概略図。
【
図12】(a)第5の実施形態における第1信号と第2信号との相関を示す概略図、(b)判定基準テーブルを示す概略図。
【
図13】(a)第6の実施形態における歪みゲージの配置を示す可撓性外歯歯車の平面図、(b1)第1歪みゲージの位置関係を示す概略図、(b2)第2歪みゲージの位置関係を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、工場の製造ライン等にて人と協働で作業に従事する垂直多関節型の産業用ロボット(ロボット15という)を備えるロボットシステムに具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、ロボット15の本体部(ロボット本体21)は、台座等に固定されるベース部22と、当該ベース部22により支持されているショルダ部23と、ショルダ部23により支持されている下アーム部24と、下アーム部24により支持されている第1上アーム部25と、第1上アーム部25により支持されている第2上アーム部26と、第2上アーム部26により支持されている手首部27と、手首部27により支持されているフランジ部28とを有している。
【0017】
ベース部22及びショルダ部23には、それらベース部22及びショルダ部23を連結する第1関節部が形成されており、ショルダ部23は第1関節部の連結軸(第1軸AX1)を中心として水平方向に回動可能となっている。ショルダ部23及び下アーム部24には、それらショルダ部23及び下アーム部24を連結する第2関節部が形成されており、下アーム部24は第2関節部の連結軸(第2軸AX2)を中心として上下方向に回動可能となっている。下アーム部24及び第1上アーム部25には、それら下アーム部24及び第1上アーム部25を連結する第3関節部が形成されており、第1上アーム部25は第3関節部の連結軸(第3軸AX3)を中心として上下方向に回動可能となっている。第1上アーム部25及び第2上アーム部26には、それら第1上アーム部25及び第2上アーム部26を連結する第4関節部が形成されており、第2上アーム部26は第4関節部の連結軸(第4軸AX4)を中心として捻り方向に回動可能となっている。第2上アーム部26及び手首部27には、それら第2上アーム部26及び手首部27を連結する第5関節部が形成されており、手首部27は第5関節部の連結軸(第5軸AX5)を中心として上下方向に回動可能となっている。手首部27及びフランジ部28には、それら手首部27及びフランジ部28を連結する第6関節部が形成されており、フランジ部28は第6関節部の連結軸(第6軸AX6)を中心として捻り方向に回動可能となっている。
【0018】
各関節部には、関節部を回動させる電動式アクチュエータとしてのサーボモータ31と、サーボモータ31に発生する動力を伝達する伝達機構(後述する波動歯車装置を含む)と、各サーボモータ31に付属のロータリエンコーダ32とが配設されており、サーボモータ31及びロータリエンコーダ32はロボットコントローラ42に接続されている(
図2参照)。
【0019】
ショルダ部23、下アーム部24、第1上アーム部25、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28は、一連となるように配列されることでロボット本体21におけるアームを構成しており、当該アームの先端部であるフランジ部28にはエンドエフェクタ29が取り付けられている。このエンドエフェクタ29をハンドタイプとすることによりワーク等を把持可能となる。
【0020】
ここで、
図2を参照して、ロボットシステム10の電気的構成について補足説明する。ロボット本体21に付属の上記ロボットコントローラ42には、サーボモータ31等の駆動制御等を行う制御部51と、サーボモータ31、ロータリエンコーダ32及び上位コントローラ41(例えばティーチングペンダントやPC)等について信号の入出力を担う入出力部52とが設けられている。制御部51は、上位コントローラ41から作業用の動作指示を受けて動作目標位置を特定する。そして、当該動作目標位置と、ロータリエンコーダ32から取得したポジションデータ、すなわちサーボモータ31の回転角度(回転位置)を示すエンコーダ値とに基づいてサーボモータ31の駆動制御を行う。
【0021】
また、ロボット15の各関節部には上記伝達機構を構成する波動歯車装置35(減速機)が配設されている。波動歯車装置35には関節部に発生するトルクを検出可能なトルク検出センサ36が併設されており、トルク検出センサ36についてもロボットコントローラ42に接続されている。ロボットコントローラ42はトルク検出センサ36からの信号(検出したトルク)に応じてロボットを減速させたり、停止(防護停止を含む)させたりする。
【0022】
本実施形態では、トルク検出に係る構成が工夫されていることを特徴の1としている。以下、
図3及び
図4を参照して波動歯車装置35について説明し、その後、当該工夫について説明する。
図3は波動歯車装置35の平面図、
図4は
図3のA-A線断面図である。
【0023】
図3に示すように、波動歯車装置35は、内周面に内歯61が形成された円環状の剛性内歯歯車60(所謂サーキュラスプライン)を備えている。この剛性内歯歯車60には、相手部材(例えばアーム部25のフレーム)への固定用のボルトが挿通される挿通孔62及び位置決めピン等が挿通される位置決め孔63が複数形成されている。
【0024】
図4に示すように、剛性内歯歯車60の内側には、ばね鋼を用いて形成された可撓性外歯歯車70(所謂フレックススプライン)が配置されている。可撓性外歯歯車70は、薄肉の円筒状に形成された歯車主部71と、この歯車主部71の一端部に形成されたフランジ部72(所謂ダイヤフラム)とを有してなり、所謂シルクハット型となっている。歯車主部71の外周面において他端部寄りとなる部分には、剛性内歯歯車60の内歯61に噛み合う外歯73が形成されている。
【0025】
フランジ部72は、歯車主部71の上記一端部から放射方向に突出しており、歯車主部71と同軸となる円板状をなしている。フランジ部72の板厚は、基端側では相対的に小さく且つ先端側では相対的に大きくなっている。フランジ部72において先端側となる肉厚部76には相手部材(例えばアーム部26のフレーム)への固定用のボルトが挿通されるボルト孔77及び位置決めピンが挿通される位置決め孔78が複数個形成されており、基端側となる薄肉部75の一方の板面(詳しくは歯車主部71側とは反対の板面)は後述する歪みゲージ91,92の貼り付け及びそれら歪みゲージ91,92に接続されるリード線を固定する固定具(図示略)の取り付けのための領域となっている。
【0026】
歯車主部71の内部、具体的には外歯73が形成されている箇所には波動発生器80が嵌め込まれている。波動発生器80は、外周部分が可撓性外歯歯車70(歯車主部71)の内周面に対向する円環状のウェーブベアリング81と、ウェーブベアリング81の内部に収容されている楕円形の剛性カム85とを有してなり、ウェーブベアリング81が剛性カム85の外形に合わせて変形することで全体として楕円形をなしている。
【0027】
具体的には、ウェーブベアリング81は、歯車主部71の内周面に当接する外輪82と、剛性カム85に固定された内輪83と、外輪82及び内輪83の間に配列された複数のボール84とからなる。剛性カム85の中央部分には、サーボモータ31の軸部(入力軸)を連結するための連結部87が形成されている。サーボモータ31の軸部に追従して剛性カム85が内輪83と一緒に回動することにより、外輪82がボール84を介して弾性変形し、外輪82に当接している可撓性外歯歯車70についても当該外輪82に追従するようにして弾性変形する。
【0028】
可撓性外歯歯車70の外歯73のうち、楕円形となった波動発生器80の長軸両端(長径方向両端部の2箇所)に位置しているものが、剛性内歯歯車60の内歯61に部分的に噛み合っている。そして、波動発生器80が回転すると、外歯73の内歯61に対する噛み合い位置が円周方向にシフトする。外歯73の枚数は、内歯61の枚数よりも例えば2枚少なく設定されているため、可撓性外歯歯車70と剛性内歯歯車60との間に相対的な回転が生じる。このため、例えば剛性内歯歯車60を固定しておくことにより、可撓性外歯歯車70が出力部となって当該可撓性外歯歯車70から減速回転出力を取り出すことができる。
【0029】
本実施形態においては、剛性内歯歯車60、可撓性外歯歯車70、波動発生器80(剛性カム85)が同軸となっており、何れも中心軸線CLを中心に回動する。
【0030】
波動歯車装置35が回転駆動されると、当該波動歯車装置35にトルクが発生する。発生したトルクは、剛性内歯歯車60に付属の上記トルク検出センサ36によって検出される。ここで、
図5(a)及び
図6を参照して、トルク検出センサ36について説明する。
図5(a)は可撓性外歯歯車70の平面図、
図6はトルク検出に係る電気的構成を示すブロック図である。
【0031】
図5(a)に示すように、トルク検出センサ36は、中心軸線CLを中心とした仮想円FC上に並ぶように配列された複数の第1歪みゲージ91及び複数の第2歪みゲージ92を有してなる。本実施形態では、第1歪みゲージ91の数及び第2歪みゲージ92の数は何れも3つとなっており、中心軸線CLは計6つの歪みゲージ91,92によって囲まれている。
【0032】
第1歪みゲージ91は線状をなす2つの素子片93a,93bを互いに直交するようにして積層した積層型となっており、第2歪みゲージ92についても線状をなす2つの素子片94a,94bを互いに直交するようにして積層した積層型となっている。また、素子片93a,93b及び素子片94a,94bについては、何れも全長(ゲージ長さ)や全幅(ゲージ幅)等の各種仕様が共通となっている。そして、中心軸線CLに対する各素子片93a,94aの配置角度については統一されており、中心軸線CLに対する各素子片93b,94bの配置角度についても統一されている。
【0033】
図6に示すように、各第1歪みゲージ91はリード線を介して第1検出器96に各々接続されている。第1検出器96には、抵抗値の微小変化の検出に適した電気回路であるブリッジ回路部96a(例えばホイートストンブリッジ)と、ブリッジ回路部96aにて検出した各信号を増幅するアンプ部96bとが各々設けられている。また、第1検出器96にはアンプ部96bにて増幅された全て(3つ)の信号を合成する合成部96cが設けられており、当該合成部96cにて合成された検出信号である第1信号(合成結果)はロボットコントローラ42の入出力部52へ出力される。
【0034】
各第2歪みゲージ92はリード線を介して第2検出器97に各々接続されている。第2検出器97にも、第1検出器96と同様に、抵抗値の微小変化の検出に適した電気回路であるブリッジ回路部97a(例えばホイートストンブリッジ)と、ブリッジ回路部97aにて検出した各信号を増幅するアンプ部97bとが各々設けられている。また、第2検出器97にはアンプ部97bにて増幅された全て(3つ)の信号を合成する合成部97cが設けられており、当該合成部96cにて合成された検出信号である第2信号(合成結果)はロボットコントローラ42の入出力部52へ出力される。
【0035】
本実施形態に示す合成部97cにおいては、3つの検出信号を足し合わせることによりそれら検出信号を「合成」している。詳細については後述するが、ロボットコントローラ42では、入力された第1信号及び第2信号に基づいてノイズ等の異常を検出し、第1信号に基づいて防護停止等の要否を判定する。
【0036】
ここで、検出信号を合成する技術的意義について説明する。
図3に示したように、本実施形態に示す波動発生器80は、剛性カム85が楕円形となっており、ギアの噛み合いが中心軸線CLを中心とした回動方向において異なる2カ所で発生する2ローブ型となっている。具体的には、中心軸線CLを挟んだ両側にてギアが噛み合う構成、すなわち中心軸線CLを中心とした回転方向においておよそ180°間隔で噛み合いが発生する構成となっている。
【0037】
可撓性外歯歯車70は、波動発生器80によって楕円形に撓められ、波動発生器80の回転に伴って当該可撓性外歯歯車70の各部分については中心軸線CLと直交する方向(中心軸線CLに対して近づく側及び遠ざかる側)における強制的な変形が繰り返されることとなる。よって、可撓性外歯歯車70には伝達トルクとは無関係な周期的な歪みが発生する。具体的には、可撓性外歯歯車70の各部分は、波動発生器80が1回転する毎に中心軸線CLと直交する方向にて一定のストロークで2往復する。このため、伝達トルクとは関係のない歪みは、波動発生器80の1回転につき2周期を基本とする正弦波状の波形として各歪みゲージの検出信号に現出することとなる(
図7参照)。以下、波動発生器80の回転に伴って伝達トルクとは無関係に可撓性外歯歯車70に発生する周期的な歪み成分を「回転リップル」という。
【0038】
本実施形態では、3つの第1歪みゲージ91によって歪みゲージ群である第1グループG1が構成されており、3つの第2歪みゲージ92によって歪みゲージ群である第2グループG2が構成されている。以下の説明では、それら3つの第1歪みゲージ91を、「第1歪みゲージ91A」、「第1歪みゲージ91B」、「第1歪みゲージ91C」、3つの第2歪みゲージ92を、「第2歪みゲージ92A」、「第2歪みゲージ92B」、「第2歪みゲージ92C」とも称する。
【0039】
図5(b1)に示すように、第1歪みゲージ91A~91Cは、中心軸線CLを中心とする仮想円FC上に位置しており、当該中心軸線CLを中心とした可撓性外歯歯車70の回動方向(周方向)にて等間隔となるようにして配列されている。すなわち、第1歪みゲージ91A~91Cは、中心軸線CLを中心として120°間隔となるように配置されている。言い換えれば、中心軸線CLにおいて第1歪みゲージ91A~91Cと同一平面上に位置する部分(中心点CP)及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと、中心点CPと第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bとのなす角=120°、仮想直線L1Bと中心点CP及び第1歪みゲージ91Cを繋ぐ仮想直線L1Cとのなす角=120°、仮想直線L1Cと仮想直線L1Aとのなす角=120°となるように配置されており、何れのなす角についても、上記正弦波の1周期(180°)の整数倍とは一致しない構成となっている。
【0040】
上述の如く配置された3つの第1歪みゲージ91A~91Cの検出信号については、位相が異なるもののそれら検出信号の振幅及び周期については同様となる。これら3つの検出信号を合成することにより、上述した回転リップルを抑制することができる(
図7(a)参照)。具体的には、第1信号の振幅については剛性カム85の回動角度をαとすると「sin(α)+sin(α+120×2)+sin(α-120×2)+β」の値に比例し、sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)=0となるため、理論上は回転リップルがキャンセルされる。つまり、合成された信号である第1信号の波形(合成結果)は、理論上はフラットな波形となる。
【0041】
なお、アンプ部96bによる各検出信号の増幅率については、上記回転リップルを抑制することができるのであれば任意であり、例えば共通としてもよいし、個体差等に配慮して増幅率を個別に設定可能としてもよい。
【0042】
図5(b2)に示すように、第2歪みゲージ92A~92Cは、中心軸線CLを中心とする仮想円FC上に位置しており、当該中心軸線CLを中心とした可撓性外歯歯車70の回動方向(周方向)にて等間隔となるようにして配列されている。すなわち、第2歪みゲージ92A~92Cは、中心軸線CLを中心として120°間隔となるように配置されている。言い換えれば、中心軸線CLにおいて第2歪みゲージ92A~92Cと同一平面上に位置する部分(中心点CP)及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aと、中心点CPと第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bとのなす角=120°、仮想直線L2Bと中心点CP及び第2歪みゲージ92Cを繋ぐ仮想直線L2Cとのなす角=120°、仮想直線L2Cと仮想直線L2Aとのなす角=120°となるように配置されており、それらなす角については、上記正弦波の1周期(180°)の整数倍と一致しない構成となっている。
【0043】
上述の如く配置された3つの第2歪みゲージ92A~92Cの検出信号については、位相が異なるもののそれら検出信号の振幅及び周期については同様となる。これら3つの検出信号を合成することにより、上述した回転リップルを抑制することができる(
図7(b)参照)。具体的には、第2信号の振幅については剛性カム85の回動角度をαとすると「sin(α)+sin(α+120×2)+sin(α-120×2)+β」の値に比例し、sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)=0となるため、理論上は回転リップルがキャンセルされる。つまり、合成された信号である第2信号の値は一定となり、理論上はフラットな波形となる。
【0044】
なお、アンプ部97bによる各検出信号の増幅率については、上記回転リップルを抑制することができるのであれば任意であり、例えば共通としてもよいし、個体差等に配慮して増幅率を個別に設定可能としてもよい。
【0045】
次に、再び
図5(a)を参照して、第1歪みゲージ91と、第2歪みゲージ92との位置関係について補足説明する。
【0046】
第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92は、上記仮想円FC上に交互となるようにして配置されている。つまり、第1歪みゲージ91の両隣は第2歪みゲージ92となり、第2歪みゲージ92の両隣は第1歪みゲージ91となるように配置されている。第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とは、中心軸線CLを中心として点対称の関係となっている。言い換えれば、フランジ部72において第1歪みゲージ91が配設されている配設領域を中心軸線CLを中心に180°ずらした場合に、それら配設領域がフランジ部72において第2歪みゲージ92が配設されている配設領域と一致する構成となっている。
【0047】
より具体的には、中心点CP及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aのなす角、中心点CP及び第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bと中心点CP及び第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bのなす角、中心点CP及び第1歪みゲージ91Cを繋ぐ仮想直線L1Cと中心点CP及び第2歪みゲージ92Cを繋ぐ仮想直線L2Cのなす角は、何れも180°となっており、360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。
【0048】
以上詳述した配置とすることで、第1歪みゲージ91A~91Cからの検出信号を合成した第1信号の波形と、第2歪みゲージ92A~92Cからの検出信号を合成した第2信号の波形とを揃えることが可能となっている(
図7参照)。これら第1信号及び第2信号は、何れもロボットコントローラ42の入出力部52に入力される。そして、入出力部52においては、これら第1信号及び第2信号を比較して、ノイズの有無等を確認する。
【0049】
具体的には、第1信号の値と第2信号の値との差が予め設定されている判定基準値(第1判定基準値)を超えているか否かを判定する。第1信号の値と第2信号の値との差が第1判定基準値を超えていない場合には、ノイズが発生していないものとして第1信号の値をそのまま制御部51へ出力する(
図8(a)参照)。制御部51では、この第1信号の値に基づいて発生しているトルクを把握し、このトルクがロボット15の防護停止に対応した大きさとなっている場合には防護停止の処理を行い、ロボット15の減速に対応した大きさとなっている場合には減速の処理を行う。
【0050】
ここで、第1信号の値と第2信号の値との差が予め設定されている第1判定基準値を超えていない場合であっても、当該第1判定基準値よりも小さい第2判定基準値を超えている場合には、故障判定用の処理を行う。具体的には、第2判定基準値を超える事象が連続した回数を特定し、その回数が規定回数を超えた場合には、何れかの歪みゲージに故障が発生している可能性がある旨をユーザに報知する処理を行う。
【0051】
第1信号の値と第2信号の値との差が第1判定基準値を超えている場合には、ノイズが発生している可能性があるため、第1判定基準値を超えていない直近の第1信号の値を制御部51へ出力する。制御部51では、この値に基づいて発生しているトルクを把握し、このトルクが閾値を上回っている場合には防護停止等の処理を行う。
【0052】
なお、第1信号の値と第2信号の値との差が第1判定基準値を超えている場合には、制御部51への値の出力を行わない構成としたり、第1信号及び第2信号のうち前回の値からの変動が小さい一方の値を制御部51に出力する構成としたりすることも可能である。
【0053】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0054】
本実施形態に示した波動歯車装置35においては、剛性カム85が回動することで、可撓性外歯歯車70に伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車70に取り付けた歪みゲージ91,92からの出力信号は、剛性カム85の回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化する信号となる。この点、複数の歪みゲージを併用し、歪みゲージからの検出信号を合成する構成にすることは、トルク検出の誤差要因となる回転リップルを抑制する上で好ましい。ここで、ロボット15においては、内蔵されているサーボモータ31へ駆動電力を供給するための電源線や他の産業機器の電源線等をノイズ源としたノイズが信号線に印加される可能性がある。上述の如く歪みゲージの数を増やすことは回転リップルを抑制する上では好ましいものの、歪みゲージの数が増えれば歪みゲージに付属の信号線(リード線)にノイズが印加される機会も増えると懸念される。
【0055】
この点、本実施形態に示したように、複数の第1歪みゲージ91からの検出信号を合成した第1信号と、複数の第2歪みゲージ92からの検出信号を合成した第2信号とを比較すれば、第1歪みゲージ91からの検出信号及び第2歪みゲージ92からの検出信号の何れかにノイズが印加されることで、第1信号と第2信号とが大きく乖離する等して第1信号と第2信号との関係が崩れることとなる。つまり、第1信号と第2信号との比較によって少なくとも何れかの検出信号にノイズが印加された旨を把握できる。これは、ノイズに起因した誤動作を抑制する上で好ましい。以上の通り、本実施形態に示した構成によれば、回転リップルの抑制とノイズ耐性の強化とに寄与できる。
【0056】
本実施形態に示す波動歯車装置35は2ローブ型となっており、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92は、中心軸線CLに対して点対称の位置関係となるように配置されている。このような構成とすれば、合成された第1信号の波形と第2信号の波形との差違を小さくすることができる。つまり、比較を行うタイミングによって第1信号と第2信号との差が大きく変動することを抑制できる。これは、第1信号と第2信号との簡易な比較を実現し、ノイズ等の確認に係る構成の簡素化を図る上で好ましい。
【0057】
第1信号と第2信号との比較結果が第1判定基準を超えていない場合、すなわちノイズが印加されていないと想定される場合には、第1信号に基づいて波動歯車装置35に生じるトルクを検出し、検出した当該トルクに応じて防護停止や減速等の判定が実行される。第1信号と第2信号との比較後は、第1信号をそのままトルク検出に用いる構成とすることにより、検出したトルクに応じた制御(産業機器の減速や停止)が実行されるまでの期間の間延びを抑制できる。
【0058】
合成の対象となる検出信号の数を増すことは、回転リップルを抑制する上で有利である。但し、検出信号を合成する際には、合成によってノイズ等の局所的な変化が埋没することは、例えば劣化等に伴う異常の兆候の早期発見を図る上で好ましくない。例えば合成によって局所的な変化が減縮されることは、当該変化を見極める上で妨げになる。この点、本実施形態に示したように出力信号を足し合わせることで第1信号及び第2信号を生成することは、異常の兆候の早期発見を図る上で好ましい。
【0059】
各歪みゲージ91,92の取付対象をフランジ部72とし且つ中心軸線CLからそれら歪みゲージ91,92までの距離を同一とすれば、歪みゲージ91,92の配置箇所によって歪みの表れ方に差が生じることを抑制できる。これは、第1信号の波形と第2信号との波形を揃える上で好ましい。
【0060】
第1歪みゲージ91は円周方向にて互いに等間隔となるように配置され、第2歪みゲージ92についても円周方向にて互いに等間隔となるように配置されている。上述したように第1信号と第2信号とを比較する構成においては、両信号が何れも値が一定又は略一定となることで、比較のタイミングによって第1信号の波形と第2信号の波形との差違が大きく変動することを抑制できる。これは、比較時の判定基準の統一等によって簡易な比較処理を実現する上で好ましい。
【0061】
円周方向に第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とを交互に配置することは、各歪みゲージ91,92の配置の偏りを抑えつつ、上記点対称の位置関係を実現する上で好ましい。
【0062】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1歪みゲージ91からの検出信号を合成した第1信号と、第2歪みゲージ92からの検出信号を合成した第2信号とを比較する構成となっている点では第1の実施形態と同様であるものの、第1グループG1を構成している第1歪みゲージ91の数及びそれら第1歪みゲージ91の位置関係、第2グループG2を構成している第2歪みゲージ92の数及びそれら第2歪みゲージ92の位置関係が第1の実施形態と相違している。以下、
図9を参照して、本実施形態におけるトルク検出センサ136を第1の実施形態に示したトルク検出センサ36との相違点を中心に説明する。なお、波動歯車装置35等の第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
図9(a)に示すように、第1グループG1は第1歪みゲージ91A及び第1歪みゲージ91Bの2つで構成されている。第1歪みゲージ91A及び第1歪みゲージ91Bは、中心点CP及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bとのなす角が90°となるように配置されている。
【0064】
また、第2グループG2は第2歪みゲージ92A及び第2歪みゲージ92Bの2つで構成されている。第2歪みゲージ92A及び第2歪みゲージ92Bは、中心点CP及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bとのなす角が90°となるように配置されている。
【0065】
本実施形態においても第1の実施形態と同様に波動歯車装置35が2ローブ型となっているため、第1歪みゲージ91Aからの検出信号と第1歪みゲージ91Bからの検出信号とは逆位相となり、第2歪みゲージ92Aからの検出信号と第2歪みゲージ92Bからの検出信号とは逆位相となる。第1歪みゲージ91A,91Bの配置に偏りがあるため、回転リップルについては一部残存することになるものの両検出信号を合成した第1信号の値は略一定となり、当該第1信号の波形はほぼフラットとなる(
図9(b1)参照)。同様に、第2歪みゲージ92A,92Bの配置に偏りがあるため、回転リップルについては一部残存することになるものの両検出信号を合成した第2信号の値は略一定となり、当該第2信号の波形はほぼフラットとなる(
図9(b2)参照)。
【0066】
ここで、仮想直線L1Aと仮想直線L2Aとのなす角は、180°となっており、360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。同様に、仮想直線L1Bと仮想直線L2Bとのなす角についても180°となっており、1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。つまり、中心軸線CLを中心として周方向に第1歪みゲージ91の配置エリアを180°ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと一致する(重なる)ように配置されている。
【0067】
以上詳述した配置とすれば、第1の実施形態と同様に、合成結果である第1信号及び第2信号の各波形については理論的に一致することとなる。第1信号と第2信号との比較によってノイズの混入等を把握できるため、制御部51へ出力する信号を当該比較結果に基づいて決定することにより、当該ノイズ等に起因した誤動作の発生を抑制できる。
【0068】
なお、上記配置によって2つの検出信号を合成する場合には、1周期内の回転リップル(短期的な回転リップル)を抑制できるものの、複数周期(例えば1回転:2周期)に跨って発生するような回転リップル(長期的な回転リップル)については抑制が困難になり得る。故に、この種の長期的な回転リップルの除去する場合には、第1の実施形態に示したように、各グループについて歪みゲージ(3個以上)を等間隔(等角度)となるようにして配置するとよい。
【0069】
<第3の実施形態>
本実施形態では、第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とが中心軸線CLを中心として点対称の関係となるように配置されている点では第1の実施形態と同様であるものの、第1歪みゲージ91同士の位置関係、第2歪みゲージ92同士の位置関係が第1の実施形態と相違している。以下、
図10を参照して、本実施形態におけるトルク検出センサ236を第1の実施形態に示したトルク検出センサ36との相違点を中心に説明する。なお、波動歯車装置35等の第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0070】
図10(a)に示すように、第1歪みゲージ91の数及び第2歪みゲージ92の数は第1の実施形態と同様に何れも3つとなっているものの、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92は周方向に交互ではなく、グループ毎に区間を分けて配置されている。
【0071】
第1歪みゲージ91A~91Cは、中心点CP及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bとのなす角が50°、仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Cを繋ぐ仮想直線L1Cとのなす角が50°、仮想直線L1Bと仮想直線L1Cとのなす角が260°となるように配置されている。また、第2歪みゲージ92A~92Cは、中心点CP及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bとのなす角が50°、仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Cを繋ぐ仮想直線L2Cとのなす角が50°、仮想直線L2Bと仮想直線L2Cとのなす角が260°となるように配置されている。
【0072】
第1歪みゲージ91A~91Cからの検出信号を合成することで回転リップルがある程度抑制される。但し、第1歪みゲージ91A~91Cについては中心軸線CLの周りに均等に配置されているわけではなく、第1信号の振幅については剛性カム85の回動角度をαとすると「sin(α)+sin(α+50×2)+sin(α-50×2)+β」の値に比例する。つまり、回転リップルが一部残存し、第1信号についてはある程度の振幅を有する正弦波となる(
図10(b1)参照)。
【0073】
同様に、第2歪みゲージ92A~92Cからの検出信号を合成することで回転リップルがある程度抑制される。但し、第2歪みゲージ92A~92Cについても中心軸線CLの周りに均等に配置されているわけではなく、第2信号の振幅についても「sin(α)+sin(α+50×2)+sin(α-50×2)+β」の値に比例する。つまり、回転リップルが一部残存し、第1信号についてはある程度の振幅を有する正弦波となる(
図10(b2)参照)。
【0074】
ここで、仮想直線L1Aと仮想直線L2Aとのなす角は180°となっており、360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。同様に、仮想直線L1Bと仮想直線L2Bとのなす角についても180°となっており、1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。また、仮想直線L1Cと仮想直線L2Cとのなす角についても180°となっており、1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致している。つまり、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92については、中心軸線CLを中心とする点対称の関係となっている。言い換えれば、中心軸線CLを中心として第1歪みゲージ91の配置エリアを180°ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと一致する(重なる)ように配置されている。
【0075】
このような配置とすれば、第1の実施形態と同様に、合成結果である第1信号及び第2信号の各波形については理論的に一致することとなる。第1信号と第2信号との比較によってノイズの混入等を把握できるため、当該ノイズ等に起因した誤動作の発生を抑制できる。
【0076】
<第4の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、2ローブ型の波動歯車装置35に対応させて第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92を中心軸線CLを中心とする点対称の位置関係となるように配置した。本実施形態に示す波動歯車装置335については剛性カム385が略三角形をなす3ローブ型となっており、このようなローブ数の違いに合わせて第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92の配置が変更されている。以下、
図11を参照して、本実施形態におけるトルク検出センサ336を第1の実施形態に示したトルク検出センサ36との相違点を中心に説明する。なお、波動歯車装置35等の第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
図11(a)に示すように、第1グループG1は第1歪みゲージ91A及び第1歪みゲージ91Bの2つで構成されている。第1歪みゲージ91A及び第1歪みゲージ91Bは、中心点CP及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bとのなす角が60°となるように配置されている。
【0078】
また、第2グループG2は第2歪みゲージ92A及び第2歪みゲージ92Bの2つで構成されている。第2歪みゲージ92A及び第2歪みゲージ92Bは、中心点CP及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bとのなす角が60°となるように配置されている。
【0079】
本実施形態においては波動歯車装置35が3ローブ型となっているため、歪みが発生する周期は1周期=360°/3=120°となる。このため、第1歪みゲージ91Aからの検出信号と第1歪みゲージ91Bからの検出信号とは逆位相となり、第2歪みゲージ92Aからの検出信号と第2歪みゲージ92Bからの検出信号とは逆位相となる。第1歪みゲージ91A,91Bの配置に偏りがあるため、回転リップルについては一部残存することになるものの両検出信号を合成した第1信号の値は略一定となり、当該第1信号の波形はほぼフラットとなる(
図11(b1)参照)。同様に、第2歪みゲージ92A,92Bの配置に偏りがあるため、回転リップルについては一部残存することになるものの両検出信号を合成した第2信号の値は略一定となり、当該第2信号の波形はほぼフラットとなる(
図11(b2)参照)。
【0080】
仮想直線L1Aと仮想直線L2Aとのなす角は、120°となっており、360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:120°)の整数倍と一致している。同様に、仮想直線L1Bと仮想直線L2Bとのなす角についても120°となっており、1周期相当の角度(基準角度:120°)の整数倍と一致している。つまり、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92については、中心軸線CLを中心とする点対称の関係となっている。言い換えれば、中心軸線CLを中心として第1歪みゲージ91の配置エリアを120°ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと一致する(重なる)ように配置されている。
【0081】
このような配置とすれば、第1の実施形態と同様に、合成結果である第1信号及び第2信号の各波形については理論的に一致することとなる。第1信号と第2信号との比較によってノイズの混入等を把握できるため、当該ノイズ等に起因した誤動作の発生を抑制できる。
【0082】
<第5の実施形態>
上記第1の実施形態等では、第1信号の波形と第2信号の波形とを揃えることにより、両信号の比較を簡素化した。これに対して、本実施形態では、可撓性外歯歯車70のフランジ部72における各歪みゲージ91,92の配置自由度を向上させる上で、第1信号の波形と第2信号の波形との位相ずれを許容する工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、
図12を参照して、本実施形態におけるトルク検出センサ436を第3の実施形態に示したトルク検出センサ236との相違点を中心に説明する。なお、波動歯車装置35等の第3の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0083】
先ず、本実施形態では、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92が各々3つで構成されているものの、第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とは中心軸線CLを中心とする点対称の位置関係とはなっていない。具体的には、
図10に示した仮想直線L1Aと仮想直線L2Aとのなす角は例えば150°となっており、360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。同様に、仮想直線L1Bと仮想直線L2Bとのなす角についても150°となっており、1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。また、仮想直線L1Cと仮想直線L2Cとのなす角についても150°となっており、1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。つまり、中心軸線CLを中心として第1歪みゲージ91の配置エリアを180°ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと一致しない配置となっている。
【0084】
このため、
図12(a)に示すように、第1歪みゲージ91Aからの検出信号を合成した第1信号と、第2歪みゲージ92Aからの検出信号を合成した第2信号とは、波形は同様となるものの位相にずれが生じている。つまり、剛性カム85の回動角度に応じて第1信号と第2信号との差違が変動することとなる。
【0085】
この点、本実施形態では、
図12(b)に示すように、第1信号と第2信号とを比較する際の判定基準値(上述した第1判定基準値U及び第2判定基準値L)が剛性カム85の回動角度に応じて個々に設定されている。具体的には、ロボットコントローラ42には、回動角度と第1判定基準値U及び第2判定基準値Lとの関係を示すテーブル(判定基準テーブル)が記憶されており、比較を行う際の回動角度に対応した第1判定基準値U及び第2判定基準値Lを読み出す構成となっている。
【0086】
判定基準テーブルにおいては、例えば回転角度(N-1)の場合の第1判定基準値=U(N-1)及び第2判定基準値=L(N-1)、回転角度(N)の場合の第1判定基準値=U(N)及び第2判定基準値=L(N)、回転角度(N+1)の場合の第1判定基準値=U(N+1)及び第2判定基準値=L(N+1)となるように設定されている。これら第1判定基準値U及び第2判定基準値Lは、第1信号と第2信号との差違に比例する構成となっており、当該差違が大きくなれば第1判定基準値U及び第2判定基準値Lが大きくなり、当該差違が小さくなれば第1判定基準値U及び第2判定基準値Lが小さくなるように規定されている。
【0087】
このように、回動角度に応じて第1判定基準値U及び第2判定基準値Lを各々設定する構成によれば、第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92との位置関係に係る制約を緩和できる。これにより、上記フランジ部72における他の構成との共存を好適に実現できる。
【0088】
<第6の実施形態>
上記第1の実施形態では、2ローブ型の波動歯車装置35において第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とを中心軸線CLを中心とする点対称の位置関係となるようにして配置した。本実施形態においては、これら第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92との位置関係が第1の実施形態と相違している。以下、
図13を参照して、本実施形態における位置関係について説明する。
【0089】
図13に示すように、第1グループG1における第1歪みゲージ91同士の位置関係については第1の実施形態と同様であり、それら第1歪みゲージ91からの検出信号を合成することで回転リップルが抑制され、第1信号の値は一定、第1信号の波形はフラットとなる(
図7(a)参照)。第2グループG2における第2歪みゲージ92同士の位置関係についても第1の実施形態と同様であり、それら第2歪みゲージ92からの検出信号を合成することで回転リップルが抑制され、第2信号の値は一定、第2信号の波形はフラットとなる(
図7(b)参照)。
【0090】
ここで、仮想直線L1Aと仮想直線L2A~L2Cとのなす角については何れも360°/ローブ数で規定される1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。同様に、仮想直線L1Bと仮想直線L2A~L2Cとのなす角については何れも1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。また、仮想直線L1Cと仮想直線L2A~L2Cとのなす角については何れも1周期相当の角度(基準角度:180°)の整数倍と一致していない。つまり、中心軸線CLを中心として第1歪みゲージ91の配置エリアを180°ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと一致する(詳しくは重なる)ことはない。言い換えれば、中心軸線CLを中心として第1歪みゲージ91の配置エリアを180°ずらした場合の位置から外れた位置に第2歪みゲージ92の配置エリアが設けられており、第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とは中心軸線CLを中心とした点対称の位置関係にならないように配置されている。
【0091】
可撓性外歯歯車70は剛性カム85の回動により繰り返し変形する。大きな歪みが同時に発生する箇所に配置された各歪みゲージについては同じような態様で劣化が進む可能性が高くなり、同じタイミングで故障する可能性も高くなる。仮に、合成された第1信号及び第2信号に故障の結果が各々反映されると、それらの信号を比較しても当該故障の発見は困難になると懸念される。この点、本実施形態においては、第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92を、上述の如く配置することで、すなわち両グループG1,G2の歪みゲージ91,92に同じ態様で大きな歪みの影響が及ばないように配慮することで、第1歪みゲージ91と第2歪みゲージ92とが同時に故障する可能性を引き下げている。
【0092】
なお、本実施形態においては、第1信号の波形及び第2信号の波形は何れもフラットとなるため、第1信号と第2信号との比較に係る構成が複雑になることはない。
【0093】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。
【0094】
・上記第3の実施形態では、3つの第1歪みゲージ91A~91C及び3つの第2歪みゲージ92A~92Cを用いて回転リップルを抑制する構成としたが、第1歪みゲージ91A~91Cの位置関係及び第2歪みゲージ92A~92Cの位置関係を以下のように変更することも可能である。すなわち、
図14に例示しているトルク検出センサ636のように、中心点CP及び第1歪みゲージ91Aを繋ぐ仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Bを繋ぐ仮想直線L1Bとのなす角が60°、仮想直線L1Aと中心点CP及び第1歪みゲージ91Cを繋ぐ仮想直線L1Cとのなす角が60°、仮想直線L1Bと仮想直線L1Cとのなす角が240°となるように第1歪みゲージ91A~91Cを配置し、中心点CP及び第2歪みゲージ92Aを繋ぐ仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Bを繋ぐ仮想直線L2Bとのなす角が60°、仮想直線L2Aと中心点CP及び第2歪みゲージ92Cを繋ぐ仮想直線L2Cとのなす角が60°、仮想直線L2Bと仮想直線L2Cとのなす角が240°となるように第2歪みゲージ92A~92Cを配置する。
【0095】
第1歪みゲージ91A~91Cについては第1の実施形態に示したように中心軸線CLの周りに均等に配置されているわけではない。但し、第1信号の振幅については剛性カム85の回動角度をαとすると「sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)+β」の値に比例し、sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)=0となるため、理論上は回転リップルがキャンセルされる。
【0096】
同様に、第2歪みゲージ92A~92Cについても第1の実施形態に示したように中心軸線CLの周りに均等に配置されているわけではない。但し、第2信号の振幅については「sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)+β」の値に比例し、sin(α)+sin(α+60×2)+sin(α-60×2)=0となるため、理論上は回転リップルがキャンセルされる。
【0097】
第1歪みゲージ91A~91Cの配置及び第2歪みゲージ92A~92Cの配置については何れも偏りがあるため、1周期内の回転リップル(短期的な回転リップル)をキャンセルできるものの、複数周期(例えば1回転:2周期)に跨って発生するような回転リップル(長期的な回転リップル)については抑制が困難になり得る。上記第1信号及び第2信号については何れも完全にフラットにはならないものの、波形自体は揃えることができるため、第1信号と第2信号との比較を簡易に実施できる。
【0098】
・上記第1~第4の実施形態では、第1歪みゲージ91の数と第2歪みゲージ92の数とを同数としたが、第1グループG1に係る検出信号の合成結果である第1信号と第2グループG2に係る検出信号の合成結果である第2信号とを理論上、同一形状又はほぼ同一形状の波形とすることができるのであれば足り、第1歪みゲージ91の数と第2歪みゲージ92の数とを相違させる構成とすることも可能である。
【0099】
例えば、第1グループG1については120°間隔となるように3つの第1歪みゲージ91を配設する一方、第2グループG2については90°間隔となるように2つの第2歪みゲージ92を配設する構成としてもよい。本構成であっても回転リップが抑制されることで第1信号及び第2信号については何れもフラット又はほぼフラットになる。合成した検出信号の数が相違することで、第1信号と第2信号とはオフセットの関係になり得るが、合成する検出信号の数に応じた補正等を行うことで、比較結果の確からしさを向上させることができる。
【0100】
・上記第1~第4の実施形態では、第1グループG1を構成している第1歪みゲージ91の配置エリアを中心軸線CLを中心に1周期に相当する角度(360°をローブ数で割った角度)ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと完全に一致する構成としたが、第1グループG1を構成している第1歪みゲージ91の配置エリアを中心軸線CLを中心に1周期に相当する角度(360°をローブ数で割った角度)ずらした場合に、それら配置エリアが第2歪みゲージ92の配置エリアと重なる構成(少なくとも一部が重なる構成)を否定するものではない。
【0101】
・上記各実施形態では2ローブ又は3ローブの波動発生器80について例示したが、これに限定されるものではない。例えば4角形の剛性カムを用いて4ローブの波動発生器80を構築したり、例えば5角形の剛性カムを用いて5ローブの波動発生器80を構築したりすることも可能である。
【0102】
・上記各実施形態では、2つの素子片93a,93bを直交させるように組み合せて第1歪みゲージ91を構成し且つ2つの素子片94a,94bを直交させるように組み合せて第2歪みゲージ92を構成したが、波動歯車装置35に発生するトルクを検出可能であり且つ合成結果(第1信号、第2信号)の比較を行う上で支障がない範囲であれば、歪みゲージ91,92のゲージパターン(素子片の配置や数)については任意に変更してもよい。例えば、2つの素子片を組み合わせて歪みゲージを構成する場合には、それら2つの素子片を離間させた配置とすることも可能である。また、例えば、1の素子片によって歪みゲージを構成してもよいし、3つ以上の素子片を組み合わせて歪みゲージを構成してもよい。但し、回転リップの抑制や検出信号の比較に鑑みれば、グループ内の歪みゲージについてはゲージパターンを揃えることが好ましく、両グループG1,G2にて対の関係になる歪みゲージのゲージパターンについても揃えることが好ましい。
【0103】
・上記各実施形態では、第1グループG1を構成している第1歪みゲージ91と、第2グループG2を構成している第2歪みゲージ92とを同一の仮想円FC上に配置したが、第1グループG1を構成している第1歪みゲージ91と第2グループG2を構成している第2歪みゲージ92とを中心軸線CLを中心とした半径(直径)の異なる2つの仮想円上に配置することも可能である。すなわち、第1グループG1の配置と第2グループG2の配置とを中心軸線CLの放射方向(内外)にずらす構成としてもよい。なお、このように第1グループG1と第2グループG2とを内外にずらす場合であっても、グループ内では中心軸線CLから歪みゲージまでの距離については揃えることが好ましい。
【0104】
例えば、第1の実施形態では、第1グループG1と第2グループG2とが中心軸線CLを中心とする点対称の関係となるように第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92を配置したが、各第1歪みゲージ91と中心点CPとを結ぶ仮想直線と、何れかの第2歪みゲージ92と中心点CPとを結ぶ仮想直線とのなす角が180°となるようにして第1歪みゲージ91及び第2歪みゲージ92とが配置されているのであれば足り、中心軸線CLから第1歪みゲージ91までの距離と中心軸線CLから第2歪みゲージ92までの距離とを一致させるか否かについては任意である。
【0105】
・上記各実施形態では、ノイズ発生時にはひとつ前のトルクデータを代用して駆動制御を行う構成としたが、これに限定されるものではない。例えば過去N回分のデータの平均値を代用する構成としてもよい。また、第1グループG1の合成結果の推移及び第2グループG2の合成結果の推移を記憶し、各合成結果の推移から値(推定値)を推定し、当該推定値に対して大きく外れていない方をトルクデータとして出力する構成としてもよい。つまり、第2グループG2の合成結果が推定値から相対的に大きく乖離している場合には第1グループG1の合成結果をトルクデータとして出力する一方、第1グループG1の合成結果が推定値から相対的に大きく乖離している場合には第2グループG2の合成結果をトルクデータとして出力する構成としてもよい。
【0106】
・可撓性外歯歯車70のフランジ部72に設けられた歪みゲージ91,92については、当該フランジ部72に形成されたボルト孔77及び位置決め孔78と同じ仮想円(中心軸線CLを中心とする仮想円)上に配置することも可能である。
【0107】
・上記各実施形態では、可撓性外歯歯車70のフランジ部72に歪みゲージ91,92を配設する構成としたが、これに限定されるものではない。トルク検出機能を発揮させることができるのであれば、歪みゲージ91,92の配設対象については任意である。例えば、可撓性外歯歯車70の歯車主部71(詳しくは、円筒部分の外周面又は内周面)を歪みゲージ91,92の配設対象とすることも可能である。
【0108】
・上記各実施形態では、所謂シルクハット型の可撓性外歯歯車70について例示したが、外歯歯車の具体的形状についてはこれに限定されるものではない。例えば、所謂キャップ型やパンケーキ型であってもよい。
【0109】
・上記各実施形態に示した「合成」では、複数の第1歪みゲージ91の検出信号(波形)を足し合わせることでそれら検出信号を「合成」したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の第1歪みゲージ91の検出信号の平均をとることでそれら検出信号を「合成」してもよい。
【0110】
・上記各実施形態では、ロボットコントローラ42にて2つの検出信号(合成された検出信号)を比較する構成としたが、これに限定されるものではない。トルク検出センサ36にて2つの検出信号(合成された検出信号)を比較する構成とすることも可能である。
【0111】
・上記各実施形態に示したトルク検出に係る構成を人協働ではない他の工程に設置されるロボットであって波動歯車減速装置を具備する他のロボットに適用することも可能である。また、工場以外で使用される産業用ロボット以外のロボット(例えば飲食店や病院で使用されるロボット)に上記トルク検出に係る構成を適用してもよい。更には、トルク検出に係る構成を、波動歯車減速装置を具備する他の産業機器(例えばNC工作機械等の工作機械)に適用することも可能である。
【0112】
<上記各実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記各実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0113】
<特徴A群>
以下の特徴A群は、「工場等で用いられる産業用ロボット等の産業機器には、減速機として波動歯車装置が搭載されているものがある。波動歯車装置は、剛性内歯歯車と、その内側に配置された可撓性外歯歯車と、可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせるとともに噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(波動発生器)とで構成されている。近年では産業機器や作業者の保護等の観点から、例えば運転時にトルクを監視し、過度に大きなトルクが発生した場合には減速や停止等の制御を行うように構成されたものがあり、波動歯車装置が搭載された産業機器においては、例えば可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号に基づいてトルクを検出するといった対応が講じられている。但し、可撓性外歯歯車においては波動歯車装置の構造上、剛性カムの回動によって伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージをからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化することとなる。このような出力信号の変化、すなわちトルク検出にて誤差の要因となる成分(所謂回転リップル)を抑制すべく、複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成するといった技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。」という背景技術について、「ここで、産業機器においては、駆動部へ駆動電力を供給するための電源線をノイズ源としたノイズ(高電圧サージノイズ)が信号線に印加される可能性がある。特に強電線である電源線と弱電線である信号線とが近接配置される場合にはそのような懸念が一層強くなる。また、工場においては産業機器が多数設置されることが多く、他の産業機器の電源線等がノイズ源になる可能性もある。上述の如く波動歯車装置に併設する歪みゲージの数を増やすことは回転リップルを抑制する上では好ましいものの、歪みゲージの数が増えれば歪みゲージに付属の信号線(リード線)にノイズが印加される機会も増えると懸念される。つまり、産業機器のノイズ耐性を向上させることが困難になると懸念される。このように、波動歯車装置が搭載された産業機器においては、回転リップルを抑制しつつ、ノイズ耐性を向上させる上でトルク検出に係る構成に未だ改善の余地がある。」という課題等に鑑みてなされたものである。
【0114】
特徴A1.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)と、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置(トルク検出センサ36及びロボットコントローラ42)とを備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記トルク検出装置にて検出したトルクに応じて前記産業機器を制御する産業機器用制御システム(制御システム40)であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数(例えば3つ)の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数(例えば3つ)の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心(中心軸線CL)を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(検出器96,97の合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えている産業機器用制御システム。
【0115】
本特徴に示す波動歯車装置においては、剛性カムが回動することで、可撓性外歯歯車に伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化する信号となる。この点、複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成する構成にすることは、トルク検出の誤差要因となる回転リップルを抑制する上で好ましい。ここで、産業機器においては、内蔵されている駆動部へ駆動電力を供給するための電源線や他の産業機器の電源線等をノイズ源としたノイズが信号線に印加される可能性がある。上述の如く歪みゲージの数を増やすことは回転リップルを抑制する上では好ましいものの、歪みゲージの数が増えれば歪みゲージに付属の信号線(リード線)にノイズが印加される機会も増えると懸念される。
【0116】
この点、本特徴に示すように、複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成した第1信号と、複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成した第2信号とを比較すれば、第1歪みゲージからの出力信号及び第2歪みゲージからの出力信号の何れかにノイズが印加されることで、第1信号と第2信号とが大きく乖離する等して第1信号と第2信号との関係が崩れることとなる。つまり、第1信号と第2信号との比較によって少なくとも何れかの出力信号にノイズが印加された旨を把握できる。これは、ノイズに起因した誤動作を抑制する上で好ましい。以上の通り、本特徴に示す構成によれば、回転リップルの抑制とノイズ耐性の強化とに寄与できる。
【0117】
なお、本特徴に示す「波動歯車装置」に係る記載を「可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)を楕円状に撓めて剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)に対して部分的に噛み合わせ、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させることにより、それら両歯車の歯数差に起因する相対回転をそれら可撓性外歯歯車及び剛性内歯歯車の間に発生させる波動歯車装置(波動歯車装置35)」とすることも可能である。
【0118】
因みに、「前記比較部による比較結果が異常に対応した結果となった場合に異常処理(例えば信号の無効化や異常報知等の処理)を行う」構成とするとよい。
【0119】
特徴A2(従属 実質スタート).前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心及び前記第1歪みゲージを結ぶ仮想直線(例えば仮想直線L1A)と、前記回動中心及び少なくとも何れかの前記第2歪みゲージを結ぶ仮想直線(例えば仮想直線L1B)とのなす角が、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍となるように配置されている特徴A1に記載の産業機器用制御システム。
【0120】
本特徴に示すように、第1歪みゲージと第2歪みゲージとの位置関係を工夫することにより、合成された第1信号の波形と第2信号の波形との差違を小さくすることができる。つまり、比較を行うタイミングによって第1信号と第2信号との差が大きく変動することを抑制できる。これは、第1信号と第2信号との簡易な比較を実現し、ノイズ等の確認に係る構成の簡素化を図る上で好ましい。
【0121】
特徴A3(従属 実質スタート 別表現).前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とするそれら第2歪みゲージの角度位置を、前記回動中心を中心として前記円周方向に、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍ずらした場合に、何れかの前記第1歪みゲージと同じ角度位置となるように配置されている特徴A1に記載の産業機器用制御システム。
【0122】
本特徴に示すように、第1歪みゲージと第2歪みゲージとの位置関係を工夫することにより、合成された第1信号の波形と第2信号の波形との差違を小さくすることができる。つまり、比較を行うタイミングによって第1信号と第2信号との差が大きく変動することを抑制できる。これは、第1信号と第2信号との簡易な比較を実現し、ノイズ等の確認に係る構成の簡素化を図る上で好ましい。
【0123】
特徴A4(一方の合成結果に基づいて駆動制御:公知文献用の対策).前記比較部による比較結果が異常非発生に対応する結果となった場合には、前記第1信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出し、検出した当該トルクに応じて前記産業機器を制御する特徴A1乃至特徴A3のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0124】
第1信号と第2信号との比較後は、第1信号をそのままトルク検出に用いる構成とすることにより、検出したトルクに応じた制御(産業機器の減速や停止)が実行されるまでの期間の間延びを抑制できる。
【0125】
特徴A5(合成について ギリネタ 構成自体は公知).前記合成部は、前記第1歪みゲージからの出力信号を足し合わせることにより前記第1信号を生成し、前記第2歪みゲージからの出力信号を足し合わせることにより前記第2信号を生成する特徴A4に記載の産業機器用制御システム。
【0126】
合成の対象となる出力信号の数を増すことは、回転リップルを抑制する上で有利である。但し、出力信号を合成する際には、合成によってノイズ等の局所的な変化が埋没することは、例えば劣化等に伴う異常の兆候の早期発見を図る上で好ましくない。例えば合成によって局所的な変化が減縮されることは、当該変化を見極める上で妨げになる。この点、本特徴に示すように出力信号を足し合わせることで第1信号及び第2信号を生成することは、異常の兆候の早期発見を図る上で好ましい。
【0127】
特徴A6(円上配置).前記可撓性外歯歯車は、外周面に前記外歯が形成された円筒状の本体部(歯車主部71)と、前記本体部の一端に形成された環状のフランジ部(フランジ部72)とを有してなり、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記フランジ部に取り付けられ、前記回動中心を中心とした同一仮想円(仮想円FC)上に配置されている特徴A1乃至特徴A5のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0128】
本特徴に示すように、各歪みゲージの取付対象をフランジ部とし且つ回動中心からそれら歪みゲージまでの距離を同一とすれば、ゲージの配置箇所によって歪みの表れ方に差が生じることを抑制できる。これは、第1信号の波形と第2信号との波形を揃える上で好ましい。なお、フランジ部は、本体部の内側に凸となるようにして形成してもよいし、本体部の外側に凸となるようにして形成してもよい。
【0129】
特徴A7(従属 2ローブ 点対称配置を明示).前記波動歯車装置は、前記剛性カムが楕円形をなす2ローブ型の波動歯車装置であり、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とした点対称の関係となるように配置されている特徴A1乃至特徴A6のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0130】
本特徴に示すように、2ローブ型の波動歯車装置の場合には、第1歪みゲージ及び第2歪みゲージを回動中心を中心とした点対称の関係となるように配置することで、第1信号の波形と第2信号の波形とを揃えやすくなる。これは、第1信号と第2信号との比較を簡易とする上で好ましい。
【0131】
特徴A8(素子等間隔配置).前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、何れも3つ以上となっており、
前記第1歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置され、前記第2歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置されている特徴A7に記載の産業機器用制御システム。
【0132】
上述したように第1信号と第2信号とを比較する構成においては、両信号が何れも値が一定又は略一定となることで、比較のタイミングによって第1信号の波形と第2信号の波形との差違が大きく変動することを抑制できる。これは、比較時の判定基準の統一等によって簡易な比較処理を実現する上で好ましい。
【0133】
特徴A9(入れ子配置).前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、同数となっており、前記円周方向において前記第1歪みゲージと前記第2歪みゲージとが交互となるように配置されている特徴A7又は特徴A8に記載の産業機器用制御システム。
【0134】
長い周期で発生する回転リップルを抑制する上では、回動中心の周りに歪みゲージをバランスよく配設することが好ましい。一方、特徴A2等に示した特殊な配置を実現する上では第1歪みゲージと第2歪みゲージとのすみ分けが必要となる。この点、本特徴に示すように円周方向に第1歪みゲージと第2歪みゲージとを交互に配置することは、各歪みゲージの配置の偏りを抑え、特徴A2等に示した特殊な配置を実現しつつ歪みゲージを回動中心の周りにバランスよく配設する上で好ましい。
【0135】
特徴A10(従属 3ローブ「120°」 仮想円明示).前記波動歯車装置は、前記剛性カムが略三角形をなす3ローブ型の波動歯車装置であり、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心として前記第1歪みゲージを120°回動させた場合に、当該回動前に前記第2歪みゲージが位置していた箇所にそれら第1歪みゲージが位置する関係となるように配置されている特徴A1乃至特徴A6のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0136】
本特徴に示すように、3ローブ型の波動歯車装置の場合には、第1歪みゲージの角度位置と第2歪みゲージの角度位置とを120°ずらした配置とすることにより、第1信号の波形と第2信号の波形とを揃えやすくなる。これは、第1信号と第2信号との比較を簡易とする上で好ましい。
【0137】
特徴A11.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)を備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心を囲むようにして配列されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えているトルク検出装置。
【0138】
本特徴に示すトルク検出装置によれば、出力信号にノイズが印加された場合には、第1信号と第2信号との比較によって当該ノイズを把握可能となり、回転リップルの抑制とノイズ耐性の強化に寄与できる。
【0139】
<特徴B群>
以下の特徴B群は、「工場等で用いられる産業用ロボット等の産業機器には、減速機として波動歯車装置が搭載されているものがある。波動歯車装置は、剛性内歯歯車と、その内側に配置された可撓性外歯歯車と、可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせるとともに噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(波動発生器)とで構成されている。近年では産業機器や作業者の保護等の観点から、例えば運転時にトルクを監視し、過度に大きなトルクが発生した場合には減速や停止等の制御を行うように構成されたものがあり、波動歯車装置が搭載された産業機器においては、例えば可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号に基づいてトルクを検出するといった対応が講じられている。但し、可撓性外歯歯車においては波動歯車装置の構造上、剛性カムの回動によって伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージをからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化することとなる。このような出力信号の変化、すなわちトルク検出にて誤差の要因となる成分(所謂回転リップル)を抑制すべく、複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成するといった技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。」という背景技術について、「可撓性外歯歯車は剛性カムの回動により繰り返し変形する。このように変形が繰り返されることで歪みゲージの劣化が進み、歪みゲージが故障する可能性がある。歪みゲージの故障は産業機器の安全性を低下させる要因となるため好ましくない。このような事情に鑑みて、本願の発明者は、歪みゲージを複数のグループに分けて、グループ毎に合成した出力信号を比較する技術を考案した。仮に何れかのグループに属する歪みゲージが故障した場合には、合成された出力信号の相関関係が崩れる等するため出力信号の比較によって当該故障が発生した旨を把握することができる。これにより、歪みゲージの故障に起因した産業機器の安全性の低下を抑制できる。しかしながら、波動歯車装置においては、剛性カムの形状(楕円、三角形、四角形等)によって複数個所で同時に大きな歪みが発生する。大きな歪みが同時に発生する箇所に配置された各歪みゲージについては同じような態様で劣化が進む可能性が高くなり、同じタイミングで故障する可能性も高くなる。仮に、合成された出力信号に故障の結果が各々反映されると、それら出力信号を比較しても当該故障の発見は困難になると懸念される。つまり、波動歯車装置においては回転リップルの抑制と産業機器の安全性の向上とを図る上でトルク検出に係る構成に未だ改善の余地がある。」という課題等に鑑みてなされたものである。
【0140】
特徴B1.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)と、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置(トルク検出センサ36及びロボットコントローラ42)とを備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記トルク検出装置にて検出したトルクに応じて前記産業機器を制御する産業機器用制御システム(制御システム40)であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数(例えば3つ)の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数(例えば3つ)の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心(中心軸線CL)を囲むようにして配列されており、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心及び前記第1歪みゲージを結ぶ各仮想直線(例えば仮想直線L1A,L1B,L1C)と前記回動中心及び各前記第2歪みゲージを結ぶ各仮想直線(例えば仮想直線L2A,L2B,L2C)とのなす角が何れも、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍とならないようにして配置されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えている産業機器用制御システム。
【0141】
本特徴に示す波動歯車装置においては、剛性カムが回動することで、可撓性外歯歯車に伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化する。複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成する構成とすることは、トルク検出の誤差要因となる回転リップルを抑制する上で好ましい。
【0142】
ここで、可撓性外歯歯車は剛性カムの回動により繰り返し変形する。このように変形が繰り返されることで歪みゲージの劣化が進み、歪みゲージが故障する可能性がある。歪みゲージの故障は産業機器の安全性を低下させる要因となるため好ましくない。この点、本特徴に示す構成では、歪みゲージを複数のグループに分けて、グループ毎に合成した出力信号同士を比較する。仮に何れかのグループに属する歪みゲージが故障した場合には、合成された出力信号の相関関係が崩れる等するため出力信号の比較によって当該故障が発生した旨を把握することができる。これにより、歪みゲージの故障に起因した産業機器の安全性の低下を抑制できる。
【0143】
但し、波動歯車装置においては、剛性カムの形状(楕円、三角形、四角形等)によって複数個所で同時に大きな歪みが発生する。大きな歪みが同時に発生する箇所に配置された各歪みゲージについては同じような態様で劣化が進む可能性が高くなり、同じタイミングで故障する可能性も高くなる。仮に、合成された出力信号に故障の結果が各々反映されると、それら出力信号を比較しても当該故障の発見は困難になると懸念される。この点、本特徴においては、第1歪みゲージ及び第2歪みゲージを、回動中心及び第1歪みゲージを結ぶ各仮想直線と回動中心及び第2歪みゲージを結ぶ各仮想直線とのなす角が何れも、波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度の整数倍とならないようにして配置することで、すなわち両グループの歪みゲージに同じ態様で大きな歪みの影響が及ばないように配慮することで、第1歪みゲージと第2歪みゲージとが同時に故障する可能性を引き下げている。以上の通り、本特徴に示す構成によれば、回転リップルの抑制と安全性の向上とに寄与できる。
【0144】
なお、本特徴に示す「波動歯車装置」に係る記載を「可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)を楕円状に撓めて剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)に対して部分的に噛み合わせ、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させることにより、それら両歯車の歯数差に起因する相対回転をそれら可撓性外歯歯車及び剛性内歯歯車の間に発生させる波動歯車装置(波動歯車装置35)」とすることも可能である。
【0145】
因みに、「前記比較部による比較結果が異常に対応した結果となった場合に異常処理(例えば信号の無効化や異常報知等の処理)を行う」構成とするとよい。
【0146】
特徴B2.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)と、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置(トルク検出センサ36及びロボットコントローラ42)とを備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記トルク検出装置にて検出したトルクに応じて前記産業機器を制御する産業機器用制御システム(制御システム40)であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数(例えば3つ)の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数(例えば3つ)の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心(中心軸線CL)を囲むようにして配列されており、
前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とする当該第2歪みゲージの角度位置を、前記回動中心を中心として前記円周方向に、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍ずらした場合に、何れの前記第1歪みゲージとも同じ角度位置とならないように配置されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えている産業機器用制御システム。
【0147】
本特徴に示す波動歯車装置においては、剛性カムが回動することで、可撓性外歯歯車に伝達トルクとは関係のない歪みが周期的に発生する。このため、可撓性外歯歯車に取り付けた歪みゲージからの出力信号は、剛性カムの回動角度に応じて振幅が正弦波状に変化する。複数の歪みゲージを併用し、それら歪みゲージからの出力信号を合成する構成とすることは、トルク検出の誤差要因となる回転リップルを抑制する上で好ましい。
【0148】
ここで、可撓性外歯歯車は剛性カムの回動により繰り返し変形する。このように変形が繰り返されることで歪みゲージの劣化が進み、歪みゲージが故障する可能性がある。歪みゲージの故障は産業機器の安全性を低下させる要因となるため好ましくない。この点、本特徴に示す構成では、歪みゲージを複数のグループに分けて、グループ毎に合成した出力信号同士を比較する。仮に何れかのグループに属する歪みゲージが故障した場合には、合成された出力信号の相関関係が崩れる等するため出力信号の比較によって当該故障が発生した旨を把握することができる。これにより、歪みゲージの故障に起因した産業機器の安全性の低下を抑制できる。但し、波動歯車装置においては、剛性カムの形状(楕円、三角形、四角形等)によって複数個所で同時に大きな歪みが発生する。大きな歪みが同時に発生する箇所に配置された各歪みゲージについては同じような態様で劣化が進む可能性が高くなり、同じタイミングで故障する可能性も高くなる。仮に、合成された出力信号に故障の結果が各々反映されると、それら出力信号を比較しても当該故障の発見は困難になると懸念される。この点、本特徴においては、第2歪みゲージを、回動中心を中心とする当該第2歪みゲージの角度位置を、回動中心を中心として円周方向に、波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度の整数倍ずらした場合に、何れの第1歪みゲージとも同じ角度位置とならないように配置することで、すなわち両グループの歪みゲージに同じ態様で大きな歪みの影響が及ばないように配慮することで、第1歪みゲージと第2歪みゲージとが同時に故障する可能性を引き下げている。以上の通り、本特徴に示す構成によれば、回転リップルの抑制と安全性の向上とに寄与できる。
【0149】
因みに、「前記比較部による比較結果が異常に対応した結果となった場合に異常処理(例えば信号の無効化や異常報知等の処理)を行う」構成とするとよい。
【0150】
特徴B3.前記比較部による比較結果が異常非発生に対応する結果となった場合には、前記第1信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出し、検出した当該トルクに応じて前記産業機器を制御する特徴B1乃至特徴B3のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0151】
第1信号と第2信号との比較後は、第1信号をそのままトルク検出に用いる構成とすることにより、検出したトルクに応じた制御(産業機器の減速や停止)が実行されるまでの期間の間延びを抑制できる。
【0152】
特徴B4.前記第1歪みゲージ同士の位置関係は、それら第1歪みゲージからの出力信号を合成した前記第1信号の値が一定又は略一定となるように規定されており、前記第2歪みゲージ同士の位置関係は、それら第2歪みゲージからの出力信号を合成した前記第2信号の値が一定又は略一定となるように規定されている特徴B1乃至特徴B3のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0153】
本特徴に示す構成によれば、第1信号と第2信号は比較のタイミングによらず値が一定又は略一定となるため、簡易な比較によって故障の確認が可能となる。例えば、剛性カムの回動角度毎に両信号の相関を記憶していなくてもよいため、比較に係る構成の簡素化に寄与できる。
【0154】
特徴B5.前記可撓性外歯歯車は、外周面に前記外歯が形成された円筒状の本体部(歯車主部71)と、前記本体部の一端に形成された環状のフランジ部(フランジ部72)とを有してなり、
前記フランジ部には、前記産業機器への取付部(ボルト孔77や位置決め孔78)が複数形成されており、前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記フランジ部に取り付けられている特徴B1乃至特徴B4のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0155】
特徴B1等に示した配置によれば、歪みゲージの配置自由度は高くなる。このため、本特徴に示すように、当該歪みゲージを産業用機器への取付部が形成されたフランジ部に取り付けてもそれら取付部と歪みゲージ(付属のリード線等を含む)とを好適に共存させることができる。これは、併用する歪みゲージが多くなる場合に好ましい。なお、フランジ部は、本体部の内側に凸となるようにして形成してもよいし、本体部の外側に凸となるようにして形成してもよい。
【0156】
特徴B6.前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とする仮想円(仮想円FC)上に配置されており、
前記第2歪みゲージ同士の位置関係は、前記第1歪みゲージ同士の位置関係と同じ位置関係となっている特徴B1乃至特徴B5のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0157】
本特徴に示すように、第1歪みゲージと第2歪みゲージとを同一仮想円上に配置した上で、第1歪みゲージ同士の位置関係と第2歪みゲージ同士の位置関係とを揃えることにより、第1信号の波形と第2信号との波形との差違を小さくすることができる。これは、第1信号と第2信号との相関が複雑になることを抑制して、両信号の比較の簡易化を図る上で好ましい。
【0158】
特徴B7.前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とする仮想円(仮想円FC)上に配置されており、
前記第1歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置され、前記第2歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置されている特徴B1乃至特徴B6のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0159】
第1歪みゲージを円周方向にて互いに等間隔となるように配置することにより、それら第1歪みゲージからの出力信号を合成した第1信号の回転リップルが抑制され、当該第1信号の振幅を小さくすることができる。同様に、第2歪みゲージを円周方向にて互いに等間隔となるように配置することにより、それら第2歪みゲージからの出力信号を合成した第2信号の回転リップルが抑制され、当該第2信号の振幅を小さくすることができる。これにより、比較のタイミングによって第1信号の波形と第2信号の波形との差違が大きく変動することを抑制できる。これは、比較時の判定基準の統一等によって簡易な比較処理を実現する上で好ましい。
【0160】
特徴B8.前記波動歯車装置は、前記剛性カムが楕円形をなす2ローブ型の波動歯車装置であり、
3つの前記第1歪みゲージ及び3つの前記第2歪みゲージが、前記回動中心を中心とする仮想円(仮想円FC)上に配置されており、
前記第1歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置され、前記第2歪みゲージは前記円周方向にて互いに等間隔となるように配置されている特徴B1乃至特徴B7のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0161】
2ローブ型の波動歯車装置においては、本特徴に示すように第1歪みゲージ及び第2歪みゲージを各々3つとし、それら第1歪みゲージを円周方向にて互いに等間隔となるように且つ第2歪みゲージを円周方向にて互いに等間隔となるように配置するとよい。これにより、第1歪みゲージからの出力信号を合成した第1信号の回転リップルが抑制され、当該第1信号の振幅を小さくすることができる。また、第2歪みゲージからの出力信号を合成した第2信号の回転リップルが抑制され、当該第2信号の振幅を小さくすることができる。これにより、比較のタイミングによって第1信号の波形と第2信号の波形との差違が大きく変動することを抑制できる。これは、比較時の判定基準の統一等によって簡易な比較処理を実現する上で好ましい。
【0162】
特徴B9.前記第1歪みゲージからの出力信号を合成した前記第1信号と前記第2歪みゲージからの出力信号を合成した前記第2信号との相関が前記剛性カムの回動に応じて周期的に変化する構成となっており、前記相関を示す相関情報が前記剛性カムの回動角度に応じて設定されており、
前記比較部は、現在の前記剛性カムの回動角度に応じた前記相関情報に基づいて前記第1信号と前記第2信号とを比較する特徴B1乃至特徴B8のいずれか1つに記載の産業機器用制御システム。
【0163】
本特徴に示すように、第1信号と第2信号との相関情報を剛性カムの回動角度に応じて記憶しておくことにより、比較機能を担保しつつも第1歪みゲージ及び第2歪みゲージの配置自由度を向上させることができる。これは、特徴B5に示したように、既存の構成と歪みゲージ(付属のリード線を含む)との共存を図る上で好ましい。
【0164】
特徴B10.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)を備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数(例えば3つ)の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数(例えば3つ)の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心(中心軸線CL)を囲むようにして配列されており、
前記第1歪みゲージ及び前記第2歪みゲージは、前記回動中心及び前記第1歪みゲージを結ぶ各仮想直線(例えば仮想直線L1A,L1B,L1C)と前記回動中心及び各前記第2歪みゲージを結ぶ各仮想直線(例えば仮想直線L2A,L2B,L2C)とのなす角が何れも、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍とならないようにして配置されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えているトルク検出装置。
【0165】
本特徴に示すトルク検出装置によれば、回転リップルの抑制と産業機器の安全性の向上とに寄与できる。
【0166】
特徴B11.内周面に内歯(内歯61)が形成された環状の剛性内歯歯車(剛性内歯歯車60)と、前記剛性内歯歯車の内側に配置され、前記内歯に噛み合い可能な外歯(外歯73)が形成された可撓性外歯歯車(可撓性外歯歯車70)と、前記可撓性外歯歯車の内側に設けられ、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓ませることにより前記外歯を前記内歯に部分的に噛み合わせるとともに前記剛性内歯歯車と前記可撓性外歯歯車との噛み合い位置を円周方向に移動させる剛性カム(剛性カム85)とを有する波動歯車装置(波動歯車装置35)を備えた産業機器(ロボット15)に適用され、前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージからの出力信号に基づいて前記波動歯車装置に生じるトルクを検出するトルク検出装置であって、
前記可撓性外歯歯車に取り付けられた歪みゲージは、複数(例えば3つ)の第1歪みゲージ(第1歪みゲージ91)と複数(例えば3つ)の第2歪みゲージ(第2歪みゲージ92)とで構成されており、それら第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが前記可撓性外歯歯車の回動中心(中心軸線CL)を囲むようにして配列されており、
前記第2歪みゲージは、前記回動中心を中心とする当該第2歪みゲージの角度位置を、前記回動中心を中心として前記円周方向に、前記波動歯車装置のローブ数で360°を割った角度である基準角度(例えば2ローブの場合には180°、3ローブの場合には120°)の整数倍ずらした場合に、何れの前記第1歪みゲージとも同じ角度位置とならないように配置されており、
前記複数の第1歪みゲージからの出力信号を合成して第1信号を生成し、前記複数の第2歪みゲージからの出力信号を合成して第2信号を生成する合成部(合成部96c,97c)と、
前記第1信号及び前記第2信号を比較する比較部(ロボットコントローラ42における比較機能)と
を備えている産業機器用制御システム。
【0167】
本特徴に示すトルク検出装置によれば、回転リップルの抑制と産業機器の安全性の向上とに寄与できる。
【符号の説明】
【0168】
10…ロボットシステム、15…産業機器としてのロボット、21…ロボット本体、35…波動歯車装置、36…トルク検出センサ、40…制御システム、42…ロボットコントローラ、51…制御部、52…入出力部、60…剛性内歯歯車、61…内歯、70…可撓性外歯歯車、71…歯車主部、72…フランジ部、73…外歯、77…ボルト孔、78…位置決め孔、80…波動発生器、81…ウェーブベアリング、85…剛性カム、91(91A~91C)…第1歪みゲージ、92(92A~92C)…第2歪みゲージ、96…第1検出器、96c…合成部、97…第2検出器、97c…合成部、CL…中心軸線、G1…第1グループ、G2…第2グループ、FL…仮想円、L1A,L1B,L2A,L2B…仮想直線。