(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120780
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】かつら用装着部材のユニット、かつら用装着部材及びかつら
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A41G3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027825
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 麻理子
(57)【要約】
【課題】安全で違和感なく、かつ容易にかつらを装着できるとともに、捕捉した毛髪の係止状態を維持しつつ、かつらベースの浮き上がりを抑制できる新規なかつら用装着部材のユニットの提供。
【解決手段】かつらベースに固定される帯状のベース部11と、ベース部11の長手方向に沿った長辺のうちの片側から、長手方向と交差する方向へ延びるとともに、かつらベースから離れるように湾曲又は傾斜した弾性変形可能な複数の脚部12と、脚部12に設けられ、毛髪を係止するための係止部13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベースに固定される帯状のベース部と、
前記ベース部の長手方向に沿った長辺のうちの片側から、前記長手方向と交差する方向へ延びるとともに、前記かつらベースから離れるように湾曲又は傾斜した弾性変形可能な複数の脚部と、
前記脚部に設けられ、毛髪を係止するための係止部と、
を備えたことを特徴とする、かつら用装着部材のユニット。
【請求項2】
請求項1記載の前記ユニットを少なくとも二列備えたかつら用装着部材であって、
各列の前記ユニットの前記ベース部の前記長辺どうしが隣接し、各列の前記ユニットの前記脚部が前記長辺に対して同じ側に延びている
ことを特徴とする、かつら用装着部材。
【請求項3】
前記脚部の長さが、前記ユニットごとに異なっている
ことを特徴とする、請求項2記載のかつら用装着部材。
【請求項4】
かつらベースと、
前記かつらベースに固定された少なくとも一つの請求項1記載の前記ユニットと、を備えたことを特徴とする、かつら。
【請求項5】
かつらベースと、
前記かつらベースに固定された少なくとも一つの請求項2又は3記載の前記かつら用装着部材と、を備えたことを特徴とする、かつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら用装着部材のユニット、かつら用装着部材及びかつらに係り、より詳細には、かつらを自毛に係止させることによって頭部に装着するためのかつら用装着部材のユニット、そのユニットで構成されたかつら用装着部材、及びそのかつら用装着部材を備えたかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かつらを頭部に装着する装着部材として、金属製の反転挟持具が多く使用されている。反転挟持具の櫛歯を反らせて自毛を挟持することによって、かつらが頭部へ装着される。
しかし、反転挟持具は固い金属製であり、また、反転挟持具の櫛歯で挟持された自毛が引っ張られて痛みを感じることがあった。そのうえ、反転挟持具でかつらを装着する際には、通常、かつらの複数箇所に配置された反転挟持具の櫛歯を反らせて自毛を挟み込む必要があった。
【0003】
金属製の反転挟持具を用いずにかつらを装着するかつら用装着具の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のかつら用装着具は、基体シートの一側面に突設された多数のモノフィラメントを備えている。かつら装着の際に、モノフィラメントは、装着者の頭部の頭皮と当接し、自毛や他のモノフィラメントと絡み合いながら基体シートの方向へ戻るようにU字状に撓む。その結果、モノフィラメントどうしが自毛を挟みながらランダムに絡み合うことによって、かつらが頭部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全で違和感なく、かつ容易にかつらを装着できるとともに、捕捉した毛髪の係止状態を維持しつつ、かつらベースの浮き上がりを抑制できる新規なかつら用装着部材のユニット、かつら用装着部材、及びその装着部材を備えたかつらを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかつら用装着部材のユニットは、かつらベースに固定される帯状のベース部と、前記ベース部の長手方向に沿った長辺のうちの片側から、前記長手方向と交差する方向へ延びるとともに、前記かつらベースから離れるように湾曲又は傾斜した弾性変形可能な複数の脚部と、前記脚部に設けられ、毛髪を係止するための係止部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明のかつら用装着部材は、前記ユニットを少なくとも二列備えたかつら用装着部材であって、各列の前記ユニットの前記ベース部の前記長辺どうしが隣接し、各列の前記ユニットの前記脚部が前記長辺に対して同じ側に延びている
ことを特徴としている。
【0008】
また、本発明のかつらは、かつらベースと、前記かつらベースに固定された少なくとも一つの前記ユニットとを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明のかつらは、かつらベースと、前記かつらベースに固定された少なくとも一つの前記かつら用装着部材とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全で違和感なく、かつ容易にかつらを装着できるとともに、捕捉した毛髪の係止状態を維持しつつ、かつらベースの浮き上がりを抑制できる新規なかつら用装着部材のユニット、かつら用装着部材、及びそのかつら用装着部材を備えたかつらを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るかつら用装着部材のユニットの斜視図である。
【
図2】第1実施形態のかつら用装着部材のユニットを備えたかつらの模式図であり、かつらベースにおけるかつら用装着部材のユニットの装着位置を示す。
【
図3】(A)は、
図1に示したかつら用装着部材のユニットの側面図であり、(B)は、
図1に示したかつら用装着部材のユニットの下面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係るかつら用装着部材のユニットの斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るかつら用装着部材の斜視図である。
【
図6】(A)は、
図5に示したかつら用装着部材の側面図であり、(B)は、
図5に示したかつら用装着部材の下面図である。
【
図7】第2実施形態のかつら用装着部材を備えたかつらの模式図であり、かつらベースにおけるかつら用装着部材の装着位置を示す。
【
図8】(A)は、本発明の第3実施形態に係るかつら用装着部材の側面図であり、(B)は、本発明の第3実施形態に係るかつら用装着部材の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1~
図4を参照して、第1実施形態に係るかつら用装着部材のユニット、かつら用装着部材、及びそのかつら用装着部材を備えたかつらを説明する。本実施形態では、一つのかつら用装着部材のユニットでかつら用装着部材が構成されている。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態のかつら用装着部材のユニット(以下、「ユニット」とも称する。)10は、かつらベース(
図2参照)100に固定される帯状の平坦なベース部11と、ベース部11の長手方向に沿った長辺のうちの片側から、長手方向と交差する方向へ延びるとともに、かつらベース100から離れるように湾曲又は傾斜した弾性変形可能な複数の脚部12と、脚部12に設けられ、毛髪を係止するための係止部13と、を備えている。
【0014】
図2に、かつらを構成するかつらベース100におけるユニット10の装着位置を示す。
かつらベース100は、複数のフィラメントを撚り合わせた糸部材を網状に編み込んで形成されている。フィラメントには、例えば、ポリエステル、ナイロン又はポリウレタン(スパンデックス(登録商標))等の合成樹脂を用いるとよい。
【0015】
図2に示す例では、模式的に示したユニット10を、かつらベース100の裏面の周囲に沿って配置している。同図に示す例では、各ユニット10のベース部11の長手方向が、毛髪が流れる方向を横切るように、また、各ユニット10の脚部12が、かつらベース100の外周へ向かって延びるように、各ユニット10を配向させている。
なお、かつらベース100におけるユニット10の配置及び配向方向は、これに限定されない。
【0016】
図1に示すユニット10のベース部11は、上面11aと当該上面11aの反対側の下面11bとを有し、帯状の平坦な形状を有している。ベース部11は、その上面11aがかつらベース100に、例えば、熱圧着、接着剤による接着、又は縫着等により固定される。
また、かつらベース100の一部分をそのままベース部11としてもよい。その場合、例えば、ベース部11が、かつらベース100の一部を構成するように、かつらベース100とベース部11とが一体に編み込まれて形成されてもよい。
【0017】
脚部12は、弾性変形可能な合成樹脂製の線状部材で形成され、
図3(A) に示すように、ベース部11の長手方向に沿った長辺のうちの片側からのみ、長手方向と交差する方向へ延び、上面11aを含む平面よりも下面11b側へ傾斜している。
【0018】
脚部12はまた、
図3(B)に示すように、ベース部11の下面11b側から見てベース部11の片側にのみ延びている。
なお、本実施形態では、各脚部12を均一な長さにして、各脚部12の先端が、
図1に示す破線L上に揃うようにしているが、複数の長さの脚部を配列してもよく、例えば、長い脚部と短い脚部を交互に設けてもよい。
また、本実施形態では、各脚部12が互いに実質的に平行になるように、各脚部12を配列しているが、各脚部12は、互いに平行でなくてもよく、また、同一平面内に配列しなくてもよい。
【0019】
図3(B)に示すように、係止部13は、脚部12の先端からベース部11の長手方向に沿った破線Lの延在方向に、T字形状となるように両側へ延在し、両側の先端がそれぞれ脚部12側が内側となるように湾曲した形状を有している。
【0020】
このような構成により、ユニット10を設けたかつらベースを頭部に載せて周縁部を手で押圧することにより、ユニット10の係止部13で毛髪が係止されて容易に装着できる。また、ユニット10は金属ピンのように挟着するものではないため、容易に取り外すことができる。例えば、ユニット10を毛髪の先端方向へ梳くように動かすことによって、ユニット10を毛髪から容易に取り外すことができる。
また、ユニット10は金属ピンのように目立たないため、ユニット10が金属ピンのように透けて見えることがなく、装着したかつらを自然に見せることができる。
【0021】
特に、ユニット10の脚部12が、ベース部11の片側にのみ設けられているため、脚部12をベース部11の両側に設けた場合よりも、ユニット10の浮き上がりが抑制される。その結果、かつらベース100の浮き上がりが抑制され、頭部へのかつらのフィット感を向上させることができる。さらに、ベース部が平坦であるので、ベース部を湾曲させた場合よりもユニット10の浮き上がりが抑制され、かつらの頭部へのフィット感を一層向上させることができる。
【0022】
(変形例)
図4を参照して、第1実施形態の変形例を説明する。
本変形例では、ベース部11の上面11aに付加シート15が設けられている。付加シート15は、ベース部11の輪郭よりも周囲に張り出している。装着部材10を、付加シート15を介してかつらベース100(
図2参照)に固定することにより、接着剤で接着する場合には、より広い面積で接着でき、また、縫着する場合には、より広い縫い代を確保できる。これにより、装着部材10をかつらベース2により確実に固定することができる。
【0023】
(第2実施形態)
図5~
図7を参照して、第2実施形態に係るかつら用装着部材、及びそのかつら用装着部材を備えたかつらを説明する。
以下に説明する各実施形態では、機能の共通する部分に共通した符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、二列のユニット10で、かつら用装着部材(以下、「装着部材」とも称する)20を構成している。二列のユニット10は、各列のユニット10のベース部11の長辺どうしが隣接するように配列されて一体になっている。ユニット10の配列にあたっては、各列のユニット10の脚部12が長辺に対して同じ側に延びるように脚部12の延在方向を揃えている。
【0025】
脚部12をベース部11の片側にのみ設けた場合、脚部12をベース部11の両側に設けた場合と比較して、毛髪を捕捉する係止部13の数が半減し、ユニット10が毛髪を係止する力が低下する。
そこで、本実施形態のように、ユニット10を二列にして装着部材20を構成することによって、脚部12をベース部の片側のみに設けた場合であっても、装着部材20の浮き上がりを抑制しつつ、毛髪を係止する力を向上させることができる。
【0026】
図7に、かつらを構成するかつらベース100における装着部材20の配置を示す。同図に示す例では、模式的に示した装着部材20を、かつらベース100の頭部に装着する面の周囲に沿って配置している。同図に示す例では、装着部材20を構成する各ユニット10のベース部11の長手方向が、毛髪が流れる方向を横切るように、また、脚部12が、かつらベース100の外周へ向かって延びるように、各装着部材20を配列している。
【0027】
(第3実施形態)
図8を参照して、第3実施形態に係るかつら用装着部材(以下、「装着部材」とも称する。)を説明する。
本実施形態の装着部材は、脚部の長さが、ユニットごとに異なっている点で、第2実施形態のものと異なっている。
【0028】
一般に、装着部材の脚部が長い方が、装着部材のベース部と係止部との間により多くの自毛を捕捉して係止でき、頭部にかつらをよりしっかりと安定的に装着できる。
しかし、かつら装着時に装着部材の位置の自毛の残存量が少ない場合に、装着部材の脚部が長すぎると、捕捉される自毛の毛量に対して脚部の長さが余ってしまい、却って装着部材が浮き上がってしまう恐れがある。特に、複数列のユニットを連結した装着部材において、後列のユニットの脚部が残存毛量に対して長すぎると、装着部材の浮き上がりが顕著になってしまう恐れがある。
【0029】
そこで、本実施形態では、残存毛量が少ない場合であっても装着部材の浮き上がりを抑制できるように、後列ユニットの脚部の長さを最前列ユニットの脚部の長さよりも短くしている。具体的には、装着部材30を二列のユニット10、10aのうち、長辺に対して脚部12、12aが延びている方向の最前列に位置する最前列ユニット10の脚部12の長さよりも、最前列ユニット10よりも後列に位置する他のユニットである後列ユニット10aの脚部12aの長さを短くしている。
【0030】
このように、後列ユニット10aの脚部12aの長さを、最前列ユニット10の脚部12の長さよりも短くしたことより、二列のユニット10、10aでかつら用装着部材30を構成しても、後列ユニット10aの脚部によって、かつらベース100が持ち上がることを低減することができる。その結果、毛髪を係止する力を向上させつつ、装着部材30の浮き上がりを一層低減して、頭部へのかつらのフィット感を一層向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態の装着部材30も、かつらベース100に、第2実施形態の
図7に示したように配置して固定するとよい。
【0032】
以上、本発明のかつら用装着部材の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係るかつら用装着部材は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。例えば、上述した第2及び第3実施形態では、かつら用装着部材を二列のユニットで構成した例を説明したが、本発明では、三列以上のユニットを連結してかつら用装着部材を構成してもよい。
また、第2及び第3実施形態では、二列のユニットのベース部を一体連続させた例を説明したが、隣接するユニットのベース部の長辺どうしを密着させず、ユニット間に隙間を設けてもよい。
【0033】
また、第3実施形態では、後列ユニットの脚部の長さを前列ユニットの脚部の長さよりも短くした装着部材の例を説明したが、装着部材の位置の自毛の残存量が多い場合などは、後列ユニットの脚部の長さを前列ユニットの脚部の長さよりも長くしてもよい。
さらに、第3実施形態では、装着部材が二列のユニットで構成された例を説明したが、装着部材が三列以上のユニットで構成されている場合にも、複数のユニットのうち長辺に対して脚部が延びている方向の最前列に位置する最前列ユニットの脚部の長さよりも、最前列ユニットよりも後列に位置する他のユニットの脚部の長さを短くしたり長くしたりしてもよい。
【0034】
また、上述した各実施形態では、個々の係止部を均一な形状とした例を説明したが、本発明では、個々の係止部の形状は均一でなくてもよい。また、個々の係止部の形状は、例えば、T字形状やL字形状などの形状とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 かつら用装着部材のユニット(最前列ユニット)
10a かつら用装着部材のユニット(後列ユニット)
11 ベース部
11a 上面
11b 下面
12、12a 脚部
13 係止部
15 付加シート
20、30 かつら用装着部材
100 かつらベース