(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120775
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240829BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240829BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027815
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】520470752
【氏名又は名称】AGRIST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】長田 拓
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、農業の現場で採用しやすい手法により、圃場で移動するロボットの高精度な自己位置推定を実現する圃場管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】圃場管理システムは、軌道と、軌道に沿って設けられた位置情報特定手段を備える。ロボットは、軌道に沿って移動する移動手段を備え、圃場に関する環境情報を収集する環境センサを備える。自己位置生成手段は、少なくともロボットと位置情報特定手段の間で授受される情報に基づいて、ロボットの自己位置情報を生成する。情報管理装置は、自己位置情報と、環境情報とに基づいて、前記圃場を管理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設けられた軌道と、
前記軌道に沿って設けられた位置情報特定手段と、
前記軌道に沿って移動する移動手段を備え、前記圃場に関する環境情報を収集する環境センサを備えたロボットと、
少なくとも前記ロボットと前記位置情報特定手段との間で授受される情報に基づいて、前記ロボットの自己位置情報を生成する自己位置生成手段と、
前記自己位置情報と、前記環境情報とに基づいて、前記圃場を管理する情報管理装置と、
を備えた圃場管理システム。
【請求項2】
前記情報管理装置は、前記自己位置情報と前記環境情報に基づいて、前記ロボットの行動を制御することを特徴とする請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記自己位置生成手段は、前記ロボットと前記位置情報特定手段との間で授受される情報と、前記移動手段から得る移動量とに基づいて、前記ロボットの自己位置情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記自己位置生成手段で生成した前記ロボットの自己位置と、
前記ロボットにおける前記環境センサの位置と、
前記環境センサにより取得した前記環境センサに対する収穫物の位置と、に基づいて、前記収穫物の3次元位置を特定し、
前記収穫物の3次元位置に基づいて、前記圃場を管理することを特徴とする、請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【請求項5】
前記軌道は、圃場の畝に沿って空中に張られたワイヤーロープであって、
前記ロボットは、前記ワイヤーロープから吊り下げられた状態で、前記軌道に沿って移動することを特徴とする、請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【請求項6】
異なる複数の時点における前記環境情報を収集し、前記環境情報の時間的な変化に基づいて、前記圃場を管理することを特徴とする請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記環境情報は、前記収穫物の生育情報を含んでおり、
前記生育情報の時間的な変化に基づいて、前記収穫物の収穫適期を推定することを特徴とする、請求項6に記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記位置情報特定手段は、近距離無線通信を用いて情報を送受信することを特徴とする、請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で移動するロボットの高精度な自己位置推定を実現する圃場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物を栽培する圃場において、ロボットの活用とIoT化による管理の高度化が進んでいる。
【0003】
従来、ロボットを用いる圃場の運用においては、GPSやSLAM、オドメトリ等の手法によってロボットの位置を推定し、圃場の管理を行なっている。また、非特許文献1のように、個々の果実等の位置を特定してそのマップを作成し、圃場管理に活用することが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】施設園芸を対象としたトマト果実自動収穫ロボットの開発(日本ロボット学会誌 Vol.39 No.10 , pp921-925 , 2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビニールハウスのような比較的小規模の圃場では、GPSやSLAMなどの高価な自己位置推定技術は採用が難しく、その運用管理も容易ではない。また、オドメトリは簡易な手法で広く普及しているものの、圃場という環境ではタイヤのスリップや横滑りなどもあって、自己位置推定で十分な精度を得ることができない。
【0006】
そこで、本発明は、農業の現場で採用しやすい手法により、圃場で移動するロボットの高精度な自己位置推定を実現する圃場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1)圃場に設けられた軌道と、前記軌道に沿って設けられた位置情報特定手段と、前記軌道に沿って移動する移動手段を備え、前記圃場に関する環境情報を収集する環境センサを備えたロボットと、少なくとも前記ロボットと前記位置情報特定手段との間で授受される情報に基づいて、前記ロボットの自己位置情報を生成する自己位置生成手段と、前記自己位置情報と、前記環境情報とに基づいて、前記圃場を管理する情報管理装置と、を備えた圃場管理システム。
【0009】
上記構成によれば、圃場で移動するロボットは、その軌道に沿って設けられた位置情報特定手段との間で情報を授受することによって、自己位置情報を生成する。これにより、高価なシステムを導入することなく、農業の現場でも採用しやすい簡易な手法にてロボットの自己位置推定が可能となる。
【0010】
(2)前記情報管理装置は、前記自己位置情報と前記環境情報に基づいて、前記ロボットの行動を制御することを特徴とする上記(1)に記載の圃場管理システム。
【0011】
上記構成によれば、ロボットは自己位置情報と環境情報に基づいて制御されるため、圃場に関する多様な情報に基づき、より高度な制御を実現することが可能となる。
【0012】
(3)前記自己位置生成手段は、前記ロボットと前記位置情報特定手段との間で授受される情報と、前記移動手段から得る移動量とに基づいて、前記ロボットの自己位置情報を生成することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の圃場管理システム。
【0013】
上記構成によれば、ロボットの自己位置情報は、位置情報特定手段との間で授受される情報と、移動手段から得る移動量とに基づいて生成される。
【0014】
これにより、高価なシステムを導入することなく、農業の現場でも採用しやすい簡易な手法にて、より精度の高いロボットの自己位置情報の生成を実現することができる。
【0015】
(4)前記自己位置生成手段で生成した前記ロボットの自己位置と、前記ロボットにおける前記環境センサの位置と、前記環境センサにより取得した前記環境センサに対する収穫物の位置と、に基づいて、前記収穫物の3次元位置を特定し、前記収穫物の3次元位置に基づいて、前記圃場を管理することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の圃場管理システム。
【0016】
上記構成によれば、収穫物の3次元位置は、ロボットの自己位置と、ロボットにおける環境センサの位置と、環境センサに対する収穫物の位置とに基づいて特定される。
【0017】
これにより、高価なシステムを導入することなく、農業の現場でも採用しやすい簡易な手法にて個々の収穫物の3次元位置を把握することが可能となる。
【0018】
(5)前記軌道は、圃場の畝に沿って空中に張られたワイヤーロープであって、前記ロボットは、前記ワイヤーロープから吊り下げられた状態で、前記軌道に沿って移動することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の圃場管理システム。
【0019】
上記構成によれば、ロボットは、地面を走行することなく、空中に張られたワイヤーロープに沿って移動するため、正確に軌道に沿った移動を実現することができ、凸凹で滑りやすい地面の影響を受けることなく、より高精度に自己位置情報を生成することが可能となる。
【0020】
(6)異なる複数の時点における前記環境情報を収集し、前記環境情報の時間的な変化に基づいて、前記圃場を管理することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の圃場管理システム。
【0021】
上記構成によれば、環境情報の時間的な変化に基づいて圃場を管理するため、より精度の高い将来予測に基づいた圃場管理が可能となる。
【0022】
(7)前記環境情報は、前記収穫物の生育情報を含んでおり、前記生育情報の時間的な変化に基づいて、前記収穫物の収穫適期を推定することを特徴とする、上記(6)に記載の圃場管理システム。
【0023】
上記構成によれば、収穫物の生育情報の時間的な変化に基づいて、収穫適期を推定するため、より精度の高い収穫適期の情報に基づいた圃場の管理が可能となる。
【0024】
(8)前記位置情報特定手段は、近距離無線通信を用いて情報を送受信することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の圃場管理システム。
【0025】
上記構成によれば、位置情報特定手段とロボットは近距離無線通信を用いて情報を送受信するため、より安価で簡易な手法による高度な自己位置情報の生成が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、農業の現場で採用しやすい簡易で安価な手法により、圃場で移動するロボットの高精度な自己位置推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係る第1の実施形態を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る第1の実施形態の変形例を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る第2の実施形態を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、圃場に置けるロボットのイメージ図である。
【
図5】
図5は、収穫物の3次元位置を特定するフローを示す図である。
【
図6】
図6は、収穫物の3次元位置を可視化した3Dマップである。
【
図7】
図7は、3Dマップを更新するフローを示す図である。
【
図8】
図8は、時系列データの活用パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態の一例を説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
以下の実施形態の説明では、収穫対象となる収穫物として、ピーマンを一例として説明するが、本発明はピーマンに限らず、様々な野菜や果物等の収穫に適用することができる。例えば、キュウリ、トマト、みかん、イチゴ、ナス、りんご等の野菜や果物の収穫において用いることが可能である。
【0029】
1.第1の実施形態
図1は、本発明にかかる第1の実施形態を説明する模式図である。ビニールハウスなどに代表される圃場には軌道10が設けられており、軌道10に沿って位置情報特定手段11が設けられている。ロボット12は、軌道10に沿って移動し、環境センサ14を介して様々な情報を収集することができる。
【0030】
軌道10は空中に張られたワイヤーロープやレール、或いは、地面に設置されたレールや磁気マーカーなどであってもよい。位置情報特定手段11は、ロボット12との間で情報を授受することが可能な手段であり、RFID(Radio frequency identifier)のように電波の送受信によって非接触で情報の授受を可能とする。RFIDとして、具体的には近距離無線通信NFC(Near Field Communication)を用いることが好ましい。軌道10からほど近い場所に位置情報特定手段11としてNFCタグを設置し、ロボット12が当該NFCタグの前を通過するタイミングで情報を授受する構成とすることができる。
【0031】
軌道10に沿って移動するロボット12には、自己位置生成手段15が搭載されている。ロボット12は、位置情報特定手段11であるNFCタグの前を通過するタイミングで、情報の授受を行い、自己位置生成手段15は、当該NFCタグと紐づけられる位置情報を用いることで、正確なロボットの自己位置情報を生成する。
【0032】
ロボット12と位置情報特定手段11の間で行われる情報授受の手段は、電波による通信のみに限る必要はなく、一方に2次元バーコードを設置し、他方にカメラを設置することでこれを読み取る手法や、ロボット12が前を通過することで作動する各種スイッチなどの手法が採用し得る。
【0033】
位置情報特定手段11は、軌道10の端部に設けられていてもよいし、中間部に設けられていても良い。自己位置生成手段15は、位置情報特定手段11との間で授受する情報のみではなく、移動手段13から軌道10に沿ったロボット12の移動量を取得し、これらの情報に基づいて計算することで、より正確なロボット12の自己位置情報を生成することができる。
【0034】
位置情報特定手段11を軌道10の端部に設けた場合は、ロボット12は軌道10の端部で自己位置情報を生成し、その位置からの移動量を移動手段13から取得して、これを加味することで自己位置情報を更新していくことができる。或いは、軌道10の端部をゼロ地点と設定し、移動手段13から得た移動量に基づいて自己位置情報を更新すると共に、軌道10の途中にある位置情報特定手段11の前を通過するタイミングで、当該位置情報特定手段11に紐づく位置情報を得て、ロボット12の自己位置を補正することで、自己位置情報を更新することも可能である。
【0035】
軌道10が長い場合は、移動手段13から取得するロボット12の移動量に誤差が生じやすいことから、軌道に沿った所定の間隔で位置情報特定手段11を設け、個々位置情報特定手段11の前を通過するタイミングで、位置情報を得て、ロボット12の自己位置を補正することが望ましい。
【0036】
ロボット12の自己位置情報の生成には校正が必要になるが、ロボット導入時に全軌道を走行させて、軌道10の端部の位置や位置情報特定手段11の位置など、自己位置情報の生成に必要な情報を学習させる方法や、ロボットの初期位置(軌道の端部など)をゼロ地点と特定して走行の度に校正する方法などが採用し得る。
【0037】
ロボット12には、環境センサ14が搭載されており、ロボット周辺の環境情報を収集する。環境情報としては、収穫対象となる果実を含む画像や、照度、温度、湿度、CO2濃度など、様々な情報があり得る。ロボット12は、圃場内を軌道10に沿って移動しながら、環境センサ14を介して様々な情報を収集し、これらの情報をロボットの自己位置情報と紐づけて記憶することが可能となっている。
【0038】
ロボット12には、情報管理装置16が搭載されており、ロボットの自己位置情報と、環境情報とに基づいて、ロボットの行動を制御することが可能となっている。このような制御を行うことにより、収穫、施肥、灌水、農薬散布など様々な作業の効率化と高度化が実現できる。
【0039】
図2の変形例に示す通り、情報管理装置16は、必ずしもロボット12の内部に搭載される必要はなく、ロボット12との通信を確保しながら、ロボット12の外部に設置することも可能である。この際、情報管理装置16はロボット12のみでなく、位置情報特定手段11と通信する構成としても構わない。
【0040】
さらに、自己位置生成手段15は、必ずしもロボット12の内部に搭載される必要はなく、
図2の情報管理装置16と同様にロボット12の外部に設けることが可能である。例えば、位置情報特定手段11のIDと、その前を通過した時刻情報をロボット12が取得し、当該IDや時刻情報を自己位置生成手段15に送信することで、ロボット12の外部で、ロボット12の自己位置情報を生成することも可能である。
【0041】
2.第2の実施形態
図3に示す通り、ロボット12は収穫ハンド17を備えることができる。ロボット12が収穫ハンド17を備えると、情報管理装置16からの指令により、より最適化された収穫行動を行うことが可能となる。
【0042】
ロボット12は、軌道10に沿って移動しながら、環境センサ14で周辺環境のデータを収集する。収集したデータは情報管理装置16で処理されることで、次に優先して収穫すべき作物の場所が特定され、ロボット12はその場所に移動して、収穫作業を行うことができる。圃場内のどの位置の収穫物をどの時期にどれだけ収穫するかを最適化するようにロボット12の行動を制御することができる。
【0043】
図4にピーマンを収穫するロボットのイメージ図を示す。ピーマンを栽培する畝に沿って軌道であるワイヤーロープ10が張られている。ロボット12の天井部には移動手段13が設けられ、当該移動手段13は複数の滑車を備えて、これにワイヤーロープを通すことによって、ロボット12が移動可能に吊り下げられた状態となっている。
【0044】
圃場に張られたワイヤーロープ10は、所定の間隔で図示しない支柱や梁によって支えられており、ワイヤーロープ10の垂れ下がりの量を一定値以下に抑えている。位置情報特定手段11は、当該支柱や梁に所定間隔で設置されており、ロボット12が位置情報特定手段11の前を通過する際の両者間の距離は10cm以内、好ましくは1~2cmとなっている。
【0045】
ロボット12に設けられる環境センサ14は、収穫物であるピーマンの画像を取得するカメラを採用し得る。
図5は、カメラ14で取得した画像から、収穫物であるピーマンの個々の3次元位置を特定してピーマンの3Dマップを作成するプロセスを示している。
【0046】
まず、
図5のカメラ14がピーマンを含む画像を取得し、画像処理装置18が当該画像から収穫対象となるピーマンの位置を特定する。ここで得ることのできるピーマンの位置は、カメラ14に対するピーマンの相対的な座標となっている。情報管理装置16は、画像処理装置18からカメラ14に対する収穫物の位置情報161を取得する。また、情報管理装置16は、ロボット全体を制御する制御装置19からロボットに対するカメラの位置情報162を取得する。ここで、ロボットに対するカメラ14の相対的な座標は、収穫ハンド17にカメラ14が備え付けられている場合は、収穫ハンド17の動きに合わせて変動する可変値となり、ロボット本体にカメラ14が備え付けられている場合は固定値となる。
【0047】
情報管理装置16は、上述のカメラに対する収穫物の位置情報161と、ロボットに対するカメラの位置情報162と、自己位置生成手段15で生成したロボットの自己位置情報163とに基づいて、収穫物の3次元位置160を特定することが可能となる。
【0048】
収穫物である個々のピーマンの3次元位置を特定することができると、
図6に示すように、圃場にあるピーマンの3Dマップを作成することが可能となる。3Dマップには、ピーマンの果実の3次元位置のみでなく、実になる前段階の花の位置情報や、カメラ14で取得した画像情報から得た病害虫に関する情報などを表示することも可能である。また、収穫対象となるピーマンを特定するためにピーマンの縦横のサイズやその成長速度など、生育状況に関するあらゆるデータと紐づけることも可能である。
【0049】
この3Dマップに、後述するピーマンの収穫適期の予測情報などを加味することで、情報管理装置16はロボット12による最適な収穫プランを生成することが可能となり、この収穫プランをロボット12に指示することで、収穫行動の最適化を図ることができる。また、ロボットによる収穫行動だけでなく、3Dマップを用いることで作業者による収穫行動の最適化も図ることができる。
【0050】
ピーマンの3Dマップは、ピーマンが成長するに従い、随時更新することが必要となる。3Dマップの更新プロセスを
図7に示す。まず、ステップ20において、ロボット或いはカメラが所定の位置にあり、その位置から見えるピーマンの3次元位置を特定する。次にステップ21にてロボットが移動するが、カメラがロボットのアーム等に設置されている場合は、ロボットは動かずにカメラの位置のみを移動させてもよい。そして、ステップ22において、移動した後の位置から見えるピーマンの3次元位置を特定する。ステップ23では、ステップ20と22で取得したピーマンの3次元位置を比較し、その差分のピーマンを特定する。最後にステップ24において、ステップ23で特定した差分のピーマンのうち、新たに認識されたピーマンの情報を3Dマップに統合することで、3Dマップは更新される。
【0051】
ステップ23で特定した差分のピーマンのうち、消失した(見えなくなった)ピーマンは、カメラの画角から外れたり、葉などの影に隠れて認識できなくなったりしたものであるが、見えなくなっただけで存在する果実であるため、継続して管理対象とする。ただし、収穫作業を経た後は、収穫されたものとして、管理対象から削除する場合もある。
【0052】
ピーマンの果実は、カメラ14とピーマンとの間に葉が存在することによって、カメラ14では認識できない場合があるが、
図7に示した手順で異なる場所からピーマンの3次元位置を特定し、これらの情報を統合することで、より精度の高い3Dマップを生成することが可能となる。
【0053】
一度作成した3Dマップは、環境や状況によって様々であるが、1日1回や数日に1回といった頻度で、全体を統合するとよい。この統合においては、一度作成した3Dマップと、その直前(前日や数日前)に作成した3Dマップとを比較し、個々のピーマンを対応付け、収穫行動、株の成長、自然落下などに起因する位置ずれなどを考慮しながら、個々のピーマンの3D座標や生育情報などを更新するとよい。このような全体の統合を繰り返すことで、個々のピーマンに関する時系列の情報を把握することが可能となる。
【0054】
このように、上述のピーマンに関する情報は、3次元的に収集するのみではなく、同情報を時系列で収集することが有益である。
図8に時系列データを収集した場合のデータ活用方法を示す。時系列のデータがあれば、収穫物の生育状況を適時に把握し、収穫適期の予測が可能となる。ピーマンの3Dマップ(31)に、収穫量や収穫適期の予測情報を組み合わせることで(32)、ロボットの収穫行動の最適化を行うことができる(33)。
【0055】
また、時系列の画像データをAI教師データとして整理し(34)、機械学習させて学習済みモデルを生成し(35)、これを用いることで、収穫物の異常などを早期に正確に認識し、人に対して通知したり作業提案したりすることも可能となる(36)。また、個々のピーマン単位ではなく、株やエリアごとの時系列情報として整理することもできるため(37)、生育環境の良否判断が容易となり(38)、施肥や灌水などの環境制御に反映させることも可能となる(39)。
【0056】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態及び変形例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態及び変形例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 圃場管理システム
10 軌道
11 位置情報特定手段
12 ロボット
13 移動手段
14 環境センサ
15 自己位置生成手段
16 情報管理装置
160 収穫物の3次元位置
161 カメラに対する収穫物の位置情報
162 ロボットに対するカメラの位置情報
163 ロボットの自己位置情報
17 収穫ハンド
18 画像処理装置
19 制御装置
2 3Dマップを更新するフロー
3 時系列データの活用パターン