(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120753
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】遮光発電装置、これを備えた栽培施設
(51)【国際特許分類】
A01G 9/22 20060101AFI20240829BHJP
H02S 40/22 20140101ALI20240829BHJP
H02S 30/10 20140101ALI20240829BHJP
A01G 9/20 20060101ALI20240829BHJP
E04F 10/10 20060101ALI20240829BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240829BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240829BHJP
H02S 20/30 20140101ALI20240829BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240829BHJP
【FI】
A01G9/22
H02S40/22
H02S30/10
A01G9/20 B
E04F10/10
E04F13/08 Z ETD
E04D13/18
H02S20/30 A
H02S20/23 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027783
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【テーマコード(参考)】
2B029
2E105
2E108
2E110
5F251
【Fターム(参考)】
2B029KB05
2B029LA02
2B029LA03
2E105AA01
2E105AA06
2E105BB01
2E105CC02
2E105DD06
2E105FF14
2E105GG03
2E108LL01
2E110AA04
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
5F251JA09
5F251JA14
5F251JA23
5F251JA28
5F251KA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる遮光発電装置、これを備えた栽培施設を提供する。
【解決手段】栽培施設Hに配設され、複数の太陽光パネルPと、前記複数の太陽光パネルPを、互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔に装着する装着基台7を備えた遮光発電装置1であって、前記装着基台7は、支持体に固定されたレール部8と、前記レール部8上に所定間隔で配設された複数の取付片部9と、前記複数の取付片部9の先端に、それぞれ、回動自在に取り付けられ、前記太陽光パネルPを装着可能に構成された複数の装着部10と、前記複数の装着部10に装着された前記複数の太陽光パネルPを同期して回動させる回動機構Kとを備え、前記太陽光パネルPは、矩形板状をなし、表裏それぞれに太陽電池素子が配設されて、裏表それぞれの入射光に対して発電可能に構成されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培施設に配設され、複数の太陽光パネルと、前記複数の太陽光パネルを、互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔に装着する装着基台を備えた遮光発電装置であって、
前記装着基台は、支持体に固定されたレール部と、前記レール部上に所定間隔で配設された複数の取付片部と、前記複数の取付片部の先端に、それぞれ、回動自在に取り付けられ、前記太陽光パネルを装着可能に構成された複数の装着部と、前記複数の装着部に装着された前記複数の太陽光パネルを同期して回動させる回動機構とを備え、
前記太陽光パネルは、矩形板状をなし、表裏それぞれに太陽電池素子が配設されて、裏表それぞれの入射光に対して発電可能に構成されたことを特徴とする遮光発電装置。
【請求項2】
前記回動機構を制御する制御部と、前記太陽光パネルの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧を検出する電流電圧検出部とを備え、
前記環境制御部は、前記電流電圧検出部によって検出された検出情報を取得し、前記太陽光パネルの表裏の出力電流及び出力電圧の和が最大化されるように前記回動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の遮光発電装置。
【請求項3】
前記装着部は、前記太陽光パネルと面接触して保持するための台座である台座部を備え、前記台座部は、係止用の突起によって前記太陽光パネルの一端側を係止する係止片と、前記太陽光パネルの他端側を掛け止めするフック状の掛止片とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の遮光発電装置。
【請求項4】
前記装着部は、前記太陽光パネルと面接触して保持するための台座である台座部を備え、前記台座部に、前記太陽光パネルの裏面を保持する平板状の裏面保持部と、表面を保持する平板状の表面保持部とが設けられており、
前記裏面保持部には、前記太陽光パネルに設けられた挿通穴に挿通して、前記太陽光パネルを係止する係止用突起が設けられて、さらに、前記表面保持部が回動可能に取り付けられた立設部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の遮光発電装置。
【請求項5】
前記太陽光パネルは、中途部で屈曲され、面方向の異なる第1板部と第2板部からなる背板部と、前記第1板部の裏表にそれぞれ設けられ、受光により発電する発電パネル部と、第2背板部の表面に設けられた反射部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の遮光発電装置。
【請求項6】
請求項1に記載の遮光発電装置が配設された栽培施設。
【請求項7】
屋内の床面及び壁面に、光を反射する反射板が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の栽培施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光機能及び発電機能を有する遮光発電装置、これを備えた栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培施設に配設される遮光装置、これを備えた栽培施設として、例えば、下記特許文献1に記載されたものが知られている。ここで、特許文献1記載の遮光装置は、栽培施設内への太陽光等の光の入射を制限するため、太陽光を遮蔽する矩形板状の遮蔽部材を、上下あるいは左右方向に沿って、所定間隔で並べて配列するとともに、軸回りに同期させて回動可能としたものである。これにより、遮蔽部材の回動量に応じて、遮蔽部材の板面同士を隙間なく配置させて光を遮蔽する遮蔽状態と、板面同士を互いに対向するように配置させて光の少なくとも一部を透過させる透過状態とを切り替え可能となっている。
【0003】
さらに、上記特許文献1に記載のような遮光装置に、太陽光パネルを設けることで、遮光機能に加え、発電機能を備えた遮光発電装置が知られている。例えば、特許文献2には、遮蔽部材の遮光面(すなわち、陽光が照射される日向側の面)に、太陽光パネルを設け、遮光と同時に発電を行う遮光装置、これを備えた栽培施設が開示されており、これにより、栽培施設を省エネ化することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-18037号公報
【特許文献2】特開2019-198268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の遮光発電装置、これを備えた栽培施設によれば、遮蔽部材の遮光面以外の部分に入射する光については、発電効果を得ることができず、これにより、エネルギーのロスが生じていた。換言すれば、光から電気へのエネルギー変換効率に改善の余地が存在するものであった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる遮光発電装置、これを備えた栽培施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、
栽培施設に配設され、複数の太陽光パネルと、前記複数の太陽光パネルを、互いに平行な姿勢で同一平面上に等間隔に装着する装着基台を備えた遮光発電装置であって、
前記装着基台は、支持体に固定されたレール部と、前記レール部上に所定間隔で配設された複数の取付片部と、前記複数の取付片部の先端に、それぞれ、回動自在に取り付けられ、前記太陽光パネルを装着可能に構成された複数の装着部と、前記複数の装着部に装着された前記複数の太陽光パネルを同期して回動させる回動機構とを備え、
前記太陽光パネルは、矩形板状をなし、表裏それぞれに太陽電池素子が配設されて、裏表それぞれの入射光に対して発電可能に構成されたことを特徴とする遮光発電装置を提供する。
【0008】
上記第1の発明によれば、従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる遮光発電装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記回動機構を制御する制御部と、前記太陽光パネルの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧を検出する電流電圧検出部とを備え、
前記環境制御部は、前記電流電圧検出部によって検出された検出情報を取得し、前記太陽光パネルの表裏の出力電流及び出力電圧の和が最大化されるように前記回動機構を制御することを特徴とする遮光発電装置を提供する。
【0010】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、発電量を優先して遮光発電装置を制御することもできる。その結果、例えば、電力不足の場合に、良好に発電が可能となる。
【0011】
第3の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記装着部は、前記太陽光パネルと面接触して保持するための台座である台座部を備え、前記台座部は、係止用の突起によって前記太陽光パネルの一端側を係止する係止片と、前記太陽光パネルの他端側を掛け止めするフック状の掛止片とを備えたことを特徴とする遮光発電装置を提供する。
【0012】
上記第3の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、簡易かつ迅速な太陽光パネルの着脱が可能である。
【0013】
第4の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記装着部は、前記太陽光パネルと面接触して保持するための台座である台座部を備え、前記台座部に、前記太陽光パネルの裏面を保持する平板状の裏面保持部と、表面を保持する平板状の表面保持部とが設けられており、
前記裏面保持部には、前記太陽光パネルに設けられた挿通穴に挿通して、前記太陽光パネルを係止する係止用突起が設けられて、さらに、前記表面保持部が回動可能に取り付けられた立設部が設けられたことを特徴とする遮光発電装置を提供する。
【0014】
上記第4の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、太陽光パネルの迅速な着脱が可能であり、かつ、固定強度も向上できる。
【0015】
第5の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記太陽光パネルは、中途部で屈曲され、面方向の異なる第1板部と第2板部からなる背板部と、前記第1板部の裏表にそれぞれ設けられ、受光により発電する発電パネル部と、第2背板部の表面に設けられた反射部とを備えたことを特徴とする遮光発電装置を提供する。
【0016】
上記第5の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、第2背板部の表面に設けられた反射部による反射光を、隣接する裏面の発電パネル部へと入射させることができるため、効率よく発電することができる。また、表裏前面に発電パネル部を配設する方法に比べて、発電パネル部を配設する面積を削減し、製造コストを抑えることができる。
【0017】
第6の発明は、上記第1の発明に係る遮光発電装置が配設された栽培施設を提供する。
【0018】
上記第6の発明によれば、従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる栽培施設を提供することができる。
【0019】
第7の発明は、上記第6の発明の構成に加え、
屋内の床面及び壁面に、光を反射する反射板が設けられたことを特徴とする栽培施設を提供する。
【0020】
上記第7の発明によれば、反射板が、光を反射することによって、遮光発電装置1に入射する光を増加できる。特に、太陽光パネルの裏面にて、良好に発電が可能である。これにより、発電量を増加させ、省エネルギー効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる遮光発電装置、これを備えた栽培施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る栽培施設の模式図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の太陽光パネルの平面図であり、
図3(b)は、その側面図である。
【
図4】
図4は、
図2の遮光発電装置の遮光状態を示す概略側面図である。
【
図5】
図5は、
図2の遮光発電装置の透光状態を示す概略側面図である。
【
図6】
図6は、
図1の遮光発電装置の装着基台の平面図である。
【
図8】
図8は、
図1の栽培施設内の環境制御に係るシステム構成図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、第1の変形例に係る装着部及び太陽光パネルの側面図である。
【
図10】
図10は、第2の変形例に係る装着部及び太陽光パネルの側面図である。
【
図11】
図11は、第3の変形例に係る遮光発電装置の概略側面図である。
【
図12】
図12は、第3の変形例に係る栽培施設内の環境制御に係るシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る遮光装置が配設された栽培施設の全体構成について説明する。
【0024】
<1.栽培施設の全体構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ、詳細に説明を加える。なお、以下の説明においては、太陽の日射量から遮光量を差し引いた、栽培施設の屋内に取り込む日射量のことを日射導入量という。
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る栽培施設Hの模式図である。また、
図2は、
図1の遮光発電装置1近傍の概略斜視図である。
図1、
図2に示されるように、本実施形態に係る栽培施設Hは、鉄骨等の骨組みで組み立てられたフレームの外側を、透光性素材で覆うことで形成された建屋(プラスチックハウス、ビニールハウス、ガラスハウス等)であり、外部(屋外)の光を屋内に導入可能となっている。ただし、栽培施設1は、屋内が必ずしも密閉された空間であることを要さず、通気性を有する木製ハウスでもよい。また、栽培施設1は、建物の一部(サンルームなど部屋状のもの)でもよい。なお、栽培施設1で栽培する植物2は、例えば、トマト等の農作物であるが、これに限定されず、例えば、杉苗などでもよい。
【0026】
図1に示されるように、栽培施設Hは、その屋内である植物栽培用空間内(以下、単に屋内という。)に、遮光機能及び発電機能を有する遮光発電装置1と、栽培植物の生育促進に係る気体(以下、施用気体という。例えば、二酸化炭素など。)を供給する気体供給装置3と、各種機器を制御して屋内の生育環境(例えば、日射量、二酸化炭素濃度など)をコントロールする環境制御部Cと、屋内の生育環境に係る情報を各種の測定値として取得する環境測定部4とを備えて構成されている。
【0027】
気体供給装置3は、環境制御部Cによって開閉制御可能な電磁弁(図示省略)を介して気体供給管3aと接続されている。この気体供給管3aは、全周に亘り多数の微細孔が形成された通気性を有する管状体であり、気体供給装置3から施用気体の供給を受けるとともに、これを通気可能に構成されている。また、図示されていないが、気体供給装置3は、施用気体が充填されたガスボンベを備えている。
【0028】
また、栽培施設Hの屋内の床面及び壁面には、適宜の箇所に光を反射する反射板5が設けられている。この反射板5は、反射率が90%以上であることが望ましい。この反射板5が、光を反射することによって、後述する遮光発電装置1に入射する光を増加できる。
なお、係る反射板5は、シート状のものでもよく、例えば、白色のシートでもよい。特に、後述する太陽光パネルPの裏面にて、良好に発電が可能である。これにより、発電量を増加させ、省エネルギー効果を得ることができる。
【0029】
栽培施設1の屋内上方には、LED等の光源を並列状に配設して構成された複数の補光ランプ15が設けられており、環境制御部Cによって点灯制御可能に構成されている。また、屋内の地表面近傍には、植物に対して上方への送風が可能な複数の送風ファン16が設けられている。また、栽培施設1の天井部には、環境制御部Cによって開閉制御可能な天窓17が設けられている。この複数の送風ファン16は、駆動により、上方へと送風を行うことによって、植物の葉の裏面に送風を行い、これにより、植物の葉の温度を下げるとともに、葉面境界層に存在する二酸化炭素を除去して、植物の呼吸を助ける役割を果たしている。さらに、送風ファン16の駆動と同時に天窓17を開制御することにより、好適に上方への送風を行うことができるように構成されている。
【0030】
<2.遮光発電装置の構成>
遮光発電装置1は、例えば、上下方向を長手とする縦型姿勢、水平方向を長手とする横型姿勢、所定の傾斜を設けた傾斜姿勢での配設が可能であるが、
図1の図示例では、横型姿勢で配設された1つの遮光発電装置1によって植物の上方を覆い、さらに、縦型姿勢で配設されたに2つの遮光発電装置1によって植物2の両側方(両サイド)を覆うようよう配設されている。このように、植物を上方及び側方を覆うように遮光発電装置1を配設することで、植物2に対する日射量の細かな調節が可能となる。また、それぞれの遮光発電装置1は、支持体6に支持固定されている。ここで、支持体6は、遮光発電装置1を支持する機能を果たし、内部に気体を通気可能に構成された中空の管状体によって構成されている。この支持体6は、気体供給装置102から施用気体の供給を受け、これを、所定位置に設けられた貫通孔から植物2に向けて噴出するように構成されてもよい。これにより、植物2の周囲に迅速に施用気体を供給可能となる。
【0031】
<太陽光パネルの構成の構成>
図3(a)は、
図1の太陽光パネルPの平面図であり、
図3(b)は、その側面図である。
図3(a)、
図3(b)に示されるように、太陽光パネルPは、矩形板状をなし、その寸法は、例えば、短辺が5cm、長辺が1mで形成される。なお、便宜上、遮光発電装置1が光を遮蔽する遮蔽状態のとき、太陽光パネルPが太陽の方向を向く面を表、その反対側を裏と称する。太陽光パネルPの本体は、複数のセル(太陽電池素子)をまとめて1枚のパネルp1,p2としたもの(モジュール)を、表裏両面での発電を可能とするため、裏表2枚貼り合わせて形成されている。このようにして、太陽光パネルPは、表裏それぞれに太陽電池素子が配設されたことにより、裏表それぞれの入射光に対して発電可能となっている。なお、太陽光パネルPは、裏表それぞれの入射光に対して発電可能な構成であれば、この形態に限定されない。このように、太陽光パネルPが両面にて発電可能な構成によれば、遮光発電装置1の透光状態において、太陽光パネルPの表面にて反射された光を、太陽光パネルPの裏面にて受光して発電可能となるため、効率的な発電が可能である。また、遮光発電装置1の遮光状態においても、補光ランプ15による光を、太陽光パネルPの裏面にて受光して発電可能となるため、エネルギーのロスを抑えて、省エネ効果を得ることができる。また、裏表のパネルp1,p2にそれぞれ、バイパスダイオード等が内蔵された小型の筐体であるカートリッジp3が貼着固定され、裏表それぞれ、該カートリッジp3と接続された配線(電路)Lから、太陽光パネルPによって発電された電力を出力して、適宜の位置に設けられ、配線Lと接続されたバッテリBへと充電するとともに、該バッテリBを介して、各部の装置へと供給可能となっている。
【0032】
また、カートリッジp3と接続された配線L上には、それぞれ、電流電圧検出部Sが設けられ、太陽光パネルPの表裏のパネルp1,p2それぞれの出力電流及び出力電圧を検出する。この電流電圧検出部Sによって検出された検出情報は、所定の時間間隔で、無線通信により環境制御部Cに送信される。なお、環境制御部Cは、取得した太陽光パネルPの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧に関する情報を、記憶部c2に経時的に記録するよう構成されている。これにより、環境制御部Cは、太陽光パネルPの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧を監視し、これに応じた遮光発電装置1による日射導入量の制御が可能となっている。
【0033】
<3.遮光発電装置の構成>
図4は、
図2の遮光発電装置の遮光状態を示す概略側面図であり、
図5は、
図2の遮光発電装置の透光状態を示す概略側面図である。また、
図6は、
図1の遮光発電装置の装着基台の平面図である。なお、図中の矢印線は、太陽光を示している(
図10において同じ)。
遮光発電装置1は、複数の太陽光パネルPと、該複数の太陽光パネルPを、ルーバー状(すなわち、同一平面上に等間隔で、互いが平行に配設された状態)に装着可能な装着基台7とを備える。該装着基台7は、装着された太陽光パネルPを支持するとともに、同期して回動動作させる機能を果たし、支持体6に固定されたレール部8と、該レール部8上に所定間隔で複数配設された取付片部9と、該複数の取付片部9の先端に、それぞれ、回動自在に取り付けられた複数の装着部10とを備え、さらに、該複数の装着部10に装着された該複数の太陽光パネルPを同期して回動させる回動機構Kを備えている。なお、装着基台7は、太陽光パネルPの両端に一対で配設されるものである(
図1、
図2参照)。
【0034】
また、装着基台7は、支持体6に固定されたレール部8と、該レール部8上に所定間隔で複数配設された取付片部9と、該複数の取付片部9の先端に、それぞれ、回動自在に取り付けられた複数の装着部10とを備えている。
【0035】
レール部8は、所定長さの長尺なフレーム材からなり、好ましくは、剛性の金属材料から形成され、太陽光パネルPを載架した状態で支持する機能を果たす。該レール部8上に所定間隔で配設された複数の取付片部9は、装着部10を回動可能に支持する。
【0036】
取付片部9は、レール部8上から突起する突起片であり、好ましくは、可撓性を有する硬質のプラスチック材料から形成され、レール部8に固定されている。また、この取付片部9の先端部分に、太陽光パネルを装着自在な装着部10が、第1の回動連結点9aを中心に回動自在に連結されている。なお、第1の回動連結点9aは、取付片部9に第1の支点軸が設けられ、該第1の支点軸が、装着部10側に設けられた連結穴に挿通されることにより構成されている。
【0037】
回動機構Kは、電動モータMの駆動により回動する回動軸k1と、該回動軸をレール部8に保持する保持部k5と、回動軸k1とともに回動するリンクアームk2と、該リンクアームk2の先端部分に一端が回動自在に連結されたリンクバーk3と、該リンクバーk3の他端に回動自在に連結され、リンクアームk2の回動によって揺動する揺動レールk4とを備えている。この揺動レールk4が揺動すると、それぞれの装着部10は、それぞれの操作片14を介して回動操作され、その結果、それぞれの装着部10に装着された太陽光パネルPが同期して回動する。このようにして、回動機構Kは、回動軸k1の回動に応じて、複数の装着部10を同期して回動させることで、複数の太陽光パネルPを同期して回動して角度の調節が可能となっている。
【0038】
電動モータMは、環境制御部Cによって正逆回動制御されるよう構成されており、ベルト伝動機構(例えば、ゴムやチェーンからなる無端ベルトの巻回によって、電動モータの回転出力を回動軸k1に伝達する)により、電動モータMの回動力が該回動軸に伝達される仕組みとなっている。これにより、環境制御部Cは、電動モータMの制御によって、太陽光パネルPの角度の制御が可能となっている。
【0039】
このように、電動モータMの正逆回動制御により、遮光発電装置1は、
図4に示される遮光状態と、
図5に示される透光状態とを切り替え可能となっており、透光状態においては、
図5中に示されるように、反射板5の反射光が太陽光パネルPの裏面に入射して、効率よく発電が可能となっている。
【0040】
<4.装着部の構成>
図7は、
図1の遮光発電装置1の装着部10の側面図である。
装着部10は、好ましくは、可撓性を有する硬質のプラスチック材料から形成され、太陽光パネルPと面接触して保持するための台座である台座部11を備え、この台座部11に第1の回動連結点9aが設けられるとともに、係止用の突起によって太陽光パネルPの一端側を係止する係止片12と、他端側を掛け止めするフック状の掛止片13と、装着部10を第2の回動連結点14aを中心に回動操作するための操作片13とが延設されている。
【0041】
装着部10に、太陽光パネルPを装着する際は、掛止片13に太陽光パネルPの一端側を掛け止めした状態で、台座部11に太陽光パネルPを押圧することにより、掛止片13が撓み、これにより、太陽光パネルPが、掛止片13と係止片12とに挟み込まれて、台座部11に嵌着される仕組みとなっている。係る構成によれば、簡易かつ迅速な太陽光パネルPの着脱が可能である。
【0042】
操作片14の先端部分には、第2の回動連結点14aが設けられており、操作片14は、この第2の回動連結点14aを中心として、揺動レールk4と回動自在に連結されている。この第2の回動連結点14aは、操作片14側に第2の支点軸が設けられ、該第2の支点軸がリ揺動レールk4側に設けられた連結穴に挿通されることにより構成されている。
【0043】
図8は、
図1の栽培施設内の環境制御に係るシステム構成図である。
環境制御部103は、CPU、記憶装置、格納されたプログラム(いずれも図示せず)等を有する電子制御機構である。環境制御部103は、栽培施設内の生育環境をコントロールするため各種機器を制御する制御装置であり、ネットワークNWを介して、遮光発電装置1の電動モータM等に制御信号を送信し、また、気体供給装置3の電磁弁(図示省略)を開閉制御することができるように構成されている。また、環境測定部4の測定情報、設定部c1の操作情報を取得可能に構成されている。
【0044】
環境測定部4は、栽培施設1内の温度や湿度、照度(日射量)、二酸化炭素濃度等の環境値を測定するための複数のセンサを備えた環境測定センサ群であり、植物2の近傍に配設される。その配設方法としては、栽培施設Hの床面上に設置されてもよいし、遮光発電装置1のレール部8に吊止するようにして配設されてもよい。
【0045】
設定部c1は、ユーザが、環境制御部Cに各種情報を入力し設定を行うための操作パネルである。設定部c1は環境制御部Cを内蔵する筐体に設けられてもよいし、タブレット等の情報端末から無線通信で操作情報を取得するようにしてもよい。
【0046】
記憶部c2は、環境制御部Cの制御についての必要なデータが記憶されている。例えば、環境測定部4の各種検出情報、又は、環境制御部Cの実行履歴、設定部c1からの操作情報、植物の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度などの各種情報が記憶されている。また、環境測定部4の測定値から得られる積算照度、環境制御部Cが取得した太陽光パネルPの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧を、経時的に記録されている。
【0047】
このように構成された環境制御部Cは、植物2の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度の情報に基づき、環境測定部104による照度の情報を適宜取得しながら、遮光発電装置1を制御して、日射導入量を調節する。基準照度に関する情報は、設定部の操作するとによって、ユーザが時刻ごとに任意の値を設定でき、記憶部c2に予め記憶される。例えば、時刻12時における基準照度は、1000W/m2程度に設定される。このとき、環境制御部Cは、時刻12時に、環境測定部4から、照度に関する情報を取得し、1000W/m2を下回る場合、日射導入量を増加させるよう遮光発電装置1を制御し、1000W/m2を上回る場合、日射導入量を減少させるよう遮光発電装置1を制御する。
【0048】
また、このように構成された環境制御部Cは、上記制御に代えて、発電量を優先して遮光発電装置1を制御することもできる。その結果、例えば、電力不足の場合に、良好に発電が可能となる。遮光発電装置1の制御方法の切り替えは、例えば、設定部c1の操作によって行われる。発電量を優先する遮光発電装置1の制御では、環境制御部Cが取得した太陽光パネルPの表裏それぞれの出力電流及び出力電圧に関する情報に基づき、太陽光パネルPの表裏の出力電流及び出力電圧の和が最大化されるように、遮光発電装置1の回動機構Kが制御される。係る遮光発電装置1の制御方法は、例えば、所定の時間間隔ごとに、複数の太陽光パネルPを同期して所定量回動して角度を変更し、太陽光パネルPの表裏の出力電流及び出力電圧の和が増加した場合に、現在の角度を維持し、減少した場合に、もとの角度に戻すというステップを繰り返すことにより実現される。
【0049】
以上のように、本発明に係る遮光発電装置1、これを備えた栽培施設Hによれば、太陽光パネルPの裏面への入射光によっても発電可能としたことにより、従来よりも光から電気へのエネルギー変換効率を向上できる遮光発電装置1、これを備えた栽培施設Hを提供することができる。また、遮光発電装置1により発電された電力は、補光ランプ15、送風ファン16、天窓17等の各装置の駆動電源として利用でき、省エネルギー化が図られる。
【0050】
<5.第1の変形例>
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、前記した実施形態の態様にのみ限定されず、技術的思想の範囲内で、適宜変更であることは言うまでも無い。以下に、変形例を説明する。なお、変形例の実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
図9(a)及び
図9(b)は、第1の変形例に係る装着部10及び太陽光パネルPの側面図である。
【0051】
図9(a)は、太陽光パネルP装着前の装着部10及び太陽光パネルPが示され、
図9(b)は装着後の装着部10及び太陽光パネルPが示されている。
図9(a)に示されるように、第1の変形例に係る装着部10は、台座部11に、太陽光パネルPの裏面を保持する平板状の裏面保持部11aと、表面を保持する平板状の表面保持部11bとが設けられており、裏面保持部11aには、太陽光パネルPに設けられた挿通穴Paに挿通して、太陽光パネルPを係止する係止用突起11cが設けられて、さらに、表面保持部11bが回動可能に取り付けられた立設部11dが設けられている。
【0052】
図9(a)に示されるように、表面保持部11bを回動させると、表面保持部11bが太陽光パネルPの上面に当接した状態で、係止用突起11cの先端が、表面保持部11bの下面に設けられた凹部11dに嵌合して固定される。これにより、太陽光パネルPの装着部10への装着が完了する。このような構成によれば、太陽光パネルPの迅速な着脱が可能であり、かつ、固定強度も向上できる。
【0053】
また、カートリッジp3は、表面保持部11b及び裏面保持部11aに内蔵されており、これにより、太陽光パネルPが装着されると、太陽光パネルPによって発電された電力が、裏表それぞれ、バッテリBへと出力可能となっている。このような構成によれば、太陽光パネルP側にカートリッジp3を設ける必要がないため、太陽光パネルPの構成を簡略化でき、製造コストを低減できるととともに、交換が容易であるため、メンテナンス性も向上する。
【0054】
<6.第2の変形例>
図10は、第2の変形例に係る装着部10及び太陽光パネルPの側面図である。
図10に示される太陽光パネルPは、中途部で屈曲され、面方向の異なる第1板部p4と第2板部p5からなる背板部p6と、第1板部の裏表にそれぞれ設けられ、受光により発電する発電パネル部p7と、第2背板部の表面に設けられた反射部p8とを備えている。反射部p8は、例えば、反射機能を有する鏡体である。また、第1板部と第2板部の内角は、例えば120°であるが、これに限定されない。また、図示されていないが、発電パネル部p7の表裏それぞれには、カートリッジp3が貼着されている。また、台座部11の上面は、太陽光パネルPの形状に合わせて屈曲するように形成されている。
【0055】
上記構成によれば、
図10に示されるように、第2背板部の表面に設けられた反射部p8による反射光を、隣接する裏面の発電パネル部p7へと入射させることができるため、効率よく発電することができる。また、表裏前面に発電パネル部p7を配設する方法に比べて、発電パネル部p7を配設する面積を削減し、製造コストを抑えることができる。
【0056】
<7.第3の変形例>
図11は、第3の変形例に係る遮光発電装置の概略側面図であり、
図12は、第3の変形例に係る栽培施設内の環境制御に係るシステム構成図である。
第3の変形例は、日射測定機能を有する2つの日射測定ユニットU1、U2を用いた構成である。ここで、日射測定ユニットU1、U2は、同一の構造を有しており、小型の箱形状の筐体に、それぞれ、該日射測定ユニットU1、U2が配設された位置の照度(日射量)を測定可能な日射センサと、該日射センサによる測定値を環境制御部Cに無線通信に送信可能な無線通信部とが内蔵されており、環境制御部Cは、これら測定値に関する情報を取得可能となっている。
【0057】
さらに、環境制御部Cは、2つの日射測定ユニットU1、U2による測定値を監視し、2つの日射測定ユニットU1、U2の日射量の和が最大となるよう、太陽光パネルPの角度を自動制御するよう構成されている。
図11に示されるように、第1日射測定ユニットU1は、太陽光パネルPの上面(例えば、太陽光パネルPの長手方向の一端部)に配設され、第2日射測定ユニットU2は、太陽光パネルPの下方の適宜の位置(例えば、植物2の近傍や栽培施設Hの床面)に配設される。また、環境制御部Cは、太陽光パネルPの角度を経時的に記録し、特定の日(例えば、晴れの日)に記録された太陽光パネルPの角度の情報に基づいて、他の任意の日に、時刻に応じて同じ角度となるように、太陽光パネルPの角度を制御可能に構成されてもよい。さらに、環境制御部Cが、太陽光パネルPのモデルとなる角度の情報を記録し、これに基づき角度制御可能に構成しておくことで、天気の急変やセンサの不具合に左右されずに安定した制御が可能となる。また、さらに、太陽光パネルPの角度の初期設定時(例えば、設定部c1の操作によりリセットを指示する。)、環境制御部Cによって、太陽光パネルPの表裏にそれぞれの入射光による日射量の差分が最大となるように、太陽光パネルPの角度が制御されるよう構成されてもよい。これにより、太陽光パネルPの角度のリセットが容易となる。また、このようにリセットされた状態から、太陽光パネルPの回動角の制御を開始することによって、太陽の方向を良好に追尾できる。
【0058】
2つの日射測定ユニットU1、U2は、それぞれ、複数の日射センサ(例えば2つ)を備えてもよい。また、環境制御部Cは、植物2の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度の情報を参照し、第2日射測定ユニットU2の測定値が、植物2の生育に望ましい基準の照度以上であるときは、発電量を最大化するように、2つの日射測定ユニットU1、U2の日射量の和が最大となるよう、太陽光パネルPの角度を自動制御するようにし、太陽光パネル2による発電量が最大となるように制御する。さらに、植物2の植物2の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度の情報に基づき、第2日射測定ユニットU2の測定値が、植物2の生育に望ましい基準の照度を下回るときは、植物2の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度に近づけるように遮光発電装置1の太陽光パネルPの角度調整を制御し、植物2の生育に適した照度(日射量)となるように、制御するように構成されてもよい。これにより、環境制御部Cは、植物2に対する照度が十分であるときは、発電量を重視した制御を行い、不十分であるときは、照度(日射量)を重視した制御が可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 栽培施設
2 植物
3 気体供給装置
3a 気体供給管
4 環境測定部
5 反射板
6 支持体
7 装着基台
8 レール部
9 取付片部
10 装着部
11 台座部
12 係止片
13 掛止片
14 操作片
14a 第2の回動連結点
15 補光ランプ
16 送風ファン
17 天窓
C 環境制御部
c1 設定部
c2 記憶部
K 回動機構
k1 回動軸
k2 リンクアーム
k3 リンクバー
k4 揺動レール
k5 保持部
L 配線
P 太陽光パネル
p1 表パネル
p2 裏パネル
p3 カートリッジ
S 電流電圧検出部
H 栽培施設
NW ネットワーク