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特開2024-120758車両用グローブボックス及び車室前部構造
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  • 特開-車両用グローブボックス及び車室前部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120758
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車両用グローブボックス及び車室前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/045 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B60R21/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027789
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 和真
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
(57)【要約】
【課題】車両の前面衝突時に乗員の車両前方への慣性移動を抑制しつつ、乗員の保護性能を向上できる車両用グローブボックス及び車室前部構造を得る。
【解決手段】車両用グローブボックス10は、車室前部に設けられて車両後方側が開口された箱状の収容部20と、開口の周縁に回動可能に取り付けられて開口を開閉させるドア部22と、を含んで構成されたグローブボックス本体11と、収容部20の上端部20Bから車両上方側へ突出され、グローブボックス本体11よりも車両上方側において車両幅方向に延在された骨格部材30に対して車両後方側に対向配置されると共に、車両Vの前面衝突時に骨格部材30に当たって変形する衝撃吸収部42と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に設けられて車両後方側が開口された箱状の収容部と、前記開口の周縁に回動可能に取り付けられて前記開口を開閉させるドア部と、を含んで構成されたグローブボックス本体と、
前記収容部の上端部から車両上方側へ突出され、前記グローブボックス本体よりも車両上方側において車両幅方向に延在された骨格部材に対して車両後方側に対向配置されると共に、車両の前面衝突時に前記骨格部材に当たって変形する衝撃吸収部と、
を有する車両用グローブボックス。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、車両幅方向を肉厚方向として車両前後方向に延在されたリブを含んで構成されている請求項1に記載の車両用グローブボックス。
【請求項3】
前記リブの前端部は、車両幅方向から見て前記骨格部材の形状に沿って湾曲している請求項2に記載の車両用グローブボックス。
【請求項4】
前記衝撃吸収部は、前記収容部の上面に形成されて車両前後方向に延在された凸ビードと、車両幅方向を肉厚方向として前記凸ビード上に設けられたリブと、を含んで構成されている請求項1に記載の車両用グローブボックス。
【請求項5】
前記衝撃吸収部は、車両幅方向に間隔をあけて複数設けられている請求項1に記載の車両用グローブボックス。
【請求項6】
前記収容部の上面には、車両幅方向から見て前記骨格部材よりも車両後方側において車両幅方向に延在された2つの稜線が設けられている請求項1に記載の車両用グローブボックス。
【請求項7】
車室の前部に設けられたインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルに取付けられた請求項1~6の何れか1項に記載の車両用グローブボックスと、
を有する車室前部構造。
【請求項8】
前記インストルメントパネルには、乗員が把持可能なグリップ部が設けられており、
前記骨格部材と前記グリップ部とが補強部材によって連結されている請求項7に記載の車室前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用グローブボックス及び車室前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のインストルメントパネル内に取付けられた収納箱部と、収納箱部に収納されたボックス本体部とを備えたグローブボックスが開示されている。また、特許文献1に開示されたグローブボックスでは、収納箱部の天井壁部にビード及び突条が設けられており、このビード及び突条の延長線上の位置には、インパネリインフォースに溶接されたブラケットが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-113018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のグローブボックスでは、車両の前面衝突時にビード及び突条がブラケットに当接することで、グローブボックスの車両前方側への移動が抑制される。一方、車両の前面衝突時には、グローブボックスから乗員の膝などに対して反力が作用する場合があるため、乗員の保護性能を向上させる観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、車両の前面衝突時に乗員の車両前方への慣性移動を抑制しつつ、乗員の保護性能を向上できる車両用グローブボックス及び車室前部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用グローブボックスは、車室前部に設けられて車両後方側が開口された箱状の収容部と、前記開口の周縁に回動可能に取り付けられて前記開口を開閉させるドア部と、を含んで構成されたグローブボックス本体と、前記収容部の上端部から車両上方側へ突出され、前記グローブボックス本体よりも車両上方側において車両幅方向に延在された骨格部材に対して車両後方側に対向配置されると共に、車両の前面衝突時に前記骨格部材に当たって変形する衝撃吸収部と、を有する。
【0007】
請求項1に係る車両用グローブボックスでは、収容部とドア部とを含んでグローブボックス本体が構成されており、収容部は、車室前部に設けられて箱状に形成されており、車両後方側が開口されている。また、ドア部は、収容部の開口の周縁に回動可能に取り付けられて開口を開閉させる。
【0008】
また、グローブボックス本体よりも車両上方側には骨格部材が設けられており骨格部材は、車両幅方向に延在されている。ここで、収容部の上端部から車両上方側へ衝撃吸収部が突出されている。衝撃吸収部は、骨格部材に対して車両後方側に対向配置されている。これにより、車両の前面衝突時に乗員の膝などからグローブボックス本体に荷重が入力された場合であっても、衝撃吸収部が骨格部材に当たることでグローブボックス本体の車両前方側への移動が抑制される。
【0009】
また、衝撃吸収部が骨格部材に当たって変形することでエネルギーの少なくとも一部が吸収され、グローブボックス本体から乗員へ作用する反力を低減できる。
【0010】
請求項2に係る車両用グローブボックスは、請求項1において、前記衝撃吸収部は、車両幅方向を肉厚方向として車両前後方向に延在されたリブを含んで構成されている。
【0011】
請求項2に係る車両用グローブボックスでは、車両の前面衝突時にリブが骨格部材に当たって変形することでエネルギーが吸収される。すなわち、簡易な構造で前面衝突時のエネルギーを吸収できる。
【0012】
請求項3に係る車両用グローブボックスは、請求項2において、前記リブの前端部は、車両幅方向から見て前記骨格部材の形状に沿って湾曲している。
【0013】
請求項3に係る車両用グローブボックスでは、リブの前端部が骨格部材の形状に沿って湾曲しているため、リブと骨格部材との接触面積を広く確保することができ、車両の前面衝突時にリブを効果的に変形させることができる。
【0014】
請求項4に係る車両用グローブボックスは、請求項1において、前記衝撃吸収部は、前記収容部の上面に形成されて車両前後方向に延在された凸ビードと、車両幅方向を肉厚方向として前記凸ビード上に設けられたリブと、を含んで構成されている。
【0015】
請求項4に係る車両用グローブボックスでは、凸ビード上にリブが設けられている。これにより、車両の前面衝突時には、リブが骨格部材に当たって変形した後、凸ビードが変形する。このように段階的にエネルギーを吸収することで、グローブボックス本体から乗員へ作用する反力を効果的に低減できる。
【0016】
請求項5に係る車両用グローブボックスは、請求項1において、前記衝撃吸収部は、車両幅方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0017】
請求項5に係る車両用グローブボックスでは、骨格部材からグローブボックス本体へ入力される反力をグローブボックス本体の車両幅方向に分散させることができる。
【0018】
請求項6に係る車両用グローブボックスは、請求項1において、前記収容部の上面には、車両幅方向から見て前記骨格部材よりも車両後方側において車両幅方向に延在された2つの稜線が設けられている。
【0019】
請求項6に係る車両用グローブボックスでは、車両の前面衝突時に収容部が骨格部材と乗員との間に挟み込まれた場合、2つの稜線のそれぞれに応力が分散される。これにより、稜線が1つのみの構造と比較して、収容部が潰れにくくなり、衝突初期段階で乗員が車両前方へ移動するのを抑制できる。
【0020】
請求項7に係る車室前部構造は、車室の前部に設けられたインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルに取付けられた請求項1~6の何れか1項に記載の車両用グローブボックスと、を有する。
【0021】
請求項7に係る車室前部構造では、車両の前面衝突時にグローブボックス本体が車両前方側へ移動するのを抑制することで、乗員の車両前方側への慣性移動を抑制できる。また、衝撃吸収部によってエネルギーの少なくとも一部が吸収されることにより、乗員がインストルメントパネルに接触した場合であっても、乗員に入力される衝突荷重を低減できる。
【0022】
請求項8に係る車室前部構造は、前記インストルメントパネルには、乗員が把持可能なグリップ部が設けられており、前記骨格部材と前記グリップ部とが補強部材によって連結されている。
【0023】
請求項8に係る車室前部構造では、グリップ部によって乗員が車両に乗降し易くなる。また、グリップ部が補強部材によって骨格部材に連結されているため、乗員がグリップ部に力を入れてもグリップ部の変形を抑制できる。
【0024】
さらに、骨格部材とグリップ部とが補強部材によって連結された構造では、収容部の上端を補強部材よりも下方に配置する必要が生じるため、車両の前面衝突時に収容部を骨格部材に当てるのが困難となる。このような構造であっても、収容部の上端部から車両上方側へ衝撃吸収部を突出させることで、衝撃吸収部を骨格部材に当ててグローブボックス本体の車両前後方向への移動を抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る車両用グローブボックス及び車室前部構造によれば、車両の前面衝突時に乗員の車両前方への慣性移動を抑制しつつ、乗員の保護性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る車両用グローブボックスが適用された車両の車室前部を概略的に示す斜視図である。
図2図1の2-2線で切断した状態を拡大して示す要部拡大断面図である。
図3】実施形態に係る車両用グローブボックスの上端部を車両前方側から見た斜視図である。
図4図2に対応する要部拡大断面図であり、車両の前面衝突時における荷重の流れを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態に係る車両用グローブボックス10(以下、単に「グローブボックス10」と称する)について、図面を参照して説明する。なお、各図に適宜示す矢印UP、矢印FR及び矢印RHは、グローブボックス10が適用された車両Vにおける車両上下方向の上側、車両前後方向の前側、及び進行方向を向いて車両右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両幅方向の左右を示すものとする。
【0028】
(車室前部)
図1は、本実施形態に係るグローブボックス10が適用された車両Vの車室前部を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、車室の前部には、インストルメントパネル12が設けられている。
【0029】
インストルメントパネル12は、車両幅方向及び車両上下方向に延在されており、図示しない運転席及び助手席に着座した乗員に対する車両前方側に配置されている。また、インストルメントパネル12は、例えば、樹脂製の基材と、基材を覆って意匠面を構成する表皮材とを含んで構成されている。
【0030】
車両左側のインストルメントパネル12には、乗員が把持可能なグリップ部14が設けられている。グリップ部14は、インストルメントパネル12から上方へ突出されており、乗員が乗降する際にグリップ部14を把持することで、車両Vに容易に乗降できるように構成されている。
【0031】
インストルメントパネル12におけるグリップ部14よりも下方には、グローブボックス10が設けられている。なお、図1では、車両右側に運転席が設定された、所謂右ハンドル車とされており、車両左側にグローブボックス10が設けられているが、これに限定されない。例えば、運転席が車両左側に設定された左ハンドル車に本発明を適用してもよい。この場合、グローブボックス10は、運転席とは反対側の車両右側に配置される。
【0032】
図2は、図1の2-2線で切断した状態を拡大して示す、要部拡大断面図である。図2に示されるように、インストルメントパネル12の車両前方側には、骨格部材としてのインストルメントパネルリインフォースメント30(以下、適宜「インパネRF30」と称する。)が設けられている。
【0033】
(インパネRF30)
インパネRF30は、グローブボックス10よりも車両上方側を車両幅方向に延在された骨格部材であり、金属によって略円筒状に形成されている。また、インパネRF30の両端部は、図示しないフロントピラーに接合されており、インパネRF30には図示しないステアリングシャフト及びHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニットなどが支持されている。
【0034】
ここで、インパネRF30とグリップ部14とが補強部材32によって連結されている。補強部材32は、車両上下方向を厚み方向として車両前後方向に延在された長尺状の部材であり、補強部材32の前端部は、インパネRF30の外面に溶接などによって接合されている。また、補強部材32の後端部は、インストルメントパネル12の基材に重ね合わされている。
【0035】
一方、グリップ部14の内側にはグリップ補強材34が設けられており、グリップ補強材34の一端部がグリップ部14の内面に固定されている。また、グリップ補強材34の他端部がインストルメントパネル12の基部に重ね合わされている。そして、補強部材32及びグリップ補強材34がボルト36によってインストルメントパネル12に締結されている。このため、乗員がグリップ部14を把持するなどしてグリップ部14に作用した荷重は、補強部材32を介してインパネRF30に伝達される。
【0036】
(グローブボックス10)
グローブボックス10は、インストルメントパネル12の下部に形成された開口12Aに取付けられている。また、グローブボックス10は、グローブボックス本体11を備えており、グローブボックス本体11は、箱状の収容部20と、収容部20を開閉するドア部22とを含んで構成されている。
【0037】
本実施形態の収容部20は、樹脂によって形成されており、車両後方側が開口されている。収容部20の開口は、斜め下方側へ向けられており、後述するドア部22によって閉塞されている。
【0038】
収容部20は、底部を構成する下壁20Aと、天井部を構成する上壁20Bと、下壁20Aと上壁20Bとを繋ぐ立壁20Cとを含んで構成されている。下壁20Aは、車両前後方向及び車両幅方向に延在されており、車両幅方向から見て略水平に設けられている。
【0039】
立壁20Cは、車両上下方向及び車両幅方向に延在されており、立壁20Cの下端部が下壁20Aの前端部に接続されている。また、立壁20Cの上端部は、上壁20Bの前端部に接続されている。
【0040】
上壁20Bは、車両前後方向及び車両幅方向に延在されており、収容部20の上面を構成している。ここで、本実施形態では、収容部20の上壁20Bは、車両前後方向の中央部分が前部及び後部よりも車両上方に位置している。具体的には、上壁20Bの後部は、車両後方から車両前方へ向かうにつれて上方へ傾斜した後側傾斜部23となっており、上壁20Bの前部は、車両後方から車両前方へ向かうにつれて下方へ傾斜した前側傾斜部24となっている。また、後側傾斜部23と前側傾斜部24とは、中央部26によって車両前後方向に連結されている。
【0041】
このように、収容部20の上壁20Bは、後側傾斜部23、前側傾斜部24及び中央部26を含んで構成されており、後側傾斜部23と中央部26との間には第1角部P1が形成されている。また、前側傾斜部24と中央部26との間には第2角部P2が形成されている。第1角部P1及び第2角部P2はそれぞれ、インパネRF30よりも車両後方側を車両幅方向に延在された稜線となっている。
【0042】
収容部20の開口は、ドア部22によって閉塞されている。ドア部22は、樹脂によって形成されており、ドア部22の下端部22Aは、図示しないヒンジ機構を介して収容部20に回動可能に連結されている。また、ドア部22の上端部22Bは、閉状態で収容部20の開口縁部と対向しており、図示しないロック機構によって上端部22Bがインストルメントパネル12に係止されている。そして、ドア部22に設けた取手を操作することで、上端部22Bの係止状態が解除され、ドア部22が下端部22Aを中心に車両前方側へ回動されることで収容部20の開口が開放されるように構成されている。
【0043】
(凸ビード40及びリブ42)
ここで、収容部20の上端部から車両上方側へ衝撃吸収部が突出されている。本実施形態の衝撃吸収部は、凸ビード40及びリブ42を含んで構成されている。
【0044】
図3は、実施形態に係るグローブボックス10の上端部を車両前方側から見た斜視図である。図3に示されるように、凸ビード40及びリブ42は、車両幅方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0045】
具体的には、凸ビード40は、図2に示されるように、収容部20の上壁20Bの一部を車両上方側へ膨出させることで形成されている。また、凸ビード40は、車両前後方向に延在されており、車両幅方向から見て上壁20Bと同様の外形を有しており、前後に2つの角部を備えている。
【0046】
図3に示されるように、本実施形態では一例として、車両幅方向に間隔をあけて7つの凸ビード40が設けられている。凸ビード40はそれぞれ、車両幅方向に不等間隔で形成されており、乗員の膝が当接する位置、及び収容部20の強度分布などに基づいて凸ビード40の位置が設定されている。また、凸ビード40の前端部と収容部20の外枠部分との間には、略三角形状の三角リブ44が形成されている。
【0047】
一部の凸ビード40の上面にはリブ42が立設されている。リブ42は、車両幅方向を肉厚方向として車両前後方向に延在されている。また、本実施形態では一例として、リブ42が形成された凸ビード40と、リブ42が形成されていない凸ビード40が車両幅方向に交互に配設されている。
【0048】
例えば、リブ42の位置は、乗員の膝の位置と対応させてもよい。本実施形態では一例として、前面衝突試験用人体ダミーのAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)が標準的な姿勢で着座した場合における膝と対応する位置、及びAF05(米国人成人女性の5パーセンタイル)が標準的な姿勢で着座した場合における膝と対応する位置にリブ42が設けられている。
【0049】
リブ42の形状は、それぞれ異なる形状に形成されている。具体的には、リブ42の形状は、乗員の右膝に作用する荷重と左膝に作用する荷重が等しくなるように設計されている。
【0050】
また、収容部20の上壁20Bには、収容部20の内部を照らすためのイルミネーションのワイヤハーネスをクランプするクランプ座48が形成されており、クランプ座48と隣接して第2リブ46が形成されている。第2リブ46は、凸ビード40上に立設されたリブ42とは異なり、上壁20Bに直接立設されている。なお、クランプ座48は、インパネRFと車両前後方向に対向して配置されており、インパネRFと接触することで変形される。
【0051】
図2に示されるように、凸ビード40及びリブ42は、インパネRF30に対して車両後方側に対向配置されている。また、リブ42の前端部42Aは、車両幅方向から見てインパネRF30の形状に沿って湾曲している。具体的には、リブ42の前端部42Aは、インパネRF30の外形に沿って略円弧状に形成されており、インパネRF30に対して所定の隙間をあけて配置されている。
【0052】
ここで、本実施形態のリブ42は、肉薄に形成されているため、車両Vの前面衝突時にインパネRF30に当たって変形することで、エネルギー(衝突荷重)を吸収できるように設計されている。
【0053】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0054】
本実施形態に係る車両用グローブボックス10によれば、グリップ部14によって乗員が車両Vに乗降し易くなる。また、グリップ部14が補強部材32によってインパネRF30に連結されているため、乗員がグリップ部14に力を入れてもグリップ部14が変形するのを抑制できる。
【0055】
ここで、本実施形態のように、インパネRF30とグリップ部14とが補強部材32によって連結された構造では、収容部20の上端を補強部材32よりも下方に配置する必要が生じるため、車両Vの前面衝突時に収容部20をインパネRF30に当てるのが困難となる。本実施形態では、収容部20の上端部から車両上方側へ衝撃吸収部である凸ビード40及びリブ42を突出させることで、リブ42をインパネRFに当ててグローブボックス本体11の車両前方側への移動を抑制できる。この効果について、図4を参照して説明する。
【0056】
図4は、図2に対応する要部拡大断面図であり、車両Vの前面衝突時における荷重の流れを説明するための概略図である。なお、車両Vの前面衝突時には、グローブボックス10が車両前方側へ移動するが、図4では、説明の便宜上、グローブボックス10が移動する前の状態を図示している。
【0057】
図4に示されるように、車両Vの前面衝突時には、乗員PAが車両前方側へ慣性移動することで、乗員PAの膝部PNがグローブボックス10のドア部22に当接する。グローブボックス10は、膝部PAから入力された荷重によって車両前方側へ移動し、インパネRF30がリブ42に前端部42Aに接触する。これにより、グローブボックス10が車両前方側へ移動するのを抑制できる。
【0058】
また、インパネRF30にリブ42が接触することで、リブ42が塑性変形してエネルギー(衝突荷重)の少なくとも一部が吸収される。このように、リブ42を設けた簡易な構造でグローブボックス本体11から乗員PAへ作用する反力を低減できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、凸ビード40上にリブ42が設けられている。これにより、リブ42がインパネRF30から受けた反力が凸ビード40に伝達されるため、リブ42の塑性変形の後に凸ビード40が塑性変形される。このように、リブ42及び凸ビード40が段階的に塑性変形してエネルギーが吸収されることで、より効果的に乗員PAへ作用する反力を低減できる。
【0060】
さらにまた、本実施形態では、過大な衝突荷重が作用した際には、凸ビード40の塑性変形に伴ってグローブボックス本体11が塑性変形する。具体的には、収容部20の上壁20Bが上に凸となるように変形する。
【0061】
このとき、上壁20Bには、上壁20Bの稜線となる第1角部P1及び第2角部P2が形成されている。このため、インパネRF30からグローブボックス10へ作用する荷重L1を第1角部P1で負担し、膝部PNからグローブボックス本体11に入力される荷重L2を第2角部P2で負担する。これにより、グローブボックス本体11に作用する荷重を第1角部P1及び第2角部P2に分散させることができる。すなわち、稜線が1つのみの構造と比較して、収容部20が潰れにくくなり、乗員PAが車両前方へ移動するのを抑制できる。角部が1カ所のみに設けられた構造と比較して、グローブボックス本体11が容易に変形するのを抑制できる。
【0062】
以上のように、過大な衝突荷重が作用した場合であっても、乗員PAの車両幅方向への慣性移動を抑制しつつ、リブ42、凸ビード40、上壁20Bの順で変形してエネルギーを吸収することで乗員PAの保護性能を向上できる。
【0063】
この結果、車両Vの前面衝突時にグローブボックス本体11が車両前後方向に移動するのを抑制することで、乗員PAがインストルメントパネル12に衝突するのを抑制できる。また、凸ビード40及びリブ42によってエネルギーの少なくとも一部が吸収されることにより、乗員PAがインストルメントパネル12に接触した場合であっても、乗員PAに入力される衝突荷重を低減できる。
【0064】
また、本実施形態では、リブ42の前端部42AがインパネRF30の形状に沿って湾曲している。これにより、リブ42とインパネRF30との接触面積を広く確保することができ、リブ42を効果的に変形させることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、図3に示されるように、凸ビード40及びリブ42が車両幅方向に間隔をあけて複数設けられているため、インパネRF30からグローブボックス本体11へ入力される反力をグローブボックス本体11の車両幅方向に分散させることができる。特に、本実施形態では、凸ビード40及びリブ42を設けた位置と、標準的な姿勢で着座した乗員PAの膝部PNの位置とを対応させているため、膝部PNから受けた荷重を効果的にインパネRF30へ伝達させることができる。
【0066】
以上、実施形態に係る車両用グローブボックスについて説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、図3に示されるように、7つの凸ビード40と、4つのリブ42を設けたが、これに限定されず、凸ビード40及びリブ42の数については所望のエネルギー吸収性能に応じて適宜変更してもよい。また、第2リブ46が設けられていない構造としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、図2に示されるように、リブ42の前端部42Aを略円弧状に形成したが、これに限定されず、他の形状に形成してもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態では、凸ビード40上にリブ42を設けたが、これに限定されず、凸ビード40とリブ42をそれぞれ別体で設けた構造を採用してもよい。さらにまた、リブ42のみを備えた構成を採用してもよい。
【0069】
さらにまた、上記実施形態では、上壁20Bに2つの稜線を設けたが、これに限定されず、上壁20Bを他の形状に形成してもよい。例えば、上壁20Bを車両前後方向から見て略円弧状に形成してもよい。この場合、上壁20Bに作用する荷重を効果的に分散させることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、衝撃吸収部として凸ビード40及びリブ42を備えた構造としたが、他の衝撃吸収部と設けてもよい。例えば、上壁20Bに別体のロッドなどの長尺状部材を設け、長尺状部材を変形させて衝撃を吸収してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 車両用グローブボックス
11 グローブボックス本体
12 インストルメントパネル
14 グリップ部
20 収容部
22 ドア部
30 インストルメントパネルリインフォースメント(骨格部材)
32 補強部材
40 凸ビード(衝撃吸収部)
42 リブ(衝撃吸収部)
図1
図2
図3
図4