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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120791
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027851
(22)【出願日】2023-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】矢代 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高宮 浩一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC03
2C056EC11
2C056EC35
2C056FA09
2C056FB09
2C056HA11
2C056HA13
2C056HA38
2C056HA44
2C056KB13
(57)【要約】
【課題】 簡易な装置構成により、立体形状の被記録媒体の曲面に対して、高画質の画像の記録を実施できるインクジェット記録装置を提供する
【解決手段】 記録ヘッドと、曲面を有する被記録媒体の載置手段と、第1の方向に記録ヘッドを移動させる第1移動手段と、記録ヘッドを第2の方向に移動させる第2移動手段と、第3の方向に被記録媒体を移動させる第3移動手段と、曲面をN個の記録区間に区分する区分手段と、N個の記録区間の各々に対する前記ノズル面の向きを設定する設定手段と、記録動作をN個の記録区間に順番に実行する記録制御手段とを有し、
記録制御手段は、N個の記録区間の内のM番目の記録区間に対する記録動作終了後(M+1)番目の記録動作の開始前に、被記録媒体を第2の方向に移動させるとともに記録ヘッドを第3の方向に移動させてノズル面が対向する記録区間とノズル面の向きを変更するインジェット記録装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に所定方向に頂点を有する凸形状の曲面を有する立体形状の被記録媒体対して画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記被記録媒体の前記外表面に対してインクを吐出するための複数のノズルが配列されたノズル面を備える記録ヘッドと、
前記被記録媒体を載置するための載置手段と、
前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に前記記録ヘッドを移動させる第1移動手段と、
前記記録ヘッドを前記第1の方向と略直交する第2の方向に移動させる第2移動手段と、
前記第1の方向及び前記第2の方向と略直交する第3の方向に前記被記録媒体を移動させる第3移動手段と、
前記曲面をN(≧2)個の記録区間に区分する区分手段と、
前記区分手段により区分されたN個の前記記録区間の各々に対する前記ノズル面の向きを設定する設定手段と、
前記所定方向が前記第3の方向と平行になるように前記載置手段に載置された前記被記録媒体の前記曲面に画像を記録する場合、前記ノズル面をN個の前記記録区間に順番に対向させ、前記ノズル面が対向した前記記録区間に対して前記設定手段により設定された前記ノズル面の向きで前記記録ヘッドを前記第1移動手段により前記第1の方向に移動させながら前記ノズルから前記インクを吐出させて画像を記録する記録動作をN個の前記記録区間の各々に対して順番に実行する記録制御手段と、
を有し、
前記記録制御手段は、N個の前記記録区間の内のM(N≧M≧1)番目の前記記録区間に対する前記記録動作終了後(M+1)番目の前記記録区間に対する前記記録動作の開始前に、前記載置手段に載置された前記被記録媒体を前記第2移動手段により前記第2の方向に移動させる移動動作及び前記第3移動手段により前記記録ヘッドを前記第3の方向に移動させる移動動作を行うことにより、前記ノズル面が対向する前記記録区間を(M+1)番目の前記記録区間に変更するとともに、前記設定手段により前記ノズル面の向きを(M+1)番目の前記記録区間に対応した向きに設定することを特徴とするインジェット記録装置。
【請求項2】
前記被記録媒体が前記外表面に平面を有し、前記平面が前記第1の方向及び前記第3の方向と平行になるように前記載置手段に載置された前記被記録媒体の前記平面に画像を記録する場合、前記記録制御手段は前記設定手段により前記平面に前記ノズル面を対向させ、前記記録ヘッドを前記第1移動手段により前記第1の方向に移動させながら前記ノズルから前記インクを吐出させて画像を記録する記録動作及び前記被記録媒体を前記第3移動手段により前記第3の方向に移動させる移動動作を交互に実行することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記設定手段が、前記第1の方向に平行な回転軸を中心にして記録ヘッドを回動させることにより、前記外表面に対する前記ノズル面の向きを設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に対して直接画像を記録する画像記録装置として、インクを吐出するノズルが所定の方向に複数配列されたノズル列を有するインクジェットヘッドを走査させながら被記録媒体に対してインクを吐出して画像の記録を実施するインクジェット記録装置が知られている。近年、立体形状である被記録媒体の外表面に対して画像記録を実施するインクジェット記録装置が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-172379号公報
【特許文献2】特許第7148189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、立体形状の被記録媒体の側面に曲面がある場合であっても画像記録を実施できるインクジェット記録装置が要望されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アーム型ロボットの先端に記録ヘッドを搭載して立体形状の記録対象物に対して画像記録を行うインクジェット記録装置が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に提案されるような、アーム型ロボットは、アーム型ロボット自体が高額であるという課題や、リニアモーターやボールネジに比して移動中の速度や移動量の精度を出すことが比較的困難であることから移動する区間中の記録画質向上に関する課題などが想定される。
【0007】
また、特許文献2には、立体形状の被記録媒体に対して、記録ヘッドが搭載されたキャリッジを、鉛直方向を軸にして回転させたうえで、水平方向の第1軸と、この第1軸と直交する第2軸とを同時に移動させながら被記録媒体の外表面と記録ヘッドとの距離を調整しながら画像記録を実施するインクジェット記録装置が提案されている。
【0008】
しかし、特許文献2に提案されるような、インクジェット記録装置の場合、キャリッジを第1軸と第2軸とに同時に移動させるための駆動軸の同期制御等のための装置構成の複雑化やそれに伴う高額化につながり得る。また曲面形状によっては記録画質が低下してしまう虞がある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、上記の課題を解決し、簡易な装置構成により、立体形状の被記録媒体の曲面に対して、高画質の画像の記録を実施できるインクジェット記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0011】
すなわち、本発明においては、外表面に所定方向に頂点を有する凸形状の曲面を有する立体形状の被記録媒体対して画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記被記録媒体の前記外表面に対してインクを吐出するための複数のノズルが配列されたノズル面を備える記録ヘッドと、
前記被記録媒体を載置するための載置手段と、
前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に前記記録ヘッドを移動させる第1移動手段と、
前記記録ヘッドを前記第1の方向と略直交する第2の方向に移動させる第2移動手段と、
前記第1の方向及び前記第2の方向と略直交する第3の方向に前記被記録媒体を移動させる第3移動手段と、
前記曲面をN(≧2)個の記録区間に区分する区分手段と、
前記区分手段により区分されたN個の前記記録区間の各々に対する前記ノズル面の向きを設定する設定手段と、
前記所定方向が前記第3の方向と平行になるように前記載置手段に載置された前記被記録媒体の前記曲面に画像を記録する場合、前記ノズル面をN個の前記記録区間に順番に対向させ、前記ノズル面が対向した前記記録区間に対して前記設定手段により設定された前記ノズル面の向きで前記記録ヘッドを前記第1移動手段により前記第1の方向に移動させながら前記ノズルから前記インクを吐出させて画像を記録する記録動作をN個の前記記録区間の各々に対して順番に実行する記録制御手段と、
を有し、
前記記録制御手段は、N個の前記記録区間の内のM(N≧M≧1)番目の前記記録区間に対する前記記録動作終了後(M+1)番目の前記記録区間に対する前記記録動作の開始前に、前記載置手段に載置された前記被記録媒体を前記第2移動手段により前記第2の方向に移動させる移動動作及び前記第3移動手段により前記記録ヘッドを前記第3の方向に移動させる移動動作を行うことにより、前記ノズル面が対向する前記記録区間を(M+1)番目の前記記録区間に変更するとともに、前記設定手段により前記ノズル面の向きを(M+1)番目の前記記録区間に対応した向きに設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記の構成とすることで、上記課題を解決し、簡易な装置構成により、立体形状の被記録媒体の曲面に対して、画像の記録を実施できるインクジェット記録装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す概略正面図である。
図3】キャリッジ周辺部の構成例を示す概略側面図である。
図4】被記録媒体の形状例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係るインクジェット記録装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図6】第1の面、第2の面及び第3の面の各々を印刷する際のキャリッジの動作例を説明する模式図である。
図7】本実施形態に係るインクジェット記録装置により被記録媒体の第1の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。
図8】被記録媒体の第2の面が平面である場合において、本実施形態に係るインクジェット記録装置により第2の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に係るインクジェット記録装置により被記録媒体の第1の面と対向する第3の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。
図10】第2の面に曲面がある場合のキャリッジの動作例を示す模式図である。
図11】被記録媒体の第2の面に曲面がある場合において、本実施形態に係るインクジェット記録装置により第2の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。
図12】異なる第2の面の各々を印刷する場合におけるキャリッジと載置手段の動作例を説明する模式図である。
図13】インクタンク、インク供給路、インク排出路、記録ヘッドの構成例を示す模式図である。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す概略斜視図であり、図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す概略正面図であり、図3は、キャリッジ周辺部の構成例を示す概略側面図である。以下、図1~3を用いて本実施形態に係るインクジェット記録装置の概要について説明する。
【0016】
図1から図3に示すインクジェット記録装置1の構成例の概要は次の通りである。
【0017】
まず、被記録媒体18の外表面にインクを吐出するノズルが所定の方向のノズル列方向に配列されたノズル面を有する記録ヘッド12及び被記録媒体18の外表面に着弾したインクに活性光線を照射するための活性光線照射装置13がキャリッジ11に搭載されている。キャリッジ11は、キャリッジ保持部16の下方に搭載されている。また、キャリッジ11の上方には、インクを保持するためのインクタンク14及びインクタンク14と記録ヘッド12とを接続して記録ヘッド12にインクを供給するためのインク供給路15が配置されている。さらに、キャリッジ11の下方には、被記録媒体18を載置面上に載置して固定するための載置手段17が配置されている。
【0018】
キャリッジ保持部16には、キャリッジ11を載置面と略平行かつノズル列方向と略直交する方向であるX方向に移動させるためのX軸移動手段21が接続されている。また、載置手段17には、載置手段17を載置面と略平行かつX方向と略直交するY方向に移動させるためのY軸駆動手段22が接続されている。さらに、キャリッジ保持部16には、キャリッジをX方向及びY方向と略直交する方向であるZ方向に移動させるためのZ軸駆動手段23が接続されている。
【0019】
キャリッジ保持部16には更に、キャリッジ11を、ノズル列方向と交差する方向に延びる回転軸(α軸)を中心にして、記録ヘッド12のノズル面を第1の面から第2の面、第3の面と各々対向させるように、Y方向と交差する円弧の軌道を描くα方向(図3に図示する矢印方向)に回動させて、キャリッジ11に搭載された記録ヘッド12のノズル面の向きを変更するためのα軸駆動手段24が接続されている。また、載置手段17には、載置面と直交する方向に延びる回転軸(θ軸)を中心にした回転方向(θ方向)に載置手段17を回動させるθ軸駆動手段25が接続されている。
【0020】
また、X方向の一方端部(図1及び図2に図示する例であれば右側)付近には、キャリッジ11を載置手段17付近から退避させる退避位置20が設けられている。通常はキャリッジ11をX軸駆動手段21の駆動により退避位置20に移動させて、退避位置にて、記録ヘッド12のインクパージやワイピング等のメンテナンス動作、Y軸駆動手段22、Z軸駆動手段23、α軸駆動手段24及びθ軸駆動手段25の各々の駆動等、必要な各種動作を行うことができる。退避位置20は装置構成に応じて左側にしてもよいし、その他の適宜の位置に配置してもよい。
【0021】
以下、各部の詳細について説明する。
【0022】
記録ヘッド12には、図示しないインクの供給口とノズルまでを連通するインク流路とがあり、さらにインクを吐出するためのノズルが所定のノズル列方向に複数配列されたノズル面を有しており、インクをノズルから画像データに応じて被記録媒体18に吐出することで画像の記録を実施する。カラー画像を記録するインクジェット記録装置には、通常は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色分のインクを吐出するための記録ヘッド12が、複数個、ノズル列方向と略直交する方向に所定の間隔を空けて搭載される。また、必要に応じて、要求される画像形成に必要とされるホワイト(W)、クリア(CL)等の特色インクを吐出するための記録ヘッド12をさらに搭載することもできるし、必要としない色に対応する記録ヘッド12は省略することもできる。さらに、記録ヘッド12としては、1個の記録ヘッド12で1色のインクを吐出できるものを用いてもよく、1個の記録ヘッド12で2色以上の異なる種類のインクを吐出できるもの(多色インク対応記録ヘッド)を用いることも可能である。また、記録ヘッド12をノズル列方向に並べて配置することで、一度に記録できる画像のノズル列方向の幅を広げることもできる。本実施形態に係るインクジェット記録装置には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色分のインクに対応した4個の記録ヘッド12がキャリッジ11に搭載されている。
【0023】
画像記録に用いられるインクが活性光線硬化型インクである場合、キャリッジ11には、さらに、活性光線照射装置13が搭載される。活性光線照射装置13には、紫外線照射装置、電子線装置など、用いる活性光線硬化型インクの性質に応じて適宜のものを選択できるが、本実施形態においては、紫外線硬化型インクを用いることから、これに対応して紫外線照射装置を採用している。また、紫外線照射装置に用いるランプは、水銀、メタルハライド、LED等、適宜の形式のものを選択できる。画像記録に用いられるインクが溶剤系インク、水系インク等、活性光線硬化型インクではない場合は、活性光線照射装置13は省略することもできるし、代わりに各種熱乾燥装置を適宜に配置することもできる。以下、活性光線照射装置13による活性光線照射の工程の説明は省略するが、活性光線硬化型インクを使用する場合は、後述の画像記録動作の後に必要に応じて活性光線照射装置13による活性光線照射工程を随時行う。
【0024】
インクタンク14は、通常はインクジェット記録装置1で使用されるインクの種類の各々に対応した数が配置される。インクタンク14には、インクと、インクの液面の上部の空間が格納されており、図示しない圧力調整口とこの空間とが連通し、印刷時は、インクタンク14内の空間の圧力を負圧に維持することで、記録ヘッド12のノズルからインクが漏れないように、かつノズル開口部においてインクを吐出するのに適したメニスカス形状を維持するように制御されている。また、記録ヘッド12のクリーニング動作を実施する場合は、インクタンク14内の空間の圧力を正圧若しくは大気圧に切り替えることで、記録ヘッド12のノズルからインクを強制排出する動作を行っている。インクタンク14の構成については、上記に限られるものではなく、ノズル開口部のインクのメニスカス形状の維持等の制御を適宜実施できる他の構成を選択することも可能である。
【0025】
インクタンク14と記録ヘッド12とは、インク供給路15を介して接続され、インクタンク14から記録ヘッド12にインクを供給する。インク供給路15には、配管に適した適度な柔軟性や可撓性を有する樹脂製チューブが用いられる。インク供給路15の形状は適宜のものを選択できるが、本実施形態では、スパイラルの形状にした配管を用いている。本実施形態におけるインクジェット記録装置1では、後述するように、キャリッジ11を回転させることで、記録ヘッド12の向きを変更させることができるが、この際に、インクタンク14と記録ヘッド12との距離が変動することから、インク供給路15はこの距離が離れた場合でも長さが足りるような構成にする必要がある。しかしインク供給路15を単に長くすると、インクタンク14と記録ヘッド12との距離が近くなった場合にインク供給路15の折れ曲がりが発生する可能性があり、これによりインク供給路15の内径の断面積の急激な変化によるインク供給路15内の圧力変動が生じうる。さらにインク供給路15に折れ曲がりが生じると、X軸駆動手段21の駆動によりキャリッジ11をX方向に移動させた際に折れ曲がった部分に生じた部分にはX方向のG力の影響が強く発生し、インク供給路15内の圧力変動が生じうる。これらの圧力変動が記録ヘッド12のノズル開口部のインクメニスカス形状に影響を生じせしめ、インクの吐出安定性を悪化させ、印刷画質の劣化を生じせしめる。そこで、本実施形態では、インク供給路15の形状をスパイラル形状にすることで、伸縮容易な構成にし、もって上記の圧力変動が生じる虞れを軽減させている。当然ながら、インクタンク14の設置位置を、インクタンク14と記録ヘッド12との距離変動に応じて移動させて追従させる構成も想定されるし、インク供給路15の形状を伸縮容易な他の構成にすることも想定される。
【0026】
図13は、インクタンク、インク供給路、インク排出路、記録ヘッドの構成例を示す模式図である。記録ヘッド12のノズル開口部のインクのメニスカス形状維持のため、記録ヘッド12の図示しないインク流路の水圧を安定させることを目的として、記録ヘッド12のインク排出口と、インクタンク14に納められたインク上方の負圧で満たされた空間とを、インク排出路19配管により接続する構成も想定される。この場合、インク排出路19についても、上記のインク供給路15と同様にスパイラルの形状の配管を用いることができる。さらに、この場合、図13に示すように、インク供給路15と、インク排出路19とをスパイラル形状にしたうえで、更にスパイラル部分を上下二重に組み合わせて連結し、途中で分岐させるという構成を採用することもできる。この構成により、複数の配管が配置されていたとしても、スパイラル部分が干渉することによる絡まり等を解消して、インク供給路15とインク排出口19の着脱の容易性向上等、メンテナンス性を向上させることができる。
【0027】
X軸駆動手段21、Y軸駆動手段22及びZ軸駆動手段23には、直線移動する駆動系である直動モーターが使用される。本実施形態における被記録媒体18は、立体形状であり、その複数面に画像記録を実施するが、ロボットアームを使用すると、費用の高額化や2点間の移動速度の精度が比較的不均一である等の懸念がある。特に、インクジェット記録装置では、2点間の移動中に記録ヘッド12からインクを吐出して画像記録を実施するため、2点間の移動速度の精度が重要である。そこで、本実施形態においては、ロボットアームに比して廉価でかつ2点間の移動速度の精度の均一性に優れる直動モーターを使用している。直動モーターの種類としてはリニアモーター、ボールネジ、タイミングベルトなど、適宜のものを選択できる。
【0028】
キャリッジ11は、記録ヘッド12や活性光線照射装置13等を適宜配置するのに適した構成に形成される。そして、キャリッジ11は、図3に示すようにα軸駆動手段24を介して、キャリッジ保持部16に保持されている。上記の通り、立体形状の被記録媒体18に画像記録を実施するために、α軸駆動手段24の回転駆動により、キャリッジ11に搭載された記録ヘッド12を前述のα方向に回転させて、ノズル面を被記録媒体18の被記録面の各々に適宜対向させる。α軸駆動手段24には、キャリッジ11を回転させ任意の位置に保持するのに適した回転モーターが適用される。回転モーターの種類としては、ステッピングモーターやサーボモーターなど、適宜のものを選択できる。
【0029】
ここで、α軸駆動手段24は、記録ヘッド12の回転中心がノズル列方向におけるノズル列の略中央となるように、かつ、ノズル面になるべく近くかつノズル面から突出して被記録媒体18に接触しない位置、すなわちノズル面のインクを吐出する方向の反対側に位置するように配置されることが好ましい。このようにすることで、記録ヘッド12を回転させた際の、記録ヘッド12内のインク流路内における水頭差を最小限にすることができ、ノズル開口部におけるインクのメニスカス形状の崩壊を防止して、インクの吐出安定性を確保することができる。
【0030】
載置手段17には、被記録媒体18の載置固定に適した真空吸着テーブルや磁石、静電チャック、アーム等、被記録媒体18の形状に応じた適宜の固定治具を選択できる。本実施形態では、真空吸着テーブルを用いている。なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置1において、載置手段17には、載置手段17を載置面と直交するθ軸を中心にθ方向に回転させるθ軸駆動手段25が接続されている。これにより、載置手段17自体を回転させることで、被記録媒体18を載置する向きを手動で変えずとも複数の第2の面の各々に画像記録を実施することができる。θ軸駆動手段25は、複数の第2の記録面の印刷は手動で被記録媒体18を載置する向きを変えることで対応するのであれば省略してもよい。
【0031】
図4は、被記録媒体の形状例を示す模式図である。被記録媒体18には、立体形状を有する様々な形状の媒体を選択できる。
【0032】
例えば図4(a)に示すように木口を有する厚みのある板形状の被記録媒体18でもよい。この場合、天面を第1の面と設定し、木口面の全周四面を第2の面と設定し、天面と対向する反対側の底面を第3の面と指定し、各々の面に対して後述の印刷シーケンスにより画像の記録動作を実施することで、意図する外表面の各々に画像記録を実施する。また、図4(b)のように、木口面の第2の面の断面が三角形や多角形の多数の平面の直線により構成される凸部を有する形状であり、第2の面が複数の面に分かれている場合であっても、各々の面に対して画像記録を実施することができる。
【0033】
また、図4(c)のように、木口面の第2の面が円弧形状の曲面を有する板状の被記録媒体18でもよい。図4(c)の拡大図に示すように、円弧形状の曲面の半径Rが異なる被記録媒体18であってもよい。さらに、図4(d)のように、第2の面の上端下端に円弧形状の曲面を有し、上端下端の曲面部分の端部の各々が直線でつながるよう構成されている形状であっても画像記録ができる。
【0034】
また、図4(e)のように、複数の第2の面の四隅が曲面である被記録媒体18でも、図4(f)のように外表面全体が複数の曲面により構成される複雑形状の立体物の被記録媒体18でもよい。この場合、被記録媒体18の外表面の所定の領域を分割して第1の面と第2の面、第3の面と設定してもよい。図4(e)、図4(f)のようなケースにおいては、第1の面、第2の面及び第3の面は、インクジェット記録装置1において画像を記録すべき面を特定するために便宜上設定される相対的なものとして、被記録媒体18の形状に応じて任意指定すればよい。以下の説明においては、第1の面は被記録媒体18の天面、第2の面は被記録媒体18の木口面(側面)、第3の面は被記録媒体18の裏面と設定した例を用いて説明する。なお、第3の面に画像記録を実施する場合は、第3の面は、載置手段17に載置された状態で、画像記録を実施したい部分が載置手段17の載置面からはみ出して一部の所定の部分領域だけ露出するように載置することが必要である。
【0035】
図5は、本実施形態に係るインクジェット記録装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、主に制御パソコン31を用いて制御されている。記録ヘッド12は制御ボード32の制御により、制御パソコン31の指令により、任意の画像データに応じたインク吐出を実施し、活性光線照射装置13は制御ドライバ39を介して、制御パソコン31の指令に応じて活性光線の照射を実施する。X軸駆動手段21、Y軸駆動手段22、Z軸駆動手段23、α軸駆動手段24、θ軸駆動手段25は、制御パソコン31の指令に応じて、コントローラー33の制御により、各々に対応するドライバ34、35、36、37、38を介して駆動をする。
【0036】
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置1による画像記録の動作の概要について説明する。インクジェット記録装置1は、シングルパス方式又はマルチパス方式のいずれによっても、画像記録を行うことができる。シングルパス方法とは、被記録媒体の外表面の所定の単位領域に対して画像を記録するために必要とされるインクの吐出を一回の画像記録動作によって全て完了させて、画像の記録を完了させる画像記録方式である。マルチパス方式とは、被記録媒体の外表面の所定の単位領域に対して画像を記録するために必要とされるインクの吐出を複数回(回数をパス数と称する)の画像記録動作に分けて行い、複数回の画像記録動作によって所定の単位領域に対する画像の記録を完了させる画像記録方式である。いずれの方式であっても、単位領域に対して記録ヘッドからインクを吐出して画像を記録する動作と、記録ヘッド12のノズル面を次の単位領域に対向するように移動させる送り動作とを、記録したい面全面へ所定の画像の記録を完了するまで各々交互に実施する。
【0037】
図6は、第1の面、第2の面及び第3の面の各々を印刷する際のキャリッジの動作例を説明する模式図である。図6では板状の被記録媒体18を用いる例を用いて説明する。
【0038】
図6(a)は、被記録媒体18の第1の面に対して印刷を実施する場合のキャリッジ11の向きを示している。第1の面を印刷する場合、図6(a)に示す通り、α軸駆動手段24の駆動によってキャリッジ11は記録ヘッド12のノズル面が第1の面に対向する向きとなっており、記録ヘッド12のノズルからインクを鉛直方向上方から下方に吐出することで、鉛直方向上方を向いている第1の面に画像記録を実施する。本実施形態に係るインクジェット記録装置1の例であれば、X軸駆動手段21の駆動によりキャリッジ11をX方向に移動させながら記録ヘッド12のノズルからインクを吐出して第1の面に着弾させて記録ヘッド12のノズル列の幅に応じた画像を第1の面に形成する画像記録動作と、この画像記録動作後にY軸駆動手段22の駆動により載置手段17をY方向に移動させることで被記録媒体18をY方向に移動させる送り動作とを各々印刷する画像データに応じた回数実施することで、第1の面への画像記録を完了する。
【0039】
図6(b)は被記録媒体18の第2の面に対して印刷を実施する場合のキャリッジ11の向きを示している。第2の面を印刷する場合、図6(b)に示す通り、α軸駆動手段24の駆動によってキャリッジ11は記録ヘッド12のノズル面が第2の面に対向する向きとなっており、記録ヘッド12のノズルからインクを水平方向に吐出することで、水平方向を向いている第2の面に画像記録を実施する。本実施形態に係るインクジェット記録装置1の例であれば、X軸駆動手段21の駆動によりキャリッジ11をX方向に移動させながら記録ヘッド12のノズルからインクを吐出して第2の面に着弾させて記録ヘッド12のノズル列の幅に応じた画像を第2の面に形成する画像記録動作と、この画像記録動作後にZ軸駆動手段23の駆動により記録ヘッド12をZ方向(上方から下方又は下方から上方のいずれの場合も想定される)に移動させる送り動作とを各々印刷する画像データに応じた回数実施することで、第2の面への画像記録を完了する。
【0040】
図6(c)は、被記録媒体18の第3の面に対して印刷を実施する場合のキャリッジ11の向きを示している。第3の面を印刷する場合、図6(c)に示す通り、α軸駆動手段24の駆動によってキャリッジ11は記録ヘッド12のノズル面が第3の面に対向する向きとなっており、記録ヘッド12のノズルからインクを鉛直方向下方から上方に吐出することで、鉛直方向下方を向いている第3の面に画像記録を実施する。本実施形態に係るインクジェット記録装置1の例であれば、X軸駆動手段21の駆動によりキャリッジ11をX方向に移動させながら記録ヘッド12のノズルからインクを吐出して第3の面に着弾させて記録ヘッド12のノズル列の幅に応じた画像を第3の面に形成する画像記録動作と、この画像記録動作後にY軸駆動手段22の駆動により載置手段17をY方向に移動させることで被記録媒体18をY方向に移動させる送り動作とを各々印刷する画像データに応じた回数実施することで、第3の面への画像記録を完了する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1においては、記録ヘッド12のノズル面と対向する被記録媒体18の外表面を、α軸駆動手段24の駆動により、第1の面、第2の面又は第3の面と、画像を記録したい面に応じて切り替えるとともに、画像を記録したい面に応じて、被記録媒体18の送り動作に使用する駆動手段を、Y軸駆動手段22又はZ軸駆動手段23に切り替えることで、一つのインクジェット記録装置1で、第1の面から第3の面までのいずれに対しても、比較的簡易な装置構成によって、画像の記録を実施できる。なお、画像の記録を実施したい外表面が第1の面と第2の面のみである場合や、第1の面と第3の面のみである、第2の面と第3の面のみである等、画像の記録が不要な面がある場合は、上記の動作のうち、必要な面への画像を記録するために必要な動作のみを実行すればよい。
【0042】
以下、図7から図9を用いて、第1の面、第2の面及び第3の面の各々に画像記録を実行するシーケンス例を説明する。これらのシーケンスは、図7図9のフローチャートに対応したプログラムに基づいて制御パソコン31の指令により実行される。なお、シーケンスはあくまでも一例であり、本発明を実施できる範囲で適宜追加変更省略しうることを確認する。
【0043】
まず、第1の面に画像記録を行うフローを説明する。図7は本実施形態に係るインクジェット記録装置により被記録媒体の第1の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。まず、ステップ71において、キャリッジ11を退避位置20まで移動させて退避させた状態で、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によってドライバ37を介してα軸駆動手段24を駆動させ、キャリッジ11を回転させて、記録ヘッド12のノズル面を第1の面に対向させ、画像記録できる状態(本実施形態であれば図6(a)に示す状態)にする。ステップ71は、既に記録ヘッド12のノズル面が第1の面に対向した状態であれば、省略してステップ72から開始することができる。
【0044】
その後、ステップ72において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ34を介してX軸駆動手段21を駆動しキャリッジ11をX方向に移動させるとともに、制御パソコン31に格納された画像データに応じた制御パソコン31の指令により制御ボード32を介して記録ヘッド12を動作させて、図6(a)のように記録ヘッド12のノズル面がインクを鉛直方向上方から下方に吐出できるように向いたノズルからインクを鉛直方向上方から下方に吐出することで、第1の面の所定の単位領域に対して画像記録を実施する画像記録動作を実施する。
【0045】
その後、ステップ73において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ35を介してY軸駆動手段22を駆動し載置手段17をY方向に移動させることで、被記録媒体18をY方向の上流から下流へ所定の距離移動させて、記録ヘッド12のノズル面を、第1の面の次の単位領域に対して画像記録を実施できる位置に移動させる送り動作を実施する。第1の面に画像記録を実施する際は、Y軸駆動手段22を駆動させて送り動作を実施することで、効率よく被記録媒体18を搬送して次の画像記録動作に移行することができる。
【0046】
その後、ステップ74で、第1の面に対して意図する画像の形成が完了したか否か判定し、完了してなければ再度ステップ72に戻り、ステップ74までを繰り返す。そして、意図する画像の形成が全て完了したら、図7に示すフローは全て終了となり、第1の面への画像形成が完了する。
【0047】
次に、第2の面に画像記録を行うフローを説明する。図8は本実施形態に係るインクジェット記録装置により被記録媒体の第2の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。まず、ステップ81において、キャリッジ11を退避位置20まで移動させて退避させた状態で、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によってドライバ37を介してα軸駆動手段24を駆動させ、キャリッジ11を回転させて、記録ヘッド12のノズル面を第2の面に対向させ、画像記録できる状態(本実施形態であれば図6(b)に示す状態)にする。ステップ81は、既に記録ヘッド12のノズル面が第2の面に対向した状態であれば、省略してステップ82から開始することができる。
【0048】
その後、ステップ82において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ34を介してX軸駆動手段21を駆動しキャリッジ11をX方向に移動させるとともに、制御パソコン31に格納された画像データに応じた制御パソコン31の指令により制御ボード32を介して記録ヘッド12を動作させて、図6(b)のように記録ヘッド12のノズル面がインクを略水平方向に吐出できるように向いたノズルからインクを略水平方向に吐出することで、第2の面の所定の単位領域に対して画像記録を実施する画像記録動作を実施する。
【0049】
その後、ステップ83において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ36を介してZ軸駆動手段23を駆動し、第2の面を向いた(図6(b)のように記録ヘッド12のノズル面がインクを略水平方向に吐出できるように向いた)キャリッジ11をZ方向に移動させることで、記録ヘッド12をZ方向に所定の距離を移動させて、記録ヘッド12のノズル面を、第2の面の次の単位領域に対して画像記録を実施できる位置に移動させる送り動作を実施する。Z方向への送り動作は、上方から下方、下方から上方いずれも想定される。このように、第2の面に画像記録を実施する際は、第1の面への画像記録とは異なり、送り動作に使用する駆動手段をY軸駆動手段22からZ軸駆動手段23に切り替えることで、効率よく記録ヘッド12と被記録媒体18を相対的に移動させ、第2の面に画像記録することができる。
【0050】
その後、ステップ84で、第2の面に対して意図する画像の形成が完了したか否か判定し、完了してなければ再度ステップ82に戻り、ステップ84までを繰り返す。そして、意図する画像の形成が全て完了したら、図8に示すフローは全て終了となり、第2の面への画像形成が完了する。
【0051】
なお、図4(b)に示すように、第2の面が断面三角形上の凸部がある場合など、複数の直線の平面により構成される場合は、本フローを更に実施し、第2の面を構成する各々の直線の平面の一つへの画像記録が完了した後、更に、ステップ81を実施して、α軸駆動手段24を駆動させ、キャリッジ11を回転させて、記録ヘッド12のノズル面をさらなる第2の面に対向させたうえで、フロー82以下を実施して画像記録を実施すればよい。
【0052】
次に、第3の面に画像記録を行うフローを説明する。図9は本実施形態に係るインクジェット記録装置により被記録媒体の第3の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。まず、ステップ91において、キャリッジ11を退避位置20まで移動させて退避させた状態で、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によってドライバ37を介してα軸駆動手段24を駆動させ、キャリッジ11を回転させて、記録ヘッド12のノズル面を第3の面に対向させ、画像記録できる状態(本実施形態であれば図6(c)に示す状態)にする。ステップ91は、既に記録ヘッド12のノズル面が第3の面に対向した状態であれば、省略してステップ92から開始することができる。
【0053】
その後、ステップ92において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ34を介してX軸駆動手段21を駆動しキャリッジ11をX方向に移動させるとともに、制御パソコン31に格納された画像データに応じた制御パソコン31の指令により制御ボード32を介して記録ヘッド12を動作させて、図6(c)のように記録ヘッド12のノズル面がインクを鉛直方向下方から上方に吐出できるように向いたノズルからインクを鉛直方向下方から上方に吐出することで、第3の面の所定の単位領域に対して画像記録を実施する画像記録動作を実施する。
【0054】
その後、ステップ93において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ35を介してY軸駆動手段22を駆動し、第3の面を向いた(図6(c)のように記録ヘッド12のノズル面がインクを鉛直方向下方から上方に吐出できるように向いた)キャリッジ11をY方向に移動させることで、被記録媒体18をY方向に所定の距離を移動させて、記録ヘッド12のノズル面を、第3の面の次の単位領域に対して画像記録を実施できる位置に移動させる送り動作を実施する。このように、第3の面に画像記録を実施する際は、第2の面への画像記録とは異なり、送り動作に使用する軸をZ軸駆動手段23からY軸駆動手段22に再度切り替えることで、効率よく記録ヘッド12と被記録媒体18を移動させ、第3の面に画像記録することができる。
【0055】
その後、ステップ94で、第3の面に対して意図する画像の形成が完了したか否か判定し、完了してなければ再度ステップ92に戻り、ステップ94までを繰り返す。そして、意図する画像の形成が全て完了したら、図9に示すフローは全て終了となり、第3の面への画像形成が完了する。
【0056】
以上で説明した3つのフローを適宜組み合わせて実施することで、被記録媒体18の第1の面から第3の面の全てに対して、簡易な装置構成のインクジェット記録装置1によって、意図する画像記録を実施することができた。
【0057】
以上が本実施形態に係るインクジェット記録装置1による画像記録の基本的な例であるが、さらに、図4(c)、(d)のように第2の面に曲面がある場合の画像記録について説明する。
【0058】
図10は、第2の面に曲面がある場合のキャリッジの動作例を示す模式図である。本実施形態においては、図4(c)のように、被記録媒体の第2の面が、所定方向に頂点を持つ半円柱状の凸形状の曲面を有するものである。この立体形状の被記録媒体を、所定方向がY軸と平行になるように載置手段17上に載置して第2の面に対して記録を行う。第2の面に図10のように曲面がある場合は、図8で説明したフローのように、単に記録ヘッド12のノズル面を水平方向に向けて、インクを略水平に吐出し、送り動作をZ軸の駆動で行うとした場合、曲面の端部とノズル面との距離が大きくなり、第2の面の端部(図10の例であれば上部と下部の端部)の画質の劣化につながる。そこで、図10に示すように、第2の面を任意の数の記録区間に区切り、記録区間の画像記録ごとに、α軸駆動手段24の駆動によりキャリッジ11を回転させて記録区間各々に順次対向させる動作と、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の一方又は両方の駆動を組み合わせた送り動作を行うことで、第2の面とノズル面との距離を所定の範囲に保ちつつ、簡易な装置構成で効率よく曲面のある第2の面にも画像記録を実施できる。
【0059】
本実施形態においては、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動は次の組み合わせで実施される。すなわち、記録区間が第2の面の頂点を含まずかつ当該頂点よりZ方向上方に位置する場合、図10(a)、(b)に示すように、Y軸駆動手段22を駆動させキャリッジ11がY方向かつ第2の面から離れる方向に移動させる動作と、Z軸駆動手段23を駆動させてキャリッジ11がZ方向下方かつ第2の面に近づく方向に移動させる動作を実施する。また、記録区間が第2の面の頂点を含む場合、図10(c)に示すように、Z軸駆動手段23のみを駆動させてキャリッジ11をZ方向下方に移動させる。また、記録区間が第2の面の頂点を含まずかつ当該頂点よりZ方向下方に位置する場合、図10(d)、(e)に示すように、Z軸駆動手段23を駆動させてキャリッジ11がZ方向下方かつ第2の面から離れる方向に移動させる動作と、Y軸駆動手段22を駆動させ、キャリッジ11がY方向かつ第2の面に近づく方向に移動させる動作を実施する。このように、ノズル面と第2の面との対向状況に応じて、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23とを組み合わせることで、ノズル面と第2の面との接触を避けつつ、ノズル面と第2の面との距離を保つとともに、送り動作を実現できる。なお、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動は、第2の面とノズル面とが対向した状態でY軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動の順番を適宜に工夫して行ってもよいが、ノズル面の破損防止のため第2の面とノズル面との接触は回避する必要がある。そこで、キャリッジ11を退避位置20に移動させたうえでY軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動を実施することで、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動の順番を不問とすることができるとともに、安全な位置で確実かつ高速にキャリッジ11の移動を実施できる。
【0060】
記録区間の設定方法、被記録媒体18の送り動作は、第2の面の形状に応じて任意設定される。例えば次の方法により設定することが想定される。
【0061】
記録区間の分割数N(≧2)は、制御パソコン31において、要求画質と要求記録速度に応じて、任意の整数を入力することで設定される。通常は、分割数が多くなるほど第2の面とノズル面との距離を均一に保てるため画質向上につながるが、その分α軸駆動手段24の駆動回数が多くなり、記録速度は遅くなる、という関係になる。
【0062】
Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の駆動の要否及び駆動量(キャリッジ11の移動量)は、第2の面を構成する曲面と直線による形状情報を把握したうえで、制御パソコン31に形状を特定するための数値を任意入力することで指定する。そのための第2の面の形状数値は任意の方法で把握することができるが、例えば次の方法が想定される。
【0063】
まず、図4(c)に示す形状の第2の面であれば、被記録媒体18の厚みtの数値及び曲面形状を有する部分の円弧の半径Rの数値を被記録媒体18の形状情報として把握する。Rとtを把握することで、tが第2の面を構成する半径Rの曲面の円の弦となり、第2の面を構成する円周を求めることができ、第2の面の形状を数値により把握することができる。そして、この形状に応じて、記録ヘッド12のノズル面と第2の面との距離を所定の数値になるように、Y軸駆動手段とZ軸駆動手段とを駆動させればよい。
【0064】
また、図4(d)に示すように、第2の面が複数の円弧形状の曲面と直線の面で構成されている場合は、被記録媒体18の厚みt、曲面形状を有する部分各々の円弧の半径R1、R2、直線部分を構成する面の長さt2を被記録媒体18の形状情報として把握する。これにより、第2の面を構成する円弧形状の曲面のカーブの度合いを数値により把握することができる。そして、この形状に応じて、記録ヘッド12のノズル面と第2の面との距離を所定の数値になるように、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23とを駆動させればよい。
【0065】
このように、第2の面の形状特定する数値を制御パソコン31内に入力したうえで、制御パソコン31に格納されたプログラムの演算により、送り動作によるキャリッジ11をY方向とZ方向との移動距離の送り量、記録区間の数(N)、Y軸駆動手段22とZ軸駆動手段23の組み合わせを設定する。
【0066】
以上に説明した第2の面に曲面がある場合の画像記録の動作のシーケンスを、図11を用いて説明する。図11は、被記録媒体の第2の面に曲面がある場合において、本実施形態に係るインクジェット記録装置により第2の面を印刷するシーケンス例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、ステップ1101で、記録区間の設定を行う。制御パソコン31に格納されたプログラムに、上記の分割数の情報、被記録媒体18の第2の面の形状情報等の必要情報を入力し、入力された情報に応じて、複数(N)の記録区間を設定し、各記録区間に対応してα軸駆動手段24の駆動、送り動作の選択(Y軸駆動手段22、Z軸駆動手段23の駆動の組み合わせ選択)等の設定を予め行う。
【0068】
次に、ステップ1102において記録区間の一つM(N≧M≧1)に画像記録を開始する。
【0069】
ステップ1102で記録区間の一つへの画像記録を開始した後、ステップ1103において、キャリッジ11のα軸、Z軸、Y軸に対する位置を算出し、以降のステップで各駆動手段の駆動の要否を判定する。
【0070】
次に、ステップ1104でα軸駆動手段24の駆動の要否を判定する。必要と判定した場合は、ステップ1105に移り、不要と判定した場合は、ステップ1105を省略し、ステップ1106に移る。
【0071】
ステップ1104でα軸駆動手段24の駆動が必要と判定した場合は、1105において、制御パソコン31の指令を受けたコントローラー33の制御によってドライバ37を介してα軸駆動手段24を駆動させ、キャリッジ11を回転させて、記録ヘッド12のノズル面を第2の面の画像記録を実施する記録区間に対向させる動作を実施する。
【0072】
次に、ステップ1106において、Y軸駆動手段22の駆動の要否を判定する。必要と判定した場合は、ステップ1107に移り、不要と判定した場合は、ステップ1107を省略し、ステップ1108に移る。
【0073】
ステップ1106でY軸駆動手段22の駆動が必要と判定した場合は、ステップ1107において、制御パソコンの指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ35を介してY軸駆動手段22の駆動により、キャリッジ11をY方向に移動させる動作を実施する。
【0074】
次に、ステップ1108において、Z軸駆動手段23の駆動の要否を判定する。必要と判定した場合は、ステップ1109に移り、不要と判定した場合は、ステップ1109を省略し、ステップ1110に移る。
【0075】
ステップ1108でZ軸駆動手段23の駆動が必要と判定した場合は、ステップ1109において、制御パソコンの指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ36を介してZ軸駆動手段23の駆動により、キャリッジ11をZ方向に移動させる動作を実施する。
【0076】
そして、ステップ1110において、制御パソコンの指令を受けたコントローラー33の制御によりドライバ34を介してX軸駆動手段21の駆動によりキャリッジ11をX方向に移動させるとともに、制御パソコン31に格納された画像データに応じた制御パソコン31の指令により制御ボード32を介して記録ヘッド12を動作させて、記録ヘッド12のノズルからインクを吐出することで、第2の面の所定の単位領域に対して画像記録を実施する画像記録動作を実施する。
【0077】
その後、ステップ1111で、第2の面全てに所望の画像記録が完了したか判定し、Noであればステップ1102に戻り、次の記録区間(M+1)に対する画像記録動作を行う。Yesであれば本フローのステップは全て終了となる。
【0078】
なお、複数の第2の面に画像記録を実施する場合は、例えば図12のような例が想定される。図12は異なる第2の面の各々を印刷する場合におけるキャリッジと載置手段の動作例を説明する模式図であり、本実施形態に係るインクジェット記録装置1を上方向から見た模式図である。図12(a)から図12(c)に示すように、第2の面のうちの一つに対する画像記録が終了した後、被記録媒体18が載置されている載置手段17を、載置手段17の上方から見た中心をZ方向に通過する回転軸を中心にして、θ軸駆動手段25の駆動により回転させることで、被記録媒体18を回転させ、記録ヘッド12のノズル面と、更なるもう一つの第2の面とを対向させることで、異なる第2の面各々に順次画像記録を行い、全ての第2の面の全周に亘って画像記録を実施することができた。
【0079】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0080】
本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0081】
1 インクジェット記録装置
11 キャリッジ
12 記録ヘッド
13 活性光線照射装置
14 インクタンク
15 インク供給路
16 キャリッジ保持部
17 載置手段
18 被記録媒体
19 インク排出路
20 退避位置
21 X軸駆動手段
22 Y軸駆動手段
23 Z軸駆動手段
24 α軸駆動手段
25 θ軸駆動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13