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特開2024-1208認知症の診断および/または予測のためのアドレノメデュリン(ADM)、ならびに認知症の治療または予防における使用のための抗アドレノメデュリンバインダー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001208
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】認知症の診断および/または予測のためのアドレノメデュリン(ADM)、ならびに認知症の治療または予防における使用のための抗アドレノメデュリンバインダー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
A61K39/395 N
C07K14/575
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174585
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2020542645の分割
【原出願日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】18155682.0
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514122524
【氏名又は名称】シュピーンゴテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】オッレ メランデル
(57)【要約】
【課題】罹患した患者を治療するため、およびADの症状を予防、遅延、低下を遅くする、または改善するための、新しい治療を提供すること。
【解決手段】本発明の内容は、認知症を診断する方法、認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、あるいは、認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または
d)認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが対象の体液のサンプルで測定され、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルが閾値レベルと比較され、および
ここで、
a)配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで、
b)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで、
c)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが、治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質が、治療または治療介入を受けて改善している、および/またはここで、前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法。
【請求項2】
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または、
d)認知症を患うリスクが高い対象の予防的治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比かもしれないマーカー比が測定され、そしてここで、前記マーカー比が閾値比と比較され、ならびにここで、前記プロ-アドレノメデュリンの断片が、PAMP:配列番号2)、MR-proADM:配列番号3、ADM-Gly:配列番号5、およびCT-proADM:配列番号6を含む群から選択され、および
ここで、
a)マーカー比成熟ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで
b)成熟ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のマーカー比が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで
c)前記マーカー比が治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質は、治療または治療介入を受けて改善しているか、あるいは、前記マーカー比に対して、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記対象の体液のサンプルにおいて測定され、およびプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルが、前記対象の体液のサンプルにおいて測定され、そして、両方の測定レベルが、数学式またはアルゴリズムによって組み合わせられ、ここで、前記数学アルゴリズムの結果が、認知症を診断するために、または認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するために、または認知症を患っている対象において治療を観察するかまたは治療介入を観察もしくはガイドするため、または認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するかまたは予防的治療介入を観察もしくはガイドするために使用される、方法。
【請求項3】
前記配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルが、15pg/ml以下であり、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/ml以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記比の閾値は、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液の群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記体液のサンプルが、サンプル採取の時点で認知症またはMCIの診断を受けたことがない対象から採取される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場を用いて治療するための患者を選択するための患者の層別化に使用され、ここで、前記抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場が、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTC(配列番号21)
に結合する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTC(配列番号21)
に結合する、抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項9】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項8に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、閾値レベルを下回る、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルを有し、および/または前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンもしくはその断片のレベルの比であるマーカー比を有し、およびここで、前記マーカーレベル比が比の閾値を下回る、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項10】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項9に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記プロ-アドレノメデュリンの断片が、PAMP(配列番号2)、MR-proADM(配列番号3)、ADM-Gly(配列番号5)およびCT-proADM(配列番号6)を含む群から選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項11】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項8~10のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、請求項8に記載の方法によって選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項12】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項9~11のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルが、15pg/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/ml以下である、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項13】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項9~11のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記マーカーレベル比が、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【請求項14】
対象の認知症の予防および治療における使用のための、請求項8~13のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、請求項7に記載の方法に従って選択され、ここで、前記体液のサンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液の群から選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の内容は:
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または
d)認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが対象の体液のサンプルで測定され、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルが閾値レベルと比較され、および
ここで、
a)配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで、
b)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで、
c)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが、治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質が、治療または治療介入を受けて改善している、および/またはここで、前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記レベル閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法である。
【0002】
本発明の別の内容は:
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または、
d)認知症を患うリスクが高い対象の予防的治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比かもしれないマーカー比が測定され、そしてここで、前記マーカー比が閾値比と比較され、および
ここで、
a)マーカー比ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで
b)マーカー比プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで
c)前記マーカー比が治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質は、治療または治療介入を受けて改善している、およびここで、前記マーカー比のレベルが前記比の閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法である。
【0003】
あるいは、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルと、前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルは、数学アルゴリズムによって組み合わせられ、ここで、前記アルゴリズムの結果が、認知症を診断するために、または認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するために、または認知症を患っている対象において治療を観察するかまたは治療介入を観察もしくはガイドするため、または認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するかまたは予防的治療介入を観察もしくはガイドするために使用される。
【背景技術】
【0004】
認知症は、記憶困難、言語障害、心理学的および精神医学的変化、ならびに日常生活動作の障害によって現れる症状や兆候の群発を特徴とする臨床的な症候群である。(サブタイピングと呼ばれることもある)異なった原因の認知症症候群は:アルツハイマー病(症例の約50%)、血管性痴呆(約25%)、アルツハイマー病と血管性痴呆の混合型(上記に含まれる、25%)、レヴィー小体痴呆(15%)、ならびに前頭側頭型認知症、局所性認知症(進行性失語症など)、皮質下痴呆(パーキンソン病認知症など)、および認知症症候群の二次的原因(頭蓋内病巣など)を含めた、その他のもの(合わせて約5%)である。
アルツハイマー病(AD)は認知症の最も一般的な形態である。ADは、世界の人々の年齢につれて急速に頻度を増し、より多くの人々がこの加齢性障害の主なリスク期間に入った。
【0005】
現在、5.3百万人超の米国民が罹患しており、犠牲者の数は2050年までに13百万人まで増加する;世界中では、罹患者の総数は、衝撃的な100百万人まで増加する(Alzheimer’s Association. 2015 Alzheimer’s disease facts and figures. Alzheimers Dement 2015;11:332-84)。AD脳の主要な分子機序と組織病理の顕著な特徴は、アミロイド前駆タンパク質(APP)の病理学的なアミロイド生成性切断、アミロイドβペプチド(β1-42)、二量体、三量体、オリゴマーを含めた様々なβ-アミロイド種の作出およびその後のアミロイド凝集およびプラークの堆積、タウタンパク質の異常な過リン酸化と凝集、進行性の細胞内神経原繊維変性、先天性免疫反応および炎症の中の変化を含めた生化学的事象の動的カスケードを含む。
【0006】
約5%の患者は、年齢65歳前に症状を発症し、「早期アルツハイマー病」(EOAD)の患者と特徴づけられるが、これらの患者の大部分は疾患の散発型を有するが、10~15%は、常染色体優性様式で通常遺伝される遺伝子の形態を有する。3つの遺伝子:プレセニリン1と2およびアミロイド前駆タンパク質(APP)遺伝子、がEOADの発症に関与することが示唆された。他の候補遺伝子もまた、調査中である。遺伝子型は、年齢30~40歳に始まる傾向があり、かつ、急速な経過をたどるが、そして一方、散発性EOADは、年齢50歳以降に始まる傾向があり、かつ、一般に、「遅発性アルツハイマー病」(LOAD)プロファイルに類似した時間的プロファイルを有する。
【0007】
精神状態検査では、記憶、簡単な問題を解決する能力、およびその他の思考能力を評価する。斯かる検査は、ヒトが症状を自覚している、日付、時間がわかるかどうか、そしてここでは各人が、単語のショートリストを覚え、指示に従い、および単純な計算をすることができるかどうかに関する総合的な判断をもたらす。ミニメンタルステートメント検査(MMSE)およびミニcog検査は、2つの一般的に使用された検査である。MMSEまたはFolstein検査は、認知障害を計測するための臨床および検査設定で大規模に使用される30ポイントのアンケートである(Pangman, et al. 2000. Applied Nursing Research 13 (4): 209-213; Folstein et al. 1975. Journal of Psychiatric Research. 12 (3): 189-98)。MMSEの間、医療従事者は、さまざまな毎日の知的技能を検査するように設計された一連の質問を患者に尋ねる。最大MMSEスコアは30ポイントである。20~24のスコアは軽度の認知症を示し、13~20は中程度の認知症を示し、および12以下は重度の認知症を示す。平均に基づいて、アルツハイマーを患っているヒトのMMSEスコアは、毎年約2~4ポイント低下する。MMSEの利点としては、管理のために特化した装置も訓練も必要としないこと、ならびにアルツハイマー病の診断および長期評価に関して妥当性と信頼性の両方を有していることが挙げられる。ミニcogの間、ヒトは、2つのタスク、3つの一般的な物体の名前を覚え、数分後に反復すること、ならびに正しい位置に12個の数字すべてを示す時計の文字盤および審査官によって指定された時間を描くこと、を完成するよう求められる。この簡潔な検査の結果は、さらなる評価が必要とされるかどうかを決断する医師の助けとなり得る。例えば、Hodkinson簡易知能検査スコア(Hodkinson 1972. Age and ageing. 1 (4): 233-8)またはCognitionのGeneral Practitioner Assessment、例えば、CoPsやMental Attributes Profiling Systemなどのコンピューター化検査、ならびに特定の障害のより深い分析のためのより長い形式検査などのその他の検査もまた使用される。
【0008】
軽度の認知障害(MCI)は、いくつかの根本原因を有する混成臨床症状である。しかしながら、MCIの大半は、健康的な加齢と非常に軽度なADの間の遷移状態を呈する(DeCarli 2003. Lancet Neurol. 2:15-21)。従って、検査は、MCI対象が年に約10%~15%の割合で臨床的推定ADに進行する傾向があることを示唆している(Markesbery 2010. J Alzheimers Dis. 19:221-228)。
【0009】
通常、アルツハイマー病は、そのヒトの病歴、親族からの履歴、および行動観察に基づいて診断される。特徴的な神経学的および神経心理学的特性の存在、ならびに代替条件の不存在は対症的である。コンピューター断層撮影法(CT)または核磁気共鳴画像法(MRI)、および単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)を用いた医療画像処理は、他の脳病理または認知症のサブタイプを除くのを助けるために使用できる。そのうえ、それは、前駆症状的段階(軽度認知障害)からアルツハイマー病への転換を予測し得る。知能検査を含めた知的機能の評価は、疾患の状況をさらに特徴づけることができる。医療組織は、開業医のために診断プロセスを簡易化し、かつ、標準化するために診断基準を作成した。診断は、脳材料が入手可能であり、かつ、組織学的に調べることができるとき、非常に高い確度の死体解剖で確認できる。
【0010】
これまで、この疾患のために対症療法しか存在せず、すべてが神経伝達物質障害を相殺しようとしている。3種類のコリンエステラーゼ阻害剤が現在利用可能であり、軽度~中程度のADの治療のために承認された。中程度~重度のADに利用可能な更なる治療オプションはメマンチン、N-メチル-D-アスパルタート受容体非競合的拮抗薬である。「疾患修飾」薬物とも呼ばれる、ADの経過を止めるか、または少なくとも効果的に修飾できることができる治療はまだ広範な調査中である。
【発明の概要】
【0011】
新しい治療は、罹患した患者を治療するため、およびADの症状を予防、遅延、低下を遅くする、または改善するために緊急に必要とされる。該疾患の総合的な頻度は、その疾患の発症が5年遅れた場合、約50%減少すると見積もられた。対症療法は、神経精神症状の認知促進または管理に向けた薬物であり、典型的には、神経伝達物質機構を通じて作用する;疾患修飾療法または治療(DMT)は、進行を予防、遅延、または遅くする剤であり、ADの根本的な病態生理的機構を標的化する。現在、100種類超の剤がAD治療法開発パイプラインに存在する(Cummings et al. 2017. Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions 3: 367-384)。
【0012】
レビィー小体型認知症(DLB)は、時間と共に悪化する一種の認知症である。追加症状としては、注意力の不安定、視覚性幻覚、動作の遅さ、歩行障害、および硬直を挙げてもよい。DLBは、アルツハイマー病や血管性痴呆後の認知症の最も一般的な原因である。それは、典型的には、50歳以降に始まる。65歳を超えたヒトの約0.1%が罹患する。男性は、女性より広く罹患しているように見える。原因となる機構は、α-シヌクレインタンパク質からニューロン内のレヴィー小体の形成を伴う。診断は、他の推定原因を除外するための血液検査および医療画像処理を用いて、症状に基づいて推測され得る。現在のところ、DLB向けの治療法は存在しない。治療は、対症的であり、そして、その疾患に関連する運動症状と心理的症状のいくつかを緩和することを試みる。例えば、ドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、何らかの利益を提供し得る。いくつかの運動問題がレボドパを用いて改善され得る。総説に関しては、McKeith et al. 2017. Neurology 89: 88-100を参照のこと。
【0013】
多発性梗塞性痴呆(MID)や血管性認知障害(VCI)としても知られている血管性痴呆(VaD)は、脳への血液供給の問題、典型的には、一連の軽い脳卒中、によって引き起こされる認知症であり、段階的に起こる認知低下の悪化につながる。その用語は、脳卒中や病巣による脳構造の変化につながり、そして、認知の変化をもたらす、脳血管障害の複雑な相互作用およびリスク因子から成る症候群を指す。脳卒中と認知障害との時間的相関が診断をするのに必要である。頻繁に重複する臨床像および関連する基本的な病理のため、様々な認知症症候群を差別化は困難であり得る。特に、アルツハイマー認知症は、血管性痴呆と同時に起こることが多い。血管性痴呆を患っている人々は、複数の脳血管事象(脳卒中)後に、しばしば段階的な、軽度認知障害において見られるような急性的または亜急性的な、進行性認知障害を示す。総説に関しては、Venkat et al. 2015. Exp Neurol 272: 97-108を参照のこと。
【0014】
前頭側頭型認知症(FTD)は前頭側頭葉変性の臨床像であり、そしてそれは、前頭側または側頭葉に主にかかわる進行性ニューロン欠損、および典型的なスピンドルニューロンの70%超の喪失を特徴とし、その一方で、他のニューロンタイプは元の状態のままである。FTDは、若年発症性認知症症例の20%を占める。兆候および症状は、後期成人期、より一般的に55~65の年齢で現れ、そして、男女でほぼ等しく罹患する。一般的な兆候および症状としては、社会的および個人的行動の顕著な変化、感情鈍麻、感情の鈍化、および表現言語と受容言語の欠乏が挙げられる。現在、FTD向けの療法は存在しないが、症状を緩和する助けとなる治療法が存在する。総説に関しては、Bott et al. 2014. Neurodegener Dis Manag 4(6): 439-454を参照のこと。
【0015】
ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、ヒト褐色細胞腫から単離された、52個のアミノ酸を含む新規血圧降下ペプチドとして、最初に、Kitamuraらにより説明された(Kitamura et al. 1993. Biochemical and Biophysical Research Communications 192 (2): 553-560)。同じ年に、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチドをコードしているcDNAおよびこの前駆体ペプチドの完全アミノ酸配列も、説明された。とりわけN末端に21個のアミノ酸のシグナル配列を含む、前駆体ペプチドは、「プレプロアドレノメデュリン」(pre-proADM)と称される。Pre-proADMは、185個のアミノ酸(配列番号1)を含む。成熟ADM-NH2は、配列番号4に示され、ADM-Glyは配列番号5に示されている。
【0016】
成熟アドレノメデュリンペプチドは、52個のアミノ酸を含み(配列番号4)、かつ、これはpre-proADMからタンパク質分解性切断により形成され、pre-proADMのアミノ酸95~146を含む、アミド化されたペプチドである(ADM-NH2)。今日まで、pre-proADMの切断において形成されたペプチド断片の実質的にごくわずかな断片が、より的確に特徴づけられ、特に生理活性ペプチドのアドレノメデュリン(ADM)、および、20個のアミノ酸(22-41)を含むペプチド(配列番号2)で、これにpre-proADMにおけるシグナルペプチドの21個のアミノ酸が続く「PAMP」である。さらに、ADMおよびPAMPの両方に関して、生理活性のある小断片が、さらに発見され、より詳細に調べられている。1993年のADMの発見および特徴決定は、活性の集中的検査および溢れるような刊行物の引き金となり、その結果が様々な総説記事において最近まとめられ、本説明の文脈において、記事、Takahashi 2001. Peptides 22: 1691; Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711 and Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167が、特に参照された。
【0017】
今日までの科学的検査において、とりわけ、ADMは、多機能性制御ペプチドとみなすことができることがわかった。これは、循環血中に、グリシンにより延長された不活性型で部分的に放出される(Kitamura et al. 1998. Biochem. Biophys. Res. Commun. 244(2): 551-555)。また、ADMに特異的であり、かつ、ADMの作用をおそらく調節する結合タンパク質(Pio et al. 2001. The Journal of Biological Chemistry 276(15): 12292-12300) も、存在する。
【0018】
これまでの検査で最も重要であるADMに加えPAMPのこれらの生理作用は、血圧へ影響を及ぼす作用であった。したがって、ADMは、効果的な血管拡張薬である。
【0019】
さらに、pre-proADMから形成された上述のさらなる生理活性ペプチドPAMPは、ADMの作用機序とは異なる作用機序を有するように見えたとしても、PAMPは血圧降下作用を同様に示すことがわかった(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711; Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167; Kuwasako et al. 1997. FEBS Lett 414(1): 105-110; Kuwasaki et al. 1999. Ann. Clin. Biochem. 36: 622-628; Tsuruda et al. 2001. Life Sci. 69(2): 239-245; Kangawa et al. EP 0 622 458)。
【0020】
さらに、循環血および他の生物学的液体中で測定され得るADMの濃度は、数多くの病態において、対照健常者において認められる濃度を有意に上回っていることがわかった。したがって、うっ血性心不全、心筋梗塞、腎疾患、高血圧障害、糖尿病、ショックの急急性期ならびに敗血症および敗血症性ショックの患者におけるADMレベルは、様々な程度であるが、有意に増加した。またPAMP濃度も、該病態の一部において増加したが、それらの血漿レベルは、ADMに比べ低下した(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711)。
【0021】
通常ADMの高い濃度が、敗血症または敗血症性ショックにおいて認められることが、さらに知られている(Eto et al. 2001. Peptides 22: 1693-1711; Hirata et al. 1996. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 81(4): 1449-1453; Ehlenz et al.1997. Exp Clin Endocrinol Diabetes 105: 156-162; Tomoda et al. 2001. Peptides 22: 1783-1794; Ueda et al. 1999 Am. J. Respir. Crit. Care Med.160: 132-136; Wang et al. 2001. Peptides 22: 1835-1840)。これらの知見は、敗血症および他の重症症候群、例えばSIRSなどの患者における疾患経過の典型的現象として知られている典型的血行動態変化に関連付けられている。アドレノメデュリンは、敗血症発症時(Wang, Shock 1998, 10(5):383-384; Wang et al. 1998. Archives of surgery 133(12): 1298-1304)、ならびに多くの急性および慢性疾患において(Parlapiano et al. 1999. European Review for Medical and Pharmacological Sciences 3:53-61; Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167)中心的役割を果たす。
【0022】
ADMのコグネート前駆体ペプチドのより安定した断片の決定により、ADMを、直接または間接のいずれかで循環ADMレベルを測定する、いくつかの方法が説明された。最近になって、循環成熟ADMを測定するアッセイを説明する方法が公開された(Weber et al. 2017. Journal of applied Labaratory Medicine, 2(2): 222-233)。
【0023】
ADM前駆体由来の断片を定量する他の方法が、例えば、MR-proADMの測定(Morgenthaler et al. 2005. Clin Chem 51(10):1823-9)、PAMPの測定(Washimine et al. 1994. Biochem Biophys Res Commun 202(2):1081-7)、CT-proADMの測定(EP211552)について説明されている。MR-proADM測定のための市販のアッセイが、利用可能である(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR; BRAHMS GmbH, Hennigsdorf, Germany)(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem 42(7-8):725-8)。これらのペプチドは同じ前駆体から化学量論的比で生成されるので、これらの血漿レベルは、ある程度相関している。
【0024】
認知症およびADにおけるMR-proADMの役割はいくつかの検査で調査された。ADの可能性が高い患者において計測されたMR-proADMの血漿レベルは、年配の認知に関して正常な健常対照者と比較して、上昇した(Buerger et al. 2009. Biological Psychiatry 2009; 65:979-984)。MR-proADM単独の血中濃度は、81%の特異性にて47%の感度を有する分類精度を示し、そして、別のバイオマーカー、CT-proET-1を用いたMR-proADMの比は、ADの検出に関して81%の特異性にて66%の感度を示した。そのうえ、MR-proADMの血漿中濃度は、痴呆症発症前MCIから臨床的ADへの進行における予測的値を有する(Buerger et al. 2010. J Clin Psychiatry 72(4): 556-563)。MR-proADMはまた、認知症既往歴なしの5000人超の個人から成る集団ベースのコホートでも計測され、そして、認知症を発症したが、従来のリスク因子に関して適応後に高いリスクを示さなかった参加者において高められたことを示した(Holm et al. 2017. Journal of Internal Medicine 282: 94-101)。動脈硬化症に対する長期検査に参加している患者では、MR-proADMレベルは脳深部白質病巣(DWML)グレード進行により有意に上昇した(Kuriyama et al. 2017. Journal of Alzheimer´s Disease 56: 1253-1262)。そのうえ、MR-proADMレベルと認知力検査スコアとの間で有意な逆相関関係が観察された。
【0025】
アドレノメデュリンは、年齢適合対照と比較して、AD患者からの前頭皮質で上昇することが示された(Ferrero et al. 2017. Mol Neurobiol. doi: 10.1007/s12035-017-0700-6, E-Pub ahead of print)。しかしながら、認知症、特にアルツハイマー病を患っている患者の血漿ADMについては知られていない。
【0026】
皮質下血管性痴呆のモデルが、両側の総頸動脈に微小コイルを配置することによってマウスで再現された。循環ADMを過剰発現するマウスを使用して、ADMの効果が、脳潅流、脳の血管構造、酸化ストレス、白質変化、認知機能、cAMPの脳中濃度、血管内皮増殖因子、および塩基性線維芽細胞増殖因子に対して評価された。これらのデータは、ADMが動脈形成および血管新生を促進し、酸化ストレスを阻害し、白質保全を保持し、慢性脳低潅流後の認知低下を予防することを示す。よって、ADMは、皮質下の血管性痴呆に取り組むストラテジーとして役立ち得る(Maki et al. 2011. Stroke 42:1122-1128)。
【0027】
成熟ADMのレベルが、認知症、特にADを後に発症する健常患者において有意に減少することは、本発明の驚くべき知見であった。さらに、対象が認知症、特にアルツハイマー認知症を患っている場合、成熟ADMのレベルが有意に減少することが驚いたことにわかった。アドレノメデュリン、特に配列番号4によるADM-NH2のベースラインレベルが認知症、特にアルツハイマー認知症の存在を独立に予測することが、その例から知ることができた。
【0028】
さらに、ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のマーカー比が特定のマーカーレベル比を下回っている場合、対象が、認知症、特にADと診断されることが驚いたことにわかった。さらに、ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のマーカーレベル比が特定のマーカーレベル比の閾値を下回る場合、対象が認知症を患う高いリスクを有することが驚いたことにわかった。さらに、認知症、特にADを患っているか、または認知症、特にADを患うリスクが高い対象の体質は、前記マーカーレベル比が一連の治療もしくは治療介入の間に上昇する場合、治療または治療介入の間に改善されること、ならびにここで、前記マーカー比のレベルが前記比の閾値を超えて上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれないことが、驚いたことにわかった。
【0029】
あるいは、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルと、前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルは、数学式またはアルゴリズムで組み合わせられ、ここで、前記式またはアルゴリズムの結果は、認知症を診断するか、認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するか、認知症を患っている対象において治療を観察するかまたは治療介入を観察もしくはガイドするか、あるいは、認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するかまたは予防的治療介入を観察もしくはガイドするために使用される。
【0030】
これにより、循環中の成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)のレベルが、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象において減少するということは、本発明の驚くべき知見であった。さらに、循環中のプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルが、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象において上昇する。成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)が、血管の保全および血管内皮の機能に関与するホルモンであることが知られている。血管内皮の機能不全が、例えば、末梢血管疾患、脳卒中、心臓病、糖尿病、慢性腎不全、および転移癌や認知症などの広範囲の最も恐ろしいヒト疾患に関連することがさらに知られている(Rajendran et al. 2013. Int. J. Biol. Sci. 9(19: 1057-1069)。
【0031】
高レベルの循環中のプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片が、血管内皮の機能を修復する生理的必要性や血管の保全を支援する必要性を示唆していると思われる。しかしながら、低レベルの成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)は、高レベルのpro-ADMにもかかわらず、ADM-Glyから成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)への転換が妨げられていると思われることを示唆している。
【0032】
アルツハイマー病を患っている患者、MCIを患っている患者またはADを発症するであろう患者の循環中のMR-proADM濃度が高いことは知られている(Buerger et al. 2009. Biological Psychiatry 2009; 65:979-984; Buerger et al. 2010. J Clin Psychiatry 72(4): 556-563; Holm et al. 2017. Journal of Internal Medicine 282: 94-101)。このことは、ADM合成の経路が活性化されていることを示す。しかしながら、生物活性ADMの濃度について言明しているものはない。循環中の活性ADM(bio-ADM)の濃度がADの患者やADを発症するであろう患者において驚くほど低いことは、本発明によって示された(実施例6)。そのうえ、脳微小血管の障害がアルツハイマー病の病態生理の寄与因子である証拠が増えている(Iadecola 2013. The pathobiology of vascular dementia. Neuron 2013;80(4):844-866)。組織学的評価およびアルブミンサンプリング検査の結果は、血液脳関門(BBB)の透過性亢進が主要な機構の候補であることを示している(Benarroch 2007. Neurovascular unit dysfunction: a vascular component of Alzheimer disease- Neurology 68(20):1730-1732)。最近の検査において、早期ADを患っている患者における広範囲のBBB漏出が認知低下に関連していることが実証された(Nation et al. 2019. Nature Medicine https://doi.org/10.1038/s41591-018-0297-y; van de Haar et al. 2016 Radiology 281(2): 527-535)。N末端抗ADM抗体は、アドレノメデュリンを安定化させ、かつ、循環活性ADMの増加を引き起こすことが示された。(Geven et al. 2018. Effects of humanized anti-adrenomedullin antibody Adrecizumab (HAM8101) on vascular barrier function and survival in rodent models of systemic inflammation and sepsis. Shock 50(6):648-654; Geven et al. 2018. Vascular effects of adrenomedullin and the anti-adrenomedullin antibody Adrecizumab in sepsis. Shock50(2):132-140)。健常患者の血液中におけるbio-ADMの急激な増加の誘発に対する効果が、実施例7および図8に示されている。循環中のADMの増加は、内皮細胞に対する有益な効果、例えば、毛細管漏出の低減、をもたらす。例えば、N末端抗ADM抗体(HAM8101、Adrecizumab)は、全身性炎症や敗血症の実験モデルにおいて内皮障壁機能を高めることが示された(Geven et al. 2018. Effects of humanized anti-adrenomedullin antibody Adrecizumab (HAM8101) on vascular barrier function and survival in rodent models of systemic inflammation and sepsis. Shock 50(6):648-654)。そのため、N末端ADMバインダー、より具体的には、N末端抗ADM抗体は、認知症を患っているかまたは認知症を発症するリスクが高い患者、特にアルツハイマー認知症の患者の血中bio-ADM濃度を高めるために適用できる。
【0033】
よって、要約すれば、血管内皮の機能を修復する生理的必要性がある、および血管の保全を支援する必要性がある患者の、低レベルの循環中のADM、特に生物活性ADMは、前記患者においてADMの加工が妨げられていること示唆し得る。血管内皮の機能を修復する生理的必要性および血管の保全を支援する必要性がある患者は、その対象の体液のサンプルにおいて配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルを測定することによって特徴づけ、かつ、同定され得、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルは、本発明の方法によって概説されている閾値レベルと比較されるか、またはおそらく、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンもしくは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比であろう、マーカー比を測定することによって比較され、およびここで、前記マーカー比は、本発明の方法で概説されているように閾値比と比較される。
【0034】
さらにまたはその代わりに、血管内皮の機能を修復する生理的必要性がある患者および血管の保全を支援する必要性がある患者は、広範囲のBBB漏出またはBBB損傷がある患者であり得る。広範囲のBBB漏出またはBBB損傷は次のようにして測定され得る:アルブミンもしくは免疫グロブリンG(IgG)の脳脊髄液(CSF)/血清比(Akaishi et al. 2015. Neurology and Clinical Neuroscience 3: 94-100)または映像技術、例えば、動的感受性造影核磁気共鳴画像法(DSC-MRI)または動的造影MRI(DCE-MRI)(Raja et al. 2018. Neuropharmacology 134: 259-271)。
【0035】
よって、ヒト認知機能障害を予防するかもしくはその進行を予防するため、または認知症を予防もしくは治療するためにbio-ADMのレベルを高める必要性がある患者の層別化および識別は、先に記載した任意の方法によって実施される。
N末端抗ADM抗体の投与による健常患者の血液中のbio-ADMの急激な増加が、漏出性または損傷した血液脳関門を修復する助けとなり得ることが実施例7および図8に示されている。そのため、N末端抗ADM抗体の投与が、先に記載したように同定および/または層別化される対象の認知症の予防および治療の際に助けとなるというのも、もっともらしく思える。
【0036】
そのため、低レベルの成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)を有する、および/または前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの低い比を有する対象において治療を提供することが、別の目的である。前記患者群は、おそらく、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場を用いて治療され、ここで、前記抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
【0037】
【化1】
【0038】
に結合する。
【0039】
本発明の別の実施形態において、治療される前記対象は、先に触れた評価基準に加えて、軽度認知障害の兆候または認知症の兆候も示す。
対象への抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場の投与は、対象の循環中の成熟ADM(配列番号4による成熟ADM-NH2)の濃度を高め、そしてそれにより、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質を改善することが知られている。
【0040】
本発明の内容は:
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または
d)認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが対象の体液のサンプルで測定され、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルが閾値レベルと比較され、および
ここで、
a)配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで、
b)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで、
c)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが、治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質が、治療または治療介入を受けて改善している、および/またはここで、前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記レベル閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、典型的なbio-ADM用量/シグナル曲線、および100μg/mLの抗体NT-Hの存在下でのbio-ADM用量/シグナル曲線を示す。
図2図2は、MPPコホートおよび独立したアルツハイマー病コホートにおけるbio-ADM濃度を示す。
図3図3は、アルツハイマー病の予測のための、MPPコホートにおけるbio-ADM濃度に関するカプラン-マイヤー-プロットを示す。
図4図4は、アルツハイマー病の予測のためのMPP(症例管理)コホートのサブコホートおよび独立したADコホートにおけるbio-ADM濃度に関するBoxプロットを示す。
図5図5は、アルツハイマー病の予測のためのMPP(症例管理)コホートのサブコホートにおけるMR-proADM濃度に関するBoxプロットを示す。
図6図6は、アルツハイマー病の予測のためのMPP(症例管理)コホートのサブコホートにおけるMR-bio-ADM/proADM比に関するBoxプロットを示す。
図7A図7は、アルツハイマー病の予測のためのMPP(症例管理)コホートのサブコホートにおけるbio-ADM(A)およびbio-ADMとMR-proADM(B)の比に関するROCプロットを示す。
図7B図7は、アルツハイマー病の予測のためのMPP(症例管理)コホートのサブコホートにおけるbio-ADM(A)およびbio-ADMとMR-proADM(B)の比に関するROCプロットを示す。
図8図8は、NT-H抗体投与後の健常ヒト個体におけるbio-ADM値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
一実施形態において、本発明の内容は:
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または、
d)認知症を患うリスクが高い対象の予防的治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比かもしれないマーカー比が測定され、そしてここで、前記マーカー比が閾値比と比較され、および
ここで、
a)マーカー比ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで
b)マーカー比ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで
c)前記マーカー比が治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質は、治療または治療介入を受けて改善している、およびここで、前記マーカー比のレベルが前記比の閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法である。
【0043】
あるいは、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルと、前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルは、数学式またはアルゴリズムによって組み合わせられ、ここで、前記式またはアルゴリズムの結果が、認知症を診断するために、または認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するために、または認知症を患っている対象において治療を観察するかまたは治療介入を観察もしくはガイドするため、または認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するかまたは予防的治療介入を観察もしくはガイドするために使用される。
【0044】
どのような場合でも、本発明の一実施形態において、両マーカーのレベル:前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルおよび前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベル、が決定される。両マーカーレベルは、おそらく、両マーカーの比(例えば、成熟ADM-NH2とpro-ADMもしくはその断片との間の比またはproADMもしくはその断片と成熟ADM-NH2との間の比)、または両マーカーが導入される数学式または両マーカーが導入される数学アルゴリズム、のいずれかの比を計算するのに使用される。斯かる比、数学式または数学アルゴリズムの結果は、おそらく、次に所定の閾値と比較される値であり、この比較は、次に、認知症を診断するか、または認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するか、または認知症を患っている対象において治療を観察するか、もしくは治療介入を観察もしくはガイドするか、または認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するか、もしくは予防的治療介入を観察もしくはガイドするのに使用される。
【0045】
本発明の内容の一実施形態において、プロ-アドレノメデュリンの前記断片は、PAMP(配列番号2)、MR-proADM(配列番号3)、ADM-Gly(配列番号5)、およびCT-proADM(配列番号6)を含む群から選択される。
本発明の内容の一実施形態において、配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルは、15pg/ml以下であり、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/mL以下である。
【0046】
本発明の内容の一実施形態において、マーカーレベル比の閾値は、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある。
該比の計算のために、2つのマーカーの濃度は、好ましくは同じユニット(例えば、pmol/L)で発現されていなければならない。
【0047】
本発明の内容の一実施形態において、体液のサンプルは、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性痴呆、混合型アルツハイマー病および血管性痴呆、レヴィー小体痴呆、前頭側頭型認知症、病巣認知症(進行性失語症など)、皮質下痴呆(アルツハイマー病型認知症、および認知症症候群の二次的原因(頭蓋内病巣など)など)を患っている患者群から選択される。
【0048】
本発明の内容の一実施形態において、体液のサンプルは、サンプル採取の時点で認知症またはMCIの診断を受けたことがない対象から採取される。
本発明の内容の一実施形態において、年齢、人種、精神状態検査(例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE))、神経の画像化(CT、MRT、PET、SPECT)、家族歴、ApoE4遺伝子型、Amyloidβ1-42(β1-42)、Amyloidβ1-40(β1-40)、総Tau-タンパク質、リン酸化Tau-タンパク質(p-Tau181、p-Tau199、p-Tau231)を含む群から選択される追加臨床パラメータの少なくとも1つが測定される。
本発明の内容の一実施形態において、前記マーカーのレベルは免疫測定によって測定される。
【0049】
本発明の内容の一実施形態において、前記方法は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場を用いて治療するための患者を選択するための患者の層別化に使用され、ここで、前記抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
【0050】
【化2】
【0051】
に結合する。
【0052】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
【0053】
【化3】
【0054】
に結合する。
【0055】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記対象は、閾値レベルを下回る、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルを有し、および/または前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンもしくはその断片のレベルの比であるマーカー比を有し、およびここで、前記マーカーレベル比が比の閾値を下回る。
【0056】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記プロ-アドレノメデュリンの断片は、PAMP(配列番号2)、MR-proADM(配列番号3)、ADM-Gly(配列番号5)およびCT-proADM(配列番号6)を含む群から選択される。
【0057】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記対象は先に説明した方法によって選択される。
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルは、15pg/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/ml以下である。
【0058】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、マーカーレベル比は、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある。
【0059】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記対象は、先に説明した方法に従って選択され、ここで、前記体液のサンプルは、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液の群から選択される。
【0060】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、年齢、人種、精神状態検査(例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE))、神経の画像化(CT、MRT、PET、SPECT)、家族歴、ApoE4遺伝子型、Amyloidβ1-42(β1-42)、Amyloidβ1-40(β1-40)、総Tau-タンパク質、リン酸化Tau-タンパク質(p-Tau181、p-Tau199、p-Tau231)を含む群から選択される少なくとも1つの追加臨床パラメータが測定される。
【0061】
本発明の内容は、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であり、ここで、前記マーカーのレベルは免疫測定によって測定される。
【0062】
成熟ADM、bio-ADM、およびADM-NH2は、本出願を通して同じ意味で使用され、かつ、配列番号4による分子である。
本明細書中に使用される場合、「PAMP」という用語は、PAMPの両方の循環型、すなわち、生物学的に不活性なC末端がグリシンで伸長されたPAMP(PAMP-Gly)および生物学的に活性なC末端アミド化PAMP(PAMP-アミド)を含む。
【0063】
本発明の具体的実施形態において、該proADMおよび/または少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片、ならびに成熟ADMは、下記を含む群から選択される:
【0064】
配列番号1(プレ‐プロ‐アドレノメデュリン(pre-proADM)):第1~185アミノ酸
【0065】
【化4】
【0066】
配列番号2(プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド、PAMP):preproADMの第22~41アミノ酸
【0067】
【化5】
【0068】
配列番号3(中央領域プロアドレノメデュリン、MR-proADM):preproADMの第45~92アミノ酸
【0069】
【化6】
【0070】
配列番号4(成熟アドレノメデュリン(成熟ADM);アミド化ADM;bio-ADM;hADM):第95~146アミノ酸-CONH2
【0071】
【化7】
【0072】
配列番号5(アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM1-52-Gly)):preproADMの第95~147アミノ酸
【化8】
【0073】
配列番号6(C末端プロアドレノメデュリン、CT-proADM):preproADMの第148~185アミノ酸
【0074】
【化9】
【0075】
本発明の具体的な実施形態において、前記対象の体液の成熟ADM-NH2(配列番号4)-免疫反応性のレベルは、閾値を下回る。
【0076】
本発明の具体的な実施形態において、前記対象の体液のPAMP(配列番号2)免疫反応性のレベルまたはMR-proADM(配列番号3)免疫反応性のレベルまたはCT-proADM(配列番号6)免疫反応性のレベルまたはADM1-52-Gly(配列番号5)免疫反応性のレベルは、閾値を上回る。
本発明の具体的な実施形態において、前記対象の体液の成熟ADM-NH2(配列番号4)免疫反応性のレベルおよびMR-proADM(配列番号3)免疫反応性のレベルの比は閾値を下回る。
【0077】
本発明の具体的な実施形態において、成熟ADM-NH2のレベルは、以下の群:成熟ADM-NH2(配列番号4)の以下の配列内に含まれる領域に結合するバインダー、および成熟ADM-NH2(配列番号4)の配列内に含まれる領域に結合する第二のバインダー、から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することによって測定される。
本発明の具体的な実施形態において、proADMおよび/またはその断片のレベルは、以下の群:MR-proADM(配列番号3)の配列内に含まれる領域に結合するバインダー、およびMR-proADM(配列番号3)の配列内に含まれる領域に結合する第二のバインダー、から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することによって測定される。
【0078】
本発明の具体的な実施形態において、pro-ADMおよび/またはその断片のレベルは、以下の群:CT-proADM(配列番号6)の配列内に含まれる領域に結合するバインダー、およびCT-proADM(配列番号6)の配列内に含まれる領域に結合する第二のバインダー、から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することによって測定される。
本発明の具体的な実施形態において、pro-ADMおよび/またはその断片のレベルは、以下の群:PAMP(配列番号2)の配列内に含まれる領域に結合するバインダー、およびPAMP(配列番号2)の配列内に含まれる領域に結合する第二のバインダー、から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することによって測定される。
【0079】
本発明の具体的な実施形態において、pro-ADMおよび/またはその断片のレベルは、以下の群:ADM1-52-Gly(配列番号5)の配列内に含まれる領域に結合するバインダー、およびADM1-52-Gly(配列番号5)の配列内に含まれる領域に結合する第二のバインダー、から選択される少なくとも1種のバインダーを使用することによって測定される。
【0080】
本発明の内容は、前記バインダーが、プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片に結合する抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場を含む群から選択される、本発明による方法である。
本願の別の実施形態は、先の実施形態による方法に関し、ここで、前記体液は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液を含む群から選択され得る。本発明のより具体的な実施形態において、前記体液は血液サンプルである。血液サンプルは、全血、血清および血漿を含む群から選択され得る。本発明の具体的な実施形態において、前記サンプルは、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿およびEDTA血漿を含む群から選択される。
【0081】
本発明の内容は、前記プロ-アドレノメデュリンまたは少なくとも5個のアミノ酸から成るその断片の測定が、1人の患者において複数回実施される、本発明による方法である。
【0082】
本発明の内容は、前記モニタリングが、得られた予防的および/または治療学的な測定値に対して前記対象の応答を評価するために実施される、本発明による方法である。
本発明の内容は、前記方法が、前記対象をリスク群に層別化するのに使用される、本発明による方法である。
【0083】
「リスク」という用語は、本明細書中に使用される場合、望ましくない事象または影響(例えば、疾患)に煩わされる確率に関する。
本願の別の実施形態は、先の実施形態による方法に関し、ここで、成熟ADM-NH2のレベルの減少は、認知症を患う高いリスクを予測する。
本願の別の実施形態は、先の実施形態による方法に関し、ここで、成熟ADM-NH2とproADMまたは(MR-proADM、CT-proADM、ADM-Glyおよび/またはPAMPを含む群から選択される)その断片との間の比の減少は、認知症を患う高いリスクを予測する。
【0084】
本発明の内容は、また、前段落のいずれかに規定される認知症を発症するリスクを測定するための方法であり、ここで、前記方法は、以下でさらに規定されるリスク群に前記対象を層別化するために実施される。本発明の特定の実施形態において、その方法は、対象をリスク群、例えば、認知症障害に罹患する低いリスク、中程度のリスク、または高いリスクを有する群、に層別化するのに使用される。認知症を発症する低いリスクとは、成熟ADM-NH2の値が、認知症に罹患しなかった健常対象における値と比較して、実質的に減少していないことを意味する。成熟ADM-NH2のレベルが、認知症障害に罹患しなかった健常対象の所定の値と比較して減少するとき、中程度のリスクが存在し、そして、成熟ADM-NH2のレベルが、ベースライン計測にて有意に減少し、その後の分析にて減少し続けるとき、高いリスクが存在する。
【0085】
認知症のリスクとは、特定の期間内に認知症障害を発症するリスクを意味する。具体的な実施形態において、前記期間は、10年以内、7年以内、5年以内または2.5年以内である。
「高レベル」という用語は、特定の閾値レベルより高いレベルを意味する。
「低レベル」という用語は、特定の閾値レベルより低いレベルを意味する。
【0086】
本発明の具体的な実施形態において、アッセイは、成熟ADM-NH2のレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、<15pg/ml、好ましくは<10pg/ml、より好ましくは<5pg/mlである。
本発明の具体的な実施形態において、アッセイは、MR-proADMのレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、健常対象のMR-proADMを定量化でき、かつ、<0.5nmol/L、好ましくは<0.4nmol/Lおよびより好ましくは<0.2nmol/Lである。
【0087】
本発明の具体的な実施形態において、アッセイは、CT-proADMのレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、健常対象のCT-proADMを定量化でき、かつ、<100pmol/L、好ましくは<75pmol/Lおよびより好ましくは<50pmol/Lである。
本願の別の実施形態は、先に実施形態による方法に関し、ここで、アッセイは、PAMP-アミドのレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、健常対象のPAMP-アミドを定量化でき、かつ、<0.3pmol/L、好ましくは<0.2pmol/Lおよびより好ましくは<0.1pmol/Lである。
【0088】
本願の別の実施形態は、先に実施形態による方法に関し、ここで、アッセイは、PAMP-グリシンのレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、健常対象のPAMP-グリシンを定量化でき、かつ、<0.5pmol/L、好ましくは<0.25pmol/Lおよびより好ましくは<0.1pmol/Lである。
本願の別の実施形態は、先に実施形態による方法に関し、ここで、アッセイは、ADM-Glyのレベルを測定するのに使用され、ここで、前記アッセイのアッセイ感度は、健常対象のADM-Glyを定量化でき、かつ、60pmol/L、好ましくは10pmol/Lおよびより好ましくは2pmol/Lである。
【0089】
本発明の具体的な実施形態において、該バインダーは、成熟ADM-NH2あるいはproADMおよび/またはそれらの断片への結合親和性の少なくとも107M-1、好ましくは108M-1を示し、好ましい親和性は、109M-1より大きく、最も好ましくは1010M-1よりも大きい。当業者は、化合物のより高い投与量を適用することにより、より低い親和性を補償すると考えることができ、この方策は、本発明の範囲外に繋がるものではないことを知っている。
【0090】
アドレノメデュリンに対する抗体の親和性を決定するために、アドレノメデュリンの固定化された抗体に対する結合キネティックスを、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を使用する、非標識表面プラズモン共鳴により決定した。抗体の可逆的固定化は、製造業者の指示に従い、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗-マウスFc抗体を使用し実行した(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare)(Lorenz et al. 2011. Antimicrob Agents Chemother. 55 (1): 165-173)。
【0091】
本発明の具体的な実施形態において、該バインダーは、成熟ADM-NH2あるいはproADMおよび/またはそれらの断片へ結合する抗体または抗体フラグメントまたは非-Igスカフォールドを含む群から選択される。
本発明の具体的な実施形態において、アッセイは、成熟ADM-NH2および/またはproADMもしくは少なくとも5個のアミノ酸を有するそれらの断片のレベルを決定するために使用され、ここで斯かるアッセイは、サンドイッチアッセイ、好ましくは完全に自動化されたアッセイである。
【0092】
本発明の一実施形態において、これは、完全に自動化されたアッセイシステムを必要としない、患者の傍で1時間以内に検査を行うことができる検査技術である、いわゆるPOC-検査(ポイントオブケア)であってよい。この技術の一例は、免疫クロマトグラフィー検査技術である。
【0093】
本発明の一実施形態において、斯かるアッセイは、非限定的に、酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識を含む検出技術の任意の種類を使用するサンドイッチイムノアッセイ、好ましくは完全自動化アッセイである。本発明の一実施形態において、斯かるアッセイは、酵素標識されたサンドイッチアッセイである。自動化または完全自動化アッセイの
例は、下記のシステムの一つに使用され得るアッセイを含む:Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、BiomerieuxVidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)、Ortho Clinical Diagnostics Vitros(登録商標)。
【0094】
様々な免疫測定が公知であり、かつ、本発明のアッセイおよび方法のために使用することができ、これらは、放射免疫測定(「RIA」)、均一酵素-増幅免疫測定(「EMIT」)、酵素結合免疫吸着測定(「ELISA」)、アポ酵素再活性化免疫測定(「ARIS」)、ディップスティック免疫測定および免疫-クロマトグラフィーアッセイを含む。
本発明の具体的な実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、検出されるために標識されている。
【0095】
好ましい検出方法は、例えば放射免疫測定(RIA)、化学発光-および蛍光-免疫測定、酵素結合免疫測定(ELISA)、Luminex-ベースのビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイなどの、様々なフォーマットの免疫測定、ならびに即時免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの、迅速試験フォーマットを含む。
好ましい実施形態において、該標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。
【0096】
これらのアッセイは、均一または不均一アッセイ、競合および非競合アッセイであることができる。一実施形態において、アッセイは、非競合的免疫測定である、サンドイッチアッセイの形状であり、ここで検出および/または定量されるべき分子は、第一の抗体および第二の抗体へ結合される。第一の抗体は、固相、例えばビーズ、ウェルもしくは他の容器の表面、チップまたはストリップに結合され、第二の抗体は、例えば、色素、放射性同位体、または反応性部分もしくは触媒活性部分により、標識されている抗体である。次に被検体へ結合された標識された抗体の量が、好適な方法により測定される。「サンドイッチアッセイ」に関与した一般的組成物および手順は、良く確立されており、かつ、当業者に公知である(The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005); Hultschig et al. 2006. Curr Opin Chem Biol. 10 (1):4-10)。
【0097】
別の実施形態において、アッセイは、2種の捕獲分子、好ましくは両方共液体反応混合物中の分散体として存在する抗体を含み、ここで第一の標識成分は、第一の捕獲分子に付着され、該第一の標識成分は、蛍光-または化学発光-消光または増幅を基にした標識システムの一部であり、ならびに該印付けシステムの第二の標識成分は、第二の捕獲分子へ付着され、その結果両方の捕獲分子の被検体への結合時に、測定可能なシグナルが発生され、試料を含有する溶液中で形成されたサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
別の実施形態において、該標識システムは、蛍光色素または化学発光色素、特にシアニン型の色素と組み合わせた、希土類クリプテートまたは希土類キレートを含む。
【0098】
本発明の文脈において、蛍光ベースのアッセイは、色素の使用を含み、これは例えば、FAM(5-または6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7などのシアニン色素、キサンテン、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、オレゴングリーン、ウンベリフェロンなどのクマリン、Hoechst 33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、Yakima Yellow、Alexa Fluor、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素および同類のものを含む群から選択され得る。
【0099】
本発明の文脈において、化学発光ベースのアッセイは、文献(Kirk-Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed. 1993. John Wiley & Sons, Vol.15: 518-562, incorporated herein by reference, including citations on pages 551-562)において化学発光物質に関して説明された物理原理を基に、色素の使用を含む。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0100】
本明細書で言及する「アッセイ」または「診断アッセイ」は、診断分野において適用される任意の型であることができる。斯かるアッセイは、検出されるべき被検体の、1または複数の捕獲プローブへの、ある親和性での結合を基にすることができる。捕獲分子と標的分子または関心対象の分子の間の相互作用に関して、親和定数は、108M-1よりも大きいことが好ましい。
【0101】
本発明の文脈において、「バインダー分子」は、試料由来の標的分子または関心対象の分子、すなわち被検体(すなわち、本発明の文脈において、PCTおよびそれらの断片)への結合に使用することができる分子である。したがってバインダー分子は、標的分子または関心対象の分子へ特異的に結合するために、空間的に、ならびに表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナーおよび/またはアクセプターの存在もしくは非存在などの表面特徴に関しての両方で、適切に造形されなければならない。これにより、結合は、捕獲分子と標的分子または関心対象の分子の間の、例えば、イオン結合、ファンデルワールス結合、π-π結合、σ-π結合、疎水性結合または水素結合の相互作用または前述の相互作用の2またはそれ以上の組み合わせにより媒介され得る。本発明の文脈において、バインダー分子は、例えば、核酸分子、糖分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチドまたは糖タンパク質を含む群から選択され得る。好ましくは、バインダー分子は、標的または関心対象の分子に対する十分な親和性を伴うそれらの断片を含む抗体、ならびに組み換え抗体または組み換え抗体フラグメントを含む抗体に加え、それらの長さが少なくとも12個のアミノ酸を伴う変種鎖由来の該抗体または断片の化学的および/または生化学的に修飾された誘導体である。
【0102】
化学発光標識は、アクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識に関与するステロイド標識および同類のものであることができる。
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどであることができる。
【0103】
本発明の一実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、磁気粒子として固相に、およびポリスチレン表面に結合されている。
本発明の具体的な実施形態において、該2種のバインダーの少なくとも1種は、固相に結合されている。
【0104】
本発明の具体的な実施形態において、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対プロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比の閾値は、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5が適用される範囲内にある。
【0105】
本発明のADM-NH2レベルまたはproADMレベルもしくはその断片は、それぞれ、実施例に概説されているように、記載したADM-NH2アッセイ(あるいは、proADMまたはその断片のアッセイ、それぞれ)を用いて決定した。これらが本発明に使用されるアッセイシステムとは異なる方法で較正された場合、上記の言及された閾値は、他のアッセイにおいて異なっているであろう。そのため、上記の言及されたカットオフ値は、較正の差を考慮して、こうして別の方法で較正されたアッセイのために適切に適用されるべきである。較正における差を定量化する1つの可能性が、両方の方法で使用したサンプル中のそれぞれのバイオマーカー(例えば、bio-ADM)を計測することによって、本発明で使用したそれぞれのバイオマーカーアッセイと、問題のアッセイとの方法比較解析(相関)である。別の可能性は、問題のアッセイを用いて決定することであり、所定のこの試験が十分な分析感度を有し、代表的な正規母集団のバイオマーカーレベルの中央値が、文献に記載のように、結果をバイオマーカーレベルの中央値と比較し、そして、この比較によって得られた差に基づく較正を再計算することである。本発明に使用される較正では、正常な(健常な)対象からのサンプルが計測された:血漿bio-ADM(成熟ADM-NH2)の中央値は24.7pg/mlであった(Weber et al. 2017. JALM, 2(2): 222-233)。
【0106】
正常な(健常な)対象における血漿MR-proADM濃度の中央値は、Caruhelら(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem 42:725-8)に記載のとおり、MR-proADMの検出のための自動化されたサンドイッチ蛍光アッセイを使用して0.41(四分位範囲0.23~0.64)nmol/Lであった(Smith et al. 2009. Clin Chem 55:1593-1595)。
普通の健常対象(n=200)の血漿CT-proADM濃度の中央値は、77.6pmol/L(最低46.6pmol/L、最高136.2pmol/L)であり、95%パーセンタイル値が、113.8pmol/Lであった(EP 2 111 552 B1)。
【0107】
普通の健常対象(n=51)の血漿PAMP-アミド濃度は、0.51±0.19pmol/L(平均±SD)であった(Hashida et al. 2004. Clin Biochem 37: 14-21)。
普通の健常対象(n=51)の血漿PAMP-グリシン濃度は、1.15±0.38pmol/L(平均±SD)であった(Hashida et al. 2004. Clin Biochem 37: 14-21)。
【0108】
一実施形態において、閾値は、次のようにしてあらかじめ決定され得る:
・前記対象に匹敵するベースライン状況を有する無作為選抜集団の所定のサンプルの集合から得られた体液のマーカーの中央値と、前記対象から得られた体液のマーカーの濃度の比較、
・前記対象に匹敵するベースライン状況を有する対象の集団の所定のサンプルの集合から得られた体液のマーカーおよび/またはその断片のレベルの分位点と、前記対象から得られた体液のマーカーの濃度の比較、
・Cox Proportional Hazards分析に基づく計算、またはNRI(Net Reclassification Index)もしくはIDI(Integrated Discrimination Index)などのリスク指数計算を使用することによる計算。
【0109】
加えて、以下の:年齢、人種、精神状態検査(例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE))、神経の画像化(CT、MRT、PET、SPECT)、家族歴、ApoE4遺伝子型、Amyloidβ1-42(β1-42)、Amyloidβ1-40(β1-40)、総Tau-タンパク質、リン酸化Tau-タンパク質(p-Tau181、p-Tau199、p-Tau231)、を含めた群から選択される少なくとも1つの臨床パラメータまたはバイオマーカーが測定され得る。
本発明との関連において、「認知症」という用語としては、アルツハイマー病、血管性痴呆、混合型アルツハイマー病および血管性痴呆、レヴィー小体痴呆、前頭側頭型認知症、局所性認知症(進行性失語症など)、皮質下痴呆(アルツハイマー病型認知症など)、および認知症症候群の二次的原因(頭蓋内病巣など)が挙げられる。
【0110】
本発明のより具体的な実施形態において、前記認知症は、アルツハイマー病、血管性痴呆、混合型アルツハイマー病および血管性痴呆の群から選択される。
最も好ましい前記認知症はアルツハイマー病である。
本発明の別の対象は、本明細書中に開示した本発明のバインダーを含む、具体的には、認知症の予防または治療における使用のための抗ADM抗体、抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場を含む、医薬組成物である。
【0111】
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、溶液、好ましくは調整済みの溶液である。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、溶液、好ましくは7.4のpHにてPBSを含む調整済みの溶液である。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、使用前に再構成される乾燥状況で存在する。
本発明の別の実施形態において、前記医薬組成物は、使用前に再構成される凍結乾燥状況で存在する。
【0112】
本発明の別の実施形態において、認知症の治療および/または予防に使用される前記医薬組成物は、経口、皮膚上、皮下、皮内、舌下、筋肉内、動脈内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、静脈内に、または腹腔内投与を介して投与される。本発明の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、静脈内に投与される。本発明の別の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、中枢神経系(CNS)、例えば、脳内、脳室内、およびくも膜下腔内を介して投与される。
【0113】
本発明の抗体は、抗原へ特異的に結合する免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされた1または複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識された免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α(IgA)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ(IgD)、ε(IgE)およびμ(IgM)定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン軽鎖は一般に、約25Kdまたは長さ214アミノ酸である。完全長免疫グロブリン重鎖は一般に、約50Kdまたは長さ446アミノ酸である。軽鎖は、NH2末端で可変領域遺伝子(長さ約110アミノ酸)により、およびCOOH末端でκまたはλ定常領域遺伝子によりコードされている。重鎖は同様に、可変領域遺伝子(長さ約116アミノ酸)および他の定常領域遺伝子の一つによりコードされている。
【0114】
抗体の基本的構造単位は一般に、免疫グロブリン鎖の2つの同一対からなる四量体であり、各対は、1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖可変領域は、抗原へ結合し、かつ、定常領域はエフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンはまた、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)2、さらには二機能性ハイブリッド抗体および単鎖抗体を含む、様々な他の形でも存在する(例えば、Lanzavecchia et al. 1987. Eur. J. Immunol. 17:105; Huston et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:5879-5883; Bird et al. 1988, Science 242:423-426; Hood et al., Immunology, Benjamin, N.Y., 2nd ed., 1984; Hunkapiller and Hood 1986. Nature 323:15-16を参照のこと)。免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも称される、3つの超可変領域により中断されたフレームワーク領域を含む(「免疫学的関心のあるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, E. Kabatet al., U.S. Department of Health and Human Services, 1983を参照のこと)。前述のように、CDRは主に、抗原のエピトープへの結合に寄与する。免疫複合体は、抗原に特異的に結合された、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体、または機能性抗体フラグメントなどの、抗体である。
【0115】
キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、通常異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子および定常領域遺伝子から、遺伝子操作により構築される抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、κおよびγ1またはγ3などの、ヒト定常セグメントへ連結され得る。したがって一例において、治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変または抗原-結合ドメインおよびヒト抗体由来の定常またはエフェクタードメインで構成されたハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も使用することができ、あるいは可変領域は、分子技術により作製することができる。キメラ抗体の作製方法は、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,807,715号を参照されたい。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域および非-ヒト(マウス、ラットまたは合成など)免疫グロブリン由来の1または複数のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非-ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と称される。一実施形態において、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリン中のドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在する必要はないが、存在する場合、これらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85~90%、例えば約95%以上など同一でなければならない。したがって、可能性のあるCDRを除き、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化された軽鎖およびヒト化された重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採用されたアミノ酸による限定数の置換を有することができる。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に対し実質的に作用しない追加の保存的アミノ酸置換を有することができる。保存的置換の例は、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;および、phe、tyrなどの置換である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照のこと)。ヒト抗体は、軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子が、ヒト起源である抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて、産生することができる。ヒト抗体は、関心対象の抗体を分泌するヒトB細胞の不死化により産生することができる。不死化は、例えば、EBV感染によるか、またはトリオーマ細胞を作製するためのヒトB細胞の骨髄腫もしくはハイブリドーマ細胞との融合により、達成することができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法(例えば、Dowerら、PCT公開番号WO91/17271;McCaffertyら、PCT公開番号WO92/001047;およびWinter、PCT公開番号WO92/20791を参照のこと)により産生されるか、またはヒトコンビナトリアルモノクローナル抗体ライブラリーから選択されることができる(Morphosysウェブサイトを参照のこと)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニック動物を用いて、調製することができる(例えば、Lonbergら、PCT公開番号WO93/12227;およびKucherlapati、PCT公開番号WO91/10741を参照のこと)。
【0116】
したがって、本抗体は、当該技術分野において公知のフォーマットを有することができる。例としては、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR-グラフト化抗体がある。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、例えばIgG、典型的完全長免疫グロブリン、または重鎖および/または軽鎖の少なくともF-可変ドメインを含む抗体フラグメントのように、組み換えにより作製された抗体、例えば化学的に結合された抗体(断片抗原結合)であり、Fabミニボディ、一本鎖Fab抗体、エピトープタグを伴う一価Fab抗体、例えばFab-V5Sx2を含むFab-断片;CH3ドメインを伴う二量体化された二価Fab(ミニ-抗体);例えば異種ドメインに支援された多量体化により形成された、例えばdHLXドメインの二量体化により形成された、二価Fabまたは多価Fab、例えばFab-dHLX-FSx2;F(ab’)2-断片、scFv-断片、多量体化された多価および/または多重特異性scFv-断片、二価および/または二重特異性ディアボディ、BITE(登録商標)(二重特異性T細胞誘導抗体)、三機能性抗体、例えばG以外の様々なクラス由来の多価抗体;単-ドメイン抗体、例えばラクダ科動物または魚類免疫グロブリン由来のナノボディ、ならびに多くの他のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0117】
抗体に加え、標的分子と複合し、かつ、高度に標的特異性のバイオポリマーを作製するために使用される他のバイオポリマー足場は、当該技術分野において周知である。例としては、アプタマー、スピーゲルマー、アンチカリンおよびコノトキシンがある。
【0118】
好ましい実施形態において、抗体フォーマットは、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、(Fab)2断片およびscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される。別の好ましい実施形態において、抗体フォーマットは、scFab断片、Fab断片、scFv断片、およびPEG化された断片など、それらの生物学的利用能が最適化された複合体を含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの一つは、scFabフォーマットである。
【0119】
非-Ig足場は、タンパク質足場であってよく、かつ、これらはリガンドまたは抗原に結合することが可能であるので、抗体模倣体として使用されてよい。非-Ig足場は、テトラネクチン-ベースの非-Ig足場(例えば、US2010/0028995に記載)、フィブロネクチン足場(例えば、EP1266025に記載);リポカリン-ベースの足場(例えば、WO2011/154420に記載);ユビキチン足場(例えば、WO2011/073214に記載)、トランスフェリン足場(例えば、US2004/0023334に記載)、プロテインA足場(例えば、EP2231860に記載)、アンキリン反復配列ベースの足場(例えば、WO2010/060748に記載)、マイクロタンパク質(好ましくは形成するシスチンノットを形成するマイクロタンパク質)足場(例えば、EP2314308に記載)、Fyn SH3ドメインベースの足場(例えば、WO2011/023685に記載)、EGFR-A-ドメインベースの足場(例えば、WO2005/040229に記載)、およびKunitzドメインベースの足場(例えば、EP1941867に記載)を含む群から選択されてよい。
【0120】
さらに、本発明の一実施形態において、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体または抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Igスキャフォールドは、単一特異的である。
単一特異的抗アドレノメデュリン(ADM)抗体または単一特異的抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは単一特異的非Igスキャフォールドとは、標的ADM内の少なくとも5つアミノ酸を包含する一つの特異的領域に結合する抗体または抗体フラグメントまたは非Igスキャフォールドを意味する。単一特異的抗アドレノメデュリン(ADM)抗体または単一特異的抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは単一特異的非Igスキャフォールドとは、同一の抗原に対して全て親和性を有する抗アドレノメデュリン(ADM)抗体または抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Igスキャフォールドである。
【0121】
別の特定かつ好ましい実施形態において、ADMに結合する抗ADM抗体もしくは抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、単一特異的抗体、抗体フラグメントまたは非Ig足場であって、それにより、単一特異的とは、前記抗体もしくは抗体フラグメントまたは非Ig足場が、標的ADM内の好ましくは少なくとも4つのアミノ酸を包含する1つの特異的領域に結合することを意味する。本発明による単一特異的抗体もしくはフラグメントまたは非Ig足場は、同一の抗原に対して全て親和性を有する抗体もしくはフラグメントまたは非Ig足場である。モノクローナル抗体は単一特異的であるが、単一特異的抗体はまた、一般的な生殖細胞からそれらを製造する以外の手段によって製造されてもよい。
【0122】
ADMに結合する前記抗ADM抗体もしくは抗体フラグメントまたはADMに結合する非Ig足場は、非中和性のADMに結合する抗ADM抗体もしくは抗体フラグメント、またはADMに結合する非Ig足場であり得る。
具体的な実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、非中和抗体、フラグメントまたは非Ig足場である。中和抗ADM抗体、抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、ADMの生理活性をほぼ100%まで、少なくとも90%超まで、好ましくは少なくとも95%超まで遮断する。
【0123】
対照的に、非中和抗ADM抗体、もしくは抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、ADMの生理活性を100%未満まで、好ましくは95%未満まで、好ましくは90%未満まで、より好ましくは80%未満まで、およびより一層好ましくは50%未満まで遮断する。このことは、ADMの生理活性が、100%未満まで、90%以下でそれを超えないまで、95%以下でそれを超えないまで、80%以下でそれを超えないまで、50%以下でそれを超えないまで低減されることを意味する。これは、中和抗ADM抗体、抗ADM抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場が結合したADMの残存する生理活性が、0%超、好ましくは5%超、好ましくは10%超、より好ましくは20%超、より好ましくは50%超であることを意味している。
【0124】
これに関連して、「非中和抗ADM活性」を有する抗体、抗体フラグメント、非Ig足場である(単数若しくは複数の)分子は、分かりやすくするために、本明細書中では「非中和」抗ADM抗体、抗体フラグメント、または非Ig足場と総称され、例えば、ADMの生理活性を80%未満までしか妨げない前記分子は、以下のとおり規定される:
-ADMに結合する単数若しくは複数の分子であって、そしてそれは、CRLR(カルシトニン受容体様受容体)およびRAMP3(受容体活性修飾タンパク質3)から構成された機能性ヒト遺伝子組み換えADM受容体を発現する真核細胞株の培養物に添加したとき、並行して添加したヒト合成ADMペプチドの作用を通じて細胞株によって産生されるcAMPの量を低減する分子であって、前述の添加したヒト合成ADMが、分析すべき中和抗体の不存在下におけるcAMP合成の半値最大刺激をもたらす量で添加されることを特徴とし、分析すべきADMに結合する(単数若しくは複数の)非中和分子が、分析すべき中和抗体を用いて得られるcAMP合成の最大低減を得るのに必要である量より10倍多い量で加えられたときであっても、ADMに結合する(単数若しくは複数の)前述の分子によるcAMPの低減が、80%以下の程度までしか起こらないことを特徴とする。
【0125】
同じ定義は、他の範囲;95%、90%、50%など、に適用される。
本発明の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21)に位置するADMの領域またはエピトープに結合する。
【0126】
別の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンの第1~14アミノ酸(配列番号27)の中の領域またはエピトープ;ということは、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-14)を認識し、結合する。別の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンの第1~10アミノ酸(配列番号28)の中の領域またはエピトープ;ということは、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-10)を認識し、結合する。
【0127】
ADMのaa 1-14
【0128】
【化10】
【0129】
ADMのaa 1-10
【0130】
【化11】
【0131】
別の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンの第1~6アミノ酸(配列番号29)の中の領域またはエピトープ;ということは、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-6)を認識し、結合する。
【0132】
上述のとおり、前記領域またはエピトープは、好ましくは少なくとも4または少なくとも5アミノ酸の長さを含む。
ADMのaa 1-6
【0133】
【化12】
【0134】
別の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1)を認識し、結合するである。N末端端部とは、第1アミノ酸、すなわち、配列番号4、5、21、27、28または29の「Y」;が抗体結合に必須であることを意味する。抗体もしくはフラグメントまたは足場は、N末端伸長アドレノメデュリンにも、N末端修飾アドレノメデュリンにも、N末端分解アドレノメデュリンにも結合しないであろう。このことは、別の好ましい実施形態において、前記抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場は、ADMのN-末端部が含まれていない場合、成熟ADMの配列の中の領域にのみ結合することを意味する。前記実施形態において、抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは非Ig足場は、前記配列が、例えば、pro-ADMの中に含まれている場合、成熟ADMの配列の中の領域に結合しないであろう。
【0135】
明確化するために、「N-末端部(aa 1-21)」のようなADMの特定の領域に関する大かっこ内の数字が、ADMのN-末端部が成熟ADM配列の第1~21アミノ酸から成ることは当業者によって理解されている。
【0136】
本発明の一実施形態において、本発明による抗体は、以下のとおり作製され得る:
Balb/cマウスは、0および14日目にADM-100μgペプチド-BSAコンジュゲート(100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化させた)で、そして、21および28日目ににと50μg(100μlの不完全フロイントアジュバンド中)で免疫された。融合実験が実施される3日前に、動物には、1回の腹腔内および1回の静脈内注射として与えられる、100μlの生理食塩液中に溶解させた50μgの前記コンジュゲートを与えた。
【0137】
免疫されたマウスからの脾細胞および骨髄腫細胞株SP2/0の細胞が、50%のポリエチレングリコール1mlを用いて37℃にて30秒間、融合された。洗浄後に、その細胞を96ウェル細胞培養プレート内に播種した。ハイブリッドクローンは、HAT培地[20%のウシ胎仔血清およびHATサプリメントを補ったRPMI1640培地]中で培養することによって選択された。2週間後に、HAT培地が、3回の継代の間、HT培地に置き換えられ、それに続いて、正常細胞培地に戻される。
【0138】
細胞培養上清は、融合3週間後に、まず抗原特異的なIgG抗体についてスクリーニングされた。陽性の試験された微量の培養物を、繁殖のために24ウェルプレートに移した。再テストした後に、選択された培養物は、クローン化され、限界希釈を使用することで再度クローン化され、そして、アイソタイプが決定された(Lane 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228; Ziegler, B. et al. 1996 Horm. Metab. Res. 28: 11-15もまた参照のこと)。
【0139】
抗体は、以下の手順に従ってファージディスプレイを用いて作製され得る:
投薬を受けていないヒト抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8が、アドレノメデュリンペプチドに対する、遺伝子組み換え一本鎖F可変ドメイン(scFv)の分離に使用される。抗体遺伝子ライブラリーは、2個の異なったスペーサーを介してアドレノメデュリンペプチド配列に連結されたビオチンタグを含むペプチドの使用を含むパンニングストラテジーを用いてスクリーニングされた。非特異性結合抗原とストレプトアビジン結合抗原とを使用したパンニング段階の混合が、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小にするのに使用された。パニングの第三段階からの溶解ファージが、モノクローナルscFv発現性E.コリ(E. coli)株の作製に使用された。これらのクローン株の培養からの上清が、抗原ELISA試験にそのまま使用された(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152: 159-170; Schutte et al. 2009. PLoS One 4, e6625を参照のこと)。
【0140】
マウス抗体のヒト化は、以下の手順に従って行われ得る:マウス起源の抗体のヒト化のために、抗体の配列が、相補性決定領域(CDR)を有するフレームワーク領域(FR)と抗原との構造的相互作用に関して分析される。構造モデリングに基づいて、ヒト起源の適当なFRを選択し、そして、マウスCDR配列がヒトFRに移植される。構造的相互作用を取り戻すためにCDRまたはFRのアミノ酸配列のバリエーションが導入でき、そしてそれは、FR配列に関する種の切り替えによって無効になった。この構造的相互作用の回復は、ファージディスプレイライブラリーを使用したランダムアプローチによって、または分子モデリングによって導かれる方向性を持ったアプローチにより達成され得る(Almagro et al. 2008. Front Biosci. 2008; 13:1619-33)。
【0141】
本願の別の実施形態は、先に実施形態による方法に関し、ここで、アドレノメデュリンのN-末端部、aa 1-21に結合する、対象の治療のための抗ADM抗体は、ヒトCDRグラフト抗体またはADMに結合するその抗体フラグメントであり、ここで、ヒトCDRグラフト抗体またはその抗体フラグメントは、以下の:
【0142】
配列番号:7
【0143】
【化13】
【0144】
配列番号:8
【0145】
【化14】
【0146】
および/または
配列番号:9
【0147】
【化15】
【0148】
を含む抗体重鎖(H鎖)を含み、および/または以下の:
【0149】
配列番号:10
【0150】
【化16】
【0151】
配列番号:11(3アミノ酸の長さのため配列表に表記なし)
【0152】
【化17】
【0153】
および/または
配列番号:12
【0154】
【化18】
【0155】
を含む抗体軽鎖(L鎖)をさらに含むことを特徴とする。
【0156】
本願の別の具体的な実施形態において、対象の治療のための抗ADM抗体は、ADMまたはその抗体フラグメントに結合するヒトモノクローナル抗体であって、ここで、その重鎖は、以下の:
【0157】
配列番号:7
【0158】
【化19】
【0159】
配列番号:8
【0160】
【化20】
【0161】
配列番号:9
【0162】
【化21】
【0163】
を含む群から選択される少なくとも1つのCDRを含み、およびここで、その軽鎖は、以下の:
【0164】
配列番号:10
【0165】
【化22】
【0166】
配列番号:11(3アミノ酸の長さのため配列表に表記なし)
【0167】
【化23】
【0168】
配列番号:12
【0169】
【化24】
【0170】
を含む群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。
【0171】
本願の別の実施形態において、対象の治療のための抗ADM抗体は、ADMまたはその抗体フラグメントに結合するヒトモノクローナル抗体であって、ここで、その重鎖は、以下の配列:
【0172】
配列番号:7
【0173】
【化25】
【0174】
配列番号:8
【0175】
【化26】
【0176】
配列番号:9
【化27】
【0177】
を含み、およびここで、その軽鎖は、以下の配列:
【0178】
配列番号:10
【0179】
【化28】
【0180】
配列番号:11(3アミノ酸の長さのため配列表に表記なし)
【0181】
【化29】
【0182】
配列番号:12
【0183】
【化30】
を含む。
【0184】
本願の別の実施形態は、前述の実施形態の方法に関し、ここで、治療のための前記抗体またはフラグメントは、ADMに結合するヒトモノクローナル抗体もしくはフラグメント、またはその抗体フラグメントであって、ここで、その重鎖は、以下の配列:
【0185】
CDR1:配列番号7
【0186】
【化31】
【0187】
CDR2:配列番号8
【化32】
【0188】
CDR3:配列番号9
【化33】
【0189】
を含み、およびここで、その軽鎖は、以下の配列:
【0190】
CDR1:配列番号10
【化34】
【0191】
CDR2:配列番号11(3アミノ酸の長さのため配列表に表記なし)
【0192】
【化35】
【0193】
CDR3:配列番号12
【化36】
【0194】
を含む。
【0195】
本願の別の実施形態は、前述の実施形態の方法に関しここで、治療のための前記抗体またはフラグメントは、VH領域として以下の配列を含む:
【0196】
配列番号13(AM-VH-C)
【0197】
【化37】
【0198】
配列番号14(AM-VH1)
【0199】
【化38】
【0200】
配列番号15(AM-VH2-E40)
【0201】
【化39】
【0202】
配列番号16(-VH3-T26-E55)
【0203】
【化40】
【0204】
または
配列番号17(-VH4-T26-E40-E55)
【0205】
【化41】
【0206】
およびVL領域として以下の配列を含む。
【0207】
配列番号18(AM-VL-C)
【0208】
【化42】
【0209】
配列番号19(AM-VL1)
【0210】
【化43】
【0211】
配列番号20(AM-VL2-E40)
【0212】
【化44】
【0213】
以下の実施形態は、本発明の対象である。
1)
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または
d)認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが対象の体液のサンプルで測定され、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルが閾値レベルと比較され、および
ここで、
a)配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで、
b)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで、
c)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが、治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質が、治療または治療介入を受けて改善している、および/またはここで、前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法。
【0214】
2)
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または、
d)認知症を患うリスクが高い対象の予防的治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、前記対象の体液のサンプルにおいて測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルにおいて測定されるプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルの比かもしれないマーカー比が測定され、そしてここで、前記マーカー比が閾値比と比較され、および
ここで、
a)マーカー比成熟ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで
b)成熟ADM-NH2/プロ-アドレノメデュリンまたはその断片のマーカー比が前記比の閾値を下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで
c)前記マーカー比が治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質は、治療または治療介入を受けて改善しているか、あるいは、前記マーカー比に対して、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記対象の体液のサンプルにおいて測定され、およびプロ-アドレノメデュリンまたは(配列番号4による成熟ADM-NH2でない)その断片のレベルが、前記対象の体液のサンプルにおいて測定され、そして、両方の測定レベルが、数学式またはアルゴリズムによって組み合わせられ、ここで、前記数学アルゴリズムの結果が、認知症を診断するために、または認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定するために、または認知症を患っている対象において治療を観察するかまたは治療介入を観察もしくはガイドするため、または認知症を患うリスクが高い対象において予防的治療を観察するかまたは予防的治療介入を観察もしくはガイドするために使用される、方法。
【0215】
3)
前記プロ-アドレノメデュリンの断片が、PAMP(配列番号2)、MR-proADM(配列番号3)、ADM-Gly(配列番号5)、およびCT-proADM(配列番号6)を含む群から選択される、項目2に記載の方法。
【0216】
4)
前記配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルが、15pg/ml以下であり、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/ml以下である、項目1に記載の方法。
【0217】
5)
前記比の閾値は、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある、項目2または3に記載の方法。
【0218】
6)
前記サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液の群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0219】
7)
前記体液のサンプルが、サンプル採取の時点で認知症またはMCIの診断を受けたことがない対象から採取される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0220】
8)
年齢、人種、精神状態検査(例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE))、神経の画像化(CT、MRT、PET、SPECT)、家族歴、ApoE4遺伝子型、Amyloidβ1-42(β1-42)、Amyloidβ1-40(β1-40)、総Tau-タンパク質、リン酸化Tau-タンパク質(p-Tau181、p-Tau199、p-Tau231)を含む群から選択される少なくとも1つの追加臨床パラメータが測定される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0221】
9)
前記マーカーのレベルが免疫測定によって測定される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0222】
10)
前記方法が、対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場を用いて治療するための患者を選択するための患者の層別化に使用され、ここで、前記抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場が、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
【0223】
【化45】
【0224】
に結合する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0225】
11)
対象の認知症の予防および治療における使用のための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、アドレノメデュリンのN-末端部(aa 1-21):
【0226】
【化46】
【0227】
に結合する、抗ADM抗体もしくは抗ADMフラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0228】
12)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目11に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、閾値レベルを下回る、前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルを有し、および/または前記対象の体液のサンプルで測定される配列番号4による成熟ADM-NH2のレベル対前記対象の体液のサンプルで測定されるプロ-アドレノメデュリンもしくはその断片のレベルの比であるマーカー比を有し、およびここで、前記マーカーレベル比が比の閾値を下回る、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0229】
13)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記プロ-アドレノメデュリンの断片が、PAMP(配列番号2)、MR-proADM(配列番号3)、ADM-Gly(配列番号5)およびCT-proADM(配列番号6)を含む群から選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0230】
14)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目11~13のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、項目10に記載の方法によって選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0231】
15)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~14のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2の閾値レベルが、15pg/ml以下、好ましくは10pg/ml以下、好ましくは5pg/ml以下である、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0232】
16)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~14のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記マーカーレベル比が、0.2~0.75、好ましくは0.3~0.6、好ましくは0.4~0.5の範囲内にある、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0233】
17)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目11~16のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記対象が、項目10に記載の方法に従って選択され、ここで、前記体液のサンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液の群から選択される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0234】
18)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目11~16のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、年齢、人種、精神状態検査(例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE))、神経の画像化(CT、MRT、PET、SPECT)、家族歴、ApoE4遺伝子型、Amyloidβ1-42(β1-42)、Amyloidβ1-40(β1-40)、総Tau-タンパク質、リン酸化Tau-タンパク質(p-Tau181、p-Tau199、p-Tau231)を含む群から選択される少なくとも1つの追加臨床パラメータが測定される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0235】
19)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~18のいずれか一項に記載の抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記マーカーのレベルが免疫測定によって測定される、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0236】
20)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~19のいずれか一項に記載の、アドレノメデュリンに結合する抗アドレノメデュリン(ADM)抗体もしくは抗ADM抗体フラグメントまたはアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Ig足場であって、
ここで、前記抗体フラグメントであるまたは足場展示品が少なくとも10-7MのADMへの結合親和力であるとまたは。
【0237】
21)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~20のいずれか一項に記載の、抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記抗体もしくはフラグメントまたは足場が、アドレノメデュリンのN末端(aa 1)を認識し、そしてそこに結合する、抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【0238】
22)
対象の認知症の予防および治療における使用のための、項目12~21のいずれか一項に記載の、抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場であって、ここで、前記抗体もしくはフラグメントまたは足場が、ADMの生理活性を80%以下、また好ましくは50%以下遮断する、抗ADM抗体もしくは抗アドレノメデュリン抗体フラグメントまたは抗ADM非Ig足場。
【実施例0239】
実施例1
抗体の作製とそれらの親和定数の測定
いくつかのヒトおよびマウスの抗体を作り出し、そして、それらの親和定数を測定した(表1を参照のこと)。
【0240】
免疫化のためのペプチド/コンジュゲート:
そのペプチドのウシ血清アルブミン(BSA)へのコンジュゲーションのための(選択されたADM配列内にシステインが存在していなければ)追加のN末端システイン残基を伴う、免疫化のためのペプチドを合成した、表1を参照のこと(JPT Technologies, Berlin, Germany)。そのペプチドを、Sulfolinkカップリングゲル(Perbio-science, Bonn, Germany)を使用することによってBSAに共有結合により連結した。カップリング手順を、Perbioのマニュアルに従って実施した。
【0241】
以下の方法に従って、マウス抗体は作り出した:
Balb/cマウスを、0日目と14日目に100μgのペプチド-BSA-コンジュゲート(100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化させた)を用いて、そして、21日目と28日目に(100μlの不完全フロイントアジュバンド中の)50μgを用いて免疫した。融合実験を実施する3日前に、動物に、1回の腹腔内注射および1回の静脈内注射として投与される、100μlの生理食塩水中に溶解した50μgの前記コンジュゲートを与えた。
【0242】
免疫されたマウスからの脾細胞および骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、50%のポリエチレングリコール1mlを用いて37℃にて30秒間、融合させた。洗浄後に、その細胞を96ウェル細胞培養プレート内に播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地[20%のウシ胎仔血清およびHATサプリメントを補ったRPMI1640培地]中で培養することによって選択した。2週間後に、3回の継代の間に、HAT培地をHT培地に置き換え、それに続いて、正常細胞培地に戻した。
【0243】
細胞培養上清を、融合3週間後に、まず抗原特異的なIgG抗体についてスクリーニングした。陽性の試験された微量の培養物を、繁殖のために24ウェルプレートに移した。再テストした後に、選択された培養物を、クローン化し、限界希釈を使用することで再度クローン化し、そして、アイソタイプを決定した(Lane, R.D. 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228; Ziegler et al. 1996. Horm. Metab. Res. 28: 11-15もまた参照のこと)。
【0244】
マウスモノクローナル抗体の製造:
抗体を、標準的な抗体製造法(Marx et al, 1997. Monoclonal Antibody Production, ATLA 25, 121)によって作製し、そして、プロテインAを介して精製した。抗体純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づき、>95%であった。
【0245】
ヒト抗体
ヒト抗体を、以下の手順に従ってファージディスプレイによって作製した:
投薬を受けていないヒト抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8を、ADMペプチドに対する、遺伝子組み換え一本鎖F可変ドメイン(scFv)の分離に使用する。抗体遺伝子ライブラリーを、2個の異なったスペーサーを介してADMペプチド配列に連結されたビオチンタグを含むペプチドの使用を含むパンニングストラテジーを用いてスクリーニングした。非特異性結合抗原とストレプトアビジン結合抗原とを使用したパンニング段階の混合を、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小にするのに使用した。パンニングの第三段階からの溶解ファージを、モノクローナルscFv発現性E.コリ(E. coli)株の作製に使用した。これらのクローン株の培養からの上清を、抗原ELISA試験にそのまま使用した(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152, 159-170; Schutte et al. 2009. PLoS One 4, e6625もまた参照のこと)。
【0246】
陽性クローンを、抗原に対する陽性ELISAシグナルおよびストレプトアビジンコートしたマイクロタイタープレートに対する陰性シグナルに基づいて選択した。更なる特徴づけのために、scFvオープンリーディングフレームを、発現プラスミドpOPE107(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152, 159-170)内にクローン化し、固定した金属イオン親和性クロマトグラフィーによって培養上清から捕獲し、そして、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0247】
親和定数
ADMに対する抗体の親和性を測定するために、固定化抗体へのADMの結合に関する動態を、Biacore2000システム(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を使用した無標識表面プラズモン共鳴法によって測定した。抗体の可逆的固定化を、製造業者の取扱説明書に従って高密度でCM5センサー表面に共有結合させた抗マウスFc抗体を使用して実施した(マウス抗体捕獲キット;GE Healthcare)(Lorenz et al. 2011. Antimicrob Agents Chemother. 55(1): 165-173)。
【0248】
モノクローナル抗体を、それぞれ、以下に示したヒトおよびマウスのADMのADM領域に対して産生させた。以下の表は、更なる実験において使用される、得られた抗体の一群を表している。選択は、標的領域に基づいた:
【0249】
表1:
【表1】
【0250】
酵素分解による抗体フラグメントの作製:
FabおよびF(ab)2フラグメントの作製を、マウス完全長抗体NT-Mの酵素分解によっておこなった。抗体NT-Mを、a)ペプシンベースのF(ab)2調製キット(Pierce44988)およびb)パパインベースのFab調製キット(Pierce44985)を使用して消化した。フラグメント化手順を、供給業者によって提供された取扱説明書に従って実施した。消化は、F(ab)2フラグメント化の場合、37℃にて8時間実施した。Fabフラグメント化消化を、それぞれ16時間実施した。
【0251】
Fab作製および精製の手順:
固定化パパインを、0.5mlの消化バッファーで樹脂を洗浄し、そして、5000xgにて1分間、カラムを遠心分離することによって平衡化した。そのバッファーをその後、捨てた。脱塩カラムを、保管溶液を除去し、消化バッファーでそれを洗浄し、その都度その後に1000xgにて2分間それを遠心分離することによって調製した。0.5mlの調製IgGサンプルを、平衡化した固定化パパインの入ったスピンカラムチューブに加えた。消化反応のインキュベーション時間は、37℃の卓上ロッカーにより16時間おこなった。カラムを、5000×gにて1分間遠心分離して、固定化パパインと消化産物を分離した。その後、樹脂を、0.5mlのPBSで洗浄し、そして、5000×gにて1分間遠心分離した。洗浄画分を、総サンプル体積が1.0mlである消化抗体に加えた。NAb Protein A Columnを、室温にてPBSおよびIgG溶出バッファーで平衡化した。カラムを、1分間遠心分離して、保管溶液(0.02%のアジ化ナトリウム含有)を除去し、2mlのPBSを加えることによって平衡化し、1分間再び遠心分離し、そして流し出して捨てた。サンプルは、カラムに適用し、転倒によって再懸濁させた。インキュベーションを、転倒混合しながら室温にて10分間おこなった。カラムを1分間遠心分離して、Fabフラグメントが流れ出るのを防いだ。(引用文献:Coulter and Harris 1983. J. Immunol. Meth. 59, 199-203.; Lindner et al. 2010. Cancer Res. 70, 277-87; Kaufmann et al. 2010. PNAS. 107, 18950-5.; Chen et al. 2010. PNAS. 107, 14727-32; Uysal et al. 2009 J. Exp. Med. 206, 449-62; Thomas et al. 2009. J. Exp. Med. 206, 1913-27; Kong et al. 2009 J. Cell Biol. 185, 1275-840)。
【0252】
F(ab’)2作製および精製の手順:
固定化ペプシンを、0.5mlの消化バッファーで樹脂を洗浄し、そして、5000xgにて1分間、カラムを遠心分離することによって平衡化した。そのバッファーをその後、捨てた。脱塩カラムを、保管溶液を除去し、消化バッファーでそれを洗浄し、その都度その後に1000xgにて2分間それを遠心分離することによって調製した。0.5mlの調製IgGサンプルを、平衡化した固定化ペプシンの入ったスピンカラムチューブに加えた。消化反応のインキュベーション時間は、37℃の卓上ロッカーにより16時間おこなった。カラムを、5000×gにて1分間遠心分離して、固定化パパインと消化産物を分離した。その後、樹脂を、0.5mLのPBSで洗浄し、そして、5000×gにて1分間遠心分離した。洗浄画分を、総サンプル体積が1.0mlである消化抗体に加えた。NAb Protein A Columnを、室温にてPBSおよびIgG溶出バッファーで平衡化した。カラムを、1分間遠心分離して、保管溶液(0.02%のアジ化ナトリウム含有)を除去し、2mLのPBSを加えることによって平衡化し、1分間再び遠心分離し、そして流し出して捨てた。サンプルは、カラムに適用し、転倒によって再懸濁させた。インキュベーションを、転倒混合しながら室温にて10分間おこなった。カラムを1分間遠心分離して、Fabフラグメントが流れ出るのを防いだ。(引用文献:Mariani et al. 1991. Mol. Immunol. 28: 69-77; Beale 1987. Exp Comp Immunol 11:287-96; Ellerson et al. 1972. FEBS Letters 24(3):318-22; Kerbel and Elliot 1983. Meth Enzymol 93:113-147; Kulkarni et al. 1985. Cancer Immunol Immunotherapy 19:211-4; Lamoyi 1986. Meth Enzymol 121:652-663; Parham et al. 1982. J Immunol Meth 53:133-73; Raychaudhuri et al. 1985. Mol Immunol 22(9):1009-19; Rousseaux et al. 1980. Mol Immunol 17:469-82; Rousseaux et al. 1983. J Immunol Meth 64:141-6; Wilson et al. 1991. J Immunol Meth 138:111-9)。
【0253】
NT-H抗体フラグメントのヒト化
抗体フラグメントを、CDRグラフト法(Jones et al. 1986. Nature 321, 522-525)によってヒト化した。
【0254】
以下のステップをおこない、ヒト化配列を得た:
-全RNA抽出:全RNAを、Qiagenキットを使用してNT-Hハイブリドーマから抽出した。
【0255】
-第一段階のRT-PCR:QIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCR Kit(Cat No.210210)を使用した。RT-PCRを、重鎖および軽鎖に特異的なプライマーセットを用いて実施した。それぞれのRNAのサンプルに関して、可変領域のリーダー配列を網羅した縮重順方向プライマー混合物を使用して、12種類の個別の重鎖および11種類の軽鎖のRT-PCR反応を設定した。逆方向プライマーは、重鎖および軽鎖の定常領域に位置している。プライマー内には制限部位を設計しなかった。
【0256】
-反応物の準備:5xQIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCRバッファー5.0μl、dNTP Mix(それぞれのdNTP10mMを含んでいる)0.8μl、プライマーセット0.5μl、QIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCR Enzyme Mix0.8μl、鋳型RNA2.0μl、無RNase不含水20.0μlまで、全容積20.0μl。PCR条件:逆転写:50℃、30分;最初のPCR活性化:95℃、15分間。サイクル:94℃、25秒間;54℃、30秒間;72℃、30秒間を20サイクル;最終伸長:72℃、10分間。第二段階の準ネスト化PCR:第一段階反応からのRT-PCR産物を第二段階のPCRで更に増幅した。12種類の個別の重鎖および11種類の軽鎖のRT-PCR反応を、抗体可変領域に対して特異的な準ネスト化プライマーセットを使用して準備した。
【0257】
-反応物の準備:2xPCRミックス10μl;プライマーセット2μl;第一段階のPCR産物8μl;全容積20μl;Hybridoma Antibody Cloning Report。PCR条件:95℃にて5分間の最初の変性;95℃にて25秒間、57℃にて30秒間、68℃にて30秒間を25サイクル;最終伸長を68℃にて10分間。
【0258】
-PCRが終わった後に、PCR反応サンプルをアガロースゲルで泳動して、増幅したDNAフラグメントを可視化する。ネスト化RT-PCRによって増幅した15個超のクローンDNAフラグメントの配列決定後に、数個のマウス抗体重鎖および軽鎖を、クローン化したが、正しいように思われる。可変重鎖内の26、40、および55位のアミノ酸および可変軽鎖内の40位のアミノ酸が結合特性に重要なので、それらはマウス起源に先祖返りし得る。得られた候補を以下に示す(Padlan 1991. Mol. Immunol. 28, 489-498; Harris and Bajorath.1995. Protein Sci. 4, 306-310)。
【0259】
抗体フラグメント配列に対する注釈(配列番号13~22):ボールド体および下線は、年代順に配置したCDR1、2、3であり;斜体は、定常領域であり;ヒンジ部は、ボールド体文字で、およびヒスチジンタグは、ボールド体とイタリック体で強調表示されている。
【0260】
配列番号:13(AM-VH-C)
【0261】
【化47】
【0262】
配列番号:14(AM-VH1)
【0263】
【化48】
【0264】
配列番号:15(AM-VH2-E40)
【0265】
【化49】
【0266】
配列番号:16(AM-VH3-T26-E55)
【0267】
【化50】
【0268】
配列番号:17(AM-VH4-T26-E40-E55)
【0269】
【化51】
【0270】
配列番号:18(AM-VL-C)
【0271】
【化52】
【0272】
配列番号:19(AM-VL1)
【0273】
【化53】
【0274】
配列番号:20(AM-VL2-E40)
【0275】
【化54】
【0276】
実施例2
免疫測定法の開発
ヒトADMペプチドに対して作製された抗体(NT-H、MR-HおよびCT-H;表1を参照のこと)を使用して免疫測定法を開発した。
【0277】
標識手順(トレーサー):抗体(PBS中1mg/ml、pH7.4)100ug(100ul)を、アクリジニウムNHS-エステル(アセトニトリル中1mg/ml、InVent GmbH, Germany)10ulと混合し(EP 0 353 971)、かつ、室温で20分間インキュベーションした。標識したCT-Hを、Bio-Sil(登録商標)SEC 400-5(Bio-Rad Laboratories, Inc., USA)上のゲル-濾過HPLCにより精製した。精製された標識された抗体を、溶液(リン酸カリウム300mmol/L、NaCl 100mmol/L、Na-EDTA 10mmol/L、ウシ血清アルブミン5g/L、pH7.0)中に希釈した。最終濃度は、200μLにつき標識された化合物およそ800.000相対発光量(RLU)(およそ20ng標識抗体)であった。アクリジニウムエステル化学発光を、AutoLumat LB 953(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて測定した。
【0278】
固相:ポリスチレンチューブ(Greiner Bio-One International AG, Austria)を、抗体((抗体1.5μg/0.3mL、NaCl 100mmol/L、トリス/HCl 50mmol/L、pH7.8)によりコーティングした(室温、18時間)。5%ウシ血清アルブミンでブロックした後、チューブをPBS(pH7.4)で洗浄し、真空乾燥した。
【0279】
キャリブレーター:合成ヒトADM(hADM)(Bachem, Switzerland)を、50mMトリス/HCl、250mM NaCl、0.2%Triton X-100、0.5%BSA、20錠/Lプロテアーゼコンプリートプロテアーゼ阻害カクテル錠(Roche AG);pH7.8を用い、線形希釈した。キャリブレーターは、使用まで-20℃で貯蔵した。
【0280】
ADM免疫測定:サンプル(またはキャリブレーター)50ulを、標識された二次抗体(200ul)の添加後、コーティングされたチューブにピペットで入れ、これらのチューブを、室温で2時間インキュベーションした。未結合のトレーサーを、洗浄液(20mM PBS、pH7.4、0.1%TritonX-100)により、5回洗浄(各1ml)することにより除去した。チューブに結合した化学発光を、LB 953(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて測定した。抗体を、コーティングされたチューブおよび標識抗体として、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用し、下記の変数と組み合わせた(表2)。インキュベーションは、hADM-免疫測定で説明したように行った。結果は、特異的シグナル(10ng/ml ADM)/バックグラウンド(ADMを含まないサンプル)シグナルの比で示した。
【0281】
【表2】
【0282】
驚くべきことに、我々は、最高シグナル/ノイズ比の組み合わせとしてMR-ADMとCT-ADMの組み合わせを認めた。引き続き、我々は、この抗体-組み合わせを、bio-ADMを計測するためのさらなる検査に使用した。我々は、固相抗体として抗MR-ADMを、および標識抗体として抗CT-ADMを使用した。代表的な用量/シグナル曲線を図1に示す。
【0283】
実施例3
ヒトアドレノメデュリンの安定性
ヒトADMを、ヒトクエン酸血漿中に希釈し(n=5、最終濃度10ng ADM/ml)、24℃でインキュベーションした。選択された時点で、アリコートを、-20℃で凍結した。これらのサンプルを解凍した直後に、前述のhADM免疫測定を使用し、hADMを定量した。
【0284】
表3は、ヒト血漿中、24℃でのhADMの安定性を示す。
【表3】
【0285】
驚くべきことに、サンドイッチイムノアッセイにおいてMR-ADMおよびCT-ADMの抗体-組み合わせを使用すると、この被検体の分析前安定性は、高かった(わずかに0.9%/時の免疫反応性の平均喪失)。対照的に、別のアッセイ法を使用すると、わずか22分間の血漿半減期が報告された(Hinson et al. 2000 Endocrine Reviews 21(2):138-167)。病院の日常業務におけるサンプルの採取から分析までの時間は2時間未満であるので、使用されたADM検出法は、日常的診断に適している。許容し得るADM-免疫反応性の安定性に達するには、サンプルへの一般的でない添加物(アプロチニンなど(Ohta et al. 1999. Clin Chem 45 (2): 244-251))は不要であることは、驚きに値する。
【0286】
実施例4
キャリブレーター-調製物の再現性、およびキャリブレーターの調製物間変動
我々は、ADMアッセイのためのキャリブレーターの調製において、結果の高い変動性を認めた(平均CV 8.5%、表4を参照のこと)。これは、プラスチックおよびガラスの表面へのhADMの高い吸着のためであるかもしれない(Lewis et al. 1998. Clinical Chemistry 44 (3): 571-577)。この作用は、界面活性剤(最大1%TritonX 100または1%Tween 20)、タンパク質(最大5%BSA)および高イオン強度物質(最大1M NaCl)またはそれらの組み合わせの添加により、わずかだけ低下した。驚くべきことに、余分の抗ADM抗体(10ug/ml)を、キャリブレーター希釈緩衝液に添加した場合、ADMアッセイキャリブレーター-調製物の回収および再現性は、調製間においてCV<1%まで実質的に改善された(表4)。変動係数(CV)は、5つの独立した調製試行から得た。キャリブレーターは、上述のADMアッセイを用いて測定した(s/n-r=シグナル対ノイズ比)。全ての下記の試験について、本発明者らは、トレーサー緩衝液中の補充物としてNT-ADM抗体10μg/mlおよびNT-ADM抗体10μg/mlの存在下で調製したキャリブレーターを基にした、ADMアッセイを使用した。
幸いなことに、N末端抗体の存在は、MR-およびC末端抗体の組み合わせにより発生したbio-ADM-シグナルに影響を及ぼさなかった(図1)。
【0287】
表4:
【表4】
【0288】
実施例5
感度
アッセイ感度の目的は、健常対象のADM濃度およびかなり低濃度のADM濃度を完全に対象とすることである。
【0289】
健常対象におけるbio-ADM濃度:
健常対象(n=88、57人の女性、31人の男性、平均年齢:42.2歳)を、bio-ADMアッセイを用いて測定した(Weber et al. 2017. JALM, 2(2): 222-233)。四分位範囲(IQR)の中央値は13.7(9.6~18.7)pg/mLであり、平均(SD)は15.6(9.2)pg/mLであった。アッセイ感度(検出限界)が3pg/mlだったので、記載したbio-ADMアッセイを使用することで、健常対象の100%が検出可能であった。
【0290】
実施例6
検査設計と集団MPP
Malmo Preventive Project(MPP)は、一般集団におけるCVリスク因子を探索するために1970年代半ばに設立され、Malmoに住む33,346人の個人が登録された(Fedorowski et al. 2010. Eur Heart J 31: 85-91)。2002年~2006年の間に、合計18,240人の新規参加者が、召集に応じ(参加率、70.5%)、包括的な身体的検査と血液サンプルの採血含めたスクリーニングをおこなった(Fava et al. 2013. Hypertension 2013; 61: 319-26)。MPPにおける再検査は、ベースラインと見なされる当該検査にある。ベースラインにて事前にCVD前を患っている対象を除外した。bio-ADMを、4,364人の患者においてベースライン評価中に採取された血漿から計測した。血液採血時点にて34人の患者がアルツハイマー病を患っていると既に診断されていた。187人に達する患者がこれ以降7年間以内にADを発症した(偶発的AD)。すべての参加者から告知同意を得、そして、Ethical Committee of Lund大学(Lund, Sweden)により検査プロトコールが承認された。
【0291】
認知症診断に関する情報がSwedish National Patient Register(SNPR)から要請された。登録記録中の診断を、国際疾病分類(ICD)コード290、293(ICD-8)290、331(ICD-9)またはF00、F01、F03、G30(ICD-10)の様々な改訂に応じて修正した。1987年以降、SNPRはスウェーデンにおけるすべての入院患者治療を含み、加えて、
2000年以降記録された個人および公共の介護人の両方からの日帰り手術や精神医療を含めた外来患者訪問に対するデータも含んでいる。あらゆる原因の認知症を、Mental Disorders(DSM)-III改訂版の診断および統計マニュアルの基準に従って診断し、さらに、DSM-IV基準をアルツハイマー病および血管性痴呆診断に適用した。利用可能であるときには、診断を、医療記録ならびに神経の画像化データの徹底的な見直しによって正当性を確認した。検査医師が各患者に関して最終診断を割り当て、そして、未定の場合には、認知障害に特化した老人病学者に相談した。我々は症例管理検査のためのデータセットを選択し、そして、MR-proADMを、MPPのサブコホートで計測した(n=250の対照およびn=150の偶発的ADを患っている対象)。そのうえ、bio-ADMを、血液サンプリング時点でアルツハイマー病と既に診断された患者(=AD既往歴;n=150)の独立したコホートにおいて計測した。
【0292】
市販の完全に自動化された均質時間分解蛍光イムノアッセイを、血漿中のMR-proADM(BRAHMS MR-proADM-KRYPTOR;BRAHMS GmbH, Hennigsdorf Germany)を計測するのに使用した(Caruhel et al. 2009. Clin Biochem. 42 (7-8):725-8)。
【0293】
統計解析:値を、平均と標準偏差、中央値と四分位範囲(IQR)、または適宜、カウントとパーセンテージとして表した。連続変数の群比較を、クラスカル-ウォリス検定を使用して実施した。バイオマーカーデータをログ変換した。コックス比例ハザード回帰を、単変数解析および多変数解析における生存に対するリスク因子の影響を分析するのに使用した。比例ハザードの仮定をすべての変数について検査した。連続変数について、1IQRのバイオマーカー変化に関してHRを記載するために、ハザード比(HR)を標準化した。リスク因子に関する95%の信頼区間(CI)およびカイ二乗(ワルド検定)の有意水準を得た。それぞれのモデルの予測値を、モデル尤度比のカイ二乗統計によって評価した。一致指数(C指数)を、効果の評価基準として得た。それは二項転帰向けに採用したAUCの概念に相当する。多変数モデルのために、C指数のブートストラップ修正版を得た。カプラン-マイヤー法によってプロットした生存曲線を、説明目的のために使用した。臨床変数からのbio-ADMの独立性について検査するために、我々は枝分かれモデルに関する尤度比のカイ二乗検定を使用した。
【0294】
すべての統計的検定は両側検定であり、かつ、0.05の両側p値を有意と考えた。統計的分析を、Rバージョン2.5.1(http://www.r-project.org, library Design, Hmisc, ROCR)とSocial Sciences(SPSS)バージョン22.0のStatistical Package(SPSS Inc., Chicago, Illinois, USA)を使用して実施した。
【0295】
結果:
コホートのベースライン特徴を、表5に示す。
【表5】
【0296】
MPPコホートおよび独立したアルツハイマー病コホートにおけるbio-ADM濃度を図2に示す。経時的にADを発症する患者(偶発的AD)および独立したコホートにおける血液サンプリング時点でのADを患っている患者(AD既往歴)のbio-ADM濃度は、非AD群と比較して有意に低い(それぞれp=0.01および<0.0001)。MPPコホート(n=34)からのAD既往歴を含む群はまた、非AD群と比較して、低bio-ADM濃度もまたもたらされるが、統計的に有意でなく、そしてそれは、少ないサンプルサイズに起因する。
低いbio-ADM血漿中濃度は、0.73のハザード比(HR)でアルツハイマー病を強く予測する(CI 0.6~0.87;p<0.001)。図3は、bio-ADM濃度を用いたアルツハイマー病の予測のためのカプラン-マイヤープロットを示す(AD既往歴症例を分析から除外した)。最低の四分位数はADを患う最も高いリスクに関連している。
【0297】
我々は、ADを発症しなかったn=250の対象および7年間の追跡期間中にADを発症したn=150の対象を含むMPPコホート(事前CVDおよびADを含まない)から400人の患者を選択した症例管理のためのデータセットを作成した。一方、bio-ADM濃度は、非AD群と比較して、偶発的ADを患っている患者(独立したコホート)およびAD既往歴を有する患者において有意に低かった(すべての比較に関してp<0.0001)(図4)。加えて、MR-proADMを、MPP症例管理対象で計測し、非AD群(図5)と比較して、偶発的ADにおいて有意ではなく、わずかに高かった。
【0298】
次のステップでは、我々は、バイオマーカー、bio-ADMとMR-proADMの両方を組み合わせた。その比の計算のために、2種のマーカーの濃度を、好ましくは同じ単位(例えば、pmol/L)で表さなければならない。そのため、比の計算に関して、bio-ADMの濃度をpmol/Lで計算した。bio-ADMとMR-proADMの比は、非AD対象と比較したとき、偶発的ADを患っている対象において有意に減少した(p<0.0001;図6)。bio-ADM単独では、0.44(CI 0.33~0.58)のオッズ比(OR)でアルツハイマー病を強く予測する。しかしながら、bio-ADMとMR-proADMの比は、0.32(CI 0.23~0.44)のORで、bio-ADM(p<0.001)単独より良好である。bio-ADMおよびbio-ADMとMR-proADMの比に関するそれぞれの受信者作動曲線(ROCプロット)を、それぞれ図7AおよびBで示し、そこでは、bio-ADMに関して0.67(95%のCI 0.61~0.72)およびbio-ADMとMR-proADMの間の比に関して0.73(95%のCI0.68-0.78)のAUCが明らかになった。さらに、bio-ADMおよびbio-ADMとMR-proADMの比の両方が、年齢および性別に依存していない。
【0299】
実施例7、健常ヒトにおけるNT-Hの投与
検査を、健常男性対象(各群についてn=6の活性、n=2のプラセボ)から成るそれぞれ8人の健常男性対象から成る3つの一連の群(第一群0,5mg/kg、第二群2mg/kg、第三群8mg/kg)において静脈内(i.v.)輸液として投与される単回上昇用量のNT-H抗体を用いた、無作為化した、二重盲検、プラセボ対照検査として、健常男性対象において実施した。
【0300】
主な組み込み基準は、書面による告知同意、18~35歳の年齢、信頼できる避妊方法を使用することへの同意、および18~30kg/m2のBMIであった。対象は、1検査単位に1時間をかける遅い輸液注入によってNT-H抗体(0.5mg/kg;2mg/kg;8mg/kg)またはプラセボの単回i.v.用量を受けた。
【0301】
4つの群におけるベースラインbio-ADM値は異なっていなかった。bio-ADM値の中央値は、プラセボ群で7.1pg/mL、第一処置群で6.8pg/mL(0.5mg/kg)、第二処置群で5.5pg/mL(2mg/kg)および第三処置群で7.1pg/mL(8mg/mL)であった。
この結果は、健常ヒト個体においてNT-H抗体の投与後、最初の1.5時間以内にbio-ADM値が急激に上昇し、次に、プラトーに達し、そして、ゆっくり減少したことを示した(図8)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
【配列表】
2024001208000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)認知症を診断する方法、または、
b)認知症を患っていない対象の認知症を患うリスクを測定する方法、または、
c)認知症を患っている対象において治療を観察するか、または治療介入を観察もしくはガイドする方法、または
d)認知症を患うリスクが高い対象の治療を観察するか、または予防的治療介入を観察もしくはガイドする方法であって、
ここで、配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが対象の体液のサンプルで測定され、そしてここで、前記成熟ADM-NH2のレベルが閾値レベルと比較され、および
ここで、
a)配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症と診断されるか、またはここで、
b)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値レベルを下回る場合、前記対象は認知症を患う高いリスクを有するか、またはここで、
c)前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが、治療または治療介入の経過中に上昇する場合、認知症を患っているかまたは認知症を患うリスクが高い対象の体質が、治療または治療介入を受けて改善している、および/またはここで、前記の配列番号4による成熟ADM-NH2のレベルが前記閾値を上回って上昇する場合、治療介入が継続されるかもしれない、方法。
【外国語明細書】