(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120747
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240829BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01F37/00 J
H01F37/00 E
H01F37/00 M
H01F27/32 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027763
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓実
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044AA02
5E044AD02
5E044CA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リアクトル本体を安定した状態で把持でき、リアクトル本体をケースに収容する作業を効率良く行うことができるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル10は、リアクトル本体1と、ケース7を備える。リアクトル本体1は、脚部21と、ヨーク部22を有するコア2と、コイル3と、コア2の周囲を被覆する樹脂部材4と、有する。樹脂部材4は、ヨーク部22の上面を被覆する上面被覆部421と、上面被覆部421に設けられた把持部5と、を有する。把持部5は、上面被覆部421から垂直に立ち上がり、対向して配置される一対の短壁51と、上面被覆部421から短壁51の高さまで垂直に立ち上がり、両端部がコイルに近い位置に配置する一対の短壁51の各端部と連接している長壁52と、一対の短壁51の上端及び長壁52の上端と連接し、上面被覆部421と対向する庇部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトル本体と、
前記リアクトル本体を収容するケースを備え、
前記リアクトル本体は、
複数の脚部と、前記複数の脚部を繋ぐ一対のヨーク部を有するコアと、
前記脚部に装着されるコイルと、
前記コアの周囲を被覆する樹脂部材と、
を有し、
前記樹脂部材は、
前記ヨーク部の上面を被覆する上面被覆部と、
前記上面被覆部に設けられた把持部と、
を有し、
前記把持部は、
前記上面被覆部から垂直に立ち上がり、対向して配置される一対の短壁と、
前記上面被覆部から前記短壁の高さまで垂直に立ち上がり、両端部が前記コイルに近い位置に配置する前記一対の短壁の各端部と連接している長壁と、
前記一対の短壁の上端及び前記長壁の上端と連接し、前記上面被覆部と対向する庇部と、
を有すること、
を特徴するリアクトル。
【請求項2】
前記把持部は、前記上面被覆部の前記コイルの巻軸方向の中央部分よりコイル側に配置されていること、
を特徴する請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
モールド成型により前記コアを前記樹脂部材で被覆したモールドコアを備え、
前記樹脂部材には、前記モールド成型時に樹脂が注入された位置を示す注入痕が形成されており、
前記把持部は、少なくともどちらか一方の前記上面被覆部には2つ設けられており、
前記2つの把持部は、それぞれの前記短壁が対向するように配置され、
前記注入痕は、前記2つの把持部の間に設けられていること、
を特徴する請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
モールド成型により前記コアを前記樹脂部材で被覆したモールドコアを備え、
前記樹脂部材には、前記モールド成型時に樹脂が注入された位置を示す注入痕が形成されており、
前記把持部は、前記上面被覆部の巻軸方向の中央部分より前記コイルから離れる側に設けられ、
前記注入痕は、前記把持部と前記コイルの間に設けられていること、
を特徴する請求項1に記載のリアクトル。
【請求項5】
モールド成型により前記コアを前記樹脂部材で被覆したモールドコアを備え、
前記樹脂部材には、前記モールド成型時に樹脂が注入された位置を示す注入痕が複数形成されており、
前記把持部は、3つ設けられ、一方の前記上面被覆部に設けられた第1の把持部と、他方の前記上面被覆部に設けられた第2の把持部を有し、
前記第1の把持部は、前記上面被覆部の巻軸方向の中央部分より前記コイルから離れる側に設けられ、
前記注入痕は、前記第1の把持部と前記コイルの間に設けられ、
前記第2の把持部は、前記上面被覆部の巻軸方向の中央部分よりコイル側に、それぞれの前記短壁が対向するように配置され、
前記注入痕は、2つの前記第2の把持部の間に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースにリアクトル本体を収容するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源など様々な用途にリアクトルが用いられている。リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。リアクトルは、リアクトル本体を備える。
【0003】
リアクトル本体は、コアとコイルと樹脂部材を備える。コアは磁性体であり、環形状を有する。コイルは、コアに装着され、樹脂部材は、コアとコイル間に設けられ、コアとコイルを絶縁する。コイルは外部機器と電気的に接続するバスバーと溶接等により接続している。外部機器からバスバーを介してコイルに電力が供給され、コイルが磁束を発生させる。コアは、コイルが発生させた磁束を通す磁路となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルはケースを更に備え、このようなリアクトル本体は、ケースに収容されることがある。この場合、例えば、リアクトル本体の四隅を把持し、ケースの収容スペースに収容し、リアクトル本体の固定部とケースの固定部を重ね合わせ、その後、ボルト等の固定具でリアクトル本体をケースに固定する。この収容作業のときに、リアクトル本体を安定した状態で把持できずリアクトル本体が回転するなどすると、リアクトル本体の固定部とケースの固定部を重ね合わせ難く、収容作業の効率が悪い。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リアクトル本体を安定した状態で把持でき、リアクトル本体をケースに収容する作業を効率良く行うことができるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリアクトルは、リアクトル本体と、前記リアクトル本体を収容するケースを備え、前記リアクトル本体は、複数の脚部と、前記複数の脚部を繋ぐ一対のヨーク部を有するコアと、前記脚部に装着されるコイルと、前記コアの周囲を被覆する樹脂部材と、を有し、前記樹脂部材は、前記ヨーク部の上面を被覆する上面被覆部と、前記上面被覆部に設けられた把持部と、を有し、前記把持部は、前記上面被覆部から垂直に立ち上がり、対向して配置される一対の短壁と、前記上面被覆部から前記短壁の高さまで垂直に立ち上がり、両端部が前記コイルに近い位置に配置する前記一対の短壁の各端部と連接している長壁と、前記一対の短壁の上端及び前記長壁の上端と連接し、前記上面被覆部と対向する庇部と、を有すること、を特徴する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リアクトル本体を安定した状態で把持でき、リアクトル本体をケースに収容する作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のリアクトル本体をケースに収容した状態のリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態のリアクトル本体をケースに収容する前の状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態のリアクトル本体を分解した斜視図である。
【
図5】実施形態の把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。
【
図6】変形例1のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。
【
図7】変形例2のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。
【
図8】変形例3のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係るリアクトルについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は、リアクトル本体をケースに収容した状態のリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図2は、リアクトル本体をケースに収容する前の状態を示す斜視図である。なお、各図面においては、理解容易のため、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合や構成部材を省略している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0011】
リアクトル10は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等をはじめ、OA機器、太陽光発電システム、無停電電源といった各種の分野で使用されている。
【0012】
リアクトル10は、
図1や
図2に示すように、リアクトル本体1、端子台6及びケース7を備える。リアクトル10は、リアクトル本体1をケース7に収容・固定し、また、端子台6をケース7に固定することで形成される。リアクトル本体1は、コア2、コイル3及び樹脂部材4を有する。
【0013】
コア2は、磁性体から成り、後述するコイル3が発生させた磁束が流れる磁路となる。コア2は、圧粉磁心、フェライト磁心、積層鋼板、又はメタルコンポジットコア等を用いることができる。メタルコンポジットコアとは、磁性粉末と樹脂とが混練され、樹脂が硬化されて成る磁性体である。
【0014】
コア2は、コイル3が装着される直線状に延びる一対の脚部21と、一対の脚部を繋ぐヨーク部22から成る。一対の脚部21は、延び方向が巻軸方向と平行になるように横並びに配置される。この脚部の横並び方向を幅方向とも称する。コア2は、2つのU字型コア部材から成る。コア2は、この2つのU字型コア部材の互いの端面を接合することで、環状形状の閉磁路と成る。
【0015】
本実施形態では、U字型コア部材の互いの端面の間にスペーサ23が設けられている。スペーサ23を設けることで磁気的なギャップが生じる。スペーサ23はU字型コア部材の端面と略同一の大きさである。スペーサ23は平板状の部材である。スペーサとしては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら2種以上の合成材又はギャップ紙を用いることができる。なお、スペーサ23を用いず、エアギャップを設けてもよいし、ギャップを設けることなく、U字型コア部材を直接接着剤等で接着してもよい。
【0016】
コイル3は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の導電性部材により構成される。コイル3は、巻き位置を巻軸方向にずらしながら導電性部材を筒状に巻回して成る。コイル3は、2つ設けられている。各コイル3は、コア2の脚部21にそれぞれ装着されている。即ち、コイル3は、巻軸方向が平行となるように隣接して配置されている。コイル3は、2つのコイル3が連結部31によって繋がって形成された連結コイルである。
【0017】
コイル3は、引出線32を有する。引出線32は、巻軸方向と直交するコイル3の一方端面から巻軸方向と平行にリアクトル本体1の外側に向けて延びている。引出線32は、外部機器と電気的に接続されるバスバー62と接続している。外部機器から電力が供給されると、コイル3に電流が流れ、磁束が発生し、コア2内に磁束が流れ、閉じた磁気回路が形成される。
【0018】
樹脂部材4は、樹脂から成る。樹脂部材4の樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合を挙げることができる。また、樹脂部材4の樹脂として、例えば、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いてもよい。なお、樹脂に熱伝導性のフィラーを混ぜてもよい。
【0019】
樹脂部材4は、コア2の周囲を被覆する。より詳細には、樹脂部材4は、モールド成型によってコア2を被覆する。即ち、コア2と樹脂部材4はモールドコアとして形成される。樹脂部材4は、脚部21を被覆する脚部被覆部41と、ヨーク部22を被覆するヨーク被覆部42を有する。脚部被覆部41は、脚部21とコイル3の内周面の間に設けられ、コア2とコイル3を絶縁する。ヨーク被覆部42は、ヨーク部22の上面を被覆する上面被覆部421を有する。上下方向とは、ケース7の底面71と直交する方向を指し、底面71に近づく方向が下、底面71から離れる方向が上である。即ち、ヨーク部22の上面とは、ケース7の底面71と対向するヨーク部22の端面と反対側の面である。なお、上下方向は高さ方向とも称する。
【0020】
図3は、リアクトル本体を分解した斜視図である。なお、
図3では、説明の都合上コイル3を除いて図示している。樹脂部材4は、
図3に示すように、樹脂体43、44から成り、2分割となっている。樹脂体43、44は、各U字型コア部材をそれぞれ被覆している。リアクトル本体1がケース7に収容された際、樹脂体43が端子台6と対向する位置(端子台6に近い位置)に配置される。
【0021】
なお、樹脂部材4は、リアクトル本体1をケース7に固定する固定部45を有する。固定部45は、リアクトル本体1の四隅のうち、3か所に設けられているが、固定部45の配置箇所や個数はこれに限定されるものではない。
【0022】
樹脂部材4は、把持部5を有する。把持部5は、コア2を樹脂部材4で被覆させるモールド成型を行うときに形成される。把持部5は、上面被覆部421に設けられている。把持部5は合計3つ設けられており、樹脂体43に1つ、樹脂体44に2つ設けられている。なお、樹脂体43に設けられている把持部5を把持部5a、樹脂体44に設けられている把持部5を把持部5bと称し、区別しない場合には把持部5を称する。
【0023】
図4は、把持部の拡大斜視図である。
図4では、把持部5aを拡大した図となっている。把持部5は、短壁51、長壁52及び庇部53を有する。短壁51は、上面被覆部421から垂直に延びる。短壁51は、一対設けられている。一対の短壁51は、幅広面がコイル3の巻軸と並行になるように対向に配置されている。なお、把持部5aの一対の短壁51は、把持部5bの一対の短壁51よりも対向する間の長さが長くなるように配置されている。
【0024】
長壁52は、上面被覆部421から垂直に短壁51の高さまで延びる。長壁52は、一対の短壁51の間に設けられている。長壁52は、幅広面がコイル3の巻軸と直交するように配置されている。長壁52の一端は、一対の短壁51の一方の端部と継ぎ目無く繋がり、他端は一対の短壁51の他方の端部と継ぎ目無く繋がっている。長壁52は、コイル3側に位置する短壁51の端部と繋がっている。即ち、長壁52及び一対の短壁51は連接しており、上下方向から見ると、概略コの字形状となっている。つまり、長壁52と対向する部分、即ち、長壁52と繋がっていない一対の短壁51の端部間は開口している。なお、把持部5aの長壁52は、幅方向の長さが把持部5bの長壁52よりも長い。
【0025】
庇部53は、長板状の部材で、上面被覆部421と対向している。庇部53の上面被覆部421と対向する面は平坦面である。庇部53は、短壁51及び長壁52の上端と継ぎ目なく繋がっている。一対の短壁51、長壁52、庇部53及び上面被覆部421で囲われたスペースに開口部分から作業者の指やロボットのアーム等が挿入される。一対の短壁51及び長壁52は、少なくとも作業者の指やロボットのアームが挿入できる程度の高さまで上面被覆部421から延びている。
【0026】
図5は、把持部5a、5bと注入痕Mの位置関係を示す概略模式図である。注入痕Mとは、モールド成型時に樹脂が注入されるゲートの位置を示すものである。把持部5aは、上面被覆部421の幅方向の中央部分、かつ、上面被覆部421の巻軸方向の外側に配置される。把持部5aの短壁51の長壁52と繋がっていない端部は、上面被覆部421の縁に配置される。注入痕Mは、上面被覆部421上に把持部5aよりもコイル3側に設けられている。即ち、注入痕Mは、把持部5aとコイル3の間に設けられている。
【0027】
樹脂体44に設けられた2つの把持部5bは、上面被覆部421の幅方向の中央部分から等間隔離れて配置される。2つの把持部5bは、幅方向に横並びに配置され、短壁51が対向している。把持部5a及び2つの把持部5bを直線で結ぶと2等辺三角形のような形になる。把持部5a及び2つの把持部5bでリアクトル本体1の重心を囲っている。注入痕Mは、上面被覆部421の幅方向の中央部分に配置され、2つの把持部5bに挟まれている。
【0028】
把持部5bは、上面被覆部421の内側に配置される。即ち、把持部5bは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3側に配置される。本実施形態では、把持部5bの長壁52が、脚部21とヨーク部22の境界線上に配置される。より具体的には、樹脂部材4は、脚部被覆部41とヨーク被覆部42の境界線上に鍔部46(
図3参照)が設けられており、把持部5bの長壁52の一部は、鍔部46としても構成されている。
【0029】
端子台6は、
図1、
図2に示すように、バスバー62を固定する部材である。この端子台6には、2つのバスバー62が固定されている。端子台6は、ケース7の側壁72の外側に側壁72と対向するように設けられている。端子台6はモールド成型によって形成される。端子台6は、樹脂部61、バスバー62及び固定部63を有する。
【0030】
樹脂部61は、樹脂が固化した部材である。樹脂部61を構成する樹脂としては、樹脂部材4と同様の種類のものを用いることができる。樹脂部61は、バスバー62の一部を被覆する。バスバー62は、導電性部材から成る。バスバー62の両端部は樹脂部61から露出しており、バスバー62の一方端部はコイル3の引出線32と接続し、他方端部は外部機器の端子(不図示)と接続する。固定部63は、端子台6をケース7に固定する部材である。固定部63は、2つ設けられ、端子台6の端部にそれぞれ形成されている。
【0031】
ケース7は、リアクトル本体1を収容する部材である。ケース7は、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されている。ケース7は、底面71、側壁72、リアクトル本体固定部73及び端子台固定部74を有する。
【0032】
底面71は、長方形状である。底面71はリアクトル本体1及び端子台6を配置できる大きさを有する。側壁72は、底面71から垂直に延びる。側壁72は4つ設けられている。4つの側壁72は、連接しており、底面71及び4つ側壁72で囲われたスペースがリアクトル本体1の収容スペースとなる。底面71と対向する面は開口しており、この開口部分からリアクトル本体1をケース7に収容する。なお、この収容スペースにはリアクトル本体1のみが収容され、端子台6はこの収容スペースの外に側壁72の外面と対向するように配置される。
【0033】
なお、側壁72のうち、端子台6と対向する側壁72は、他の側壁72よりも高さが低い。より詳細には、端子台6と対向する側壁72の上端は、把持部5aの庇部53よりも低い位置に形成されている。これは、コイル3の引出線32をバスバー62に向けて引き出すためである。そのため、引出線32を引き出す際に邪魔にならないのであれば、4つの側壁72は全て高さを揃えてもよい。
【0034】
リアクトル本体固定部73は、リアクトル本体1を収容スペースに固定する。リアクトル本体固定部73は、側壁72に囲まれた収容スペース内に設けられている。リアクトル本体固定部73は、収容スペースの角部のリアクトル本体1の固定部45の対応する位置に配置される。リアクトル本体固定部73に固定部45を重ね合わせ、ボルト等の固定具で締結することでリアクトル本体1はケース7に固定される。
【0035】
端子台固定部74は、端子台6を固定する。端子台固定部74は、2つ設けられている。端子台固定部74は、高さが低い側壁72の外側(収容スペースとは反対側)に設けられている。端子台固定部74には、2つの穴が設けられている。一方の穴は、端子台6の突起を挿入し、端子台6の位置を規制する役割を果たす。もう一方の穴は、端子台6の固定部63と重ね合わされ、ボルト等の固定具で締結して端子台6をケース7に固定する役割を果たす。
【0036】
(作用)
次に、作業者が手作業でリアクトル本体1をケースに収容する工程について説明する。作業者は片手でリアクトル本体1を持つ。例えば、作業者の親指を把持部5aに挿入し、把持部5bに中指と薬指をそれぞれ挿入する。把持部5aと2つの把持部5bでリアクトル本体1の重心を囲っているので、作業者は、リアクトル本体1を安定した状態で持つことができる。
【0037】
作業者は、リアクトル本体1を把持し、ケース7のリアクトル本体固定部73にリアクトル本体1の固定部45が重なるように、ケース7にリアクトル本体1を収容する。この時、把持部5bは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3側に配置されるので、作業者の手がケース7の側壁72に当たることなくスムーズにリアクトル本体1をケース7に収容できる。
【0038】
(効果)
本実施形態のリアクトル10は、リアクトル本体1と、リアクトル本体1を収容するケース7を備える。リアクトル本体1は、複数の脚部21と、複数の脚部21を繋ぐ一対のヨーク部22を有するコア2と、脚部21に装着されるコイル3と、コア2の周囲を被覆する樹脂部材4と、を有する。樹脂部材4は、ヨーク部22の上面を被覆する上面被覆部421と、上面被覆部421に設けられた把持部5a、5bと、を有する。把持部5a、5bは、上面被覆部421から垂直に立ち上がり、対向して配置される一対の短壁51と、上面被覆部421から短壁51の高さまで垂直に立ち上がり、コイル3に近い位置に配置する一対の短壁51の各端部と両端部が連接している長壁52と、一対の短壁51の上端及び長壁52の上端と連接し、上面被覆部431と対向する庇部53と、を有する。
【0039】
これにより、作業者は、把持部5a、5bに指を入れてリアクトル本体1を安定して把持することができるので、容易にリアクトル本体1をケース7に収容することができ、リアクトル10の生産性が向上する。
【0040】
特に、把持部5a及び2つの把持部5bの位置を直線で結ぶと2等辺三角形のような形になり、把持部5a及び2つの把持部5bでリアクトル本体1の重心を囲っている。そのため、作業者はバランス良く安定した状態でリアクトル本体1を把持することができ、よりスムーズに収容作業を行うことができる。
【0041】
把持部5aの長壁52は、把持部5bの長壁52よりも幅方向の長さが長い。上記では、把持部5aに親指を、把持部5bに中指と薬指を挿入して作業者が把持するとしたが、作業者によって、人差し指と中指を入れる場合や右利き、左利きの関係で、把持部5aに挿入する親指の位置が若干異なる可能性もある。しかし、把持部5aの長壁52の長さを長くすることで、どの作業者が行ったとしても安定してリアクトル本体1を把持することができる。
【0042】
また、把持部5a、5bは、一対の短壁51を有し、短壁51は、幅広面が巻軸と並行に配置されている。そのため、作業者がリアクトル本体1を把持したとき、幅方向の位置を規制できる。よって、作業者がリアクトル本体1を把持しているときに、リアクトル本体1が幅方向に移動したとしても、作業者はリアクトル本体1を落とすことなく、把持することができ、収容作業を継続して行うことができる。
【0043】
さらに、把持部5a、5bは巻軸と直交する長壁52を有する。把持部5a、5bが長壁52を有することで、作業者が把持部5a、5bに指を挿入しても把持部5a、5bから突き出ることがない。特に、把持部5bは、コイル3に近接しており、長壁52を有していない場合、指が把持部5bから突き出し、コイル3に衝突し、コイル3を損傷させる虞がある。そのため、長壁52を構成することで、指がコイル3等の他の構成部材と衝突して損傷させることを防止できる。
【0044】
把持部5bは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3側に配置されている。そして、把持部5bが設けられているヨーク部22と対向するケース7の側壁72は、把持部5bの庇部53の上面よりも高い。このような場合、仮に、把持部5が、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分より側壁72側に配置していると、リアクトル本体1をケース7に収容する際に、作業者の手がケース7の側壁72に接触してしまい、収容作業がスムーズにいかない可能性がある。しかし、本実施形態のように、把持部5bを上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3側、特に、把持部5bの長壁52を脚部21とヨーク部22の境界線上に配置することで、リアクトル本体1の上下方向の投影領域内で収容作業を行うことができるので、側壁72に作業者の手が接触することを防止できる。
【0045】
把持部5aは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3から離れる側に設けられ、注入痕Mは、把持部5aとコイル3の間に設けられている。また、2つ設けられた把持部5bは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3側に、それぞれの短壁51が対向するように配置され、注入痕Mは、把持部5bの間に設けられている。
【0046】
モールド成型で把持部5a、5bを形成させる場合、巻軸方向に沿ってスライドを金型内に挿入する。このとき、スライド上にゲートが位置する、即ち、スライドの上方から樹脂が注入されると、スライドに直接樹脂の射出圧がかかり、スライドの位置ずれて把持部5a、5bの成型性や樹脂の流動性が悪化する虞がある。しかし、本実施形態では、把持部5a、5bとゲートをバランス良く配置しているので、スライドを挿入する位置にゲートが形成されない。よって、スライドの位置ずれを防止でき、精度良く把持部5a、5bが形成できるとともに、流動性の悪化も防止できるので、金型内の隅々まで樹脂を充填させることができる。
【0047】
また、把持部5aは、上面被覆部421の巻軸方向の中央部分よりコイル3から離れる側、即ち、ケース7の側壁72に近い位置に設けられている。そのため、リアクトル本体1をケース7に収容する際に、作業者の手が側壁72に接触しやすい構造となっている。しかし、本実施形態では、把持部5aは、端子台6と対向する側壁72と対向する位置に配置される。そして、把持部5aの庇部53は、端子台6と対向する側壁72の上端よりも高い位置に形成されている。そのため、リアクトル本体1をケース7に収容する際に、把持部5aに挿入した作業者の手が側壁72に接触することを防止できる。
【0048】
なお、本実施形態では、リアクトル本体1のケース7への収容作業を作業者の手作業で行う場合について説明したが、ロボットのアームで行った場合についても同様の効果を得ることができる。
【0049】
(変形例1)
上記実施形態では、把持部5を3つ設けていたが、把持部5の数はこれに限定されない。
図6は、変形例1のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。変形例1のリアクトル10は、樹脂体43、44に1つずつ把持部5が設けられている。
【0050】
樹脂体43、44に設けられた各把持部5は、上面被覆部421の幅方向の中央部分、かつ、上面被覆部421の巻軸方向の外側に配置される。把持部5は、短壁51の長壁52と繋がっていない端部は、上面被覆部421の縁に配置され、注入痕Mは、把持部5とコイル3に挟まれるように、上面被覆部421上に把持部5よりもコイル3側に設けられている。
【0051】
このような変形例1の構成であっても実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(変形例2)
図7は、変形例2のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。変形例2に係るリアクトル10では、樹脂体43、44にはそれぞれ2つずつ把持部5が設けられている。
【0053】
把持部5は、長壁52が脚部21とヨーク部22の境界線上、即ち、鍔部46の一部として形成されている。そして、樹脂体43、44に設けられた2つの把持部5、短壁51が対向するように配置されている。注入痕Mは、対向に配置された把持部5の間に設けられている。
【0054】
変形例2のように構成する場合、リアクトル本体1をリアクトル本体1の上下方向の投影領域内で把持することができる。そのため、ケース7の側壁72の高さが全て把持部5の庇部53の上面より高い場合であっても、側壁72に手が接触することなく収容作業を行うことができ、リアクトル10の生産性が向上する。
【0055】
特に、リアクトル本体1の収容をロボットのアームで行う場合に、手作業のように繊細な動きが難しい。しかし、変形例2のような構成にすれば、リアクトル本体1の上下方向の投影領域内でアームの爪の開閉を行うスペースを確保でき、ロボットのアームをしっかりと把持部5に挿入でき、安定してリアクトル本体1を把持することができる。さらに、リアクトル本体1をケース7に収容する際に、ロボットのアームが側壁72に接触することを防止できる。
【0056】
(変形例3)
図8は、変形例3のリアクトルに係る把持部と注入痕の位置関係を示す概略模式図である。変形例3に係るリアクトル10では、樹脂体43、44にはそれぞれ1つずつ把持部5が設けられている。
【0057】
把持部5は、上面被覆部421の幅方向の中央部分、かつ、上面被覆部421の巻軸方向の内側に配置される。即ち、把持部5は、長壁52が脚部21とヨーク部22の境界線上に配置されるように設けられ、長壁52が鍔部46の一部として構成されている。そして、注入痕Mは、把持部5とコイル3の引出線32の間に設けられている。
【0058】
このような変形例3の構成であっても実施形態と同様の効果を得ることができる。また、2つの把持部5の長壁52は、脚部21とヨーク部22の境界線上に配置しているので、ケース7の側壁72が全周囲において把持部5よりも高いものであっても、側壁72に接触することなく作業を行うことができる。
【0059】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
10 リアクトル
1 リアクトル本体
2 コア
21 脚部
22 ヨーク部
23スペーサ
3 コイル
31 連結部
32 引出線
4 樹脂部材
41 脚部被覆部
42 ヨーク被覆部
421 上面被覆部
43、44 樹脂体
45 固定部
46 鍔部
5 把持部
6 端子台
61 樹脂部
62 バスバー
63 固定部
7 ケース
71 底面
72 側壁
73 リアクトル本体固定部
74 端子台固定部
M 注入痕